公開日: 2015/02/26 (掲載号:No.108)
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法人税に係る帰属主義及びAOAの導入と実務への影響 【第8回】「改正の内容⑦」

筆者: 小林 正彦

法人税に係る帰属主義及び

AOAの導入と実務への影響

【第8回】

「改正の内容⑦」

 

税理士法人トーマツ
パートナー
税理士 小林 正彦

 

連載の目次はこちら

3-1-15 PEに係る取引に係る文書化

本支店間取引は内部取引であるため、取引として認識されていないものも多いとみられる。今回の改正において帰属主義と同時にAOAを導入したことから、平成28年4月1日以降開始事業年度においてPE帰属所得を有する外国法人は、本店と支店が分離独立した企業であるとした場合に取引があったと認識すべき取引はこれが行われたものとして、PE帰属所得を計算することとされた。

内部取引が存在したかどうかを認識する際の出発点が、機能・事実分析である。
その結果を文書化することが今回の改正で義務化された。

(1) 外部取引に関する事項

PEを有する外国法人は、外部と行った取引のうちPEに帰せられるもの(PE帰属外部取引)については、次の事項を記載した書類を作成しなければならない(法法146の2①、法規62の2)。

 PE帰属外部取引の内容を記載した書類

具体的にはPE帰属外部取引がどのような取引であるかを説明する書類であり、契約書等に記載された内容を整理すれば足りると考えられる(「平成26年度税制改正の解説」(財務省)748頁)。

 PE及び本店がPE帰属外部取引において使用した資産(無形資産を含む)の種類、内容、契約条件等が分かる書類及び関連した負債の種類や内容が分かる書類

特に、実務上は重要な価値を有し所得の源泉となる無形資産の帰属者をどのように認識するかが重要になると考えられる。

 外国法人のPE及び本店等の果たす機能・負担するリスクを説明する書類

「機能」とは、研究開発、設計、調達、製造、市場開拓、販売等の企業活動をいう。これらの活動がどこでどのように果たされているかを整理する必要がある。

AOAでは機能が果たされている部門で所得を認識することになるので、例えば、日本支店において販売機能を果たしている場合で、収益の記帳が外国の本店で一括して行われている場合には、日本支店が本店とは別個の分離した独立の企業と擬制した場合の収益を日本支店のPE帰属国内源泉所得と認識する必要がある。この場合、実際に所得の送金を行うかどうかは各国の制度に従うことになる。

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法人税に係る帰属主義及び

AOAの導入と実務への影響

【第8回】

「改正の内容⑦」

 

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3-1-15 PEに係る取引に係る文書化

本支店間取引は内部取引であるため、取引として認識されていないものも多いとみられる。今回の改正において帰属主義と同時にAOAを導入したことから、平成28年4月1日以降開始事業年度においてPE帰属所得を有する外国法人は、本店と支店が分離独立した企業であるとした場合に取引があったと認識すべき取引はこれが行われたものとして、PE帰属所得を計算することとされた。

内部取引が存在したかどうかを認識する際の出発点が、機能・事実分析である。
その結果を文書化することが今回の改正で義務化された。

(1) 外部取引に関する事項

PEを有する外国法人は、外部と行った取引のうちPEに帰せられるもの(PE帰属外部取引)については、次の事項を記載した書類を作成しなければならない(法法146の2①、法規62の2)。

 PE帰属外部取引の内容を記載した書類

具体的にはPE帰属外部取引がどのような取引であるかを説明する書類であり、契約書等に記載された内容を整理すれば足りると考えられる(「平成26年度税制改正の解説」(財務省)748頁)。

 PE及び本店がPE帰属外部取引において使用した資産(無形資産を含む)の種類、内容、契約条件等が分かる書類及び関連した負債の種類や内容が分かる書類

特に、実務上は重要な価値を有し所得の源泉となる無形資産の帰属者をどのように認識するかが重要になると考えられる。

 外国法人のPE及び本店等の果たす機能・負担するリスクを説明する書類

「機能」とは、研究開発、設計、調達、製造、市場開拓、販売等の企業活動をいう。これらの活動がどこでどのように果たされているかを整理する必要がある。

AOAでは機能が果たされている部門で所得を認識することになるので、例えば、日本支店において販売機能を果たしている場合で、収益の記帳が外国の本店で一括して行われている場合には、日本支店が本店とは別個の分離した独立の企業と擬制した場合の収益を日本支店のPE帰属国内源泉所得と認識する必要がある。この場合、実際に所得の送金を行うかどうかは各国の制度に従うことになる。

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連載目次

「法人税に係る帰属主義及びAOAの導入と実務への影響」(全15回)

【第1回】 「改正の趣旨と背景」

1 はじめに

2 改正の趣旨と背景

2-1 総合主義から帰属主義へ

2-2 AOAの導入

2-3 改正の概要

2-3-1 外国法人の日本支店の課税所得計算の見直し(概要)

2-3-2 内国法人に影響する改正点(概要)

【第2回】 「改正の内容①」

3 改正の内容

3-1 外国法人の法人税

3-1-1 改正の概要

3-1-2 国内源泉所得(ソ-スル-ル)の改正

3-1-3 課税標準の改正

3-1-4 PEの定義の不変更

【第3回】 「改正の内容②」

3-1-5 恒久的施設帰属所得金額の計算

3-1-5-1 恒久的施設帰属所得に係る所得の金額の計算

3-1-5-2 還付金等の益金不算入

3-1-5-3 保険会社の投資資産及び投資収益

【第4回】 「改正の内容③」

3-1-5-4 PE帰属資本に対応する負債利子の損金不算入

【第5回】 「改正の内容④」

3-1-5-5 外国銀行等の資本に係る負債利子の損金算入

3-1-5-6 法人税額から控除する外国税額の損金不算入

3-1-5-7 本店配賦経費に関する書類の保存がない場合における本店配賦経費の損金不算入

3-1-5-8 PEの閉鎖・再進出の扱い

【第6回】 「改正の内容⑤」

3-1-6 恒久的施設非帰属所得に係る所得金額の計算

3-1-7 繰越欠損金

3-1-8 税額の計算

【第7回】 「改正の内容⑥」

3-1-9 中間申告

3-1-10 確定申告

3-1-11 納付

3-1-12 還付

3-1-13 更正の請求

3-1-14 青色申告

【第8回】 「改正の内容⑦」

3-1-15 PEに係る取引に係る文書化

3-1-16 更正及び決定

3-1-17 帳簿書類の備付け等

【第9回】 「改正の内容⑧」

3-1-18 PEの定義

3-1-19 外国法人の内部取引に係る課税の特例(独立企業原則の適用)

【第10回】 「内国法人の法人税①」

3-2  内国法人の法人税

3-2-1 外国税額控除の改正

3-2-1-1 国外源泉所得

【第11回】 「内国法人の法人税②」

3-2-1-2 国外所得金額の計算

【第12回】 「内国法人の法人税③」

3-2-1-3 控除限度額の計算

3-2-1-4 外国税額控除の対象とならない外国法人税の額

3-2-1-5 文書化

3-2-1-6 適格合併が行われた場合の繰越控除限度額等

3-2-2 連結事業年度における外国税額の控除

【第13回】 「外国法人の所得税」

3-3 外国法人の所得税

3-3-1 外国法人に係る所得税の課税標準

3-3-2 国内に恒久的施設を有する外国法人の受ける国内源泉所得に係る課税の特例

【第14回】 「企業活動への影響」

4 企業活動への影響

4-1 外国法人・内国法人に共通の影響

4-1-1 AOA導入国がまだ少ないことによる影響

4-1-2 移転価格並みの独立企業間価格の計算と文書化が必要なこと

4-1-3 重要な人的機能の認識により所得配分のあり方が変わること

4-1-4 資本配賦計算が必要になること

4-2 日本に支店をもつ外国法人への影響

4-3 外国支店を有する内国法人への影響

【第15回】 「適用開始日までに準備すべき事項」

5 適用開始日(平成28年4月1日以降開始事業年度)までに準備すべき事項

5-1 外国法人の日本支店の準備

5-2 国外PEを有する内国法人の準備

筆者紹介

小林 正彦

(こばやし・まさひこ)

デロイト トーマツ税理士法人 東京事務所
移転価格サービス
パートナー/税理士

1957年生まれ
長野県松本市出身

【職歴】
・1980年4月東京国税局採用
・1980年から2006年まで、国税庁、東京国税局調査部、東京国税局管内税務署において移転価格・相互協議、APA審査、法人税調査、所得税調査、源泉税調査事務等国際課税関係事務を中心に幅広い国税に関する実務を経験
・2006年7月税大研究部教授を最後に国税庁を退官、税理士法人トーマツに入社
・2008年7月パートナー就任
・現在、移転価格サービス所属パートナー、租税争訟支援サービスチームのヘッドとして、移転価格を含む税務調査対応、不服申立て、移転価格プランニング、APA申請、相互協議等に幅広い分野に関するコンサルティング業務に従事

【著書】
・『平成25年1月施行の実務に対応!税務調査のすべてQ&A』共著(清文社)

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