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〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第83回】「印紙税法第14条《過誤納の確認等》に規定する確認を受けることができるか争われた事例(平成12年1月26日裁決)」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第83回】 「印紙税法第14条《過誤納の確認等》に規定する確認を 受けることができるか争われた事例(平成12年1月26日裁決)」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   [基礎事実] [文書のイメージ] [事例のポイント] ① 「課税文書」に該当するか [基礎事実]から、この文書に係る契約を成立させることについてはあらかじめ当事者間において、意思表示の合致があり、これを証明する目的でこの文書が作成されたことは明らかである。したがって、第1号の3文書(消費貸借に関する契約書)に該当する。 また、この文書の作成の時は、請求人が文書に署名押印をして、これをE信用金庫に差し入れた平成11年5月6日である。このことから、同日以降に文書に係る契約内容が実行されなかったといって納税義務が左右されることはない。 ② 過誤納の請求範囲の「使用する見込みのなくなった場合」に該当するか 印紙税基本通達第115条の(2)には「印紙をはり付け、税印を押し、又は納付印を押した課税文書の用紙で、損傷、汚染、書損その他の理由により使用する見込みのなくなった場合」に過誤納の確認を請求することができるとされている。 この文書に係る契約を成立させることについては、あらかじめ当事者間に意思の合致があり、請求人はこれを証明する目的でこの文書に署名押印し、E信用金庫に差し入れており、ここでいう「使用する見込みがなくなった場合」には該当しない。 (了)

#No. 388(掲載号)
#山端 美德
2020/10/01

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第38回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第38回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也   (2) 法人税法22条の2第5項の概要 ア 貸倒れと買戻しの可能性への対応 法人税法22条の2第5項は、第4項の資産の引渡しの時における価額相当額又は提供をした役務につき通常得べき対価の額相当額は、その資産の販売等につき、次の事実が生ずる可能性がある場合においても、その可能性がないものとした場合における価額とする旨定めている。 収益認識会計基準のステップ3の箇所で見たように、同基準は、契約上の対価の金額をそのまま収益の額(取引価格)とするものではない。収益認識会計基準は、約束した財又はサービスの顧客への移転を当該財又はサービスと交換に「企業が権利を得ると見込む対価の額」で描写するように、収益を認識することを基本原則としている。 この原則に従い、契約において、顧客と約束した対価に変動対価が含まれる場合、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ることとなる対価の額を見積もることに特徴がある。変動対価とは、顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分である。例えば、値引きやリベート、貸倒れの見込みを織り込んで取引価格を算定することになる(本連載第1回参照)。 また、顧客に返品権を付与した場合も上記の見積りの対象となる。 顧客から受け取った又は受け取る対価の一部あるいは全部を顧客に返金すると見込む場合、受け取った又は受け取る対価の額のうち、企業が権利を得ると見込まない額について、返金負債を認識する。返金負債の額は、各決算日に見直す(基準53、指針設例11)。具体的には、企業が権利を得ると見込む対価の額で収益を認識するなどの処理を行う(指針85)。 上記によって見積もられた変動対価の額については、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含めることになる(基準54)。 法人税法22条の2第5項は、貸倒れや返品の見込みを収益の額に反映させるような収益認識会計基準のステップ3は受け入れ難い面があるという法人税法の立場を表明したものといえよう。 上記❷の買戻しについて、立案担当者は、収益認識会計基準においては、買戻しに関する取扱いとして、(企業に商品等を買い戻す義務や権利がある場合等に関連して)収益を認識するかどうかという観点からの規定も設けられている(指針69~74、104)が、法人税法22条の2第5項は「価額」又は「通常得べき対価の額」の算定上考慮しない事実を定めた規定であることから、返品権付きの販売が該当すると説明している(財務省『平成30年度 税制改正の解説』270頁)。 今後、法人税法22条の2第5項2号の買戻しの内包・外延はいかなるものか、同号の対象範囲と収益認識会計基準上の返品権付販売の対象範囲(指針84)が完全に一致するのかという点が問題になる可能性がある。 法人税法22条の2第5項について、将来起こりうる不確実な事実を収益の認識に反映させると、収益の認識が客観性を欠いたものとなるから、この規定が定められた旨の指摘がある(金子宏『租税法〔第23版〕』356頁(弘文堂2019)参照)。会計側からは、客観性を欠いたものではないという反論もあるかもしれないが、元来、法人税法は見積りによる費用ないし損失計上については慎重な姿勢をとる傾向がある。 よって、収益の計上額という場面においても見積り的処理に対して同様に慎重な姿勢をとることや、貸倒れの見込みについて、収益の計上額の場面ではなく、これまでどおり費用又は損失の場面で対応することは首肯できる。 イ 法人税法施行令18条の2第4項と貸借対照表項目のズレ 法人税法22条の2第5項によって、収益認識会計基準を適用した場合の会計処理と法人税法上の処理にズレが生じるが、これは、「売上高」のようにいわば損益計算書項目におけるズレである。会計上、貸倒れ見込みを反映して「売上高」を減額することにより、これに対応する「売掛金」も減額されるのであれば、貸借対照表項目におけるズレも生じる。 このような貸借対照表項目におけるズレについては、次のとおり、法人税法施行令18条の2第4項等で手当てされている。 法人税法22条の2第7項は「前2項に定めるもののほか、資産の販売等に係る収益の額につき修正の経理をした場合の処理その他第1項から第4項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。」と規定している。これを受けて、法人税法施行令18条の2第4項は、次のとおり定めている。 これは、資産の販売等に係る収益の額につき、貸倒れ又は買戻しの可能性があることにより収益認識に関する会計基準に従ってこれらの可能性を考慮して計算した金額を、契約上の対価の額から控除して収益計上した場合が想定されている。控除後の金額を当該契約に係る売掛金等の金銭債権の帳簿価額とした場合にも、法人税法上はこれらの可能性を考慮せずに益金の額を算定するというものである。 よって、その収益の反対勘定である金銭債権の帳簿価額についても、会計との間で不一致が生ずることとなる。そこで、法人税法施行令18条の2第4項は、会計上、収益の額から控除し、金銭債権の帳簿価額を構成しないこととされた金額について、税法上は金銭債権の帳簿価額を構成することを明確にするものである(財務省『平成30年度 税制改正の解説』279頁参照)。 貸倒引当金との関係においても、同様の調整規定が置かれている。資産の販売等を行った場合において、その資産の販売等の対価として受け取ることとなる金額のうち、その資産の販売等の対価の額に係る金銭債権の貸倒れが生ずる可能性があることにより、売掛金その他の金銭債権に係る勘定の金額としていない金額(金銭債権計上差額)があるときは、その貸倒基因金銭債権計上差額相当額は、損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額、あるいは期中個別貸倒引当金勘定又は期中一括貸倒引当金勘定の金額とみなして、貸倒引当金の規定を適用することとされた(法令99)。 なお、平成30年度改正により、収益認識会計基準の導入を契機として、返品調整引当金は廃止されたが、貸倒引当金は存置されている。   (了)

#No. 388(掲載号)
#泉 絢也
2020/10/01

〈ツボを押さえて理解する〉仕訳のいらない会計基準 【第2回】「会計基準の世界を俯瞰する」

〈ツボを押さえて理解する〉 仕訳のいらない会計基準 【第2回】 「会計基準の世界を俯瞰する」   公認会計士・税理士 荻窪 輝明 ◆会計と関係が深い3つの法律 会計基準の理解を進めるにあたって、会計と法律との関係性を知っておくことも助けになります。会計に携わる皆さんが関係する主な法律としては、「会社法」と「(法人)税法」、それに上場会社などの場合に加わる「金融商品取引法」を合わせた3つです。 それぞれの法律の枠組みの中で、会計と関係することがわかる代表的な条文は次のとおりです。ちなみに、一番下の「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」は、略称で「財務諸表等規則」、通称は“財規(ざいき)”と呼ばれています。金融商品取引法の枠組みの中でつくられる財務諸表の記載や作成方法の詳細を定めたルールの1つです。 ※赤字箇所は筆者による。 各法律で使われている言葉は、それぞれに共通の“一般に公正妥当”に続く表現を含めて、どれもよく似ていますね。とはいえ、微妙に異なることから、法律の文言を解釈する上ではそれぞれのニュアンスも少し異なるわけですが、本連載の目的から逸れてしまうので、これらの言葉の微妙な違いについての比較や、検討することはやめておきましょう。 ここでは、会社が拠り所にする主な法律のいずれにも会計に関係する条文があって、そこには、会計が定めたルールなどに従って会社の決算や税金計算が行われるのですよ、と書かれていることを理解しておきましょう。   ◆今後関わる2つの会計基準 上記では会計との関係が深い3つの法律を確認しました。これらの中で、本連載が目指したい、「会計基準を知る」という観点から特に重要と考えるのは金融商品取引法の枠組みです。財規の中には、次のように書かれています。 ⇒ ここでいう「企業会計の基準」とは、企業会計審議会が公表する会計基準を指します。 ⇒ ここでいう「企業会計の基準」とは、企業会計基準委員会(「ASBJ」といいます)が公表する会計基準を指します。 企業会計審議会やASBJなどの諸団体に関する説明は省きますが、金融商品取引法の枠組みをみると、主な会計基準として、企業会計審議会が公表する会計基準と、ASBJが公表する会計基準の2つが想定されていることがわかります。なかでも、実務では、ASBJが公表する会計基準が圧倒的に多く、現在の実務界の中心的な存在となっています。ASBJが公表する会計基準は、ASBJのホームページを通じて入手が可能です。 第2章以降の会計基準ごとの解説では、ASBJが公表する会計基準を中心にみていくことになります。   ◆会計基準は5つのジャンルに分かれる 会計基準、言い換えると、「実務でわたしたちが従うべき公の会計ルール」は、実にたくさんの種類があります。近年では、海外の会計ルールとの整合を図るために、加速度的に新たな会計基準が公表され続けた時期もありました。現在でも、新しい産業や取引が生まれるたびに会計基準が公表され続けていますし、時代に即したルールになるように、改正によって少しずつ内容を変えてきているものもあります。 会計基準の数は膨大ですので、残念ながら、存在する一つ一つの会計基準のすべてにじっくりと向き合っていくことは到底できません。きっと、本連載でも、すべての会計基準をご紹介することは難しいでしょう。ですが、イメージをつかんでいただくための全体像であればご紹介することは可能ですし、今後のためにもきっと意味があるはずです。 そこで、会計基準全体をジャンルで捉えてみることにしましょう。会計基準自体にジャンルが割り振られているわけではありませんが、ここでは、便宜上、ジャンル分けできると仮定して、大きく5つのジャンルに分類します。本連載では、「」、「」、「」、「」、「」という、5つのジャンルに分けました。 各会計基準は必ずしも1つのジャンルにしか属さないわけではなく、複数のジャンルに関係していることの方が多いです。あくまで、その会計基準が属する代表的なジャンルという視点でご覧ください。ちなみに、代表的な会計基準の名称について、この時点で分かっている必要はまったくありません。 これだけ多くの会計基準があるのか、というイメージができるだけでも、会計基準を適用しない場合と比べて、日々の会計処理、決算、財務諸表といった会社にかかわる会計のいろんなことが変わるのかな、という想像がはたらくと思います。 これらの基本ルールを定める会計基準のほかにも、多くの会計基準では、さらに「適用指針」と呼ばれる、実務で適用するためのルールが別に設けられています。会計基準は、わたしたちが思う以上に、とても壮大な世界なのです。 *  *  * 会計の世界を俯瞰したところで、次回は、代表的な会計基準のプロフィールを紹介します。 (了)

#No. 388(掲載号)
#荻窪 輝明
2020/10/01

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕対象企業の見方・見られ方 【第7回】「《特別編》コロナ禍が変える中小企業のM&A」~その4:期待される売り手の良きアドバイザー~

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕 対象企業の見方・見られ方 【第7回】 「《特別編》コロナ禍が変える中小企業のM&A」 ~その4:期待される売り手の良きアドバイザー~   公認会計士・税理士 荻窪 輝明   1 売り手にとってのオンリーワン 中小企業のM&A当事者の一方である「売り手」。中小企業の場合、通常、売り手にとってM&Aは初めての経験ですから手探りの中で手続が進行します。買い手が売り手の何を気にしているか、売り手として何をしておくのが良いのか、何から手をつければ良いのか、M&Aノウハウがないので正直なところ“わからない”というのが、多くの売り手の本音ではないでしょうか。 売り手はM&Aによって大切な事業や企業そのものを手放す立場です。大事な決断を控える中で見えない相手や不安を前に何よりも頼りになるのは、強い味方として売り手の支えとなる“第三者の存在"です。 仲介会社、金融機関、顧問先を担当する士業からみれば、売り手は数ある当事者の1社にすぎないかもしれません。しかし、売り手にとっては、自ら経営してきた会社の生涯でたった1度しか経験しないほどの大切なイベントです。ここを重んじてくれる第三者と、軽んじる第三者とでは、いずれが売り手にとっての“オンリーワン"として信頼されるかは明らかです。 コロナ禍で売り手の不安や迷いは、さらに大きくなっています。第三者が、期待される売り手の良きアドバイザーとして、現状を踏まえ、売り手目線に立って的確に助言できる力はきっと売り手の支えとなり、ひいては、ウィズコロナ、アフターコロナ時代のM&Aを支える原動力となります。 今回は、コロナ禍で影響を受けやすい売り手の財務面を特に意識して、第三者の売り手企業に対する見方(下図の③を参照)のポイントを解説します。   2 売り手の経営状況をファクトで捉える 売り手がM&Aを検討した結果、仮にM&Aを選択する決断に至らなかったとしても、第三者にとっては、コロナ禍のような有事の状況下で売り手企業の現状分析をすること自体に意義があります。 ファクトは、数値やデータとして分析や判断が可能な定量情報を基本に据えると良いでしょう。コロナ禍の影響も踏まえて、なぜ現在の経営状況になったかを数値と結びつけて第三者の視点で説明できることは、適正な企業価値を評価する視点からも、経営コンサルティングの面からも重宝されますし、売り手企業自身が見えていない自分(自社)の姿を他者目線で知る良い機会になります。たとえば、次のポイントを参考にして売り手の“今”を見極め、適切な助言につなげます。 (1) 部門別月次試算表を活用する 会計は、結果を株主・債権者に報告するためだけにあるものではありません。月次(毎月)のように、会計期間をより短い間隔(年次>半期>四半期>月次)での推移と前年同月(期)比で追い、可能であれば予算や計画との対比で今後の経営を改善・発展させるために使う会計、いわば「管理会計」としての役割がコロナ禍ではより有効に機能します。その際、次の点を参考にします。 (2) 固定費を把握する これまでの中小企業M&Aでは、売り手の毎期の利益水準などから将来を見越した企業価値を算出することで、ある程度、買い手と売り手双方の納得感が得られるM&Aに結びつけることが可能でした。 しかし、コロナ禍でこれが一変しました。それは「たとえ収益が生まれなくても、どの程度までなら売り手の経営が耐えうるか」という視点が欠かせなくなったからです。この視点がないと、M&Aで取得した売り手の経営悪化に引きずられて買い手の経営にも悪影響を及ぼし、共倒れするリスクが高まります。 このために、管理会計のキホンの“キ”の1つともいえる、“固定費”の概念が外せなくなりました。固定費を正確につかむことは、固定費を回収するためにどの程度の売上規模が必要か、手元資金(現金)が何ヶ月分必要かなどの重要な経営維持・戦略上の手がかりを知る上で大変貴重な情報源となります。 下記の図は参考ですが、「固定費」と固定費に対比される「変動費」、「売上高」との関係から、「損益分岐点売上高」などを導くことが可能です。損益分岐点売上高がわかれば、足元のコストを補うために毎月最低でもどれくらいのキャッシュを必要とするかが見えてきます。 固定費を把握する方法には複数ありますが、中小企業の場合は「費目別精査法」を活用することで多くの場合は事足ります。費目別精査法とは、損益計算書の勘定科目の費目ごとに会社の過去の経験に基づいて売上高に連動が見られる費目については変動費、売上高と連動が見られない費目については固定費に分解する方法です。例えば、運賃や販売手数料は変動費、地代家賃や減価償却費、役員報酬は固定費といったように分解していきます。 給料手当は固定費とする一方で、残業代(時間外手当)は変動費と考えられるように、費目によって変動費と固定費のいずれかを判別できない場合には、次の図のように過去の経験をたよりに割合で配分することも考えられます。 (例) (3) バランスシート(B/S)を再評価する 簿記の仕組みに明るい方であればご存知だと思いますが、P/Lの影響はB/Sに反映されます。キャッシュ・フロー計算書の変動結果も現金及び預金勘定をはじめとするB/Sの数値に大きく影響します。 過去の損益や資金繰りの蓄積によって各社のB/Sは現在の状態へと形成されてきますが、中小企業のB/Sはほとんどの場合、過去の会計処理の原因となった当時の事実を反映したものであって、将来事象や損失可能性、現状の評価額を十分に反映したものとはいえません。 M&Aの検討過程では売り手の潜在リスクを決算書などから洗い出して数値で明らかにする(顕在化させる)ことが求められます。目の前のB/Sからもう一歩踏み込んで財務状況の実態を探りに行くわけです。 一概には言えませんが、コロナ禍ではB/Sに計上された勘定科目のうち、例えば次のように潜在的なリスクを抱えていることがあります。これらは、言い換えると、近い将来、B/Sに痛みを伴う損失計上が起こる可能性を持つリスクです。 これらの場合、仕訳や会計実務に強い方であれば、 のような、損失計上を伴う仕訳につながる恐れがあるものとお分かりいただけるでしょう。コロナ禍による経営環境の悪化など最近の状況を受けて、見た目のB/Sでは分からないこうした潜在的なリスクを抱えているかもしれない、という視点で売り手の財務状況を観察し、実態を的確に伝えることも第三者の重要な役割です。 (4) 経営指標による決算書分析 管理会計上の観点から、あるいはM&Aの価値(価格)評価上の観点から、B/Sの評価額の見直しを行うと、コロナ禍における大半の中小企業では資産の部が減少します。仮に負債の部の金額に変動がないとすれば、この場合、純資産の部が減少し、自己資本比率をはじめ、B/Sに関係する多くの経営指標の数値が変化することを意味します。 特に、下記のような安全性や効率性分析のための経営指標の数値はコロナ禍前後で大きく変化する場合があります。 ◆安全性分析 ◆効率性分析 売り手企業には、(3)バランスシート(B/S)を再評価する(4)経営指標による決算書分析に基づいて、さらに、B/Sの資産と負債のバランス、負債と純資産のバランス、流動(資産、負債)と固定(資産、負債)のバランスを踏まえて、財務的な視点から助言を行うのが効果的です。 中小企業のM&Aでは、売り手は事業や企業の売却準備のために資料や体制整備などを優先して時間を割いているかもしれません。しかし、普段とは異なるコロナ禍のような環境だからこそ、経営状態の悪化などに伴い影響を受けた財務状況の変化を数値やデータで捉え、状況を踏まえた適切な助言ができる第三者の存在を売り手は頼りにします。 第三者は、売り手からのM&Aの相談に応じて速やかに相手探しや手続に入るよりも、一見遠回りかもしれませんが、不安を抱える売り手の現状を的確に分析し理解する良きアドバイザーとなり、コロナ禍を乗り越える対策を互いに相談し合うことで、結果として良いM&Aにつながる大きなヒントを得るかもしれません。 (了)

#No. 388(掲載号)
#荻窪 輝明
2020/10/01

空き家をめぐる法律問題 【事例27】「信託を利用した空き家の発生予防策」

空き家をめぐる法律問題 【事例27】 「信託を利用した空き家の発生予防策」   弁護士 羽柴 研吾   - 事 例 - 私は、地方において自宅建物で独り身の生活をしていますが、子どもらは、都市圏で独立して世帯を有しており、帰省する予定もない状況にあります。 私は、近い将来、認知症を発症するなどして施設に入居する可能性もありますが、その場合に、自宅建物(敷地を含む)は空き家となるため、自宅建物をどのようにするべきか悩んでいます。 自宅建物が空き家とならないようにするためには、どのような方法が考えられるでしょうか。 1 はじめに 高齢化社会を迎え、今後も認知症患者が増加することが予想される中、早い時期から財産管理を行う需要が高まっている。特に、子どもらと別世帯で生活している親世代には、自身が福祉施設に入所する可能性を見据えて、自宅建物を含めた財産管理を行いたいとの需要がある。このような需要の背景には、生前のうちに自宅建物を適当な方法で処分し、相続発生後に相続人に空き家を管理させる手間を負わせたくないとの事情もあるようである。 そこで、今回は、空き家の発生予防対策としての信託の利用方法やそれに付随する問題等について検討することとしたい。   2 成年後見制度や委任契約を利用する場合とその限界 親の認知症の発症等によって、子どもらが親の財産を管理する必要が生じた場合、成年後見制度を利用することが考えられる(ここでは成年後見の利用を想定する)。もっとも、成年後見制度を利用できるのは、本人は事理弁識能力を欠いている場合であるから、その時点において、自らの意思に基づいて、自宅建物を含む財産をどのように処分するかを判断することはできない。 また、福祉施設に入所するような場合、相当の資金を要するため、自宅建物を売却して資金を捻出することなども検討する必要があるが、成年被後見人が居住の用に供している建物又はその敷地(以下「居住用不動産」という)を処分する場合には、家庭裁判所の許可を得る必要がある。しかしながら、居住用不動産には、生活の本拠として現に居住の用に供しているもののほかに、居住の用に供する予定がある建物及び敷地も含むものと解されているため、成年被後見人が福祉施設の入所前まで居住していた建物も含まれることになる。 そのため、たとえば、成年後見人が、成年被後見人のために、居住用不動産を売却して、福祉施設に入所するための資金を確保する必要があるような場合でも、家庭裁判所から自宅建物を売却する許可を得られない可能性がある。このように、成年後見制度による場合、成年被後見人の保護という見地から、手続きが厳しく制限されていることがあるため、たとえ居住用不動産を売却する必要性があったとしても、柔軟性や機動性を欠く結論になる場合がある。 この他に、親に判断能力があるうちに、①親と子どもとの間で、居住用不動産の管理や売却について委任契約(代理権の授与を含む)を締結する方法や、②リバースモーゲージ(【事例11】を参照)を利用する方法も考えられる。 しかしながら、①については、委任者が後見開始の審判を受けたことは委任契約の終了事由とはならないが、将来の居住用不動産の売却時点において、売主の本人確認や登記手続に支障があるほか、受任者に対する監督にも限界があり、現実的ではない可能性がある。また、②については、最終的に居住用不動産を売却することは可能であり、空き家となることも予防できるが、当初の抵当権設定時の評価額が低くなり、経済的に損をする可能性はある。   3 信託を利用する場合 現在、成年後見制度の代わりに、信託を利用した財産管理の方法が注目されている。自宅建物を信託財産とする方法として考えられている基本的な内容は、次のようなものである。 上記の信託においては、信託事務として、自宅建物の管理や売却をすることが含まれていることから、ある程度売却見込みのある不動産であることが想定されている。このような信託の設定を検討するに当たっては、事前に、自宅建物の売却見込みを検討した上で行う必要がある。 受託者は、信託事務として、自宅建物の管理・賃貸・売却等の権限があるため、委託者が施設に入所するために居住用不動産を売却する必要がある場合でも、成年後見制度のように、家庭裁判所から許可を得ることなく、居住用不動産を売却することができる。また、このような方法によって、委託者が死亡した場合でも、委託者の相続人が空き家の管理責任を負うことも回避することが可能となる。 もっとも、上記の信託は、受託者が子どもなどの親族となることに留意する必要がある。受託者が善管注意義務や忠実義務を負うとしても、高齢である受益者による監視・監督を期待できない場合があることは否定できない。一方で、弁護士や司法書士等の有資格者が受託者になることは、信託業法による規制に違反するおそれがあるため、現実的ではない。 そこで、信託契約において、弁護士や司法書士等の有資格者を、信託監督人や受益者代理人として指定するとともに、自宅建物の売却のような重要と位置付けられる事務について、信託監督人等の同意を条件とすることが考えられる。 なお、上記の信託契約は、信託財産は、委託者の所有する財産の一部に限られているため、信託契約の対象外の財産の管理をどのように行うべきか併せて検討する必要があるが、その方法としては、任意後見契約を締結して対応する方法が無難であろうと思われる。   4 信託財産の自宅建物に住宅ローンが残っている場合 委託者である親が自宅建物に抵当権の設定を受けた上で、住宅ローンの返済を継続していた場合に、委託者は、受託者に対して住宅ローン債務を負担させることができるだろうか。 信託法は、信託財産を「受託者に属する財産であって、信託により管理又は処分をすべき一切の財産」と規定するのみであるが、消極財産(負債)は含まれないものと解されており、住宅ローン債務を、信託財産として受託者に移転することはできない。そのため、住宅ローン債務を、受託者に移転させるためには、債務引受による方法が必要となるが、この場合に問題となるのは、自宅建物に信託を設定することによって、住宅ローン債務に影響があるかどうかである。 この問題に関し、一般的な住宅ローンの対象物件は、受託者による収益管理が予定されていないため、受託者が債務引受をする場面は少ないものと想定されるが、自宅建物の信託の設定は、形式的には当該自宅建物の所有権の移転であることに留意する必要がある。 というのも、金融機関との金銭消費貸借契約においては、通常、担保対象物件を第三者に譲渡する場合、金融機関から書面による事前の承諾を得るものと定められており、これに違反した場合、住宅ローン債務者は、期限の利益を喪失する可能性があるからである。したがって、住宅ローン債務のある自宅建物を信託に供する場合には、金融機関から承諾を得ることが求められる。   5 本件の場合 本件について、上記3のような信託契約と任意後見契約を併用することによって、自らの判断力が低下する以前から、自宅建物の処分の方法を自己決定することで、将来の空き家の発生を予防できる可能性がある。 (了)

#No. 388(掲載号)
#羽柴 研吾
2020/10/01

〔これなら作れる ・使える〕中小企業の事業計画 【第7回】「個別計画の作成手順(その2)」

〔これなら作れる ・使える〕 中小企業の事業計画 【第7回】 「個別計画の作成手順(その2)」   税理士・中小企業診断士・ITストラテジスト 高畑 光伸   第7回では、前回の続きとなる売上計画の作成のポイントについて確認する。 (4) 売上計画の修正 たとえば、製品B、製品Dの高付加価値化に失敗し、さらに製品B、製品Dの販売数量が大幅に低下(課題解決前から30%低下)した場合、損益状況は次のようになる。 《販売数量が大幅に低下した場合の製品別の損益状況》 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ※[比率]等については、小数点第2以下を四捨五入している(以下同様)。 目標値を大きく下回る場合には、売上計画を修正する。上記の損益状況が四半期のタイミングで判明した場合、何も対策せずに継続するのであれば、差異が大きく膨れ上がることになる。製品B、製品Dの取扱いを検討したうえで、目標値を修正するなどの見直しが必要になる。 (5) 売上計画の3つのシナリオの検討 当初のシナリオどおりに事業が進むとは限らない。さまざまなシナリオを想定することができるが、将来どうなるかは誰しもが分からないため、ベースとなるシナリオのほか、アップサイド(景況が良い場合のシナリオ)、ダウンサイド(景況が悪い場合のシナリオ)の3つのシナリオを想定するのが良い。 ① アップサイド(景況が良い場合のシナリオ) 《販売数量が当初より20ポイント上昇した場合 (課題解決前から20%増加した場合)》 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ② ダウンサイド(景況が悪い場合のシナリオ) 《販売数量が当初より20ポイント低下した場合 (課題解決前から20%減少した場合)》 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   3 売上原価計画 (1) 小売業の場合 小売業の場合、売上原価の構成要素は原則、商品仕入高のみである。年間を通じて商品在庫の増減がなければ、前年度以前の仕入高あるいは仕入率から売上原価を試算する。また、仕入先との取引条件の見直し、仕入単価の増減などが見込まれる場合は、これらの条件を計画値に反映する。 なお、期首時点で商品在庫の残高、増減が大きい場合は、当期中の原価に大きな影響が生じるため、在庫表を通じて商品在庫の内容を確認する必要がある。 (2) 製造業・建設業などの場合 製造業・建設業などの場合、売上原価の構成要素は材料費、労務費、経費である。労務費、経費は、個別計画の人員計画、経費計画により反映することになる。なお、複数の製品・サービスを取り扱っている場合は、原価を一定の配賦基準に従って、各製品・サービスに割り振る。 《原価・経費への割振り》 (3) サービス業 サービス業の場合、前述の製造業・建設業などと同様に、労務費、経費は、個別計画の人員計画、経費計画により反映することになる。また、貸借対照表に仕掛品が計上されることがある。これは、該当期の収益に対応させるため、仕掛品としていったん貸借対照表に繰り延べられているものである。よって、該当期の収益に対応するものかどうか、仕掛品の内容を確認する必要がある。 たとえば、映画演劇業の場合、公演日の数ヶ月前よりチケット収入、物販収入などの収益があり、公演日が属する事業年度の収益になる。 一方、費用については公演日よりも前に多くの支出を伴い、稽古場の賃借料、キャストの給与、小道具などの消耗品などがかかる。公演日と支出日が同じ年度中であれば、当該年度の費用として計上されるまでだが、前年度以前から支出が生じている場合、公演日が到来するまで、仕掛品として処理することになる。 《仕掛品リスト》 (続く)

#No. 388(掲載号)
#高畑 光伸
2020/10/01

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第37話】「年末調整の電子化」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第37話】 「年末調整の電子化」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「浅田君は・・・今年から新しくなる年末調整の手続きを知ってるかい?」 中尾統括官は、浅田調査官に声をかける。 「年末調整・・・ですか?」 浅田調査官は怪訝そうな顔をする。 「10月に国税庁がホームページで年末調整控除申告書作成用のソフトを公表するという・・・あれだよ。」 中尾統括官は、険しそうな表情で浅田調査官を見る。 「あ~、はいはい・・・あの・・・控除証明書等の必要書類のデータを一括取得して、自動入力ができるという・・・あれですね。」 浅田調査官は、苦笑いしながら、答える。 「そうだ。もっとも、保険料控除申告書などに添付する証明書について、保険会社からの電子的控除証明書によることが可能になるというのは、2年前の平成30年度の税制改正に基づくものだが・・・」 そう言いながら、中尾統括官は、所得税法198条7項を開く。 「平成30年度の税制改正で、この7項が新たに追加されたのだが・・・」 中尾統括官が説明する。 「この改正を受けて、国税庁は、年末調整控除申告書作成用ソフトを無償で、納税者に提供しようとするのですね。今はこのソフトのプロトタイプ版が公表されていて、10月1日に正式なものが公表されるようです。」 浅田調査官はパソコンで国税庁のホームページを見ながら頷く。 「しかし・・・マイナポータルを活用した年末調整及び所得税確定申告の簡素化・・・と、国税庁のホームページは謳っているが・・・マイナポータルって・・・何だったっけ?」 中尾統括官は、浅田調査官に真面目な顔で尋ねる。 「中尾統括官・・・マイナポータルを知らないのですか?」 浅田調査官は、冷ややかな眼差しで見つめる。 「マイナポータルは、政府が運営するオンラインサービスのことです・・・マイナポータルで提供される具体的なサービスとは・・・」 そう言うと浅田調査官は、自分のスマートフォンから、マイナポータルの画面を見せる。 「・・・具体的なサービスとして、情報提供等記録表示、自己情報表示、お知らせ、民間送達サービスとの連携、子育てワンストップサービス、公金決済サービス・・・などがあります。」 中尾統括官は、浅田調査官のスマートフォンの画面をのぞき込む。 「ところで、マイナポータルと連携するためには、マイナンバーカードが必要なんですけど・・・統括官は持っていますか?」 浅田調査官の問いに、中尾統括官は黙って首を横に振る。 「まだ、マイナンバーカードを持っていないのですか・・・」 浅田調査官は、呆れた顔をする。 「いや・・・忙しくて・・・カードの取得手続きに行くことができないんだ。」 中尾統括官は、頭をかきながら、言い訳をする。 「ただ・・・国税庁のホームページを見ても、この内容の説明では、一般の人がこの制度を利用できるとは思えないが・・・」 中尾統括官は、抵抗する。 「国税庁のホームページでは、『ご利用いただくための準備』として、4つのステップが示されています。」 浅田調査官は、ホームページの内容を読み上げる。 「これだけのことをやって初めて年末調整の一部が電子化できるのか?」 中尾統括官は、不満そうに言う。 「③や④については、マイナポータルとの連携方法については、わざわざ「保険会社等によって異なる可能性もある」なんて書いてある・・・そして聞くところによると、保険会社によっては、従来通り、ハガキで控除証明書を送付するというところもあるらしい・・・」 中尾統括官は、令和2年10月以降の「年末調整手続の電子化概要図」を見ながら、首を傾げる。 (※) 国税庁ホームページより 「この図を見ると簡単そうだけれど・・・従業員が国税庁の年調ソフトを使って、マイナポータルからデータを入力し、それを勤務先に送信をするといった作業を考えると、私は・・・従来の紙ベースで年末調整控除申告書を作成した方が、簡単だと思うのだが・・・」 中尾統括官は、自分の言葉に納得するように、頷く。 (つづく)

#No. 388(掲載号)
#八ッ尾 順一
2020/10/01

《速報解説》 ASBJ、実務対応報告第40号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」を公表~金利指標置換後の取扱いについては、公表から約1年後に再度確認を予定~

《速報解説》 ASBJ、実務対応報告第40号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」を公表 ~金利指標置換後の取扱いについては、公表から約1年後に再度確認を予定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年9月29日、企業会計基準委員会は、「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」(実務対応報告第40号)を公表した。これにより、2020年6月3日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 ロンドン銀行間取引金利(London Interbank Offered Rate:LIBOR)の公表は、2021年12月末をもって恒久的に停止される。2021年3月5日、LIBOR運営機関である ICE Benchmark Administrationから、米ドルの一部テナーを除いて、現行のパネル行が呈示するレートを一定の算出方法に基づき算出するLIBORについては、2021年12月末をもって公表を停止する旨が公表されている。LIBORの公表の停止に伴う今後の対応については、関係機関の動向に注意されたい。 これにより、LIBORを参照している契約において、参照する金利指標の置換が行われる可能性が高まっていることから、LIBORを参照する金融商品について必要と考えられるヘッジ会計に関する会計処理及び開示上の取扱いを明らかにするものである。 なお、今回の実務対応報告公表時には、金利指標の選択に関する実務や企業のヘッジ行動について不確実な点が多いため、本実務対応報告の公表から約1年後に、金利指標置換後の取扱いについて再度確認する予定である(53項)。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 範囲 LIBORを参照する金融商品について金利指標を置き換える場合に、その契約の経済効果が金利指標置換の前後で概ね同等となることを意図した金融商品の契約上のキャッシュ・フローの基礎となる金利指標を変更する契約条件の変更のみが行われる金融商品を適用範囲とする(3項、27項、29項)。 次のものも適用範囲とする。   Ⅲ 金利指標置換前の会計処理 1 ヘッジ対象又はヘッジ手段の契約の切替 本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段としてヘッジ会計を適用している場合、金利指標改革に起因する契約の切替が行われたときであっても、ヘッジ会計の適用を継続することができる(5項)。 2 ヘッジ会計の原則的処理方法(繰延ヘッジ) 3 時価ヘッジ 本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段として時価ヘッジを適用する場合、繰延ヘッジを適用する場合について定めた特例的な取扱いと同様の取扱いとすることができる(10項)。 4 金利スワップの特例処理等   Ⅳ 金利指標置換時の会計処理:ヘッジ会計の原則的処理方法(繰延ヘッジ) 金利指標置換前において本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段としてヘッジ会計を適用していた場合については、金利指標置換時において、ヘッジ会計開始時にヘッジ文書で記載したヘッジ取引日(開始日)、識別したヘッジ対象、選択したヘッジ手段等を変更したとしても、ヘッジ会計の適用を継続することができる(13項)。   Ⅴ 金利指標置換後の会計処理 1 ヘッジ会計の原則的処理方法(繰延ヘッジ) 金利指標置換前において本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段としてヘッジ会計を適用していた場合、事後テストに関する8項の取扱いを適用していたか否かにかかわらず、金利指標置換時以後、同項の取扱いを適用し、2023年3月31日以前に終了する事業年度までヘッジ会計を継続することができる。(14項)。 これは、LIBOR の公表停止が予定されている2021年12月末から概ね1年間を想定したものである(53項)。 また、当該取扱いを継続している間、再度金利指標を置き換え、ヘッジ文書の記載を変更したとしても、ヘッジ会計の適用を継続することができる(14項)。 金利指標改革とは関係なくヘッジ会計が中止となった場合で、本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象としている場合、当該ヘッジ対象の契約の切替が行われたときであっても、契約の切替後のヘッジ対象に係る損益が認識されるまで、ヘッジ手段に係る損益又は評価差額を繰り延べる(17項)。 2 包括ヘッジ 金利指標置換前において本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品を含むグループをヘッジ対象として包括ヘッジを適用していた場合、包括ヘッジに関する9項の取扱いを適用していたか否かにかかわらず、金利指標置換時以後、同項の取扱いを適用し、2023年3月31日以前に終了する事業年度まで包括ヘッジの適用を継続することができる(18項)。 また、同項の取扱いを継続している間、再度金利指標を置き換え、ヘッジ文書の記載を変更したとしても、包括ヘッジの適用を継続することができる(18項)。 3 金利スワップの特例処理等 金利スワップの特例処理及び振当処理についても原則的処理方法に関する特例的な取扱いと同様の特例的な取扱いをすることができる(19項)。   Ⅵ 注記事項   Ⅶ 適用時期等 (了)

#No. 387(掲載号)
#阿部 光成
2020/10/01

《速報解説》日本監査役協会、「多様な『監査役スタッフ像』に関する研究-その現状と課題-」を公表~12の課題に対して監査役スタッフ数に着目し、3類型に分類した上で分析~

《速報解説》 日本監査役協会、「多様な『監査役スタッフ像』に関する研究 -その現状と課題-」を公表 ~12の課題に対して監査役スタッフ数に着目し、3類型に分類した上で分析~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年7月10日付けで(ホームページ掲載日は2020年9月24日)、日本監査役協会 本部監査役スタッフ研究会は、「多様な『監査役スタッフ像』に関する研究-その現状と課題-」を公表した。 監査役スタッフの職務内容に大きな影響を与える要素としてスタッフ数に着目した分析を行っている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 分析の方法 検討している課題は次の12項目であり、表紙を含めて64ページに及ぶものである。 各課題について、監査役スタッフの数に着目し、次の3つの類型に分類して、分析を行っている。 2 検討を通じて浮かび上がった傾向や課題 スタッフ数が多いほど、監査役等に対し、よりきめ細やかなサポートが行えているであろうという当初の予想は、ほぼそのとおりであったとのことである。 監査役スタッフが置かれた環境により、次のような傾向や課題が見られた。 (了)

#No. 387(掲載号)
#阿部 光成
2020/09/28

プロフェッションジャーナル No.387が公開されました!~今週のお薦め記事~

2020年9月24日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.387を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2020/09/24
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