公開日: 2017/10/26 (掲載号:No.241)
文字サイズ

家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第24回】「家族信託の活用事例〈不動産編⑤〉(相続発生後、複数の推定相続人により不動産が共有化されるのを防ぐため不動産に信託を設定する事例)」

筆者: 荒木 俊和

家族信託による

新しい相続・資産承継対策

【第24回】

「家族信託の活用事例〈不動産編⑤〉

(相続発生後、複数の推定相続人により不動産が共有化されるのを防ぐため不動産に信託を設定する事例)」

 

弁護士 荒木 俊和

 

今回は、推定相続人が複数いて何も対応しなければ不動産が共有化されてしまうことを防止するため、不動産に家族信託を設定し、被相続人の死亡時に共有化されないようにする事例を解説する。

- 相談事例 -

私は今年85歳になりますが、両親はすでに他界し、昨年妻に先立たれ、また2人の間には子供がいなかったため、現在は1人暮らしをしています。私は8人兄弟の三男ですが、兄弟のうち何人かは既に亡くなっており、中には認知症になってしまった兄弟もいます。

私はアパートを10棟所有しており、賃料収入もそれなりにあるのですが、最近は年齢のせいもあって管理に手がまわらなくなってきました。幸い、近所に住んでいる私の兄(8人兄弟の次男)の息子(以下「甥A」とする)が賃貸管理を手伝ってくれているので、法律的にも私の代わりに管理できるようにしたいと考えています。

そして、私が亡くなった後は、私の兄弟やその子供たちで収益を平等に分けてもらえたらと思いますが、兄弟間で揉め事になったり、すぐにアパートやその敷地を売ってしまうことになるような事態は避けてほしいと思います。

ただし、いつまでもアパートを残しておくことも難しいと思うので、私の兄弟8人が全員亡くなってしまえば、後はその子供や孫たちで適宜分けてほしいです。

 

1 家族信託活用のポイント

(1) 遺産分割協議の問題

今回取り上げる事例においては、当初は本人の単独所有となっているが、本人が高齢のため、遠くない将来において相続が発生する可能性が認められる。この場合、何も対策をしなければ、アパート10棟を含む本人の財産は、本人の兄弟による遺産分割協議の対象となる。

ここで本人の兄弟が既に亡くなっている場合には、代襲相続によってその子が相続分を受け継ぎ、遺産分割協議に参加することとなる(なお、本人の兄弟の子も既に亡くなっている場合には再代襲はせず、兄弟の孫は相続人になり得ない(民法第901条))。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

家族信託による

新しい相続・資産承継対策

【第24回】

「家族信託の活用事例〈不動産編⑤〉

(相続発生後、複数の推定相続人により不動産が共有化されるのを防ぐため不動産に信託を設定する事例)」

 

弁護士 荒木 俊和

 

今回は、推定相続人が複数いて何も対応しなければ不動産が共有化されてしまうことを防止するため、不動産に家族信託を設定し、被相続人の死亡時に共有化されないようにする事例を解説する。

- 相談事例 -

私は今年85歳になりますが、両親はすでに他界し、昨年妻に先立たれ、また2人の間には子供がいなかったため、現在は1人暮らしをしています。私は8人兄弟の三男ですが、兄弟のうち何人かは既に亡くなっており、中には認知症になってしまった兄弟もいます。

私はアパートを10棟所有しており、賃料収入もそれなりにあるのですが、最近は年齢のせいもあって管理に手がまわらなくなってきました。幸い、近所に住んでいる私の兄(8人兄弟の次男)の息子(以下「甥A」とする)が賃貸管理を手伝ってくれているので、法律的にも私の代わりに管理できるようにしたいと考えています。

そして、私が亡くなった後は、私の兄弟やその子供たちで収益を平等に分けてもらえたらと思いますが、兄弟間で揉め事になったり、すぐにアパートやその敷地を売ってしまうことになるような事態は避けてほしいと思います。

ただし、いつまでもアパートを残しておくことも難しいと思うので、私の兄弟8人が全員亡くなってしまえば、後はその子供や孫たちで適宜分けてほしいです。

 

1 家族信託活用のポイント

(1) 遺産分割協議の問題

今回取り上げる事例においては、当初は本人の単独所有となっているが、本人が高齢のため、遠くない将来において相続が発生する可能性が認められる。この場合、何も対策をしなければ、アパート10棟を含む本人の財産は、本人の兄弟による遺産分割協議の対象となる。

ここで本人の兄弟が既に亡くなっている場合には、代襲相続によってその子が相続分を受け継ぎ、遺産分割協議に参加することとなる(なお、本人の兄弟の子も既に亡くなっている場合には再代襲はせず、兄弟の孫は相続人になり得ない(民法第901条))。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

連載目次

家族信託による
新しい相続・資産承継対策

▷総論

▷よくある質問・留意点

▷外部専門家等の活用

▷家族信託におけるリスク・デメリット

▷信託契約作成上の留意点

▷家族信託の活用事例~不動産編~

▷家族信託の活用事例~株式編~

筆者紹介

荒木 俊和

(あらき・としかず)

弁護士・札幌弁護士会所属

アンサーズ法律事務所
 http://answerz-law.com

つなぐ相続アドバイザーズ
 http://www.tsunagu-s.jp

昭和57年 三重県生まれ
平成17年 一橋大学法学部卒業
平成20年 東京大学法科大学院修了
 同 年 司法試験合格
平成21年 司法修習修了(新62期)、弁護士登録
平成22年 森・濱田松本法律事務所入所
平成24年 札幌みずなら法律事務所(現・みずなら法律事務所)入所
平成26年 アンサーズ法律事務所設立
     株式会社つなぐ相続アドバイザーズ設立 取締役就任

関連書籍

相続税・贈与税取扱いの手引

公益財団法人 納税協会連合会 編集部 編

相続税実務の“鉄則”に従ってはいけないケースと留意点

中島孝一 著 西野道之助 著 飯田昭雄 著 佐々木京子 著 高野雅之 著 若山寿裕 著 佐久間美亜 著

図解でわかる 不動産オーナーの相続対策

税理士 今仲 清 著 税理士 坪多晶子 著

相続登記の全実務

司法書士 田口真一郎 著      黒川 龍  著

新・くらしの税金百科 2024→2025

公益財団法人 納税協会連合会 編

「配当還元方式」徹底活用ガイド

税理士 山本和義 著

民法・税法2つの視点で見る贈与

弁護士法人ピクト法律事務所 代表弁護士 永吉啓一郎 著

中小企業の事業承継

税理士 牧口晴一 著 名古屋商科大学大学院教授 齋藤孝一 著

SPC&匿名組合の法律・会計税務と評価

弁護士 永沢 徹 監修 さくら綜合事務所グループ 編著

信託法務大全 第2編

田中和明 編著 小出卓哉 編著 及川富美子 著 齋藤 崇 著 佐久間 亨 著 冨田雄介 著 畠山久志 著 松田和之 著 森田豪丈 著

【電子書籍版】相続税・贈与税取扱いの手引

公益財団法人 納税協会連合会 編集部 編

〇×判定ですぐわかる資産税の実務

公益財団法人 納税協会連合会 編集部 編

もめない相続 困らない相続税

税理士 坪多晶子 著 弁護士 坪多聡美 著

STEP式 相続税申告書の作成手順

税理士 石原健次 監修 税理士 松田昭久 共著 税理士 榮村聡二 共著 税理士 上西由香 共著 税理士 西田 豊 共著

新着情報

記事検索

メルマガ

メールマガジン購読をご希望の方は以下に登録してください。

#
#