組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨
【第3回】
公認会計士 佐藤 信祐
(《第1章》 平成13年度税制改正前の議論)
2 会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方
(1) 基本的な考え方
平成12年10月に公表された「会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方」は、「第一 基本的な考え方」「第二 資産等を移転した法人の課税」「第三 株主の課税」「第四 各種引当金の引継ぎ等」「第五 租税回避の防止」「第六 その他」という構成になっている。そして、これらの内容について、平成12年10月11日の租税研究会の会員懇談会にて、当時の大蔵省主税局税制第一課(法人税制企画局)の朝長英樹氏と山田博志氏が講演をされており、その内容は、『企業組織再編成に係る税制についての講演録集』19-48頁(日本租税研究協会、平成13年)に掲載されている(初出は、租税研究614号52-85頁(平成12年))。
【第3回】に当たる本稿では、「第一 基本的な考え方」について解説し、次回以降でそれ以降の解説をしていきたい。具体的に「第一 基本的な考え方」として、4つの内容が記載されている。以下では、その内容につき、解説を行う。
(1) 近年、わが国企業の経営環境が急速に変化する中で、企業の競争力を確保し、企業活力が十分発揮できるよう、商法等において柔軟な企業組織再編成を可能とするための法制等の整備が進められてきている。税制としても、企業組織再編成により資産の移転を行った場合にその取引の実態に合った課税を行うなど、適切な対応を行う必要がある。
この内容については、組織再編に関連する法制度が整備された時代背景を述べたものと言える。現在においても注目すべきは、「企業組織再編成により資産の移転を行った場合にその取引の実態に合った課税を行う」としている点である。前回でも述べたが、組織再編税制を恩典のように考えるのではなく、あるべき制度として位置づけようとしたということが言える。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。