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給与計算の質問箱 【第15回】「社会保険の料率の変更」~令和3年度対応~

給与計算の質問箱 【第15回】 「社会保険の料率の変更」 ~令和3年度対応~   税理士・特定社会保険労務士 上前 剛   Q 来月から新年度(令和3年度)になりますが、各種社会保険の料率の変更はあるでしょうか。 A 労災保険、雇用保険、厚生年金保険、子ども・子育て拠出金の料率の変更はない。健康保険、介護保険(第2号被保険者)の料率は変更がある。 * * 解 説 * * 1 料率の変更がないもの (1) 労災保険 労災保険料は、会社が全額負担し従業員の負担はないことから、給料計算には関係しない。 〔労災保険率表〕 (※) 厚生労働省ホームページより (2) 雇用保険 一般の事業の雇用保険料率は、会社負担が0.6%、従業員負担が0.3%である。従業員は、給料の総支給額×0.3%=雇用保険料を給料から天引きされる。 例えば給料の総支給額300,000円の場合、300,000円×0.3%=900円の雇用保険料を給料から天引きされる。 〔令和3年度の雇用保険料率〕 (※) 厚生労働省「令和3年度の雇⽤保険料率について」より (3) 厚生年金保険 厚生年金保険の料率は、18.3%を折半して会社負担が9.15%、役員・従業員負担が9.15%である。役員・従業員は、標準報酬月額×9.15%=厚生年金保険料を給料から天引きされる。 例えば標準報酬月額300,000円の場合、300,000円×9.15%=27,450円の厚生年金保険料を給料から天引きされる。 〔令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)〕 (※) 協会けんぽホームページより (4) 子ども・子育て拠出金 子ども・子育て拠出金は、会社が全額負担し従業員の負担はないことから、給料計算には関係しない。 子ども・子育て拠出金の料率は、0.36%である。子ども・子育て拠出金の額は、被保険者個々の厚生年金保険の標準報酬月額×0.36%の総額である。 例えば厚生年金保険の標準報酬月額300,000円の役員1名だけが社会保険に加入している会社の場合、300,000円×0.36%=1,080円の子ども・子育て拠出金を年金事務所へ支払う。   2 料率の変更があるもの (1) 健康保険 協会けんぽに加入の東京の会社の令和3年2月分(3月納付分)までの健康保険の料率は、9.87%を折半して会社負担が4.935%、役員・従業員負担が4.935%だった。令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険の料率は、 0.03%引下げの9.84%を折半して会社負担が4.92%、役員・従業員負担が4.92%になった。 役員・従業員は、標準報酬月額×4.92%=健康保険料を給料から天引きされる。例えば、標準報酬月額300,000円の場合、300,000円×4.92%=14,760円の健康保険料を給料から天引きされる。 (2) 介護保険(第2号被保険者) 第2号被保険者とは、40歳以上65歳未満の役員・従業員をいう。40歳未満及び65歳以上の役員・従業員の給料からは介護保険料を天引きしない。 協会けんぽに加入の東京の会社の令和3年2月分(3月納付分)までの介護保険の料率は、1.79%を折半して会社負担が0.895%、役員・従業員負担が0.895%だった。令和3年3月分(4月納付分)からの介護保険の料率は、 0.01%引上げの1.8%を折半して会社負担が0.9%、役員・従業員負担が0.9%になった。 役員・従業員は、標準報酬月額×0.9%=介護保険料を給料から天引きされる。例えば、標準報酬月額300,000円の場合、300,000円×0.9%=2,700円の介護保険料を給料から天引きされる。 (了)

#No. 411(掲載号)
#上前 剛
2021/03/18

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第15回】「現況地目が「農地」でも鑑定評価では「宅地」として扱われることがある」~その根拠は?~

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第15回】 「現況地目が「農地」でも鑑定評価では「宅地」として扱われることがある」 ~その根拠は?~   不動産鑑定士 黒沢 泰   前回の連載では、鑑定評価における地域の捉え方には特徴的なものがある旨を述べ、その典型例として用途的地域(用途地域とは異なります)につき解説いたしました。 今回も、前回の延長線上にある内容ですが、鑑定評価において欠かすことのできない地域分析の基本について述べてみたいと思います。冒頭に掲げたタイトルは何とも理解し難い内容のように受け止められるかも知れませんが、鑑定評価における地域分析の考え方を把握していただくことにより、その根拠を明確にすることができると存じます。 ところで、税理士の皆様をはじめ世間一般では、土地を評価する際、現況地目が農地であれば、すべて農地という前提で評価するのが通常であると思われているのではないでしょうか。これは、一面では当を得ています。 しかし、鑑定評価で価格を求める際には、その農地の属する地域一帯ではどのような利用方法が一般的であり、どのような利用をすればその土地の効用を最大限に発揮し得るか(=最有効使用の方法は何か)という視点からアプローチしていくため、現況が農地であるからといって、価格的にも農地としての水準がストレートに当てはまるとはいえない点に留意が必要です。 以下、鑑定評価の特徴を検討する意味で、固定資産税や相続税の財産評価における地目別評価の規定と対比させつつ、鑑定評価における地域分析の特徴を取り上げていきます。   1 固定資産税等における地目別評価 固定資産税や相続税の財産評価では、土地は地目別に評価することとされており、その根拠規定は以下のとおりです。 (1) 固定資産税の評価 「土地の評価は、次に掲げる土地の地目の別に、それぞれ、以下に定める評価の方法によって行うものとする。(以下省略)」(固定資産評価基準第1章第1節通則「一 土地評価の基本」) (2) 相続税の財産評価 「土地の価額は、次に掲げる地目の別に評価する。(中略)地目は、課税時期の現況によって判定する。」(財産評価基本通達7) なお、同通達7の(注)では、「地目の判定は、不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付民二第456号法務省民事局長通達)第68条及び第69条に準じて行う」ことが規定されています。   2 鑑定評価における地域分析の特徴 不動産鑑定評価基準では、次のとおり、「地域の種別」及び「土地の種別」という特有の概念を設けています(下線は筆者)。 このように、不動産鑑定評価基準では、宅地、農地等の区分を土地の地目ではなく、その土地の属する用途的地域の種別に基づいて判定しています(用途的地域とは、都市計画法上の用途地域とは別の概念であり、現実に利用状況の類似するひとかたまりの地域を指すことは前回述べたとおりです)。 すなわち、不動産の属する地域を、(上記規定に沿い)宅地地域、農地地域等の種別により分類し、その地域が宅地地域にあればこれに属する土地を宅地、農地地域にあればこれに属する土地を農地として判定しています。 ちなみに、宅地地域の場合、居住、商業活動、工業生産活動等の用に供される建物、構築物等の敷地の用に供されることが、自然的、社会的、経済的及び行政的観点からみて合理的と判断される地域と定義されることから、宅地地域に属する土地は現況の地目に関係なく、鑑定評価上の土地の種別は宅地とみなされます。すなわち、宅地地域にあっては、現に耕作の用に供されている土地(いわゆる現況農地)であっても、鑑定評価上は農地としてではなく、宅地として取り扱われた上で、価格のアプローチがなされることになります。以下の図はそのイメージを示したものです。 その結果、宅地地域に属する農地の価格を求める際には、宅地としての価格から宅地化に要する費用を控除して価格を試算する等の手法も併用しているわけです(この他に、状況の類似する土地の取引事例が収集できれば、実証性という観点から説得力が増すことはもちろんです)。   3 まとめ 以上述べた内容を整理すれば、たとえ現況が農地であるといっても、それだけで画一的に価格水準を判定するわけにはいかないということになります。 その土地が不動産鑑定評価基準にいう宅地地域のなかにある場合もあれば、農地地域のなかにある場合もあります。同じ現況農地といっても、前者の場合には宅地としての価格形成要因が織り込まれ、後者の場合は純粋な農地として(すなわち耕作を前提に)土地利用を行うという視点から価格を求めることが基本となり、この点に大きな相違がみられます。 ◆  ◆  ◆ 本文では直接述べませんでしたが、例えば財産評価基本通達(第2章第3節)では、農地をその利用状況に基づき、純農地、中間農地、市街地周辺農地、市街地農地など、いくつかの形態に分類し、それぞれに応じた評価方法を採用しています。これに対して、鑑定評価では「地域の種別」という視点を重視して宅地地域、農地地域等の区分を行い、評価対象となっている農地が宅地地域に属する土地であれば、「土地の種別」を宅地として捉えた上で価格にアプローチしている点に留意が必要です。 これを念頭に置くことにより、冒頭の疑問点の解消に少しでも役立てられれば幸いです。 (了)

#No. 411(掲載号)
#黒沢 泰
2021/03/18

〈知識ゼロからでもわかる〉ブロックチェーン技術とその活用事例 【第6回】「契約×ブロックチェーン」

〈知識ゼロからでもわかる〉 ブロックチェーン技術とその活用事例 【第6回】 「契約×ブロックチェーン」   公認会計士・公認不正検査士 松澤 公貴   第2回で解説したとおり、「スマートコントラクト」を利用できる業務は、ブロックチェーンを有効に活用でき、価値を生み出せる可能性が高いと考えられる。契約条件、履行内容、将来発生するプロセス等をブロックチェーン上に記録し、第三者を介在させずに取引などを実現させることが可能になる。 前回の内容と一部重複する記載もあるが、「契約×ブロックチェーン」という側面から概説を行う。 1 保険契約 保険契約は、保険会社と保険をかける個人や法人との間で締結される契約であるが、契約条件、履行内容、将来発生するプロセスなど、様々なステークホルダーが保険契約に関わることになる。現在において、未だに紙でやりとりされる情報も少なくなく、契約審査、請求、事故調査、及び保険金の支払いなどには多くの手間と時間がかかっている。 このような状況で、情報を電子化しステークホルダーで共有し、保険にまつわるプロセスを効率化する必要がある。保険会社のシステムを通じて情報を共有することも可能であるが、保険において保険金支払いの根拠となる情報が改ざんされるリスクもあることから、一度記録されたデータが限りなく改ざん不可能に近く、権利処理と相性のよいブロックチェーンに注目が集まっている。   2 不動産契約 不動産契約は、スマートコントラクトとブロックチェーンを活用することで、不動産取引を行うための契約、決済、送金等をオンライン上で行うことが可能となり、必要事項を入力し、あとは自動で取引が履行されることになる。また、ブロックチェーンの非改ざん性の高さや過去の全ての取引を閲覧できるといったプロセスの透明性が確保でき、従来の不動産取引の際の信用を弁護士などの第三者機関に依存する必要がなくなることになる。 これにより、従来の契約プロセスと比較して、途中のプロセスを省略することができ、契約を自動的に履行することが可能となるため、素早く低コストで契約できることになる。現行法制度上の対抗要件(不動産取引の場合は登記)との調整が今後の課題として挙げられる。   3 デリバティブ契約 先物取引、スワップ取引、オプション取引などのデリバティブ取引では、様々な条件で資金のやりとりが行われる。それらの条件をスマートコントラクトによって定めておけば、自動的に条件判断と決済処理を行うことが可能になると考えられる。 例えば、先物取引では、顧客は取引金額の一部を契約時に証拠金として金融機関に差し入れることになるが、その後の原資産価格の変動により、追加証拠金の差入れが必要となる場合がある。そこで、スマートコントラクトにあらかじめ追加証拠金の計算方法を設定しておくと、スマートコントラクトが自動的に取引所などから原資産価格のデータを入手して追加証拠金額を計算し、顧客への請求を行う。請求された追加証拠金は、証拠金にあてる現金の所有権を管理するブロックチェーン上で顧客から金融機関に支払われる。 このようにデリバティブ取引の複雑な業務を、スマートコントラクトを用いて自動化することで、金融機関がオペレーションコストを削減できるであろう。   4 遺言・相続財産管理 登記の対象にならない二者間の契約関係についても、ブロックチェーンで共有・追跡可能となり、その結果、契約上の権利についても事実上の対抗力を持たせることが可能となる。将来的な法整備が進んだ場合には、権威や信用力をもつエンティティが存在しなくても、権利証明等が対抗力を持つことになり、行政機関などの役割を代替可能となる可能性がある。 例えば、遺言をあらかじめスマートコントラクトとして定めておくことにより、当人が死亡したことをきっかけとして、遺言が自動的に執行されるようにすることが可能になると考えられる。これにより、第三者による遺言の改ざんを防ぎ、秘匿性のある遺言を残すことができる。また、相続財産の預金や株式など相続財産の目録を電子管理することにより、手続の短縮と業務の効率化につながるであろう。 (了)

#No. 411(掲載号)
#松澤 公貴
2021/03/18

《速報解説》 所有者不明土地問題解決を図る民法・不動産登記法等の改正法案が明らかに~施行日前開始の相続から適用される改正事項も~

《速報解説》 所有者不明土地問題解決を図る民法・不動産登記法等の改正法案が明らかに ~施行日前開始の相続から適用される改正事項も~   Profession Journal編集部   国内で拡大する所有者不明土地問題を解決するため、法務省の法制審議会(民法・不動産登記法部会)が2月にまとめた「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱」に基づき、このほど3月5日付けで既存法の改正及び新法の法律案が今国会に提出され、法務省のホームページでその内容が明らかになった。 今回の法律案の趣旨は冒頭述べた通り、所有者不明土地の発生を未然に防止することとされ、相続登記の義務化(相続財産については原則相続開始から3年以内の所有権移転登記を義務化。違反の場合は10万円以下の過料(改正不動産登記法案第76条の2))や、相続財産の国庫への帰属(相続放棄)が注目されている(法律案では後者の制度が新法で規定されている)。 ここで、これら未然防止策の1つとして、未分割遺産に係る制度見直しなど、相続実務に影響のある民法改正も織り込まれている点に注意したい。具体的には、特別受益(民法903条)や寄与分(民法904条の2)については、相続開始から10年経過後にする遺産分割については、一定の場合の除き、適用を認めないこととされる(改正民法案904条の3(下記参照))。他に、遺産分割の禁止(民法908条)についても相続開始から10年の期限が設けられる。 また、法律の施行時期については2法案共に、原則公布日から2年以内(相続登記義務化は3年以内)とされているが、上記の第904条の3は施行日前に相続が開始した遺産分割についても適用される(改正民法等改正法案附則第3条(下記参照))。経過措置は設けられているが、遺産分割協議が5年以上続いているようなケースでは改正法の影響を受ける可能性もあるため、改正内容だけでなく施行時期についても留意が必要だ。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 410(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/03/11

プロフェッションジャーナル No.410が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年3月11日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.410を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/03/11

〈判例評釈〉ユニバーサルミュージック高裁判決 【第3回】

〈判例評釈〉 ユニバーサルミュージック高裁判決 【第3回】   公認会計士・税理士 霞 晴久   4 控訴審判決要旨 (1) 行為・計算要件について 国(控訴人)側は、「(本件組織再編に係る)本件一連の行為が一体として税負担減少結果を生じさせたものとして(法人税法132条1項にいう)『その法人の行為又は計算』に当たり(主位的主張)、少なくとも本件一連の行為のうち本件設立を除く各行為が『その法人の行為又は計算』に当たる(予備的主張1)」と主張したのに対し、東京高裁は、「本件各事業年度におけるXの法人税につき、これを容認した場合には法人税の負担を減少させる結果となる『その法人の行為又は計算』は、本件借入れであると認められる」から、「本件借入れを除けば、これを容認したとしても、本件各事業年度における被控訴人の法人税の負担を減少させる結果となるとは認められない」と判示し、「本件借入れ以外の控訴人主張に係る各行為は、本件各更正処分の適法性を検討するに当たり、法人税法132条1項に基づく同族会社等の行為計算の否認の対象となる『その法人の行為又は計算』に当たるとはいえない」として、国側の主張を排斥した。 (2) 不当性要件の判断枠組みについて 法人税法132条1項の不当性要件の判断枠組みについて、東京高裁は、 とし、従来からの通説的見解である経済合理性基準の立場を明確にしている。 その上で、東京高裁は、「経済的合理性を欠く同族会社等の行為又は計算が、同族会社であるためにされた不自然、不合理な租税負担の不当回避行為として、不当性要件に該当することになる」とし、不当性要件の判断枠組みとして、ヤフー/IDCF事件最高裁判決(※9)が採用した考え方を引用している。 (※9) ヤフーについては、最高裁平成28年2月29日第一小法廷判決(平成27年(行ヒ)第75号、TAINSコード:Z266-12813)、IDCFは、最高裁平成28年2月29日第二小法廷判決(平成27年(行ヒ)第177号、TAINSコード:Z266-12814)。 すなわち、 と判示している。 (3) 当てはめ A) 本件8つの目的について 東京高裁は、「本件8つの目的を〈ア〉日本の関連会社の経営の合理化、〈イ〉ユニバーサル・ミュージック部門(UMG部門)のオランダ法人の負債軽減及び〈ウ〉日本の関連会社の財務の合理化という観点から分けて検討してみても、不自然なものではない」とし、「税負担の減少以外にこれを行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するといえ、被控訴人(ひいては、その完全子会社になった後、Xに吸収合併されることになるU社)に税負担の減少以外の経済的利益をもたらすものといえる」と判示した。 B) 本件借入れに関する事情 U社は、Xに吸収合併される前の3事業年度において、営業利益を約74~111億円計上していたことから、東京高裁は、本件借入れにより生ずる支払利息(年約40億円)は、①本件合併によりU社の事業を承継するXがその営業利益によって賄うことができる範囲内のものとされたこと、②20年の返済期間は、被控訴人の平成20年度の税引き後利益の予想に基づく試算に基づいて決定されたこと、③現にXによる本件借入れの利息の支払が困難になったなどの事情はうかがわれないことから、「本件借入れに当たり、元本の返済又は利息の支払が困難になるおそれがあったとは認められず、本件借入れの融資条件は、被控訴人にとって不当に不利益となるものとは認められない」と判示した。 また、XがIF社から本件借入れを行うに当たり、担保を提供していないことについて、東京高裁は、「Xは、その設立後、V社グループのCMSに参加したこと、本件借入れの目的が平成20年8月31日当時において約1,144億円の価値を有していたU社株式を含むV社グループ傘下の各日本法人の株式を取得することとされていたこと、本件借入れの条件が本件合併によりU社を承継したXの営業利益によって返済可能な範囲で定められたことを踏まえたものであり、本件借入れが無担保で行われたことは不自然ではなく、合理的な理由があるということができる」と判示した。 (4) 結論 以上から、東京高裁は、 とした。 (続く)

#No. 410(掲載号)
#霞 晴久
2021/03/11

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第27回】「親族外承継における分割型分割の活用」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第27回】 「親族外承継における分割型分割の活用」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 梶本 岳   相談内容 私は、汎用部品の製造業を営むS社の社長Yです。当社は創業オーナーで会長のM氏が株式の全てを保有しています。M氏には息子がいますが、当社の経営には関与しておらず、M氏も息子に事業を承継する意思がないことから、1年後を目途に非同族の私YがM氏から株式を承継する方向で事業承継計画を検討しています。 M氏は、事業承継にあたってS社株式の売却による多額の収入を得ることは望んでいません。一方で、S社の保有資産のうち、M氏が社宅として使用している土地・建物、社用車、安定収入が見込める賃貸アパートの承継を望んでおり、S社からこれらの資産を分離して、M氏が新たに設立するL社に保有させたいと考えています。 【図1】M氏の希望する会社形態 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 これらの資産をS社から切り離してL社に保有させることで、私YがS社株式を取得する際の資金負担を抑えることができると思いますし、M氏やご家族にとっても、法人で安定収入が見込めるこのような形態が良いのではないかと考えています。 M氏の希望する資産をS社から切り離すにあたっては、私がM氏にS社株式の売買代金を支払い、その売買代金でS社から土地・建物、社用車、賃貸アパートをM氏に取得してもらう方法が良いでしょうか。また、他に税負担を少なくできる方法はないでしょうか。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 親族外承継における個人財産の承継 (1) 譲渡による場合 非上場の同族会社が、親族外の役員・従業員の中から後継者を選定して事業承継を行う場合、オーナー経営者の個人財産の処遇が問題になりやすいところです。 S社が保有する個人財産をM氏又はL社に譲渡する場合、不動産を譲渡するS社は含み益が固定資産売却益として実現するため、法人税が課税されることになります。 また、Y氏がS社株式を先に取得する場合には、不動産の時価が株式の評価額にも反映されることになります。したがって、株式を譲渡するM氏には株式の売却益に対する譲渡所得税が余分に課税されることになりますし、S社から不動産(土地を除く)を時価で取得する際には消費税も負担しなければなりません。 (2) 会社分割による場合 【図2】のように、個人財産を分割型分割によりL社に切り離す場合には、会社分割後にS社の株式を譲渡する見込みであっても完全支配関係が継続しているものとして税制適格要件を満たすことが可能です。 【図2】分割型分割実行後の株式譲渡 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 平成29年度の税制改正により、分割法人(S社)の支配株主(M氏)が、分割承継法人(L社)の発行済株式の全部を直接又は間接に継続して保有することが見込まれていれば、分割後にS社の株式を継続保有する必要はなく、S社株式をY氏に譲渡することが見込まれていたとしても完全支配関係が継続しているものとして税制適格要件を満たすことになりました(法令4の3⑥二ハ(1))。 したがって、M氏の希望する資産をL社が承継しても、S社やM氏に課税関係が生じることはなく、M氏は個人財産の承継により価値が減少したS社株式の譲渡による所得税20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)だけで課税関係が終了することになります。   [2] 不動産の移転コスト 会社分割においては、不動産の移転コスト(主に名義変更による登録免許税と不動産取得税)がなるべく生じないように分割承継資産を決定することが一般的です。 分割型分割により個人財産の承継を行う場合には、税制適格要件を満たすためにオーナーが株式を保有し続ける分割承継法人(L社)に個人財産を移転させる必要があります。したがって、不動産の移転コストについても留意が必要です。 ① 登録免許税 分割型分割により不動産を承継する場合、不動産を購入した場合と同様に固定資産税評価額の2%(1,000分の20)の登録免許税が課税されます(登録免許税法第9条、同法別表第一の一(ニ)ハ)。 ② 不動産取得税 不動産を購入した場合には、固定資産税評価額の3%(非住宅の家屋については4%)の不動産取得税が課税されますが、以下の要件を満たす分割型分割については、不動産取得税が非課税となります(地方税法第73条の7第2号、地方税法施行令第37条の14)。 本事例においては、分割事業である不動産賃貸業に係る主要な資産(社宅・賃貸アパート)が分割承継法人L社に移転して引き続き営まれる見込みであること、M氏が分割事業に係る従業者(※)としてL社の業務に従事することが見込まれているため、不動産取得税の非課税要件を満たすことが可能です。 (※) 「従業者」として認められる者とは、役員、使用人その他の者で、分割の直前において分割事業に現に従事していた者のことをいいます。また、M氏1名しか分割事業に従事していない場合、M氏が分割承継法人へ異動しているか、又はS社とL社の取締役を兼務していれば非課税要件が満たされます(出所:東京都主税局「会社分割に係る不動産取得税の非課税措置について」を筆者加工)。   [3] 結論 親族外承継を行うにあたって、オーナーの個人財産を事業会社から移転させる必要があるときは、移転コストを抑えることができる分割型分割が有効な選択肢の1つといえるでしょう。 S社が保有する個人財産を分割型分割でL社に承継すれば、社宅や賃貸アパートに含み益があってもS社やM氏に課税関係が生じることはなく、M氏はS社株式の譲渡所得に対する所得税と登録免許税の負担だけで、L社への個人財産の承継という希望を叶えることが可能です。 ただし、分割承継法人(L社)に承継させたい個人財産に金融機関の担保設定がなされていたり、個人財産の分離により分割法人(S社)の債務の履行に支障を及ぼす可能性がある場合など、金融機関をはじめとする債権者の理解を得ることが難しい場合には再考が必要でしょう。 具体的な対策については、税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。   (了)

#No. 410(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2021/03/11

金融・投資商品の税務Q&A 【Q61】「源泉徴収選択口座内に上場株式等に係る譲渡損失と配当がある場合の確定申告」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q61】 「源泉徴収選択口座内に上場株式等に係る譲渡損失と配当がある場合の確定申告」   PwC税理士法人 金融部 ディレクター 税理士 西川 真由美   ●○ 検 討 ○● 1 源泉徴収選択口座における所得計算 (1) 確定申告を要しない上場株式等の譲渡による所得 特定口座のうち、源泉徴収選択口座を開設して、上場株式等を保有する場合、その源泉徴収選択口座内でその年中に譲渡した上場株式等に係る譲渡所得等の金額(特定口座内保管上場株式等の譲渡による事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額)は、確定申告にあたって所得金額から除外して税額計算することができます。 また、譲渡について損失が生じた場合も同様に、確定申告における所得金額の計算から除外することが認められています。 (2) 源泉徴収選択口座における配当等の取扱い 源泉徴収選択口座内で発生する上場株式等の配当等(源泉徴収選択口座内配当等)については、当該源泉徴収選択口座内配当等以外の配当等に係る配当所得の金額とは区分して、所得計算することとされています。そして、当該源泉徴収選択口座に係る上場株式等の譲渡について損失が生じた場合には、源泉徴収選択口座内配当等の額の総額から、譲渡損失の金額を控除した残額に対して、源泉徴収税額を計算することとされています。 したがって、上場株式等に係る譲渡損失は、源泉徴収選択口座内で、その年中の配当等の金額と損益通算されることになりますので、上記 (1) に記載したとおり、確定申告を要しない、ということになるわけです。 また、源泉徴収選択口座内配当等は、上場株式等の配当などに対する申告不要制度を適用することができます。この申告不要制度の適用の選択は、その年中に交付を受けた源泉徴収選択口座内配当等に係る利子所得の金額及び配当所得の金額の合計額ごとに行うこととされています。つまり、一回に支払いを受ける配当等の額ごとではなく、口座単位で選択することとされています。 (3) (1)の申告不要を選択しないで確定申告する場合の取扱い 源泉徴収選択口座内で保有している上場株式等の運用結果によっては、当該源泉徴収選択口座内で配当等と損益通算したとしても、なお控除しきれない損失が残ることがあります。その損失を、一般口座で保有する上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額と通算しようとする場合には、上記 (1) の申告不要を選択しないで、源泉徴収選択口座内で生じた上場株式等の譲渡に係る譲渡損失を確定申告の対象とする必要があります。 確定申告をして、源泉徴収選択口座で生じた譲渡損失を一般口座で保有する上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額と通算する場合には、上記 (2) に記載した口座単位での少額配当等の申告不要制度の選択適用は認められず、源泉徴収選択口座内で生じた配当等についても確定申告の対象とすることになりますので注意が必要です。これは、確定申告の対象としないと、当該配当等が源泉徴収選択口座内で源泉徴収をされないまま残ることになるためと考えられます。   2 本件へのあてはめ 源泉徴収選択口座内で生じた上場株式等の譲渡に係る譲渡損失(70万円)を、一般口座で保有する上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額(100万円)と通算するためには、源泉徴収選択口座内で生じた譲渡損失を確定申告する必要があります。そして、確定申告に際しては、譲渡損失だけではなく、配当もその対象とすることになり、下記の所得計算となります。   (了)

#No. 410(掲載号)
#西川 真由美
2021/03/11

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第20回】「家屋の所有者が居住用財産の譲渡損失以外の特例を受ける場合」-居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第20回】 「家屋の所有者が居住用財産の譲渡損失以外の特例を受ける場合」 -居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合-   税理士 大久保 昭佳   Q X(夫)とY(妻)は、共に12年程前から住んでいたX所有の家屋とY所有の土地を、本年3月に売却しました。 買換資産については、XとYがそれぞれ住宅ローンを組んで、同年5月に購入し、居住の用に供しています。 その他の適用要件が具備されている場合で、土地の売却については譲渡損失が発生したことから、Yに「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を適用して申告し、家屋については利益が発生したことから、Xについては「居住用財産の3,000万円特別控除(措法35②)」を適用して申告しようと考えています。 Xの申告は認められるでしょうか。 A Xは、「居住用財産の3,000万円特別控除」の特例を受けることができません。 ●○●○解説○●○● 「居住用財産買換の譲渡損失特例」に係る譲渡家屋の所有者以外の者が、その譲渡家屋の敷地の用に供されている土地等で、その譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えているものの全部又は一部を所有している場合において、租税特別措置法通達41の5-11(居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合の取扱い)に掲げる要件の全てを満たすときは、これらの者がともに同特例を受ける旨の申告をしたときに限り、その申告を認めるとされています。 そして、上記通達に掲げる注書2において、土地の所有者が「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受ける場合で、家屋の所有者が居住用の他の特例を受ける場合の注意点が示されています。 ※下線については筆者加筆。 したがって、家屋の所有者に譲渡損失がなく、土地の所有者に譲渡損失がある場合(【第19回】を参照)と違い、家屋の所有者であるXは「居住用財産の3,000万円特別控除」の特例を受けることができません。 (了)

#No. 410(掲載号)
#大久保 昭佳
2021/03/11

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第69回】「歩道状空地事件」~最判平成29年2月28日(民集71巻2号296頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第69回】 「歩道状空地事件」 ~最判平成29年2月28日(民集71巻2号296頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 410(掲載号)
#菊田 雅裕
2021/03/11
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