〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第2話】「ビットコインと雑所得」
「統括官、ビットコインって、知っていますか?」
昼休みに、浅田調査官は中尾統括官の席にやって来て尋ねる。
「・・・ビットコイン?・・・ああ、仮想通貨のかい?」
食後、いつものように口に爪楊枝をくわえている中尾統括官は、浅田調査官の顔を見る。
海外勤務の適任者を選ぶ“ヒント” 【第7回】「図太い歴史好きであれ」
連載第7回目は、昨今無視できない「近代史」について、海外勤務者が赴任先で生活する際に身につけておくべき考え方と、無用な軋轢に対峙するために求められる「図太さ」とでもいうべき資質についてお話します。
振り返れば1970年代の東南アジアでも、当時の田中首相が外遊中に訪問先の国々で反日デモに遭うという場面がありましたが、2000年以降は特に東アジア諸国における海外勤務者にとって、現地で発生する各種の反日行動にどう対応するかが重要な課題になってきています。
〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第1話】「所得税法56条と租税回避」
「・・・中尾統括官。」
中尾統括官が顔を上げると、浅田調査官が机の前に立っている。
「あの・・・実はちょっと・・・質問が・・・」
浅田調査官は遠慮がちに中尾統括官の顔を覗く。浅田調査官は2ヶ月前に、税務大学校の「専科研修」から帰ってきたばかりである。
「質問・・・?」
中尾統括官は怪訝そうに浅田調査官を見る。
「ええ・・・税理士からの質問なのですが。・・・かまいませんか?」
そう言うと、浅田調査官はメモ用紙をポケットから取り出して、説明を始める。
「子供の土地の上に母親が賃貸マンションを建設したのですが、その場合の地代の支払いについての質問なのです。」
中尾統括官は、黙って聞いている。
海外勤務の適任者を選ぶ“ヒント” 【第6回】「海外でのリスク管理とトラブル対応には訓練が必要?」
連載第6回目は、海外業務における「リスク管理」の考え方と、それでも発生する「トラブルへの対応」が重要である、という視点についてお話します。
よく「リスク」とは「不確実性」のことであり、それを「危険」と同一視するのは間違いだ、という話を耳にされると思いますが、海外勤務など実務の最前線にいる人間にとっては、往々にして不確実性がトラブルの元になるものです。
今回は「不確実性」が「危険因子」になることを十分に意識して議論を進めたいと思います。
〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第24話】「相続放棄と第二次納税義務」
「統括官・・・この判決、少し納税者に酷な気がするんですけど・・・どう思われますか?」
谷垣調査官は立ち話のなか、ふと思い出して最高裁平成21.12.10判決の判決文を見せた。
「何が酷だって?」
田中統括官は、谷垣調査官の差し出した判決文を手に取る。
海外勤務の適任者を選ぶ“ヒント” 【第5回】「開き直りとユーモア、そして「1人で仕事ができること」」
本社に比べて海外勤務では、比較的小さなオフィスで仕事をするケースが多くなると思います。小さなオフィスで限定的な責任範囲を任されるだけに、責任の所在が明確になり成果主義による評価も明快な数字としてついてまわります。
このような環境で、代表的なストレスとして考えられるのは、次のようなものでしょうか。
〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第23話】「共有物の放棄」
「統括官、共有物を放棄したケース・・・なんですけど。」
谷垣調査官が尋ねる。
「・・・共有物?」
田中統括官は、谷垣調査官の顔を覗く。
「例えば、兄弟で共有していた土地について、一方がその持分を放棄した場合の課税関係なのですが・・・」
谷垣調査官は、手に持っている罫紙を見ながら言う。
海外勤務の適任者を選ぶ“ヒント” 【第4回】「「家族持ち」はメリットになりうるか?」
もそも「積極的に独身者を選ぶ」、という選考基準でもあれば別ですが、ある程度の業務経験を基準に海外勤務者を選定すると、どうしても家族を持った人が候補に挙がってくるケースが多いのではないでしょうか。
子弟教育などの負担が増える40代後半以降だと、単身赴任という選択肢も出てくるかもしれませんが、家族帯同の経験は、その人が外地で過ごす数年を彩り、人生を豊かにするかけがえのない財産になりうるものです。
〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第22話】「相互持合の株式の評価」
「田中統括官・・・会社が株式を互いに持ち合っている場合の株式の評価って・・・どうするんでしたっけ?」
谷垣調査官は頭を掻きながら尋ねる。
「会社がそれぞれ、株式を持っているケース・・・???」
田中統括官は谷垣調査官を見る。
「・・・具体的には、どんな持合の会社の株式なんだ?」
実務家による実務家のためのブックガイド -No.4- 『消費税の研究(日税研論集70号)』
日本税務研究センターでは、金子宏東京大学名誉教授のもと、租税法の研究者、財政学の研究者及び実務家の11人が研究員となって、平成27年9月、「消費税の研究」特別研究会が立ち上げられ、およそ9ヶ月にわたり、消費税に関する基本的問題についての研究が行われた。
この論集は、研究会における報告を基礎とし、そこで行われた議論を反映しつつ、研究員が執筆した11の論文を1冊にまとめたものである。