これからの国際税務 【第35回】「与党大綱が提案する第2の柱の国内法制化について」
2021年10月に約140ヶ国に及ぶOECD/IFの国々が合意に達した2つの柱から成る国際課税の新ルールは、G20サミットのコミュニケで「より安定的で公平な国際課税制度を構築する歴史的成果」と評価され、その後、当初予定で2022年中の制度改正及び2023年からの実施を目指して、OECD/IFは、合意内容の実施のための国内法や租税条約の改正を指導するモデルルールや条約案の整備を進めてきた。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第9回】「租税条約上の情報交換(地判平29.2.17)(その2)」~日星租税協定26条1項及び3項、日蘭租税条約25条1項及び3項、新国税通則法74条の11第1項及び第6項~
原告は、他国から要請があれば相手国は情報収集・提供義務を負い、原告に対して情報の開示を法的に強制するため、日本の情報要請は処分であるとして情報要請の取消しを求めたが、被告は、情報要請は行政機関同士の行為で処分性はなく、取消請求の対象にはならないとした(処分性の有無)。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第8回】「租税条約上の情報交換(地判平29.2.17)(その1)」~日星租税協定26条1項及び3項、日蘭租税条約25条1項及び3項、新国税通則法74条の11第1項及び第6項~
本件は、日本に居住する裕福な夫婦の所得税等調査中に、同夫婦が外国の関連会社等を介在させ、所得や財産を海外に移し租税回避を行なっているものと見込んだ国税庁が、シンガポール及びオランダの税務当局に関連情報の提供を要請したところ、それら当局から調査を受けることになった同夫婦の子や外国法人が、東京地裁に情報要請の取消しやプライバシー等侵害に対する損害賠償を求めた行政訴訟である。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第26回】「残余利益分割法における残余利益の分割要因とは」
残余利益(超過利益)をもたらした利益発生要因が必ずしも一つに限られるものではなく、重要な無形資産以外の利益発生要因が寄与していると想定し得る場合、残余利益分割法の分割要因はどのように考えるべきでしょうか。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第7回】「タイバーツ移転価格課税事件-金銭消費貸借の金利スワップレート実在性を中心に-(地判平18.10.26)(その2)」~租税特別措置法66条の4、租税特別措置法施行令39条の12、租税特別措置法関係通達66の4(5)-4~
原告は、本件各貸付は訴外子会社の生産設備取得に充当されたものであり、貸付開始後4年以内に全額が増資という形で資本金に振り替えられているから、実質的には「投資」であって、出資として扱うのが相当であるから、移転価格税制の適用はないと主張した。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第6回】「タイバーツ移転価格課税事件-金銭消費貸借の金利スワップレート実在性を中心に-(地判平18.10.26)(その1)」~租税特別措置法66条の4、租税特別措置法施行令39条の12、租税特別措置法関係通達66の4(5)-4~
本件は、原告が外国法人である訴外子会社に金銭を貸し付け、その受取利息を本件各事業年度における益金として法人税の申告をしたところ、所轄税務署長である被告が、当該貸付取引に租税特別措置法(以下「措置法」)66条の4に定める「移転価格税制」のうち「独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法」を適用し、被告の算定した独立企業間価格と上記受取利息との差額を所得金額に加算して本件各更正処分を行い、さらに本件各賦課決定処分をしたことから、原告が、本件各更正処分は措置法66条の4の解釈を誤り、租税法律主義に違反し、かつ理由に不備があると主張して、本件各賦課決定処分の取消しを求めた事案である。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第25回】「外国パートナーシップ持分の現物出資の適格要件とは」
外国法人に対する現物出資が適格と判定されるための要件である「対象資産が国内にある事業所に属する資産に該当しないこと」は、どのように判断すべきでしょうか。
これからの国際税務 【第34回】「金融口座に関する自動的情報交換の拡大について」
グローバルフォーラムの活動は、OECDの年次報告書(注1)によれば、2009年にOECDが銀行秘密の終焉を宣言して以降、要求に基づく情報交換(EOIR)の仕組みの効率化及び金融口座情報の自動的情報交換(AEOI)の創設を2大テーマとして、国境越えの租税逋脱に対して大きな成果を上げてきたと評価されている。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第5回】「米国デラウェア州LPSの法人該当性(地判平23.12.14、高判平25.1.24、最判平27.7.17)(その2)」~米国デラウェア州法201条(b)、所得税法2条1項7号等、租税特別措置法41条の4の2、民法33条、36条~
上記(前回の2参照)の下級審の判断に対し、最高裁は異なるアプローチを採用した。すなわち、外国法に基づいて設立された組織体が所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当するか否かを判断するに当たり、①まず当該組織体に係る設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組みから、当該組織体が当該外国の法令において日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていること又は付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かを検討し、これができない場合には、②次に当該組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かを検討して判断すべきとした。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第4回】「米国デラウェア州LPSの法人該当性(地判平23.12.14、高判平25.1.24、最判平27.7.17)(その1)」~米国デラウェア州法201条(b)、所得税法2条1項7号等、租税特別措置法41条の4の2、民法33条、36条~
本件の納税者(居住者X)は、信託銀行との信託契約を介して米国デラウェア州法により設立されたリミテッド・パートナーシップ(以下「LPS」)(※1)が行う不動産賃貸事業にリミテッド・パートナーとして参加した。Xは、本件LPSは日本の租税法上の法人には該当しないので、本件LPSが行う不動産賃貸に係る所得はパス・スルー課税(※2)されて、自己の不動産所得になるとして、減価償却費等による不動産所得の損失金額を他の所得と損益通算して所得税の確定申告を行った。
