租税争訟レポート 【第9回】意思能力のない被相続人による保険契約の締結と税理士の債務不履行責任(税理士損害賠償請求事件第一審判決)
本件は、被相続人が意思表示できない状態で締結された保険契約につき、相続税申告の委任を受けた税理士が、これを「生命保険契約に関する権利」として評価した申告書を作成、提出したところ、所轄税務署長は、税務調査の結果、支払われた保険料の返還請求権が相続財産に含まれるとして、相続税の更正及び加算税の賦課決定を通知した。
争点は、
(1)税理士(被告)の債務不履行責任の有無
(2)納税者(原告)に生じた損害の額
であり、これらの点について、東京地方裁判所の判断が示された。
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載20〕 施行日をまたぐ役務提供に関する消費税率の問題
平成26年3月28日から平成26年4月4日までの期間を対象とした広告の掲載を取り扱っています。なお、収益の計上については、継続的に役務提供を開始する日に全額を計上してきました。
本件の場合は、平成26年3月28日に収益を計上することになりますが、この場合の消費税の税率については、全額について5%とすることは可能でしょうか。
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置について 【第1回】「制度創設の背景と制度の概要」
本制度は、我が国の家計のうち、高齢者世代の保有するおよそ1,500兆円の金融資産のうち約6割の資産について、消費支出の高い子育て世代への移転を促進することにより、子育て世代を支援し、経済活性化に寄与することを期待するものとして創設された。
従来の税制では、扶養義務者相互間において教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち、通常必要と認められるものが贈与税の非課税とされるため、基本的には教育費として実際に支出した金額のみが贈与税の非課税対象とされていた(相法21の3①二)。
国外財産調書に関する通達の発遣について
国税庁は、平成25年3月29日付け「内国税の適正な確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国外財産調書関係)の取扱いについて(法令解釈通達)」(以下「本通達」)を発遣した。
国外財産調書制度とは、平成24年度税制改正により導入された制度であり、各年の12月31日に5,000万円を超える国外財産を保有する居住者(非永住者を除く)に対して、翌年3月15日までに、保有する国外財産の内容を記載した報告書を所轄税務署長に提出することを義務付けるものであり、平成26年1月1日以降提出すべき調書から適用となる。
本稿では以下、本通達の内容のうち、留意すべき点を中心に解説する。
分割の後に合併があった場合の分割承継法人及び合併法人における試験研究費の特別控除
当社は、数年前よりA社及びB社の発行済株式の100%を有しています。
A社は、従来から2つの商品の研究開発事業を行ってきましたが、経営の効率化のため、平成24年8月1日に、当社との間で当社を分割承継法人とする適格分割を行い、P1商品の開発事業を当社に移転しました。
その後、平成25年10月1日に、A社とB社との間でB社を合併法人とする適格合併が行われ、A社は解散し、P2商品の開発事業がB社に移転されました。
当社及びB社においても、従来から、それぞれ独自に商品の研究開発事業を行っていましたが、当社及びB社がそれぞれ当期(平成25年4月1日から平成26年3月31日まで)に試験研究を行った場合の法人税額の特別控除の適用を受けるに当たって、A社から移転を受けた研究開発事業に係る試験研究費の額や売上調整年度の売上金額の取扱いが分かりませんので、ご教授下さい。
企業不正と税務調査 【第8回】「従業員による不正」 (2)営業部門・購買部門社員による横領
最も不正を行う機会に接している従業員は経理部門の社員であり、しかも出納業務を1人で任されている者であることは前回説明したとおりである。
今回は、「経理部門以外の従業員」のうち、営業部門・購買部門社員による横領事件を取り上げる。
前回の経理部門社員による不正との大きな違いは、単独で不正を行うことはできず、必ず「共犯者」が存在するということである。したがって、不正の発見にあたっては、共犯者の存在をうかがわせるような兆候を見つけることがポイントになる。
組織再編税制における不確定概念 【第8回】「適格合併における繰越欠損金の利用②」
前回(第7回目)においては、支配関係が生じてから5年経過するまで待つ場合、みなし共同事業要件を形式的に充足させる場合についてそれぞれ解説を行った。
第8回目の本稿においては、さらに発展させた論点として、繰越欠損金を利用するための企業買収と適格合併、繰越欠損金飛ばしスキームについてそれぞれ解説を行う。
税務判例を読むための税法の学び方【10】 〔第4章〕条文を読むためのコツ(その3)
法令文において語句を選択的に結び付けるときには、「又は」と「若しくは」が用いられる。すなわち、複数の語句の中から1つを選択する場合に使われる。両者は、文字的意味の上では同じものであり、日常用語としては同じような意味で区別せずに使われている。
しかし、法令用語としての「又は」と「若しくは」は、明確に使い分けられている。
選択的接続詞を用いる場合で数個の語句を単純に並列するだけのときには「又は」が使われる。選択肢が3つ以上であっても、同じ段階で並べて選択するときは、最初の接続は「、」でつなぎ、最後の部分を「又は」で結ぶ。すなわち、「A又はB」や「A、B又はC」「A、B、C又はD」というふうに表現される。
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載19〕 債務超過の適格分割型分割を行った場合の資本金等の額と利益積立金額の計算
債務超過の適格分割型分割を行った場合の資本金等の額と利益積立金額の計算は、どのように行うのでしょうか。
中小企業のM&Aでも使える税務デューデリジェンス 【第1回】「買収の形態により異なる税務の取扱い」
昨今、オーナー株主が保有する中小企業に対して、M&A(合併と買収)の話が持ち上がるケースが非常に多い。
その際、買収の手法・形態ごとの税務上の取扱いを予め理解しておくことで、不測の納税が生じてしまう等のリスクを回避・軽減することができる。
また、その買収形態並びに買収価額については、いわゆる「税務デューデリジェンス」の結果に基づき決定されることが多いため、その手続や考え方を理解しておくことも非常に有用である。
税務デューデリジェンスとは、資料の閲覧・計算チェックや税務責任者やマネジメントへの質問を通じて、買収対象会社の過年度における税務の状況を把握・検討・分析し、税務リスク(将来の税務調査で追徴課税を受けるリスク)を洗い出す手続である。
そこで本連載では、現在の中小企業が遭遇する様々なM&Aのケースにおいて、この税務デューデリジェンスの手法を有効に活用する方法と考え方について解説することとする。
まず第1回では、税務デューデリジェンスの具体的な内容を解説する前に、買収の各形態の内容及びその税務上の取扱いやポイントについて、事例を交えて解説する。
