〔平成31年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第3回】 「「法人税率の段階的引下げ」 「欠損金の繰越控除限度額の見直し・繰戻し還付の不適用の延長」 「租税特別措置法の適用期限の延長」」 公認会計士・税理士 新名 貴則 平成30年度税制改正における改正事項を中心として、平成31年3月期の法人税申告においては、いくつか留意すべき点がある。【第2回】は「情報連携投資等の促進税制(IoT税制)」及び「法人税における収益の認識等の基準」について解説した。 【第3回】は、「法人税率の段階的引下げ」、「欠損金の繰越控除限度額の見直し・繰戻し還付の不適用の延長」及び「租税特別措置法の適用期限の延長」について、平成31年3月期決算申告において留意すべき点を解説する。 1 法人税率の段階的引下げ 平成28年度税制改正により、法人税率の段階的な引下げが行われている。平成28年4月1日以後に開始する事業年度においては23.4%が適用されていたが、平成30年4月1日以後に開始する事業年度においては、23.2%が適用される。したがって、平成31年3月期の決算申告においては、法人税率の変更が必要となる。平成28年度税制改正による段階的引下げとしては、今回が最後の引下げになる。 また、平成31年3月31日までに開始する事業年度については、中小法人等に対する軽減税率(本来は19%)が、特別措置により15%に引き下げられている。したがって、平成31年3月期決算においては、中小法人等の軽減税率としては前年度と同じ15%が適用される。 【法人税率】 (※) 資本金又は出資金1億円以下の法人のこと(資本金又は出資金5億円以上の大法人の完全子会社等を除く)。 なお、平成31年度税制改正により、中小法人等に対する軽減税率の適用期間が2年間(平成33年3月31日までに開始する事業年度まで)延長される予定である。 2 欠損金の繰越控除限度額の見直し・繰戻し還付の不適用の延長 ① 繰越控除限度額の見直し 平成27年度税制改正及び平成28年度税制改正により、中小法人等を除き、欠損金の繰越控除限度額は、繰越控除前所得の50%相当額まで、段階的に引き下げられることになった。平成30年3月期決算申告においては、控除前所得の55%が控除限度であったが、平成31年3月期決算申告においては、控除前所得の50%まで引き下げられるので、注意が必要である。 ただし、中小法人等については、引き続き繰越控除前所得の100%相当額を繰越控除限度額とし、引下げは行われていない。 また、欠損金の繰越期間は9年であったが、平成31年3月期以降の発生分については、繰越期間が10年に延びる。 (※1) 資本金又は出資金1億円以下の法人(資本金又は出資金5億円以上の大法人の完全子会社等を除く)。 (※2) 平成31年3月期において発生した欠損金の繰越期間は10年だが、平成30年3月期以前に発生した欠損金の繰越期間は9年のままである。 ② 繰戻し還付の不適用の延長(中小企業者等以外の法人) 欠損金の繰戻し還付とは、青色申告法人において欠損金が生じた際に、これを過去の事業年度に繰り戻して、法人税の還付を受けられる制度のことである。 (※) 分母の金額を限度とする。 現在、中小企業者等以外の法人については、この制度が適用できないこととされている。さらに、不適用の期間が平成30年度税制改正によって2年間延長されたため、平成32年3月31日までに終了する事業年度においては適用することができない。 3 租税特別措置法の適用期限の延長 平成30年度税制改正において、いくつかの租税特別措置の適用期限が延長されている。ここでは、その中でも主なものについて解説する。 ① 交際費等 税務上の交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が得意先、仕入先等に対する接待、供応、慰安、贈答等のために支出する費用のことである。 平成26年度税制改正により、税務上の交際費等の課税関係は次表の通りとなった。これが平成28年度税制改正及び平成30年度税制改正を経て、平成32年3月31日までに開始する事業年度まで延長されている。したがって、平成31年3月期決算申告においても、交際費等の課税関係は平成30年3月期と変わらない。 【交際費等の課税関係】 (※1) 1人当たり5,000円以下の接待飲食費(社内接待費は除く)は、そもそも「交際費等」から除かれ、損金算入される。 (※2) 資本金又は出資金1億円以下の法人(資本金又は出資金5億円以上の大法人の100%子会社等は除く)。 ② 少額減価償却資産 取得価額10万円以上の減価償却資産であっても、30万円未満であれば、青色申告書を提出する中小企業者等においては、少額減価償却資産として取得時に全額損金算入できる特例が設けられている。ただし、次の点に注意が必要である。 また、取得価額30万円未満の減価償却資産が対象であるため、有形固定資産だけでなく、ソフトウェアや特許権等の無形固定資産も対象となる。新品の資産だけでなく、中古資産も同様である。 この特例は、平成30年3月31日までの取得等が対象とされていたが、平成30年度税制改正により、2年間(平成32年3月31日までの取得等)延長されている。したがって、平成31年3月期決算申告においては、中小企業者等は引き続きこの特例を適用できる。 (了)
基礎から身につく組織再編税制 【第1回】 「組織再編税制の考え方」 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太 ◇◆◇連載開始に当たって◇◆◇ いわゆる「組織再編税制」は、平時の法人税務において頻出するものではなく、以前は基本的に一部の専門家のみが必要とする知識でしたが、企業のグローバル化を後押しする法整備によってM&A市場が活況を呈し、また事業承継問題を解決する一策としてその有効性がうたわれるようになってからは、中小企業を巻き込んだ組織再編も既に珍しいものではなくなりました。 このような状況下において、税理士だけでなく企業の財務・法務担当者など幅広い方々が組織再編税制を理解する重要性は非常に高まっているといえます。 そこで本連載では、初めて組織再編税制を学ぶ方々を対象に、その基礎となる知識をしっかりと身につけていただくことを念頭に、できるだけ分かりやすく解説していきたいと思います。 1 基本的な考え方 法人が組織再編成によりその保有する資産を他の法人に移転した場合には、譲渡(売却)をした場合と同様に、移転資産に対する譲渡損益を計上するのが法人税法上の原則です。 ただし、組織再編成により資産を移転する場合にも、移転前後で経済実態に実質的な変更がないと考えられるようなときは、新たな課税関係を生じさせず、従前の状態を継続させることが適当と考えられます。 したがって、組織再編成により移転する資産に対する支配が組織再編成後も継続していると認められるものについては、特例として、移転資産の譲渡損益の計上を繰り延べることとされています。 2 組織再編税制の対象 組織再編税制の対象となる「組織再編」は、次のものをいいます。 3 税務上の取扱い 組織再編成においては、資産を移転する法人は、原則(非適格組織再編成)は移転資産の譲渡損益を計上することとされ、特例(適格組織再編成)で移転資産の譲渡損益の計上を繰り延べることとされています。 資産を取得する法人については、原則(非適格組織再編成)は移転資産を「時価」で取得することとなり、特例(適格組織再編成)では移転資産を「簿価」で引き継ぐこととされています。 一方、株主側の取扱いは、非適格組織再編成に該当する場合にはみなし配当が生じることとされ、対価として株式のみが交付されている場合には旧株式の譲渡損益の計上を繰り延べ、株式以外の資産の交付を受ける場合には旧株式の譲渡損益を計上することとされています。 (※) 金銭等の交付がなければ株式譲渡損益なし 4 適格組織再編成 「適格組織再編成」とは、以下の組織再編成をいいます。 ① 企業グループ内の組織再編成 企業グループ内組織再編成は、さらに、100%関係のグループ内で行われるもの(完全支配関係がある場合の組織再編成)と50%超関係のグループ内で行われるもの(支配関係がある場合の組織再編成)に分かれます。 支配関係がある場合の組織再編成については、組織再編成による資産の移転を個別の資産の売買取引と区別する観点から、資産の移転が独立した事業単位の移転であること、組織再編成後も移転した事業が継続されることが要件として必要です。 ② 共同事業を営むための組織再編成 共同事業を営むための組織再編成に該当するかどうかについては、①の要件に加え、組織再編成により1つの法人組織で行うこととした事業が相互に関連性を有するものであること、それぞれの事業の規模が著しく異ならないことなどにより判定するものとされています。 ③ スピンオフ(独立して事業を行う場合の組織再編成) 平成29年度税制改正により創設されたもので、支配株主のない法人の実質的な支配者はその法人そのものであり、その法人自身の分割であるスピンオフについては、単にその法人が2つに分かれるような分割であれば、移転資産に対する支配は継続していることから適格組織再編成として取り扱われることになりました。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 適格要件を満たすものについては、移転資産等に対する支配が継続しているとされ、譲渡損益が繰り延べられますが、適格要件の詳細については次回以降で説明することとします。 5 繰越欠損金と資産に係る含み損の制限 適格合併が行われた場合には、資産移転法人の未処理欠損金を引き継ぐこととされています。ただし、欠損金の利用のみを目的として適格合併が行われることが想定されるため、一定の引継制限が課されています。 適格組織再編成で資産移転法人の帳簿価額で資産の引継ぎをすると、含み損益が資産取得法人に移転するため、含み益資産を譲渡することで含み益を実現させ、資産取得法人の欠損金を使用することができます。したがって、資産移転法人の含み益と資産取得法人の欠損金を相殺させる租税回避を防止するため、資産取得法人の欠損金についても一定の使用制限が課されています。 適格組織再編成により移転する資産は、資産移転法人の帳簿価額で引き継ぐこととされていますが、その資産の含み損の利用を目的とする租税回避を防止する観点から、一定の適格組織再編成を行った法人が移転を受けた資産を譲渡することで含み損を実現した場合には、その損失を損金の額に算入しないという規定が設けられています。 6 租税回避防止規定 組織再編成の形態や方法は複雑かつ多様であり、資産の売買取引を組織再編成による資産の移転とするなど、租税回避の手段として濫用されるおそれがあります。 その防止を目的として、組織再編成に係る包括的な租税回避防止規定が設けられており、組織再編成における資産移転法人(※)又は資産取得法人(※)に係る法人税の負担を不当に減少される結果となると認められるときは、その行為又は計算が否認されることとされています(法法132の2)。 (※) 株主についても所得税、相続税に同様の規定が設けられています。 ◆組織再編成における税務上のポイント◆ 適格組織再編成に該当するかどうかの検討 繰越欠損金の引継制限、使用制限に該当するかどうかの検討 資産の含み損の使用制限に該当するかどうかの検討 組織再編成を利用した租税回避行為に該当すると指摘されるリスクの検討 (了)
相続税の実務問答 【第32回】 「相続人間で相続分の譲渡が行われている場合の相続税の申告」 税理士 梶野 研二 [答] 相続税の申告期限までに遺産分割が調わない場合には、法定相続分の割合で相続財産を取得したものとして、相続税の課税価格を計算して相続税の申告をすることとなります。 この場合、相続人間で相続分の譲渡が行われていた場合には、相続分の譲渡が行われた後の相続分の割合により相続税の課税価格の計算をすることとなります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続分の譲渡 民法に相続分の譲渡について直接規定した条文はありません。しかし、「共同相続人の1人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる」との民法第905条第1項の規定は、共同相続人の1人が、相続開始から遺産分割までの間に、その相続分を譲渡できることを前提としていることから、民法は、遺産分割前の共同相続人の相続分を他の共同相続人又は第三者に譲渡することを認めていると解されます。 他の共同相続人に対して相続分の譲渡がされた場合には、当該譲渡の当事者である共同相続人の相続分が変わるにすぎません。これに対して、共同相続人以外の第三者に相続分が譲渡された場合には、当該第三者が、相続人と同じ地位に立ち、相続財産の管理・遺産分割の手続きにも加わることとなります(新基本法コンメンタール「相続」103頁(木村敦子)・2016年日本評論社)。 2 相続分の譲渡があった場合の相続税法第55条の適用 相続税法第55条は、遺産の全部又は一部が未分割の場合には、未分割財産については、各共同相続人が民法(904条の2を除きます)の規定による相続分に従って未分割財産を取得したものとして相続税の課税価格を計算する旨を定めています。 相続税の申告期限までに遺産分割が行われず、共同相続人間で相続分の譲渡が行われた場合に、各共同相続人が民法(904条の2を除きます)の規定による相続分に従って未分割財産を取得したものとして相続税の課税価格を計算する場合の具体的な計算方法について、①相続分の譲渡が行われた場合であってもそれにかかわらず本来の相続分により計算すべきか、又は②相続分の譲渡が行われた後の相続分により計算すべきか、判断に迷うところです。 この点について、最高裁判所第三小法廷平成5年5月28日判決は、相続税法第55条本文にいう「相続分」には共同相続人間の譲渡に係る相続分が含まれるとした原審判決(平成元年8月30日東京高裁判決)を正当として是認することができるとしました。 この判決により、相続税の申告書を提出する際に、共同相続人間で遺産分割が行われておらず、かつ、共同相続人間で相続分の譲渡が行われていた場合には、相続分の譲渡が行われた後の相続分により、相続税の課税価格の計算を行うことが明らかになりました。 〇昭和62年10月26日東京地裁判決(下線筆者) 3 ご質問の場合 相続税の申告書の提出期限である平成31年3月25日までに、あなた方姉妹4人による遺産分割協議が調わない場合には、相続税法第55条の規定に基づきそれぞれの相続分の割合でお父様の遺産を取得したものとして、相続税の申告を行います。 あなた方姉妹の相続分は、本来、4分の1ずつですが、あなたが妹さん(四女)の相続分(4分の1)を無償で譲り受けた場合には、あなたの相続税法第55条に定める相続分は2分の1(本来の4分の1に妹さんの相続分を加算した割合)となり、妹さん(四女)の相続分はないこととなります。 したがって、あなたが2分の1、二女の方と三女の方が各4分の1の割合でお父様の遺産を取得したものとして、相続税の申告を行うこととなります。 (了)
企業の[電子申告]実務Q&A 【第15回】 「電子申告の利用可能手続と利用可能時間」 SKJ総合税理士事務所 税理士 坂本 真一郎 ●○●○解説○●○● 前回まで、大法人の電子申告の義務化の概要や、今後予定されている電子申告の利便性を向上させるための各種施策について触れてきましたが、今回からは、あらためて電子申告の概要について確認していきたいと思います。 1 電子申告の利用可能手続 (1) e‐Taxで利用できる手続 e‐Tax(国税電子申告・納税システム)で利用できる手続は、国税に関する申告、納税及び申請・届出等の各手続で、具体的には次の手続に利用できます。 (2) eLTAXで利用できる手続 eLTAX(地方税ポータルシステム)で利用できる手続は、地方税に関する申告、納税及び申請・届出等の各手続で、具体的には次の手続に利用できます。 (※ 実際に利用できる手続は地方公共団体ごとに異なります。) なお、電子申告の利用対象者は、各税法等に基づき、申告、納税、申請・届出等の手続を行う必要のある個人納税者及び法人納税者のうち、インターネットを利用できる環境を有し、かつ、電子署名用の電子証明書を保有している方です(納税手続等のみを利用する場合には、電子証明書は不要です)。 また、税理士及び税理士法人等(以下、「税理士等」といいます)の税理士業務を行う方も電子申告を利用することができます。税理士等が納税者の申告等データを作成し送信する場合には、納税者の電子署名を省略し、税理士等の電子署名の付与及び電子証明書の添付のみで送信することができます。 【電子申告で利用可能な手続】 (※1) 復興特別所得税を含み、死亡した方の準確定申告を除きます。 (※2) 相続税申告については、2019年10月以降、一部手続について利用開始予定です。 (※3) 連結法人税・連結地方法人税、復興特別法人税を含みます。 (※4) 個人及び法人ともに手続可能ですが、個人消費税については死亡した方の準確定申告を除きます。 (※5) 2018年12月現在、電子納税に対応している地方自治体は、全国約1,800自治体のうち東京都を含む22ヶ所のみですが、2019年10月より「地方税共通納税システム」が導入される予定で、今後利用可能自治体が大幅に拡大される予定です。 2 電子申告の利用可能時間 (1) e‐Taxの利用可能時間 e‐Taxが利用可能な時間帯は、「確定申告期間中の24時間受付」、「法人税申告書の提出件数が多い5月、8月及び11月の最終土日受付」など、サービス開始以降、順次拡大が図られてきました。 さらに、2019年1月以降は、これまで確定申告期間中のみに実施されていた「24時間受付」が平日(月曜日~金曜日)すべてに拡大され、土日についても毎月の最終土日の受付(8時30分~24時)へと拡大されました。 (2) eLTAXの利用可能時間 eLTAXが利用可能な時間帯についても、「平日夜間の受付時間の拡大」や「特定月の最終土日の受付」など、e‐Taxに対応する形で順次利用可能時間の拡大が図られています。 なお、2019年1月現在の「電子申告の利用可能時間」は以下のとおりです。 (※1) 祝日等の翌稼働日は、8時30分から利用可能となります。 (※2) メンテナンス時間は、毎週月曜日0時~8時30分です。 (了)
企業結合会計を学ぶ 【第11回】 「のれん及び負ののれんの会計処理」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 今回は、のれん及び負ののれんの会計処理について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ のれんの会計処理 1 基本的な会計処理 取得原価が、受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合には、その超過額はのれんとして企業結合会計基準32項に従って会計処理し、下回る場合には、その不足額は負ののれんとして企業結合会計基準33項に従って会計処理する(企業結合会計基準31項、98項)。 のれんの基本的な会計処理等は次のとおりである(企業結合会計基準32項、47項)。 2 のれんの会計処理に関する留意点 のれんの会計処理に関する留意点は次のとおりである(結合分離適用指針76項、380項~382項)。 3 在外子会社株式の取得等により生じたのれんの会計処理 在外子会社株式の取得等により生じたのれんは、在外子会社等の財務諸表項目が外国通貨で表示されている場合には、当該外国通貨で把握し、決算日の為替相場により換算する(結合分離適用指針77-2項)。 当該外国通貨で把握されたのれんの当期償却額については、当該在外子会社等の他の費用と同様に換算する(「外貨建取引等会計処理基準」三、結合分離適用指針382-2項)。 Ⅲ のれんの減損処理 のれんは「固定資産の減損に係る会計基準」の適用対象資産となる(「固定資産の減損に係る会計基準」一、二8)。 企業結合会計基準は、例えば、株式の交換による企業結合のプロセスにおいて、買収対価(発行株式金額)の過大評価や過払いが生じている可能性がある場合に、のれん等が過大に計上される状況が考えられるとし、特に、次の場合には、企業結合年度においても減損の兆候が存在すると判定されるときもあるとしているので、注意が必要である(企業結合会計基準109項、結合分離適用指針77項)。 Ⅳ 負ののれんの会計処理 1 基本的な会計処理 負ののれんが生じると見込まれる場合には、次の会計処理等を行う。ただし、負ののれんが生じると見込まれたときにおける取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回る額に重要性が乏しい場合には、次の処理を行わずに、当該下回る額を当期の利益として処理することができる(企業結合会計基準33項、48項)。 企業結合会計基準111項は、上記の負ののれんの会計処理について、負ののれんが生じると見込まれる場合には、まず、取得企業は、すべての識別可能資産及び負債(企業結合会計基準30項の負債を含む)が把握されているか、また、それらに対する取得原価の配分が適切に行われているかどうかを見直すこととしたとしている。 そして、次に、この見直しを行っても、なお取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回る場合には、当該不足額を発生した事業年度の利益として処理することとしたと説明している。 2 負ののれんの会計処理に関する留意点 負ののれんの会計処理に関する留意点は次のとおりである(結合分離適用指針78項)。 Ⅴ のれんの会計処理に関する公認会計士・監査審査会の指摘 公認会計士・監査審査会の「監査事務所検査結果事例集」(平成30年7月31日)では、のれんに関して、次のように問題となった事例を記載しているので、のれんの会計処理等について注意する。 (了)
企業経営と メンタルアカウンティング ~管理会計で紐解く“ココロの会計”~ 【第11回】 「「よくある話」は本当によくあるのか」 公認会計士 石王丸 香菜子 ・・・(20分後)・・・ *資料* PN社の当期財務データの要約は以下の通りである。 (※) 内訳:前期末棚卸資産13,500+仕入高209,000-当期末棚卸資産12,500 * * * 1 「よくある話」は、実際にはそれほど起こらない どこかで飛行機事故があって、大々的に報道されると、しばらくは飛行機に乗りたくないと思いませんか? 飛行機は毎日世界中を網の目のように飛んでおり、実際に事故が起こる確率は極めて低いのですが、大きなニュースとして連日取り上げられると、事故が起こる確率が高いような気がするものです。 一般に、ある印象的な事がらが、大々的に報道されたり、自分の身近なところで起こったりすると、その後、同様の事がらについて、発生する可能性を高く見積もったり、優先して判断してしまう傾向が生じます。記憶から取り出しやすい事がらを、優先して判断してしまうこのような傾向は、「」と呼ばれます(「ヒューリスティック」とは、意思決定や判断に際し、答えを見つけるために簡便的に経験則や推論を使うことを指します)。 カズノ君は、『勘定合って銭足らず』(利益が計上されているのに、資金が足りないこと)や『黒字倒産』がPN社にも起こるのではないかと心配していますが、これも、こうした事がらが報道などで何度も取り上げられ、記憶から取り出しやすい情報であるために、これらに重きを置いて判断した結果と言えそうです。大半の順調な企業については取り上げられることがないので、連想しにくいのですね(もちろん、『勘定合って銭足らず』や『黒字倒産』が起こることもあるのですが、近年の日本での倒産件数は減少傾向にあり、バブル期並みの水準です)。 第2事業部長によれば、経理部長は綿密に資金繰り表を作成して資金管理しているので、実際には資金ショートを起こすことはなさそうです。しかも、経理部長は、通常の資金繰り管理だけでなく、「PN社の成長のためにCCCの短縮化を図る」ことを目標としているようですね。 では、CCCとはどんな指標なのでしょうか。 2 現金支払から現金回収までのタイムラグを短くする とは、企業が商品や原材料などの仕入代金を支払ってから、商品や製品などの売上代金を回収するまでの期間を指します。 下図を例に、商品仕入から販売代金回収までの流れを考えてみましょう。 この場合、買掛金を支払った25日目(③)から、売掛金を回収するまでの50日目(④)までの期間である25日間(上図の)は、現金を支払ったものの、現金を回収できていない状態と言えます。この期間が、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)です。 CCCは言わば支払から回収までのタイムラグなので、これが短いほど資金に余裕があると言えます。つまり、CCCは短いほうが望ましいのです。 現実には、仕入や販売、現金の支払や回収のタイミングは、取引ごとに異なり、こうした取引が大量に積み重なっていますので、CCCは財務数値から計算することになります。 なお、独特な言い回しですが、図の青い矢印の各期間を「回転期間」と呼びます。例えば、仕入債務(買掛金)を計上してからこれを回収するまでの期間(C)は、「仕入債務回転期間」です。 資料から、PN社のCCCを計算してみましょう。 ※上記は計算例ですので、必ずこの方法でなければならないというわけではありません。例えば、残高について複数時点の平均値を使用すれば、より正確な値を求めることができます。 近年、このCCCの短縮化を重視する企業が増えています。CCCを短縮化できれば、資金が短い期間で手元に戻ってくることになるので、その資金を別の投資機会や研究開発などに早く利用し、企業が成長することができるからです。経理部長が、通常の単なる資金繰り管理だけでなく、CCCの短縮化を目標としているのも、こうした理由からでしょう。 なお、CCCは業種や業態によりかなりばらつきがありますが、通常はプラスです(回収よりも支払が先行している状態です)。しかし、アマゾンやアップルなどはCCCがマイナスであることで知られています。つまり、驚くべきことに、支払よりも先に資金を回収している(!)のですね。 ◆◇◆今回のキーワード◆◇◆ ▷ 記憶から取り出しやすい事がらについて、確率を高く見積もったり、優先して判断したりする傾向のこと。 ▷ 仕入代金支払から販売代金回収までのタイムラグのこと。短いほうが望ましい。 (了)
組織再編時に必要な労務基礎知識 Q&A 【Q14】 会社分割により労働契約はどうなるか 特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ 【A】 分割契約又は分割計画に承継会社が承継する旨の定めがある労働契約は承継される。ただし、異議申出をすることにより、分割契約又は分割計画に承継会社が承継する旨の定めがなくても承継会社へ労働契約が承継されたり、分割契約又は分割計画に承継会社が承継する旨の定めがあっても承継会社へ労働契約が承継されない場合がある。 (※) 本稿では、会社分割により事業を分割する会社を「分割会社」、それを承継する会社(新設分割の場合の新設会社も含む)を「承継会社」という。 分割契約又は分割計画 会社分割をする際、分割会社と承継会社において、吸収分割の場合は分割契約を締結し、新設分割の場合は分割計画を作成するが、そこには会社法に基づく一定の事項を定める必要がある(会社法758条、763条等)。 【(例)吸収分割の場合に分割契約において定める必要がある事項】 上記②の「承継会社が分割により分割会社から承継する権利義務に関する事項」には、承継会社が分割会社から承継する「労働契約」に関する事項が含まれる。このため、分割契約又は分割計画に承継会社が承継する旨の定めがある労働契約は、原則として分割会社から承継会社へ承継されることとなる。 労働契約の承継の例外 分割契約又は分割計画に承継会社が承継する旨の定めがある労働契約は、原則として分割会社から承継会社へ承継されるが、分割契約又は分割計画に承継会社が承継する旨の定めがなくても分割会社から承継会社へ労働契約が承継される場合がある。また、分割契約又は分割計画に承継会社が承継する旨の定めがあっても承継会社に労働契約が承継されない場合がある。 会社分割をする際に労働契約が承継されるか否かは、次の点から判断され、それぞれ次の通りとなる。 上記をまとめると下表の通りとなる。 (了)
中小企業経営者の [老後資金]を構築するポイント 【第10回】 「様々な不動産投資の種類とメリット・デメリット」 税理士法人トゥモローズ 本連載では、中小企業経営者の老後資金の収入源を様々な角度から確認しているが、今回は近年過熱気味となっている不動産投資を取り上げる。 引退を控えている中小企業経営者の中には、1980年代後半からのバブル景気及びその後の崩壊を経験した者も多いことから、不動産投資に対しネガティブな印象を抱いている人も多いかもしれないが、老後資金の運用の1つとしては、不動産投資を無視することはできないであろう。 1 不動産投資の概要 ひと口に「不動産投資」と言っても様々な種類が存在するため、種類ごとにその概要と留意点を確認していく。 ① 区分マンション 今日の不動産投資で入門的な投資方法が区分マンションであろう。区分マンション投資とは、マンションの一室を購入し、賃貸経営を行うという手法である。 特にワンルームマンションは、その価格帯も東京都内であっても2,000万円~3,000万円と手が出しやすく供給数も多い。また、中古ワンルームマンションであれば1,000万円を切るような物件もあり、高い利回りも見込めるであろう。 ② 賃貸アパート 賃貸アパート投資は、土地を多く持つ地主に向く投資手法であろう。土地を一から仕入れその上に建物を建てることを考えると、イニシャルコストが相当高額になり高利回りを期待するのが難しい。 最近は相続税の基礎控除額の引下げなどの影響により、地主の保有する遊休地に賃貸アパートを建てるケースが多いが、立地等によっては空室リスクも高くなるため、相続税の節税のためだけに投資判断することは注意が必要である。 ③ 戸建賃貸 戸建賃貸投資は、上記②の賃貸アパート投資に比べ、立地や土地の形状への依存度が低いというメリットがある。また、入居者はファミリー層であるため、一度入居すればその期間も長くなる傾向にある。ただし一方で、一度空室になると次の入居者が決まりにくいというデメリットもある。 ④ 駐車場経営 駐車場経営も上記②の賃貸アパート投資同様、地主向きの投資手法である。イニシャルコストが低く抑えられ、立地も賃貸アパートに比べ、そこまでは問われない。ただし、固定資産税や相続税等の税負担は重くなる傾向がある。 ⑤ J-REIT J-REITは「不動産投資信託」ともいい、不動産を現物で投資するのではなく、どちらかというと株式投資に近い。現物不動産に比べ、少額から投資ができ、流動性も高いのが特徴である。 一方で、利回りは現物不動産に比べると見劣りし、相続税上の評価も上場株式と同様の評価となるため、税制上のメリットは享受しにくい。 ⑥ 不動産小口化投資 不動産小口化投資とは、都心の1棟ビル等の現物不動産を複数の投資家が共有で所有する投資手法のことである。現在は複数の事業者がこのような投資商品を販売している。 任意組合又は匿名組合の手法で共同出資することとなるが、1口1,000万円などから投資が可能であり、相続時の評価においても現物不動産同様小規模宅地等の特例の適用ができる。ただし、区分マンション投資等に比べると利回りの面で見劣りするだろう。 以上、不動産投資の種類ごとのメリット・デメリットをまとめると、下記の通りである。 2 相続税における不動産評価に係る最新の裁決事例の確認 不動産投資においては、投資不動産が相続税上どのように評価されるのかが投資判断の一要因になるほど重要である。相続税における不動産の評価方法が争点となった最新の裁決事例を最後に確認したい。 貸し付けられている不動産の評価額について納税者と課税当局にて見解が相違し、審査請求に発展する事例が後を絶たないが、本稿で取り上げるのは、貸宅地の評価額を巡って争いになった事例(東京国税不服審判所 平成30年1月4日)である。 本事例では、当初申告において納税者が財産評価基本通達に基づき貸宅地の評価を行い、その後、当該貸宅地を第三者に売却し、その売却価額を時点修正した金額が当初申告における財産評価基本通達に基づく価額よりも下回ったため、更正の請求をした事案である。 審判所の判断としては、当該更正の請求の売却価額は、不特定多数の当事者間において自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額には該当しないとして、納税者の主張を退けた。 裁決事例の要旨は下記の通りである。 (了)
老コンサルタントが出会った 『問題の多い相続』のお話 【第2回】 「二次相続人が複雑!」 ~生前の妻の居宅売却がベストか否か?~ 財務コンサルタント 木山 順三 前回に続いて、二次相続準備がなかなか進まない事例をご紹介します。 読者の皆様なら、どのように対処されるでしょうか。 〔話の背景〕 本件はご本人が私の「相続講演会」に参加され、自分の相続対策が遅れていると自覚し、事前相談に来られたことがきっかけとなりました。 ご本人は高齢(90歳)で、かつ、推定相続人は妻(84歳)、故長女(代襲相続人2人・いずれも成人)、長男、故二男(代襲相続人2人・いずれも未成年者)と、合計6名の複雑な係累でした。 子供たち家族はそれぞれ持ち家に住み、夫婦2人は50年前に購入した自宅及び敷地(330㎡)で生活をしていました。 〔すべてを妻へ相続させたい〕 講演後に書かれた自筆証書遺言の内容は、「今回は妻にすべてを相続させたい。」との意向でした。 とりあえず遺言書をチェックすると、まず形式的には「署名」「捺印」がなく、このままでは完全なる無効です。また内容的にも遺留分侵害に当たり、相続争いを避けるためにも、事前に当家の人間関係状況を把握しなければなりません。 居宅及びその敷地は、既に夫婦間贈与により40%は妻に生前贈与されていました。したがって「配偶者居住権」等の心配はありません(もっとも、これから適用される制度ですが・・・)。 ただし、金融資産に比べて不動産が過大であり、このままでは次の相続の際に問題が残ります。また、当然のことながら遺留分侵害ですので、残される妻と当家関係者の日頃の関係性を聞くと、長男の嫁とは「×」、故二男の嫁とは「〇」、故長女の婿とは「?」とのことでした。 「残された妻の生活が心配だ」ということで、最終的には本人の意向を尊重し、遺留分侵害による争いのおそれを残しながら「遺言書」を作成することになりました。 その時の私からのアドバイスは、①できれば公正証書で作成すること。②意外と「付言事項」が有効となるので、『相続人の心を打つ自分の考え』を切々と述べてくださいというものでした(以前の連載でこんなお話をしたこともありましたね)。 例えば、「遺留分侵害であることは重々わかっているが、妻の将来を案じ、とりあえずすべて妻に相続させたい。妻亡き後は妻の意思に基づき仲良く話し合って相続してほしい。」と。 それからしばらくして急に自宅で倒れられ、救急車で病院に運ばれそのまま急逝された旨の連絡が入りました。 さてさて「遺言書」を作成されていたのかどうか・・・ 〔自筆証書と遺留分侵害への対応〕 結果的には自筆証書遺言を作成されたとのことでした。はたしてうまく書かれたのか、自書・署名・捺印はどうか、心配です(自筆なら事前にチェックしたかった・・・)。 また「遺留分侵害の遺言書」の内容であるので、四十九日等の法要の際に長男から十分に説明してもらい、他の相続人の了承をとっておくことを押念しました。 家裁で「検認」を受けるため夫人(依頼者の妻)と同道し、有効確認。 その後、私の支援のもとに夫人が遺言執行者として相続手続きを行い、幸か不幸か、他の相続人からの異議申立てはありませんでした。 ただし、地方銀行の貸金庫契約の解約手続きを除いては・・・ 〔貸金庫契約には要注意〕 故人の遺言書作成は、高齢につき「すべての財産(含む不動産)は妻〇〇に相続させる。」と簡素に書くように勧めました。 ところがいざ相続手続きに際して、某地方銀行が、自行の貸金庫を遺言執行者(配偶者)が開扉することを拒否しました。すなわち、貸金庫契約は賃貸借契約に当たり、遺産分割までは相続人の準共有となるため、全相続人の同意の下にしか手続きできないというのです。 こちらとしては、民法1013条の遺言執行の妨害行為の禁止事項を持ち出し、またこのようなこともあるかと思い、事前に貸金庫の中身をすべて空にするようアドバイスしていました。当方としては、代襲相続人のうち2人が未成年者で、銀行の言う手続きには「特別代理人の選任」が必要となり、手間がかかります。 したがって銀行には、公証人立会いの上、遺言執行者のみで処理するよう依頼しました。結果的に銀行の顧問弁護士の了解もあり、貸金庫の解約手続きが完了しました。 ここで1つ、私の反省点として、遺言書内に貸金庫契約の解約及び金庫内の蔵置品の取り出しを記載しておくべきでした。すなわち「遺言執行者に貸金庫内の内容物引き渡し請求権を付与する。」旨の記載です。 〔夫人の今後と二次相続対応〕 今後の対応として、夫人も高齢につき、まずは二次相続への対応に注力しなければなりません。 私としては、当家は財産に占める居宅地が過大で、かつ、代襲相続人を含む相続人が多く、まずは元気なうちに居宅売却の上、介護付き老人ホームへ入居することを提案しています。換価することで遺産分割等の相続対応もしやすくなり、今後の老後の生活資金も余裕ができます。また場合により、生前贈与等の節税対策も可能になるからです。 本当は長男との同居が望ましいのですが、嫁との関係や長男の取り分が過大になること、長男自身の自宅の売却問題もあり、実際には難しい状況です。 また残念ながら、相続税での「小規模宅地の特例」の適用は不可です。代襲相続人は適用可かなと思われるのですが、親と同居する代襲相続人も平成30年4月1日以後、家なき子に対する小規模宅地の特例の適用が厳しくなっています。 以上いろいろ勘案すれば、居宅の処理の後で「遺言書」作成することが、事前準備として最良と思い提案していますが、未だ迷っておられる様子です・・・ (了)
《速報解説》 教育資金の一括贈与非課税措置、今年度改正で平成31年4月1日以後取得分からは贈与者死亡時の残額が相続税の課税対象に ~適用前後の税負担に留意~ Profession Journal編集部 平成31年度税制改正では本年3月31日で期限切れを迎える「教育資金の一括贈与非課税措置(措法70の2の2)」及び「結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置(措法70の2の3)」が共に2年延長の上、それぞれ受贈者の所得要件等が追加されることとなるが、特に教育資金の非課税措置については、概要下記のとおり見直し項目が多岐にわたっている。 上記4点のうち最もインパクトの大きい改正は③といえる。これは現行制度において、資金管理契約期間中に贈与者が死亡した場合、その残額は相続税の課税対象とならず、また非課税限度額1,500万円は受贈者ごとに判定されることから、例えば余命の短い祖父や祖母から複数の子や孫へ非課税限度額までの教育資金贈与を一度に行うなど、節税を目的とした利用も可能な制度になっているとの指摘を受け、今年度改正で手当てされたもの(結婚・子育て資金の非課税措置では、贈与者死亡時における残高は相続税の課税対象となっている)。 留意したいのがその適用時期だが、③の改正は、平成31年4月1日以後に贈与者が死亡した場合について適用される。ただし、同日前に信託等により取得した信託受益権等の価額は、管理残額(※)の信託受益権等の価額に含まれない、つまり改正前の取扱いとして課税対象外とされる(H31所得税法等改正法案附則79③)。 (※) 「管理残額」とは、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額のうち、贈与者からその死亡前3年以内に信託等により取得した信託受益権等の価額に対応する金額をいう。 このため、現在この非課税措置の適用を検討中である場合や、すでに適用を受けているものの非課税枠が残っており同じ贈与者からの追加の贈与を検討している場合(国税庁Q&A2-4、2-6)、同様に非課税枠が残っているため異なる贈与者からの新たな贈与を検討している場合(国税庁Q&A2-5)などは、間近に迫る上記適用時期の前後で贈与者死亡時の税負担が異なることになるため、早めの判断が求められよう。 (了) ↓お勧め連載記事↓