固定資産をめぐる判例・裁決例概説
【第49回】
「特別償却の対象となる機械及び装置の範囲を拡大解釈して特別償却を行うことは認められないとされた事例」
税理士 菅野 真美
▷減価償却資産としての「機械及び装置」
法人税においては、減価償却資産についてその種類を定めている(法法2二十三、法令13)。減価償却費として損金算入できるのは、法人が償却費として損金経理をした金額のうち、償却限度額に達するまでの金額である(法令31)。この償却限度額の計算は、その資産について定められた償却方法に基づく耐用年数によって行うが、この耐用年数は耐用年数省令で定められている。
この減価償却資産の「種類の名称」は条文で定められているものの、どのような物であるかは条文で具体的に定義されていない。
例えば、国語辞典である『大辞林第三版』によると、「機械」「装置」は以下の通りである。
①動力源から動力を受けて一定の運動を繰り返し、一定の仕事をする装置。主に、きっかけを与えると人力を借りずに自動的に作動するものをいう。からくり。
②精密な作動をする実験・測定用の装置。〔規模の大きいものを「機械」。小さいものを「器械」と書いて区別することがある。〕(※1)。
「装置」は ある目的に合わせて設備・機械・仕掛けなどを備え付けること。また、その設備・機械など(※2)。
(※1) 松村明編『大辞林第三版』(2006、三省堂)586頁
(※2) 松村編 前掲 1455頁。
しかし、これらの定義に基づいて、資産の種類を「機械及び装置」と特定するのは困難な場合が多い。
「機械及び装置」か「器具備品」かで争われた裁判において、「機械及び装置」といえるためには標準設備(モデルプラント)を形成していなければならず、設置箇所が同一かどうかにかかわらず、資産の集合体が集団的に生産手段やサービスを行っていなければならないとされた(東京高等裁判所平成21年7月1日判決(TAINSコード:Z259-11237))。
このように考えると、「機械及び装置」は、1つの資産だけで、生産手段等として事業の用に供されているのではなく、集合体として機能することで事業の用に供されるという性質があると考えられる。
租税特別措置法における特別償却の適用が、一定の「機械及び装置」に限定されている場合には、集合体として機能する資産を正確に他の資産と区分して、特別償却の計算を行う必要がある。納税者は、より広い範囲の資産を「機械及び装置」として特別償却の対象に含めたいと考えがちである。
今回は、特別償却の対象となる「機械及び装置」の範囲について、納税者による拡大解釈が争われた事案を検討する。
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