〔会計不正調査報告書を読む〕 【第66回】KISCO株式会社「特別調査委員会調査報告書(平成29年11月10日付)」
本件取引担当者が、中国販売先に確認したところ、いずれもKISCOの売掛債権の存在を否定し、契約書等の押印が虚偽のものであるという主張がなされた。こうした事実から、KISCOは、本件取引が架空取引に基づく資金循環であるとの強い疑義を有するに至ったため、6月27日付で特別調査委員会を設置して、調査を開始した。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第65回】藤倉化成株式会社「特別調査委員会調査報告書(平成29年11月10日付)」
6月22日、ATT株式会社(以下「ATT」と略称する)社長から、ATTとの取引が循環取引であった旨告白する文書がメールで届いたことが、翌23日に、藤光樹脂から藤倉化成に伝達され、架空取引で多額の被害が発生した蓋然性が強いことから、藤倉化成は社内に特別調査委員会を設置し、調査を開始した。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第64回】株式会社光・彩(旧社名:株式会社光彩工芸)「内部調査委員会調査報告書(平成29年9月25日付)」
光彩は、平成29年7月27日、東京国税局による税務調査の初日に、光彩の経理責任者(以下「調査対象者」という)が多額の現金を横領していることについて、国税局担当者より示唆がなされたため、直ちに社内調査を開始するとともに、8月18日において内部調査委員会(以下「調査委員会」という)を設置した。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第63回】株式会社AKIBAホールディングス「第三者委員会調査報告書(平成29年7月28日付)」
AHDは、平成29年4月12日、iconic社取締役より、iconic社からA1社への支払が架空発注によるものである旨の内部通報を受け、社内調査を行ったところ、元取締役甲がA1社を使っての資金を不正に利得した疑いがあること、また、元取締役甲が、A1社以外の会社を利用した不正取引も行っていた疑いがあることを認知した。
そのため、AHDは、より厳密な調査を行うとともに、調査の客観性及び信頼性を高めるため、平成29年5月26日、利害関係のない公認会計士及び弁護士による第三者委員会を設置した。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第62回】株式会社郷鉄工所 「第三者委員会調査報告書(平成29年6月23日付)」 「追加調査に対する第三者委員会中間報告書(平成29年8月8日付)」
6月23日に公表された第三者委員会調査報告書(以下、5月31日に設置された第三者委員会を「第一次第三者委員会」、6月23日に公表された調査報告書を「第一次報告書」とそれぞれ略称する)によれば、郷鉄工所は、平成28年8月に、会計監査人である監査法人アリアから、「金融機関以外からの資金調達における不適切な手形の振出や売上の計上に関する不適切な会計処理について指摘を受けたことを契機として内部調査を開始した」ということであり、その後、「外部の公正中立かつ独立した第三者委員会に事実関係の調査等を委ねることにより、迅速に事実関係を明らかにすることが不可欠であると判断した」ため、第一次第三者委員会が設置され、「X社案件」、「Y社案件」に関する調査が実施された。
〔判決からみた〕会計不正事件における当事者の損害賠償責任 【第6回】「コーポレートガバナンスと社外取締役・社外監査役」~まとめに代えて~
本連載では、複数の判決を比較しながら、有価証券報告書虚偽記載により損害賠償請求訴訟を提起された監査役、取締役、会計監査人、引受証券会社の責任について、裁判所の判断を検討してきた。
判決の言い渡し時期が異なるため、単純な比較はできないものの、取締役や監査役による、粉飾決算の防止や早期発見に対する株主などのステークホルダーの期待の高まりに呼応するかのように、裁判所の視線も厳しさを増しているように感じられるところである(たとえば、架空循環取引事件などについては、アイ・エックス・アイ事件の発覚後、内部監査部門や会計監査人に課される注意義務のレベルが一気に高くなっている)。
最終回となる本稿では、こうした株主等の期待に応えるために、社外取締役・社外監査役が果たすべきコーポレートガバナンスについて、最近の動向を紹介して、連載を締め括りたい。
〔判決からみた〕会計不正事件における当事者の損害賠償責任 【第5回】「「引受証券会社」の損害賠償責任」
第5回目となる本稿では、上場申請にあたって審査を行った引受証券会社の責任について、【第1回】で取り上げた株式会社エフオーアイ(以下「FOI社」と略称する)の会計不正により損害を受けた個人株主らを原告とする損害賠償請求事件における、東京地方裁判所の判断を詳細に検討することとしたい。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第61回】富士フイルムホールディングス株式会社「第三者委員会調査報告書(平成29年6月10日付)」
富士フイルムホールディングス株式会社(以下「FH」と略称する)は、1934(昭和9)年設立。2016年10月1日付で、富士写真フイルム株式会社から商号変更して、持株会社へ移行。傘下に「イメージングソリューション」「インフォメーションソリューション」事業の中核会社である富士フイルム株式会社(以下「FF」と略称する)、「ドキュメントソリューション」事業の中核会社である富士ゼロックス株式会社(以下「FX」と略称する)をはじめ、多数の連結子会社を有する。
〔判決からみた〕会計不正事件における当事者の損害賠償責任 【第4回】「「会計監査人」の損害賠償責任」
本稿では、監査報告書において無限定適正意見を表明してきた会計監査人を被告として、株主らがその損害賠償責任を追及した2つの事件の判決を検討するかたちで、裁判所の判断の過程を考えてみたい。
取り上げる判決は、【第2回】【第3回】に引き続きニイウスコー事件第1審判決(東京地方裁判所平成26年12月25日判決)と、アイ・エックス・アイ事件第1審判決(大阪地方裁判所平成24年3月23日判決)である。