「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例125(贈与税)】 「相続開始直前の贈与につき、相続財産が基礎控除以下であったため、相続時精算課税で申告を行っていれば、贈与税の負担はなかったにもかかわらず、暦年課税で申告したため、負担が発生してしまった事例」
令和X年に依頼者は実母から2,000万円の贈与を受けたが、翌年3月に実母が死亡した。税理士は実母に相続税額が発生するものと思い込み、支払った贈与税は相続税から控除される旨の説明を行い暦年課税で贈与税申告を行った。しかし、実際には2,000万円を生前贈与加算しても相続財産は基礎控除以下であったため、贈与税額控除が受けられなかった。これにより、2,000万円の生前贈与について相続時精算課税で申告を行っていれば、そもそも贈与税額の負担はなかったとして、暦年課税により納付した贈与税額につき損害賠償請求を受けた。
固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第29回】「建物の取壊費用等が不動産所得の必要経費ではなく、土地の取得費に算入されるべきとされた事例」
不動産所得の必要経費になるか、土地の取得費になるかによって納税コストも大きく変わる場合もあり、境界線がどこにあるのかが重要となる。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第24回】「住友銀行外税控除否認事件-受益者条項からみたケース別否認類型の検討-(地判平13.5.18、高判平14.6.14、最判平17.12.19)(その3)」~法人税法69条ほか~
租税条約の受益者条項は、従来から(1)「租税回避否認規定」ではなく「課税権配分規定」と目されてきたこと、(2)租税条約の我が国への適用については「直接適用可能説」ではなく「国内立法必要説」が通説とされてきたこと、から個別否認規定を持たない我が国では租税条約上の受益者条項違反を租税回避行為として否認することは困難だとされてきた。しかし、川端・前掲「租税条約上の租税回避否認」をベースに、受益者条項の直接適用の可能性を検討したい。
日本の企業税制 【第118回】「リース会計基準の見直しと税制上の取扱い」
企業会計基準委員会(ASBJ)が、本年5月2日に、企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」等を公表した(コメント募集期間は8月4日まで)。
この基準案等に対しては、多くの団体・個人から意見が寄せられている。
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第24回】
暗号資産は譲渡所得の基因となる資産に該当しないという資産性否定説の立場を国税庁が採用していることは、平成31年3月20日の参議院財政金融委員会におけるやりとりによって、ようやく明らかになる。
同委員会において、藤巻健史議員は、所得税法の建付け上、暗号資産を雑所得として国税当局が主張している限り、譲渡所得や一時所得該当性を否定するロジックを国税当局自身が説明しなければならないことを指摘する。
相続税の実務問答 【第86回】「内縁の配偶者の生活費の負担」
被相続人甲と私は、内縁関係にありました。本年6月に内縁の夫甲が亡くなりました。私は、遺贈により、私と甲が居住の用に供していたマンションを甲から取得しましたので、相続税の申告をしなければなりません。
甲と私はこのマンションに同居しており、日常の食費、公共料金などは甲が支払っており、そのほか私の衣類・小物類の費用、趣味の絵画教室の月謝、私の実家のある鹿児島への帰省のための旅費なども甲に支払ってもらっていました。これらの費用は、甲の相続開始前3年間で250万円程度になります。
相続又は遺贈により財産を取得した者が、その相続の開始前3年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、この贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算しなければならないとのことですが、上記の支払いに充てられた金額は、相続税の課税価格に加算しなければならないのでしょうか。
〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第52回】「事前確定届出給与の判定単位と届出書の記載誤り」
当社は事前確定届出給与の制度を活用し、役員に対し、従業員への賞与支給時期に合わせて夏季・冬季と2度の支給を毎年行っています。
ここで、当社は9月決算であり、役員の職務執行期間中である12月に冬季賞与を、翌年7月に夏季賞与を事前確定届出給与として支給する旨を記載した届出を行ったところ、期中に業績が悪化したため、夏季賞与について減額することを検討しています。
また、今回決議した支給額ではない額を届出書に記載して提出してしまいました。
これらの場合における、税務上の取扱いを教えてください。
基礎から身につく組織再編税制 【第55回】「適格株式分配を行った場合の申告調整」
今回は、適格株式分配を行った場合の申告調整について具体例を用いて解説します。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第23回】「住友銀行外税控除否認事件-受益者条項からみたケース別否認類型の検討-(地判平13.5.18、高判平14.6.14、最判平17.12.19)(その2)」~法人税法69条ほか~
外国税額控除事案は、租税条約の関係する、オーストラリア源泉税を吸収するスキーム(S銀行R事件)と、租税条約の関係しない、ニュージーランド源泉税を吸収するスキーム(W銀行事件)、クック諸島源泉税を吸収するスキーム(D銀行事件)、メキシコ源泉税を吸収するスキーム(S銀行P事件)に分けることができる。メキシコスキームが行われた当時(平成3年)、日本とメキシコの間に租税条約はなく、(日本・メキシコ租税条約は平成8年に発効)、クック諸島は、ニュージーランドの自治領(準独立国)であり、タックスヘイブンであることから、日本・ニュージーランド租税条約では、その適用地域から除かれている。日本・ニュージーランド租税条約に利子所得に関する規定はない。オーストラリアの場合、非居住者の利子所得に対する源泉徴収は、国内法の税率と租税条約の限度税率が10%とおなじである。
酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第122回】「節税商品取引を巡る法律問題(その16)」
研究会報告書は、金融経済教育の意義・目的として、①生活スキルとしての金融リテラシー、②健全で質の高い金融商品の供給を促す金融リテラシー、③我が国の家計金融資産の有効活用につながる金融リテラシーの3つを掲げている。その中でも、①生活スキルとしての金融リテラシーについて、次のように報告している(下線筆者)。