公開日: 2017/02/16 (掲載号:No.206)
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税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第3回】「不当な不動産売却がなされた直後の救済方法」-審判前の保全処分-

筆者: 栗田 祐太郎

税理士が知っておきたい
[認知症]相続問題

〔Q&A編〕
【第3回】

「不当な不動産売却がなされた直後の救済方法」

-審判前の保全処分-

 

クレド法律事務所
駒澤大学法科大学院非常勤講師
弁護士 栗田 祐太郎

 

[設問03]

私には2年前より認知症となっている父がおります。

元々、父は、自身が土地・建物を所有する大阪の実家で一人暮らしをしていました。私は東京に住んでいましたが、認知症が進行し一人では生活できなくなった父の面倒を看る必要があるということで、昨年より実家に戻って生活をしています。

私には神戸に住む妹が一人おりますが、妹は大阪の実家にはほとんど寄りつかず、父の世話もしようとはしません。

◆  ◆  ◆

そのような妹が、「たまには私も父と話がしたい」ということで、珍しく実家を訪ねてきたのです。私も、気を遣って、半日ほど外出し、2人だけで話ができる時間を作ってあげました。

ところが、それから2週間ぐらい経ったころ、神戸の不動産業者より我々の所へ電話があり、「先日の売買契約ではお世話になりました。ついては建物からの退去日と取壊し工事の開始をいつにしましょうか」という問合せがあったのです。

◆  ◆  ◆

突然のことでまったく事情を飲み込めなかったので相手に確認したところ、「妹が父の元を訪ねてきた日に、父みずからが実家の土地・建物を不動産業者に売却するとの売買契約書に署名捺印していたこと」が判明しました。

私は大変驚き、すぐ妹に電話したところ、「お父さんは、長年離れて暮らしている私のことが気がかりだということで、実家を売ったお金の半分を私にくれると言っていた。もう半分はお父さんの口座に入ったのだから、別にいいじゃないの」と完全に開き直っていました。そのため、売買契約をすぐに取り消すよう強く迫りましたが、妹は全く聞く耳を持ちません。

◆  ◆  ◆

父は常々、「先祖代々の不動産をこの先も守っていきたい」と私に話していたことから、父が売却を了解するなどということはあり得ない話と思います。

実家の不動産を取り戻し、建物の取り壊しを防ぐために、私はどのような方法が取れるでしょうか。

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[認知症]相続問題

〔Q&A編〕
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「不当な不動産売却がなされた直後の救済方法」

-審判前の保全処分-

 

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弁護士 栗田 祐太郎

 

[設問03]

私には2年前より認知症となっている父がおります。

元々、父は、自身が土地・建物を所有する大阪の実家で一人暮らしをしていました。私は東京に住んでいましたが、認知症が進行し一人では生活できなくなった父の面倒を看る必要があるということで、昨年より実家に戻って生活をしています。

私には神戸に住む妹が一人おりますが、妹は大阪の実家にはほとんど寄りつかず、父の世話もしようとはしません。

◆  ◆  ◆

そのような妹が、「たまには私も父と話がしたい」ということで、珍しく実家を訪ねてきたのです。私も、気を遣って、半日ほど外出し、2人だけで話ができる時間を作ってあげました。

ところが、それから2週間ぐらい経ったころ、神戸の不動産業者より我々の所へ電話があり、「先日の売買契約ではお世話になりました。ついては建物からの退去日と取壊し工事の開始をいつにしましょうか」という問合せがあったのです。

◆  ◆  ◆

突然のことでまったく事情を飲み込めなかったので相手に確認したところ、「妹が父の元を訪ねてきた日に、父みずからが実家の土地・建物を不動産業者に売却するとの売買契約書に署名捺印していたこと」が判明しました。

私は大変驚き、すぐ妹に電話したところ、「お父さんは、長年離れて暮らしている私のことが気がかりだということで、実家を売ったお金の半分を私にくれると言っていた。もう半分はお父さんの口座に入ったのだから、別にいいじゃないの」と完全に開き直っていました。そのため、売買契約をすぐに取り消すよう強く迫りましたが、妹は全く聞く耳を持ちません。

◆  ◆  ◆

父は常々、「先祖代々の不動産をこの先も守っていきたい」と私に話していたことから、父が売却を了解するなどということはあり得ない話と思います。

実家の不動産を取り戻し、建物の取り壊しを防ぐために、私はどのような方法が取れるでしょうか。

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連載目次

税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題

連載が単行本になりました!!
くわしくは[こちら

〔解説編〕

〔Q&A編〕

筆者紹介

栗田 祐太郎

(くりた・ゆうたろう)

弁護士
クレド法律事務所 パートナー弁護士(東京弁護士会所属)

複雑に利害が対立する相続・労働・契約紛争につき、これまで数多く取り扱う。示談交渉のほか、調停・審判・民事訴訟等の各種法的手段を効果的に利用しながら依頼者の納得いく解決を目指す姿勢に、感謝の声が寄せられることも多い。(元 駒澤大学法科大学院 非常勤講師(家事紛争法実務)〔在職期間:2013年9月~2019年8月〕)

【主な著書】
税理士が知っておきたい「認知症」と相続・財産管理の実務』(清文社)
平成25年9月改訂 Q&A遺産分割の実務』(共著、清文社)等

 

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