山本守之の法人税“一刀両断” 【第61回】「所得課税とデジタル課税」
法人は解散、合併等をしない限りは永続的に存在するものです。したがって、法人がどれだけの利潤を得たかを最終的に測定するためには、設立してから解散、合併までの期間について計算をしてみなければ分かるものではありません。
しかし、企業利潤の計算を解散又は合併時まで待っていたのでは、企業と投資家との関係は成立しません。投資家にしてみれば、投資に対する利益の分配(配当)を期待しているでしょうし、その分配の基準となる利益の計算が長期に及べば、配当を受けられる時期の見込みもつかないことになります。
谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第16回】「租税法律主義と実質主義との相克」-税法の目的論的解釈の過形成⑦-
前回の冒頭で予告しておいたように、今回は、税法の目的論的解釈について、納税者に有利な「過形成」を検討することにするが、その検討の素材とするのは、延滞税の納付義務の不存在を確認した最判平成26年12月12日訟月61巻5号1073頁(以下「本判決」という)である。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例76(贈与税)】 「「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除」を適用して申告したが、申告期限までの担保提供を失念したため、納税猶予が認められなかった事例」
平成X9年分の贈与税申告において、「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除」を適用して申告したが、申告期限までの担保提供を失念したため、納税猶予が認められなかった。
これにより、納税猶予が受けられた贈与税額につき損害が発生したとして賠償請求を受けたものである。
〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第40回】「別表6(24) 中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」
この別表は、いわゆる中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)のうち、税額控除を適用する場合に記載する。
本制度は、青色申告を提出する法人が、指定期間内(平成29年(2017年)4月1日から令和3年(2021年)3月31日までの間(※2))に、中小企業等経営強化法の認定を受けた「経営力向上計画」に基づいて、一定の設備(以下「特定経営力向上設備等」という)を新規取得し、指定事業の用に供したときは、その事業の用に供した日を含む事業年度において、即時償却又は取得価額の10%もしくは7%(※3)の税額控除ができる制度である。
平成31年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第5回】「中小企業者向け租税特別措置における大企業の範囲の見直し」
租税特別措置法では、中小企業者向け租税特別措置が設けられている。
例えば、研究開発税制や所得拡大促進税制について、中小企業者向けの措置は、適用要件が緩和され、税額控除額も拡大される。また、中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制、商業・サービス業活性化税制等については中小企業者のみに適用される。
国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第31回】「税制適格ストックオプションの外国での行使益は日本で課税されるか」
私は以前、日本の会社の役員として日本で経営に従事し、その際に税制適格ストックオプションの付与を受け、条件が満たされた時に権利行使して株式を取得しました。その後、X国に出国し、株式を売却しました。
X国と日本の間では租税条約が結ばれており、X国の居住者が日本の会社の株式を売却したとしても、日本での課税権は生じないとされています。このため、私の場合、日本で所得税の申告をしなくても問題ないでしょうか。
措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第12回】「「寄附者の税負担を不当に減少させないこと」とは」
現物寄附を行った際、取得価額と時価との差額についてのみなし譲渡課税が非課税となるための条件として、現物寄附を受領する公益法人等への寄附が「寄附者の所得税の負担を不当に減少させ、又は寄附者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税もしくは贈与税の負担を不当に減少させる結果とならないと認められること」が課されています。
この「寄附者の所得税の負担を不当に減少させ、又は寄附者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税もしくは贈与税の負担を不当に減少させる結果とならないと認められること」とは、具体的にどういうことですか。
収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第8回】
法人税法22条2項は、無償取引に係る収益の額も益金の額に算入する旨を定めている。その趣旨や実質的な根拠については種々の議論がある。有力な学説は、「収益とは、外部からの経済的価値の流入であり、無償取引の場合には経済的価値の流入がそもそも存在しないことにかんがみると、この規定は、正常な対価で取引を行った者との間の負担の公平を維持し、同時に法人間の競争中立性を確保するために、無償取引からも収益が生ずることを擬制した創設的規定である」(適正所得算出説)と解している(金子宏『租税法〔第23版〕』338頁(弘文堂2019))。
《速報解説》 国税庁、働き方改革の推進に資する減価償却資産の中小企業経営強化税制の適用に関する質疑応答事例を公表~大綱では「特定経営力向上設備等の範囲の明確化」と記載~
今年度の税制改正で適用期限が2021年3月31日まで延長された「中小企業経営強化税制」(措法42の12の4)は、税制改正大綱において「特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化を行う」旨が明記されていた。