税理士のための
〈リスクを回避する〉
顧問契約・委託契約Q&A
【第5回】
「監査法人(公認会計士)が関与している関与先における
税理士の注意義務」
弁護士・税理士
米倉 裕樹
弁護士・ 関西大学法科大学院教授
元氏 成保
弁護士・税理士
橋森 正樹
Q
X社は、会社法2条6号の大会社に該当し、決算について会計監査人の監査を受けることが義務付けられており(同法328条)、大手監査法人AがX社の会計監査人となっていた。そして、税理士YはX社との間で税務顧問契約を締結しており、毎年、X社から法人税確定申告書等の作成と税務代理の委任を受けていた。
X社の経理担当者Bは、インターネットを使って調べている中で、自社の自己資本比率が50%以下であった場合、租税特別措置法に規定されている特例制度(以下、「本件特例」という)を用いることができ、税負担を軽減することが可能であることを知った。そこで、Bは、日頃からよくコミュニケーションをとっていた監査法人Aの担当者である公認会計士Cに、「自社の自己資本比率を計算したいのだが、計算方法がよく分からないので、教えてほしい」と依頼した。
Cは税理士登録をしていなかったが、Bの依頼を受け、代わってX社の自己資本比率を計算した上で、Bに対し、「以下のとおり、X社の自己資本比率は60%となります」との結論と計算過程を記載したメモを手渡した。
当該期の法人税の申告書の作成に際し、Bは税理士Yに対し、「既に監査法人に確認してもらったところ、当社の自己資本比率は50%を超過していました。したがって、本件特例を適用させることはできません。前年の申告と同じように申告して下さい。」と依頼し、Cから受け取ったメモを手渡した。
Yは、申告書の提出期限まで日がなかったこともあり、Bから受け取ったメモについて、精査することなく誤記と思われる部分を訂正する程度でそのまま用いて、本件特例を適用しない法人税確定申告書を作成し、税務署に提出した。
後日、X社と監査法人Aとの関係が悪化し、会計監査人が別の監査法人に交代することとなった。そして、その新しい監査法人の担当者が、X社の自己資本比率は45%であり、本件特例を適用させることができたと指摘した。
実際にX社の自己資本比率が45%であった場合、本件特例を適用しない法人税確定申告書を提出したYは、X社からその責任を問われ得るのか。
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