公開日: 2021/10/28
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《速報解説》 国税庁、最高裁判決を踏まえた混合配当の取扱いについて公表~混合配当の際に算出される直前払戻等対応資本金額等につき減少資本剰余金額を上限に~

筆者: 霞 晴久

《速報解説》

国税庁、最高裁判決を踏まえた混合配当の取扱いについて公表

~混合配当の際に算出される直前払戻等対応資本金額等につき減少資本剰余金額を上限に~

 

公認会計士・税理士 霞 晴久

 

国税庁は、2021年10月25日、同HP『お知らせ』において、「最高裁判所令和3年3月11日判決を踏まえた利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当の取扱いについて」を公表した。

このお知らせ(以下「本件お知らせ」という)は、最高裁判所令和3年3月11日判決(以下「本件最判」という)において、利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当(以下「混合配当」という)が行われた場合における「株式又は出資に対応する部分の金額」の計算方法の規定について、一定の限度において、違法なものとして無効である旨判示されたことを契機とするものである。

本件は、内国法人であるX(連結親会社)が、外国子会社(米国デラウエア州法に基づき設立されたLLC)から、それぞれの決議を別にする混合配当を受け、同配当のうち資本剰余金部分については法人税法(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下、「法」という)24条1項3号(注:現行法24条1項4号)の資本の払戻しの一形態である「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)」に、利益剰余金部分については法23条1項1号にいう「剰余金の配当(・・・資本剰余金の額の減少に伴うもの・・・を除く。)」に該当することを前提に連結事業年度の連結確定申告をしたところ、所轄税務署長から、これらの剰余金の配当は、それぞれの効力発生日が同じ日であることなどから、その全額が法24条1項3号の資本の払戻しに該当するとして法人税の更正処分を受けたため、当該更正処分の一部の取消しを求めた事案である。

本件最判では、次のような判断が示された。

混合配当は、その全体が法に規定する資本の払戻しに該当するものというべきであり、株式対応部分金額の計算方法について定める法施行令(平成26年政令第138号による改正前のもの)23条1項3号(上記注参照)の規定のうち、資本の払戻しがされた場合の直前払戻等対応資本金額等の計算方法を定める部分は、混合配当につき、減少資本剰余金額を超える直前払戻等対応資本金額等が算出される結果となる限度において、法の趣旨に適合するものではなく、法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。

今後は、本件最判に従い、現行の法施行令23条1項4号及び同様の規定である所得税法施行令61条2項4号について、混合配当があった場合に算出される直前払戻等対応資本金額等につき減少資本剰余金額を上限として取り扱うこととされた。

本件お知らせでは、上記取扱いが今後どのように法施行令の改正の文言に反映されていくかについては具体的に示されていないが、改正施行令の施行を待たず、過去に遡って上記取扱いが適用されるものとして一般に告知されたものと解される。したがって、本件お知らせでは、上記取扱いにより直前払戻等対応資本金額等の再計算を行った結果、過去に行った申告内容等に異動が生じ、納付税額等が過大となる株主等納税者は、国税通則法の規定に基づき所轄の税務署に更正の請求を行うことができる(※)としている。

(※) ただし、本件お知らせでは、法定申告期限等から5年を経過している法人税又は所得税については、減額更正を行うことはできない(国税通則法23条1項本文)として注意喚起している。

(了)

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《速報解説》

国税庁、最高裁判決を踏まえた混合配当の取扱いについて公表

~混合配当の際に算出される直前払戻等対応資本金額等につき減少資本剰余金額を上限に~

 

公認会計士・税理士 霞 晴久

 

国税庁は、2021年10月25日、同HP『お知らせ』において、「最高裁判所令和3年3月11日判決を踏まえた利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当の取扱いについて」を公表した。

このお知らせ(以下「本件お知らせ」という)は、最高裁判所令和3年3月11日判決(以下「本件最判」という)において、利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当(以下「混合配当」という)が行われた場合における「株式又は出資に対応する部分の金額」の計算方法の規定について、一定の限度において、違法なものとして無効である旨判示されたことを契機とするものである。

本件は、内国法人であるX(連結親会社)が、外国子会社(米国デラウエア州法に基づき設立されたLLC)から、それぞれの決議を別にする混合配当を受け、同配当のうち資本剰余金部分については法人税法(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下、「法」という)24条1項3号(注:現行法24条1項4号)の資本の払戻しの一形態である「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)」に、利益剰余金部分については法23条1項1号にいう「剰余金の配当(・・・資本剰余金の額の減少に伴うもの・・・を除く。)」に該当することを前提に連結事業年度の連結確定申告をしたところ、所轄税務署長から、これらの剰余金の配当は、それぞれの効力発生日が同じ日であることなどから、その全額が法24条1項3号の資本の払戻しに該当するとして法人税の更正処分を受けたため、当該更正処分の一部の取消しを求めた事案である。

本件最判では、次のような判断が示された。

混合配当は、その全体が法に規定する資本の払戻しに該当するものというべきであり、株式対応部分金額の計算方法について定める法施行令(平成26年政令第138号による改正前のもの)23条1項3号(上記注参照)の規定のうち、資本の払戻しがされた場合の直前払戻等対応資本金額等の計算方法を定める部分は、混合配当につき、減少資本剰余金額を超える直前払戻等対応資本金額等が算出される結果となる限度において、法の趣旨に適合するものではなく、法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。

今後は、本件最判に従い、現行の法施行令23条1項4号及び同様の規定である所得税法施行令61条2項4号について、混合配当があった場合に算出される直前払戻等対応資本金額等につき減少資本剰余金額を上限として取り扱うこととされた。

本件お知らせでは、上記取扱いが今後どのように法施行令の改正の文言に反映されていくかについては具体的に示されていないが、改正施行令の施行を待たず、過去に遡って上記取扱いが適用されるものとして一般に告知されたものと解される。したがって、本件お知らせでは、上記取扱いにより直前払戻等対応資本金額等の再計算を行った結果、過去に行った申告内容等に異動が生じ、納付税額等が過大となる株主等納税者は、国税通則法の規定に基づき所轄の税務署に更正の請求を行うことができる(※)としている。

(※) ただし、本件お知らせでは、法定申告期限等から5年を経過している法人税又は所得税については、減額更正を行うことはできない(国税通則法23条1項本文)として注意喚起している。

(了)

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連載目次

“国際興業事件"を巡る5つの疑問点
~プロラタ計算違法判決を生んだ根本原因~

【第1回】

はじめに

《疑問点1》 利益積立金がマイナスの法人が何故配当することができたのか

《疑問点2》 プロラタ計算の分母は、払戻し等の直前の株主資本の状態を示しているか

【第2回】

《疑問点3》 KC社からの金銭配当を資本配当と利益配当に分けて行うことは、株式譲渡損を意図的に作出する恣意的な行為に当たらないか

(1) プロラタ計算導入の経緯と本件最判の意義

(2) 資本配当を行うことによるXの節税効果

【第3回】

《疑問点4》 そもそも外国法人の資本金等の額及び利益積立金の額は算定可能か

(1) 株主に対する「資本金等の額」の通知義務を負わない外国法人

(2) 純粋で混じり気のない資本金等の額と利益積立金の額の分配

【第4回】

《疑問点5》 別件裁判例では、外国上場会社の財務諸表上の数値を用いてみなし配当を計算しているのではないか

(1) タイコ・インターナショナル事件

(2) T社事件判決の問題点

おわりに

【追補】

1 はじめに

2 問題の所在

3 改正法施行令の内容

4 残された課題

筆者紹介

霞 晴久

(かすみ・はるひさ)

公認会計士・税理士
霞晴久公認会計士事務所 所長

監査法人トーマツ、新日本監査法人、国税不服審判所等を経て現在霞晴久公認会計士事務所所長。千葉商科大学大学院会計ファイナンス研究科客員教授。監査法人勤務時代は会計監査、国際税務、海外赴任(フランス及びベルギーに通算14年滞在)及び不正調査に従事。国税不服審判所入所前は、日系企業が買収したベルギー法人のCFOを勤める。
主な著書・論文として「ユーロの会計税務と法律」(共著、清文社1999年)、「EU加盟国の税法」(共著、中央経済社2002年)、「新版架空循環取引」(共著、清文社2019年)、及び「破産手続きにおける債務の確定と前期損益修正をめぐる問題」(月刊『税理』2020年10月号)等がある。
 

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