企業経営と
メンタルアカウンティング
~管理会計で紐解く“ココロの会計”~
【第12回】
「ココロの中のゆがんだ割引計算」
公認会計士 石王丸 香菜子
《登場人物》
PN社は、文具や雑貨の製造・販売を手がけるメーカーです。
3月下旬、決算を間近に控えた経理部長は業務に追われています。
〈第1事業部長〉
経理部長、A社への売上の件で相談があるんだが・・・。
〈経理部長〉
A社への売上なら、今週中に先方の検収予定ですね。
当期中に5,000万円の売上が計上できるから、本当によかった。
A社は、検収後すぐに入金してくれますしね!
期末が近づくと、当期利益がいくらになるか気になって、胃が痛いんですよ。
〈第1事業部長〉
・・・それが、A社から、「検収と支払を1ヶ月延期してくれないか」って、連絡があってね。A社の都合で、3月中に検収するのが難しいらしいんだ。
〈経理部長〉
えぇ!
検収を1ヶ月延期したら、売上も入金も来期になってしまうじゃないですか!
何とか当期中に検収してもらってくださいよ!!
〈第1事業部長〉
でも、検収を1ヶ月延期できるなら、契約金額を現状の5,000万円から5,025万円にアップしても構わないそうなんだが・・・。
〈経理部長〉
当期中に売上計上できるつもりでいたのに、1ヶ月も待てません!
5,000万円でいいから、早く検収してもらってください!!
〈第1事業部長〉
わ、わかった、わかった。
それでは何とか3月中に検収してもらうように、もう一度A社と交渉してみるよ。
・・・(翌日)・・・
〈経理部のカズノ君〉
経理部長、先ほど第2事業部長から内線があって、経理部長に伝言を頼まれました。
〈経理部長〉
何の用件だい?
〈経理部のカズノ君〉
毎年B学校法人に納入している、入学準備品の件で相談したいとのことでした。
〈経理部長〉
あぁ、マンモス校への学校指定用品の売上だね。
その件なら、先々週に納入して入金されたよ。
〈経理部のカズノ君〉
いえ、1年後の契約の話なんです。
B学校法人の都合で、1年後の入学準備品については、契約金額を5,005万円にする代わりに4月に納入してほしいとのことでした。
入金時期も1ヶ月遅れることになるそうです。
〈経理部長〉
1年後の売上かぁ。
まあ、1ヶ月くらい遅れても仕方ないか。
第2事業部長に、了解した旨を伝えておいてくれるかい。
〈経理部のカズノ君〉
はい、わかりました(なんだか、昨日の件と矛盾しているような・・・)。
*資料*
- A社に対する売上とその入金は、現在では5,000万円であるが、1ヶ月後には5,025万円になる。
⇒ PN社はどちらを選ぶべきだろうか。 - B学校法人に対する売上とその入金は、1年後では5,000万円であるが、1年1ヶ月後には5,005万円になる。
⇒ PN社はどちらを選ぶべきだろうか。
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