〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第14話】「みなし贈与と加算税」
「これって・・・おかしいですよね。」
谷垣調査官は田中統括官の机の前に立って話しかけた。
「・・・おかしい?・・・何が・・・?」
田中統括官は、昼食後、うつらうつらしながら書類を見ていた。
「長男と次男が父親から低額で土地をそれぞれ取得したので、みなし贈与として課税をしたのですが・・・長男は過少申告加算税で、次男は無申告加算税になるというのです・・・」
実務家による実務家のためのブックガイド -No.3- 弥永真生 著『リーガルマインド会社法』
私は、本書から会社法の基礎的な知識体系を得たと確信している。すべてのスタートは「会社は営利社団法人である」という一文から。これを単語ごとにぶった切っていく。「営利」「社団」「法人」。それぞれの単語ごとにどのような制度に発展していくか。どのような論点が含まれているのか。そのようなことをイメージしながら、頭の中で壮大な「地図」を作り上げていった。
〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第13話】「認知症と相続債務」
「あの、統括官・・・納税者から電話で質問があったのですが・・・」
谷垣調査官は、田中統括官の机の前に立っている。
「納税者?」
資産税の調査報告書を読んでいた田中統括官は顔を上げた。
「ええ、相続債務についてなんですけど・・・」 谷垣調査官は少し困ったような表情を浮かべている。
税務ピンポイント解説 【第4回】「「配偶者控除」廃止で“103万円の壁”崩壊!? その先は・・・?」
2016年9月15日に開催された政府税制調査会では、「配偶者控除」の見直し向けた検討が始まり、話題を呼んでいます。
配偶者控除とは一口に言えば「配偶者の年収が103万円以下の場合、扶養者の課税所得から38万円を差し引く」所得税法上の仕組みですが、元来、専業主婦を念頭においた制度とされ、女性の社会進出を阻んでいるとして長い間問題視されてきました。
そこで今、それに代わる制度として、政府税制調査会では各国の制度との比較を行うなどして、わが国の家族制度にフィットした新たな制度のビジョンを検討しています。
〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第12話】「国際税務専門官」
「統括官、今度の人事異動で、資産課税第二部門の渡辺さんが、国際税務専門官に配属されましたね。」
昼休みに、谷垣調査官は田中統括官と雑談をしている。
「第二部門の渡辺君か。彼は英語が良くできたからね。」
田中統括官の言葉に谷垣調査官はうなずいた。
税務ピンポイント解説 【第3回】「マンション購入時に気をつけたい「50㎡の“壁”」」
皆さんはマンションを購入する際に、何を重視するでしょうか?
様々な要素がありますが、注意したいポイントに「床面積」があります。
なぜなら、「床面積が50㎡以上」か否かによって、次の各種の税制上の特例が受けられるかどうかが決まってしまうからです。
〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第11話】「受益者等のいない信託」
「どこがおかしいんだ?」 田中統括官はナイフを使って丁寧にハンバーグを切りながら尋ねた。
「ええ・・・特に受益者等のいない信託のケースなんですけど・・・」
谷垣調査官は豆腐の入ったみそ汁を啜りながら答える。
「統括官もご存じのように、受益者等がいない信託は、受託者に課税するということになっているでしょう?」
税務ピンポイント解説 【第2回】「「花押」~遺言書の効力」
自筆証書遺言には、全文、氏名・日付の自書に加え、「押印」が必要です(民法968条1項)。この押印の要件につき、最高裁で新たな判断が示されました(最判平28.6.3)。
本件では、父親から遺贈を受けたと主張する次男が、長男・三男に対して土地所有権の返還を求めました。85歳で死亡した父親は、遺言書に押印をせず、手書きで「花押」を記していました。
〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第10話】「借地権の評価」
「弁護士からよく『税法上の借地権の評価はなかなか理解できない』と聞くのですが、田中統括官はどう思われますか?」
谷垣調査官が田中統括官の席に近づいて尋ねた。
今は昼休みで、資産課税第三部門には2人しかいない。
「借地権の評価のどこが理解できないんだ?」
実務家による実務家のためのブックガイド -No.2- 太田哲三 著『固定資産会計』
日々研鑽を積まれている会計士諸氏は、太田哲三の『固定資産会計』(昭和26年、国元書房。同書は中央経済社からも発刊されている)を読んでみてはいかがか。発刊からだいぶ経つので、古書店で入手するか、図書館などで借りることになると思われるが。