《速報解説》 令和4年3月期以降の有報の作成・提出に際して留意すべき事項を金融庁が示す ~令和4年度の有報レビューでは、重点テーマ審査として収益認識会計基準に着目~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 令和4(2022)年3月25日、金融庁は次のものを公表した。 令和4年3月期以降の有価証券報告書の作成に当たっては、これらに記載されている事項に特に注意し、適切に作成する必要があると考えられる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について 令和4年3月期以降の事業年度に係る有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項として次のことを述べている。 1 新たに適用となる開示制度に係る留意すべき事項 2022年3月期以降に適用される開示制度に係る公表・改正のうち、主なものは以下のとおりである。 2 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項 令和3年度の有価証券報告書レビューに関して、現在(2022年3月25日時点)までの実施状況を踏まえ、複数の有価証券報告書提出会社に共通して把握された事項に関し、記載に当たっての留意すべき事項について述べている。 当該事項を記載している別紙1は、表紙を含めて53ページある。 記載内容が不十分であると認められた事項には、会計監査の対象となる財務諸表等に関わるものも含まれているため、留意すべき事項等については、提出会社だけでなく、監査を実施する公認会計士又は監査法人においても、十分に留意いただきたいと記載されているので、改めて有価証券報告書の作成に際しては注意が必要である。 令和3年度の有価証券報告書レビューでは、以下の事項に着目して審査を実施している。 3 法令改正関係審査関係 4 重点テーマ審査関係 新型コロナウイルス感染症の影響に関する開示に関して、全般的な留意事項として次のことが記載されている。 Ⅲ IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の適用に関する審査 昨年度に引き続き、IFRSを任意適用する企業において、顧客との契約から生じる収益に関する開示がIFRS第15号に基づいて適切にされているかについて確認したところ、以下の各項目の開示等について、改善の余地があると考えられる事項が識別されたとのことである。 IFRS第15号の開示に関する包括的な定めとして開示目的を定めていること(IFRS第15号110項)や企業の実態に応じて個々の注記事項の開示の要否や詳細さのレベルを判断すること(同111項)を踏まえ、重点テーマ審査では、不備の指摘を主目的とせず、開示目的等に照らし、より充実した開示に向けた対話型の審査を基本としたとのことである。 我が国の「収益認識に関する会計基準」の適用会社にも参考になると考えられることから、提出会社が充実した開示を検討する上で、本資料が活用されることを期待するとのことである。 以下では、本年度の審査で確認された留意事項だけでなく、昨年度の審査で確認された留意事項も記載している。 1 全般的な留意事項 2 履行義務 3 履行義務の充足の時期の決定 4 契約残高 5 残存履行義務に配分した取引価格 6 取引価格及び履行義務への配分額の算定 7 収益の分解 8 重要な判断又は見積りを伴う判断 Ⅳ 有価証券報告書レビューの実施について(令和4年度) 1 法令改正関係審査 2022年3月31日以降を決算期末とする有価証券報告書の提出会社を対象として、「収益認識に関する会計基準」及び「時価の算定に関する会計基準等」の適用について審査する。 有価証券報告書提出会社は、別添の「調査票」に回答することが求められているので、有価証券報告書の作成に際して注意が必要である。 2 重点テーマ審査 令和4年度の有価証券報告書レビューについては、「収益認識に関する会計基準」に着目し、2022年3月31日以降を決算期末とする有価証券報告書の提出会社の中から審査対象会社を選定するとのことである。 財務局等からの質問状には、次の観点も反映していると述べられており、本3月期の有価証券報告書の作成に際しても、下記の観点を十分に考慮し、開示の要否を判断すべきものと解される。 (了)
《速報解説》 会計士協会、草案から表現修正のうえ「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査に関する実務指針」を改正 ~2022.4.1以後に監査報告書を発行する訂正後の財務諸表に対する監査に適用~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2022年3月17日付けで(ホームページ掲載日は2022年3月28日)、日本公認会計士協会は、「監査・保証実務委員会実務指針第103号「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査に関する実務指針」の改正」を公表した。これにより、2022年1月21日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 これは、監査基準委員会報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」(以下「監基報720」という)に関連する後発事象への対応などを行うものである。 「公開草案に対するコメントの概要及び対応」も公表されており、2022年3月1日付けで日本公認会計士協会が公表した「監査意見不表明及び有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期に関する留意事項」を反映して、公開草案の表現の見直しが行われている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 訂正後の財務諸表における後発事象 監基報720は、監査人に、監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容(その他の記載内容)を通読し、財務諸表及び監査人が監査の過程で得た知識とその他の記載内容に重要な相違があるかどうかを検討することを要求している。 訂正報告書については、監査人は、各年度の訂正報告書に含まれるその他の記載内容を通読し、通読の過程において、その他の記載内容と訂正後の財務諸表又は監査人が訂正後の財務諸表に対する監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうか検討すること、また、そのような重要な相違以外にその他の記載内容に重要な誤りの兆候があるかどうか注意を払うことが求められる(A69-2項、監基報720、13項及び14項)。 各年度の訂正報告書に反映させる後発事象は、訂正前の財務諸表に対する各年度の監査報告書日までに発生していた事象である(A69項)。 訂正前の財務諸表に対する監査報告書日後に発生した事象については、その訂正対象年度の翌年度(翌四半期)以降の有価証券報告書等の開示書類において反映されると考えられる(A69項)。 監査人が訂正後の財務諸表に対する監査の過程で得た知識には、訂正後の財務諸表に対する監査報告書日までに発生した事象に関して得た知識も含まれ、A69項を踏まえて、各年度の訂正報告書に含まれるその他の記載内容を通読し検討を行う(A69項-2項)。 Ⅲ 適用時期等 改正後の実務指針は、2022年4月1日以後に監査報告書を発行する訂正後の財務諸表に対する監査に適用する。 (了)
《速報解説》 中小企業庁、「中小PMI支援メニュー」を公表 ~中小M&Aによって引き継いだ事業の継続・成長に向けた統合やすり合わせ等の取組を支援~ 太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) シニアマネジャー 公認会計士・税理士 岩丸 涼一 中小企業庁は、「中小PMI支援メニュー(中小M&Aによって引き継いだ事業の継続・成長に向けた支援メニュー)」を令和4年3月17日に公表した。 今回の公表の趣旨は、近年、事業承継の手段の1つとしてM&Aが注目され、中小企業においてもM&Aの増加により、マッチング等のM&Aの成立に向けた取組に関心が集まっているが、M&A後の事業の継続・成長に向けた統合・すり合わせ等の取組(PMI:Post Merger Integration)が軽視されていることを懸念してのものだ。 M&Aを成功に導くためには「事業の引継ぎ(M&Aの成立)」と「引継ぎ事業の継続・成長(PMIの実施)」を車の両輪で進めることが必要である。PMIとは主にM&A成立後に行われる統合作業であり、M&Aの目的を実現させ、統合の効果を最大化するために必要なプロセスをいう。 Ⅰ 中小PMIの支援メニュー 今回は中小企業におけるPMIの「型」として、「中小PMIガイドライン」の策定と、中小企業診断士協会との連携協定についての発表があり、今後以下のような支援策を展開する予定とのこと(一部実施済みの施策あり)。 Ⅱ 中小PMIガイドラインのポイント 今回策定されたガイドラインは、用語の解説等の基礎から発展的な内容まで幅広い構成となっており、主なポイントは以下のとおりである。 1 中小PMIに関する初のガイドライン 2 幅広い中小企業に対応する「基礎編」と「発展編」 3 中小PMIに関する豊富な成功・失敗事例 4 M&Aプロセスも含めて時系列で取組を整理 5 「経営統合」「信頼関係構築」「業務統合」という幅広い領域を網羅 Ⅲ なぜPMIが必要となるのか? (了) ↓お勧め連載記事↓
《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(令和3年7月~9月)」 ~注目事例の紹介~ 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 国税不服審判所は、2022(令和4)年3月23日、「令和3年7月から9月までの裁決事例の追加等」を公表した。追加で公表された裁決は表のとおり、相続税法が6件、所得税法が1件で、合わせて7件となっている 今回の公表裁決では、国税不服審判所は、7件すべてで原処分庁の課税処分等の全部又は一部を取り消しており、納税者の審査請求が全面的に棄却又は却下されたものはない。 【表:公表裁決事例令和3年7月~9月分の一覧】※本稿で取り上げた裁決 相続税法関係の事例②から⑤については、同じ被相続人に係る相続税の申告に対する課税処分につき、4人の相続人がそれぞれ審査請求を行ったものである。本稿では、被相続人の妻が審査請求を行った事例②をもとに、国税不服審判所が、原処分庁の主張する課税財産認定の一部を否認して、過少申告加算税の賦課決定処分の一部を取り消した理由について、その判断を検討したい。 なお、公表された裁決では、事例ごとに相続人ら関係者に使用されているアルファベットが異なっているが、本稿では、事例②において使用されているアルファベットに統一して用いることにする。 ➤ 相続税の課税財産の認定について、一部、原処分庁の主張を否認した事例・・・②~⑤ 1 事実関係 本件は、審査請求人が、①原処分庁所属の調査担当職員による調査を受けて相続税の修正申告をしたところ、原処分庁が、当該修正申告では被相続人(相続開始日は平成29年1月〇日)が保管していた現金及び相続開始前3年以内に贈与した財産の一部が申告漏れであったとして、相続税に係る更正処分等及び贈与税に係る決定処分等を行ったうえ、審査請求人の1人である被相続人の妻には被相続人名義の預金を解約して相続財産としなかった隠蔽行為があったなどとして重加算税の賦課決定処分等を行ったこと、また、②当該修正申告では他の相続人2名に相続開始日の3年より前に贈与された財産が相続財産とされており、納付すべき相続税額が過大であったとして更正の請求をしたところ、原処分庁が、請求の一部のみを認容した減額更正処分等を行ったことに対し、請求人が、原処分庁の認定には誤りがあるなどとして、これらの原処分の一部の取消しを求めた事案である。 審査請求人は、事例②は被相続人の妻。事例③は被相続人と妻の間の子H、事例④と事例⑤は被相続人とKとの間の子であるL及びMであり、被相続人は、平成27年4月2日、L及びMを認知しているため、本件に係る相続人は、被相続人の妻、被相続人と妻との間の子であるH及びJ、被相続人とKとの間の子であるL及びMの、合わせて5人である。 2 争点 3 国税不服審判所の判断 (1) 〔争点1〕N社金庫に保管されていた現金は、相続財産に含まれるか否か 国税不服審判所は、N社金庫に保管されていた現金については、被相続人が保管していたものと認定して、審査請求人の主張を斥けた。 ① 認定事実 争点となっている現金は、平成29年の秋頃、N社の事務室内に設置されていた金庫内からHが発見したものであり、令和2年5月8日にN社の会計帳簿の預り金勘定に計上されるまで、N社を含む関連法人のいずれの会計帳簿にも計上されていない。また、関連法人の経理担当者であったKは、Hが現金を発見するまで、現金が金庫に保管されていたことは知らなかったことから、この現金は、関連法人のいずれかに帰属するものとは認められない。 ② 判断 争点となっている現金が関連法人のいずれかに帰属するものであるとは認められないところ、現金を金庫に保管し、管理していたのが被相続人自身であり、被相続人が金庫に被相続人の個人的な財産についても保管していたことに加え、現金について、被相続人が他から預託を受けて保管していた金員であることをうかがわせる事情も見当たらないことに照らせば、現金は、被相続人が被相続人名義の預金通帳とともに金庫内に保管していた自らの固有財産と認めるのが相当であり、この現金は被相続人に帰属するものであり、相続財産に含まれると認めるのが相当である。 (2) 〔争点2〕被相続人からHに対しH名義口座に係る財産が贈与された時期はいつか 国税不服審判所は、被相続人からHへの贈与は、請求人の主張する平成13年から始まったものではなく、平成27年8月に行われたものであるという事実認定に基づき、この贈与は相続開始前3年以内に行われたものであると判断した。 ① 認定事実 被相続人は、子であるH、J、L及びMに対して、平成13年8月以降、毎年一定額を贈与する意思を表明した贈与証を作成し、Kに命じて、4人の子の名義預金口座を開設し、金銭贈与を行っていた。しかしながら、この贈与証には、受贈者の署名押印はなく、Hは、調査開始後の令和元年9月まで贈与証の存在を認識していなかったことからすると、贈与証の存在のみをもって、直ちに、被相続人とHとの間で、毎年のH名義口座への入金に係る贈与が成立していたと認めることはできない。 被相続人は、平成27年8月、Hに対し、H名義預金の残高全額を払い出した金員とともにH名義預金の通帳等を手渡したものであるが、被相続人は、口座開設から手渡しまでの約14年間、Hに対して、H名義預金の金融機関名や口座番号も知らせることなく、HがH名義預金を自由に使用できる状況には置かなかった。 ② 判断 我が国において、親が子に伝えないまま子名義の銀行預金口座を開設の上、金員を積み立てておく事例が少なからず見受けられることに鑑みると、H名義口座は、贈与証に記載したとおりの贈与の履行がされているとの外形を作出するために被相続人により開設され、平成27年8月まで被相続人自身の支配管理下に置かれていたものと認められるから、H名義預金は、被相続人に帰属する財産であったと認めるのが相当であり、被相続人は、平成27年8月、Hに対し、H名義預金の残高全額を払い出した金員を手渡し、Hはそれを受領していることから、被相続人とHの間においては、平成27年8月に、金員に係る贈与が成立するとともに、その履行がされたものと認めるのが相当であると判断した。 (3) 〔争点3〕M名義預金は、相続財産に含まれるか否か(具体的には、M名義預金は被相続人とMのいずれに帰属するものか) 国税不服審判所は、被相続人とMとの間の贈与契約について、Mの法定代理人であるKが受諾したうえで、M名義預金口座に入金していたものであるとして、M名義預金は、被相続人の相続財産には含まれないとして、原処分庁の主張を斥けた。 ① 認定事実 上記〔争点2〕で認定した事実のとおり、被相続人は、贈与証を作成のうえ、M名義預金口座に毎年一定額の入金をしていたところ、贈与証作成当時、Mは未成年であり、Mが成年に達するまでMの親権者はKのみであった。そして、Kは、L名義預金及びM名義預金の通帳及び印章を、口座開設当時からL又はMにそれぞれ引き渡すまで保管していた。 民法第824条《財産の管理及び代表》の規定により、Kは、Mが成年に達するまでは、Mの法定代理人として、その財産に関する法律行為についてその子を代表し、その財産を管理する立場にあったと認められることから、平成13年当時、Mの法定代理人として、被相続人からの贈与証による贈与の申込みを受諾し、その結果、平成13年から平成24年に至るまで、贈与契約に基づき、その履行として、Kが管理するM名義口座に毎年一定額が入金されていたものと認めるのが相当である。 ② 判断 M名義口座は、平成13年8月10日に開設された後、平成13年ないし平成24年までの各年に一度、被相続人からの一定額の入金が認められるほかは、利息を除き、入金は認められないことから、贈与契約の履行のために開設されたものであることは明らかである。M名義預金の通帳及び印章は、当初から、Kが保管していたものである。そうすると、M名義預金は、贈与証に基づく入金が開始された当初から、Kが、Mの代理人として自らの管理下に置いていたものであり、Mが成人に達した以降も、その保管状況を変更しなかったにすぎないというべきであることから、M名義預金は、平成13年の口座開設当初から、Mに帰属するものと認められるから、相続財産には含まれないと判断した。 (4) 〔争点4〕被相続人の妻に国税通則法第68条第1項に規定する隠蔽又は仮装の行為及び相続税法第19条の2第5項に規定する隠蔽仮装行為があったか否か 国税不服審判所は、被相続人の妻の行為について、隠蔽仮装行為を認め、重加算税の賦課決定をした原処分庁の主張を認める判断を行った。 ① 認定事実 被相続人の妻は、被相続人名義預金を、口座開設当時から預金通帳を保管するなど、管理していたが、相続に関する手続等の取りまとめを行ったHから被相続人名義の預金に係る通帳の所在を尋ねられた際、自宅にはない旨回答し、調査の直前まで、税理士及び他の相続人に被相続人名義預金の存在を伝えていなかったうえ、被相続人名義預金を解約して、被相続人の妻名義の口座に入金した後、この口座も解約し、被相続人名義預金の通帳とともに廃棄した。 ② 判断 被相続人の妻は、被相続人名義預金が相続財産となるとの認識の下、被相続人名義口座を解約するとともに遺産分割の対象とさせないことを意図し、他の相続人や税理士にあえてその存在を知らせずに、相続財産の存在の証となる預金通帳を廃棄するなどにより、隠匿したとみるのが相当である。これらの行為は、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について、これを隠蔽し、あるいは故意に脱漏するものということができるから、被相続人の妻には、国税通則法第68条第1項に規定する隠蔽の行為及び相続税法第19条の2第5項に規定する隠蔽仮装行為のいずれにも該当する行為があったと認められると判断した。 (了)
《速報解説》 開示作成にあたり参考となる「記述情報の開示の好事例集2021」が更新される ~「監査の状況」及び「役員の報酬等」の開示の好事例が新たに追加~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2022年3月25日、金融庁は、「記述情報の開示の好事例集2021」の更新を公表した。 これは、2022年2月4日の「記述情報の開示の好事例集2021」を更新するものであり、次のものについて好事例を追加している。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 監査の状況の開示例 1 投資家・アナリストが期待する主な開示のポイント 次の事項をあげている。 2 好事例のポイント 次のことが記載されている。 Ⅲ 役員の報酬等の開示例 1 投資家・アナリストが期待する主な開示のポイント 次の事項をあげている。 2 好事例のポイント 次のことが記載されている。 (了)
《速報解説》 国税庁、パブコメを経て所得税基本通達28-9を改正 ~非常勤の消防団員の出動日数に応じて支払われる金銭のうち、災害に関する出動は1日8,000円、それ以外の出動は1日4,000円まで非課税~ 税理士 菅野 真美 国税庁は令和4年3月23日付けで「「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)」を公表、所得税基本通達28-9《非常勤の消防団員が支給を受ける金銭》の見直しを行った。なお本改正は令和3年10月1日付けでパブリック・コメントに付されていた。 〔消防団員の報酬の現行の取扱い〕 消防団は、全国の市町村に設置された消防防災活動を行う組織であり、消防団員はその構成員として災害発生時には消防活動等を行う。消防団員は非常勤特別職の地方公務員であり報酬もある。 報酬は、災害活動や訓練に出動した際の出動手当等と出動に関わらず定額で支給される報酬がある。現行の取扱いでは、出動手当等は職務遂行を行うために要した費用の弁償であるから課税されず、出動回数に関わらず支給される報酬のうち、年間の支給額が5万円以下であるものは非課税とされていた。 〔消防団への報酬の見直しとパブリック・コメント〕 災害数の増加と、消防団員数の減少から危機感を感じた消防庁は、消防団員に対する報酬を出動報酬と年額報酬に分け、報酬基準の見直しを行った。国税庁は、これらの報酬に関して所得税法上の取扱いについて通達改正の必要があることから、既報のとおり改正案を提示して、パブリック・コメント手続を実施することになった。 この案によると、年額報酬のうち年間の支給額が5万円以下のものについては、非課税であるが、出動の日数に応じて支給を受ける報酬については、原則的には、給与等として課税対象となった。 〔パブリック・コメントの結果改正された通達〕 令和3年10月1日から11月1日まで通達の改正案についてパブリック・コメント手続を実施したところ、34通の意見が寄せられた。これらのうち従来から課税対象とされていなかった出動手当部分が給与として課税対象になることに反対する意見が多く寄せられた。そこで、令和4年3月23日、国税庁は通達を改正して公表した。 この通達によると、出動日数に応じて支払われる金銭のうち、災害に関する出動については1日につき8,000円、それ以外の出動については4,000円までは費用弁償として支給されるものだから課税されず、超える部分については給与等として課税対象となる。出動日数にかかわらず定額で支給される金銭については年額5万円までは非課税として、超える部分については給与等として課税対象となる。つまり、現行の取扱いと大きく異なる改正は行わないこととなった。 なおこの通達は、令和4年4月1日以後に行う職務に応じて支給を受ける金銭と、令和4年4月1日以後に支給を受けるべき定額の金銭について適用される。 防災のために不可欠な人件費の課税上の取扱いに関しては、国税庁も真剣に耳を傾け柔軟に対応するようである。 〈改正後の所得税基本通達28-9〉 〈経過的取扱い〉 (了)
2022年3月24日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.462を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
組織再編成・資本等取引の税務に関する留意事項 【第8回】 「給与等の支給額が増加した場合の税額控除」 公認会計士 佐藤 信祐 1 概要 令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する各事業年度では、給与等の支給額が増加した場合の税額控除が認められている(措法42の12の5①②)(※1)。具体的な内容は以下の通りである。 (※1) 地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除(措法42の12)との重複適用の論点については、解説を省略するものとする。 (1) 原則的な取扱い(措法42の12の5①一) イ 適用要件 (※2) 国内雇用者のうち国内の事業所において勤務することとなった日から1年を経過していない者をいう(措法42の12の5③二)。なお、支配関係がある法人若しくは個人の事業所から異動した者及び海外の事業所から異動した者を除外するとともに(措令27の12の4の2③)、合併、分割、現物出資又は現物分配により異動した者については、被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人における雇用開始日を合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人の雇用開始日として取り扱うことになる(措令27の12の4の2④)。 (※3) 適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内新規雇用者(雇用保険法の一般被保険者に該当する者に限る)に対する給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金を除く)がある場合には、当該金額を控除した金額)をいう(措法42の12の5③五)。 ロ 税額控除 (※4) 適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内新規雇用者に対する給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には、当該金額を控除した金額)のうち、適用年度の調整雇用者給与等支給増加額に達するまでの金額をいうが(措法42の12の5③四)、地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除(措法42の12)の適用がある場合には、所要の調整が行われる。なお、調整雇用者給与等支給増加額とは、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額をいう。 (※5) その教育訓練費に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には、当該金額を控除した金額。 (2) 中小企業者等の特例(措法42の12の5②) イ 適用要件 (※6) 適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金を除く)がある場合には、当該金額を控除した金額)をいう(措法42の12の5③十)。 ロ 税額控除 (※7) 雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額(当該金額が適用年度の調整雇用者給与等支給増加額を超える場合には、当該調整雇用者給与等支給増加額)をいう(措法42の12の5③十二)。なお、地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除(措法42の12)の適用がある場合には、所要の調整が行われる。 地方税法においても、上記の中小企業者等の特例を適用する場合には、道府県民税及び市町村民税(法人税割)の課税標準額が給与等の支給額が増加した場合の税額控除を適用した後の法人税額をもとに計算されることから、道府県民税及び市町村民税(法人税割)も軽減されることになる(地法附則8⑬)。さらに、外形標準課税の適用上も、付加価値割額の計算上、一定の調整を加えた雇用者給与等支給増加額を控除することとされている(地法附則9⑬)。 このように、給与等の支給額が増加した場合の税額控除では、「比較雇用者給与等支給額」「新規雇用者比較給与等支給額」「比較教育訓練費」の計算を行うことから、これらの数値が組織再編成による影響を受けることになる。 2 解散事業年度における取扱い 解散の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度では、給与等の支給額が増加した場合の税額控除が認められていない(措法42の12の5①②)。ただし、合併により解散する法人については、給与等の支給額が増加した場合の税額控除が認められている。これは、適格合併を行った場合であっても、非適格合併を行った場合であっても同様である。 これに対し、①分割又は事業譲渡をした日の属する事業年度において分割法人又は事業譲渡法人が解散する場合には、解散の日を含む事業年度において、給与等の支給額が増加した場合の税額控除を適用することができず、②分割法人となる法人又は事業譲渡法人となる法人が解散した日の翌日に分割又は事業譲渡をする場合には、清算中の事業年度において、給与等の支給額が増加した場合の税額控除を適用することができない。 3 設立事業年度における取扱い 設立事業年度では、給与等の支給額が増加した場合の税額控除が認められていない(措法42の12の5①②)。これは、組織再編成により設立された場合も同様である(措法42の12の5③一)。 4 比較雇用者給与等支給額 (1) 合併を行った場合(措令27の12の4の2⑦⑳) (※8) 合併法人が当該適用年度開始の日においてその設立の日の翌日以後1年(当該適用年度が1年に満たない場合には、当該適用年度の期間)を経過していない法人(以下、「未経過法人」という)に該当する場合には基準日から当該合併法人の設立の日の前日までの期間を当該合併法人の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。 (※9) 未経過法人に該当する場合には、基準日から合併法人の設立の日の前日までの期間を当該合併法人の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。 この場合における月別給与等支給額とは、その合併に係る被合併法人の各事業年度に係る給与等支給額をそれぞれ当該各事業年度の月数で除して計算した金額を当該各事業年度に含まれる月に係るものとみなしたものをいう(措令27の12の4の2⑧⑳)。 そして、基準日とは、以下に掲げる場合の区分に応じ、以下に定める日をいう(措令27の12の4の2⑫⑳)。なお、基準日の取扱いは、後述する分割、現物出資及び現物分配においても同様である。 (※10) 残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、当該設立の日から当該前事業年度の終了の日の前日までの期間内においてその残余財産が確定したものとし、その分割等に係る移転給与等支給額が0である場合における当該分割等を除く。 (※11) 当該設立の日から当該合併又は分割等の前日(残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、その残余財産の確定の日)までの期間に係る給与等支給額が0である場合に限る。 (2) 分割、現物出資又は現物分配を行った場合(措令27の12の4の2⑨⑳) (※12) 未経過法人に該当する場合には、基準日から分割承継法人等の設立の日の前日までの期間を当該分割承継法人等の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。 (※13) 残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、その残余財産の確定の日の翌日。 (※14) 残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、その残余財産の確定の日。 (※15) 未経過法人に該当する場合には、基準日から分割承継法人等の設立の日の前日までの期間を当該分割承継法人等の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。 ここでいう月別移転給与等支給額とは、その分割等に係る分割法人等の当該分割等の日(※16)前に開始した各事業年度に係る移転給与等支給額をそれぞれ当該各事業年度の月数(※17)で除して計算した金額を当該各事業年度に含まれる月(※18)に係るものとみなしたものをいう(措令27の12の4の2⑩⑳)。 (※16) 残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、その残余財産の確定の日の翌日。 (※17) 分割事業年度等にあっては、当該分割事業年度等の開始の日から当該分割等の日の前日までの期間の月数。 (※18) 分割事業年度等にあっては、当該分割事業年度等の開始の日から当該分割等の日の前日までの期間に含まれる月。 そして、移転給与等支給額とは、その分割等に係る分割法人等の当該分割等の日前に開始した各事業年度に係る給与等支給額(※19)に当該分割等の直後の当該分割等に係る分割承継法人等の国内雇用者(※20)の数を乗じてこれを当該分割等の直前の当該分割法人等の国内雇用者の数で除して計算した金額をいう(措令27の12の4の2⑪⑳)。 (※19) 分割事業年度等にあっては、当該分割等の日の前日を当該分割事業年度等の終了の日とした場合に損金の額に算入される給与等支給額。 (※20) 当該分割等の直前において当該分割法人等の国内雇用者であった者に限る。 5 新規雇用者比較給与等支給額 令和3年改正前租税特別措置法では、継続雇用者給与等支給額を基礎に税額控除の計算を行っており、組織再編成を行った場合であっても、移転先において継続雇用者の定義を満たさないことから、特段の調整計算は不要であった。 これに対し、令和3年度税制改正により、継続雇用者給与等支給額ではなく、新規雇用者比較給与等支給額を基礎に税額控除の計算を行うことになったため、組織再編成に伴う調整計算が必要になった。具体的な調整計算の方法については、比較雇用者給与等支給額と同様である(措令27の12の4の2⑦~⑫)。 6 比較教育訓練費 組織再編成を行った場合における比較教育訓練費の調整計算については、比較雇用者給与等支給額に関する調整計算を読み替えて適用するものとされている(措令27の12の4の2⑮⑯)。 7 適用除外事業者 試験研究を行った場合の税額控除の制度と同様に、適用除外事業者についても定められている(措法42の12の5②)。具体的な内容については、試験研究を行った場合の税額控除の制度(第7回参照)と変わらない。 (注) 令和4年度税制改正では、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が3%以上であるときに、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%の税額控除ができる制度に改組された。そのため、本稿で解説した内容も、令和4年4月1日以後に開始する事業年度では、令和4年度税制改正により変わるという点にご留意されたい。 (了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例108(相続税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆適格株式交換 適格株式交換の場合、完全親法人における完全子法人株式の取得価額は、株式交換直前の完全子法人の株主数により以下に区分される。したがって、完全親法人の純資産の部は、それぞれの取得価額が増加資本金等となる。 ◆純資産価額の計算時期 評価会社が課税時期において仮決算を行っていないため、課税時期における資産及び負債の金額が明確でない場合において、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について著しく増減がないため評価額の計算に影響が少ないと認められるときは、直前期末の資産及び負債を基に、課税時期の純資産価額を計算しても差し支えないこととされている。 ◆弔慰金等の取扱い(相基通3-20) 被相続人の死亡により相続人その他の者が受ける弔慰金等については、退職手当金等に該当すると認められるものを除き、次に掲げる金額を弔慰金等に相当する金額として取り扱い、当該金額を超える部分の金額があるときは、その超える部分に相当する金額は退職手当金等に該当するものとして取り扱うものとする。 したがって、退職手当金等につきその区分が明らかにされていない場合であっても、上記金額は弔慰金等として退職手当金から差し引いて計算することができる。 (了)
〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第29回】 「二世帯住宅に生計一親族と生計別親族が居住していた場合の特定居住用宅地等の特例の適用の可否」 税理士 柴田 健次 [Q] 被相続人である甲(相続開始日:令和4年3月20日)は、下記の土地及び家屋を所有していました。土地建物の生前の利用状況は、下記の通り、1階部分は長男である乙が居住の用に供し、2階部分は長女である丙及び丙家族が居住の用に供しています。 建物の各階ごとに玄関があり、構造上区分された建物で乙は1階で1人で生活をしていました。甲は乙及び丙から賃料は収受していません。なお、甲は5年前に自宅を売却し、老人ホームに居住していました。 【相続発生前の利用状況】 甲の相続発生に伴い、甲の所有していた上記土地及び建物を乙及び丙が1/2ずつ取得しました。相続人は乙と丙の2人です。乙は甲と生計を一にしており、相続後は引き続き上記の土地家屋に居住しています。丙は甲と生計を別にしており、相続後は引き続き上記の土地家屋に居住しています。 次のそれぞれの場合には、乙及び丙が適用できる特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例の適用面積は何㎡でしょうか。 [A] 区分登記の有無に関わらず、乙は宅地等の面積の1/2相当である165㎡のうち1階部分に相当する90㎡(165㎡×120㎡/220㎡)について特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例(以下単に「特例」という)を受けることができますが、丙は特例を受けることができません。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 特定居住用宅地等の意義 被相続⼈⼜は当該被相続⼈と⽣計を⼀にしていた当該被相続⼈の親族(以下「被相続人等」という)の居住の⽤に供されていた宅地等(当該宅地等が2以上ある場合には、政令で定める宅地等に限る。「第19回で解説」)で、当該被相続⼈の配偶者⼜は一定の要件を満たす当該被相続⼈の親族(当該被相続⼈の配偶者を除く)が相続⼜は遺贈により取得したものをいいます(措法69の4③二)。 一定の要件を満たす被相続人の親族は、下記の(1)~(3)のいずれかを満たす親族をいいます。 (1) 同居親族 当該親族が相続開始の直前において当該宅地等の上に存する当該被相続⼈の居住の⽤に供されていた⼀棟の建物(当該被相続⼈、当該被相続⼈の配偶者⼜は当該親族の居住の⽤に供されていた部分として政令で定める部分に限る)に居住していた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、当該建物に居住していること。 政令で定める部分とは、次に掲げる場合の区分に応じてそれぞれに定める部分をいいます(措令40の2⑬、措通69の4-7の4)。 (2) 別居親族 当該親族が次に掲げる要件の全てを満たすこと(措令40の2⑭⑮、措規23の2④)。 (3) 生計一親族 当該親族が当該被相続⼈と⽣計を⼀にしていた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続き当該宅地等を⾃⼰の居住の⽤に供していること。 2 一棟の建物で区分登記がされていない二世帯住宅の場合の特定居住用宅地等の範囲 被相続人の居住の用に供されていた建物が一棟の建物(区分所有建物である旨の登記がされている建物を除く)である場合には、その一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等のうち被相続人の親族の居住の用に供されていた部分は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等として取り扱います(措令40の2④、措通69の4-7)。 3 本問への当てはめ 本問の場合には、入口の要件として被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当するのか、出口の要件として取得者の要件を確認することになります。 入口の要件としては、1階部分については、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当しますが、2階部分については該当しませんので、1階部分のみが特例の対象となります。上記2の取扱いは、あくまでも被相続人の居住の用に供されていた建物が一棟の建物(区分所有建物である旨の登記がされている建物を除く)である場合の取扱いであり、生計一親族の居住の用に供されていた建物については、上記2の取扱いはありませんので、注意する必要があります。 続いて取得者の要件ですが、取得者ごとに確認すると下記の通りとなります。 〔乙について〕 乙は上記1(3)の生計一親族の要件を満たすことになりますので、他の要件を満たせば特例の適用を受けることができます。ただし、特例の対象は、生計一親族の居住の用に供されていた1階部分のみとなりますので、乙が取得した土地等の面積を家屋の床面積で按分する必要があります。 なお、区分登記がされており、かつ、その区分登記ごとに敷地権割合も設定がされていた場合に、乙が居住している部分の家屋と敷地権割合を取得したときは、乙が取得した土地部分の全てについて、特例の対象にすることができます。 〔丙について〕 別居親族の場合には、上記1(2)の要件には記載していませんが、被相続⼈の居住の⽤に供されていた宅地等を取得した者であることが前提となります(措法69の4③二ロ)。したがって、そもそも生計を一にしている親族の居住用宅地等を別居親族が取得しても特例の対象にはなりません。生計を一にしている親族の居住用宅地等で特例対象になり得るのは、その生計一親族か配偶者のみとなります。 ★実務上のポイント★ 区分登記を行い、敷地権割合を設定することにより1階部分の全体に対して特例を適用することも可能となりますので、事前にアドバイスをすることも重要となります。 (了)