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租税争訟レポート 【第77回】「所得税等の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分の取消請求事件~青色事業専従者給与の適正額(第1審:長野地方裁判所令和4年12月9日判決、控訴審:東京高等裁判所令和5年8月3日判決)」

租税争訟レポート 【第77回】 「所得税等の各更正処分並びに 過少申告加算税の各賦課決定処分の取消請求事件 ~青色事業専従者給与の適正額 (第1審:長野地方裁判所令和4年12月9日判決、 控訴審:東京高等裁判所令和5年8月3日判決)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【判決の概要】 〈第1審判決の概要〉 〈控訴審判決の概要〉   【事案の概要】 本件は、長野県岡谷市内に開設された診療所で内科等の医業を営む医師であり、青色申告の承認を受けている原告が、平成28年分から平成30年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」と総称する)の各確定申告について、看護師である自己の配偶者に支払ったとする青色事業専従者給与年額1,800万円(月額100万円+賞与300万円×2回)の相当性を一部否認して、処分行政庁がした増額更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件各処分」と総称する)は違法であると主張して、更正処分の増額部分及び過少申告加算税の賦課決定処分の取消しを求める事案である。   【争点と当事者の主張】 1 本件専従者給与の額が、所得税法57条1項の「労務の対価として相当であると認められる」ものか(専従者給与の額の相当性)〔争点1〕 (1) 被告の主張 被告は、「青色事業専従者給与に関する届出書(本件届出書)」、「青色事業専従者給与に関する変更届出書(本件各変更届出書)」、諏訪税務署の職員による調査で配偶者から受領した書面に加え、訴訟における各証拠を見ても、配偶者の労務の性質及び労務の提供の程度等は明らかではなく、原告が雇用する他の看護師使用人の労務との間に質的に異なる程の大きな差異はないこと、原告の事業と同種の事業でその規模が類似するものに従事する者が支払を受ける給与と比較する方法(以下「類似同業者給与比準方式」という)により算出した金額(平成28年及び平成29年分につきいずれも821万3,334円、平成30年分につき792万4,922円)と比較した場合、本件専従者給与の額は、平成28年分及び29年分がいずれも約2.19倍、平成30年分が約2.27倍と高額であると指摘したうえで、本件専従者給与の年額1,800万円は、「労務の対価として相当であると認められる」ものとはいえないと主張した。 (2) 原告の主張 原告は、原告の配偶者は、看護師長と事務長を兼任しており、看護師と事務員の統括、外来看護、受付業務、調剤等を行っており、使用人の誰よりも早く出勤し、最後まで居残って業務を行っており、昼休みには、在宅医療の往診、特定検診、予防接種、必要品の購入、銀行への振込も行い、終業後には、当日分の日計表の作成、領収書の整理、翌日の振込準備を行っていることに加え、毎月、職員の給料計算等の労務管理や社会保険関係の書類の提出を行い、インフルエンザの予防接種の時期になれば、休日である土曜日及び日曜日にも接種及びその準備等を行うなど、時間外・休日労働が年900時間以上にのぼると説明したうえで、さらに、精神的負荷も大きいことから、配偶者の従事する業務は余人をもって代え難いものであり、質及び量のいずれの観点から見ても幅広くかつ多くの業務をこなし、本件事業に多大な貢献をしていることを明らかにした。 そのうえで、専従者給与の年額1,800万円は、配偶者の看護師としての経験・勤務年数、仕事の内容、労働時間及び役職等に照らし、労務の対価として相当であると認められるものであると主張した。 2 専従者給与の額が「労務の対価として相当であると認められる」ものでない場合、相当な金額はいくらか(本件における適正給与相当額)〔争点2〕 (1) 被告の主張 被告は、各年分について、配偶者が事業のために提供していた労務の性質及び労務の提供の程度については不明であり、その事業に従事する他の使用人が支払を受ける給与の状況と比較する方法(使用人給与比準方式)は適当ではないから、類似同業者給与比準方式により適正給与相当額を算定するのが適当であるとして、かかる方式で算出した、類似同業者の平均額である平成28年分及び平成29年分の821万3,334円、平成30年分の792万4,922円が、本件における適正給与相当額となると主張した。 (2) 原告の主張 原告は、被告の主張については争うとし、被告が主張する金額は、配偶者の看護師としての経験・勤務年数、仕事の内容、労働時間及び役職等を全く考慮しておらず、適正給与相当額とはいえないと主張した。   【長野地方裁判所の判断】 長野地方裁判所は、結論としては、原告の請求はいずれも理由がないから棄却するという判決を言い渡した。 争点ごとの裁判所の判断は、次のとおりである。 1 本件専従者給与の額が、所得税法57条1項の「労務の対価として相当であると認められる」ものか(専従者給与の額の相当性)〔争点1〕 裁判所は、所得税法57条1項の規定は、納税者が青色申告の承認を受けている場合は、同法56条の規定にかかわらず、特例として、納税者と生計を一にする親族が受ける給与の金額のうち、その労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、その事業の種類及び規模、その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況等に照らしその労務の対価として相当であると認められるものは、当該納税者の事業所得等の計算上必要経費に算入することができるとするものであり、所得税法施行令164条1項は、①青色事業専従者の労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、②その事業に従事する他の使用人が支払を受ける給与の状況及びその事業と同種の事業でその規模が類似するものに従事する者が支払を受ける給与の状況、③その事業の種類及び規模並びにその収益の状況と規定していると、所得税法の規定を示したうえで、青色事業専従者に支払った給与の額と提供された労務との対価関係が明確であるものに限られるというべきであると判示した。 そのうえで、裁判所は、原告による青色事業専従者給与の算出方法は、一方で配偶者についてのみタイムカード等による労働時間の管理を行わず、その代償として管理職手当を計上していながら、他方で時間外労働等の対価として割増賃金を計上している自家撞着があることなど、恣意的なこじつけといわざるを得ないと断じた。 さらに裁判所は、各変更届出書によれば、原告が配偶者に支払う青色事業専従者給与の月額は、本件配偶者が看護師資格を得て本件事業に従事し始めたことがうかがわれる平成15年4月以後の月額45万円から、平成18年1月以後は月額70万円、平成19年1月以後は月額80万円、平成21年1月以後は月額100万円と漸増しているところ、この間、「仕事の内容・従事の程度」欄の記載は、一貫して看護師、事務及び経理というものであって、平成15年4月以降変更はないし、この間に事業が拡大するなど、配偶者の業務が特段に増加したような事情も格別うかがわれないことから、平成17年12月までは月額45万円であった支給額が、僅か3年余りで2倍以上に増額となった経緯についても、その具体的理由は全く不分明であり、その観点からも、本件専従者給与の月額100万円と労務の対価関係は明らかであるとはいい難いとして、専従者給与の額1,800万円が、配偶者の労務の対価として相当であるとは認められないという判断を示した。 2 専従者給与の額が「労務の対価として相当であると認められる」ものでない場合、相当な金額はいくらか(本件における適正給与相当額)〔争点2〕 裁判所は、〔争点2〕である「適正給与額」について、配偶者の労務内容や労務の量を具体的に認定することができず、専従者給与の額は、配偶者の労務との対価関係が明らかではない以上、処分行政庁が推計計算によって適正給与相当額を算出したことは相当であると述べたうえで、処分行政庁が採用した、類似同業者給与比準方式について、本件診療所と同じ又は隣接する税務署の管内に事業所を有する個人事業主、かつ、青色申告事業者で、年間を通じて青色事業専従者給与を配偶者に支払っており、当該配偶者が看護師資格を有する者として設定し、原告との類似性を確保しており、その抽出基準の設定は合理性が認められるうえ、各税務署長に指示して回答させる方法により、上記基準に該当するものを機械的、無作為に収集しているのであって、この過程に恣意性はないことなどを理由に、類似同業者給与比準方式によって算出した平均額は、所得税法57条1項に照らし、適正な青色事業専従者給与額と評価することができ、処分行政庁が採用した推計方法は合理的なものと認めることができるという判断を示した。 また、裁判所は、原告による、類似同業者給与比準方式によって算出した平均額は、配偶者の看護師としての経験・勤務年数、仕事の内容、労働時間及び役職等を全く考慮しておらず、適正給与相当額ではないという主張に対しては、配偶者の労務内容や労務の量を具体的に認定することができないうえに、原告が主張するそれらの事情が、上記過程により算出された平均値に吸収され得ないほどの特殊な事情であることは具体的に明らかとなっていないことを理由に、原告の主張は採用する前提を欠くと断じた。 そして裁判所は、結論として、本件における適正給与相当額は、処分行政庁がとった推計方法により算出された、平成28年分及び平成29年分につき821万3,334円、平成30年分につき792万4,922円と認めるのが相当であるから、専従者給与の額1,800万円は所得税法57条1項の「労務の対価として相当であると認められる」ものとはいえず、適正給与相当額を超える額は、所得税等における事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することができないというべきであるという判決を言い渡して、原告の主張を棄却した。   【東京高等裁判所の判断】 控訴審である東京高等裁判所も、結論としては、原審である長野地方裁判所と同様、各処分を取り消すべき違法は認められず、控訴人の請求をいずれも棄却するのが相当であると判断するとしたうえで、控訴人の主張(補充主張)に対する判断を次のように示している。 1 控訴審における控訴人の主張(補充主張) 控訴人は、診療所において、自らが医師として、配偶者が看護師及び事務員の統括等を行うなどして二人三脚の状態で事業を営んでいるものであり、配偶者は実際上、共同経営者の立場にあり、労慟時間においては事業主である控訴人を上回るものであったところ、諏訪税務署の職員が各確定申告に関し、令和元年8月から令和2年9月にかけて行った各種の調査では、配偶者の労務内容や労務の量について、来院者や診療所における他の被用者らに対する聞き取りなど実態調査を行っていない違法があり、これらを実施すれば、配偶者の労務と本件専従者給与との対価関係が明確となると主張した〔補充主張1〕。 さらに、控訴人は、処分行政庁が配偶者の適正給与相当額の算出に当たり抽出した類似同業者における青色事業専従者の労務内容、労働時間等の情報を開示せず、一方的に相当額を算出して各処分を行ったことは、憲法22条が保障する営業の自由を侵害するものであると主張した〔補充主張2〕。 2 控訴審における控訴人の主張(補充主張)に対する東京高等裁判所の判断 裁判所は、控訴人による〔補充主張1〕に対して、控訴人の配偶者は、看護師使用人と比較すると多様な業務に従事しており、看護師長兼事務長として責任のある業務を担当し、かつ、その労務に従事した時間もある程度長時間に及んでいたことはうかがえるものの、タイムカード等による労働時間の管理等が行われておらず、その労務内容や労務の量を客観的に裏付ける証拠はなく、労働時間、業務の多様性、責任や精神的負荷の大きさ等が具体的にどのように考慮されて専従者給与の支給額に反映されたのかが、配偶者に対する青色事業専従者給与の額が平成17年12月から3年余りで2倍以上に増加した経緯等も含めて判然とせず、専従者給与の額は、配偶者の労務と対価関係が明確であるとはいえないとの判断を示すとともに、諏訪税務署の職員は、調査において、配偶者の労務内容や労務の量について、控訴人、配偶者及び控訴人の関与税理士に対する聞き取り調査を行うとともに、資料等の提出を受けていることから、来院者や診療所における他の被用者らに対する聞き取りなどを実施しても、配偶者の労務内容や労務の量等が客観的に明らかになるとは認め難く、本件調査に違法又は不備があったともいえないことから、控訴人の〔補充主張1〕は採用することができないとの判断を示した。 さらに、裁判所は、控訴人による〔補充主張2〕に対して、処分行政庁は、配偶者の適正給与相当額の算出に当たり、類似同業者給与比準方式を採用し、類似同業者を抽出するに当たり、その抽出基準を、控訴人と同じ業種、類似する収入規模、診療所と同じ又は隣接する税務署の管内に事業所を有する個人事業主、かつ、青色申告事業者で、年間を通じて青色事業専従者給与を配偶者に支払っており、配偶者が看護師資格を有する者として設定し、控訴人との類似性を確保するとともに、その所得税等の申告が確定している者を基準として設定し、災害等の特殊状況下にある者を除外するなどして、資料の正確性も担保しており、その抽出基準の設定は合理性が認められること、基準に該当するものを機械的、無作為に収集しており、この過程に恣意性はないこと、収集された類似同業者の数も各類似同業者の特殊性や個別事情等を平均化しうるに足りる数が確保できていることからすれば、類似同業者については、その信頼性及び控訴人との類似性は担保されているといえ、その結果算出された類似同業者における青色事業専従者が支払を受けた給与の平均額は、所得税法57条1項に照らし、適正な青色事業専従者給与額と評価することができ、処分行政庁が採用した推計方法は合理的なものと認めることができることから、被控訴人又は処分行政庁が、控訴人に対し、抽出基準及びその結果以上に、類似同業者における青色事業専従者の労務内容、労働時間等の情報まで開示する必要性は認め難く、情報の開示がないことをもって、控訴人の営業の自由が侵害されたとはいえないと判断をして、控訴人の主張を斥けた。   【判決の特徴】 診療所を経営する医師が、自らの配偶者である看護師を青色事業専従者として給与を支給していたところ、所轄の税務署の調査が入り、青色専従者給与の一部を否認された課税処分の取消しを求める事案で、原告である医師は、訴訟代理人を立てずに、本人訴訟で臨んだようである。 本人訴訟を選択した理由は不明であるが、訴訟代理人を立てなかった結果、関与税理士を補佐人として出頭・陳述させることもできなかったことが、原告・控訴人に不利に働いた面があったかもしれない(第一審判決の中で原告の主張は、「恣意的なこじつけといわざるを得ない」とまで評されている)。 現行の税理士補佐人制度は、あくまで「訴訟代理人である弁護士の補佐」を行うものであり、訴訟当事者の補佐を行うものではない(下記参照。下線は筆者による)。 第1審判決から、原告の確定申告における青色事業専従者給与の額の変遷をまとめておきたい。なお、空欄は記載がないことを表し、表記は届出書の記入されたものである。 上記からは、平成15年以降、従事する業務内容及び資格に変更はないにもかかわらず、数年ごとに昇給を行っていることが見て取れる。 最後に、本件調査の対象となった年分の原告の確定申告における事業所得の金額及び処分行政庁による更正処分に係る事業所得の金額を見ておきたい(単位はいずれも「円」)。   (了)

#No. 605(掲載号)
#米澤 勝
2025/02/06

〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第49回】「国際的組織再編に対する法人税法132条1項適用の是非」

〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第49回】 「国際的組織再編に対する法人税法132条1項適用の是非」   公認会計士・税理士 霞 晴久   〔Q〕 国際的な組織再編に対し、法人税法132条1項に規定する同族会社の行為計算否認規定の適用の是非が争われた事例はあるのでしょうか。 〔A〕 本連載【第27回】で取り上げたユニバーサルミュージック事件以外でもIBM事件が知られており、そこでは、課税当局の「納税者が行った一連の行為は、法人税の負担を減少させる不当なものと評価されるべき」という主張は、裁判所に提出された全証拠によっても認め難いという判断が示されました。 ●●●〔解説〕●●● 1 問題の所在 (1) 平成13年度の税制改正(帳簿価額基準の廃止) 法人税法におけるみなし配当の額は、平成13年度の税制改正前は、法人株主等が交付を受ける金銭等の額が旧株の帳簿価額を超える場合のその超える部分の額とされ、かつ、株式発行法人の資本金等の額に相当する部分以外の部分からなる金額とされていたが、本改正により、帳簿価額を基準とする考え方は廃止され、株式発行法人の資本金等の額を基準とした算定方法だけが残り、結果的に、所得税法における取扱いと同一とされた。この趣旨については、「法人がその活動により稼得した利益を還元したと考えられる部分の金額の有無や多寡は、本来、その株主等の株式の帳簿価額とは関係がない」(※1)という考え方によるものとされている。 (※1) 中尾睦ほか『平成13年版 改正税法のすべて』(大蔵財務協会・2001年)162頁参照。 (2) 自社株買いの設例 上記改正後の自社株買いに係る課税関係は以下のとおり。 【設例】下記甲法人の持分の10分の1を100で取得した後、同法人へ100で譲渡 上記改正以降、株式買取請求権の行使に対応して行われる自社株買い等によって発生する譲渡損失を利用するタックスプランニングは広く行われていた(※2)が、以下で取り上げるIBM事件では、国際的な組織再編により計上された譲渡損失につき、法人税法132条1項《同族会社の行為又は計算の否認》の規定を適用した課税処分の是非が争われた。 (※2) 太田洋=伊藤剛志編著『企業取引と税務否認の実務(第2版)』(大蔵財務協会・2022年)186~187頁参照。なお、現在の取扱いについては、後述の3(1)参照。   2 過去の裁判例 《【第一審】東京地裁平成26年5月9日判決(税資第264号-88(順号12469))》 (※3) 《【控訴審】東京高裁平成27年3月25日判決(税資第265号-56(順号12639))》 (※4) 《【上告審】最高裁平成28年2月18日決定(税資第266号-24(順号12802))》 (※5) (※3) TAINSコード:Z264-12469 (※4) TAINSコード:Z265-12639 (※5) TAINSコード:Z266-12802 (1) 事件の概要 本件は、外国法人であるA(※6)を唯一の社員とする同族会社であった内国法人X(原告・被控訴人)が、平成14年2月にAから内国法人B(※7)の発行済株式の全部を1兆9,500億円で取得(本件株式購入(※8))し、その後、平成17年12月までに3回にわたり同株式の一部を発行法人であるBに代金総額4,298億円で譲渡(本件各譲渡。1株当たりの譲渡価額は取得価額と同じ)して、当該株式の譲渡に係る対価の額(利益の配当とみなされる金額に相当する金額を控除した金額)と当該株式の譲渡に係る原価の額との差額である譲渡損失(総額3,995億円)を損金の額に算入し、結果生じた欠損金額に相当する金額を、平成20年1月1日に連結納税の承認があったものとみなされた連結所得の金額の計算上損金の額に算入して平成20年12月連結期の法人税の確定申告をしたところ、処分行政庁Y(被告・控訴人)が、法人税法132条1項の規定を適用して、本件各譲渡に係る譲渡損失の損金算入を否認する旨の更正処分を行った。Xは、かかる処分は違法なものであると主張し、出訴した。 (※6) 米国IBMグループの海外の関連会社を統括する持株会社。 (※7) 本件株式購入前は、AはB(日本IBM)の直接の親会社であった。従前BがAに支払う配当には日米租税条約により10%の源泉税が課せられていたが。当時米国では代替ミニマム課税(Alternative Minimum Tax)により外国税額控除が制限され、国際的二重課税が解消されていなかった。なお、本件では、米国税制上チェック・ザ・ボックス規定が適用され、XはAの支店とみなされるため、AによるXに対するA株式譲渡取引は、内部取引(本支店間取引)として課税されない。 (※8) 本件株式購入資金については、本件株式購入直前のAからの増資1,318億円(本件増資)及び借入金1兆8,182億円(本件融資)で賄われた。 Xの中間持株会社化と本件各譲渡(本件一連の取引)を図示すると、以下のとおり。 (2) 主な争点 譲渡損失により欠損金額が生じたことによる法人税の負担の減少が、法人税法132条1項にいう「不当」なものと評価することができるか。 (3) 裁判所の判断 ① 本件第一審判決 Yは、本件一連の行為を構成する本件各譲渡を容認して法人税の負担を減少させることは法人税法132条1項にいう「不当」なものと評価されるべきである旨主張し、その評価根拠事実として、①XをあえてBの中間持株会社としたことに正当な理由ないし事業目的があったとはいい難い、②本件融資は、独立した当事者間の通常の取引とは異なるものである、及び③本件各譲渡を含む本件一連の行為に租税回避の意図が認められるという3点を主張した。 東京地裁は上記①及び②について、Xを日本におけるIBMグループの中間持株会社として置いたことに正当な理由ないし事業目的がなかったとはいい難く、また、本件融資が独立した当事者間の通常の取引として到底あり得ないという証拠ないし事情等もないと判示して、Yの主張を斥けた。 また、③の租税回避の意図について、Yはさらに次の4つの点を主張したが、東京地裁はそれぞれ、要旨、以下のように判示してYの主張を排斥し、Xの勝訴となった。 (※9) 太田=伊藤・前掲(※2)194頁には、「多額の含み益を有する日本IBMの資産について連結納税開始前における時価評価益の認識(法人税法61条の11)を回避するためには、本件株式購入の後5年を超えた後に連結納税を開始する必要がある。しかしながら、2002年譲渡の当時、欠損金の繰越可能期間は5年とされており、本件株式購入の後5年を超えた後に連結納税を開始した場合には。2002年譲渡により発生する税務上の損失を繰越欠損金として使用することができない。」との指摘がある。判決文は、「(平成16年の税制改正により)欠損金の繰越期間の制限が7年に延長され、かつ、平成13年4月1日以後に開始した事業年度において生じた欠損金額に遡って適用されるという(中略)法人税法の改正(括弧内略)がされたところ、Xが、そのことによって初めて、連結納税の承認を受けることにより、子会社であるBの資産について時価による評価をすることなく平成14年譲渡によりXに生じた有価証券(Bの株式)の譲渡に係る譲渡損失額を連結所得の金額の計算上損金の額に算入することが可能となった」と述べている。 ② 本件控訴審判決 (a) Yによる新たな主張の追加 Yは第一審の判決を不服として控訴したが、第一審において認定された事実関係を覆すのは困難なことから、法人税法132条1項の適用要件に関して、①同項の適用にあたり、同族会社に租税回避の意図があることは要件ではない、②同族会社の行為又は計算が、独立かつ対等で相互に特殊な関係にない当事者間で通常行われる取引(独立当事者間の通常の取引)とは異なり、当該行為又は計算によって当該同族会社の益金が減少し、又は損金が増加する結果となる場合には、経済的合理性を欠くものであるという解釈論を示した上で、本件一連の行為は、IBMグループが日本国内において負担する源泉所得税額を圧縮しその利益を米国IBMに還元すること(本件税額圧縮)の実現のために一体的に行ったものであるところ、本件一連の行為は、独立当事者間の通常の取引とは明らかに異なるもので経済的合理性を欠き、法人税法132条1項の不当性要件に該当すると主張した。 (b) 東京高裁の判示 東京高裁は、法人税法132条1項の適用要件についてYが主張した上記(a)①及び②は概ね認めたものの、本件税額圧縮の実現のため、Xの中間持株会社化と一体的に行われたか否かについて、要旨、次のように判示した。 (※10) 控訴審判決において、Yは、「Xに計上された約3,995億円の有価証券譲渡に係る譲渡損失額は、本件一連の行為に、法人税法上のみなし配当の規定(24条1項5号)、受取配当等の益金不算入規定(23条1項1号)及び有価証券の譲渡損益計算規定(61条の2第1項)を形式的に当てはめた結果算出されたものであり、Xが実際に行った営業活動によって生じた損失ではなく、法律の規定により計算上発生した見せかけの損失である。日本におけるIBMグループは、日本における個人、法人の税負担により整備されたインフラ等を前提に事業活動を行い、平成20年12月連結期から平成23年12月連結期までの間に、日本国内において約5,006億円もの利益を上げたにもかかわらず、本件一連の行為によりXに発生した約3,995億円の有価証券譲渡に係る譲渡損失額を計上して、法人税の負担を軽減させた。これは、IBMグループが、応分の税負担を拒否したに等しく、本件一連の行為を容認することは、税負担の公平という法人税法132条1項の趣旨に反する。」と主張していた。 以上から、東京高裁は、本件各譲渡を「不当」として法人税法132条1項に基づき否認することができるかどうかは、本件一連の行為ではなく、本件各譲渡それ自体が経済的合理性を欠くものと認められるかどうかによって判断されるべきものであること、本件各譲渡がそれ自体で経済的合理性を欠くとは認められないことは、既に説示したとおりであるとし、Yの主張は失当であって、Yのした更正処分は違法であると判示した。 Yはかかる控訴審判決を受けて上告したが、最高裁は上告不受理とし、納税者勝訴が確定した。   3 検討 (1) 裁判所が示した判断枠組み 本件第一審判決は、法人税法132条1項が定める不当性要件該当性の判断枠組みについて、いわゆる経済的合理性基準(※11)を採用し、Yが評価根拠事実として挙げた上記2(3)①の3点の主張について、いずれもそれを認定するに足る証拠ないし事情は見当たらず、本件各譲渡について同項を適用するための要件を満たしていないと判示した。一方、本件控訴審判決では、経済合理性基準を示した後、「経済的合理性を欠く場合には、独立かつ対等で相互に特殊関係のない当事者間で通常行われる取引(独立当事者間の通常の取引)と異なっている場合を含むものと解するのが相当であり、このような取引に当たるかどうかについては、個別具体的な事案に即した検討を要する」と判示し、経済合理性基準の具体的な適用において、いわゆる独立当事者間基準を加味するという考え方を示した(※12)。しかしながら、独立当事者間基準といってもそれをどのように適用するかは「個別具体的な事案に即した検討を要する」と述べるにとどまり、具体的な判断要素が示されていないことから、多くの識者からは、不当性要件の範囲が広がってしまうとの懸念が表明されていた(※13)。独立当事者間基準は、法人税法132条1項の規定が同族会社であるがゆえに容易になし得るような取引を対象とするものであることから、理解しやすいといえるが、問題となる取引が独立当事者間の通常の取引と異なるというためには、課税当局側が、合理的な独立当事者間取引について主張立証しなければならず、実際問題として、相当な困難を伴うことが想定される(※14)。要は、判断基準として機能しない場合も少なくないといわざるを得ないのである。 (※11) 「純経済人の行為として不合理・不自然な行為・計算がこれにあたる」(金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂・2021年)542頁参照)。 (※12) 同様な判断基準が示された裁判例として、パチンコ平和事件第一審判決(東京地判平成9年4月25日・判時1625号23頁)及びその控訴審判決(東京高判平成11年5月31日・訟月51巻8号2135頁)を参照。 (※13) 谷口勢津夫「租税回避をめぐる最近の動向・課題」税研188号10頁、今村隆「ヤフー事件及びIBM事件最高裁判断から見えてきたもの(下)」税務弘報64巻8号47頁、朝長英樹「検証・IBM事件高裁判決〔第2回〕」T&Amaster No.595(2015.5.25)10頁等 (※14) 太田=伊藤・前掲(※2)210~211頁は、「同族会社が行う取引について、同項(引用者注:法人税法132条1項)を実質的にあたかも移転価格税制に関する規定であるかのように取扱うものであって、租税法律主義の観点からも疑問がある。」と述べている。 ところで、本件は、上記2(3)②(b)(ⅲ)でYが見せかけの損失と主張したとおり、平成13年度の税制改正で法人株主のみなし配当の計算に係る帳簿価額基準が廃止されたことに起因するものである(※15)が、現在では、平成22年度税制改正によって、自社株買いによるみなし配当について益金不算入の規定の適用が制限されている(法法23③)。 (※15) 今村・前掲(※13)52頁は、「IBM事件は、平成13年度改正で法人税法24条1項が帳簿価額基準を外したことを利用するものであり、現時点でみると、平成13年度改正で法人税法24条1項が帳簿価額を一律外したのは、立法が甘かったといわざるを得ない。」と述べている。 (2) 本件控訴審判決の位置付け 本件最高裁決定から11日後のヤフー/IDCF最高裁判決(※16)では、法人税法132条の2の不当性要件につき、2つの考慮要素から検討する判断枠組み(※17)が示された。かかる判断枠組みは、その後のTPR事件判決及びユニバーサルミュージック事件判決(※18)でも踏襲されており、また、ヤフー事件最高裁判決の調査官解説でも、「IBM事件については、前述のとおり、第一小法廷より不受理決定がされているが、不受理決定の性質上、当該決定は上記の点に係る控訴審判決の判断を妥当とする趣旨を含むものではない。」(※19)と述べられていることからすると、本件においても、最高裁は、IBM高裁判決が示した独立当事者間基準の判断枠組みを採用したわけではないことが理解される。 (※16) ヤフーについては、最高裁平成28年2月29日第一小法廷判決(平成27年(行ヒ)第75号)、IDCFは、最高裁平成28年2月29日第二小法廷判決(平成27年(行ヒ)第177号)。 (※17) ①当該法人の行為又は計算が、通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づいたり、実態とは乖離した形式を作出したりするなど、不自然なものであるかどうか、②税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか等の事情も考慮したうえで、不当性を判断するというもの。 (※18) 拙稿「〈判例評釈〉ユニバーサルミュージック最高裁判決」参照。 (※19) 徳地淳=林史高「判解」『最高裁判所判例解説民事篇(平成28年度)』(法曹界・2019年)127頁参照。   (了)

#No. 605(掲載号)
#霞 晴久
2025/02/06

リース会計基準を学ぶ 【第2回】「リースの定義」

リース会計基準を学ぶ 【第2回】 「リースの定義」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 今回は、リースの定義について解説する。 定義については、次のように規定されている(リース会計基準BC22項)。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ リースの定義 リース会計基準では、「リース」を次のように定義している(リース会計基準6項)。 「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)は、「リース取引」に係る会計処理を定めており、「リース取引」を次のように定義している(企業会計基準第13号1項、4項)。 このように、「リース取引」から「リース」の用語に改正され、会計基準の名称も、「リース取引に関する会計基準」から「リースに関する会計基準」へ改正されている。 リース会計基準等の開発に際して、次の契約についても審議されたが、いずれの契約においてもサービスの要素を区分した後に、リースの定義を満たす部分が含まれる場合があるとし、当該部分についてリースの会計処理を行うことについて記載されている(リース会計基準BC31項)。 これらについては、今後、解説する予定である「リースの識別」(リース会計基準25項~28項等)の理解が重要になる。   Ⅲ 契約 前述のとおり、「リース」は、契約又は契約の一部分と定義されている。 このため、「契約」の定義も規定されており、「契約」とは、法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における取決めをいい、契約には、書面、口頭、取引慣行等が含まれるとされている(リース会計基準5項)。 契約は、口頭によるものや取引慣行による場合においても、法的な拘束力があることを前提としたものであることを明確化するため、収益認識会計基準における「契約」(収益認識会計基準5項、20項)と同様の定義となっている(リース会計基準BC23項)。 このため、リース会計基準の適用にあたり契約(書)を読み込む際には、民法などの法令に関する知識も必要になると考えられる。 契約は、通常、契約書という書面の形式で締結され、取引の内容については、当事者間において明確にされていると考えられる。 リース会計基準では、契約がリースを含むか否かの判断を行う(リースの識別の判断)ことになり、契約の締結時に、契約の当事者は、当該契約がリースを含むか否かを判断するとされている(リース会計基準25項~27項)。 また、複数の契約は、区分して会計処理を行うか単一の契約として会計処理を行うかにより結果が異なる場合があるとし、それぞれのリースにおける収益及び費用の金額及び時期を適切に計上するため、複数の契約を結合し、単一の契約とみなして処理することが必要となる場合があると規定されていることにも、注意が必要である(リース会計基準BC24項)。   Ⅳ リースと民法の賃貸借 公開草案に対して、民法上の賃貸借契約と使用権資産の関係を明確に説明する必要性についてのコメント(コメント対応No.33)が寄せられており、我が国における法解釈に関する議論が実務の現場に波及し、実務負担が増加することの懸念が示されている。 当該コメントに対して、企業会計基準委員会は、法律論には直接踏み込まず、リース会計基準の結論の背景において民法上の賃貸借との関係を示すことはしていない。   Ⅴ 原資産、使用権資産など 「リース」の定義では、原資産を使用する権利と規定されていることから、原資産などの定義に注意が必要である。「リース」のほかに、例えば、次の用語が定義されている(リース会計基準7項~11項、14項)。 リース会計基準で用いられている用語については、現行の実務においてなじみのないものがあるので、リース会計基準の適用に際しては、定義に注意する必要があると考えられる。   Ⅵ 借地権、セール・アンド・リースバック取引、サブリース取引など 定義については、リース適用指針に規定されているものもある。例えば、次の定義である(リース適用指針4項、93項)。 このため、現行の「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)等に規定されていなかった項目についても、リース会計基準等の適用対象となる項目として規定されるものがあることに注意する必要があると考えられる。   (了)

#No. 605(掲載号)
#阿部 光成
2025/02/06

決算短信の訂正事例から学ぶ実務の知識 【第11回】「業績予想修正後に起きるミス」

◆◇◆◇◆ 決算短信の訂正事例から学ぶ実務の知識 【第11回】 「業績予想修正後に起きるミス」   公認会計士 石王丸 周夫   【第10回】に引き続き、業績予想での誤記載を取り上げます。 次期の業績予想は、期末の決算短信に記載された後、次年度の四半期決算短信に引き継がれて開示されます。予想数値に変更がなければ、同じ数値がそのまま引き継がれていきます。次年度の期末まで変更がないこともありますが、次年度の期末が近づくにつれ、着地が見えてくるため、業績予想の修正(訂正ではなく変更)が行われることもあります。 今回の訂正事例は、そのタイミングでの四半期決算短信の事例です。3月決算企業が、2月に「業績予想および配当予想の修正に関するお知らせ」と第3四半期決算短信を公表した際の、四半期決算短信での訂正事例です。 早速訂正事例を見ていきましょう。   訂正事例の概要 サマリー情報の業績予想欄にて、対前期増減率の数値がすべて訂正となりました。一方、売上高等の財務数値の予想数値はいずれも訂正はありません。計算を間違えたかのようにも見えますが、比率がすべて間違っていたことから、単なる計算ミスでもなさそうです。 訂正イメージは次のとおりです。 〈訂正事例をもとにした誤記載のイメージ〉 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (※) %以外の数字はXで表示しています。   四半期決算短信特有の注意点 対前期増減率の数値が間違った原因はともかく、これが間違っていても、その間違いに気づきにくい理由があります。それは四半期決算短信特有のポイントです。 上の訂正事例は第3四半期に係る四半期決算短信でした。第3四半期決算短信のサマリー情報で開示される連結経営成績(P/L項目)の数値は、当年度の第3四半期と前年度の第3四半期の数値です。これに対して、連結業績予想の欄で開示されるのは、当年度1年間の連結業績予想値です。したがって、その対前期増減率は、前年度の期末の実績数値をベースに計算されます。 そのため、対前期増減率が合っているかどうかを目視でおおよそ確認しようと思っても、ベースになる前期実績数値(P/L項目)が四半期決算短信には載っておらず、四半期決算短信上だけでは確認できないのです。 上の訂正事例が開示前に社内で発見できなかったのは、そのような理由があると思います。   訂正前の数値は何の数値だったのか さて、訂正前の対前期増減率ですが、すべての数値が間違っていたことから、これはおそらく何か別の数値を間違って転記してしまったとみられます。 それが何だったのか探してみたところ、全く同じ数値が見つかりました。第3四半期の四半期決算短信と同日に発表された「業績予想および配当予想の修正に関するお知らせ」に記載されている数値です。当該開示書類は、前期末の決算発表時に公表した次期業績予想(前期末から見て次期ということ)の数値を、最近の業績動向を踏まえて修正したという内容です。 その中で、「前回発表予想」(前期末公表)と「今回修正予想」を並べたうえで、その修正により前回発表予想からどれだけ増減するかという増減率を記載しています。「前回発表予想」をベースにした増減率です。 この増減率が、上の訂正事例の訂正前の増減率と全く同じでした。四半期決算短信での業績予想の増減率は対前期増減率なので、これとは異なります。同日に発表された資料ということで、混乱があったのかもしれません。   開示前のチェックポイント 今回の訂正事例の訂正原因は、単純な事務ミスの側面もありそうですが、業績予想の情報についての理解不足があったことは否定できないと思います。間違っていたのは対前期増減率だけなので、大きな影響はないかもしれませんが、対前期増減率はその企業の成長率を意味します。これが間違っていたというのは、やはり軽視できないでしょう。 特に売上高については、訂正前が△3.0%であるのに対して、訂正後は3.1%です。減収の予想が増収に訂正されています。利益項目は、訂正前も後も軒並み減益予想ですので、訂正前は減収減益、訂正後は増収減益ということです。この違いは企業の損益構造を考える際にポイントとなります。このような視点から業績予想欄を確認すれば、誤りに気づく可能性もありそうです。 (了)

#No. 605(掲載号)
#石王丸 周夫
2025/02/06

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕対象企業の見方・見られ方 【第57回】「M&Aを実行することだけが成功とは限らない」

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕 対象企業の見方・見られ方 【第57回】 「M&Aを実行することだけが成功とは限らない」   公認会計士・税理士 荻窪 輝明   《今回の対象者別ポイント》 買い手企業 ⇒M&Aの実行要否を検討する際の参考にする。 売り手企業 ⇒M&Aの実行要否を検討する際の参考にする。 支援機関(第三者) ⇒M&Aの実行要否を検討する重要性を理解して買い手・売り手に対する助言に活かす。 その他の対象者 ⇒M&Aの実行要否を検討する重要性を理解する。   1 M&Aは手段・出口の選択肢の1つ 本稿は「中小企業のM&Aの成否を決める」と連載のタイトルにありますので、あたかもM&Aが前提であり、中小企業におけるM&Aが当然のスタンスであるとのご理解をいただいているかもしれませんが、今回は、その前提やスタンスを少し批判的に見たいと思います。 〈複数手段・選択肢の1つとしてのM&A〉 上図のとおり、買い手にとっても、売り手にとっても、経営を進める先の手段や選択肢はたくさんあります。M&Aは双方にとっての目的というより手段と考えられますので、M&Aありきではなくて、たくさんある手段の1つを選択する、その手段の1つにM&Aがあると捉えるのが妥当です。つまり、M&A以外のより良い手段があるならM&Aに頼る必要はありませんし、M&Aありきで考えてはM&Aがその企業にとってベターやベストとは言えない可能性もあるのです。 買い手であれば、自力成長、戦略的提携、海外進出、子会社の設立、合弁、M&Aといった手段を講じ、自社のみで成長を図るだけでなく、他社との協業関係を通じて自社に不足するリソースを補う相手を探しながら、自社のいる市場でのポジションを有利にするでしょう。 売り手の場合には、自社単独での存続を図るほかに、中小企業であれば、ほぼ必ず承継の問題に直面しますので、一般的に親族内外の承継手段を検討する中でM&Aを選択するケースが考えられます。 また、承継にかかわらず、事業を売り抜ける「出口戦略」としてIPO(Initial Public Offering)を目指す中小企業があります。M&Aも出口戦略の1つとして知られていますので、売り手の価値を高めて売り手にとって有利な出口を探す中で、M&Aがベストだと言えそうならM&Aを選択することになります。 「M&A」というワードが一般化されるにつれ、買い手も売り手もM&Aを実行するのが当然だと考えるかもしれません。M&Aの仲介業者や金融機関などから提案を受ければ、M&A一択だと思うかもしれません。目先にM&Aがあれば、M&Aを所与として何も考えずにM&Aに進むかもしれません。 しかし、各社にとって最も大事なのは、M&Aをすることではなく、選択した手段を講じながら各社が望む目的を叶えることです。その目的を叶えるための1つの手段、解決策がM&Aである点を忘れないこと、M&Aが唯一の選択肢ではないことを理解しておくことがM&Aを検討する皆様、当事者の皆様にとって大事だと思います。   2 買い手にとってのM&A 中小企業の買い手がM&Aを検討する際は、目的が自社の成長や拡大であっても、生き残りであっても、M&Aを機に自社を好転させたいと考えるケースが多いと思います。M&Aが選択肢の1つである点は1で述べましたが、M&Aを取り巻く戦略はキャッシュと切れない関係にあります。 〈最適資金配分の例〉 上図に示すように、キャッシュは、手元資金、外部から調達した資金、自ら事業を通して生み出すキャッシュインフローといった主な資金獲得手段を通じて得ます。そのキャッシュの総額を、数ある資金使途のうちの「何に」、「いくら」、「いつ」投じるかを決める資金配分の選択と意思決定のプロセスの中から、M&Aが選択されたときにはじめて、買い手としてのM&Aの検討、相手先探し、M&Aの実行、PMI(Post Merger Integration)などのM&Aに関連する各プロセスに進むことになります。 したがって、経営判断としてM&Aが選択される意思決定プロセスがないままに、M&Aの実行が先に来ることはありえません。そのため、「トレンドだから」、「M&Aに希望を抱くから」、「キャッシュが余っているから」といった漠然とした理由、明確ではない理由でM&Aを選択するのは、M&Aの目的なきまま実行に至るbad choiceです。 上図をご覧いただくとおわかりのように、資金使途の選択肢は1つではありません。この使途の中でM&Aの位置付けは「戦略投資」になりますので、一般的には長期的な視点のもとで投資資金の回収、つまり、投資した資金(キャッシュアウトフロー)を上回る資金が長期的に得られるか、かつ、安定的な回収が可能かどうかを投資の前段階で十分に見極めてからM&Aを選択しなければなりません。 買い手の目的が成長ならば、確かに選択肢の1つとしてM&Aは魅力的ですが、M&Aである必然性はないため、目的を叶える他の手段があるのならば、それを選択すればよいだけの話です。 近年は、物価上昇トレンドに応じて賃金も上昇させる動きが各企業において見られます。資金の配分先として、将来への投資という観点から人的資本への投資が自社にとって望ましいのであれば、役員・従業員へのキャッシュアウトフローを決断すること、優先することも考えられます。 買い手にとってM&Aは、経営判断において自社がまず何を遂げたいのかの議論を置き去りにして安易に飛びつくものではない点は申し上げておきたいと思います。   3 売り手にとってのM&A 〈売り手における複数の原因と結果としてのM&A〉 売り手がM&Aを行う場合、事業承継のため、企業経営の出口を確定させるため、単にキャッシュを得るためといった様々な背景が考えられます。ある原因による結果としてM&Aを選択するとすれば、ある原因は複数考えられますが、中小企業の売り手の場合は、上図に記載の原因の場合が多いのではないかと思います。企業の存続を考える中で積極・消極かは問わずM&Aに頼るケース、経営者の不在や適任者の不在からM&Aを選択するケース、株主ニーズからM&Aを選択するケース、相続財産を含むキャッシュの獲得を狙うためM&Aを選択するケース、バイアウトとしてのM&Aを選択するケースなどです。 中小M&Aの場合、株式譲渡がM&Aの手段としてよく用いられますので、基本的には株式の譲渡を通じて、売り手企業のすべてが第三者の手にわたることになります。この現象は撤退や売却の判断に近いため、他人に今後を託すとして自社をクローズしてよいかどうかの判断を慎重に検討することになります。クローズしてよいならM&Aは有力な選択肢となりますが、仕方なくクローズする、苦渋の選択でクローズするなら、知見のある第三者を頼れば、もしかしたらM&Aによらない選択肢を発見できるかもしれません。 つまり、以下のようなM&A以外の選択肢や道を模索することができるかもしれません。 対して、株主ニーズ、資金回収ニーズ、出口戦略の場合は、キャッシュ化する、売り抜けることが目的のケースが多いので、資金回収そのものがゴールとなるようであれば、確かにM&Aは有力な手段になり得ます。 とはいえ、中小M&Aでは、経営を続けたいのに続けられない事情、理由があってM&Aを選択しなければならず、売り手になるケースが多いと思われます。M&Aが選択肢となる企業経営上の様々な原因がある場合、「それならM&Aですよね」と言う前に他の有効な手はないのか、その手を尽くす検討をしてからでもM&Aは遅くないのではないか、と立ち止まって考えることも筆者は重要だと思います。 中小企業の経営者は思い入れがあって現在の経営に至っているはずです。簡単に手放せるものではないからこそ、存続の道を図ろうとする中で、M&Aありきではない選択肢を与える第三者がいれば、どれほど心強いことでしょう。 (了)

#No. 605(掲載号)
#荻窪 輝明
2025/02/06

空き家をめぐる法律問題 【事例64】「「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を踏まえた賃貸借契約の留意点」-残置物の処理編-

空き家をめぐる法律問題 【事例64】 「「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を踏まえた 賃貸借契約の留意点」 -残置物の処理編-   弁護士 羽柴 研吾   - 事 例 - 私は賃貸業を営んでおりますが、賃借人が賃貸借契約期間中に死亡した場合に、賃貸借契約や残置物の処理を円滑に行うために、どのような対策を取ればよいでしょうか。   1 検討の視点 単身高齢者等が賃借物件内で孤独死したような場合に、賃貸借契約や残置物の処理を円滑に行えるようにするために、国土交通省及び法務省は、令和3年6月に「残置物の処理等に関するモデル契約条項」(以下「モデル契約条項」という)を公表している。 モデル契約条項には、①賃貸借契約に関するもの、②賃借人が賃貸借契約の存続中に死亡した場合に、賃貸借契約を終了させるための代理権等を受任者に与える委任契約(以下「解除関係事務委任契約」という)に関するもの、③賃貸借契約の終了後に残置物の処理を委託する準委任契約(以下「残置物関係事務委託契約」という)に関するものが含まれている。そこで、本事例では、モデル契約条項を踏まえて、残置物の処理に関する契約内容を検討することにしたい。   2 モデル契約条項の全体像 モデル契約条項は、賃貸借契約に、解除関係事務委任契約と残置物関係事務委託契約を組み合わせて、賃貸借契約の終了とその後の残置物処理を円滑に行えるようにすることを想定している。その全体的な流れは次のとおりである。 (出典) 国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項の活用ガイドブック」18頁より抜粋   3 解除関係事務委任契約について 賃借人が賃貸借契約の期間中に死亡したとしても、賃貸借契約は当然には終了しないため、契約を終了させるためには、合意解除等による必要がある。そこで、賃借人が契約期間中に死亡した場合に備えて、賃借人(委任者)は、受任者に対して、賃借人の死亡後に、合意解除をする権限等を付与しておくことが考えられる。   4 残置物関係事務委託契約について (1) 契約の効力等 モデル契約条項では、残置物関係事務委託契約は、賃貸借契約が終了するまでに、賃借人が死亡したことを停止条件として効力が生じるものとされている(残置物関係事務委託契約のモデル契約条項第2条)。受任者として主に想定されるのは、賃借人である委任者の推定相続人や居住支援法人等の第三者である。賃貸物件の管理業者も受任者となることは否定されないが、利益相反も生じうることから、できる限り回避した方が無難である。 また、賃借人の相続人が賃貸借契約を承継する場合には、残置物の要否等の判断は、当該相続人に委ねた方が合理的である。そこで、モデル契約条項では、相続人が賃貸借契約を承継してから残置物の要否等を判断するまでに必要な期間を考慮して、受任者が賃借人の死亡を知ってから一定期間(たとえば6ヶ月)が経過するまでに賃貸借契約が終了しない場合には、残置物関係事務委託契約を終了させることとしている(残置物関係事務委託契約のモデル契約条項第11条)。 (2) 残置物の処理方法の概要 残置物には廃棄を予定している動産から第三者に譲渡することを予定している動産まで含まれうるため、受任者が残置物をどのように処理するべきかを事前に定めておく必要がある。 そこで、モデル契約条項では、①委任者が死亡した時点で存する金銭を除く動産のうち、廃棄しないものとして指定した動産を希望送付先に送付させ、②委任者が指定をしなかった金銭を除く動産を廃棄させることにしている(①を「指定残置物」といい、②を「非指定残置物」という)。なお、モデル契約条項の指定残置物、非指定残置物、金銭の取扱いを整理すると次のようになる。 (注) 括弧内の条文番号は、残置物関係事務委託契約のモデル契約条項の該当番号である。 (※) 金銭には指定残置物や非指定残置物を換価した場合の現金も含む。 受任者が指定残置物を送付したり、非指定残置物の搬出等を行う際に、委任者の相続人との間で、残置物の処理をめぐって争いになる可能性もある。そこで、受任者が実際に業務を遂行する一定期間前(たとえば2週間前)に、委任者の相続人等の利害関係者に通知をして、検討する機会を確保しておくことが有益である(残置物関係事務委託契約のモデル契約条項第5条第2項)。 (3) 指定残置物に関する留意点 指定残置物として指定される動産は、主として、第三者の所有物や、委任者が特定財産承継遺言や死因贈与契約の対象にした動産になると考えられる。指定がなければ受任者は非指定残置物として廃棄することになるが、委任者が指定を失念したため、受任者が第三者の所有物を廃棄したような場合に、受任者が債務不履行責任や不法行為責任を負うか問題となりうる。指定残置物としての指定は委任者の責任において行うことからすると、受任者に廃棄したことについて過失が認められるのは、第三者の所有物であることが明らかであるにもかかわらず廃棄したような限定された場面になると考えられる。 また、所在不明等のために指定残置物を送付できない場合に備えて、受任者に指定残置物を換価又は廃棄できる権限を定めておくことが望ましい(残置物関係事務委託契約のモデル契約条項第7条1項ただし書)。モデル契約条項第8条では、換価によって得られた金銭を相続人に返還するものとしているが、当該金銭を本来の送付先に交付したい場合には、その旨も定めておく必要がある(実際には供託することになる)。 (4) 非指定残置物に関する留意点 受任者には第三者の所有物を廃棄する権限はないため、非指定残置物の対象となるのは、委任者が死亡した時点で所有していた動産である。もっとも、外観上、残置物の所有者は明らかではないこともあり、委任者の相続人や第三者から権利を主張される可能性もある。そこで、モデル契約条項では、受任者が非指定残置物として廃棄処理等をすることができる時期を、食料品等の保管に適さない動産を除いて、賃貸借契約が終了し、かつ、賃借人が死亡してから少なくとも一定期間経過後(たとえば3ヶ月経過後)と定めている(残置物関係事務委託契約のモデル契約条項第6条1項)。 ところで、モデル契約条項では、換価することができる非指定残置物については、換価するよう努めるものとしている(残置物関係事務委託契約のモデル条項第6条1項ただし書)。この点に関して、委任者の特定の相続人から非指定残置物を取得したいとの提案を受けた場合に無償で譲渡することができるか問題となりうる。 モデル契約条項では、第三者に正当な対価で譲渡した場合には、その対価は相続人に支払うものとされていることや(残置物関係事務委託契約のモデル契約条項第8条)、受任者は、委任者の相続人全員に対して注意義務を負うことからすると、客観的価値のある非指定残置物を特定の相続人に無償で譲渡することは注意義務に反するおそれがある。したがって、受任者は、特定の相続人に非指定残置物を譲渡する場合には、正当な対価で譲渡することとし、そのことについて他の相続人の意思を確認しておくべきである。 また、受任者は委任者全体の利益のために業務執行を行うことから、複数の相続人から客観的価値のある非指定残置物を取得したいとの希望を受けた場合には、特定の相続人に譲渡するよりも、第三者に譲渡し、その対価を相続人全員に支払う方が穏当であると考えられる。 (了)

#No. 605(掲載号)
#羽柴 研吾
2025/02/06

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第89話】「新NISAと公的年金制度」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第89話】 「新NISAと公的年金制度」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「それにしても・・・人気は高いな・・・」 昼休みに中尾統括官は、新聞を見ながら呟く。 (※) 朝日新聞デジタル2025年1月21日掲載記事より抜粋。 「・・・新NISAですか・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の持っている新聞を覗く。 「・・・もちろん、君も新NISAをやっているのだろう?」 中尾統括官が聞く。 「はい」 浅田調査官は、素直に頷く。 「・・・我々の世代では、中尾統括官の時代と違って、老後の年金受取りについて期待できませんから・・・」と言うと、浅田調査官は傍らにある罫紙を取り出して、厚生労働省の資料を参考にしながら、図を描く。 「・・・我が国では、毎年の保険料収入は、その年の年金給付に充てられるという『賦課方式』を採用しています・・・平均寿命が延び、そのうえ出生率が低下すれば、税収・保険料収入が減少し、その一方で公的年金給付額が増加します・・・そうなれば、現在の年金制度を維持することは困難になります・・・」 浅田調査官は、図を見ながら言う。 「ジェネレーションのコンフリクトだな・・・」 中尾統括官は、小さな声で言う。 「・・・そこで、政府は、若い人に対して、将来の年金を期待せずに、株式の売買等でもうけて、老後の資金を蓄えなさい・・・ということで、新NISAを恒久化したのです・・・」 浅田調査官は、苦笑する。 「・・・ところで、令和5年度の税制改正で、NISA制度については、時限措置から恒久化され、更に、非課税限度額の総額が1,800万円になりました・・・これが令和6年1月から適用されました」 そう言うと、再び浅田調査官は図を描く。 そして、浅田調査官は、図の下に以下の注記を書く。 「・・・非課税枠が1,800万円あるということは・・・我々にとって、大きいです」 浅田調査官は、大きく頷く 「・・・君は・・・以前、日本株よりも米国株の値上がりの方がはるかに大きいといっていたが・・・新NISAでは、米国株を買っているの?」 中尾統括官が浅田調査官の顔を見る。 「もちろんですよ」 浅田調査官は、得意そうな表情になる。 「ただし、外国株を購入するときには、注意しなければなりません」 今度は、浅田調査官が中尾統括官を見る。 「・・・新NISA制度では、投資対象として、米国株や米国ETFも含まれます・・・そして、売却益・配当金にかかる国内の税金は非課税となります・・・しかし、米国株は国内株と売買手数料が異なり、また、為替手数料についても注意しなければならない・・・」 浅田調査官は、更に説明を続ける。 「米国株などを売買すれば、当然、為替手数料が発生します・・・インデックスファンドを買うのであれば・・・「S&P500」など米国株のインデックスであっても、ファンドを運営しているのは、日本の証券会社なので日本円で売買ができます・・・しかし、米国の個別銘柄株やETFを購入する場合には、日本の証券会社は仲介に過ぎないため、米ドルで購入しなければなりません・・・そのため、円を米ドルに替えるので為替手数料がかかるということです・・・」 浅田調査官は、簡単な図を描く。 「・・・そして、米国のETFや個別銘柄株を売却して利益を得た場合、日本では、日本株と同じく20.315%が課税されます・・・ただ、非居住者は、米国株の売却益について、米国で課税されません・・・しかし、配当金・分配金については、米国でも課税されます・・・また、米国では、日米租税条約によって、10%が源泉徴収され、その引かれた額に対して日本国内で20.315%が課税され、税率は、約30%となります・・・ただし、これは二重課税となるため、確定申告をすれば、外国税額控除で、米国での源泉徴収分の全額、又は一部の還付を受けることができます・・・」 そして、浅田調査官は、突然思い出したように、付け加える。 「・・・ただし、NISAで非課税になるのは、日本国内の課税のみですから、米国株の配当金・分配金に対する米国での10%は課税されます・・・また、この場合、二重課税にならないので、外国税額控除も受けることはできません・・・」 浅田調査官は、そう言うとニコリと笑う。 (つづく)

#No. 605(掲載号)
#八ッ尾 順一
2025/02/06

《速報解説》 令和7年度税制改正関連法案が公表される~法案段階では年収103万円の壁の引上げ幅等についてR7大綱と同様の記載~

《速報解説》 令和7年度税制改正関連法案が公表される ~法案段階では年収103万円の壁の引上げ幅等についてR7大綱と同様の記載~   Profession Journal編集部   2月5日(金)、財務省ホームページにおいて令和7年度税制改正の関連法案となる「所得税法等の一部を改正する法律案」が公表された。 自民・公明両党と国民民主党との間で、引き続き協議が行われる見込みである「年収103万円の壁」については、法案では令和7年度税制改正大綱と同様に基礎控除の引上げ(最高額を10万円引上げ)及び給与所得控除の引上げ(最低保障額を10万円引上げ)等が記載されているが、協議の結果によっては法案からの修正も想定されるため今後の審議動向に留意されたい。 (了)

#Profession Journal 編集部
2025/02/05

《速報解説》 相次ぐインサイダー取引事案の発生に伴い、注意喚起として「インサイダー取引に関するQ&A」が公表される

《速報解説》 相次ぐインサイダー取引事案の発生に伴い、 注意喚起として「インサイダー取引に関するQ&A」が公表される   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年1月16日付けで(ホームページ掲載日は2025年2月3日)、日本公認会計士協会は、「インサイダー取引に関するQ&A」(法規・制度委員会研究報告第5号)を公表した。 2008年9月に、インサイダー取引防止のための検討プロジェクトチームからの報告「インサイダー取引に関するQ&A」を公表しているが、その後、インサイダー取引事案が相次いで発生していることから、今回、会員に対して改めて注意喚起を行うことを目的に、当該Q&Aを更新する形で、取りまとめたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 公認会計士が「インサイダー取引規制」に違反した場合には、刑事罰又は課徴金の対象となることに加え、さらに「公認会計士の信用を傷つけ、又は公認会計士全体の不名誉となるような行為」(公認会計士法26条)と判断され、また、「正当な理由がなく、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用した」(公認会計士法27条)と判断されれば、公認会計士法違反となり、さらなる処分等を受けることも考えられるとのことである。 公認会計士以外の会計事務所の従業者もインサイダー取引規制の対象か、会計事務所を退職した場合又は監査業務提供先の担当を外れた場合の取扱いなど17項目について解説されている。 (了)

#阿部 光成
2025/02/04

《速報解説》 金融庁、昨年12月に続く「記述情報の開示の好事例集2024」第4弾として「コーポレート・ガバナンスに関する開示例」を公表

《速報解説》 金融庁、昨年12月に続く 「記述情報の開示の好事例集2024」第4弾として 「コーポレート・ガバナンスに関する開示例」を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025(令和7)年2月3日、金融庁は、「記述情報の開示の好事例集2024(第4弾)」を公表した。 昨年11月以降、次のように「記述情報の開示の好事例集2024」が公表されており、今回の公表はこれらに続いて、コーポレート・ガバナンスに関する開示(コーポレート・ガバナンスの概要、監査の状況、株式の保有状況)について議論したものである。また、「定量分析」も更新されている。 今後は第5回勉強会以降のテーマを追加して、公表、更新することを予定しているとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 投資家・アナリスト・有識者が期待する開示を充実化させるための取組み 株主総会開催前に、有価証券報告書を提出している会社を紹介している。   Ⅲ コーポレート・ガバナンスの概要の開示例 主な開示のポイントとして、取締役会及び委員会の具体的な検討内容の開示において、特に重要な事項の記載を充実することは有用であること、取締役会の実効性評価により識別した課題と対応を開示することは引き続き有用であることなどが記載されている。 好事例として採り上げた企業の主な取組みが記載されている(自社のガバナンスの実効性をステークホルダーに理解いただけるよう、取締役会での議論状況や、取締役の支援体制等について、できる限り具体的に記載したことなど)。 好事例のポイントとして、次のことが記載されている。   Ⅳ 監査の状況の開示例 主な開示のポイントとして、重点監査項目を列挙することも有用だが、重点監査項目に対する監査結果や監査役会等の認識を記載することはより有用であることなどが記載されている。 好事例として採り上げた企業の主な取組みが記載されている(監査役会実効性評価の開示が外部(報道機関など)の目に触れ、取組みについて新聞などで紹介されたことで自社の活動が認知されたことなど)。 好事例のポイントとして、次のことが記載されている。   Ⅴ 株式の保有状況の開示例 主な開示のポイントとして、政策保有株式の売却により得た資金の使途を具体的に示すことが有用であることなどが記載されている。 好事例として採り上げた企業の主な取組みが記載されている(内閣府令の趣旨に従い、形式ではなく、実質的な株式投資の状況を保有目的別に記載したことなど)。 好事例のポイントとして、次のことが記載されている。 (了)

#阿部 光成
2025/02/04
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