企業経営と
メンタルアカウンティング
~管理会計で紐解く“ココロの会計”~
【第14回】
「理不尽な「お気に入り」」
公認会計士 石王丸 香菜子
《登場人物》
PN社は、文具や雑貨の製造・販売を手がけるメーカーです。
第2事業部に経理部のカズノ君が呼ばれました。
〈第2事業部長〉
カズノ君、忙しいところ呼び出してごめんなさいね。
〈経理部のカズノ君〉
急ぎの仕事はないので大丈夫です。
それにしても、今日は部内がガランとしていますね。
〈第2事業部長〉
大規模な展示会があって、みんな出払っているのよ。
〈経理部のカズノ君〉
なるほど。
それで、僕は何をお手伝いすればいいんですか?
〈第2事業部長〉
展示会とは別に、得意先から急ぎの注文があってね。
明日中に、得意先のロゴを入れたノベルティを納品することになっているの。
〈経理部のカズノ君〉
明日中ですか!? 急がないと!!
〈第2事業部長〉
専用機械を使ってロゴ入れとコーティングをするんだけれど、旧機種だから2人がかりで作業する必要があるの。ご覧の通り人手が足りないから、カズノ君に手伝いをお願いしたというワケなのよ。
〈経理部のカズノ君〉
初めてですけど、僕にできますか?
〈第2事業部長〉
ベテランの人と組んで作業してもらうから大丈夫よ。
私はこれから展示会の商談ブースに行かなくちゃならないの。
夕方には戻るから、それまでお願いね。
〈経理部のカズノ君〉
わかりました。頑張ります!
・・・(夕方)・・・
〈第2事業部長〉
ただいま~!
カズノ君、作業は終わったかしら?
〈経理部のカズノ君〉
な、なんとか終わりました。
でも慣れない大変な作業で、腕がつって・・・。
イタタタ・・・。
〈第2事業部長〉
本当に助かったわ! ありがとう!
〈経理部のカズノ君〉
ところで、一緒に作業した方が話していたんですけど、最新機種は手作業が少なくて済むらしいですよ!
最新機種に買い替えましょうよ~!
〈第2事業部長〉
あの機械は、私が開発部門にいた時から使っている相棒なのよ。
旧機種だけど、長持ちして良い機械なんだから。
〈経理部のカズノ君〉
でも、今なら1,500万円の下取価格が付くらしいですよ。
最新機種に買い替えればランニングコストも安く済むそうですし・・・。
〈第2事業部長〉
ダメダメ、もとは4,800万円もしたのよ!
まだ使える大事な相棒を、そんな安値では売れないわ!
〈経理部のカズノ君〉
そんなぁ~。
*資料*
● 第2事業部では機械を利用している。
現有機種に関するデータは以下の通りである。
《現有機種》
◇取得価額:4,800万円
◇耐用年数:12年(現時点で8年経過している)
◇減価償却:残存価額ゼロとする定額法
◇耐用年数経過後(現時点から4年後)の見積売却価額:0
◇備考:年間800万円のランニングコストが生じる。
● 同種機械の最新機種に関するデータは以下の通りである。
最新機種に買い替える場合、現有機種は現時点で1,500万円にて売却する。
《最新機種》
◇取得価額:3,200万円
◇耐用年数:4年
◇減価償却:残存価額ゼロとする定額法
◇耐用年数経過後(現時点から4年後)の見積売却価額:320万円
◇備考:年間200万円のランニングコストが生じる。
● 現有機種と最新機種の間で、製品の生産量や品質に差は生じない。
● PN社の資本コストは税引後10%、法人税率は30%として計算する。
* * *
1 断捨離を妨害する「お気に入り」
誰にでも「お気に入り」はあるものです。シミがあるけれど思い出の詰まったぬいぐるみ、古いモデルだけれど使い慣れているパソコンなどなど・・・。
では、あなたのお気に入りのシミ付きぬいぐるみを、誰かが買い取りたいと言ったら、あなたはどうしますか? 大事なぬいぐるみですから、二束三文では売りたくないはずです。しかし例えば、5,000円なら売ってもいいと思うかもしれませんね。
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