組織再編成・資本等取引の税務に関する留意事項
【第7回】
「試験研究を行った場合の税額控除(後半)」
公認会計士 佐藤 信祐
5 平均売上金額
(1) 基本的な取扱い
平均売上金額とは、適用年度及び当該適用年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の売上金額の平均額をいう(措法42の4⑧十一)。具体的には、適用年度の売上金額及び当該適用年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度(以下、「売上調整年度」という)の売上金額(※14)の合計額を当該適用年度及び当該各売上調整年度の数で除して計算した金額により算定される(措令27の4㉙)。
(※14) 適用年度の月数と売上調整年度の月数とが異なる場合には、その異なる売上調整年度の売上金額に当該適用年度の月数を乗じてこれを当該売上調整年度の月数で除して計算した金額とする。
ただし、以下に掲げる合併法人等(合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人をいう)に該当する場合には、以下のように計算を行う(措令27の4㉚)。なお、基準事業年度の売上金額についても類似の特例が設けられている(措令27の4⑭⑮)。
イ 適用年度において行われた合併等(合併、分割、現物出資又は現物分配(※15)をいう)に係る合併法人等(※16)
当該合併法人等の基準日から当該適用年度開始の日の前日までの期間内の日を含む各売上調整年度(※17)(以下、イにおいて「調整対象年度」という)については、当該各調整対象年度ごとに当該合併法人等の当該各調整対象年度の売上金額に当該各調整対象年度に含まれる月の当該合併等に係る被合併法人等(被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人をいう)の月別売上金額を合計した金額に当該合併等の日(※18)から当該適用年度終了の日までの期間の月数を乗じてこれを当該適用年度の月数で除して計算した金額を加算する。
ロ 売上調整年度において行われた合併等(合併、分割、現物出資又は現物分配(※19)をいう)に係る合併法人等
当該合併法人等の基準日から当該合併等の日の前日までの期間内の日を含む各売上調整年度(※20)(以下、ロにおいて「調整対象年度」という)については、当該各調整対象年度ごとに当該合併法人等の当該各調整対象年度の売上金額に当該各調整対象年度に含まれる月の当該合併等に係る被合併法人等の月別売上金額を合計した金額を加算する。
(※15) 残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、当該適用年度開始の日の前日から当該適用年度終了の日の前日までの期間内においてその残余財産が確定したものをいう。
(※16) 基準事業年度の売上金額につき、基準事業年度開始の日から適用年度終了の日までに分割等(分割又は現物出資)が行われたものに係る分割法人等については、基準事業年度の売上金額を0とする特例も定められている(措令27の4⑭三)。そして、イ及びロの合併法人からは「基準事業年度開始の日から適用年度終了の日までに分割等(分割又は現物出資)が行われたものに係る分割法人等」を除くことから、適用年度において合併を行い、かつ、基準事業年度開始の日から適用年度終了の日までに分割等を行った場合にも、基準事業年度の売上金額は0円になる。
(※17) 未経過法人に該当する場合には、基準日から合併法人等の設立の日の前日までの期間を当該合併法人等の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。
(※18) 残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、その残余財産の確定の日の翌日。
(※19) 残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、当該売上調整年度のうち最も古い売上調整年度開始の日の前日から当該適用年度開始の日の前日を含む事業年度終了の日の前日までの期間内においてその残余財産が確定したものをいう。
(※20) 未経過法人に該当する場合には、基準日から合併法人等の設立の日の前日までの期間を当該合併法人等の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。
ここでいう月別売上金額とは、その合併等に係る被合併法人等の当該合併等の日前に開始した各事業年度の売上金額(※21)をそれぞれ当該各事業年度の月数(※22)で除して計算した金額を当該各事業年度に含まれる月(※23)の売上金額とみなした場合における当該売上金額をいう(措令27の4⑮)。
(※21) 分割事業年度等にあっては、当該分割等の日の前日を当該分割事業年度等の終了の日とした場合の当該分割事業年度等に係る売上金額。
(※22) 分割事業年度等にあっては、当該分割事業年度等の開始の日から当該分割等の日の前日までの期間の月数。
(※23) 分割事業年度等にあっては、当該分割事業年度等の開始の日から当該分割等の日の前日までの期間に含まれる月。
なお、現物分配により試験研究用資産の移転を受けていない場合において、当該現物分配により試験研究用資産の移転を受けていない旨の届出をしたときは、上記の特例を適用しないことができる(措令27の4㉜、措規20㊻)。
(2) 分割又は現物出資の特例
分割又は現物出資を行った場合には、分割又は現物出資の日以後2ヶ月以内に「分割等による移転売上金額の計算方法の認定申請書」「分割等による売上金額の区分に関する届出書」を提出することにより、以下のように計算を行うことも認められている(措令27の4㉛)。なお、基準事業年度の売上金額についても同様の特例が設けられている(措令27の4⑰一、措規20⑩⑮)。
イ 分割法人等
それぞれ次に定める金額を控除することにより算定する。
(イ) 適用年度において行われた分割等に係る分割法人等
当該分割法人等の各売上調整年度については、当該分割法人等の当該各売上調整年度の移転売上金額(※24)に当該分割等の日から当該適用年度終了の日までの期間の月数を乗じてこれを当該適用年度の月数で除して計算した金額
(ロ) 売上調整年度において行われた分割等に係る分割法人等
当該分割法人等の売上調整年度のうち最も古い売上調整年度から当該分割等の日の前日を含む売上調整年度までの各売上調整年度については、当該分割法人等の当該各売上調整年度の移転売上金額
ロ 分割承継法人等
それぞれ次に定める金額を加算することにより算定する。
(イ) 適用年度において行われた分割等に係る分割承継法人等
当該分割承継法人等の各売上調整年度(※25)((イ)において「調整対象年度」という)については、当該分割承継法人等の当該調整対象年度ごとに当該各調整対象年度に含まれる月の当該分割等に係る分割法人等の月別移転売上金額を合計した金額に当該分割等の日から当該適用年度終了の日までの期間の月数を乗じてこれを当該適用年度の月数で除して計算した金額
(ロ) 売上調整年度において行われた分割等に係る分割承継法人等
当該分割承継法人等の各売上調整年度(※26)((ロ)において「調整対象年度」という)については、当該分割承継法人等の当該調整対象年度ごとに当該各調整対象年度に含まれる月の当該分割等に係る分割法人等の月別移転売上金額を合計した金額
(※24) 移転事業に係る売上金額をいう。
(※25) 未経過法人に該当する場合には、基準日から分割承継法人等の設立の日の前日までの期間を当該分割承継法人等の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。
(※26) 未経過法人に該当する場合には、基準日から分割承継法人等の設立の日の前日までの期間を当該分割承継法人等の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。
この場合における月別移転売上金額とは、その分割等に係る分割法人等の当該分割等の日前に開始した各事業年度の移転売上金額をそれぞれ当該各事業年度の月数(※27)で除して計算した金額を当該各事業年度に含まれる月(※28)の移転売上金額とみなした場合における当該移転売上金額をいう(措令27の4⑱)。
(※27) 分割事業年度等にあっては、当該分割事業年度等の開始の日から当該分割等の日の前日までの期間の月数。
(※28) 分割事業年度等にあっては、当該分割事業年度等の開始の日から当該分割等の日の前日までの期間に含まれる月。
6 適用除外事業者
中小企業者に該当する場合であっても、適用除外事業者に該当するときは、中小企業技術基盤強化税制の適用を受けることができない。
適用除外事業者とは、当該事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度(以下、「基準年度」という)の所得の金額の合計額を各基準年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算した金額が15億円を超える法人をいう(措法42の4⑧八)。なお、15億円を超えるかどうかの判定上、基準年度において合併、分割、現物出資又は事業譲受(以下、「合併等」という)を行った場合には、一定の調整計算を行う必要がある(措令27の4㉒三、㉓三)。ただし、以下のいずれかに該当する場合にのみ調整計算が必要になることから、合併等を行った場合に常に調整計算が必要になるわけではない(措令27の4㉔一)。
イ 法人を設立する合併等で事業を移転するもののうち、基準日から判定対象年度開始の日までの間に行われたもの
ロ 合併法人等との間に支配関係がある法人を被合併法人、分割法人、現物出資法人又は事業譲渡法人とする合併等で事業を移転するもののうち、基準日から判定対象年度開始の日の前日(合併にあっては、判定対象年度開始の日)までの間に行われたもの
ハ 次に掲げる合併等で、基準日から判定対象年度終了の日までの間に行われたもの
(イ) 法人が合併等の直前において事業を行っていない場合(清算中の場合を含む)において、当該合併等の日以後に事業を開始した又は開始することが見込まれているとき(清算中の当該法人が継続した又は継続することが見込まれているときを含む)の当該合併等
(ロ) 判定法人が合併等の直前において行う事業(以下、「旧事業」という)の全てを当該合併等の日以後に廃止した又は廃止することが見込まれている場合において、当該旧事業の当該合併等の直前における事業規模のおおむね5倍を超える資金の借入れ又は出資による金銭その他の資産の受入れ(合併又は分割による資産の受入れを含む)を行った又は行うことが見込まれているときの当該合併等
(ハ) 判定法人の合併等の直前の役員(社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で判定法人の経営に従事している者に限る)の全てが退任(業務を執行しないものとなることを含む)をし、かつ、当該合併等の直前において判定法人の業務に従事する使用人(「旧使用人」という)の総数のおおむね100分の20以上に相当する数の者が判定法人の使用人でなくなった場合において、判定法人の非従事事業(旧使用人が当該合併等の日以後その業務に実質的に従事しない事業をいう)の事業規模が旧事業の当該合併等の直前における事業規模のおおむね5倍を超えることとなった又は超えることとなることが見込まれているとき(当該非従事事業の事業規模がその事業規模算定期間の直前の事業規模算定期間における非従事事業の事業規模のおおむね5倍を超えないときを除く)の当該合併等
〔凡例〕
法法・・・法人税法
措法・・・租税特別措置法
地法・・・地方税法
法令・・・法人税法施行令
措令・・・租税特別措置法施行令
法規・・・法人税法施行規則
措規・・・租税特別措置法施行規則
地規・・・地方税法施行規則
計規・・・会社計算規則
法基通・・・法人税基本通達
措通・・・租税特別措置法関係通達
(例)法法23の2①・・・法人税法第23条の2第1項
(了)
「組織再編成・資本等取引の税務に関する留意事項」は、毎月第4週に掲載されます。