雇用促進税制・所得拡大促進税制の実務 ~要件・手続の確認から両制度の適用比較まで~ 【第1回】「雇用促進税制の適用要件」
最近の雇用失業情勢を概観すると、新規求人倍率、有効求人倍率、完全失業率などの指標については平成21年度から平成23年度にかけて改善がみられ、平成24年度は比較的安定している状況にあると見受けられる(『最近の雇用失業情勢(平成25年2月分)』東京都労働局)。
雇用対策は経済成長戦略上も重要な課題である。税制上の措置としても、平成23年度税制改正において「雇用促進税制」が創設され、平成25年度税制改正においては「所得拡大促進税制」が創設されたほか、「雇用促進税制」の拡充が図られている。
そこでこの連載では、雇用対策のための2つの税制である「雇用促進税制」及び「所得拡大促進税制」の実務について取り上げることとし、まずは雇用促進税制の概要及び適用要件についての解説を行う。
建物(旧定率法)を合併により受け入れた場合の減価償却
当社(A社:3月決算法人)は、平成25年4月1日にB社を被合併法人とする適格吸収合併を行いました。B社から引き継いだ資産の中には次の建物があり、B社はこの建物を旧定率法により償却計算を行っていました。
当社は、建物の償却方法は定額法を選定していますが、引き継いだ建物の償却計算はどのように行えばよいですか。
小説 『法人課税第三部門にて。』 【第5話】「修正申告の勧奨(その1)」
「そうか・・・修正申告をしないのか・・・」
田村上席調査官は、隣に座っている山口調査官の話を聞きながら、腕を組む。
「非違事項は、交際費と棚卸資産だけなんですが・・・」
山口調査官は困った顔をしている。
山口調査官は、先週から3日間、太田工業の実地調査をした後、「調査結果の内容の説明等」を納税者に行ったのである。
〔平成25年4月1日以後開始事業年度から適用〕 過大支払利子税制─企業戦略への影響と対策─ 【第6回】「超過利子額の損金算入」
前回までの解説において、「関連者支払利子等の額」「控除対象受取利子等合計額」「関連者純支払利子等の額」「調整所得金額」及び「適用除外」に関して、その意義や算出方法等のポイントを確認してきた。これにより、本制度における「損金不算入額」の計算過程について解説を終えたこととなる。
今回は、本制度のもう一つの特徴である、翌年度以降の「超過利子額(損金不算入額の繰越額)の損金算入」について解説を行う。
租税争訟レポート 【第7回】法定外普通税の規定は地方税法違反で、無効〔納税者勝訴〕 (神奈川県臨時特例企業税通知処分等取消請求事件上告審判決)
本訴訟は、本条例に基づき特例企業税を課された原告(被控訴人、上告人)が、本条例は、法人事業税の課税標準である所得金額の計算上、欠損金額を繰越控除することを定めた地方税法の規定に違反し、違法・無効であると主張して争ったものである。
訴訟では、当事者双方から、行政法、租税法学者を中心とする多数の専門家の意見書が書証として提出され、納税者と神奈川県とのどちらを支持するかで、意見が分かれていた。裁判所の判断も、第一審である横浜地方裁判所は納税者の訴えを認め、東京高等裁判所が神奈川県の主張を認めていた。
本件は、そうした難しい争点に、最高裁判所が判断を示したものである。
法人税の解釈をめぐる論点整理 《寄附金》編 【第2回】
損失については、通常は「任意に」生じるものでないことから、寄附金には該当しない。例えば、貸し付けていた債権が債務者の資力の悪化によって回収不能になった場合には、その損失は「任意に」生じたものではなく、債権放棄をしたとしても、貸倒損失として損金算入が認められる。
これに対して、法人が特段の理由なくして、債権放棄、債務引受などの損失負担をする場合には、その損失は「任意に」生じたものであり、単なる利益の移転行為として寄附金に該当することになる。
このように、債権放棄等には、貸倒損失等として寄附金には該当しない場合と任意の利益移転として寄附金に該当する場合とがあり得ることになる。そこで、それらの区分が問題となる。
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載14〕 税額控除の対象となる試験研究費の範囲と税務調整
試験研究を行った場合の法人税額の特別控除は、大法人及び中小法人でも活用できる制度である。また、大法人は平成24年4月1日開始事業年度から青色欠損金の損金算入制限(法法57①)が適用され、青色欠損金額を有していても、課税所得が生じることがあるため、研究開発税制による税額控除により納税額を軽減することができる。
この税額控除の制度は、青色申告書を提出する法人の各事業年度において、その事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される試験研究費の額がある場合には、試験研究費の12%相当額をその法人のその事業年度の所得に対する法人税の額から控除することとされている(措法42の4①)。
《速報解説》 株式保有特定会社に係る「財産評価基本通達」の一部改正(案)について
平成25年4月2日付で国税庁からパブリックコメント『「財産評価基本通達」の一部改正(案)に対する意見公募の手続の実施について』が発表された。
これは、平成25年2月28日の東京高裁判決を受けたもので、改正の概要は次の通りである。
monthly TAX views -No.3-「番号制度をどう税制に活用するか、これからの課題」
国民一人ひとりに住民基本台帳に基づく番号を割り振って、年金、医療、介護保険、福祉、労働保険、税務の6分野での活用する、番号制度(民主党政権下では「マイナンバー」と称した)導入の法律(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案)が成立しそうだ。
この法律は、昨年の通常国会に民主党政権が提出し、自民、公明、民主の3党で修正合意していたが、同年11月の衆院解散で廃案になったものである。
これにより、個人に、生涯変わらない番号が交付され、様々なサービスを受けることが可能になる。
わが国を除く先進諸国は、IT時代に不可欠な番号というツールを活用して、効果的で効率的な行政を展開しており、やっとわが国もその仲間入りしたということであろう。