組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第42回】「その他の裁判例⑤」
今回、解説する事件は、商法上、合併無効の判決が下った際に、合併により生じた譲渡損益をなかったものとして更正の請求を行うことができるか否かが争われた事件である。
組織再編税制の導入により、合併における譲渡損益の計算が大きく変わり、非適格合併として処理される事例はほとんど無くなったが、他の組織再編行為において類似の事例が生じる可能性もあり、実務上も参考になる判決であると考えられる。
山本守之の法人税“一刀両断” 【第18回】「実効税率はどのような経過で引き下げられたか」
新聞報道各社などから、「日本の税制は誰がどのように決めるのだ」「税制改正の方向を知るためにはどうすればいいのだ」 こんな質問をよく受けます。
例えば、政府が11月26日に開いた「官民対話」での安倍首相と榊原経団連会長の発言は次のように報じられています。
包括的租税回避防止規定の理論と解釈 【第5回】「同族会社等の行為計算の否認の歴史②」
前回解説したように、大正12年に創設された同族会社等の行為計算の否認は、大正15年度に見直しをされただけで、ほとんどそのままの形が維持されてきた。
本稿では、現在の規定とほとんど変わらない形になった昭和25年度税制改正の内容とその具体的な論点について解説を行うこととする。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例33(法人税)】 「「収用等のあった日」に「収用等の特別控除」を適用しなかったため、適用が受けられなくなってしまった事例」
平成X6年3月期の法人税につき、平成X6年1月に収用等により東京都に建築物等を譲渡したため、収用換地等の場合の所得の特別控除(以下「収用等の特別控除」という)の適用が受けられたにもかかわらず、対価補償金の受領及び収用証明書の収受等が申告期限後であったため、その適用をせずに申告をしてしまった。
これにより法人税額等につき過大納付が発生し、賠償請求を受けた。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第6回】「フィルムリース事件」~最判平成18年1月24日(民集60巻1号252頁)~
今回紹介する判例は、X社が、映画に投資を行う名目で結成されたB組合に出資を行い、B組合がC社から購入した映画につき、自らの固定資産として、減価償却費の損金算入を行った上確定申告をしたところ、Y税務署長から法人税の更正処分等を受けたという事案である。
最高裁は、映画が減価償却資産に当たらないとして、損金算入を認めなかった。
組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第41回】「その他の裁判例④」
今回、解説する事件は、事業協同組合員の死亡脱退の払戻しが、被相続人において生じたのか、相続人において生じたのかが争われた事件である。
中小企業等協同組合法に関連する事件はそれほど多くはないが、租税法を理解する前に、中小企業等協同組合法を理解する必要があるという意味では、非常に参考になる事件である。
平成27年度税制改正後の「受取配当等の益金不算入制度」に関する申告実務の留意点~別表8(1)及び8(1)付表の作成に当たって~
平成27年度税制改正では、実効税率の引下げに伴う、代替財源の確保のための一環として受取配当金の益金不算入制度が大きく見直された。
その内容も、持株比率基準の見直し、継続保有要件の見直し、非支配目的株式等の創設、負債利子控除制度の見直し、証券投資信託の収益の分配金に対する課税の見直しなど多岐にわたっている。この改正の内容は、平成27年4月1日以後開始する事業年度から適用されるため、通常の1年決算法人では、平成28年3月期から適用になると思われる。
そこで本稿では、特に申告書の作成に当たり留意すべき点についてまとめてみる。
包括的租税回避防止規定の理論と解釈 【第4回】「同族会社等の行為計算の否認の歴史①」
第4回目以降は、租税回避の否認規定として典型的な同族会社等の行為計算の否認(法法132)の歴史について解説することとする。なお、同族会社等の行為計算の否認は、所得税法、相続税法、地方税法においてもそれぞれ定められているが(所法157①、相法64①、地法72の43①)、本稿では、法人税法に定められている同規定の歴史のみについて解説を行うこととする。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第5回】「興銀事件」~最判平成16年12月24日(民集58巻9号2637頁)~
今回紹介する判例は、会社(Z社)の母体行となっていた銀行(X)が、Z社に対する貸金債権を放棄し、債権相当額を損金の額に算入して当該事業年度の法人税の確定申告をしたところ、Y税務署長から法人税の更正処分等を受けたという事案であり、本件の事情の下では、債権の全額が、放棄時に回収不能となっていたなどとして、X銀行による上記損金算入を認めた。