家族信託による
新しい相続・資産承継対策
【第24回】
「家族信託の活用事例〈不動産編⑤〉
(相続発生後、複数の推定相続人により不動産が共有化されるのを防ぐため不動産に信託を設定する事例)」
弁護士 荒木 俊和
今回は、推定相続人が複数いて何も対応しなければ不動産が共有化されてしまうことを防止するため、不動産に家族信託を設定し、被相続人の死亡時に共有化されないようにする事例を解説する。
- 相談事例 -
私は今年85歳になりますが、両親はすでに他界し、昨年妻に先立たれ、また2人の間には子供がいなかったため、現在は1人暮らしをしています。私は8人兄弟の三男ですが、兄弟のうち何人かは既に亡くなっており、中には認知症になってしまった兄弟もいます。
私はアパートを10棟所有しており、賃料収入もそれなりにあるのですが、最近は年齢のせいもあって管理に手がまわらなくなってきました。幸い、近所に住んでいる私の兄(8人兄弟の次男)の息子(以下「甥A」とする)が賃貸管理を手伝ってくれているので、法律的にも私の代わりに管理できるようにしたいと考えています。
そして、私が亡くなった後は、私の兄弟やその子供たちで収益を平等に分けてもらえたらと思いますが、兄弟間で揉め事になったり、すぐにアパートやその敷地を売ってしまうことになるような事態は避けてほしいと思います。
ただし、いつまでもアパートを残しておくことも難しいと思うので、私の兄弟8人が全員亡くなってしまえば、後はその子供や孫たちで適宜分けてほしいです。
1 家族信託活用のポイント
(1) 遺産分割協議の問題
今回取り上げる事例においては、当初は本人の単独所有となっているが、本人が高齢のため、遠くない将来において相続が発生する可能性が認められる。この場合、何も対策をしなければ、アパート10棟を含む本人の財産は、本人の兄弟による遺産分割協議の対象となる。
ここで本人の兄弟が既に亡くなっている場合には、代襲相続によってその子が相続分を受け継ぎ、遺産分割協議に参加することとなる(なお、本人の兄弟の子も既に亡くなっている場合には再代襲はせず、兄弟の孫は相続人になり得ない(民法第901条))。
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