法人税の解釈をめぐる論点整理 《寄附金》編 【第1回】
法人が対価性のない、あるいは対価性の乏しい行為をすることで、第三者に対して経済的な利益の移転がなされる場合がある。そのような利益の移転行為については、法人の事業に直接又は間接的に関連する場合と、間接的にも関連しない場合があり得るが、その境界は必ずしも明確でないといえる。
そこで、そのような利益の移転行為については、それが法人の事業と直接関連することが明らかな場合を除き、寄附金に該当するものとして、一定の基準によって損金算入限度額を定めて、その限度額の範囲内でのみ損金算入を認め、それを超える部分については損金算入を認めないものとされている(法法37①)。
〔平成25年4月1日以後開始事業年度から適用〕 過大支払利子税制─企業戦略への影響と対策─ 【第5回】「調整所得金額」及び「適用除外」
前回は、本制度による損金不算入額計算の第二段階である「控除対象受取利子等合計額」及び「関連者純支払利子等の額」に関して、確認すべきポイントを解説した。
今回は引き続き、損金不算入額計算の最終段階として、関連者純支払利子等の額と比較するための基準となる「調整所得金額」について解説を行うとともに、「損金不算入額」及び本制度の適用の対象外となる「適用除外」について併せて解説を行う。
企業不正と税務調査 【第5回】「経営者による不正」 (2)架空(水増し)人件費
架空の人件費の計上による裏金作り/所得隠しは、かつては一般的な脱税手法であったが、近年は、税務調査において露見する可能性が高いということが経営者に浸透したためか、報道される件数は減っている。
しかし、昨年夏、パチンコ業界大手のガイア社が、グループ全体で40億円の所得隠しがあり給与の水増しが行われていたという報道があり、業種・業態によっては、こうした裏金作り/所得隠しスキームは健在であることが裏づけられた。
組織再編税制における不確定概念 【第5回】「みなし配当と株式譲渡損の両建て」
受取配当等の益金不算入については、二重課税の排除を目的とした制度であるため、その制度趣旨に合致する範囲内においては、租税回避行為であると認定すべきではないと考えられる。
しかしながら、実務上、みなし配当と株式譲渡損が両建てになるケースも少なからず存在し、とりわけ、平成22年度税制改正によりグループ法人税制が導入される前においては問題とされていた。
本稿では、グループ法人税制が導入された後においても残されている問題点について解説を行う。
税務判例を読むための税法の学び方【7】 〔第3章〕法令間の矛盾抵触とそれを解決する原埋(その2)
形式的効力を同じくする法令間において、ある事柄について一般的に規定した法令がありながら、同じ事柄について特別の「事項、場合、対象、地域など」を限定してその一般的に規定した法令と異なる内容を規定した法令がある場合には、この両者は、一般法と特別法の関係にある(前者が一般法、後者が特別法)という。
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載13〕 従業員から役員になった場合の退職金計算の問題点【その2】
本誌 No.5(2013/2/7公開)に掲載した拙稿「従業員から役員になった場合の退職金計算の問題点」(以下「前回分」という)において、従業員が役員になった場合の退職金支給方法は様々なパターンが考えられるが、大きく分けると、以下の2つであることを示した。
【1】 役員退任時に、従業員分と役員分をまとめて払う場合(前回分参照)
【2】 従業員退任時に従業員分を、役員退任時に役員分を支給する場合
前回分では【1】について述べたが、今回は【2】について解説を行うこととする。前回分と併せてご覧いただきたい。
《速報解説》 商業・サービス業・農林水産業活性化税制の創設─平成25年度税制改正
平成25年1月29日に閣議決定した平成25年度税制改正大綱(本稿公開時点では改正法案が参議院にて審議中)において、中小企業活性化のために設備投資を促進する税制が創設された。
具体的には「商業・サービス業及び農林水産業を営む中小企業等の経営改善に向けた設備投資を促進するための税制措置の創設」という(改正法案では租税特別措置法42条の12の3)。
ここではその内容について解説する。
後発的事由による更正の請求と未分割財産
Q 父の2回目の命日に、母と私と兄と姉の4人は、協議によりその遺産分割を完了しました。法定申告期限までに相続税の申告書は提出済みですが、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の減額特例を適用したところで申告し直したいと思います。更正の請求は、いつまでにすればよいのでしょうか。
〔平成9年4月改正の事例を踏まえた〕 消費税率の引上げに伴う実務上の注意点 【第16回】税率変更の問題点(15) 「税込処理における消費税の転嫁に関する問題」
平成9年4月の税率改正時においても問題となった項目であるが、消費税につき税込価格を前提として事業を行っている事業者が1円単位まで徴収することが可能かどうかといった問題点がある。
今回の税率改正では、平成16年4月の総額表示義務規定の創設により、平成9年の改正時よりも価格の表示や設定につき厳密に取り扱われる可能性があり、注意が必要である。
この問題において、特に注意が必要な事業として、事業の性質上、消費税込みの対価の額を10円単位や100円単位で設定しなければならない事業者が考えられる。