法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例66】「中古資産を事業の用に供した後においてその耐用年数を変更することの可否」
当社が保有する不動産は名古屋市内を中心に中部地方の県庁所在地や政令指定都市に立地しており、ここ数年は地価の上昇を背景に賃貸料についての値上げ交渉が可能となっているため、借入金利息の負担が依然重いものの、業績は持ち直しております。そんな中、先月から税務署の調査を受けており、当社が保有する賃貸物件(建物)の減価償却費について、議論のすれ違いが生じております。すなわち、当社が保有する建物の減価償却については、耐用年数を39年として定額法で計算しておりましたが、そのうち数棟は既存の建物を取得して賃貸物件として事業の用に供したことに気付いたことから、それ以後の事業年度については中古資産の耐用年数(簡便法)の適用により減価償却を行いました。
しかし、税務署の調査官は、中古資産の耐用年数の算定は、その中古資産を事業の用に供した事業年度において行うことができるものであり、その事業年度において耐用年数の算定をしなかったときは、その後の事業年度において耐用年数の算定をすることはできないと言い張っております。調査官の当該主張は不当であると考えるのですが、税法上はどのように考えるのでしょうか、教えてください。
〈令和6年度税制改正〉暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し
令和6年度税制改正においては、活発な市場を有する暗号資産(市場暗号資産)の期末時価評価課税について、令和5年度税制改正で導入された「特定自己発行暗号資産」に加え、新たに「特定譲渡制限付暗号資産」に該当する類型が時価評価課税の対象から除外された。
本稿は、この暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し(以下「本改正」という)について、解説を行うものである。
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第50回】
ビットコインETFの概要と仕組みについて具体性のある議論を行うために、【第47回】で紹介した11銘柄のうちBitwise Bitcoin ETF(銘柄又はファンドの名称であるとともに、信託の名称でもある。以下「本信託」という)を中心的に取り上げる。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第44回】「保険業に係る非関連者基準適用の可否」~日産自動車事件(最高裁令和6年7月18日判決)~
本連載【第32回】で取り上げた「日産自動車事件」の最高裁判決が出たとのことですが、その概要を教えてください。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第159回】学校法人東京女子医科大学「第三者委員会調査報告書(公表版)(2024年8月2日付)」(前編)
2024年3月29日、女子医大は、「本学関係者の皆様へ」というお知らせをリリースして、警視庁による捜索が行われたことを公表した。報道によれば、女子医大の同窓会組織である至誠会から、勤務実態が認められない職員に対し給与が支払われていた、又は、職員が別の会社で働き始めた後も二重に給与が支払われていたなどという容疑で、警視庁が、女子医大などの関係各所に一斉捜索(強制捜査)を行ったとのことであった。
決算短信の訂正事例から学ぶ実務の知識 【第6回】「配当金総額の集計方法」
今回は、「配当の状況」の誤記載を取り上げます。
「配当の状況」は投資家にとって特に関心の高い項目です。企業としても、できれば誤記載を避けたい箇所でしょう。しかし、ここは、なぜか誤りが発生しやすいのです。
〔中小企業のM&Aの成否を決める〕対象企業の見方・見られ方 【第52回】「売り手企業の価額はどうやって決まるか・決めるか(前編)」~妥当な価額を求める手法~
今回から2回にわたって、中小企業庁が2023年9月に改訂版を公表した「中小M&Aガイドライン(第2版)」(以下、「ガイドライン」といいます)の内容を参考にしながら、中小M&Aの「価額」視点で、相手の見方・見られ方を考えます。
谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第41回】「源泉徴収の法律関係に関する判例法理」-最判昭和45年12月24日民集24巻13号2243頁による「源泉徴収法」の創造-
所得税の源泉徴収は所得税法と国税通則法で規定されている。すなわち、所得税法は第4編(源泉徴収)において、居住者に対する利子所得に係る利子等及び配当所得に係る配当等(第1章)、給与所得に係る給与等(第2章)、退職所得に係る退職手当等(第3章)、公的年金等(第3章の2)及び報酬、料金等(第4章)の支払、並びに非居住者又は外国法人に対する一定の国内源泉所得及び内国法人に対する一定の所得の支払(第5章)について源泉徴収義務を中心に規定を設けるほか、所得税の納期の特例(第6章)並びに所得税の納付及び徴収(第7章)を定め、また、国税通則法は源泉徴収義務を「納税義務」としてその成立及び確定に関する規定の中に取り込み(15条1項・2項2号・3項2号)、その上で所得税の源泉徴収を、納税の告知(36条1項2号)を起点として国税の徴収(第3章第2節)等の手続に組み込んでいる。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例137(法人税)】 「分割があった場合の「試験研究費の認定申請書」の提出を失念したため、試験研究費の特別控除につき「調整計算の特例」の適用ができなくなってしまった事例」
令和5年3月期の法人税の「試験研究を行った場合の法人税額の特別控除」(以下単に「試験研究費の特別控除」という)の適用に当たり、令和4年4月1日に会社分割を行い、分割承継法人に事業を一部移転したため、「分割等による移転試験研究費の額の計算方法の認定申請書」及び「分割等による移転売上金額の計算方法の認定申請書」(以下単に「試験研究費の認定申請書」という)を提出して所轄税務署の認定を受け、分割法人及び分割承継法人の「分割等による試験研究費の額の区分に関する届出書」及び「分割等による売上金額の区分に関する届出書」(以下単に「試験研究費の届出書」という)を提出して、比較試験研究費の額及び平均売上金額を調整(以下「調整計算の特例」という)した方が有利であったにもかかわらず、「試験研究費の認定申請書」を提出しないまま「試験研究費の届出書」のみを提出したため、所轄税務署から「調整計算の特例」は適用できないとの指摘を受け、修正申告することになってしまった。
これにより「試験研究費の特別控除」が減少し、法人税等につき追徴税額が発生し、損害賠償請求を受けた。
