酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第39回】「法人税法にいう『法人』概念(その3)」~株主集合体説について考える~
大阪地裁平成22年12月17日判決(判時2126号28頁)は、実体法的観点から法人該当性を以下の2つの基準で判断すべき旨説示している。
① その構成員の個人財産とは区別された独自の財産を有すること(具体的には、当該事業体の財産につき構成員が直接の具体的な持分を有しておらず、かつ、当該事業体の名義により登記等の公示を行うことができること)。
② その名において契約等の法律行為を行い、その名において権利を有し義務を負うことができるという能力等を有すること。
包括的租税回避防止規定の理論と解釈 【第10回】「創設規定と確認規定④」
前回では、最高裁昭和45年7月16日判決の解説を行った。本稿では、広島高裁昭和43年3月27日判決の解説を行うこととする。
本判決は、役員からの貸付金に対する過大な利息の支払いが損金の額に算入することが認められるか否かについて争われた事件であるが、現在であれば、同族会社等の行為計算の否認によらずに否認されるべきものである。
特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用(法人税法57条の2)の取扱い ~「繰越欠損金の使用制限」が形式的に適用される事例の検討~ 【第2回】「欠損等法人の特定資産の譲渡等損失額の損金算入制限の取扱い・欠損等法人が組織再編を行う場合の取扱い」
欠損等法人については、繰越欠損金の使用制限だけではなく、特定資産の譲渡等損失額の損金算入制限も適用されることとなる。その点、組織再編税制と同様の仕組みとなっている。
〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第23回】「金銭又は有価証券の受取書④(相殺等に係る領収書)」
問 取引先との間で、売掛金を自己の買掛金と相殺する場合があります。この場合、領収書を作成し相手方に交付しますが、金銭の受取書に該当しますか。
また、売掛金の一部を前金で受け取った後、残金を領収する場合に交付する領収書の取扱いはどうなりますか。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第9回】「生命保険年金二重課税事件」~最判平成22年7月6日(民集64巻5号1277頁)~
今回紹介する判例は、Xが、B生命から一時払いでなく年金の形で受領することとした生命保険年金につき(Xは、一時払いと年金とを選択できた)、みなし相続財産であって非課税所得に該当するという前提で、所得金額に含めずに所得税の確定申告をしたところ、Y税務署長が、これは雑所得に該当するとして、更正処分等をしたという事案である。
最高裁は、結論として、Xが今回受け取った生命保険年金は非課税所得に該当するとして、更正処分等を取り消した。
monthly TAX views -No.38-「IBM、ヤフー、BEPSと租税回避」
本年2月18日、最高裁判所はIBM事件について、国の上告を不受理にする決定を行った。
周知のようにこの事件は、日本IBMの親会社(日本法人、中間会社)が、米国IBMから資金提供を受け、米国IBMの持つ日本IBM株を購入し、それを子会社の日本IBMが買い取り、自社株買いを活用して生じた譲渡損失を自社の利益と相殺することにより税負担の軽減を図った取引である。
特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用(法人税法57条の2)の取扱い~「繰越欠損金の使用制限」が形式的に適用される事例の検討~ 【第1回】「欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の取扱い」
繰越欠損金が使用できなくなる税制として、組織再編税制や連結納税制度以外に「特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用」(法法57の2)という規定があるのをご存じだろうか。
この規定は「休眠会社規制」と呼ばれており、繰越欠損金を持つ休眠会社を買ってきて、そこで新しい事業を開始して節税しようという行為を規制するために設けられている。
裁判例・裁決例からみた非上場株式の評価 【第2回】「募集株式の発行等①」
【第2回】以降は、募集株式の発行等の裁判例について紹介することとする。募集株式の発行等が有利発行になるものとして争いになる裁判例としては、差止め請求についての裁判例(会社法210条)と損害賠償についての裁判例(会社法212条、423条、429条)に大きく分けられる。
【第2回】に当たる本稿では、やや古い裁判例であるが、大阪地裁昭和47年4月19日判決について解説を行うこととする。
~税務争訟における判断の分水嶺~課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第8回】「電化手数料が「資産の譲渡等の対価」に当たるかについて、書面ではなく実体に即して判断された事例」
不動産賃貸業を行う納税者(甲)は、オール電化設備を各戸に備えた居住用賃貸マンション(本件マンション)の建設を発注し、電力会社から電化手数料名目で金員(電化手数料)を受領した。
甲は、電化手数料が課税売上に当たるとして、それを受領した課税期間の課税売上を100%として、マンション取得に関する建築請負代金等に係る消費税額の全額を仕入税額控除の対象として還付申告書を提出した。
