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《速報解説》 監査役協会、改訂CGコードの監査役等関連項目について調査のうえ今後の監査役等の取組みを検討~内部監査部門は80%以上の会社が社長直属の位置づけ~

《速報解説》 監査役協会、改訂CGコードの監査役等関連項目について調査のうえ 今後の監査役等の取組みを検討 ~内部監査部門は80%以上の会社が社長直属の位置づけ~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年12月23日、日本監査役協会 ケース・スタディ委員会は、「改訂コーポレートガバナンス・コードにおける監査役等関連項目への対応と今後の課題」を公表した。 2021年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂から1年を経過するタイミングで、監査役・監査等委員・監査委員(以下「監査役等」という)関連の項目について各社の対応状況や監査役等の監査の状況について調査を実施し、今後の監査役等の取組みなどについて検討したものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 今回の2022年調査では、2019年11月15日に公表した「監査役の選任及び報酬等の決定プロセスについて-実務実態からうかがえる独立性確保に向けた課題と提言-」(以下「2019年調査」という)と比較しながら、分析を行っている。 1 監査役等の選任プロセス 次のことが記載されている。 また、監査役等の候補者選定プロセスの例や、社外監査役の選任及び報酬決定を社長主導から監査役会主導に変更した会社の例、子会社監査役の選任プロセスを変更した会社の例などが紹介されている。 2 監査役等のスキルと実効性評価 次のことが記載されている。 3 監査役等の報酬に係る監査役会等の判断・関与 次のことが記載されている。 4 指名委員会・報酬委員会への監査役等の関与 任意の指名委員会又は報酬委員会について、監査役等の指名・報酬委員会への就任状況は、監査役会設置会社の場合、社内常勤監査役は5.1%、社外常勤監査役は10.5%と委員に就任しているのはわずかである。 また、社外非常勤監査役でも委員は27.8%、オブザーバー参加はいずれも1割以下である。 一方、監査等委員会設置会社では、委員に就任している社外非常勤監査等委員は90.6%と大多数が参加しており、社外常勤監査等委員も51.3%、社内常勤監査等委員でも21.3%となっている。 5 内部監査部門との連携 取締役会において直接内部監査部門から監査結果の報告がされている会社は、全体で64.1%、うち監査役会設置会社では66.3%、プライム市場上場会社では68.1%である。 取締役会において内部監査部門からの直接報告がなくとも、他の会議で報告されているケースは多いとのことである(経営会議、コンプライアンス委員会など)。 内部監査部門の組織上の位置づけについては、83.6%の会社が社長直属である。 平時における内部監査部門の報告体制として、監査役会も正式な報告先である会社は45.2%である。 監査役会も何らかの形で報告先に含まれている会社は36.4%であり、合計で81.6%の会社で監査役会にも報告がされている。 監査役等と内部監査部門の双方の監査計画作成時に調整や意見交換を行っている会社は全体で69.9%である。 期中で双方の監査について意見交換を行っている会社は76.2%、期中や期末での監査結果の報告については、内部監査部門の監査結果との連携がある会社は93.2%である。 年間を通しての監査プロセスにおける連携は十分実施されているとのことである。 6 コーポレートガバナンス・コードへの対応及びコーポレートガバナンス報告書の監査状況 監査役等がコーポレートガバナンス報告書を監査している会社は全体で50.0%、内部監査部門が主に監査している会社は8.7%であり、過半数の会社でコーポレートガバナンス報告書は監査対象となっている。 コーポレートガバナンス報告書を監査対象としている会社の監査状況として、「監査の対象として、全項目にわたって虚偽の開示がないか、開示された方針と実際の運用に齟齬がないか確認している」会社は全体で30.7%あった。 7 社外取締役との連携 監査役等又は内部監査部門の監査の情報が社外取締役に十分提供されているかについては、「内部監査部門の監査結果等を含め、監査役等から社内の監査情報について十分提供している」会社は、監査役会設置会社では31.4%、監査等委員会設置会社では54.7%であった。 社外取締役への特別な報告体制はなく、定例の取締役会での報告にとどまっているとの回答が機関設計に関わらず多数あり、また取締役会以外で報告の機会があったとしても情報量は十分とはいえない旨の回答も目立ったとのことである。 8 株主との対話 監査役等が機関投資家や大株主などの株主と対話をしたことがあるかについては、全体で72社(5.7%)の会社が対話の経験があるとの回答であった。 それらの会社において、対話への出席者は「常勤監査役等」が66.2%であり、「非常勤監査役等」は29.6%であった。 対話の内容は多岐にわたるが、全体で最も多かったのは「経営戦略」64.3%(ただしサステナビリティを除く。サステナビリティについては21.4%にとどまった)、次いで「ガバナンスに関する事項」が51.4%であった。 9 サステナビリティ いわゆるサステナビリティ委員会などサステナビリティを推進する組織の設置状況については、全体で47.2%の会社で設置されている。 指名委員会等設置会社は母数23社と少ないが82.6%の割合となっている。 上場区分別にみると、プライム市場上場会社では66.2%、スタンダード市場上場会社では23.5%である。 サステナビリティ委員会等への参加方法については、社内常勤監査役等は「委員として参加している」が全体で13.6%、「オブザーバーとして参加している」が34.6%、「参加していない」は52.0%である。 監査役等がサステナビリティについて確認している事項は、最も多いのはサステナビリティの「推進目標や対応方針が取締役会等で報告・検討されているか」61.1%、次に「推進目標が中長期の経営計画に織り込まれているか」58.3%、「推進目標が具体的な課題として事業活動に落とし込まれているか」56.7%である。 10 提言 次の事項に関する提言が記載されている。 (了)

#阿部 光成
2023/01/10

《速報解説》 空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例の拡充・延長~令和5年度税制改正大綱~

 《速報解説》 空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例の拡充・延長 ~令和5年度税制改正大綱~   税理士 菅野 真美   ▷空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例とは 空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例(以下「空き家控除」という)とは、相続又は遺贈により被相続人の居住用家屋及びその敷地等を取得した相続人等が平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に居住用財産を譲渡した場合で、一定の要件に該当するときは、譲渡所得から3,000万円まで控除することができるものである。 居住用家屋とは、昭和56年5月31日以前に建築されたもので、区分所有登記がされておらず、かつ、相続開始直前において被相続人以外に居住していた者がいなかったことが要件となる。 このほかにも要件がいくつもあり、すべての要件をクリアするためのハードルはかなり高く、以前からあった居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(以下「居住用財産の3,000万円控除」という)と比較して利用しづらい問題点があった。   ▷空き家控除の問題点 問題点の1つが、この家屋を売却する場合は、売却時に地震に対する安全基準等に適合していなければならず、要件に適合させるためにはリフォーム費用を相続人等が負担する必要もあった。また、リフォームが難しい場合等は、取り壊して譲渡しなければ適用を受けられないが、この場合も取壊し費用は相続人等が負担する必要があり、空き家控除の要件に該当するような譲渡まで至らなかったことも多かったのではないかと考える。 また 居住用財産の3,000万円控除が、居住用財産を共有している場合は、各人についてそれぞれ3,000万円控除をすることができるが、この空き家控除についても、多数の相続人による共有の場合は、それぞれの共有者である相続人について3,000万円の控除が可能であるから、あえて、多数の相続人が共有で相続することにより所得税の節税も可能となっていたのではないかと考える。   ▷どのような改正になるのか 令和4年12月23日(金)に閣議決定された「令和5年度税制改正大綱」では、上記の問題点に対応した次のような措置を講じたうえで、空き家控除の適用が4年延長(令和9年12月31日まで)される。また、令和6年1月1日以後の被相続人の居住用家屋又は居住用家屋の敷地の譲渡から適用される予定である。 現行税制では、譲渡までに耐震基準に適合するか、被相続人の家屋の取壊し等が要件となっていたが、これを翌年の2月15日までに要件を満たせば3,000万円の控除が可能となる。つまり、買主の方で、上記要件を期限までに満たした場合であったとしても適用可能となる。 また、相続人が3人以上の場合の特別控除は1人2,000万円を限度とすることにより、過度な所得税の節税を防止する。 空き家の増加は以前から問題となっており、その対策として創設されたのが「空き家控除」である。しかし、この改正があったとしても、他の要件が厳しく、税理士が相続時から関与しないと特別控除の適用が難しいケースも多いことから、この改正が空き家問題の解決にどれだけ寄与するかは不透明である。 (了)

#菅野 真美
2023/01/10

《速報解説》 研究開発投資の質の向上と量の増加を目指す研究開発税制の改正~令和5年度税制改正大綱~

《速報解説》 研究開発投資の質の向上と量の増加を目指す研究開発税制の改正 ~令和5年度税制改正大綱~   弁護士 羽柴 研吾   1 改正の背景 令和4年12月23日(金)に閣議決定された「令和5年度税制改正大綱」において、研究開発税制の拡充と延長が行われることになった。 研究開発投資を通じたイノベーションは、社会課題を成長のエンジンへと転換するために不可欠なものであるが、我が国の研究開発投資の伸び率は他の主要国に比して低いことが指摘されてきた。また、スタートアップとのオープンイノベーションや高度研究人材の活用も欧米に比して十分に進んでいないことも指摘されてきたところである。 そこで、令和5年度税制改正において、主として次の3つの観点から改正が行われることになった。なお、従来の控除率の上限引上げ、控除上限・控除率の上乗措置の時限措置については、3年間延長されることになっている。   2 改正の内容 (1) 一般型の控除上限及び控除率の見直し 研究開発投資の維持・拡大に対するインセンティブを強化するため、試験研究費の増減割合に応じて控除上限が変動する制度を導入するとともに、控除率の傾きを見直す改正が行われた。なお、時限措置(控除率の上限引上げ、控除上限・控除率の上乗せ措置)については、適用期限が3年間延長されることになった。 現行制度においては、控除上限は25%とされているが、研究開発に積極的な企業のように税額控除上限に到達した企業に対して、更なる研究開発のインセンティブを与えるために、試験研究費の増減率に応じ税額控除の上限額が次のように変動するものとされた。 (※) 経済産業省「令和5年度(2023年度)経済産業関係 税制改正について」P20より また、研究開発費を増加させるインセンティブを与えられるように、試験研究費の増減率に応じた税額控除率のカーブを、次のように変更することとされた。 (※) 経済産業省「令和5年度(2023年度)経済産業関係 税制改正について」P20より (2) オープンイノベーション型のスタートアップの定義の見直し及び高度研究人材の活用を促す措置の創設 幅広いスタートアップ企業との共同研究・委託研究を促すため、オープンイノベーション型のうち研究開発型ベンチャーの範囲を大幅に拡大することとされた。 現行制度では、経済産業大臣が認定したベンチャーファンドから出資を受けたベンチャー企業等を研究開発型ベンチャー企業としていたが、次の条件を満たすスタートアップのうち経済産業大臣の証明書の交付(交付手続のイメージは次のとおり)を受けたものを対象とすることとされた(これによって税制の対象となる企業が約200社から2,000社以上に増えることが見込まれている)。 (※) 経済産業省「令和5年度(2023年度)経済産業関係 税制改正について」P21より 質の高い研究開発を促進し、革新的なイノベーションを生み出す観点から、オープンイノベーション型の類型の1つに、博士号取得者及び外部研究者を雇用した場合に係る人件費(工業化研究を除く)の試験研究を行う者の人件費に占める割合を対前年度比で3%以上増加する場合、これらの人件費の20%を税額控除できる制度が新たに創設されることとなった。 (3) 試験研究費の範囲の見直し サービス開発に関して、現行制度では、センサー等を活用して自動的に大量のデータを収集することを対象としていたが、新たなサービス開発を促すため、既存データ(企業が既に保有しているビッグデータ)を活用する場合も一定の要件の下で対象に含められることになった。 一方で、現行制度では、性能向上を目的としない開発業務について考案されたデザインに基づく設計・試作であっても税制の対象に含められていたが、税制の対象とする研究開発の質を高めていくため、性能向上を目的としないものは、対象外となった。   3 適用時期 上記改正の適用時期については、明らかにされていない。 (了)

#羽柴 研吾
2023/01/05

プロフェッションジャーナル No.501が公開されました!~今週のお薦め記事~

2023年1月5日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.501を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2023/01/05

monthly TAX views -No.120-「財政へのコミットなければ金融正常化の出口は混乱」

monthly TAX views -No.120- 「財政へのコミットなければ金融正常化の出口は混乱」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   今年のわが国経済最大の課題は、日銀の金融政策がいつどう変わっていくのかという点だ。昨年暮れ、クリスマス休暇でのマーケットのすきを突く形で、10年国債金利の上限が0.25%から0.5%へと拡大され激震が走った。今後はより本格的な政策変更であるマイナス金利の撤廃が課題となる。 背景には、「失われた30年」と揶揄されてきたわが国経済が、バランスの取れた経済に向けて軌道に乗れる可能性が出てきたという変化がある。そのカギを握るのは賃金の動向で、昨年暮れのボーナスは好調であった。今年の春闘で、連合が主張しているように、ベア3%、賃上げ率5%が実現すれば、これまで日銀が目標としてきた「安定的に2%の物価上昇」の実現も決して不可能ではなくなり、本格的な金利の正常化(いわゆる「出口」)に向けて動き出す。 しかし、手放しでは喜べない。金融正常化への道は決して楽なものではなく、いばらの道であるかもしれない。 *  *  * 日銀の超金融緩和政策の長期化は、さまざまな負の影響をもたらしてきた。 第1に、金融機関の収益悪化やそれに伴う貸出姿勢の消極化と経済への悪影響である。地方銀行の中には慣れない外債投資で金利上昇に伴う多額の損失を抱え、経営基盤が揺らぐところもあった。 次に、経済のシグナルである金利の市場機能が失われ、経済の的確な判断が難しくなったことだ。また、本来なら市場により淘汰される事業や会社が低金利により延命され、新陳代謝が遅れ経済の構造改革が進まなかった。 さらに、家計の利子所得はほぼゼロに等しくなり、高齢者の生活を圧迫している。 最大の問題は、低金利での国債発行が可能なので、実質的な財政ファイナンスが行われ、政府の財政規律が弱まり、先進諸国最悪のGDPの2倍を超える債務残高をかかえることとなったことだ。一方これを支えた日銀も、上限のない国債購入の結果として保有国債残高は500兆円を超え、国債発行残高の半分超を保有するという状況で、含み損も発生している。 このような様々な問題を解消するのが金利の正常化だが、それは日銀や政府、ひいては国民にも大きな負担がのしかかる。 日銀は、金利の上昇に応じて当座預金金利を引き上げていく必要が生じるので、その利払い負担で1兆円を超える日銀国庫納付金はゼロになる。もっとも中期的には、国債の償還分を金利の上がった国債に再投資することによって赤字は減らせるので、数年先には赤字脱却が可能となるが。 筆者が懸念するのは財政への影響である。金利が上昇すれば国債の利払い費が増えて、財政に大きな影響を及ぼす。 財務省は、「令和4年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」を公表しているが、それによると、金利が1%上がると国債費は、翌年から0.8兆円、2.1兆円、3.7兆円と増加し、2%引き上がると、1.7兆円、4.1兆円、7.5兆円と増加していく。 GDPの2倍を超える国債残高のもとで、国債費が雪だるま式に増えれば、それを賄うためさらに新規国債を発行しなければならないという悪循環に陥る。 政府と日銀が2013年1月に発表した共同声明をどのように変更するのかという点も注目される。この共同声明は、「日銀は2%の物価目標をできるだけ早く達成する一方で、政府は経済の成長力を高めるため構造改革を進めるとともに、持続可能な財政基盤をつくること」と、日銀と政府それぞれの目標を示したものである。 しかし冒頭述べたように、この10年、政府の責任であった構造改革や財政健全化は進まなかった。このことから金融政策にしわ寄せがいき、黒田一本足打法となった。 *  *  * 金融が正常化する出口では、わが国の財政問題が意識される。英国のような市場の混乱を引き起こさないためにも、政府はあらためて構造改革や財政健全化にコミットする必要がある。わが国の財政目標は何度も先送りされてきたが、国際投機筋を納得させるだけの強い意思を内外の市場に示すことができるか、経済政策の正念場を迎える。 (了)

#No. 501(掲載号)
#森信 茂樹
2023/01/05

令和4年分 確定申告実務の留意点 【第1回】「令和4年分の申告から取扱いが変更となるもの」

令和4年分 確定申告実務の留意点 【第1回】 「令和4年分の申告から取扱いが変更となるもの」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   -はじめに- 令和4年分の確定申告の受付は、令和5年2月16日(木)から3月15日(水)まで行われる。還付申告は、令和5年2月15日(火)以前でも行うことができる。 なお、e-Taxを利用する場合は、令和5年1月4日(水)から3月15日(水)の間であれば、メンテナンス時間(3月13日を除く毎週月曜日午前0時~午前8時30分を予定)を除き、24時間 (※)申告書を送信することが可能である。 (※) 1月4日(水)は8時30分から、3月15日(水)は24時まで。 今回から3回シリーズで、令和4年分の確定申告に係る実務上の留意点を解説する。 第1回は、令和4年分の確定申告から変更となる次の①から③を取り上げる。 なお、確定申告に係る下記の拙稿も併せてご参照いただきたい。 (注) 上記の記事については、掲載後の税制改正等により、解説内容が現在の規定に基づくものとは異なるケースがある。過年度の記事内に順次コメントを入れるので留意していただきたい。   【1】 住宅借入金等特別控除に関する改正 令和4年度の税制改正により、住宅借入金等特別控除の適用期限は、令和7年12月31日まで延長された。ただし、住宅借入金等の年末残高の限度額や控除率、控除期間、所得要件等に見直しが行われている。 改正の詳細については、以下の拙稿をご参照いただきたい。 令和4年に居住した住宅の場合には、取得等をした住宅により、借入限度額、控除率、控除期間は以下のとおりとなる(措法41)(※)。 (※) 特別特例取得又は特例特別特例取得に該当する住宅の取得等の場合には、以下の拙稿をご参照いただきたい。 なお、適用対象者の所得要件は、2,000万円以下(※)(改正前は3,000万円以下)に引き下げられている。 (※) 床面積40㎡以上50㎡未満で令和5年12月31日以前に建築基準法第6条第1項の規定による建築確認を受けた居住用家屋又は認定住宅等の場合は、1,000万円以下。 〈① 新築等又は買取再販住宅の取得〉 〈② 上記①以外の住宅(※)の場合〉 (※) 買取再販住宅又は買取再販認定住宅等以外の中古住宅の取得や住宅の増改築等   【2】 申告書等の様式の見直し (1) 確定申告書様式の一本化 令和5年に提出する令和4年分の確定申告書から、A・Bの区分がなくなり、新しい申告書(以前のB様式)に一本化される。 また、第一表に「修正申告」欄が新たに設けられ、それに伴い第五表(修正申告書)は廃止される。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。    (2) 収支内訳書の雑所得対応 業務に係る雑所得の一部については、令和4年分の確定申告から収支内訳書を提出する必要がある(所法120⑥)。 業務に係る雑所得のうち収支内訳書の提出が必要とされるのは、「その年の前々年分の当該業務に係る収入金額が1,000万円を超える場合」である。よって、令和4年分の確定申告であれば、令和2年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超えているかで判断する。 以上より、収支内訳書が「事業所得」に係るものであるのか、「業務に係る雑所得」に係るものであるのかを明確にするため、「営業等」又は「雑(業務)」のいずれかを選択する箇所が設けられた。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   【3】 申告と納税の利便性の向上 近年、e-Taxの利用率がアップしており、国税庁の公表資料によると、ここ数年は所得税の申告件数に占めるe-Taxの利用割合は6割前後となっている。 申告、納税環境の整備も年々進められており、令和4年分の確定申告からの新たな取扱いには、次のようなものがある。 (1) マイナンバーカードの読み取り回数が1回に(令和5年1月から) マイナンバーカードを利用して申告する場合、過去にマイナンバーカード方式で申告をしたことがあれば、マイナンバーカードの読み取り回数がe-Taxへのログイン時の1回のみになる(現在は、e-Taxの登録情報の確認、電子署名の付与、e-Taxへのログインの計3回必要)。 (2) 青色申告決算書等もスマホで作成可能に(令和5年1月から) 確定申告書本体だけでなく、青色申告決算書及び収支内訳書もスマホで作成できるようになる。 (3) マイナポータル連携の範囲拡大(令和4年分の確定申告から) 令和4年分の確定申告から、新たに医療費通知情報(1年分)、公的年金等の源泉徴収票、国民年金保険料控除証明書もマイナポータル連携(※)の対象となる。 (※) マイナポータル連携:マイナポータル経由で控除証明書等の必要書類のデータを一括取得し、各種申告書の該当項目へ自動入力する機能。 上記3つの書類が加わったことにより、令和4年分の確定申告でマイナポータル連携の対象となる控除証明書等は、次のとおりとなる。 (※) 赤網かけ部分が令和4年分の確定申告から対象となるもの。 (4) スマホアプリからの納税 令和4年12月1日から、スマホ専用サイト「国税スマートフォン決済専用サイト」において、スマホアプリ(〇〇Pay等)を利用して納税することができる。 以上については、国税庁ホームページ内の「令和4年分確定申告特集(準備編)」に詳細が記載されているので参考にされたい。 *  *  * 次回(第2回)は、令和4年分の確定申告に影響する最近の改正事項についてポイントを解説する予定である。 (了)   

#No. 501(掲載号)
#篠藤 敦子
2023/01/05

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例48】「使途不明の商品券購入費用の損金性」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例48】 「使途不明の商品券購入費用の損金性」   国際医療福祉大学大学院教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、近畿地方において医療機関向けの人材派遣や情報サービスの提供を行っている株式会社Y(資本金1億円)で総務経理部長を務めております。わが社は代表取締役であるZが10年前に創業した比較的歴史の浅い会社ですが、もともとソフトウェア会社のSEであったZが医療機関向けの情報サービス業に目をつけたところ大当たりし、最近では株式公開の準備を進めるところまで事業を拡大してきました。 私が銀行から当社に移籍してきたのは2年程前ですが、当社の特徴として、急成長中の会社にありがちな現象ではありますが、事業規模に比べ組織運営の整備が不十分であるといえます。そこで、私はこれまでの銀行員としての経験を踏まえ、適切なガバナンスが機能するような組織体制を構築すべく、管理部門の充実を柱とした組織改革を矢継ぎ早に行ってきました。特に不透明かつ不効率な支出を抑制するという意味で、経理部門の役割が大きいことから、チェック体制を整備し、結果として利益率を前年から数ポイント上げることに成功しました。 このような目覚ましい成果を挙げつつも、最後まで手付かずだったのが、代表取締役の特別勘定の取扱いでした。これが先日受けた税務調査で問題となっており、頭を痛めております。すなわち、代表取締役Zが最近熱心に取り組んでいる、日本の伝統的な価値観に根差した道徳教育の普及に関し、それを学校教育の現場で実践しようということで、Zが学校法人Xの理事長に就任したことに伴い、当社から代表取締役特別勘定を通じて支出される不透明な金銭等が問題となりました。問題となった支出は、学校法人に対する商品券500万円分の購入費用で、交際費として計上し、800万円の定額控除限度額の範囲内であるため、全額損金に算入していました。担当の社長室長の説明では、それらの商品券は、学校教育で使用するPCや図書の購入費用に充てられたはずであるとのことでした。 しかし、当社は、それが学校法人において実際には何に充てられていたのかという証拠書類を徴収していないため、調査官は、当該支出は交際費ではなく寄附金ないし使途秘匿金に該当するとして、損金性を否認してきました。私個人としては、調査官の主張はもっともだと感じていますが、代表取締役Zが烈火のごとく怒っており、対応に窮しています。代表取締役にどのように説明すべきでしょうか、教えてください。 【A】 法人の支出する交際費は、その得意先・仕入先その他事業に関係のある者に対する接待・供応・慰安・贈答その他これらに類する行為のために支出するものであるため、法人の事業や業務との関連性やその具体的な使途が重要となります。 したがって、法人が交際費として経理処理し損金算入した支出であっても、法人の事業や業務との関連性が不明確であったり、その具体的な使途を調査において提示することができない場合には、交際費には該当しないものと考えられます。その場合、支出の相手先が学校法人であることが明確であれば使途秘匿金には該当せず、それが対価性のない支出である場合には、寄附金に該当するものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 法人の支出する交際費の損金性 法人の支出するもののうち、交際費・接待費・機密費その他の費用で、法人がその得意先・仕入先その他事業に関係のある者に対する接待・供応・慰安・贈答その他これらに類する行為のために支出するものを交際費という(措法61の4⑥)。法人税法上、このような交際費に関し、資本金額が1億円を超える法人については、原則としてその損金算入が認められていない(※1)。 (※1) ただし、接待飲食費の50%に相当する金額(措法61の4①)と、一人当たり5,000円以下の飲食費(交際費除外飲食費、措法61の4⑥二、措令37の5①)は損金に算入される。 一方で、資本金額が1億円以下の法人(中小法人)については、年額で800万円の定額限度額の範囲内で損金算入が認められている(措法61の4②)。 法人の支出する金額が交際費と認められるための要件として、一般に、支出する法人の側において、取引関係の円滑な進行を図るという目的を有していることが必要である。しかし、それだけでは十分ではなく、それが客観的に法人の活動の一環として認められる目的のために支出されていること、あるいは、その相手方がそれによって法人から利益を受けていると認識し得る客観的状況の下で支出されていることが必要であると解されている(※2)。 (※2) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂・2021年)433頁。   (2) 交際費隣接費用としての寄附金 上記の通り、法人の支出する金額が交際費に該当する場合、その法人が中小法人に該当するときには、一定金額が損金に算入される。そのため、実務上、法人の支出が交際費に該当するのか、それとも他の費用(交際費隣接費用)に該当するのかといった、費用の分類をめぐる様々な解釈問題がかねてから問題となってきた。そのような交際費隣接費用のうち、金銭その他の資産又は経済的利益の贈与又は無償の供与に当たるものは、寄附金ということになる(法法37⑦)。ただし、広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用、交際費・接待費及び福利厚生費とされるべきものは、寄附金には該当しない(法法37⑦カッコ書)。 なお、上記定義のうち、「無償」とは、対価又はそれに相当する金銭等の流入を伴わないことを意味するものと解されている(※3)。 (※3) 金子前掲(※2)書418頁。   (3) 使途不明の商品券の損金性が問われた事例 それでは、本件と同様に、使途不明の商品券の購入費用についての損金性(交際費該当性)が問われた事例(水戸地裁平成27年1月29日判決・税資265号-15(順号12598)、TAINSコード:Z265-12598)について以下で確認してみたい。 ① 事案の概要 本件は、株式会社Bに自社の従業員を出向させて給与負担金収入を受領することを主たる業務とする資本金1,000万円の株式会社(12月決算法人)である原告が、商品券の購入費用及び学校法人Dへ支出した金員につき、交際費等の額に当たるとして損金の額に算入して法人税の確定申告をしたのに対し、処分行政庁が、当該商品券の使途が明らかではなく業務との関連性も不明であるから、その購入費用につき損金の額に算入されず、また、学校法人へ支出した金員の額は寄附金の額に該当するなどとして、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたところ、原告が、上記各処分は違法であると主張して、被告に対し、上記更正処分のうち所得金額及び納税すべき税額につき更正前の額を超える部分並びに上記賦課決定処分の取消しを求める事案である。 原告は、平成18年12月期、平成20年12月期及び平成21年12月期の各事業年度において購入した商品券の各購入費用を、本件各事業年度の総勘定元帳の交際費勘定にそれぞれ計上した上で、本件商品券各購入費用の額について、租税特別措置法第61条の4第1項を適用し、平成18年12月期につき360万円、平成20年12月期につき270万円、平成21年12月期につき360万円を損金の額に算入して、それぞれ確定申告をした。 原告はまた、つくば市に所在する学校法人Dに対して平成20年12月5日に支出した金員100万円を、平成20年12月期の総勘定元帳の交際費勘定に計上した上で、租税特別措置法第61条の4第1項を適用し、本件金員のうち90万円につき平成20年12月期の損金の額に算入して確定申告をしている(当時の規定では、年額600万円の定額控除限度額の範囲内でその90%の損金算入が認められていた)。 ② 事案の争点 本件商品券各購入費用の損金算入の可否及び本件金員の寄附金該当性である。 ③ 裁判所の判断 〈商品券の損金算入の可否〉 〈交際費支出の寄附金〉 なお、本件は東京高裁に控訴(東京高裁平成27年8月26日・税資265号-128(順号12711)、TAINSコード:Z265-12711)されているが、棄却・確定している。 ④ 本裁判例から学ぶこと オーナー型企業の場合、税務調査において、そのオーナー兼代表者が独断で行った支出につき、それが法人の事業上の費用・損金に該当するかどうかという点が問題になることは珍しくない。本裁判例もそうであるが、その場合、その支出先や使途が明確でなければ損金性の判断は困難となるものの、往々にしてそれを把握しているのはオーナー兼代表者のみであり、企業側で税務調査を担当する者が調査官からの追及にしどろもどろとなり、頭を抱えるケースがみられる。 本裁判例においても、商品券の支出については、裁判所が判示する通り「原告の主張ないし原告代表者の供述は、合理的理由なく度々変遷しているといわざるを得ない」ことから、その使途を客観的に確定することは困難であり、実際のところは恐らく、代表者個人が負担すべき費用を法人に付け回していたという可能性が高いのではないだろうか。そうなると、法人の事業や業務との関連性やその具体的な使途が重要となる交際費となる余地はなく、本件のように使途の確認ができず、業務との関連性の有無が明らかではないものについては、使途不明金として損金の額に算入することができないこととなる(※4)。 (※4) 本裁判例では取り上げられていないが、通達では、費途不明の交際費等を損金の額に算入しないと一刀両断している(法基通9-7-20)。 ところで、本裁判例における当該支出は使途不明であることから、使途秘匿金となる可能性についても問題となり得るが、使途秘匿金の場合、その相手方が法人の帳簿書類に記載していないことがその適用要件となる(措法62②)。しかし、本裁判例の場合、法人がその支出先を殊更に秘匿するなどの行為を行っていないことから、使途秘匿金には該当しないものと考えられる(措法62③)。 また、学校法人への支出に関しては、原告側の「平成20年1月から5月まで本件学校法人の図書館の一部を事務所として借用していたことに対する賃料に見合う謝礼として支払ったと」の主張について、税務調査段階での原告代表者の回答は二転三転して要領を得ない。これでは、裁判所が判示するように、「本件金員の支出につき、原告主張の賃料ないし賃借に対する謝礼と認めることはでき」ず、「その対価性はないものといわざるを得」ないことから、損金性は否認せざるを得ないということになるであろう。この場合、当該支出は寄附金となる。 (4) 本件へのあてはめ 法人の支出する交際費は、その得意先・仕入先その他事業に関係のある者に対する接待・供応・慰安・贈答その他これらに類する行為のために支出するものであるため、法人の事業や業務との関連性やその具体的な使途が重要となる。 したがって、法人が交際費として経理処理し損金算入した支出であっても、法人の事業や業務との関連性が不明確であったり、その具体的な使途を調査において提示することができない場合には、交際費には該当しないものと考えられる。 その場合、支出の相手先が学校法人であることが明確であれば使途秘匿金には該当せず、それが対価性のない支出である場合には、寄附金に該当するものと考えられる。 (了)

#No. 501(掲載号)
#安部 和彦
2023/01/05

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第8回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第8回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也   (ウ) 相続等により取得した暗号資産の取得価額 暗号資産の評価額の計算の基礎となる暗号資産の取得価額、すなわち年末時点での1単位当たりの取得価額の計算の基礎となる暗号資産の取得価額は、その取得の方法に応じて定められていることを本連載第6回で確認した。 そこでは、「相続人に対する死因贈与、相続、包括遺贈又は相続人に対する特定遺贈により取得した場合」の取得価額について、「被相続人の死亡の時に、その被相続人が暗号資産について選択していた方法により評価した金額(被相続人が死亡時に保有する暗号資産の評価額)」であると説明した。これは、例えば、相続人が相続した暗号資産を相続後に「譲渡する」ケースを想起すればよい。 上記について、根拠となる所得税法施行令119条の6第2項1号は、「被相続人の死亡の時において、当該被相続人がその暗号資産につきよるべきものとされていた評価の方法により評価した金額」をもって取得価額とする旨を定めている。 これに対して、被相続人の取得価額の引継ぎを定める所得税法60条1項や67条の4は、「その者〔筆者注:ここでは「譲渡した者(相続人)」と理解しておく〕が引き続きこれを所有していたものとみなす」という表現を採用している。 これらの規定と比べるとわかりにくいように思われるかもしれないが、暗号資産の取得価額について定める所得税法施行令119条の6第2項1号の規定は、現在のところ、相続人が相続で取得した暗号資産を被相続人死亡時の時価で評価して相続人の取得価額とする規定ではなく、相続人が被相続人の取得価額を引き継ぐような効果を有する規定であると理解されている(規定振りが類似するものとして、有価証券の取得価額について定める所得税法施行令109条2項1号がある)。 国税庁のFAQ「4 暗号資産の取得価額」は、相続等により取得した暗号資産の取得価額について、「被相続人が死亡時に保有する暗号資産の評価額」という表現を用いており、やや微妙な表現となっている一方、他の方法による取得の場合と異なり、相続時の「価額(時価)」で評価するとは説明していない。ただし、少なくとも暗号資産税制に精通する税理士の間では被相続人の取得価額を引き継ぐような効果を有する規定であるという理解が支持されている。 このような理解を支持しつつ、次の点を考慮すると、一種の二重課税のような状態が生じる。 暗号資産の場合は、多額の含み益が発生し、相続によって取得した暗号資産の価額を超える極めて過大な税負担が発生することも考えられる。 しかも、相続により取得した不動産や株式等を相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合に、これに係る相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる特例(措法39)は、所得税法33条3項の譲渡所得に係る取得費の特例である。 国税庁は、暗号資産の譲渡による所得は原則として雑所得であり、譲渡所得には該当しないという立場である。これによれば、暗号資産の譲渡による所得を計算する際に上記の相続税額を譲渡資産の取得費に加算する取得費の特例は適用できないということになる。 生命保険年金に対する相続税と所得税の二重課税の是非が争われた長崎年金二重課税事件(最高裁平成22年7月6日第三小法廷判決・民集64巻5号1277頁)を持ち出して、上記の二重課税のような状態は違法である旨の主張はあり得るが、同事件の後に訴訟で争われた不動産や社債、株式に関する類似事案における納税者の主張が採用されていないことも考慮すると(東京地裁平成25年6月20日判決・税資263号順号12238など参照)、そのような主張が裁判所で支持されるハードルは相当高い。相続直前に被相続人が暗号資産を売却し(被相続人はその含み益に所得税が課される)、相続人がその売却代金をそのまま相続した場合(相続人は相続財産としての売却代金相当額に相続税が課される)の課税関係との平仄も考慮する必要がある。 このような二重課税はもともと所得税法が予定しているものとして一蹴される可能性が高い(遠藤努ほか「座談会 現場目線で語りつくす暗号資産の税務上の問題と未来」税務弘報70巻10号134頁以下参照)。 この点に関して、業界団体は、次のとおり改正を要望している(日本暗号資産取引業協会=日本暗号資産ビジネス協会「2023年度税制改正に関する要望書」17頁)。 暗号資産以外の他の資産との平仄を考慮すると、二重課税のような状態を直接的に是正する措置の導入はハードルが高そうであるが、さりとて、相続税と所得税を最高税率で負担するような状況は妥当であるのかという上記疑問は至極当然のものである。 他の資産は評価の安全性等が考慮されて時価よりも低い額で評価される場合があるが、暗号資産は基本的に市場価格(終値)のみで評価されている実態があるのであれば、公平性や中立性の観点から問題視することに説得力が出てくる。 適用違憲も含めた立法論以外の主張もあり得るが、租税特別措置法39条の取得費加算の適用範囲の拡張も含めて、立法論的議論も必要である。所得税法施行令119条の6第2項1号の規定の法的根拠を同法48条の2第2項に求めるならば、委任の趣旨の範囲内に収まる政令であるのかといった問題も議論の対象となる。 (了)

#No. 501(掲載号)
#泉 絢也
2023/01/05

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第66回】「売買契約中に相続が発生した場合における売主側に係る小規模宅地等の特例の適否」

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第66回】 「売買契約中に相続が発生した場合における 売主側に係る小規模宅地等の特例の適否」   税理士 柴田 健次   [Q] 被相続人である甲(相続開始は令和4年10月1日)は、A土地及び建物を所有していました。A土地及び建物は、40年前に甲が購入し、甲とその配偶者である乙が居住の用に供していましたが、老人ホームに入居するためにA土地及び建物を売却することになりました。 売買契約は令和4年8月1日に行い、手付金として10%相当を受け取っています。その後、引渡しの前に相続が発生し、相続人である乙が全ての財産を相続しました。 乙は令和4年中に相続登記を行い、乙名義にした後に令和5年3月1日に残代金を受領し、同日に所有権移転登記の申請を行っています。 なお、乙は令和4年12月に老人ホームに入所しており、それまではA土地及び建物に居住していました。 【売買契約の内容】 【A土地及び建物の相続税評価】 甲及び乙は相続開始の直前においてA土地及び建物に居住しており、相続後、所有権を甲から乙に承継した後に引渡しを行っていますので、相続財産の種類は土地及び建物として、相続税評価はA土地80,000千円、建物2,000千円として、A土地について小規模宅地等に係る特定居住用宅地等の特例を適用してもいいでしょうか。 [A] 相続財産の種類、相続税評価及び小規模宅地等に係る特定居住用宅地等の特例(以下単に「特例」という)の適否は下記のとおりとなります。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 相続財産の種類と相続税評価 売買契約締結後、引渡しの前に売主に相続が発生した場合には、相続又は遺贈により取得した財産は、土地及び建物ではなく、その売買契約に基づく残代金請求権となります。 昭和61年12月5日の最高裁判決(TAINSコード:Z154-5840)は、被相続人が生前に行った農地の売買契約が履行されている中で相続が発生した場合に、相続財産が農地であるのか債権であるのか、その評価はどうするかが争われた事例となります。 納税者は、被相続人が売買契約を締結した農地について、所有権移転が完了していないことから、土地として路線価により評価し、相続税の申告を行ったことに対して、課税庁は、所有権移転登記は完了していないものの、所有権は移転しており、未収債権が存在するとして、相続財産は売買残代金債権であるとした更正処分を行いました。 これに対して、最高裁は次のとおり判示し、納税者の請求を棄却しました。 上記の判決を踏まえて、国税庁の取扱いにおいても、土地等又は建物等の売買契約締結後、売主から買主への引渡しの日(農地法所定の許可又は届出を要する農地等である場合には、その許可の日又はその届出の効力の生じた日後にその土地等の所有権が売主から買主へ移転したと認められる場合を除き、その許可の日又は届出の効力の生じた日)前に売主に相続が開始した場合には、相続又は遺贈により取得した財産は、その売買契約に基づく相続開始時における残代金請求権とされました(国税庁資産税課情報第1号(平成3年1月11日付))。 したがって、本問については、相続開始時において土地の所有権は、私法上は買主に移転していませんが、相続財産の種類は売買契約に基づく残代金請求権として81,000千円が相続財産になります。   2 譲渡所得の時期 譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、原則として譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日になります。ただし、納税者の選択により、その資産の譲渡に関する契約の効力発生の日(農地法所定の許可又は届出を要する農地等の譲渡については、農地等の譲渡に関する契約が締結された日)により総収入金額に算入して申告があったときは、これを認めるとされています(所基通36-12)。 したがって、実務的には引渡日又は売買契約日で選択が可能となります。本問の場合には、売買契約日を選択した場合には、被相続人である甲の譲渡所得の対象となり、引渡日を選択した場合には、相続人である乙の譲渡所得の対象となります。 どちらを選択するかによって、下記の相違点がありますので、実務的には、有利な方法を検討することになります。本問の場合には、いずれも居住用財産の譲渡となりますので、居住用財産の3,000万円の特別控除の特例(措法35①)及び軽減税率の特例(措法31の3)の要件を満たしているかについても確認する必要があります。 上記の取扱いは、あくまでも所得税の取扱いとなりますので、引渡日を選択したとしても、相続財産の種類を残代金請求権とする上記1の相続税の取扱いに変更はありません。   3 小規模宅地等の特例の適否について 小規模宅地等の特例は、相続開始の直前において、被相続人又はその被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族(以下「被相続人等」という)の事業の用又は居住の用に供されていた「宅地等(土地又は土地の上に存する権利をいう、以下同じ)」を対象としており(措法69の4①)、「残代金請求権である債権」を小規模宅地等の特例の対象としていないため、原則として、残代金請求権は小規模宅地等の特例の対象になりません。 平成9年5月14日の裁決事例(TAINSコード:J53-4-19)では、借地権等の売買契約中に相続が発生した場合の相続財産の種類と小規模宅地等の特例の適否が争われていますが、相続により取得した財産は売買契約に係る残代金請求権であり、宅地等ではないため、小規模宅地等の特例の適用がないと判断がされています。 もっとも、私法上の所有権が相続開始時において売主にあり、現に相続開始の直前において被相続人等の居住の用に供されている宅地等に該当するため、小規模宅地等の特例の適用ができるとするとの見解もあるかと考えられます。また、特定居住用宅地等とは、被相続⼈の居住の⽤に供されていた宅地等で、当該被相続⼈の配偶者⼜は一定の要件を満たす当該被相続⼈の親族(当該被相続⼈の配偶者を除く)が相続⼜は遺贈により取得したものをいい(措法69の4③二)、配偶者については、相続税の申告期限までの宅地等の所有要件や居住要件はありませんので、相続開始の直前において甲の居住の用に供されていた宅地等であれば、要件は満たされることになります。 しかしながら、小規模宅地等の特例は、あくまでも「宅地等」を対象としていること及び被相続人等の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等について、それが相続人等の生活の基盤のために不可欠なものであって、その処分について相当の制約を受けるのが通常であること等に鑑み設けられた制度となりますので、本問の場合のように相続開始の直前において土地の売買契約が行われているケースについては、原則として認められるものではないと考えられます。   ★実務上のポイント★ 売買契約中に相続が発生した場合においても、準確定申告の期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内となりますので、被相続人の譲渡所得として申告した方がいいかどうかについて早めに検討をする必要があります。   (了)

#No. 501(掲載号)
#柴田 健次
2023/01/05

〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第26回】「残余利益分割法における残余利益の分割要因とは」

〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第26回】 「残余利益分割法における残余利益の分割要因とは」   公認会計士・税理士 霞 晴久   〔Q〕 残余利益(超過利益)をもたらした利益発生要因が必ずしも一つに限られるものではなく、重要な無形資産以外の利益発生要因が寄与していると想定し得る場合、残余利益分割法の分割要因はどのように考えるべきでしょうか。 〔A〕 重要な無形資産とともに他の複数の利益発生要因が重なり合い、相互に影響しながら一体となって得られた超過利益(残余利益)について、法人及び国外関連者に合理的に配分するためには、重要な無形資産以外の利益発生要因に関しても、その寄与の程度の推測にふさわしい要素(分割要因)を適切に考慮すべきであり、例えば、国外関連者による設備投資が、超過利益をもたらした複数の利益発生要因に関して重要な貢献をしているものと認められる場合、当該設備追加投資に係る減価償却費についても残余利益の分割要因とするのが相当であるという判断が示されました。 ●●●〔解説〕●●● 1 残余利益分割法における分割要因 残余利益分割法とは、国外関連取引から得られる分割対象利益(合算利益)について、第1段階として、基本的利益を当事者に配分し、第2段階として、残余部分(残余利益)を当該残余利益の発生に寄与した程度に応じて国外関連取引の当事者に配分する方法(※1)をいう(措令39の12⑧一ハ)。 (※1) 利益分割のイメージは、連載【第4回】を参照。 残余利益の法人及び国外関連者への配分は、残余利益に対する独自の価値ある寄与の程度に応じて行うことから、当該寄与が無形資産によるものである場合には、残余利益の分割要因には所得の源泉となっている無形資産の寄与の程度を用いることとなる。 無形資産の寄与の程度をどのように測定するかについて、国税庁HP「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」93頁では、「無形資産の寄与の程度を測るためには、法人又は国外関連者が有する無形資産の価値の絶対額を求めることは必ずしも必要ではなく、それぞれが有する無形資産の相対的な価値の割合で足りるから、無形資産の取得原価のほか、無形資産の形成・維持・発展の活動を反映する各期の支出費用等の額を用いることが考えられる。」と述べ、無形資産の開発のために支出した費用、すなわち試験研究費を分割要因等とすることを容認している(措置法通達66の4(5)-4)。 他方、上記で引用した措置法施行令39条の12第8項1号ハ(2)では、残余利益の分割について、「残余利益等の発生に寄与した程度を推測するに足りるこれらの者が支出した費用の額、使用した固定資産の価額その他これらの者に係る要因に応じてこれらの者に帰属するものとして計算した金額(下線筆者)」と規定しており、重要な無形資産に限定されない含みを持った表現振りとなっている。そこで問題となるのが、分割要因の選択において、重要な無形資産以外の要因を考慮すべきか否かについてである(※2)。 (※2) 志賀櫻『詳解 国際租税法の理論と実務』(民事法研究会・平成23年)314頁は、「実際には、超過利潤の源泉は、ライフサイクルの問題、経済の循環局面の問題、マーケットにおける独占ないし寡占の問題、その他もろもろの源泉が考えられるところであり、残余利益のすべてが無形資産によって説明できるかのような割り切り方は、誤謬であるといわなければならない」と述べている。 今回は、残余利益の分割要因として、国外関連者の試験研究費だけでなく、設備投資に係る減価償却費についても分割要因に加えるべきかについて争われた裁判例を取り上げる。   2 過去の裁判例 《日本ガイシ事件》(※3) (※3) (第一審) 東京地裁令和2年11月26日判決・TAINSコード:Z270-13486 (控訴審) 東京高裁令和4年3月10日判決・TAINSコード:Z888-2428 (1) 事案の概要 本件は、原告Xが国外関連者E(ポーランド法人)との間で行った取引(Xが有するセラミックス製DPE(※4)に係る無形資産の使用に係るライセンス契約)につき、所轄税務署長Yが移転価格税制(措置法66条の4)に基づき残余利益分割法を適用して課税処分を行ったところ、Xがこれを不服として、適法な不服申立手続を経て取消訴訟を提起した事案である。本件の争点は国外関連取引に係る独立企業間価格の算定(残余利益分割法)の適用に関し、①基本的利益の算定方法(比較対象法人の選定等の適否)、及び②残余利益の分割方法の適否であった。本稿では②に絞って検討する。 (※4) ディーゼル車用の微粒子除去フィルターをいい、本件事件当時、DPSの製造はXと他の日本企業2社による寡占状態であった。 (2) Xの主張(残余利益の分割方法について) Xは、以下のとおり主張した。 これに対し、国側(Y)は、以下のとおり反論した。 (3) 裁判所の判断 本件の第一審である東京地裁は、Yの主張に沿う形で、「残余利益分割法は、利益分割法の一つとして措置法通達66の4(4)-5に定められている方法であり、法人又は国外関連者が重要な無形資産を有する場合に、分割対象利益のうち重要な無形資産を有しない非関連者間の取引において通常得られる利益(以下「基本的利益」といい、基本的利益を得るための活動を「基本的活動」という。)に相当する金額を当該法人及び当該国外関連者それぞれに配分し、これを配分した後の残額(以下「残余利益」というほか、分割対象利益のうち基本的利益を超える額であるという観点から「超過利益」ということがある。)を、当該法人又は当該国外関連者が有する重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分するというものである」という認識を示した。 しかしながら東京地裁は、次のように判示し、最終的にYの主張を斥けた。 上記を前提に、東京地裁は、「重要な無形資産による寄与」の程度を推測するための要素(分割要因)としては、「当該重要な無形資産の開発のために支出した費用等の額によるのが合理的であり、本件のように製造活動に用いられる技術やノウハウ等の無形資産については、研究開発部門や製造部門の関係費用等を用いるのが相当である」とした。そして、「重要な無形資産以外による寄与」につき、「Eによる設備投資は、本件超過利益をもたらした複数の利益発生要因(※5)に関して重要な貢献をしているものと認められるから、本件追加投資に係る減価償却費につき、Xの研究開発費及びEの●●●部門費と同等のウエイトにより、残余利益の分割要因とするのが相当である」と判示し、その上で、Eの減価償却費には、重要な無形資産の開発に関するものや、基本的活動としての製造機能に関するものも含まれていることから、これらのものを控除する必要があるとし、分割要因とされるEの減価償却費の額を次のように求めた。 (※5) 裁判所は、①EU市場におけるセラミックス製DPFの需要の急増、②Eが早期にEU市場に参入したこと、③2社寡占状態の継続により高いシェアを維持できたこと、④売上高の増大に伴う規模の利益、⑤生産効率の向上を利益発生要因として認定している。 そして、超過減価償却費を分割要因に加えて残余利益を算定した結果、Xが収受すべきライセンス使用料の額が独立企業間価格を超える事業年度の課税処分が取り消された。 Yは、この判決を不服として控訴したが、控訴審である東京高裁は、令和4年3月10日、原審を是認しYの控訴を棄却したところ、Yは、期限までに上告及び上告受理申し立てを行わなかったため、控訴審判決が確定した(2022年3月25日「移転価格税制に基づく更正処分等の取消訴訟に係る控訴審判決の確定に関するお知らせ」参照)。 (4) 本判決の意義 本判決の意義は、移転価格課税における残余利益分割法の適用に当たり、「重要な無形資産以外の利益発生要因に関しても、当該法人又は当該国外関連者が支出した人件費の額や投下資本の額など、その寄与の程度の推測にふさわしい要素(分割要因)を適切に考慮すべきである」と判示したことにあり、画期的な判決として受け止められている。 (了)

#No. 501(掲載号)
#霞 晴久
2023/01/05
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