これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務 【第10回】「株主管理の仕組みづくり」-株主名簿整備の必要性-
本稿では、【第2回】でその必要性を説明した「会社主導で中長期的に管理し続けられる体制づくり」の一環として、「株主管理」をテーマに解説する。
本稿の目的は、会社の実務担当者が、自社の株主情報の管理方法をいま一度振り返り、今後の事業活動をより盤石に支えるためのきっかけづくりである。
家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第26回】「家族信託の活用事例〈株式編①〉(非上場会社において、親から子への事業承継を予定しているが、子が経営について未熟であるため、株の名義を移したうえで親が意思決定権を保有し続ける事例)」
私の会社には親族ではない取締役が4名いますが、会社は39歳の息子に引き継がせたいと考えています。しかし、息子は大手企業に勤めていたところを私が体調を崩したことを期に会社に戻ってきてもらったばかりで、会社のことを十分に理解できていないところがあります。
そのような状況ですので、息子に株をすべて渡し会社運営まで任せることには未だ抵抗があります。かといって親族ではない取締役を代表にしてしまうと、銀行との関係などで面倒なことになってしまいそうです。
株と代表権を息子に渡した上で、私がしばらく監督できるような形は取れないものでしょうか。
税理士のための〈リスクを回避する〉顧問契約・委託契約Q&A 【第3回】「委任契約書等に委任事項・報酬額を取り決めなかった場合の報酬請求の可否と報酬額」
X税理士は、約30年にわたってAの経営する会社の顧問税理士であったが、この度、Aが亡くなったため、Aの相続人であるYから、Aの相続についての相続税の申告の依頼を受けた。
しかし、Xは、Yからの依頼について、Yが長年付き合いのあったAの相続人ということもあったため、委任契約書を作成せず、また、報酬額についても、申告後に相談する旨の口約束はあったものの、具体的な金額については取り決めをしていなかった。
そして、Xは、Yの依頼に基づき、Aの相続財産を調査した上、相続税申告書を作成したが、申告内容についてXとYとで意見が合わなかったため、Yはかねてより懇意にしていた別の税理士に依頼するとして、Xへの依頼を取りやめた。
このようなケースで、XはYに対し、報酬を請求できるか。
また、報酬を請求できるとして、どの程度の金額まで請求可能か。
家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第25回】「家族信託の活用事例〈不動産編⑥〉(認知症が懸念される親の相続税対策として子へ不動産や金銭を信託する事例)」
私には今年87歳になる父がいます。父は市街地に多数の不動産を所有し、現預金も多く保有しているため、このまま亡くなってしまうと多額の相続税が発生することが見込まれます。
父は現在のところは十分な判断能力があると思いますが、最近では足腰が弱り外に出なくなってきたため、認知症になってしまうことを懸念しています。
父の不動産には減価償却の終わった古いアパートも多く含まれているため、建替えを検討していた時期もありましたが、最近では父自身が無気力になってきたこともあり、自身で建替えを行うことは難しそうです。
このような場合、私が父に代わって建替えを行うようなことはできないでしょうか。また、できればローンを組んで建替えを行いたいのですが、そのようなことはできないのでしょうか。
税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第21回】「民事信託の利用(その3)」-信託契約を検討する際の注意点-
私は税理士ですが、最近、特に高齢者のご一家を中心に、所有する資産を信託により管理したいという問い合わせを受ける機会が増えてきました。
信託契約に関する一般的な知識は書籍等を通じて押さえるとして、実務において信託契約の導入を検討する際の注意点等があれば教えてください。
これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務 【第9回】「定款・議事録管理の仕組みづくり(「点」と「点」を「線」で結ぶ)」-実践編-
本稿では、定款変更に関する株主総会の決議内容の反映に漏れがない定款、すなわち、「万全な定款」として管理し続けるための実践方法について解説する。
株主総会議事録や定款は会社主導で管理するものであり、中長期的な視点で管理する仕組みがなければ、将来にわたって「万全な定款」として管理することは難しい。
もし社内にこれらを管理する仕組みがなければ、本稿を通じて、体系的に管理する仕組みづくりに着手するきっかけにしてもらいたい。
家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第24回】「家族信託の活用事例〈不動産編⑤〉(相続発生後、複数の推定相続人により不動産が共有化されるのを防ぐため不動産に信託を設定する事例)」
私は今年85歳になりますが、両親はすでに他界し、昨年妻に先立たれ、また2人の間には子供がいなかったため、現在は1人暮らしをしています。私は8人兄弟の三男ですが、兄弟のうち何人かは既に亡くなっており、中には認知症になってしまった兄弟もいます。
私はアパートを10棟所有しており、賃料収入もそれなりにあるのですが、最近は年齢のせいもあって管理に手がまわらなくなってきました。幸い、近所に住んでいる私の兄(8人兄弟の次男)の息子(甥A)が賃貸管理を手伝ってくれているので、法律的にも私の代わりに管理できるようにしたいと考えています。
税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第20回】「民事信託の利用(その2)」-後継ぎ遺贈型信託-
私には、妻と3人の子がおります。
妻は、数年前より物忘れ等の症状が出はじめておりましたが、今回、医師の診断を受けたところ、今の時点では判断能力に大きな問題はないものの、以前に患った脳梗塞の影響もあり、今後、次第に判断能力が低下していく可能性は十分にあるとの説明を受けました。
他方、3人の子供たちは既に結婚して独立しておりますが、妻は子供たちそれぞれの配偶者との折り合いが悪く、今は彼らとも疎遠になってしまいました。
税理士業務に必要な『農地』の知識 【第12回】「生産緑地法の改正」
平成29年(2017年)6月15日に改正生産緑地法が施行された。
今回の改正では「特定生産緑地制度」の創設が大きなトピックとなっている。この改正により、生産緑地を所有している農家は、原則として2022年までに特定生産緑地の指定を受けるかどうか選択しなければならない。
この選択の結果、固定資産税・都市計画税や納税猶予などの課税関係が大きく異なってくるため、今回の改正内容は正しく理解しておきたいところである。
税理士のための〈リスクを回避する〉顧問契約・委託契約Q&A 【第2回】「委任契約に基づく義務と付随的義務」
X社は、税理士Yとの間で、税務代理、税務書類の作成、税務相談及びこれらの業務に付随する財務関係書類の作成、会計帳簿の記帳代行を行うことを内容とする税務顧問契約を締結していた。
ところで、X社の100%親会社であるZ社は、X社が行うべき業務のうち総務等のいわゆる本部機能に属する部分を行っており、X社は、その対価として、期末にZ社に対する特別管理費を計上した上で短期貸付金と相殺していたが、この特別管理費については、特に合理的な算定根拠を定めていなかった。
そして、税務調査の際に、X社はこの特別管理費の金額に関する裏付資料を提出できなかったことから、これが寄附金であるとの指摘を受け、最終的にX社はやむを得ずこの点に関する修正申告に応じることとなった。
X社はYに対し、このような特別管理費の計上が税務上不適切であることを知りながら、その計上に異議を述べず、また、他の処理を提案するなどの助言を行わなかったとして、その損害賠償を請求した。