組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨
【第36回】
公認会計士 佐藤 信祐
(《第5章》 平成18年度税制改正)
(3) 分割型分割その他の組織再編税制に係る所要の整備
① 分割型分割の定義
平成17年改正前商法では、物的分割と人的分割に分かれていたが、平成18年に施行された会社法では、人的分割が物的分割+現物配当として整理されることになった。その結果、平成18年改正前法人税法における分割型分割と会社法における人的分割の内容が一致することになった。
そのため、「分割型分割」の定義を、分割により分割法人が交付を受ける分割対価資産(分割承継法人株式その他の資産をいう)のすべてがその分割の日において分割法人の株主に交付される場合の当該分割と定められ(法法2十二の九)、「分社型分割」の定義を、分割により分割法人が交付を受ける分割対価資産がその分割の日において分割法人の株主に交付されない場合の当該分割と定められた(法法2十二の十)。
なお、『平成18年版改正税法のすべて』289頁では、
分割対価資産に加えて分割法人が有する資産が交付される場合には、分割型分割と通常の剰余金の配当の双方が行われたものと取り扱われます。なお、分割の日において剰余金の配当が行われる場合であっても、分割対価資産と異なる資産が交付されるときには、分社型分割と剰余金の配当の双方の行為が行われたものとされます。
② 分割型分割の間接交付化に伴う整備
前述のように、会社法上も、「分社型分割+現物配当」を分割型分割として取り扱うこととしたため、平成18年改正前法人税法において規定されていた分割型分割を「分社型分割+現物配当」とみなす旨の規定は削除された。そして、分割承継法人が分割型分割の直前に有していた分割法人株式、分割承継法人が分割法人又は他の分割法人から移転を受けた他の分割法人株式又は分割法人株式に対して株式割当てがなかった場合に、株式割当てがあったものとみなす規定も削除された。
しかしながら、『平成18年版改正税法のすべて』268頁では、
仮に実務上株式割当等を省略した場合には、従前どおり株式割当等があったものとして法人税法の規定を適用することになると考えられます。
さらに、分割型分割により1株に満たない端数が生じた場合には、合併と異なり、分割法人から直接に代わり金が交付されることから、「当該端数に相当する部分は、当該分割型分割により当該株主等に交付される当該分割承継法人の株式に含まれる(平成18年法令123の2)」ものとして、課税所得の計算を行うこととしたため、金銭等不交付要件に抵触しないものとして整理することができるようになった。
このように、分割型分割の間接交付化に伴う整備は、従前の取扱いをそのまま継続するための改正であると考えられる。そのため、条文を読み込む際には、会社法の基本的な理解が重要になってくる。
③ 移転負債の範囲に含まれる新株予約権交付義務
【第34回】で解説したように、会社法上、組織再編成を行った場合の新株予約権の取扱いについて、引き継ぐことを強制するのではなく、旧新株予約権の消滅と新たな新株予約権の発行として整理されることになった。
そのため、合併又は分割により合併法人又は分割承継法人に移転する負債には、合併又は分割により消滅する新株予約権に代えて新株予約権者に交付すべき資産の交付に係る義務を含むものとされた(平成18年法令123②)。
そして、適格合併又は適格分割の場合には、消滅する新株予約権の帳簿価額をそのまま新しい新株予約権の帳簿価額にすることにより譲渡損益が発生しないものとされた。
④ 反対株主の株式買取請求
合併、株式交換又は株式移転を行った場合において、反対株主の株式買取請求が行われたとしても、金銭等不交付要件に抵触しないことが明確化された。この趣旨として、
会社法では合併に反対する株主の買取請求は合併の時にその効力が生じ(すなわち抽象的な債権債務関係が生じ)、合併後に金額が確定して対価が交付されることとされましたが、これは合併全体の対価について金銭による交付をしたものといえるまでのものではないことから、交付金銭等に含まれないことが確認的に規定されたものです。
とされている(※1)。
(※1) 『平成18年版改正税法のすべて』291頁。
すなわち、合併、株式交換及び株式移転では、被合併法人、株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人がそれぞれ債務者になることから、合併法人、株式交換完全親法人又は株式移転完全親法人が組織再編成の対価として金銭を交付したわけではないということが言える。そう考えると、確認的に規定するにしても、合併だけでよかったとも思われるが、現行法上も、株式交換及び株式移転についても規定されている。
さらに、分割の場合には上記のような規定は存在しないが、分割法人の株主が反対株主の株式買取請求を行ったとしても、分割法人が金銭を交付することから、分割承継法人が金銭を交付するわけではないため、あえてこのような規定を設けなかったと考えられる。
⑤ 議決権のない株式
株式継続保有要件の判定上、対象から除外される議決権のない株式について以下のように例示された。
(ⅰ) 議決権のないものに含まれるもの
一 自己が有する自己の株式又は出資
二 一定の事由が生じたことを条件として議決権を有することとなる旨の定めがある株式又は出資で、当該事由が生じていないもの
(ⅱ) 議決権のないものに含まれないもの
一 会社法879条3項(特別清算事件の管轄)の規定により議決権を有するものとみなされる株式
二 会社法109条2項の規定により株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない旨を定められた株主が有する株式
三 単元株式数に満たない株式
この点につき、
自己株式のほかは、所有者のステータスによって議決権が一時的に行使できないものは議決権のない株式に含まれないという基本的な考え方によって整理されています。
と解説されている(※2)。そして、法人税基本通達1-4-2では、1株に満たない端数につき、議決権のない株式に含まれることが明らかにされている。
(※2) 前掲(※1)292頁。
ただし、平成29年度税制改正により、支配株主に対してのみ株式継続保有要件が課されるようになったため、法人税基本通達1-4-2に規定されている1株に満たない端数以外について、議決権のない株式であるかどうかが問題になることはあまり多くはないと思われる。
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次回では、株式交換・移転税制について解説を行う予定である。
(了)
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