令和時代の幕開けに思い馳せる
会計事務所経営

【第1回】
「会計事務所経営とは何か」
~今こそ気づき、考え、そして動くとき~
株式会社アーヌエヌエ
代表取締役 杉山 豊
皆様、はじめまして。
今回から連載を始めさせていただくことになりました、杉山 豊と申します。
テーマはズバリ、「会計事務所経営」です。
これまで25年余り、全国各地の数多くの会計事務所の先生、そして職員の皆様とたくさんのお仕事をご一緒してきました。
私は生命保険会社の営業マンを長年やってきましたが、実は生命保険の販売支援に限らず、社員向けのセールス研修に始まり、採用面接への協力、そして所長先生の悩みや課題のご相談にもあたってきました。
僭越ながら、いわば会計事務所の経営顧問をやらせていただいたような感じでしょうか。
だからこそ今回、このような連載の機会をいただけたのではないかと考えております。
➤ 「営業マン」だったからこそわかること
さて、「保険の営業マンに会計事務所の経営顧問なんてできるの?」と、疑問を持たれる読者の先生方もいらっしゃるかもしれません。
会計事務所も事業会社であり、顧問先が増えなければ売上が上がりません。
実際に、売上などに不安を感じていた先生方から、
- どのように顧問先を増やしたらよいのか。
- 顧客単価を上げていくにはどうしたらよいのか。
- 対価である顧問料の入金が遅延したり、減額要請があった時に、社員にどのように対応させればよいのか。
- 自身含め、社員も顧問先の経営者の方々としっかりコミュニケーションが取れているのか。
会計事務所経営の内情を知る、外部の人間であるからこそ、客観的な視点で辛辣かつ的確なアドバイスができるのかもしれません。
本稿を読まれている先生方、どうぞ今日から、訪問してくる営業マンを大切にしてあげてください。
決して飛び込み営業の電話を切るよう職員さんに指示したりしないでくださいね。その営業マンが先生にとっての救世主になるかもしれません。一度会って話してみて、そこで判断すればいいと思いませんか。
➤ 「経営者」としての自覚を持つ
さて、ここで本稿の一番重要なポイントをお話します。
先生方、どうぞこれからは「先生家業」ではなく、「経営者」として事務所経営にあたってください。「先生」と呼ばせずに「社長」と呼ばせるぐらいの気概で立ち居振る舞ってください。
中小企業に経営指導をしていくならば、まずは自分自身が経営者として何を目指すのか、会社をどのようにしていきたいのか、地域に、世の中にどのように貢献していきたいのか、独自の理念(先生の価値観)をしっかりと持ってください。
理念があってこその事業戦略です。どの市場にどんな価値を提供していくのか、月次監査だけが会計事務所の業務ではありません。
これからはテクノロジーの時代です。RPA(※)等が加速度的にこの世の中を凌駕していけば、旧態依然の事業ドメインは危機的状況に陥るでしょう。
(※) Robotic Process Automation:ビジネスにおいて人間のみが対応可能とされていた作業(主にホワイトカラー業務)を自動化・効率化する取り組みのこと。
今後を見据えてRPAを自ら企て、その市場に参入する会計事務所の先生もいる中で、それでも心地よい、変わらない、今の居場所にいることを選びますか?
今や大廃業時代、この流れは止めたくても止まりません。一方で起業する方々には経営指導者がおらず、経営が上手くいかないまま、5年も持たずに会社を畳むことも珍しくありません。
日本経済を支えているのは中小企業です。バブル時代は約650万社と言われていましたが今や約380万社にまで減りました。今後もどんどん企業が減っていく中で、生きた数字を教え伝えていく、若い経営者をどんどん育成していく、そんな使命感で会計事務所経営を考えてみませんか。
顧問先の経営者はいつもこのような外部環境の変化と対峙し、どの市場でどの商品で勝負するべきか、そのためにどんな投資をして、どのように社員を配置していくか・・・。これらを日々、瞬時にYES、NOの意思決定をしているのです。
ここで1つ先生方に覚えておいてほしいことは、「メールはすぐに返してくださいね」ということです。
経営者の日々の選択のスピード感を理解していれば、早く返してあげたくなりませんか。経営者は答えまでは求めていません、メールを見たか見ないかだけをまず知りたいのです。
さて、そんな先生も立派な経営者です。なぜなら従業員を雇っており、その従業員と家族を守らなければならない、責任あるお立場だからです。
従業員のモチベーションを考えていますか。どうしたら気持ちよく元気に働いてくれるでしょうか。どうやったら彼らに満足な給与を渡すことができるでしょうか。
これらを考えるのが経営者です。試行錯誤し事業展開をしっかり考えて、適切な投資と人材配置をしていく。これからは顧問先と同じ気持ちで経営に当たってみてください。
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税理士受験者は減る一方だと言われています。
目指す人が増える、魅力ある会計業界にするためには、しっかり事務所として顧問先の経営を黒字化して売上を上げ、そして貢献してくれた従業員に利益を還元し、またその利益で新たなビジネスを創造することです。
日本を明るくする、会計業界を明るくする、それが先生方に求められている役割ではないでしょうか。
(了)
この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

