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[無料公開中]〔会計不正調査報告書を読む〕 【第73回】株式会社ドミー「第三者委員会調査報告書(要約版)(平成30年4月20日付)」

筆者:米澤 勝

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〔会計不正調査報告書を読む〕

【第73回】

株式会社ドミー

「第三者委員会調査報告書(要約版)(平成30年4月20日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【第三者委員会の概要】

〔適時開示〕

〔第三者委員会〕

《中間報告書提出まで》

【委員長】

神谷 明文(弁護士)

【委 員】

都築 敏(公認会計士)

山崎 圭(弁護士)

他に、調査補助者として、杉原浩介(弁護士)、渡邊海太(弁護士)、橋渡徹(公認会計士・税理士)、浅井貞睛(弁護士)が参加している。

《最終報告書提出時》

【委員長】

神谷 明文(弁護士)

【委 員】

山崎 圭(弁護士)

加藤 大史(弁護士、公認会計士)

倉橋 博文(弁護士)

高野 哲也(弁護士)

加藤 正憲(公認会計士)

他に、調査補助者として、杉原浩介(弁護士)、渡邊海太(弁護士)、浅井貞睛(弁護士)、矢田悠(弁護士・公認不正検査士)、番匠史人(弁護士)、丹羽大輔(弁護士)、今井政介(弁護士)が参加している。

〔調査期間〕

2018(平成30)年1月12日から2018(平成30)年4月19日まで

〔調査の目的〕

① 食品第二事業部における仕入先からのリベート・協賛金の会計処理に関し、一部の店舗に不適切な傾斜配賦処理が行われていたことに関する事実関係の調査及び原因究明

② その他同種事項の有無の調査

③ 再発防止策の検討・提言

④ その他、第三者委員会が必要と認めた事項

〔適時開示(調査結果)〕

 

【株式会社ドミーの概要】

株式会社ドミー(以下「ドミー」と略称する)は、愛知県三河地方を中心に地域密着型スーパーマーケットを営む。創業は1913(大正2)年、会社設立は1941(昭和16)年。連結売上高33,638百万円、経常利益247百万円、店舗数37、従業員数1,483名(数字はいずれも平成29年5月期)。本店所在地は愛知県岡崎市。名古屋証券取引所上場(2018年3月27日付で上場廃止)。

 

【調査報告書の概要】

1 調査に至る経緯

ドミーは、平成29年12月28日に、会計監査人である新日本有限責任監査法人(以下「会計監査人」という)から、第77期(平成30年5月期)において、減損の懸念がある店舗となっていた4店舗に計上されたリベート及び協賛金について、仕入先からのリベート・協賛金を恣意的に傾斜配賦しており、この事実の解明には社外の有識者からなる調査委員会による調査が必要であるとの指摘を受けて、平成30年1月12日、第三者委員会を設置した。

2 中間報告書の概要

第三者委員会による調査の結果、減損懸念店舗に対するリベート傾斜配賦には、当初問題となった食品第二事業部のみならず、食品第一事業部でも行われていたこと、それ以外にも、新聞の折込みチラシ費用の配賦にも減損懸念店舗の負担を軽くする裁量の余地があること、従業員に対する社内販売による売上高を減損懸念店舗で計上させていたこと、本社で計上されている人件費の各店舗への配賦方法に関する疑義が会計監査人から指摘されたことなど、減損懸念店舗の損益を好転させるための恣意的な費用配賦が発覚した。

そのため、第三者委員会は、「短期間の調査では、全容解明に至らない」として、次のように結論して、中間報告書を締め括った。

以上のとおり、ドミーの調査を行う中で、ドミーで行われている減損回避のための不正行為は、多岐に渡っており、根が深いものであることが判明した。また、決算修正を行うにあたり、最低、過去8期分の各費用に関する適正さを確認する必要がある。

そのため、第三者委員会の委員と補助者による調査だけでは、全容解明するには限界があり、不正会計の調査を専門に行う調査会社等に依頼したうえで、さらなる調査を行う必要がある。

3 減損懸念店舗に対する減損回避のための施策

減損会計基準の適用により、2期連続で損益がマイナスとなるなどして減損の対象となった店舗については減損損失を計上しなければならなかったことが、ドミーの損益に大きな影響を及ぼすこととなった。そこで、ドミーの役職員は、営業努力によっても損益がマイナスとなることが避けられなかった店舗(減損懸念店舗)について、減損を回避するために、リベートを恣意的に傾斜配賦する等の不適切な会計処理を行い、個別の店舗での減損の発生を極力回避するようになった。

このような不適切な会計処理は、遅くとも第69期(平成22年5月期)以降、継続して行われていたが、第71期(平成24年5月期)の決算直前に、会計監査人から、各店舗へのリベートの配賦は、担当者が恣意的に特定の店舗に配賦するのではなく、合理的なルールに基づいて配賦するべきであるとの指摘があり、以降はリベートを恣意的に配賦することが困難となった。

初めて店舗に係る減損損失を計上することとなった第71期(平成24年5月期)以降、経営陣は、減損懸念店舗の中から、減損回避の可能性や減損となったときの影響度等を加味して、特に重点的に対策を採るべき店舗(以下「強化対策店舗」という)を複数選定し、強化対策店舗のそれぞれについて担当する役員を決め、当該担当役員のリーダーシップの下で、減損を回避するための対策を採るという施策を実施することとした。

しかし、通常の営業努力により収益を改善しようとしても限界があり、数値目標を達成するためには、営業努力を超えた方法を取らざるを得ない状況も生じたことから、当該店舗に課せられた数値目標を達成しなければならないというプレッシャーの中で、主として強化対策店舗やこれに準じる不採算店舗の役職員が、減損回避策の一環とし不適切な会計処理を行うに至ったものであると、第三者委員会はその動機を解明している。

4 不適切な会計処理の内容

報告書によれば、強化対策店舗の損益改善のための不適切な会計処理は、以下のとおり、多岐な手法が用いられている。

各個別の店舗の損益に与える影響額については、リベートの傾斜配賦や人件費の本社負担のように、店舗当たり年間500万円から1,000万円を超える損益調整となった処理から、社内販売による売上の付替えのように店舗当たり年間数千円から数十万円といった規模まで、かなり差がある。

複雑で多岐にわたる損益調整の手法からは、ドミー担当者が、あらゆる手を尽くして、強化対策店舗の減損計上を阻止しようとした形跡がうかがえるが、その甲斐あって、この間、ドミーでは店舗の減損による損失は計上されなかった。

(1) リベートの傾斜配賦

ドミーでは、第71期(平成24年5月期)における会計監査人からの指摘以降、リベートが「特定の店舗に紐づくもの」でない限り、本社の仕入高にマイナス計上した後、各店舗の売上高に応じて配賦するルールを導入していたが、導入以降についても、ルールに違反した又はこれを潜脱した、強化対策店舗等へのリベートの恣意的な傾斜配賦を継続していた。

(2) 振替修正

ドミーでは、各店舗間における在庫商品の振替えが行われていたが、商品の振替えルールが確立されておらず、特に振替先の店舗の仕入原価については、商品の仕入・発注を担当するマーチャンダイザー(MD)補佐・エリアチーフ(所属する担当地区の店舗の支援・指導等を行うと同時に本社と店舗との橋渡しの役割が期待される役職をいう)や振替元の店舗の従業員等が、自らの判断又は各商品部長・地区長等と相談の上で、その度ごとに任意の金額を設定して振替えを行っていた。

そのため、個別の店舗での減損を回避する等の目的で、強化対策店舗等から他の店舗に在庫商品を振り替える際、振替先となる店舗の仕入原価を、振替元となる強化対策店舗等の仕入原価よりも高く設定し、振替元である強化対策店舗等に利益が残るようにしていた。

(3) 仮装仕入・振替処理

食品第二事業部では、個別の店舗での減損を回避する等の目的で、高値入商品(原価率が低く、利益率が高い商品)を対象に、実際には各店舗において仕入れたにもかかわらず、あたかも強化対策店舗において仕入れたかのように仮装した上で、伝票上、仕入原価に一定の利益を上乗せした金額で他店に振り替えることで、強化対策店舗に利益を計上していた。

仕入原価を高くして在庫商品を他店に振り替える点で上記(2)と同様であるが、本件については、単なる伝票上の処理により行われたもので、実際の商品の移動を伴っていない点で別の類型であると、第三者委員会は判断している。

(4) 加工センターからの仕入原価の調整

ドミーでは、商品を加工センターから店舗に仕入れる際、各商品部のMDが店舗の仕入原価を設定しており、店舗の仕入原価は、同一の時期に仕入れた同一の商品であれば、合理的な理由がない限り、店舗間で差を設けることなく一律とすべきであるところを、強化対策店舗等の商品の仕入原価を、何ら合理的な理由なく、他の店舗の仕入原価よりも低い金額に設定していたことが、第三者委員会による調査で判明している。

(5) 本社の職員を店舗で稼働させた場合の人件費の会計処理

ドミーにおける本社の職員であるエリアチーフの人件費は、本社の職員ではあるものの、本来、各人の各店舗への勤務実態に応じて一部は各店舗の人件費として計上されるべきであるが、すべて本社に計上されていたため、エリアチーフの勤務実態がある店舗では利益の過大計上となり、本社では利益の過少計上となっていた。

第三者委員会は、こうした人件費の計上のうち、食品第一事業部では、減損回避を意図して行われたものであるとは認められなかったとしながら、食品第二事業部では、強化対策店舗等の従業員を削減するとともに、その穴を埋めるため、強化対策店舗等を母店とするエリアチーフを配置し、当該エリアチーフが勤務時間の大半を当該母店(強化対策店舗等)において勤務することにより、店舗の人件費を削減していたとして、減損回避策としてのエリアチーフ制度の利用を認定している。

(6) 広告宣伝費の付替え

ドミーでは、複数の店舗に共通する内容の折込チラシを作成し配布する場合に発生する広告宣伝費について、各店舗の商圏を参考に、配布先である世帯を各店舗に対応させる形でグルーピングし、各店舗分の折込チラシの部数を算出した上で、当該部数を記載した「部数表」と呼ばれる一覧表を作成し、部数表に記載された部数に応じて広告宣伝費を按分して配賦することにしていた。

ところが、第三者委員会の調査において、広告宣伝費を各店舗に按分して配賦する際に、部数表上、一部の強化対策店舗等の折込チラシの部数をゼロにし又は減少させると同時に、その分他の店舗の部数を増加させるといった操作を行うことにより、特定の店舗が負担すべき広告宣伝費を他の店舗に付け替える処理を行っていたことが判明した。

なお、この不適切な費用の付替えについては、第72期(平成25年5月期)の決算手続を進める過程で、会計監査人から、恣意的に基準を変えて経費を配賦することは許されない旨の指摘があったにもかかわらず、規模は縮小されたものの、その後も強化対策店舗の一部について広告宣伝費の他店への付替えが継続されていた。

(7) その他の不適切な会計処理

上記以外にも、第三者委員会は、強化対策店舗の損益に与える影響は小さいものの、以下の会計処理が不適切であるとの指摘を行っている。

 加工利益の不適切な会計処理

通常加工センターで行う野菜の袋詰め等の加工作業を、強化対策店舗等での減損を回避する等の目的で、店舗の従業員ではない本社所属の人員を動員し、当該強化対策店舗等において、野菜の袋詰め等の加工作業を実施し、加工費相当額の利益を当該強化対策店舗等に直接計上していた。

 無償提供商品の利益計上

仕入条件を達成した場合には、仕入先から無償で商品の提供を受けるという合意に基づき、仕入条件を達成して得られた提供商品を販売することにより得られた利益を、強化対策店舗においてのみ計上する等、合理性を欠く方法で計上していた。

 社内販売による売上の付替え

従業員向けの社内販売に係る売上高・利益を、個別の店舗での減損を回避する等の目的で、強化対策店舗等の売上高・利益として計上していた。

 売価還元法を利用した益出し処理

食品第一事業部第3商品部のMDは、一部の棚卸資産について、実需に基づかない店舗移動を恣意的に行い、売価還元法の適用による益出し処理をしていた。

具体的には、加工前の原材料(ちりめん)を、期末直前のタイミングで、加工センターから大型冷蔵庫のある店舗に移動させ、一時的に保管することにより、決算時に当該原材料(ちりめん)について、店舗で販売される商品と同じ評価グループに含めて、売価還元法を適用することで益出し処理を行った後、翌期に当該店舗から加工センターに当該原材料(ちりめん)を戻していた。

この処理を実行した従業員によれば、事業部全体の粗利率目標達成のために行われていたとのことであり、減損回避を意図して行われたものとは認められなかった。

5 関係者の関与・責任

(1) リベートの傾斜配分などに直接関与した取締役

第三者委員会を設置して調査を行うこととなった不適切なリベートの傾斜配賦は、本調査対象期間である第69期(平成22年5月期)から会計監査人の指摘を受けた第71期(平成24年5月期)までは、当時の営業本部長であった元専務取締役の半田直之氏(以下「半田元専務」と略称する)の主導の下、同人からの対象店舗やリベート金額を含む具体的指示により、食品第一事業部長である常務取締役富田博隆氏(以下「富田常務」と略称する)、当時の食品第二事業部長であった常勤監査役山本恭二郎氏(以下「山本常勤監査役」と略称する)が、各商品部長・MDにおいて単独で又はそれぞれ指示・相談の上で行われてきた。

なお、本期間のリベート傾斜配賦は配賦ルール導入前のものであり、遵守すべき会計処理のルールを認識しながら敢えてこれに反して行われたものではなかった。

半田元専務の退任した第72期(平成25年5月期)以降について、富田常務は、食品第一事業部におけるリベートの傾斜配賦への関与を否定している。

一方、食品第二事業部長に就任した専務取締役梶川貴光氏(以下「梶川専務」と略称する)は、具体的に本件配賦ルールに違反したリベート傾斜配賦を行うよう指示した事実は認められなかったが、食品第二事業部に所属する自らの部下らが本件配賦ルールに違反してリベートを減損懸念店舗等に傾斜配賦することを認識し、かつ容認していたと、第三者委員会は認定した。

(2) 代表取締役会長

代表取締役会長である梶川志郎氏(以下「梶川会長」と略称する)は、ドミーの利益の追求に熱心であり、毎月1回開催される取締役会や毎週1回開催される全体会議において、各店舗の経営状況や予算の達成状況を確認し、各店舗における売上高や利益率を向上させるよう、経営陣をはじめとする出席役職員に指導や叱咤激励を行ってきた。

特に店舗に係る減損損失を計上した翌期である第72期(平成25年5月期)以降の取締役会や全体会議においては、強化対策店舗の担当役員に、店舗損益の改善による減損の回避を強く求めていた。

第三者委員会は、ドミーの役職員らは、梶川会長の要請に応えようと利益の追求を最優先に考えて必死に営業努力を試みるのであるが、こうした必死の営業努力によっても減損の回避という目的が達成できない場合に、本件不適切会計処理を行うに至ったものであると断じた。

そのうえで、梶川会長の役職員に対する影響力の大きさに鑑みると、梶川会長から役職員に対して、コンプライアンスの徹底を指示していれば、役職員がその指示に反する行為に及んだり、黙認ないし放置することは考えにくく、本件不適切会計処理を抑止し、又は早期に発見できた可能性は高いと考えられるとして、第三者委員会は、梶川会長が、企業としての利益を追求するという強い意向に比して、コンプライアンスに対する意識が不十分であったことが、本件不適切会計処理を引き起こした一因であると言わざるを得ないと判断した。

(3) 代表取締役社長

代表取締役社長である梶川勇次氏(以下「梶川社長」と略称する)は、創業家一族として、梶川会長とともに代表取締役を務め、ドミーの役職員に対する強い影響力を及ぼし得る立場にあった。

第三者委員会は、梶川社長が、利益の追求を志向する梶川会長に対して、コンプライアンスの徹底を進言することなく、代表取締役として、コンプライアンスを徹底する姿勢を全職員に打ち出すこともせず、取締役会において、コンプライアンスの遵守状況の報告を求めたり、未然防止策の検討等を行ったりした形跡も認められないことは、梶川会長に対する進言が難しかったことを斟酌しても、経営トップとして、コンプライアンスに対する意識は十分とはいえないと断じている。

6 発生原因の概要

第三者委員会の調査報告書に基づく発生原因の概要は以下のとおりである。

(1) 経営トップらのコンプライアンスに対する意識の不十分さ

(2) 減損回避のための経営陣及び幹部からの厳しいプレッシャー

(3) 会計処理に関する社内ルールの整備及び運用上の問題

(4) 会計リテラシーを含む従業員のコンプライアンスに対する意識の不足

(5) 内部統制の機能不全

(6) 内部通報制度の活用・周知の不十分

7 再発防止策の提言

第三者委員会は、調査報告書において、不適切な会計処理の発生原因に関して、それぞれの原因の除去及び是正を目的とする再発防止策について、以下のとおり提言している。

(1) 関与等した役職員の責任の自覚

(2) 責任の明確化

(3) 企業風土の改革

(4) コンプライアンス重視の経営姿勢と経営トップによるメッセージの発信

(5) 担当役員制度の再検討

(6) 財務会計・管理会計の重要性についての認識

(7) 適切な会計ルールの設定・運用

(8) コンプライアンス体制の見直しとコンプライアンス研修の推進

(9) 内部統制機能の強化

(10) 内部通報制度の実効性の確保

 

【調査報告書の特徴】

3ヶ月余りにわたる調査の結果、4月20日、ドミー第三者委員会は70ページに及ぶ調査報告書を提出した。しかし、ドミーは、平成30年5月期第2四半期報告書を、延長承認後の提出期限の経過後8営業日以内(平成30年2月26日まで)に提出できなかったため、2月26日をもって整理銘柄に指定され、3月27日付で上場廃止となってしまった。

第三者委員会による調査報告書は、数千円の不正な利益の付替えまでをも指摘する非常に細かい調査に基づくものであり、調査結果についても、よく分析がなされていると評価できる内容である。

しかし、おそらくは上場維持を望んでいたと思われる株主を含む多くのステークホルダーにとって、調査が長引いてしまったことにより、会計監査が終わらず、結果的に半期報告書が提出できないことを理由に上場廃止という流れは、どのように映っているのであろうか。

1 営業不振店舗の減損回避のための損益調整

ドミーが上場会社であり、減損会計を導入している以上、2期連続して赤字となるなどの営業不振店舗については減損を行い、損失を計上するというルールを遵守しなければならないことは言うまでもないことである。

ところが、経常利益が2億円台から4億円程度で推移しているドミーにとって、複数の減損懸念店舗を抱え、1店舗あたり、数千万円から億単位の減損損失を計上することは、赤字転落につながりかねない事態であった。

こうしたことから、梶川会長のもと、強化対策店舗に担当役員を配置して、損益のテコ入れを図ったことが、結果的には裏目に出てしまった。不採算店舗を廃止して、利益の出る店舗に経営資源を集中するという選択肢は、地域密着型で、地産地消を標榜し、ドミナントエリア戦略(※)を掲げるドミーにとっては、なかったのかもしれない。

(※) 「ドミーレポート第76期(平成29年5月期)」には、以下のような説明がある。

現在、ドミーは愛知県下に36店舗を出店しています。出店戦略の基本は、その地域で顧客シェアを拡大していくドミナントエリアの形成にあります。岡崎市にある岡崎食品加工センターから配送トラックで1時間圏内の地域で、人口2万5千~3万人の商圏に毎年1~2店舗の割合で出店していく方針です。ドミナントエリアの形成によって経営効率を高める一方、コスト削減の成果を商品価格に還元することが可能となり、お客様により一層ご満足していただくことを目指しています。

2 減損会計におけるグルーピング

調査報告書には言及はないが、上記のドミナントエリア戦略をとるドミーにとって、「小売業界では、通常、店舗別に投資意思決定を行う」ことから、「1店舗を1資産グループとして、減損損失の認識・測定を行う単位とする」という判断が、果たして、減損会計の適用上、適切であったのかどうかという疑念がある。

不採算店舗も含めて、地域に存する店舗全体の効率化・コスト削減を含めるという経営方針からは、同地域の複数店舗をまとめて資産のグルーピングを行い、その中で、減損損失計上の可否を判断するという議論を、会計監査人との間でできなかったのだろうか。

3 会計監査人の異動

ドミーは、5月18日、「会計監査人の異動及び一時会計監査人の選任に関するお知らせ」というリリースを公表し、会計監査人である新日本有限責任監査法人との間の「監査及び四半期レビュー契約」を合意解除して、一時会計監査人に監査法人ハイビスカスを選任したことを発表した。

異動理由については、「新日本有限責任監査法人と協議した結果」としか記載がないものの、過年度有価証券報告書の訂正については、「監査法人ハイビスカスの監査の下、第三者委員会の調査報告書を踏まえて、過年度の有価証券報告書等に必要な訂正を行う予定です」との記載がある。

4 ドミーによる再発防止策

ドミーが5月28日に公表した「当社における不適切な会計処理に対する再発防止策等に関するお知らせ」では、第三者委員会による提言に沿った形で、10項目の再発防止策が策定されている。

なかでも、「責任の明確化」として、梶川会長が代表取締役会長及び取締役を辞任して、相談役をして信頼回復に尽力すること、不適切な会計処理を容認していた梶川専務及び富田常務が、それぞれ取締役を辞任して、子会社へ出向することが明記されている。

(了)

「会計不正調査報告書を読む」は、不定期の掲載となります。

連載目次

会計不正調査報告書を読む

第1回~第70回 ※クリックするとご覧いただけます。

第71回~

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筆者紹介

  • 米澤 勝

    (よねざわ・まさる)

    税理士・公認不正検査士(CFE)

    1997年12月 税理士試験合格
    1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
    1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
    2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
    2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

    【著書】

    ・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

    ・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

    ・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

    【寄稿】

    ・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

    ・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

    【セミナー・講演等】

    一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
    「会計不正の早期発見
    ――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

    公益財団法人日本監査役協会主催
    情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

    株式会社プロフェッションネットワーク主催
    「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

     

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