税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第35回】 「敷地内に介在する無地番の土地は何か」 ~道でも水路でもない細長い形状の土地の扱い~ 不動産鑑定士 黒沢 泰 1 はじめに 今回は、不動産鑑定士の誰しもが調査の経験があるとは限らない案件ですが、鑑定評価に当たっては、評価額を求める以前の問題として、その前提条件を踏まえておく必要のあるケースを紹介します。その意味では、鑑定評価の常識ともいえる内容を含んでいます。 2 同じ所有者の敷地内に無地番の土地が介在するケース 不動産鑑定士が評価を依頼された物件を調査する際に、公図上で細長い形状をした無地番の土地を見かけることがあります。その典型的なケースとしては、水路、里道(建築基準法の適用されない幅の狭い道)等があげられます。これらの土地は、現にその機能を有している(=現況も水路や公衆の通り道として使用されている)場合には、その土地の所在する市町村が管理を行っており、調査に当たっても特段問題となることは少ないと思われます。 しかし、なかにはこれらとは明らかに性格の異なる二線引畦畔(通称)と呼ばれる国有地が民有地の中に介在していることがあります。これらは、傾斜地や農道等であることが多く、かつ旧土地台帳(後掲)に所有者として記載された経緯もなく、さらに田・畑等の間にある畔(あぜ)とも異なった国有地として扱われてきた土地です。下記の図面で緑色に着色された部分がこれに該当します(1つのイメージを表わしたものです)。 (出典) 関東財務局ホームページ「国有財産について-よくある質問と回答-」Q7 そのため、物件調査に際しては、このような土地がどのような性格を有し、田や畑の間に介在する畦畔とどのように異なるのかを理解しておかなければ、不動産鑑定士としての判断を誤る可能性があります。 (1) 畦畔の意味と特徴 畦畔ということばが登場する場合、必ずといってよいほど、それが内畦畔であるのか、外畦畔であるのかという区別が問題とされてきました。ただし、これらの区別は既に不動産登記制度の上で廃止されており、現在の登記簿(登記事項証明書の表題部)のどの箇所を調べても、この記載を見かけることはありません。 しかし、特に田畑の多い地方の土地や、都市部でも当時の地目が田畑等であった土地では、境界確定の際に畦畔の取扱いが問題となることがあります。 ① 畦畔の意味 畦畔とは、田畑(耕地)の境にあってこれらを区切る「あぜ道」のことです。そして、その機能は、田畑間の所有権や耕作範囲の境界を表わすとともに、灌漑用水の流出を防ぐことにあるといわれます。 このように、畦畔は田畑の本地と一体をなすものであり、その所有関係は本地と切り離して考えることはできませんが、収穫高に応じて地租を決定するという地租改正当時の目的から、耕作面積のみを丈量すれば十分で、畦畔の丈量まで求められることはなかった(※1)といわれます。 (※1) 「地租改正条例細目」(明治8年5月30日) 「耕地ヲ丈量スルハ畦畔ヨリ打詰ト心得ヘキ事」(第3条)、「数個ノ畦畔ヲ跨リ一筆トナス地ハ惣積ノ内ヨリ畦敷ノ歩合ヲ除去シテ反別ヲ定ムヘキコト」(第4条)。 しかし、実際にはその取扱いはまちまちで、地方により、あるいは測量する人によって、内畦畔としたり外畦畔の扱いをしたり、さまざまであった(※2)といわれています。そして、丈量の際、その面積を本地に含めて測量したものが内畦畔、本地に含めず測量したものが外畦畔と呼ばれました。 (※2) 篠塚昭次、宮代洋一、佐伯剛『境界の法律紛争』(有斐閣、昭和58年7月)69頁。 ② 特徴 内畦畔の場合、旧土地台帳(税務署が租税を徴収するために管理していた台帳です)に畦畔の面積が内書(=本地の面積の内数として表示)され、外畦畔の場合にはこの台帳に外書(=本地の面積の外数として表示)されていました。いずれの場合でも、本地と合わせた面積に差異はありませんでしたが、収穫のない畦畔は外書、収穫のある畦畔は内書とすることが多かったようです。 しかし、昭和35年4月に実施された登記簿と土地台帳の一元化作業により、旧土地台帳に「内畦畔〇〇歩」とか、「外畦畔〇〇歩」と記載されていたものについては、新しい登記簿の地積欄には一切これらの記載をしないこととされました(それまで外数として記載されていたものに関しては、その地積を本地の地積と合算して登記簿の「地積」欄に記載することとなったわけです)。 このような経緯があるため、内畦畔、外畦畔という記載は、現在の登記簿のみからは読み取ることはできません。また、公図を調査してもその中に畦畔という記載はなされていないのが通常です。 (2) 二線引畦畔の意味と上記(1)の畦畔との相違点 二線引畦畔も細長い形状をした無地番の土地ですが、公図上では従来から緑色で着色されてきました(上記図面もその名残りです)。現在、法務局で入手する図面は電子化されており、その写しを申請しても交付される図面には着色がされていないため、里道か水路か二線引畦畔かを最終的に区別するに当たっては、閉鎖されている旧公図における色分けを併せて調査する必要があります。 ① 二線引畦畔の意味と特徴 二線引畦畔は、しばしば青地とも呼ばれています。上記(1)で説明した畦畔は、もともと田や畑の畔道を意味しますが、二線引畦畔と呼ぶ場合の畦畔とは、必ずしもこのような意味で用いられているとは限りません。 本来、畦畔は田畑等の耕作地(本地)の機能を維持するために不可欠な土地であり、本地の補助的機能を果たす意味からも、これに付随すべきものといえます。 これに対し、二線引畦畔と呼ぶ場合には、畦畔ということばが使用されていても本地に付随する畦畔であるとは限りません。その実態は、一般公衆の通行する農道であったり、土手であったり、あるいは市街地の場合には敷地の一部として隣接土地所有者が占有していることも多く、それ自体耕作地の補助的機能を果たさないものがほとんどです。 また、過去の経緯を遡れば、明治7年11月7日太政官布告第120号「地所名称区別改定」により、全国の土地が官有地と民有地に区分され、民有地については所有権を主張する者に申出を義務付け、これが明確に確認できた場合には当該土地に地番を付す一方、その申告のない土地は官有地として扱われるようになったといわれています(二線引畦畔もこれに該当します)。 ② 上記(1)の畦畔との相違点 耕作地に含められる畦畔と二線引畦畔との間には、上記のような明らかな相違が認められますが、例えば、東京地裁平成5年11月30日判決(判例タイムズ第873号、157~171頁)では、これらの相違について詳細な検討を加えています。ただし、本稿では紙幅の関係から、要旨のみ紹介を行っておきます。 〇判決の要旨~いわゆる二線引畦畔について 3 まとめ 上記判決でも指摘されているとおり、二線引畦畔の場合、旧土地台帳にはじめから記載のない土地であるという点で、本来の意味における畦畔とは明らかに異なる(国有地である)ことが理解されます。鑑定評価の対象地内に二線引畦畔が介在している場合、民有地とは区別して捉える必要があります。 二線引畦畔は、従来から地番そのものが存在しませんが(そのため登記簿等によって面積を把握することはできませんが)、民有地の所有者が事実上一体として利用していることが多いのが実情です。このような状況の土地の鑑定評価に際しては、「敷地内に介在する無地番の土地は払下げを受けて一体利用が可能なもの」という条件を付して行うことが一般的といえます。また、現実に、二線引畦畔については財務局・財務事務所・出張所において境界確定や売払等が行われています(その時点ではじめて実測を行い、民有地との境界を確定していることが多いようです)。 (了)
〈エピソードでわかる〉 M&A最前線 【第7回】 「土木工事業のM&A」 -M&A検討段階で売り手社長が大病に- 株式会社日本M&Aセンター 提携統括事業部 東日本会計部 シニアチーフ 中小企業診断士 豊田 元幹 【第7回】は、M&A検討段階で売り手企業の社長が大病を患われた土木工事業のM&A事例を紹介します。 【売り手企業データ】 ※情報管理の観点から、一部内容を変更しております。 1 売り手社長が大病を患いM&Aを決断 売り手企業の社長との初回面談では、簡易企業評価と事業内容のヒアリング、M&A譲渡先の要望、希望株価等をお伺いしました。その際には社長から「良い相手が出てくればM&Aによる譲渡をするが、譲渡前提ではない」と伝えられていました。 それから1ヶ月の間、主に社長の奥様とメールを中心に決算関連資料等のやりとりをさせていただき、譲受企業に当該企業を紹介する資料である企業概要書作成と企業評価を行っていました。その後、内容確認のため社長ご夫妻の自宅を訪問したところ、社長はパジャマ姿でソファから立ち上がる様子もありません。社長は大病を患っていたのです。病名は「大動脈剥離」とのことでした。初回面談の2日後から2回目の前々日まで1ヶ月間入院をされていたのです。 社長からは「病気になる前は、自分が経営を続けていくことを考えていたが、今までどおりにはとてもできない。従業員も不安に思っており、すぐにでもM&Aの譲渡先を見つけてほしい」とお話をいただきました。 2 売り手社長ご夫妻はM&Aによる譲渡の意向を固めたが・・・ お話を受けて、総合建設業を経営している企業を紹介しました。M&Aによる土木工事業の譲受けのご要望を以前からいただいていた企業です。売り手企業の社長はトップ面談を行いたいということで、買い手企業からも正式にM&Aの意向をいただき、翌週に売り手企業社長のご自宅にてトップ面談を行うこととなりました。 トップ面談では、M&A後の展望についても話し合い、買い手社長の人情味あふれる人柄もあり、売り手社長のご夫妻は、同社に譲渡する意向を固めました。トップ面談後、2週間程度で諸条件を整え基本合意書を締結。翌月には売り手企業の会社近くの会議室で、2日間の買収監査を実施しました。 しかし、その翌月、完成した買収監査報告書を携え、買収監査を担当した監査法人の担当者と買い手企業の会議に出向くと、妙な緊張感が漂っていることに気づきました。会議室に並ぶ総勢10名の方々は、買い手企業側の顧問税理士・社労士と経営陣でした。簡単な挨拶ののち、買収監査の報告を行いました。そして、参加役員の1名から唐突に「この企業はM&Aできません」との言葉があったのです。この役員は買い手企業の会長だったのですが、売り手企業の立地面・事業面でのシナジー効果が見えにくいこと、売り手企業の従業員に社会保険の未加入者が含まれ、譲受け後のコストをそれなりにかけなければならないことなどを考えられた上での発言でした。 結局、本件は破談となり、売り手企業社長夫妻にもその旨を報告させていただくと、大変落胆された様子でした。 3 社会保険の一部未払いなどに対して改善が必要 そこから約2ヶ月の間、必死で次の買い手候補を探しました。売り手企業社長の体調は、快方に向かっているものの、現場に出ることができない状況に変わりはなく、従業員の不安が募っており、取引先からもクレームなどが出てきてしまっていました。 そのような中、2社目の買い手候補企業が現れました。関東圏で専門工事を行う企業です。買収ニーズの内容は、現在の主要事業を今後拡げることはかなり難しいため、別の事業の柱を置きたいというものでした。買い手企業の社長・役員と数回面談をした上で、トップ面談に臨みました。 この買い手企業は、社長が大胆である一方、役員が慎重でバランスを取りながら話を進める企業でした。特に、本件では売り手企業で社会保険の一部未払いが発生していたり、就業規則の内容と実際の勤務実態がかけ離れている社員が含まれていたりと、大幅な改善が必要な状況でした。また、売り手企業は重機を多数保有しており、これらの資産価値をどう見積もるかといった論点もありました。そういった点を売り手企業・買い手企業の間で何度も議論を交わし、交渉していきました。 ◆M&Aにあたっての売り手企業の論点◆ 社会保険の一部未払い 就業規則の内容と実際の勤務実態の乖離 重機の資産価値、など 4 M&A成立により不安だった売り手企業従業員も安心 既に買収監査が行われていたこともあり、基本合意から最終契約までは大きな動きはありませんでした。諸々の条件を整え、最終契約を締結し、売り手企業に社労士を紹介しました。社労士によって、就業規則の再策定、雇用条件の各従業員への提示など、従業員の手取り給与が減らないよう苦心しながら、1ヶ月半程度で買い手企業が経営しやすい状況へと整えていきました。 そして、前回の破談から約4ヶ月で資金の決済と役員の辞任・新任登記を終え、従業員開示を行いました。従業員には、周年行事と伝えて売り手企業事務所近くの料亭へ集まってもらいました。宴会開始時刻になり、売り手企業社長がM&Aについて発表しました。 売り手社長からは今回のM&Aについて、自身の体調不安、従業員の雇用の維持、今後の成長発展などについて話してもらいました。また、買い手社長からも同様に、雇用条件が変わらないこと、これからも成長発展のため経営資源をしっかり投入することなどを説明してもらいました。 ◆従業員開示で伝えられたこと◆ 本件M&Aについて 売り手社長の体調不安 社員の雇用及び雇用条件の維持 今後の売り手企業の成長戦略 宴会終了後には会場から最寄り駅までの送迎バスに乗り込む列で、売り手社員が積極的に買い手役員とコミュニケーションをとっている姿が印象的でした。現在では、売り手社長ご夫婦は退任され、体調を考慮しつつ趣味を楽しんでおられるとのことです。 (了)
《速報解説》 国税庁、事務運営指針の改正とともに 「帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置に関するQ&A」を公表 ~売上げや帳簿の範囲、帳簿の提示等の時期などを具体例も交え全20問で解説~ 弁護士 下尾 裕 令和4年度税制改正において、「帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置」(以下「本件加重措置」という)が新たに導入された。本件加重措置は令和6年1月1日以降に法定申告期限が到来する申告所得税、法人税・地方法人税、消費税について適用される予定になっている。 国税庁は、令和4年10月に、本件加重措置の運用に関連して以下の各事務運営指針を一部改正するとともに、「帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置に関するQ&A」(以下「本件Q&A」という)を公表した。 本稿については、本件Q&Aの概要について解説する。 1 本件Q&Aの概要 本件加重措置は、税務職員から「売上げ(業務に係る収入を含む。)に関する調査に必要な帳簿」の提示等を求められ、かつ、帳簿の提示がない又は帳簿への売上金額の記載等が本来記載等をすべき金額の3分の2未満であった場合には、帳簿に本来記載等をすべき事項に関する申告漏れ等に対して課される通常の過少申告加算税・無申告加算税の割合を5%又は10%加重するというものである。 本件Q&Aは、今回改正される上記事務運営指針の内容を前提に、本件加重措置の概要、対象となる納税者・売上げの範囲、帳簿の範囲、帳簿の不提示・不提出、帳簿の記載等が不十分である場合、及び加重対象となる非違の範囲について、それぞれ具体例を交えつつ、説明を行うものである。 2 留意すべき記載事項 本件Q&Aの内容は上記のとおりであるが、特に法令の解釈との関係で留意すべき点としては以下の点が挙げられる。 (1) 「売上げ(業務に係る収入を含む。)」(新国通規11の2②)の範囲 本件加重措置の適用対象は、帳簿に記載し又は記録すべき事項のうち、「納税申告書の作成の基礎となる重要なものとして財務省で定める事項」(特定事項)とされており(新国通法65④一・二)、この特定事項は「売上げ(業務に係る収入を含む。)」(新国通規11の2②)とされている。これを前提に、本件Q&Aの問6は、この「売上げ」の範囲について、以下のとおり具体的に整理している(この点は上記各新事務運営指針においても明示されている)。 また、国外取引に該当する営業収入については、所得税・法人税の加算税の加重措置については「売上げ(業務に係る収入を含む。)」に該当する一方、消費税の加算税の加重措置については当該売上げに含まないことも併せて明らかにされている(本件Q&A問7)。 (2) 帳簿の提示等の時期 本件加重措置は、税務当局の職員から「帳簿の提示又は提出を求められ」たことを要件とするところ(新国通法65④本文)、上記各新事務運営指針においては、帳簿の提示等の時期については「遅滞なく(すなわち正当な理由又は合理的な理由がない限り速やかに)」提示する必要があるとされている。 また、これを踏まえた帳簿の不提示・帳簿記載の十分性の判定時期については、事前通知時点ではなく、「調査を開始する日時までに帳簿を遅滞なく提示等ができるように準備してあれば」本件加重措置が適用されないことが明らかにされている(本件Q&A問12)。 (3) いわゆる「期ずれ」に係る帳簿記載の取扱い 上記各新事務運営指針及び本件Q&A問17においては、「売上げ」について本来記載等をすべき年分以外の年分の帳簿に記載等がされている状態(いわゆる期ずれ)が発生していた場合でも、本措置において帳簿への記載等が不十分であるか否かの判定に当たっては、本来記載等をすべき年分以外の年分の帳簿に記載等がされていた場合又は通常の業務処理手順などから帳簿の提示等を求められた日の属する年分(いわゆる進行年分)の帳簿に確実に記載等がされると認められる場合には、本来記載等をすべき年分の帳簿に記載等がされているものとして取り扱うことが明らかにされている。 (了)
令和2年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和2年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。 - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
2022年11月10日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.494を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第113回】 「節税商品取引を巡る法律問題(その7)」 中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦 Ⅵ 租税法の不知・誤解 これまで、節税商品取引に勧誘等をする側の法的問題を述べてきたが、他方で、かかる勧誘等を受ける側の問題についても関心を払う必要がある。具体的にいえば、勧誘等を受ける者の租税リテラシーのレベルに関する問題がそこには所在する。 以下、この視角に議論をシフトすることとし、いくつかの事例を参照しながら検討を加えることとする。 1 会計業務専門会社への依頼 (1) 第一審東京地裁平成28年10月12日判決 原告会社が会計業務を委託した被告会社に対して、消費税に関する助言等をすべき義務を怠ったなどと主張して損害賠償請求をした事例において、東京地裁平成28年10月12日判決(判例集未登載)は、原告の請求を棄却した。被告のHPの記載等は次のようなものであった。 同地裁は、以下のとおり、消費税課税事業者選択届出書(以下「本件届出書」という。)を提出した方が原告にとって税務上有利であったことは認めている。 しかし、本件契約の内容では、消費税の還付手続までもが合意されていたとは推認できないとする。 結果的に、東京地裁は次のとおり示し、原告の主張を排斥した。 また、本件届出書の提出が被告にとっての付随義務として、本件届出書提出等の義務を負うかについて、同地裁は、税理士法を参照しながら以下のように判示する。 そして、結論として、被告には本件届出書を提出等すべき義務があったとはいえない旨を示している。 (2) 控訴審東京高裁平成29年3月22日判決(判例集未登載) 控訴審東京高裁平成29年3月22日判決は、まず本件を次のように整理する。 その上で、結論として、第一審原告側の控訴を棄却した。 このように控訴審においても、第一審原告の主張は排斥されている。 ここでは、税理士制度についてのリテラシーが問題となっているのである。より充実した租税教育の必要性を覚えるところである。 2 「高名な」税理士の助言 みなし譲渡課税事案に関与した税理士のアドバイスが問題となった事例として、東京地裁令和4年2月14日判決(判例集未登載)がある。 本件税理士は、「原告父と原告長男との間に原告会社を介すれば、資本等取引として整理されることになるから、原告父及び原告長男においても、みなし配当の金額に対する課税以外の課税関係は生じない」とのアドバイスを行っていたところ、同地裁は、かかるアドバイスは、資本等取引が法人税法上の概念に留まることを無視した法令解釈であるとした。 また、同地裁は、「原告父から会社への譲渡価額」及び「会社から原告長男への処分価額」はいずれも1株1,500円とされているが、その金額は、「本件税理士が単に原告会社の株式の額面(1株当たり500円)に3を乗じて計算したものであった」と認定している。このような株価の算定方法の根拠は不明確であるといわざるを得ない事案であった。 加えて、本件税理士は、「税務署長等を歴任していた高名な税理士」であったとのことであったが、原告父や原告長男からは、「本件税理士のアドバイスを信じて、1,500円が株式の時価であり、1,500円で取引すれば税負担が生じることなどないと誤解していたから、本件自己株式取得等は私法上無効であり、無効な取引を前提とする処分も違法である」として錯誤無効が主張されている。 これに対して、同地裁は、原告父らが1株1,500円が適正な時価であると認識していたとは「にわかには信じ難い」として、「錯誤は無かった」と認定した。同地裁は、その理由として、個別注記表に1株当たり純資産額が記載されていたことや、原告父らが会社の経営を担っていたことを挙げている。 本件事件は、「高名な税理士が言ったからそれを信じた」という納税者の主張が安易には認められないとされた事例として注目したい。ここでは、納税者にも相当レベルでの時価についての認識が必要であることを観念させられるのである。 (続く)
谷口教授と学ぶ 国税通則法の構造と手続 【第8回】 「国税通則法(10条及び)11条」 -災害等による期限の延長- 大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫 国税通則法11条(災害等による期限の延長) 1 期間及び期限 期間とは、一般に、「一定の時間的隔たりの間の長さ」(角田禮次郎ほか編『法令用語辞典〔第10次改訂版〕』(学陽書房・2016年)116頁)をいい(ホステス報酬源泉徴収事件・最判平成22年3月2日民集64巻2号420頁によれば「ある時点から他の時点までの時間的隔たりといった、時的連続性を持った概念」)、期限とは、一般に、「公法上若しくは私法上の法律行為の効力の発生若しくは消滅又はこれらの法律行為若しくは事実行為の履行が、一定の日時の到達にかかっている場合における、その一定の日時」(角田ほか編・前掲書122頁)をいう。 期間の計算(起算点、満了点、暦との関係等)については、国税通則法制定前の国税徴収法4条1項が「期間の計算については、民法第139条から第143条までに定めるところによる。」と定めていたが、国税通則法10条1項はそれ自体で(時間又は週で期間を定める場合を除き)民法のそれらの規定と基本的に同じ内容を定めている。 期限には確定日のほか期間の末日も含まれるが、国税通則法10条2項は、同法制定前の国税徴収法4条2項と基本的に同じく、「国税に関する法律に定める・・・・・・期限」(下線筆者)について特例を定めている(税通令2条参照)。これとは別に、国税通則法11条は「国税に関する法律に基づく・・・・・・期限」(下線筆者)について「災害その他やむを得ない理由」による延長を定めている。ここで「法律に基づく」期限としたのは、法律に基づいて政省令により定める期限のほか行政処分により定めた期限(通基通(徴)11-2参照)も含むことを明らかにしたものである(武田昌輔監修『DHCコンメンタール国税通則法』(第一法規・加除式)912頁参照)。以下では、この規定の定める災害等による期限の延長について若干検討しておくことにする。 2 災害等による期限の延長と「税務緊急事態基本法」の制定 まず、国税通則法11条が定める期限の延長の実体的要件は、同条の定める行為を「災害その他やむを得ない理由」により所定の期限までにすることができない場合であるが、その理由について国税通則法基本通達(徴収部関係)11-1は次の解釈を示している。 これらの理由のうち(3)は、一定の人的・主観的理由ではあるものの、国税電子申告・納税システム(e-Tax)利用者を対象にして平成29年度税制改正で国税通則法施行令3条に新設された第2項の規定(下記参照)における「災害その他やむを得ない理由」について示された解釈であって、従来からの解釈、すなわち、「未分割の相続財産を売却したため各年分の所得税の法定申告期限までに請求人に帰属すべき収入金額が確定しなかったというような、いわば主観的な理由」(国税不服審判所裁決昭和55年4月24日裁決事例集20集1頁)や「[医事法違反の刑事事件において]被告人の身体が拘束され、帳簿書類が押収されていた事実」(最判昭和60年2月27日刑集39巻1号50頁)が「災害その他やむを得ない理由」に該当しないとしてきた解釈を変更するものではない。 次に、国税通則法11条が定める期限の延長の方法については、同条による委任を受けて、同法施行令3条は、下記のとおり、①地域指定(同条1項)、②対象者指定(同条2項)及び③個別指定(同条3項・4項)の3つの方法を定めており、①と②は告示の形式で行われ(近時の事例については国税庁ホームページ「災害関連情報」の「個別の災害に関するお知らせ」参照)、③は処分(税通75条参照)の形式で行われる。 上記3つの方法のうち②は、近年におけるe-Tax利用率の増加に伴い、「期限間際にe-Taxが使用不能となるなどの事象が発生した場合」における「納税者の態様に応じて迅速・的確に対応する観点から」、平成29年度税制改正によって導入された方法である(財務省「平成29年度 税制改正の解説」1039頁。例として新型コロナウイルス感染症に関する令和2年3月6日国税庁告示第1号参照)。 最後に、国税通則法11条が定める法律効果は、「その理由のやんだ日から2月以内」の期限の延長であるが、これは、「災害その他やむを得ない理由」に基因する租税問題に対する税法上の対応措置の一部にすぎない。期限の延長についてさえ別に特則が定められている場合(税通77条1項但書・2項但書、酒税28条3項、揮発油税14条3項、たばこ税12条3項、法税75条・地方法税19条4項等)もあるが、租税負担の実体的減免措置やその納付に係る手続的緩和措置はそれぞれ個々の税法で定められている(災害減免、所税70条~72条、税通46条等。国税庁ホームページ「災害関連情報」の「災害により被害を受けたとき」参照)。 それらの税法上の対応措置は、その全体像を把握することが必ずしも容易ではなく、それらの適用が問題になる状況においてはなおさらである。そのような「税務緊急事態」ともいうべき状況においては、納税者の立場からすれば、国と地方とが協働して一体的に対応すべきであると考えられるので、「災害その他やむを得ない理由」に基因する租税問題について、国税と地方税、実体的措置と手続時措置を包括する種々の対応措置の適用関係を体系的に整理し明らかにするために、従来の対応の経験を踏まえ、「税務緊急事態基本法」ともいうべき法律を制定しておくべきである。 (了)
〈令和4年分〉 おさえておきたい 年末調整のポイント 【第2回】 「各種申告書と近年の改正事項の確認(その2)」 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 本連載第1回では、「扶養控除等申告書」と「基礎控除申告書」について、各種控除の適用要件等の確認を行った。第2回(今回)は、「配偶者控除等申告書」と「所得金額調整控除申告書」を取り上げる。 なお、国税庁から提供されている各申告書様式の右上には、記載のしかたに繋がるQRコードが示されており、具体的な記載例等を確認することができる。 【1】 配偶者控除等申告書 ◎ 配偶者控除と配偶者特別控除 平成29年度の税制改正により、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しが行われ、平成30年分の所得税から適用されている。 配偶者控除、配偶者特別控除ともに、所得者本人及び配偶者の所得要件があり、控除額は所得者本人の合計所得金額に応じて段階的に縮小する(所法2①三十三の二、83①、83の2①)。また、年末調整でこれらの控除の適用を受けようとする場合には、その年最後の給与等の支払を受ける日の前日までに、給与等の支払者に「配偶者控除等申告書」を提出する必要がある(所法190二ニ)。 なお、配偶者特別控除は、所得者本人と配偶者の双方で適用を受けることはできない(所法83の2②)。 ① 所得要件 配偶者控除及び配偶者特別控除における、所得者本人と配偶者の所得要件は、次のとおりである(所法2①三十三の二、83①、83の2①)。 ② 控除額 配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額は、次のとおりである(所法83①、83の2①)。 (※) 国税庁ホームページ ③ 配偶者控除等申告書の記載方法 所得者本人と配偶者の合計所得金額(見積額)を記載すれば、控除額が計算できる様式となっている。なお、所得者本人の合計所得金額(見積額)は、基礎控除申告書の記載から確認する。 記載する合計所得金額については、給与所得以外の所得についても記載する。また、所得者本人に所得金額調整控除の適用がある場合には、適用後の金額を給与所得の所得金額欄に記載する。 〈配偶者控除等申告書の記載例〉 なお、合計所得金額の詳細については、以下の拙稿をご参照いただきたい。 【2】 所得金額調整控除申告書 ◎ 所得金額調整控除 平成30年度の税制改正により、所得金額調整控除が創設された。 所得金額調整控除には、①子ども等を有する場合の調整と②給与所得と公的年金等に係る雑所得の両方がある場合の調整の2つがある(措法41の3の3①②)。 これらの調整はいずれも確定申告で適用されるものであるが、①の調整は、年末調整においても適用を受けることができる(措法41の3の4)。 なお、年末調整で所得金額調整控除の適用を受けようとする場合には、その年最後の給与等の支払を受ける日の前日までに、給与等の支払者に「所得金額調整控除申告書」を提出する必要がある(措法41の3の4①②)。 ①の調整の適用があるのは、所得者本人のその年中の給与等の収入金額が850万円を超え、かつ下記のいずれかに該当する場合である。 年末調整で①の調整を適用する場合、給与等の収入金額が850万円を超えるかどうかは、年末調整の対象となる主たる給与等のみを対象として判定する。すなわち、年末調整の対象とならない従たる給与等(主たる給与等の支払者以外の給与等の支払者から支払を受けた給与等)は含めずに判定することになる。 所得金額調整控除についての詳細、「所得金額調整控除申告書」の記載方法や注意点については、以下の拙稿をご参照いただきたい。 * * * 第3回(最終回)は、様式の変更が予定されている「令和5年分扶養控除等申告書」と、令和5年1月以降の扶養控除の対象となる国外居住親族の取扱いについて取り上げる予定である。 (※) 本稿では、年末調整で使用する各申告書等を次のとおり表記する。 (了)
〔疑問点を紐解く〕 インボイス制度Q&A 【第20回】 「積上げ計算と割戻し計算を併用する場合の取扱い」 税理士 石川 幸恵 【Q】 建設業のかたわらコンビニエンスストアを経営しています。インボイス制度では、建設業の売上は割戻し計算、コンビニエンスストアの売上は積上げ計算のように併用することはできますか。 〔ポイント〕 (1) インボイス制度における売上税額の計算は、原則が割戻し計算、特例が積上げ計算となります。 (2) 売上税額の計算で割戻し計算と積上げ計算を併用した場合、仕入税額の計算は割戻し計算を適用することはできません。 (3) 売上税額の計算について積上げ計算を適用できるのは、適格請求書発行事業者のみです。 * * * 【A】 売上税額について、建設業は割戻し計算、コンビニエンスストアは積上げ計算という併用は可能です。ただし、売上税額の計算について割戻し計算と積上げ計算を併用した場合、仕入税額については割戻し計算を適用できませんので、ご注意ください。 (1) インボイス制度における売上税額の計算方法 インボイス制度における売上税額の計算方法は、原則、割戻し計算です。特例として積上げ計算とすることもできます(インボイスQ&A問116)。 ① 割戻し計算とは? 課税期間中の課税資産の譲渡等の税込金額の合計額に110分の100(軽減税率の対象となる場合は108分の100)を掛けて計算した課税標準額に7.8%(軽減税率の対象となる場合は6.24%)を掛けて計算します。 ② 積上げ計算とは? 交付した適格請求書及び適格簡易請求書に記載された税率ごとの消費税額等の合計額に100分の78を乗じて計算します。 積上げ計算と割戻し計算を比較すると、適格請求書及び適格簡易請求書単位で端数処理がなされる関係で、積上げ計算の方が、消費税額が少なくなります。少額・大量の取引を行う小売業者等では特に差が大きくなります。 (2) 積上げ計算を適用する場合の注意事項 (3) 仕入税額の計算 売上税額について、割戻し計算と積上げ計算を併用した場合は、仕入税額については割戻し計算を適用することはできません(インボイスQ&A問116)。 仕入税額の積上げ計算、割戻し計算の詳細については次回以降に解説します。 (了)
〈徹底分析〉 租税回避事案の最新傾向 【第2回】 「今後の税理士の役割」 公認会計士 佐藤 信祐 3 今後の税理士の役割 (1) 相続税対策の今後の予測 令和4年4月19日の最高裁判決により、相続税対策が今後どのようになっていくのかについて考えてみたい。本最高裁判決の公表後、様々な税務専門家によるブログやメール記事がこの件について論じている。そして、論者によって多少の差異はあるものの、「どこまでなら認められるのか」という観点から記述されているものが多い。 しかしながら、最高裁判決の文言を素直に受け止めるのであれば、相続税を減らす目的で行われたものに対しては、租税回避として否認されるリスクがあるといわざるを得ない。相続税の減少以外の目的が認められれば良いという考え方もあり得るが、相続税対策のほとんどは、相続税の減少以外の目的は軽微であることから、ほとんどの事案において十分な目的が認められないということになる。 そうなると、今後の相続税対策のほとんどに租税回避として否認されるリスクがあるといわざるを得ない。さらに、金融機関からの融資が必要になる相続税対策については、そもそも金融機関の稟議が通らない可能性があり、税務リスクを覚悟したうえで実行するかどうかという議論にまで至らないことが考えられる。 もちろん、税理士の立場としても、そのような状況下で、安易な相続税対策を許容するわけにもいかない。そのため、事業承継税制のように税制が正面から認めたものを利用することで、相続税対策を実行していく時代になると考えられる。 (2) 法人税対策の今後の予測 ヤフー・IDCF事件に係る最高裁判決が公表された頃に比べると、最近の税務調査では、メールが調査の対象になるだけでなく、質問応答記録書が積極的に使用されるようになっており、「税負担減少の意図があったかどうか」「税負担の減少目的と事業目的のいずれが上位になるのか」といった物的証拠が残りにくいものに対しても、積極的に証拠を集めようとしていることがわかる。 かつては、議事録や稟議書といった社内文書を整備しておくことにより、税務訴訟に勝ちやすい証拠を作り、結果として税務調査で否認しにくくするという税務調査対応が考えられたが、現在の税務調査対応としてはそれでは不十分であり、①制度趣旨に沿った形で法人税の負担を減少させていること、②税負担減少の意図はあったものの、事業目的が主目的であった、ということが主張できるようにしておく必要がある。 そして、今後、法人税対策がどのようになっていくのかという点について考えてみると、相続税と異なり、税負担の減少以外の目的が説明できることが多く、節税として認められる範囲は広いと思われる。ただし、かつてに比べて、節税として認められる範囲が狭まっているのも事実であり、税理士からの節税提案はやりにくくなるはずである。 さらに、税理士からの提案により実行されていたり、税理士が多額の報酬を得ていたりすることで、税負担の減少が主目的であると疑われる可能性がある。そのため、税理士からの提案であっても、事業目的を踏まえた提案にする必要があるし、多額の報酬をもらう場合には、節税の対価ではなく、明確な工数により報酬金額が見積もられていることを明らかにする必要がある。 (3) 税理士は死んだのか 令和4年4月19日の最高裁判決により相続税対策がやりにくくなるといわれている。本最高裁判決は不動産の評価に対する判決であるが、事業承継における株価対策においても同様のリスクがあると考えられる。 そうなると、税理士が行っているコンサルティングのほとんどが事業承継コンサルであることから、税理士業界にも大きな影響を与える可能性がある。そして、現行法上の特例事業承継税制を適用するためには、令和6年3月31日までに特例承継計画を提出する必要があることから、令和6年度税制改正により事業承継税制が改正される可能性が高いといわれており、改正後の内容次第では、株価対策ではなく事業承継税制が事業承継コンサルティングの中心になると考えられる。M&A、組織再編成又は株主からの買取りなどが絡まない限り、事業承継税制では株価対策に比べて報酬金額が安くなってしまうため、現在のマーケットの規模を維持することはできない。 組織再編コンサルティングにおいても同様である。M&Aにおけるデューデリジェンスのように工数が稼げる業務であれば構わないが、一般的に税務コンサルティングの工数はそれほど多くはなく、多額の報酬を請求することができない。すなわち、事業承継コンサルティングだけでなく、税務コンサルティングのマーケットの規模がかなり小さくなってしまうと思われる。 もちろん、税理士の本業である申告業務は残るものの、AIの発達により工数が減少し、税理士業務に従事する人口はかなり減少すると思われる。すなわち、申告業務が縮小した後の受け皿となるはずだった税務コンサルティング業務の縮小により、税理士業界そのものの行く末を悲観する声も少なくない。 この点については、税理士業界の縮小は避けられないものの、税理士としての役割がなくなっていくことはないと考えている。申告業務についても、工数が減少するだけであり、業務そのものがなくなるわけではない。税務コンサルティング業務についても、節税の対価としての報酬を請求することは難しくなるが、租税法がかなり複雑なものになっていることから、「租税法規が予定している節税の対象を知っている」「条文を正確に解釈することができる」というだけで付加価値が認められるようになり、かつ、複雑な案件になれば、それなりの工数が生じることから、それなりの報酬を請求できることもあると考えられる。 このように、今後の実務においては、税務コンサルティング業務における税理士の役割も変わってくると思われる。 4 本連載の内容 前置きが長くなったが、本連載では、事例を挙げたうえで、包括的租税回避防止規定の具体的な検討を行うことを予定している。例えば、PGM事件では、支配関係が生じてから5年経過してから合併を行うということにつき、制度趣旨に反するとは認定されず、事業目的よりも税負担の減少目的が優位にあると認定されている。すなわち、包括的租税回避防止規定を適用するためには、他の証拠により制度趣旨に反すると課税当局が主張する必要があるということになる。このようなニュアンスの違いは、包括的租税回避防止規定が適用されるリスクを軽減するうえで有用である。 ただし、包括的租税回避防止規定が適用されるかどうかは、それぞれのストラクチャーの個別事情によって異なることから、本稿で記載された内容と国税庁、国税不服審判所及び裁判所の見解が異なる可能性があるという点にご留意されたい。 (了)