さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第98回】「共有不動産に係る不動産所得と事務管理事件」~最判平成22年1月19日(集民233号1頁)~
共有者の1人が、共有不動産から生ずる賃料を全額自己の収入として所得税の額を過大に申告し、所得税や市県民税を過大に納付した場合、他の共有者のために事務管理は成立するか。
事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第63回】「M&Aによる第三者承継に向けた株式の集約」
私は、精密機器製造業を営む非上場会社L社を経営するAです。私も70歳を目前に控え、経営承継を強く意識するようになりましたが、私の親族の中には後継者として会社を任せられるものがいません。役員・従業員の中にもL社の経営を担ってもらえる人物は見当たらないため、M&Aによる第三者承継という形で事業承継を行いたいと考えています。
まだ金融機関やM&A仲介会社にも相談していない段階ですが、これから第三者承継を進めるにあたって懸念しているのは、親族や元従業員といった少数株主の存在です。彼らは私が会社を売却することに反対すると思いますし、M&Aが具体化しても株式を手放すことを容認しないかもしれません。
自分が買い手の立場であれば、オーナーの親族など少数株主が反対しているような会社を買いたいとは思えませんので、M&Aによる第三者承継が具体化する前に、少数株主から株式を買い戻しておきたいと考えています。まずは、私が少数株主から買い取るための相談から始めたいと思いますが、M&Aに反対する株主からも強制的に株式を取得できるような仕組みがあれば、ご提案いただけないでしょうか。
monthly TAX views -No.136-「子ども・子育て支援金はなぜ評判が悪いのか」
しかし、国民の評判は芳しくない。少子化対策には財源が必要で、それは国民も認識しているにもかかわらず、なぜこの制度はここまで不評なのか、課題や問題点をあらためて指摘してみたい。
マンション評価通達の内容と実務への影響 【第2回】
マンション評価通達に関しては、令和5年7月21日に(案)の段階でパブリックコメント(意見公募手続)が実施された。パブリックコメントは同年8月20日に締め切られ、その結果が同年10月6日に公表された。意見は102通寄せられ、うち98通がインターネット経由(電子政府総合窓口(e-Gov)の意見提出フォームを使用)である。
筆者自身もインターネットを通じて意見を提出しているが、その内容(国税庁により他の意見と適宜統合等されている)とそれに対する国税庁からの回答(考え方)を以下で対比させてみたい。
租税争訟レポート 【第73回】「相続税更正処分等取消請求事件(大阪地方裁判所令和4年4月14日判決)」
本件は、原告が、処分行政庁から令和2年11月30日付けで受けた更正処分及び賦課決定処分は、原告が相続分の譲渡によって取得した譲渡代金を相続税の課税対象とする点で法律の根拠に基づかずに課税するものであり、租税法律主義について定める憲法30条及び84条に反し違憲・違法であるなどと主張して、被告を相手に、本件各処分の取消しを求める事案である。
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第44回】
上記②(前回参照)は「資産の損害に基因して支払を受ける保険金や不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金」を非課税所得とするものである。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第41回】「所得税における為替差損益の具体的な算定方法」
預入れ及び払出しが随時可能な外貨預金の払出しに係る為替差損益の具体的算定方法について、所得税法は特段の定めを置いておりませんが、どのように算定すればよいのでしょうか。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例63】「個人間契約の貸付金を法人間契約に変更した場合の貸倒償却の是非」
一方で、最近受けた税務調査で1点解決していない事項があります。それは、わが社の代表取締役Yが取引先で飲食店業を営むZ社の代表者Aに対して行った貸付金債権につき、それをわが社とZ社間の貸付金に振り替えてから数年後、Z社がコロナ禍の業績不振により倒産したため、当該貸付金債権を償却し損金算入したことについての税務署との見解の相違です。Z社が倒産したのは客観的事実であることから、Z社に対する貸付金債権が回収不能となるのは当然であり、それを償却し損金算入することに何ら問題はないと思われるのですが、税務署の調査官は、当該貸付金は契約書の通り個人間のもので、わが社の損益には関係がないと主張します。これはどのように考えるべきなのでしょうか、教えてください。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第18回】「租税法律主義において信義則違反の主張はどう評価されるか」
本件調査担当職員は、原処分に係る調査において、請求人らの関与税理士に対して、本件貸付金債権の価額を、元本の価額である5,000万円として修正申告の慫慂に応じるのであれば、その利息の額である1,765万4,793円は課税しないと発言した。
このことは、請求人らに対する誤指導であり、当該発言が、調査の終了していない段階でされたことを含めて、原処分は信義則に反する違法な処分である。
谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第38回】「質問検査に関する租税権力関係説的構成と租税債務関係説的構成」-荒川民商事件・最決昭和48年7月10日刑集27巻7号1205頁-
前回までは、申告納税制度における各措置に関する判例として、納税者による第一次的確定権の行使及び第一次的確定義務の履行としての納税申告(谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」第11回2参照)に関する判例やこれに関連して加算税及び更正の請求に関する判例を取り上げ検討してきたが、今回からは、税務官庁による第二次的確定権の行使及び第二次的確定義務の履行としての課税処分(同第15回1参照)に関する判例を取り上げ検討することにする(その検討において重視する考え方に関連して、申告納税制度の体系的把握については同第11回2、それによる納税義務の確定に係る相互チェック構造については同第15回2参照)。