検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10383 件 / 2861 ~ 2870 件目を表示

[令和3年度税制改正]令和4年以後提出分における確定申告義務の見直し

[令和3年度税制改正] 令和4年以後提出分における確定申告義務の見直し   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   令和3年度税制改正では、申告義務のある還付申告書の提出期間について見直しが行われ、最終的に還付申告となる場合には確定申告義務がないこととされた。 本改正は、令和4年1月1日以後に確定申告書の提出期限が到来する所得税(通常は、令和3年分以後の確定申告書)について適用される。 以下、解説を行う。   【1】 改正前の確定申告義務 所得税の還付申告書は、その年の翌年1月1日から5年間(※)提出することができる。 (※) 国税通則法第74条の規定により、還付金等の消滅時効は5年とされている。 しかし、その年の所得税の額の合計額が配当控除の額を超える場合には、最終的に源泉徴収税額や予納税額が還付となる者であっても、確定申告書を確定申告期限までに提出しなければならないこととされていた(旧所法120➀②)。すなわち、税額が還付となる場合であっても、確定申告義務が課されるケースが存在していた。   【2】 令和3年度税制改正の内容 令和4年1月1日以後に確定申告書の提出期限が到来する所得税については、所得税の額の合計額が配当控除の額を超える場合であっても、以下の還付申告の場合には確定申告書の提出を要しない(確定申告義務はない)こととされた(所法120➀、122➀)。 本改正により、確定申告義務がある場合の還付申告は存在しないこととなる。 改正前において確定申告義務があった者が還付を受けるために提出する申告書は、改正後は確定申告義務のない還付申告書となり、その提出期限は、現行の申告義務のない還付申告書の提出期限と同様にその年の翌年1月1日から5年間となる。 なお、復興特別所得税に係る復興特別所得税申告書についても同様の改正が行われている(復興財確法17➀②)。 (了)

#No. 438(掲載号)
#篠藤 敦子
2021/09/30

〔令和3年度税制改正における〕退職所得課税の適正化 【第2回】「退職手当の分類の仕方と退職所得の計算」

〔令和3年度税制改正における〕 退職所得課税の適正化 【第2回】 「退職手当の分類の仕方と退職所得の計算」   公認会計士・税理士 新名 貴則   令和3年度税制改正において、退職所得課税の適正化が行われた。平成24年度税制改正において「特定役員退職手当等」が導入されたことに続き、今回は「短期退職手当等」が導入された。本連載では、その内容について解説する。 前回、退職所得課税の基本と「短期退職手当等」の取扱いについて確認した。続く【第2回】では、退職手当の分類の仕方と退職所得の計算について、注意が必要な事例を中心に解説する。   1 退職手当等の分類 令和3年度税制改正において「短期退職手当等」が導入されたことにより、退職手当等は下記の3種類に分類されることになった。   2 退職所得の計算 特定役員退職手当等、短期退職手当等、一般退職手当等のそれぞれの退職所得の計算方法については、【第1回】で解説しているのでご確認いただきたい。一般退職手当等については、退職所得の基本的な計算方法の通りである。 ここでは、同じ年に特定役員退職手当等、短期退職手当等又は一般退職手当等のうち、2つ以上の退職手当等がある場合の計算方法を解説する。 (1) 一般退職手当等と短期退職手当等がある場合(所令71の2①) ➤「短期退職手当等の収入金額 - 短期退職所得控除額」が300万円以下の場合 ➤「短期退職手当等の収入金額 - 短期退職所得控除額」が300万円超の場合 ここでの短期退職所得控除額は、次の通りに計算する。 ここでの一般退職所得控除額は、次の通りに計算する。 (2) 一般退職手当等と特定役員退職手当等がある場合(所令71の2③) ここでの特定役員退職所得控除額は、次の通りに計算する。 ここでの一般退職所得控除額は、次の通りに計算する。 (3) 短期退職手当等と特定役員退職手当等がある場合(所令71の2⑤) ➤「短期退職手当等の収入金額 - 短期退職所得控除額」が300万円以下の場合 ➤「短期退職手当等の収入金額 - 短期退職所得控除額」が300万円超の場合 ここでの特定役員退職所得控除額は、次の通りに計算する。 ここでの短期退職所得控除額は、次の通りに計算する。 (4) 一般退職手当等、短期退職手当等と特定役員退職手当等がある場合(所令71の2⑦) ➤「短期退職手当等の収入金額 - 短期退職所得控除額」が300万円以下の場合 ➤「短期退職手当等の収入金額 - 短期退職所得控除額」が300万円超の場合 ここでの特定役員退職所得控除額は、次の通りに計算する。 ここでの短期退職所得控除額は、次の通りに計算する。 ここでの一般退職所得控除額は、次の通りに計算する。   3 事例の検討 令和3年度税制改正後の退職所得の計算において、注意が必要な事例について解説する。 《事例①》 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ※短期退職手当等の判定においては、勤続期間のうちに役員等として勤務した期間がある場合、これも含めて5年以下か否かを判定する。 結果的に勤続年数12年の一般退職手当等における退職所得の計算となり、基本的な退職所得の計算と変わらないため、具体的な計算の解説は省略する。 《事例②》 ※短期退職手当等の判定においては、勤続期間のうちに役員等として勤務した期間がある場合、これも含めて5年以下か否かを判定する。 結果的に勤続年数10年の一般退職手当等における退職所得の計算となり、基本的な退職所得の計算と変わらないため、具体的な計算の解説は省略する。 《事例③》 ※短期退職手当等の判定においては、勤続期間のうちに役員等として勤務した期間がある場合、これも含めて5年以下か否かを判定する。 《事例④》 ※短期退職手当等の判定においては、勤続期間のうちに役員等として勤務した期間がある場合、これも含めて5年以下か否かを判定する。 《事例⑤》 (了)

#No. 438(掲載号)
#新名 貴則
2021/09/30

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第48回】「買換資産を取得後、居住の用に供せずに賃貸に出した場合」-買換資産を居住の用に供しない場合-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第48回】 「買換資産を取得後、居住の用に供せずに賃貸に出した場合」 -買換資産を居住の用に供しない場合-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、昨年の4月に8年間住んだ居住用資産Aを売却し、本年1月にローンを組んで居住用資産Bを取得しました。 居住用資産Aの売却については、譲渡損失が生じたことから、居住用資産Bをその用に供する見込みで、「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を適用し、本年3月に確定申告をしました。 ところが、申告後の個人的な事情から、居住用資産Bには居住せずに、同物件を賃貸に出しました。 その修正申告に係る期限等を教えてください。 A 本年の1月に取得していることから、翌々年の4月30日までに修正申告書を提出し、かつ、その修正申告書の提出により納付すべき税額を納付しなければなりません。 ●○●○解説○●○● 「居住用財産買換の譲渡損失特例」の適用を受けた者が、その適用に係る買換資産の取得の日からその年の翌年12月31日までに、その買換資産をその者の居住の用に供しない場合には、同日から4ヶ月を経過する日までに、特例の適用を受けた年分の所得税についての修正申告書を提出し、かつ、その修正申告書の提出により納付すべき税額を納付しなければならないとされています(措法41の5⑬)。 したがって、本事例の場合、Xは取得の日の翌々年の4月30日までに修正申告とその納税をしなければなりません。 なお、買換資産の取得の日からその年の翌年12月31日までにいったん居住の用に供した後に、その後生じた事情によって居住の継続ができなくなった場合は、特例の適用を受けることができるとされています。 (了)

#No. 438(掲載号)
#大久保 昭佳
2021/09/30

〔令和3年度税制改正における〕株式交付に係る課税繰延べ措置 【第3回】「株式交付に係る課税繰延べ措置の創設」

〔令和3年度税制改正における〕 株式交付に係る課税繰延べ措置 【第3回】 (最終回) 「株式交付に係る課税繰延べ措置の創設」   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   【第3回】は、令和3年度税制改正により創設された株式交付に係る課税繰延べ措置について確認する。   〇 株式交付に係る課税繰延べ措置(概要) (1) 株式交付子会社の株主の取扱い ① 譲渡損益の繰延べ イ 株式交付親会社株式のみ交付される場合 法人株主が、株式交付により株式交付子会社株式を譲渡し、株式交付親会社株式の交付を受けた場合には、株式交付子会社株式の譲渡について譲渡損益を繰り延べることとされている(措法66の2の2①)(個人株主の所得税法上の取扱いも同様)。 ロ 株式交付親会社株式以外の金銭等も交付される場合 法人株主が、株式交付により株式交付子会社株式を譲渡し、株式交付親会社株式の交付に併せて株式交付親会社株式以外の金銭等の交付を受けた場合には、株式交付子会社株式の譲渡については、交付金銭等の額(剰余金の配当額を除く)に対応する部分のみ譲渡利益額又は譲渡損失額を計上し、株式交付親会社株式に対応する部分は譲渡損益を繰り延べることとなる。 ただし、譲渡損益の繰延べ措置は、株式交付により交付を受けた株式交付親会社株式の価額が交付を受けた資産の合計額のうちに占める割合(株式交付割合)が80%以上であることが要件とされている(措法66の2の2①)(個人株主の所得税法上の取扱いも同様)。 この80%要件の判定及び株式交付割合の算定における株式交付親会社株式の価額は、原則として、株式交付の日における価額とされているが、80%要件の判定における株式交付親会社株式の価額は、課税上弊害がない限り、株式交付計画書に定められた算定方法における算定基準日の株価を基礎として合理的な手法により算定される価額によることができるとされている(措通66の2の2-2)。 ② 株式交付親会社株式の取得価額 イ 株式交付親会社株式のみが交付された場合 株式交付親会社株式の取得価額は、譲渡した株式交付子会社株式の譲渡直前の帳簿価額(交付を受けるために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)に相当する金額とされている(措令39の10の3③一)。 ロ 株式交付親会社株式以外の金銭等も交付される場合 株式交付親会社株式の取得価額は、譲渡した株式交付子会社株式の譲渡直前の帳簿価額に株式交付割合を乗じて計算した金額(交付を受けるために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)に相当する金額とされている(措令39の10の3③一) ③ 株式交付子会社株式が売買目的有価証券に該当していた場合 譲渡した株式交付子会社株式が売買目的有価証券とされていた場合には、交付を受けた株式交付親会社株式も売買目的有価証券として処理する(措令39の10の3③二)。 ④ 株式交付子会社の株主が外国法人の場合 株式交付子会社の株主が外国法人の場合の譲渡損益の繰延べ措置は、外国法人の恒久的施設において管理する株式交付子会社株式に対応して株式交付親会社株式の交付を受けた部分に限られる(措法66の2の2②、措令39の10の3①)。 (2) 株式交付親会社の取扱い ① 株式交付子会社株式の取得価額 株式交付子会社株式の取得価額は、次の場合の区分に応じそれぞれ次の金額となる(措令39の10の3④)。 (※1) 「前期期末時」とは、株式交付子会社の取得の日を含む事業年度の前事業年度終了の時をいう(措令39の10の3④一ロ)。ただし、同日以前6ヶ月以内に中間申告書を提出し、かつ、提出の日から取得の日までの間に確定申告書を提出していなかった場合には、取得の日を含む事業年度開始の日以後6ヶ月の期間終了の時とされている(措令39の10の3④一ロ)。 (※2) 「簿価純資産価額」とは、資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額をいい、前期期末時から取得の日までの間に資本金等の額又は利益積立金額が増加し、又は減少した場合には、増加した金額を加算し、又は減少した金額を減算した金額とされている(措令39の10の3④一ロ)。 ② 増加資本金等の額等 イ 株式交付親会社株式のみが交付された場合 株式交付親会社株式のみが交付された場合に株式交付親会社において増加する資本金等の額は、取得した株式交付子会社株式の取得価額(取得をするために要した費用の額が含まれている場合には、その費用の額を控除した金額)とされている(措令39の10の3④三)。 ロ 株式交付親会社株式以外の金銭等も交付される場合 株式交付親会社株式以外の金銭等も交付される場合に株式交付親会社において増加する資本金等の額は、取得した株式交付子会社株式の取得価額から株式交付子会社の株主に交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額を減算した金額(取得をするために要した費用の額が含まれている場合には、その費用の額を控除した金額)とされている(措令39の10の3④三)。 ハ 種類株式を発行している場合 株式交付親会社が株式交付直後に2以上の種類株式を発行している場合には、増加した資本金等の額を交付した株式交付親会社株式の交付直後の価額の合計額で除し、これにその交付株式のうちその種類株式の交付直後の価額の合計額を乗じて計算した金額を、その種類株式に係る種類資本金額に加算することとされている(措令39の10の3④四)。 (3) 添付書類 株式交付があった場合には、株式交付親会社の確定申告書に下記書類を添付することとされている(法規35五、六)。 (4) 株式交付の留意点 ① 強制適用 株式交付に係る課税繰延べ措置は、租税特別措置法に規定されているが、選択できる制度ではなく、対価の要件(80%以上の要件)を満たすものは、強制適用となる(措通66の2の2-1)。 ② 組織再編成に係る行為計算否認規定の適用 財務省の立案担当者の見解によると、株式交付は、組織再編成に係る行為計算否認規定の適用対象になることとされているため、非適格株式交換等の時価評価課税を避けるために株式交付を利用する場合には留意が必要である。 《旧措置法における株式対価M&Aに係る課税繰延べ措置との比較》 (連載了)

#No. 438(掲載号)
#川瀬 裕太
2021/09/30

〔令和3年度税制改正〕中小企業経営強化税制におけるD類型(経営資源集約化設備)の追加 【後編】

〔令和3年度税制改正〕 中小企業経営強化税制における D類型(経営資源集約化設備)の追加 【後編】   税理士 坂井 晴行   【前編】では、中小企業経営強化税制(以下「本税制」という)において新たに追加されたD類型(経営資源集約化設備)に関して①税務面(租税特別措置法)を確認した。今回の【後編】では、②手続面(中小企業等経営強化法)を中心に解説する。   3 手続面(中小企業等経営強化法) (1) 対象者「特定事業者等」 「経営力向上計画」を提出できる事業者を「特定事業者等」と呼び、常時使用する従業員数が2,000人以下の法人又は個人、協同組合等、医療法人等、社会福祉法人、特定非営利活動法人が該当する(強化法2⑥、強化令5)。 なお、上記の協同組合等のうち、農業協同組合、農業協同組合連合会、漁業組合、漁業協同組合連合会、森林組合、森林組合連合会は経営力向上計画の認定を受けることができないため、本税制の対象外となる。 本税制の適用を受けるためには、中小企業等経営強化法の「特定事業者等」と【前編】2の(2)で説明した租税特別措置法の「中小企業者等」の両方を満たす必要がある。 (2) 対象資産「経営力向上設備等」 中小企業等経営強化法では、中小企業の経営強化を目的として基本方針が定められており、事業分野別の指針を基に経営力向上計画を策定することになる。この計画を実行するために必要不可欠な生産等設備として「経営力向上設備」が規定されている(強化法17③、強化規16②)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※1) 発電の用に供する設備にあっては、主として電気の販売を行うために取得又は製作をするもの(経営力向上計画の実施時期のうちで発電した電気の販売を行う期間中の発電量のうち、販売を行うことが見込まれる電気の量が占める割合が2分の1を超える発電設備等)を除く。 (※2) 医療機器にあっては、医療保健業を行う事業者が取得又は製作をするものを除く。 (※3) 医療保健業を行う事業者が取得又は建設をするものを除くものとし、発電の用に供する設備にあっては主として電気の販売を行うために取得又は建設するものを除く。 (※4) 複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く。 (※5) 発電設備等の取得等をして税制措置を適用する場合には、経営力向上計画の認定申請時に「発電設備等の概要等に関する報告書」及びその記載内容を証する書類の添付が必要。 (※6) 働き方改革に資する減価償却資産であって、生産等設備を構成するものについては、本税制措置の対象となる場合がある。 〇中小企業庁「中小企業の経営資源の集約化に資する税制概要・手引き(令和3年8月6日版)」3頁の表をもとに筆者一部改変。 D類型(経営資源集約化設備)の対象設備となるものは、経営力向上に著しく資する機械装置、工具、器具備品、建物附属設備並びにソフトウェアのうち、次の要件を満たし、主務大臣(担当省庁)の確認を受けた経営力向上計画(事業承継等事前調査に関する事項の記載があるものに限る)に記載された投資の目的を達成するために必要不可欠な設備で、事業承継等を行った後に取得又は製作若しくは建設をするものが該当する。 目標値となる修正ROA又は有形固定資産の回転率は、次の算式によって算定する。 〇中小企業庁「中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き(令和3年9月17日版)」6頁より抜粋。 なお、経営力向上計画の目標に未達であった場合でも本税制の適用が取り消されることはない。   4 スケジュール D類型に係る手続きスキームとスケジュールについては、以下のとおりとなる。 《D類型の手続きスキーム》 〇中小企業庁「中小企業等経営強化法の経営力向上設備等のうち経営資源集約化に資する設備(D類型)に係る経産局確認の取得に関する手引き」1頁より抜粋。 《D類型の手続きスケジュール》 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 A・B・C類型については中小企業等経営強化法の改正により、④確認書の発行前に、⑤経営力向上計画の申請及び⑦設備取得ができるようになり手続きが柔軟化されたが、D類型を活用する場合には、M&A実施後に設備を取得する必要があるため、この柔軟化措置は認められない。 D類型の設備取得は、事業承継等による経営資源の集約化を目的としていることから、計画期間にわたり毎事業年度ごとに事業承継等状況報告書を主務大臣(担当省庁)に提出しなければならない。なお、初年度については、事業承継等を行った事業年度の翌事業年度終了後4ヶ月以内に提出しなければならない。   5 「経営力向上計画」に基づく優遇措置 経営力向上計画に基づいてM&Aを実施した場合、次の税制措置を活用できる。 ① 所得拡大促進税制(上乗せ要件) 給与等支給総額を対前年比で2.5%以上引き上げ、かつ、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、経営力向上が確実に行われたことにつき証明された場合には、給与等総額の増加額の25%の税額控除が適用できる(措法42の12の5②)。 ② 中小企業事業再編投資損失準備金 事業承継等事前調査に関する事項を記載した経営力向上計画の認定を受けた上で、計画に沿ってM&Aを実施した際に、他の法人の株式を取得し、かつ、これをその取得の日を含む事業年度終了の日まで引き続き有している場合(取得価額10億円以下に限る)において、その株式の価格の低落による損失に備えるため、その株式の取得価額の70%相当額以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額を損金の額に算入することができる。 この準備金は、各事業年度終了の日において前事業年度から繰り越された金額のうち積立事業年度終了の日の翌日から5年を経過したものがある場合には、その各事業年度において、原則として、積立金額の5年均等額を益金の額に算入する(措法55の2①②)。 (了)

#No. 438(掲載号)
#坂井 晴行
2021/09/30

〔令和3年度税制改正〕中小企業事業再編投資損失準備金の手続と税務処理 【後編】

〔令和3年度税制改正〕 中小企業事業再編投資損失準備金の手続と税務処理 【後編】   公認会計士・税理士 荻窪 輝明   【前編】では、中小企業事業再編投資損失準備金制度(以下「本制度」という)について、改正中小企業等経営強化法による手続面を確認した。今回の【後編】では、準備金積立額(損金算入・益金算入)に係る税務処理を中心に解説する。 なお、本制度の把握に有用と思われる範囲で補足しているが、これらはあくまで現時点で公表済みの情報によるものであり、今後の更新情報に留意されたい。また、文中の意見に関する部分は、所属する団体や組織の公式見解ではなく筆者の私見であることを申し添える。 本制度の概要や全体像の理解にあたっては、令和3年度税制改正大綱の公表時点の記事であるが、以下の拙稿を参照されたい。   6 準備金積立額(損金算入・益金算入)に係る税務処理 2021年8月2日付で「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)」の活用について」が公表され、本制度の手引きやQ&Aなどが示された。本制度は、産業競争力強化法等改正法(改正中小企業等経営強化法などを束ねた一括法)の施行日(2021年8月2日)から施行される。 また、財務省が公表した「令和3年度税制改正の解説」の「租税特別措置法等(法人税関係)の改正(622~633ページ)」に本制度の解説が掲載されているほか、国税庁が公表した「令和3年度法人税関係法令の改正の概要」の15~17ページに本制度の概要が示されている。 今回は、これらの内容を踏まえて、準備金積立額(損金算入・益金算入)に係る税務処理について解説する。   7 税務申告(下記のフロー図の③の段階) 【前編】に続き、フロー図により本制度の申請の流れを示す。 (出所) 中小企業庁「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の活用について」 税務申告時には、経営力向上計画の申請書の写し、認定書の写し及び確認書(経営力向上に関する命令第5条第2項の規定に係る確認書)の写しを添付する(Q&A 1ページ、措令32の3③関係)。 なお、本制度の適用にあたっては、確定申告書等に「中小企業事業再編投資損失準備金の損金算入に関する明細書(別表十二(二))」を添付する必要がある(措法55の2⑦関係)。   8 準備金積立額(損金算入)の税務処理 (1) 本制度による損金算入限度額(措法55の2①) (※1) 認定経営力向上計画に従って行う事業承継等として他の法人の株式(又は出資)の取得をした場合におけるその取得をした株式等(措法55の2①)。 (※2) ただし、解散の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度を除く(措法55の2①)。 (※3) 準備金の積立ての対象となる特定株式等からは、合併により合併法人に移転するものを除くこととされている(措法55の2①)。 (※4) 特定株式等の取得の日を含む事業年度において、その特定株式等の帳簿価額を減額した場合には、その減額した金額のうちその適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額に相当する金額を控除した金額とする(措法55の2①)。 「損金経理の方法により」「中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたとき」には、その適用事業年度の決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法により中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てた場合を含むこととされている(措法55の2①)。 以上より、準備金積立額(損金算入)の税務処理として、本制度を適用する各社においては、いわゆる準備金方式と剰余金の処分方式のいずれの方式の採用も考えられる。 (2) 準備金積立額(損金算入)の税務処理の例示 特定株式等の取得価額が5億円(取得の日を含む事業年度終了の日まで引き続き有しており、本制度の適用要件を満たすものとする)の場合における準備金積立額(損金算入)の税務処理の例を示す。 例示はあくまで標準的な仕訳例であって、勘定科目や計上金額は各ケースによって判断いただきたい(以下の例示も同様)。 〈準備金方式〉 〈剰余金の処分方式(別表四(減・留))〉 (※) 3.5億円 = 5億円 × 70%(70/100) (3) 準備金積立額(損金算入)の税務処理のその他の留意点 Q&Aに「準備金の積立」に関する質問と回答が掲載されているので、本制度適用にあたっての参考にするとよい。 (出所) Q&A(4ページ)を抜粋の上、加工。   9 準備金積立額(益金算入)の税務処理 (1) 5年経過後5年均等による準備金の取崩し(措法55の2②) (※5) 積み立てられた事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されたその中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てた金額にその各事業年度の月数(※6)を乗じてこれを60で除して計算した金額に相当する金額。なお、この均等額は、据置期間経過準備金額を超える場合には、その据置期間経過準備金額とすることとされている(措法55の2②)。 (※6) 月数は、暦に従って計算し、1月に満たない端数を生じたときは、これを1月とすることとされている(措法55の2⑥)。 (2) 準備金積立額(益金算入)の税務処理の例示 8の(2)のケースにおいて、その後に積立がなく取崩し事由に該当しないまま据置期間経過準備金額が3.5億円だった場合における準備金積立額(益金算入)の税務処理の例を示す。 〈準備金方式〉 〈剰余金の処分方式(別表四(加・留))〉 (※) 7千万円 = 3.5億円(据置期間経過準備金額)÷ 5年 (3) 取崩し事由に該当することとなった場合における準備金の取崩し(措法55の2③~⑤) 次に掲げる取崩し事由に該当することとなった場合には、その該当することとなった日(合併の場合にあってはその前日)を含む事業年度において、その事由に応じてそれぞれ次の金額を取り崩して、益金の額に算入する(措法55の2③~⑤)。 (出所) 国税庁「令和3年度法人税関係法令の改正の概要」16ページ。 8の(2)のケースにおいて、その後の積立はないが、取崩し事由に該当することとなった場合における準備金積立額(益金算入)の税務処理の例を示す。 ① 8の(2)のケースにおいて、翌々事業年度に準備金積立額の一部(3.5千万円)が取崩し事由に該当することとなった場合における準備金積立額(益金算入)の税務処理 〈準備金方式〉 〈剰余金の処分方式(別表四(加・留))〉 ② ①の後は取崩し事由に該当しないまま据置期間経過準備金額が3.15億円(3.5億円-取崩し額3.5千万円)だった場合における準備金積立額(益金算入)の税務処理 〈準備金方式〉 〈剰余金の処分方式(別表四(加・留))〉 (※) 6.3千万円 = 3.15億円(据置期間経過準備金額)÷ 5年 (4) 準備金積立額(益金算入)の税務処理のその他の留意点 Q&Aに「準備金の取崩用件」に関する質問と回答が掲載されているので、本制度適用にあたっての参考にするとよい。 (出所) Q&A(5ページ)を抜粋の上、加工。   10 租税特別措置法関係通達(法人税編)等の一部改正 本制度の創設に関連して、2021年9月16日付「租税特別措置法関係通達(法人税編)等の一部改正について(法令解釈通達)」による通達の改正も行われている。本制度に係る主な改正点として、以下の規定が新設されたので、該当する場合は本制度の適用に合わせて参照するとよい(措通55の2関係)。   11 準備金対象者・対象行為 本制度の「適用対象法人」と「対象となる特定株式等の取得」については、国税庁ホームページの「令和3年度法人税関係法令の改正の概要」において簡潔にまとめられている。 (出所) 国税庁「令和3年度法人税関係法令の改正の概要」15ページ。 また、Q&Aに「準備金対象者・対象行為」に関する質問と回答が掲載されているので、本制度適用にあたっての参考にするとよい。 (出所) Q&A(2~4ページ)を抜粋の上、加工。 このほか、連結納税制度においても、上記と同様の措置が講じられている(措法68の44)が、本稿では解説を割愛する。 (了)

#No. 438(掲載号)
#荻窪 輝明
2021/09/30

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第5回】「遺言に記載がない特例対象宅地等がある場合の小規模宅地等の特例の留意点」

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第5回】 「遺言に記載がない特例対象宅地等がある場合の小規模宅地等の特例の留意点」   税理士 柴田 健次   [Q] 被相続人である甲は、相続発生の7年前に自宅の土地家屋は長男乙に、預貯金は乙と二男丙に2分の1ずつ相続させる旨の遺言書を作成しました。遺言書を作成した年の翌年に、甲は賃貸用マンション1室を購入し、貸付事業の用に供しましたが、遺言書は、新たに作成しませんでした。遺言書には、賃貸用マンションを誰に相続させるかは、記載がありませんので、相続人である乙及び丙で遺産分割協議が必要となりますが、相続税の申告期限までに分割協議は整いませんでした。 小規模宅地等の特例対象宅地等は、自宅の土地(320㎡)とマンション敷地(20㎡)が該当しますが、相続税の申告書第11表の計算については、自宅敷地(320㎡)について8割減額をして計算を行っています。しかしながら、小規模宅地等の特例の同意について丙の同意は得られなかったため、相続税の申告書第11・11の2表の付表1の小規模宅地等の特例の適用にあたっての同意の欄には、乙のみの記載があります。この場合には、小規模宅地等の特例は、認められないのでしょうか。 また、分割見込書を提出しておけば、後日、マンション敷地部分については、小規模宅地等の特例の適用は可能となるのでしょうか。 [A] 小規模宅地等の特例(以下、単に「特例という」)について、特例対象宅地等を取得した相続人全員の同意がない場合には、特例の適用はできません。したがって、自宅敷地については、特例の適用ができません。 マンション敷地部分については、相続税の申告期限までに相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出し、相続税の申告期限から3年以内に分割がまとまった場合には、遺産分割確定の日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求をすることにより、特例の適用を受けることができます。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 特例の同意の要件 相続税の計算にあたっては、同一の被相続人の相続人等に係る相続税の課税価格の合計額は、一致させる必要があるため、相続人が1人である場合などを除き、特例対象宅地等を取得した相続人等の全員の同意が必要とされています(措令40の2⑤)。実務的には、下記の「相続税の申告書第11・11の2表の付表1(小規模宅地等についての課税価格の計算明細書)」の「特例の適用にあたっての同意」の欄に、特例対象宅地等を取得した全ての相続人等の名前を記載することになります。 未分割財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従ってその財産を取得したものとしてその課税価格を計算する(相法55)こととされており、乙及び丙は、未分割財産である賃貸用マンションを法定相続分で取得したことになります。 したがって、乙も丙も特例対象宅地等を取得したことになりますが、特例の適用にあたっては、丙の同意が得られていないため、同意の要件を満たさず、特例の適用を受けることはできません。   2 未分割財産と更正の請求の特則 相続税の申告期限までに分割されていない特例対象宅地等については、原則として特例の適用はできないこととされています。ただし、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出し、特例対象宅地等が申告期限から3年以内に分割された場合には、遺産分割が確定した日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求をすることができます。 なお、3年以内に分割がまとまらなかった場合においても、相続税の申告期限から3年を経過する日までの間に分割されていなかったことについて相続等に関する訴えがされているなど一定のやむを得ない事情がある場合において、申告期限後3年を経過する日の翌日から2ヶ月を経過する日までに「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、その申請につき、所轄税務署長の承認を受けた場合には、判決の確定日など一定の日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求をすることができます(措法69の4④⑤、措令40の2㉓、措規23の2⑧六、相法32①、相令4の2)。   3 実務上の対応 遺言があっても、本問のように遺言書に記載がない特例対象宅地等については同意を得ることが困難である場合もありますが、特例の合意は要件の1つとなっていますので、同意が得られない場合には、特例の適用ができないことについて、納税者に十分に説明をする必要があります。 また、相続人同士で揉めてしまった場合には、相続人が別々の税理士に依頼することもあり、その場合には、通常、相続人同士で相続税の申告内容の確認ができないため、特例の同意が得られているかが問題となります。別々に申告をする場合には、特例の合意書等を作成し、特例の適用を受ける所在地、適用面積等を記載し、特例対象宅地等を取得した人全員の署名をしておくといいでしょう。 なお、本問の場合のように、同意が得られない場合には、自宅敷地については、特例の適用を受けることができなくなりますので、その場合の実務上の対応として、平成28年7月22日の東京地裁判決(TAINSコード:Z266-12889)の原告の主張の要旨の中に、下記のような方法があります。ただし、法的な論拠があるわけではなく、個別事案として、所轄税務署に相談しながら進めることになります。   ★実務上のポイント★ 未分割の特例対象宅地等の相続案件は、今後も増えてくると予測されますが、選択の同意の要件について、納税者に早めに説明を行い、要件充足の準備をすることが重要となります。特に揉めている場合には、調整に時間を要するため、注意が必要となります。   (了)

#No. 438(掲載号)
#柴田 健次
2021/09/30

〈事例から学ぶ〉不正を防ぐ社内体制の作り方 【第10回】「パンデミック下のIT統制を考える」~社内情報の漏えい防止とアクセス権限管理~

〈事例から学ぶ〉 不正を防ぐ社内体制の作り方 【第10回】 「パンデミック下のIT統制を考える」 ~社内情報の漏えい防止とアクセス権限管理~ 米国公認会計士・公認内部監査人 打田 昌行   はじめに 長引くパンデミックの影響から、筆者の周囲には、地方の実家に戻って自然を満喫し、テレワークを続けるといった人も出始めています。こうした生活様式、働き方の変貌を見るにつけ、ITの利便性を実感しますが、他方で相応のリスクも見え隠れしています。 筆者が以前に勤務した事業所では、個人のパソコンがマルウェアに感染したことを原因として、ウイルスが社内システム全体に拡散しました。復旧にこぎつけるまで、メール機能は麻痺し、仕事に関わるデータを取り出すこともできず、業務に多大な悪影響と損害をもたらしました。もしあの時、海外の取引先への多額の送金や支払期限が重なっていたとしたらと想像すると、いまだに震え上がるような思いがします。 こうした事態や直面するパンデミックを踏まえ、ITに強く依存する、私たちの業務の場に潜む代表的なリスクを見直しておく必要があると思います。 〈内部統制の視点から見るIT統制上の重要なリスク〉   《1》 オンライン会議による社内情報の漏えいを防ぐ 今、私たちがテレワークで頻繁に行うオンラインによる会議は、国内外で物理的な移動をすることなく、ローコストで効率的な場を提供しています。社内研修といえば、一箇所にたくさんの研修者が物理的に集まって実施するという、これまでの常識をすっかり覆してしまいました。会議の相手が海外にいても時差さえ考慮すれば実施できるので、本当に便利なツールです。 しかし、このツールも企業秘密の漏えいリスクと無関係ではありません。会議に用いるプラットフォームのなかには、すでに情報漏えいのリスクがあるという指摘を受けたものもあり、無償で利用できるからといって安易に社内で活用をすることは避けなければなりません。数多く提供されるプラットフォームや、サービスを提供する会社に関する慎重な精査を怠らないことが大切です。   《2》 情報へのアクセスを限定して管理する 新型コロナウイルスの変異株が猛威を振るうなか、従業員が健康上のリスクを冒してまで、直接に人と対面し情報交換をすることは、なるべく避けたいものです。そのため業務上の情報は、PDF化、静止画像、動画撮影などを利用してメールで送信したり、特定のサーバーに蓄積して、関係者の間で共有されることが多くなっていると考えられます。 こうした場合には、サーバーへのアクセス権限を限定し、アクセス権限の付与に関わる申請と承認の仕組みを作り、アクセスの頻度やログを継続して管理する体制を整備することが、平素よりもまして重要になります。誰でも容易に関連情報にアクセスすることを許せば、情報が操作されるだけでなく、漏えいに繋がるおそれがあります。情報が社外に持ち出され、競合他社に持ち込まれるといったリスクをあらかじめ想定した仕組み作りをすべきです。   《3》 アクセス権限表を更新して不一致を防止する 職制に基づき、社内情報へのアクセス権限をまとめたものが「アクセス権限表」と呼ばれるもので、情報へのアクセスを限定するためには欠かすことはできません。アクセス権限表を作成して、業務を円滑に進めるために必要な情報にのみアクセスできる仕組みを構築します。ただし大切なポイントとして、人事異動や組織の改編に応じた権限表の更新を怠らないようにします。例えば、既に人事異動した従業員が、いつまでも旧所属のアクセス権限を持ち続けることは、けっして好ましいことではありません。 またあらゆる情報にアクセスできるスーパーユーザーは、IT部門に属する特定の責任者や担当者など、業務上例外的に認められるものであり、たとえ権限を付与したとしても、必ずアクセスログをとり、アクセス履歴に関する管理を継続して行うようにしましょう。   《4》 退職者のIDやパスワードを棚卸しする システムに関わる監査や内部統制の監査現場では、退職者のIDやパスワードをはじめとする情報が、タイムリーにシステムから削除されているかどうかを必ず確認します。いわば情報の棚卸しです。実際の確認現場を見ると、既に従業員が退職しているにもかかわらず、IDをはじめとする個人情報がシステム中にいつまでも残されていることがしばしば見受けられます。甚だしい場合、消去すべき退職者のIDが使いまわしをされていたりすることさえ起きています。 こうした状況を放置しておくことは、次に示す不正を予防するどころか、かえって助長することになりかねません。一見何気ない注意事項のように感じますが、こうした情報の管理は、パンデミックに限らず、常日頃から注意を払っておくべき大切なことがらです。   《5》 サーバーをソフトとハード両面で管理する 在宅勤務の浸透に伴い、攻撃型のウイルスメールによる被害が増大していることは、マスコミの頻繁な報道によって明らかです。このためファイアウォールを立て、社内情報の心臓部ともいわれるサーバーを厳重に保全しておくことは当然の対応となります。 サーバー管理を第三者であるクラウドサービスに依存することもありますが、自社で管理する場合は、昨今頻発する自然災害リスクに備え、物理的に管理することも忘れてはなりません。災害リスクの少ない都市や地域にサーバーを設置する、戦争やテロのリスクを避け、北半球と南半球のそれぞれにサーバーを設置して管理するといったロケーションを考慮した対策を展開する企業をしばしば見かけます。 また自社のオフィスの一角でサーバーを管理する場合は、サーバールームを堅固な作りで保全し、温度管理に配慮して施錠を施します。サーバールームへの入退出は、業務に関係する特定の者だけに限定することが大切です。さらに入退出の記録をログで管理できれば、よりよい対応と考えられます。   《6》 テレワークに潜む罠に備える 政府主導によりテレワークを推進することが求められるなか、仕事は会社でするものという従来の常識が覆されました。緊急事態のなか、自宅でのパソコンの取扱いには、企業による一定の方針作りや注意喚起が必要です。セキュリティの脆弱な自宅のパソコンがマルウェアに狙われ、犯罪の脅威にさらされています。盗み取った情報を人質に、金銭を求める脅迫事件が頻発していることは、皆さんもよくご存じのことと思います。 対策については、連載【第6回】を是非、参照していただきたいと思います。 〈新型コロナウイルス感染症に関連するサイバー犯罪が疑われる事案の報告件数〉 (※) 警察庁「令和2年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」より抜粋。 (了)

#No. 438(掲載号)
#打田 昌行
2021/09/30

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第57回】「株主優待引当金」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第57回】 「株主優待引当金」   RSM清和監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 日本では、基準日に株式を保有している株主に対して株主優待券等を付与する株主優待制度を採用している企業が多い。 そして、株主優待について、引当金の要件を満たす場合、引当金を計上する事例がある。具体的には、2021年3月31日から6月30日決算で有価証券報告書に「引当金の計上基準」として株主優待引当金を記載している会社は、143社ある。 今回は、この株主優待引当金を解説する。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 株主優待により発生する費用が以下の引当金の4要件を満たすかどうかを検討する必要がある。 《引当金の4要件》 株主優待により、株主が商品との交換、サービスの提供、値引き等を行うことができる場合、将来に費用が発生するため、上記①の要件を満たす。 次に、これは、当期以前に株主優待を付与したという事象により発生するため、②の要件も満たす。 そして、③及び④の要件である発生の可能性が高く、金額を合理的に見積もることができる場合、株主優待引当金を計上する。株主優待を行っている会社では、どれくらい株主優待を株主に渡し、どれだけ使用されているかを管理していることが多いと考えられるため、③及び④の要件を満たすことが多いと考えられる。 なお、実務上は、全ての企業が株主優待引当金を計上しているわけではない。これは、株主優待引当金を必ず計上するという実務慣行になっていないこと、及び、財務諸表に与える影響を考慮して、計上していないことが考えられる。 ① 株主優待引当金の算定 株主優待引当金は、株主優待の付与の方法及び内容により算定方法が異なることが考えられる。実務上は、各社の実態に応じて、適切に見積り計算を行う必要がある。 一例として、以下のような方法が考えられる。 ② 会計処理 会計処理は、以下のとおりである。 *  *  * 以上、2つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 438(掲載号)
#西田 友洋
2021/09/30

《速報解説》 会計士協会、公認会計士法の改正を受け、指定社員の通知を書面に代えて電磁的方法で行えるようになったことに対応し「指定社員制度に関するQ&A」を改正

《速報解説》 会計士協会、公認会計士法の改正により指定社員の通知を書面に代えて電磁的方法で行えるようになったことを受け、「指定社員制度に関するQ&A」を改正   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年8月19日付けで(ホームページ掲載日は2021年9月24日)、日本公認会計士協会は、法規・制度委員会研究報告第2号「指定社員制度に関するQ&A」(法規委員会研究報告第12号「指定社員制度に関するQ&A」の改正)を公表した。 これは、2021年9月1日に施行された改正公認会計士法において、無限責任監査法人は、被監査会社等の承諾を得た場合に、被監査会社等への指定社員の通知を書面に代えて電磁的方法で行うことが可能となったことに対応するものである。そのほか、陳腐化した内容について、更新及び削除が行われている。 なお、法規委員会と公認会計士制度委員会が統合し、法規・制度委員会となっていることから、法規・制度委員会研究報告第2号として公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 「Q11 指定社員の通知を書面に代えて電磁的方法で行うために必要となる、被監査会社等からの承諾について教えてください。」を追加し、次のことなどを記載している。 (了)

#No. 437(掲載号)
#阿部 光成
2021/09/28
#