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プロフェッションジャーナル No.289が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年10月11日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.289を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/10/11

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第69回】「統計数値が租税法解釈に与える影響(その3)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第69回】 「統計数値が租税法解釈に与える影響(その3)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦   3 サラリーマンマイカー訴訟 統計的視角が租税法の解釈適用に影響を及ぼした例として、いわゆるサラリーマンマイカー訴訟も確認しておきたい。 会計事務所に勤務する給与所得者であるX(原告・控訴人・上告人)は、自家用車(以下「本件自動車」という。)を自損事故により破損させ、修理をすることなくスクラップ業者に3,000円で売却した。Xはかかる売却により、自動車の帳簿価額30万円から売却価額を控除した29万7,000円の譲渡損失が生じたとして、給与所得と損益通算をして確定申告をした。これに対して、税務署長Y(被告・被控訴人・被上告人)は、かかる譲渡損失の金額は給与所得と損益通算をすることはできないとして更正処分を行った。本件は、かかる処分を不服として、Xが提訴したものである。 この事件では、給与所得者であるXにおいて、自家用自動車(以下「マイカー」ともいう。)の譲渡損失について所得税法69条《損益通算》1項に基づく損益通算をし得るか否かが争点とされた。 具体的には次のような争点となる(以下では、主に争点(2)に関する部分を確認する。)。 ここでは、当時の我が国における車の保有割合などにも触れられているので、その辺りに関するXの主張を見ておこう。 すなわち、Xは、「自動車化社会の進行実態と自家用乗用車の果す機能」として、「昭和35年以降、とりわけ現行所得税法が制定された昭和40年以降今日まで、・・・交通手段としての自動車の機能は飛躍的発達をとげ、いわゆる自動車化社会(モータリゼーション)がもたらされた。この事実は以下指摘する統計的数値によっても具体的に明白である。」として、各種数値を挙げつつ次のように論じている。 Xは、上記のような統計数値を用いることで、まず、全国的にマイカーの普及率が高いことを主張する。 そして、「兵庫県統計書(兵庫県編)」を参考に、「登録自動車台数の種類別比較」として、自らの居住する同県におけるマイカーの所有状況を明らかにしている。 また、「交通手段別に見た利用率の推移」として、普及率等のみならず、各交通手段別のうち、自動車の利用率の変化にも着目する。 加えて、「目的別、手段別に見た移動の割合について」として、いかなる目的の為にいかなる交通手段を利用したかという点を統計数値を用いて主張する。ここでは、「金沢都市圏パーソントリップ調査報告書」による数値を参考にしているようである。 要するに、ごく簡潔にXの主張をまとめれば、通勤目的としてマイカーが利用される度合いの高さは各種統計数値より明らかであるということである。一般的に、給与所得者の通勤にとって、マイカーは、鉄道と同等あるいはそれ以上の必要性があるという。 そして、Xにおける本件自動車使用状況は、とりわけ本件自動車を業務及び通勤に使用した割合を走行距離でみるならば、約65パーセントと50パーセントを超えているなどとして、「通勤にXが本件自動車を使用したことは、社会通念から見ても十分に是認せられるべきものである。」とする。 そして、結論として、本件自動車は「収入を得るために用いられる資産」に該当し、損益通算の対象となるとするのである。 もっとも、本件神戸地裁において、本件自家用車は「生活に通常必要な動産に該当する」と判断されたところであり、上記の主張にあるような「収入を得るために用いられる資産」という概念に該当するとは判示されていない。 Xは、給与所得者の保有する有形固定資産について、「生活の用に供する資産」と「収入を得るために用いられる資産」とに分けられると主張した上で、本件自動車は後者に該当するという(予備的主張)。 【図表4:給与所得者の保有する有形固定資産(Xの主張)】 しかしながら、このような解釈を条文から導きだすには、やはり文理上のハードルが高いといわざるを得ず、かような解釈論は結局のところ否定されたのである。 他方で、上記のような主張に意味がなかったかというと必ずしもそのように解する必要はないのではなかろうか。 ここで、神戸地裁が次のように述べているところを確認しておきたい。 このように、判決においても現在における自家用自動車の普及状況が考慮の対象とされていることを踏まえれば、Xの参考とした数値が誤りであったことから解釈が否定されたというわけではないともいえよう。 判決は、現在における自家用自動車の普及状況がどのような状況であったかという点について触れておらず、この点については必ずしも明らかではないものの、普及状況が低いと判断していないであろうことは、当該自家用車が「生活に通常必要な動産」と認定されたことからも明らかである。 すなわち、ここでは、統計数値を租税法解釈にいかに用いるかが判断の分水嶺となったといえるのではなかろうか。 この点は、上記2 総評サラリーマン税金訴訟最高裁判決(前回参照)において、「上告人〔筆者注:納税者〕らは、もっぱら、そのいうところの昭和46年の課税最低限がいわゆる総評理論生計費を下まわることを主張するにすぎないが、右総評理論生計費は日本労働組合総評議会(総評)にとっての望ましい生活水準ないしは将来の達成目標にほかならず、これをもって『健康で文化的な最低限度の生活』を維持するための生計費の基準とすることができない」と示されているところと異なるといえよう。 総評サラリーマン税金訴訟最高裁判決においては、納税者らが主張の基礎とした統計数値は基準たり得ないとして否定されているわけであるが、本件においては、統計数値を用いていかに租税法解釈を行うべきか否かが争われたものとも整理できるように思われる。 (もっとも、本件事案は控訴され、大阪高裁昭和63年9月27日判決(高民集41巻3号117頁)においては、当該自家用車が「生活に通常必要でない資産」に該当することから損益通算が制限されると判断され、上告審最高裁平成2年3月23日第二小法廷判決(集民159号339頁)は、控訴審判断を維持している。 )   結びに代えて 本稿では、統計数値が租税法解釈に与える影響を考察するに当たり、大島訴訟、総評サラリーマン税金訴訟、サラリーマンマイカー訴訟を取り上げたが、ここで取り上げきることのできなかった事案も数多い。 例えば、いわゆる藤沢メガネ訴訟などもその一例である。 同事件は、近視及び乱視矯正用の眼鏡及びコンタクトレンズの購入費用並びに右購入に当たり医師がした検眼費用は、所得税法73条《医療費控除》の対象とならないとされた事例であるが、第一審横浜地裁平成元年6月28日判決(行集40巻7号814頁)は、「眼鏡等を装用している者が4,000万人にも昇る」ことや「わが国で多くの者が眼鏡店における検眼により眼鏡等を装用し、しかもこれが医療行為として規制されずに容認されていたという事情」などを認定し、眼鏡の購入費用等の医療費控除該当性を否定している。 ここでは、メガネの装着が社会的に一般的であるという統計的視角を裁判所が採用したといってもよいであろう。 また、実務的にも争いの生じやすい不相当に高額な役員報酬該当性の判断においても、統計数値は極めて重要な判断基準となる。 すなわち、「不相当に高額」であるか否かについては、当該役員の職務の内容や法人の利益等を勘案するのみならず、同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する支給の状況等が加味されるわけであるが、実務上、かかる類似法人での役員報酬の支給状況については様々な統計数値が存在しているところである。 なお、この点に関し、東京地裁平成28年4月22日判決(税資266号順号12849)は、「一般に公表された統計等により、法人の規模や業務に応じた役員報酬ないし役員給与の傾向ないし概要を把握することは可能であることが認められるところ、このことからすれば、同事項についても入手可能な資料等から一定程度の予測は可能であるというべき」であるとして、法人税法34条《役員給与の損金不算入》2項の委任をうけた同法施行令70条《過大な役員給与の額》の規定は、「法律により委任された課税要件を規定したものとして一般的に是認し得る程度に具体的で客観的なものであるというべきである。」などと判示している。 租税法は、課税の公平を実現するために、あえて「不確定概念」と呼ばれる概念を用いていることがあるが、「一般」や「通常」、「相当」というような不確定概念の解釈においては、その客観的裏付けとして統計数値を用いることがある。 こうした局面において、総評サラリーマン税金訴訟のように、いわば自己の解釈に都合のいい統計数値を用いることが認められないことはいうまでもないが、サラリーマンマイカー訴訟のように、統計数値の内容こそ正しくとも、その数値を用いていかに合理的な租税法解釈を行うべきかについては慎重な判断が求められることを指摘することができよう。 このように統計数値により検討される概念についての解釈適用論は、併せて「社会通念」の所在を探る旅であることもある。すなわち、不確定概念を社会通念で理解する際に、統計数値が用いられることもあり得よう。 次回からは、「社会通念」が租税法解釈に及ぼす影響について検討してみたい。 (了)

#No. 289(掲載号)
#酒井 克彦
2018/10/11

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第58回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第58回】   公認会計士 佐藤 信祐   《第9章》 平成22年度税制改正 1 概要 平成21年7月に「資本に関係する取引等に係る税制についての勉強会 論点とりまとめ(資本に関係する取引等に係る税制についての勉強会)」が公表された。本報告書は、グループ法人の一体的運営が進展している状況を踏まえ、実態に即した課税を実現できるよう、税制のあり方について検討するために作成されたものである。  これに伴い、平成22年度税制改正では、グループ法人税制が導入された。グループ法人税制と言いながらも、組織再編税制や連結納税制度の見直しも含まれているため、グループ法人税制を定義づけることは難しい。一般的に言われているグループ法人税制は、平成22年度税制改正で見直された「資本に関係する取引等に係る税制」を包括して表現されることが多い。 平成22年度税制改正では、①100%グループ内の法人間の取引等、②中小企業向け特例措置の大法人の100%子法人に対する適用、③連結納税制度、④清算所得課税の廃止、⑤残余財産確定の場合の欠損金の引継ぎ、⑥組織再編税制の見直し、⑦みなし配当の生ずる取引に課する課税の適正化が、主要な改正事項として挙げられる。このうち、本稿では、①、④~⑦についてのみ解説を行うこととする。 後述するように、平成22年度税制改正は、組織再編税制を大きく変えた改正であったということが言える。その後、組織再編税制を大きく変えた改正は、平成29年度税制改正である。そのため、本連載では、平成22年度から平成28年度までの税制改正とその間に公表された財務省、国税庁、その他税務専門家の意見について解説したうえで、平成29年度以降の税制改正について触れていくこととする。   2 100%グループ内の法人間の取引等 (1) 総論 平成22年度税制改正では、①100%グループ内における譲渡損益の繰延べについての規定が導入されるとともに、②100%グループ内における非適格株式交換・移転につき、時価評価の対象から除外、③100%グループ内の寄附金に対する受贈益の益金不算入の導入、④適格現物分配の導入、⑤負債利子を控除せずに、受取配当等の全額を益金不算入、⑥株式の発行法人に対する譲渡について、譲渡損益の対象から除外することが、それぞれ導入された。さらに、上記①に伴い、適格事後設立の制度が廃止されている。 これらの制度が導入された趣旨として、『平成22年版改正税法のすべて』189頁では、 と解説されている。 このように、グループ法人税制も、組織再編税制と同様に、資産に対する支配が継続しているという点を重視した制度であるということが分かる。 グループ法人税制が100%グループのみを対象としていることから、1%だけ外したらどうなるのかという議論がある。実際に、グループ法人税制外しについては、否認事例が公表されている(※)。そのため、立法論としては、90%、80%にまで広げていくことにより、公平な課税が行えるようにすべきであろう。 (※) 「“グループ法人税制外し”に132条が適用」T&Amaster663号7頁(平成28年)、「『取得条項付き』の自社株を総務経理部長に第三者割当増資」T&Amaster668号4-7頁(平成28年)参照。 しかしながら、90%、80%にまでその対象を広げていくと、組織再編税制、連結納税制度も含めて、かなり煩雑な制度になってしまう。そのため、「資本に関係する取引等に係る税制」では、中長期的課題と位置付けている。そうは言っても、平成29年度税制改正において、その対象に含めなかったことを考えると、90%、80%にまでその対象を広げていくのは、かなり先の話になると思われる。 なお、次回解説する予定であるが、平成22年度税制改正で清算所得課税が廃止され、残余財産確定の場合の欠損金の引継ぎが導入された。これに伴い、繰延譲渡損益がある場合において、100%子会社を清算したときに、譲渡損益を実現させるべきかどうかが問題となる。 この点につき、『平成22年版改正税法のすべて』199頁では、 と解説されており、同書200頁では、 と解説されている。 このように、立法論としては、繰延譲渡損益がある場合には、100%子会社を清算したとしても、譲渡損益を実現させない制度の方が望ましいにもかかわらず、譲渡損益を実現させる制度になっていることから、100%子会社を吸収合併した場合と100%子会社を清算した場合とで、必ずしも均衡の取れた制度になっていないという問題がある。そのため、今後の税制改正により、上記の点について見直すべきであると考えられる。 (2) 適格現物分配 『平成22年版改正税法のすべて』211頁では、①適格現物分配における完全支配関係の判定が、譲渡法人側に課税の繰延べポジションが残らないことから、現物分配の直前のみの完全支配関係のみを要求していること、②実例やニーズがないことから、事業の移転を前提としておらず、単なる資産の分配を前提としていること、③金銭とそれ以外の資産が分配された場合には、金銭の分配と現物分配という別々の取引が行われたとみなすこと、がそれぞれ明らかにされている。 このうち、①の内容については、平成29年度税制改正にも影響を与え、100%親会社に対する分割型分割を行った場合には、分割の直前において完全支配関係が成立していれば100%グループ内の分割に該当し、分割後の完全支配関係の継続は要求されないことになった。 *   *   * 次回では、平成22年度税制改正のうち、清算所得課税の廃止、残余財産確定の場合の欠損金の引継ぎについて触れていく予定である。 (了)

#No. 289(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/10/11

外資系企業の税務Q&A 【第2回】「米国親会社が日本子会社の株式を譲渡した場合における課税関係(不動産保有あり)」

外資系企業の税務Q&A 【第2回】 「米国親会社が日本子会社の株式を譲渡した場合における課税関係(不動産保有あり)」   公認会計士・税理士・米国公認会計士 中島 崇賢   Q 当社は米国法人です。世界各国に子会社があり、日本にも100%子会社を有しています。今般、事業上の理由から、日本子会社の株式の1%を同一グループ内の英国法人に売却することになりました。 今回の売却に関して、当社(米国法人)の日本における税務上の留意点について教えてください。 なお、当社と日本子会社の状況は下記のとおりです。   A 貴社(米国法人)による日本子会社株式の譲渡は、日本の法人税法上、不動産関連法人株式の譲渡に該当し、譲渡益が発生する場合は、法人税が課されます。日米租税条約上も、不動産関連法人株式の譲渡益については、源泉地国(本件においては日本)における課税が規定されているため、日本における課税は免除されません。   解 説 1 はじめに グローバル企業グループにおいて、戦略上の理由から、日本子会社株式の一部についてグループ内で譲渡されることがある。 日本子会社が工場を建設または購入した場合等には、日本子会社の株式が気づかないうちに不動産関連法人株式に該当している可能性がある。 グループ内で譲渡する場合、第三者への売却ではないことから、外国親会社と日本子会社の双方において、日本における課税関係の検討等が十分に行われないまま実行されているケースが見受けられるので留意が必要である。   2 法人税法上の取扱い 2-1 概要 日本の法人税法上、日本にPEを有しない外国法人は、一定の国内源泉所得のみが課税対象となる。 日本にPEを有しない外国法人が内国法人の株式を譲渡したことにより生ずる所得については、事業譲渡類似株式の譲渡による所得、不動産関連法人株式の譲渡による所得、買集めにより取得した株式の譲渡による所得といった一定のものに限って課税対象とされる。 今回は、買集めにより取得した株式の譲渡には明らかに該当しないため、以下では、事業譲渡類似株式の譲渡または不動産関連法人株式の譲渡に該当するかについて検討する。 2-2 事業譲渡類似株式の譲渡に該当するか 事業譲渡類似株式の譲渡とは、次の(1)(2)の要件に該当する株式の譲渡をいう(法法138①三、法令178①四ロ・⑥)。 (注1) 特殊関係株主等とは、内国法人の株主等およびその株主等の同族関係者その他これに準ずる関係のある者をいう(法令178④)。 (注2) 「5%以上譲渡したかどうか」の判定においては、譲渡事業年度の中途においてその内国法人が増資等を行い発行済株式数の変動があった場合でも、その譲渡事業年度において最初にその株式を譲渡した直前のその発行済株式の総数に基づいて計算することになる(法基通20-2-9)ので、留意が必要である。 すなわち、内国法人の特殊関係株主等のグループが、過去3年以内のいずれかの時において持株割合が25%以上となっていた内国法人の株式を1事業年度中に5%以上譲渡した場合に、その特殊関係株主等のグループに含まれている外国法人の譲渡した株式等について、国内源泉所得として課税対象とされることになる。 今回のケースでは1%しか譲渡していないため、上記2つの要件のうち、譲渡株数要件を満たさない。よって、事業譲渡類似株式の譲渡には該当しない。 2-3 不動産関連法人株式の譲渡に該当するか ▷不動産関連法人とは 不動産関連法人とは、その株式の譲渡の日から起算して365日前の日からその譲渡の直前の時までの間のいずれかの時において、その有する資産の価額の総額のうちに次に掲げる資産の価額の合計額の占める割合が50%以上である法人をいう(法令178⑧)。 平成30年度税制改正において、BEPSプロジェクトの最終報告書やBEPS防止措置実施条約等の対応を踏まえて、不動産関連法人の判定時期について、同趣旨の見直しが行われている。具体的には、不動産関連法人に該当するかどうかの判定が、「譲渡時点」から「株式の譲渡の日から起算して365日前の日からその譲渡の直前の時までの間のいずれかの時」に変更されている。 今回のケースでは、日本子会社の総資産の価額に占める土地・建物の価額の割合は50%以上であるため、当該日本子会社は不動産関連法人に該当する。 ▷課税対象となる譲渡の範囲 不動産関連法人株式の譲渡の所得のすべてが課税対象となるわけではない。外国法人の有する不動産関連法人株式の譲渡の所得のうち、次に掲げる譲渡による所得に限り課税対象となる(法令178⑨)。 (注1) 「特殊関係株主等」とは、次の者をいう(法令178⑩)。 ① 不動産関連法人の一の株主等 ② ①の一の株主等の同族関係者その他これに準ずる関係にある者 ③ ①の一の株主等が締結している組合契約に係る組合財産である不動産関連株式につき、その株主等に該当することとなる者 (注2) 所有割合の判定は、その譲渡の日の属する事業年度開始の日の前日に行うこととされている(法令178⑨)。 今回のケースでは、日本子会社株式の譲渡は、上記「② 上場株式等以外の場合」に該当するため、日本において課税対象となる不動産関連法人株式の譲渡に該当する。したがって、譲渡益が発生する場合は、日本において法人税が課されることとなる。 PEを有しない外国法人が、不動産関連法人株式の譲渡等に係る国内源泉所得(法法141二)を有する場合には、事業年度終了の日の翌日から2月以内に法人税申告書を提出しなければならない(法法144の6②)。ただし、当該国内源泉所得が、租税条約の規定により法人税を課さないこととされる場合は、法人税申告書の提出は必要ない(法法144の6②ただし書)。 納税地については、PEを有しない外国法人で、日本国内にある不動産等の貸付けによる対価を受けないものは、下記のとおりとなる(法法17、法令16)。 また、国内に事務所等を有しない外国法人が、納税申告書を提出する必要があるときは、納税手続きを代行させるため、納税管理人を選任し、所轄する税務署長に届け出る必要がある(通則法117)。 納税地の選択は、基本的に、外国法人にとって利便性のよい場所を選べばよい。したがって、貴社の場合は、納税管理人の住所等を納税地とすることで問題ないと考えられる。   3 日米租税条約上の取扱い 租税条約が国内法と異なる定めをしている場合は、租税条約の定めが優先して適用される。 日米租税条約においては、株式の譲渡益のうち次の(1)(2)に該当するものを除き、譲渡者(本件では貴社)が居住者とされる締約国(本件では米国)のみで租税を課すことができるとされている(日米租税条約13②③⑦)。 今回のケースでは、日本子会社株式の譲渡は上記の(1)に該当する。したがって、当該株式譲渡に係る譲渡益は、日本で課税される。 貴社は、事業年度終了の日の翌日から2月以内に法人税申告書を提出する必要がある。   4 まとめ 今回のケースでは、米国親会社による日本子会社株式の譲渡について、日本の法人税法上、不動産関連株式の譲渡に該当し課税対象となり、日米租税条約上も源泉地国における課税が規定されているため、日本において課税される。 ただし、前提が変われば、課税関係も変わるため、外国親会社が日本子会社の株式を譲渡する際には、日本における課税関係について事前に十分に検討することが望まれる。   (了)

#No. 289(掲載号)
#中島 崇賢
2018/10/11

企業の[電子申告]実務Q&A 【第6回】「自社利用ソフトに電子申告未対応の別表がある場合の対応」

企業の[電子申告]実務Q&A 【第6回】 「自社利用ソフトに電子申告未対応の別表がある場合の対応」   SKJ総合税理士事務所 税理士 坂本 真一郎   ●○●○解説○●○● (1) 電子申告における添付書類の提出方法 電子申告の義務化の対象法人は、申告書だけではなく、法人税法等において添付すべきこととされている書類も含めて、e‐Taxにより提出する必要があります。 したがって、使用している税務申告ソフトで対応していない別表がある場合、こうした別表については国税庁が提供しているe‐Taxソフトを利用するなどして提出する必要があります。 なお、法人税の各種別表等については毎年の税制改正により様式が変更されるものも多く、各法人が申告する時期までにe‐Taxシステム側で新様式の受付準備が間に合わない場合があり、このような場合には、例外的に、e‐Taxにより提出できない当該別表等についてイメージデータ(PDF形式)による提出が認められることになるでしょう(注1)。 (2) 添付書類のイメージデータによる提出 2016年4月以降(一部手続については2017年1月以降)、e‐Taxで申告、申請・届出等を行う場合、別途郵送等で書面により提出する必要がある添付書類について、書面による提出に代えて、イメージデータ(PDF形式)により提出することができるようになりました。 イメージデータとして送信できる添付書類は、出資関係図や登記事項証明書など様々ですが、手続ごとの具体的な種類については、「イメージデータにより提出可能な添付書類(e‐Tax HP)」をご確認ください。 なお、「申告書」、「申請・届出書」及び「イメージデータによる提出の対象とならない添付書類」については、法令上イメージデータによる提出が認められないため、イメージデータで提出した場合、その提出は効力を有しないこととなります。この場合、電子申告義務化後であれば、改めてe‐Taxによる電子データ(XML形式又はXBRL形式(注2))の送信が必要となり、再送信した日が文書収受日となりますので、注意が必要です。 例えば、法人税申告手続の場合、申告書自体はもちろんのこと、電子データ(XML形式又はXBRL形式)により提出が可能な勘定科目内訳明細書や財務諸表といった添付書類は、イメージデータによる提出の対象となりませんので、注意してください。 また、これまで書面による申告時に、参考資料として法人税申告書に添付していた書類で法人税法等において提出義務の定めがない書類(例えば、銀行預金残高証明書や棚卸関係資料など)については、国税庁としては「イメージデータにより提出可能な添付書類」には該当しないとの認識であることから、当該参考資料をイメージデータで提出した場合には有効な書類として取り扱われない可能性があります(注1)。 (注1) イメージデータによる提出の対象とならない別表等や参考資料等をイメージデータで提出する場合には、原則として、その提出は効力を有しないこととなりますので、必ず提出前に所轄税務署にご相談ください。 (注2) XML(eXtensible Markup Language)とは、情報の内容にタグを付加して構造的に記述し、コンピュータ処理をしやすくするコンピュータ言語。  XBRL(eXtensible Business Reporting Language)とは、XMLをベースとして開発され、財務情報等を効率的に作成・流通・利用できるよう、国際的に標準化されたコンピュータ言語。 そのほか、添付書類をメージデータで提出する場合の主な要件をまとめると、下表のとおりとなります。 【イメージデータによる提出対象書類と主な要件】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (注1) 手続ごとの具体的な種類については「イメージデータにより提出可能な添付書類(e‐Tax HP)」をご確認ください。 (注2) 2019年1月以降、1回当たりの送信容量が最大8MBに拡大される予定です。 (注3) 2018年4月以降、添付書類をイメージデータで提出した場合には原本の保存が不要となりました。 (注4) イメージデータによる提出の対象とならない書類をイメージデータで送信した場合、その送信は効力を有しないこととなります。この場合、改めてe‐Taxによる電子データの送信等が必要となり、再送信等の日が文書収受日となります。 (了)

#No. 289(掲載号)
#坂本 真一郎
2018/10/11

〈平成30年度改正対応〉賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の適用上の留意点Q&A 【Q11】「比較教育訓練費等に関する調整計算」

〈平成30年度改正対応〉 賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の 適用上の留意点Q&A 【Q11】 「比較教育訓練費等に関する調整計算」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   [Q11] 平成30年度の税制改正によって、組織再編を行った場合の比較教育訓練費及び中小企業比較教育訓練費の調整計算はどのように定められたのでしょうか。   [A11] 調整計算の方法については、「教育訓練費基準日」及び「教育訓練費未経過法人」並びに「教育訓練費の額」について、「基準日」及び「未経過法人」並びに「給与等支給額」と読み替えた上で、比較雇用者給与等支給額に関する調整計算を準用しています。 【解説】 (1) 調整計算の概要 比較教育訓練費及び中小企業比較教育訓練費(以下「比較教育訓練費等」という)の調整計算に関しては、基本的には比較雇用者給与等支給額に関する調整計算の規定を読み替えて適用することとされている。 具体的には、以下のような読み替えを行うことによって計算することとなる(措令27の12の5⑳㉑)。 これを踏まえ、比較雇用者給与等支給額に関する調整計算(【Q10】(1)~(4)を参照)に関する定めを読み替えて計算をすることとなる。 (2) 用語の意義 ① 教育訓練費未経過法人 当該適用年度開始の日において、その設立の日の翌日以後2年(中小企業比較教育訓練費の適用を受けようとする法人にあっては、1年)を経過していない法人をいう(措令27の12の5⑳)。 ② 教育訓練費基準日 以下のいずれか早い日をいう(措令27の12の5⑳)。 (※) 当該設立の日から当該合併、分割、現物出資又は現物分配の日の前日までの期間に係る給与等支給額が零である場合に限る。   (了)

#No. 289(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2018/10/11

金融・投資商品の税務Q&A 【Q39】「日本国外で支払を受ける上場外国株式の配当に係る申告の要否」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q39】 「日本国外で支払を受ける上場外国株式の配当に係る申告の要否」   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子   ●○ 検 討 ○● 1 配当に係る源泉徴収 国外で発行された株式の配当で国外で支払われるものについては、国内における支払の取扱者を通じてその交付を受ける場合、交付の際に支払を受けるべき金額(外国所得税が課されている場合は控除後の金額)に対し日本で(当該支払の取扱者により)源泉徴収がなされます。 一方、株式の配当を国内における支払の取扱者を通じないで受け取る場合(すなわち国外で直接受け取る場合)、配当の金額に対して日本の源泉税は課されません。   2 申告の要否及び課税方式 ① 申告の要否 外国株式(上場・非上場問わず)の配当金で、日本で支払の取扱者による源泉徴収がなされているものについては、配当が少額配当(年間10万円以下)に該当する場合、当該配当については申告不要とすることができます。また、上場外国株式の配当金で、日本で支払の取扱者による源泉徴収がされているものについては、配当の金額にかかわらず、申告不要とすることができます。 一方、源泉徴収がなされていない配当については、上記の申告不要の規定の適用はなく、原則として申告が必要となります(※)。 (※) 給与所得者の場合、給与等の金額が2,000万円以下であり、かつ、給与所得以外の所得(2つ以上の会社から給与を受けている場合には従たる給与を含む)の合計額が20万円以下である場合、そもそも確定申告を行う義務はありませんので、その場合は配当について申告する必要はありません。また、年金受給者で、公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下であり、かつ、公的年金等以外の所得の合計額が20万円以下である場合も同様です。 ② 課税方式 株式の配当は、原則として、総合課税の配当所得として課税されます。外国株式の配当金については、配当控除の適用を受けることはできません。 上場株式等の場合は、上記の総合課税に代えて、上場株式等の配当所得等として申告分離課税20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)を選択することも可能です(その場合、上場株式等に係る一定の譲渡損失との損益通算等が可能です)。上場株式等が外国法人発行株式の場合も、申告分離課税の適用が可能です。 配当所得として収入金額に計上すべき金額は、外貨建の配当の金額をその収入すべき日(原則として配当等の効力が発生する日)におけるTTMにより円換算した金額となります。   3 本件へのあてはめ 本件の場合、外国証券会社の国外口座で配当の支払を受けるということですので、配当の金額に対して日本の源泉税は課されません。 日本での源泉徴収がなされないため、少額配当や上場株式等の配当に係る申告不要制度の適用はなく、(確定申告の必要がない個人(上記(※)参照)である場合を除き)原則として申告が必要になります。 おたずねのケースでは、給与等が2,000万円を超える確定申告の必要がある個人ということですので、当該配当もあわせて申告する必要があります。 本件は、上場株式等に該当しますので、配当所得として総合課税の対象とするか、上場株式等の配当所得等として申告分離課税(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)が適用されます。   (了)

#No. 289(掲載号)
#箱田 晶子
2018/10/11

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第41回】「双輝汽船事件」~最判平成19年9月28日(民集61巻6号2486頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第41回】 「双輝汽船事件」 ~最判平成19年9月28日(民集61巻6号2486頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 289(掲載号)
#菊田 雅裕
2018/10/11

M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務-財務・税務編- 【第11回】「投融資の分析(その1)」

M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -財務・税務編-   公認会計士・公認不正検査士 松澤 公貴   ←(前回) | (次回)→   第4節 投融資の分析 【第11回】 「投融資の分析(その1)」   〔分析の対象となる主な勘定科目〕   ▷中小企業の保有する投資その他の資産 日本の中小企業が貸借対照表に計上している投資その他の資産の金額規模は下表のとおりであり、1社当たりの帳簿価額は32百万円で総資産全体の10%ほどを占めている。当然のことながら、貸借対照表上の投資その他の資産の水準は業種や個別企業のおかれている状況によって異なる。 ◆平成28年における主要業種別投資その他の資産の水準(単位:百万円) ※クリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典:中小企業庁「中小企業実態基本調査(平成28年確報)」(調査対象母集団全1,485,107社)から筆者作成) 今回及び次回にかけて、投融資のうち主要な項目において実施すべき調査のポイント及び評価に関連するトピックスをいくつか概説する。   ▷有価証券等のデューデリジェンスにおける主な調査手続 金融商品取引法第2条第1項及び第2項では、有価証券を、株式、社債・国債、投資信託などと具体例を挙げて限定列挙する形で定義している。会計上は、同項で定義されている有価証券以外のものであっても、国内CD(譲渡性預金)のように有価証券として取り扱うことが適当と認められるものについては、有価証券として取り扱われる。 また、同項で定義されている有価証券であっても、会計上、有価証券として取り扱うことが適当であるとは認められないものについては、有価証券として取り扱われない。これには、信託受益権(金融商品取引法第2条第2項第1号及び第2号に該当するものに限る)が該当する。ただし、信託受益権が優先劣後等のように質的に分割されており、信託受益権の保有者が複数である場合など、有価証券とみなして取り扱われるものは、結果的に有価証券として取り扱うこととなる。 対象会社は、余剰資金の運用やトレーディング取引、株式持合い、取引関係の維持など、何らかの有価証券を保有している場合がある。金融商品会計基準では、有価証券に対する投資活動の成果は、対象会社の保有目的によって異なると考えられるため、有価証券を保有目的に応じて、「A. 売買目的有価証券」、「B. 満期保有目的の債券」、「C. 子会社株式・関連会社株式」、及び「D. その他有価証券」に分類し、保有目的ごとに異なる会計処理及び評価を指示している。 ◆保有目的と会計処理のイメージ (出典:松澤綜合会計事務所プレゼンテーション資料) 上記のとおり、通常、中小企業を想定した対象会社においては、決算日の時価又は取得原価等にて評価がなされているであろうことから、実態純資産の分析においては、これを全て、調査基準日における時価又は時価相当額にて評価する必要がある。例えば、時価のない株式においての時価相当額は、発行会社の貸借対照表をベースに、1株当たりの純資産額を基礎として持株数を乗じることで計算することになる。   ▷貸付金のデューデリジェンスにおける主な調査手続 貸付金とは、取引先、親会社・子会社などの関係会社、株主・役員・従業員などの企業内部の者などに金銭を貸し付けた場合に発生する金銭債権である。対象会社となる中小企業の多くは、貸付金は、契約上の期間ではなく、決算日を基準に1年以内に返済期日が到来するものを短期貸付金(流動資産)、1年以内に返済されないものを長期貸付金(固定資産)として貸借対照表上分類して表示されている。 会社は営利を目的とするので、貸付金が発生した場合、通常利息を徴収することになるが、無利息や低利での貸付けには税務リスクがあるため、貸付金と併せて検討する必要がある。 (了)

#No. 289(掲載号)
#松澤 公貴
2018/10/11

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第77回】株式会社アクトコール「第三者委員会調査報告書(平成30年8月10日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第77回】 株式会社アクトコール 「第三者委員会調査報告書(平成30年8月10日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【第三者調査委員会の概要】   【株式会社アクトコールの概要】 株式会社アクトコール(以下「アクトコール」と略称する)は、2005(平成17)年1月設立。住生活関連総合アウトソーシング事業、決済ソリューション事業、不動産総合ソリューション事業などを主たる事業とする。連結売上高4,308百万円、連結経常利益312百万円、従業員数205名(数字は、いずれも2017年11月期)。本店所在地は東京都新宿区。東証マザーズ上場。   【調査報告書の概要】 1 調査に至る経緯 アクトコールは、平成30年11月期第2四半期にかかる会計監査の過程において、同社の会計監査人である、ひので監査法人から、アクトコールグループの不動産総合ソリューション事業における不動産売買及び不動産フランチャイズ権販売の2つの取引について、背後にアクトコールの代表取締役平井俊広氏(以下「平井社長」と略称する)又は平井社長の関連法人からの資金提供が存在することによる売上の実在性に疑義を生じさせる事実が発見され、かかる会計処理の前提となる事実の調査が必要であるとの指摘を受けた。 アクトコールは、本指摘を受けて、客観的かつ専門的な見地から、会計処理に疑義のある取引等について、独立性を確保した調査委員会により厳正かつ徹底した調査を行い、事実関係を正確に把握して問題点を解明する必要があると判断したことから、平成30年7月10日付で、アクトコールと利害関係を有しない外部の専門家から構成される第三者委員会を設置した。 2 不適切な売上処理と第三者委員会による評価 ひので監査法人から「実質的にはアクトコールのグループ内取引」ではないかとの疑義の指摘に対し、第三者委員会は、以下の3件の取引について、取引内容を検討し、会計処理の訂正が妥当であると報告している。 (1) 大阪市西区に所在する土地の売買取引 アクトコールが、X社に1億8,000万円で売却した土地を、その後、平井社長の実兄が代表取締役を務める有限会社平井物産が2億3,600万円で購入した取引について、第三者委員会は、次に掲げる理由により、平井社長及びアクトコールによる平井物産の実質的支配が強く推認されると判断した。 そして、第三者委員会は、当該取引は会計上、アクトコールの子会社であるエフォートによる実質的な買戻しであると評価できることから、アクトコールの連結財務諸表において、平成29年11月期第2四半期に計上されたX社に対する不動産の売却による売上は、取り消すべきであると結論づけた。 (2) Y社による不動産フランチャイズ権取得にかかる取引 Y社が、BB社の管理するフランチャイズ契約取得に伴い、アクトコールの連結子会社株主であり、BB社の総代理店である株式会社kidding(以下「kidding」と略称する)が受領した販売手数料約3,400万円について、第三者委員会は次の事実を指摘した。 そして、こうした取引関係及び資金移動から、本取引は、アクトコールの子会社であるエフォート及び平井社長がY社に対し、フランチャイズ契約フィーの大半を融資することを通じて、資金を循環させてkiddingに販売手数料を生じさせているものであることから、会計上は、アクトコールの子会社間における間接的な資金取引であると評価できるため、販売手数料について、売上を取り消すべきであると結論づけた。 (3) 平成24年11月期のキャンペーンにかかるZ社との取引 Z社は、平成19年9月、アクトコールとの間で、Z社が運営するサービスの会員に対してアクトコールが電話応対業務、緊急駆けつけサービス及び健康相談を提供する業務委託契約を締結した。 アクトコールは、Z社に対して、平成24年1月期において、上記の業務委託契約にかかるアクトコールの業務委託料を増加させるキャンペーンを実施することを要請した。これを受けて、Z社は、平成23年12月から平成24年7月にかけて、休止会員に対しても、期間限定でサービスを無料提供するキャンペーンを実施した。 一方、平成23年から平成24年当時、平井物産とZ社は、業務委託契約を締結しており、平井物産が運営する会員制クラブの会員に対してZ社が自身の有するコンテンツを利用できるサービスを提供していたが、平井物産は、当該契約期間中、会員制クラブの運営は行っていなかった。また、平井社長は、平井物産との間で、複数回にわたり、金銭消費貸借契約を締結して、約2,400万円の金員を出捐し、当該金員は、業務委託契約の対価として、平井物産からZ社に支払われていた。 第三者委員会は、こうした取引関係及び資金移動から、本取引は、アクトコールの子会社である平井物産がZ社を通じ、資金を循環させてアクトコールの業務委託料を生じさせているものであることから、会計上は、アクトコールの子会社である平井物産とアクトコールとの間の間接的な資金取引に相当するものであると評価できるため、営業協力(バーター取引)部分については、売上を取り消すべきであると結論づけた。 3 発生原因 第三者委員会は、9月6日付の追加報告書(以下、8月13日公表の調査報告書を「一次報告書」、9月6日公表の調査報告書を「追加報告書」と表記する)の中で、発生原因として、次の項目を挙げている。 なお、一次報告書では記述のなかった取引の動機について、追加報告書には、以下の説明がある。 第三者委員会によれば、2(1)の土地の買戻し取引については、X社は、アクトコールが手配した工事トラブル等に起因して多大な負担を生じたため、それを填補する方針についてコンセンサスがあったとのことである。 (2)の販売手数料については、第三者委員会による専務取締役で管理担当の菊井聡氏(以下「菊井専務」と略称する)に対するヒアリングに基づき、アクトコールは販売手数料収入を売上計上していなければ、平成29年11月期第2四半期において連結決算上、赤字決算となることが見込まれていたことが動機として挙げられている。 また、(3)のバーター取引については、同じく菊井専務からのヒアリングにより、アクトコールは当時、マザーズでの新規株式上場を控え、上場1期目の予算達成のプレッシャーから、予算実現のため、少しでも売上を向上させる狙いがあったと説明されている。 ただし、いずれの取引についても、その処理方法について、アクトコールの取締役会及び経営会議において報告された事実は確認できなかったことから、第三者委員会は、「コーポレート・ガバナンス及び内部統制の不全」が、アクトコールにおいて、不適切な会計処理を惹起した主要な原因であると考えられると評価している。 4 責任の所在 第三者委員会は、追加報告書において、代表取締役をはじめとする各取締役の責任の所在について検討している。 (1) 平井社長の責任 第三者委員会の調査によれば、平井社長は、不適切な会計処理の発生原因について、一定程度は自身の責任を認めているものの、同氏が菊井専務を信頼し、頼りすぎて、すべて菊井専務の判断に任せていたものであって、自身は会計処理の不適切性を認識することができなかったとしている。 こうした主張に対し、第三者委員会は、上場会社の代表取締役に求められる通常の知識と判断能力を有していれば、会計処理の不適切性についても、認識し得たはずであり、もし、会計処理の不適切性を認識していなかったとすれば、それは同氏が上場会社の代表取締役としての必要な知見を欠いていたといわざるを得ず、同氏の責任を否定する理由にはならないと考えることから、平井社長には、中心的な関与者としての責任が認められるのみならず、同氏が上場会社の代表取締役として本来期待される責務を果たしていたということはできず、複数の取引について会計処理を訂正し、過年度の決算の訂正を余儀なくされた事態の重大性に鑑みれば、同氏の責任は重大であるといわざるを得ないと評価した。 (2) 菊井専務の責任 第三者委員会の調査によれば、菊井専務は、本件取引等において、財務責任者の立場にあるにもかかわらず、取引全体を認識した上で不適切な会計処理の原因となる融資の実行行為を行っており、中心的な役割を担っていたといえる。この点、菊井専務は、不適切な会計処理の発生原因について、会計知識の不足を自覚せず事前に十分に確認するという慎重さを欠いていたこと等にあると述べている。 第三者委員会は、菊井専務についても、平井社長と同様、中心的な関与者としての責任が認められるのみならず、同氏が上場会社の財務責任者として本来期待される責務を果たしていたということはできず、複数の取引について会計処理を訂正し、過年度の決算の訂正を余儀なくされた事態の重大性に鑑みれば、菊井専務の責任は重大であるといわざるを得ないと評価した。 (3) その他の業務執行取締役の責任 第三者委員会は、常務取締役で不動産総合ソリューション事業を所管する田端知明氏(以下「田端常務」と略称する)の責任について、田端常務は、不適切な会計処理を招いた個々の事象に直接的に関与はしてはいないものの、不適切な会計処理を生じさせるにあたって、事業所管取締役としての管理監督責任及び取締役としての監視監督責任を果たしていなかったとして、田端常務に責任があることを否定することはできないと評価した。 また、6月30日にアクトコールが設立した合弁会社の事業に専念するために、取締役を辞任した岡田崇氏(以下「岡田元取締役」と略称する)の責任については、岡田元取締役は、不適切な会計処理を招いた個々の事象の意思決定に直接的に関与はしてはいないものの、不適切な会計処理を生じさせるにあたって、注意義務を怠ったものとして、岡田元取締役に責任があることを否定することはできないと評価した。 (4) 監査等委員である取締役の責任 第三者委員会は、監査等委員である3名の取締役については、本件取引等に直接関与していた事実は認められなかったとしながらも、監査等委員らが完全に監督責任を果たしていたかという点については、疑いを挟む余地があるということもできることから、監査等委員らに責任がないとまではいえないと評価した。 5 再発防止策の提言 第三者委員会による再発防止策の提言は、次の通り8項目と多岐にわたっている。 とりわけ、印象的なのは、平井社長と菊井専務に対する厳しい提言である。「経営体制の見直し」では、「現状の経営体制を維持することについては、ガバナンス上の重要な問題があるといわざるを得ない」ことから、「取締役の交替も含めた経営体制の見直しを遂行すべき」であり、かつ、「アクトコールに対する影響力を低下させることも検討すべきである」と断じている。また、「今後のアクトコールのあり方を抜本的に見直すことを目的として、取締役会の諮問機関として、外部有識者によって構成された経営監視委員会を設置すること」も提言されている。   【調査報告書の特徴】 アクトコール第三者委員会は、一次報告書で、会計処理の妥当性について検討して過年度の有価証券報告書等の訂正を行わせ、追加報告書で、経営陣の責任の所在を検討したうえで、再発防止策の提言を行うという二段構えの報告を行った。 不適切な会計処理の発覚に伴い、四半期報告書の提出期限の延長申請を行っていたアクトコールの上場廃止を回避するための措置ではあろうが、短期間のうちに、取引内容の妥当性の検証と原因の究明を行い、かつ、再発防止策の提言まで求められている第三者委員会の日程的な厳しさを改めて感じた報告書であった。 とくに追加報告書における取締役らの経営責任の追及に関しては、あまり例がないくらい厳しいものであり、報告書受領後のアクトコール経営陣の対応が注目を集めていた。 1 会計監査人の異動 過年度の有価証券報告書等の訂正を終えた後の8月31日、アクトコールは、「会計監査人の異動に関するお知らせ」によって、ひので監査法人との契約を合意解除したことをリリースした。その理由については、以下のように説明されている。 過年度有価証券報告書の訂正報告書の監査レビューでは、アクトコールが「経営者による内部統制の無効化を排除する経営体制の早急かつ抜本的な見直しを確約」することにより、ひので監査法人が無限定適正意見を出したことが同じリリースで説明されている。同監査法人が要求した「経営管理体制の見直しに係る前提条件等」がどの程度厳しいものだったかは不明であるが、会計監査人が負うリスクを考えれば、監査契約の継続にあたってはある程度の前提条件を附すことは必要であり、それをアクトコール側が実現できない以上、契約を合意解除するのはやむを得ないものであろう。 なお、アクトコールは、9月28日、一時会計監査人として、なぎさ監査法人を選任し、次の定時株主総会において新たに会計監査人として選任する予定であることを公表している。 2 役員の職位の自主返上 アクトコールが9月1日付でリリースした「経営監視委員会の設置に関するお知らせ」は、そのタイトルよりも、「業務執行取締役全員につき基本的に謹慎とし経営から離れることを決定」したという内容の方に驚かされるものであった。3名の役員がそれぞれの職位を自主返上して、新たに1名の執行役員CFOを選任した理由について、リリースでは次のように説明している。少し長いが全文を引用する。 つまり、3名の業務執行取締役は、事実上、経営から離れるものの、経営監視委員会の審査により、新しい業務執行取締役が選任されるまでの間は、形式上、取締役の地位に留まるというものである。 創業者で、アクトコールの約59%の株式を保有している平井社長の影響力を低下させることにまで言及していた第三者委員会追加報告書の趣旨が、今後どこまで経営体制に反映されるか、引き続き注目していきたい。 3 経営監視委員会の設置 同じリリースでは、9月14日付で、経営監視委員会を設置することも公表されている。委員の選任については、「社外取締役である当社監査等委員の指揮下で進められ」、その機能として、次のように説明されている。 次回の定時株主総会が終了する平成31年2月末までの臨時の期間とはいえ、新たな取締役の選任を行うだけでなく、取締役会に対して主体的な指導や勧告を行うという重要な機関の委員の構成は、次の通りとされた。 なお、伊藤茂男委員は、9月25日、「アクトコール経営監視委員会及び委員の権限及び責任等が不明瞭であることから、アクトコール経営監視委員会の委員としての任務、職責を遂行するために必要かつ十分な知識、能力等を備えていると判断できないことを認識するに至った」ことを理由に、辞任の申し出を行って受け入れられた。 後任の経営監視委員委は、ジェイ・フェニックス・リサーチ株式会社代表取締役の宮下修氏が、9月28日に選任されている。 (了)

#No. 289(掲載号)
#米澤 勝
2018/10/11
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