居住用財産の譲渡所得
3,000万円特別控除
[一問一答]
【第1問】
「「3,000万円特別控除」と「買換えの特例」の適用要件の相違点」
税理士 大久保 昭佳
◆連載開始にあたって◆
居住用財産を譲渡した場合の課税については、いくつかの特例措置が設けられているものの、譲渡物件の利用状況等が多種多様にわたることなどから、この特例の適用の有無にあたっては、一般納税者のみならず税理士にとっても、その判定は大変難しいものとなっている。
国税庁ホームページの「質疑応答事例」においては、この特例に関する主要な20問が掲載されているが、この連載では、小職の元国税資産税職員としての審理経験や調査経験などを活かしながら、税理士等が特例の適用にあたって迷いがちとなる様々な譲渡ケース等を想定した質疑事例を作成し、3,000万円特別控除(措法35)を主体として、居住用財産の譲渡所得に係る特例を説明していきたい。
Q
3,000万円特別控除(措法35)と買換えの特例(措法36の2)の適用要件について説明してください。
A
両制度の主な相違点をまとめると、次のとおりである。
① 譲渡資産
【3,000万円特別控除】
●所有期間の制限なし。
●居住の用に供している期間の制限なし。
●所在地の制限がなし(日本国外にあるものでも可)。
【買換えの特例】
●譲渡の年の1月1日における所有期間が10年超。
●譲渡者の居住の用に供している期間が10年以上。
●日本国内にあるもの(日本国外にあるものは不可)。
② 適用除外の譲渡
【3,000万円特別控除】
●下記の原因による譲渡も除外されない。
【買換えの特例】
●贈与、交換、出資、代物弁済による譲渡。
●譲渡に係る対価が1億5,000万円を超えるもの。
③ 連年適用
【3,000万円特別控除】
●前年又は前々年において既に「3,000万円特別控除」又は「買換え特例」若しくは「交換の特例」を受けている場合には、適用を受けることができない。
【買換えの特例】
●上記のような制限なし。
④ 買換資産
【3,000万円特別控除】
●買換資産に関する要件なし。
【買換えの特例】
●日本国内にあるもの(日本国外にあるものは不可)。
●買換資産を一定の期限までに取得して、一定の期限までに居住の用に供さなければならない。
●居住用部分の床面積が50㎡以上であること。
●土地等の面積が500㎡以下であること。
●家屋が中古の耐火建築物である場合には、その取得の日以前25年以内に建築されたもの又は地震に対する安全性に係る基準に適合することが証明された一定のもの。
●贈与、交換、出資、代物弁済により取得するものについては適用除外。
(了)