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相続税の実務問答 【第1回】「遺産分割が整わない場合の相続税の申告方法」

相続税の実務問答 【第1回】 「遺産分割が整わない場合の相続税の申告方法」   税理士 梶野 研二     [答] 相続人間で遺産の分割ができない場合であっても、相続の開始したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告をし、算出された税額を納付しなければなりません。この場合、各共同相続人が法定相続分により遺産を相続したものとして相続税の計算を行うこととなります。   ● ● ● ● ●  説 明 ● ● ● ● ● 1 相続税の申告期限 相続や遺贈により財産を取得した者は、相続や遺贈によりその被相続人から財産を取得したすべての者の相続税の課税価格(注)の合計額が相続税の基礎控除額を超える場合には、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、相続税の申告書を被相続人の死亡時の住所地の所轄税務署長に提出し、申告書に記載した相続税を納付しなければなりません(相続税法27①、33、附則③)。この期限を「相続税の申告期限」といいます。 (注) 相続税の課税価格とは、相続や遺贈により取得した財産の価額から債務・葬式費用を控除し、一定の生前贈与財産の価額を加算した金額です。   2 遺産分割ができなかった場合の申告方法 (1) 相続税の申告期限までに遺産分割ができない場合 相続税の申告期限までに、遺産の分割が行われれば、その分割結果に従って、相続人ごとの相続税の課税価格や相続税額を計算することになります。 しかし、相続税の申告期限までに遺産分割が整わない場合もあります。 例えば、 など、相続税の申告期限までに相続財産の分割をすることが困難な事情は様々です。 民法は、遺言で遺産分割が禁止されている場合を除き、いつでも、共同相続人間の協議により遺産分割を行うことができると定めていますが、遺産分割の期限については特に規定していません(民法907①)。 そのため、必ずしも相続税の申告期限までに分割をする必要はなく、むしろ後日の無用なトラブルを避けるために、相続人全員が納得できるように時間をかけて話し合いをしていくことが望ましい場合もあるでしょう。 (2) 遺産分割ができなかったときの相続税の計算と申告 それでは、相続人間で遺産分割協議が整わない場合に、相続税の申告をどのように行えばよいのでしょうか。 人が亡くなると相続が開始し(民法882)、被相続人のすべての財産及び債務は、相続開始とともにその相続人に承継されることとなります(民法896)。共同相続人間で遺産分割が行われれば、それにより被相続人の財産の帰属が確定的に決まることとなりますが、相続の開始から遺産分割が整うまでの間は、法定相続分により被相続人の法定相続人に権利及び債務が承継されている状態となります。 ところで、共同相続人間で遺産分割につき争いがあるような場合には、法定申告期限までに分割が完了せず、各相続人が現実に取得する財産を確定することができない事態が生じ得ることになりますが、そのような場合に、取得財産を確定するまでは申告をすることができないとして、遺産分割がなされるまで申告義務を猶予することを認めたのでは、長期間にわたって遺産分割を行わないことにより、相続税を免れるという結果を招くこととなってしまいます(参考:平成5年3月29日神戸地裁判決)。 そこで、相続税の申告期限までに、遺産の分割がされていない場合には、その分割がされていない遺産について、民法の規定(第900条から第903条までの規定。したがって、第904条の2(寄与分)は除かれます)による相続分の割合(法定相続分)に従って当該遺産を取得したものとして、相続税の課税価格及び税額を計算して、申告及び相続税の納付をすることとされています(相法55)。 (3) 申告書の提出方法 相続税の申告は、相続人全員が1つの申告書に連署することにより、共同して提出するのが一般的ですが、共同して提出することが困難な場合には、単独又は相続人の一部の者だけで申告をすることもできます。 なお、相続税の計算上、相続人全員の課税価格を明らかにすることが不可欠であることから、申告書上に相続人全員の住所、氏名が記載されますが、申告をする者は申告書上に住所及び氏名の記載に加え、押印することが必要ですので(通法124①②)、押印のない者は、原則として申告書を提出した者とは扱われないことになります。したがって、他の共同相続人と共同して申告書を提出したくない相続人は、別途、申告書を作成して、申告をする必要があります。   3 未分割の場合の特例措置の不適用 相続税の申告期限までに、遺産分割が整わない場合には、法定相続分で遺産を取得したものとして、相続税の課税価格を計算して、相続税の申告をすることになりますが、この場合、特定の者が一定の財産を取得した場合に限って認められる特例、例えば、相続税の配偶者の税額軽減、小規模宅地の特例などについては、未分割の状態では適用することができません。 ただし、その場合であっても、申告期限から3年以内(一定のやむを得ない事情があり、税務署長の承認を受けたときには、この期限が延長されます)に分割がされたときには、相続税の配偶者の税額軽減、小規模宅地の特例などの一部の特例措置については、更正の請求の手続をすることにより適用を受けることができます。 (了)

#No. 178(掲載号)
#梶野 研二
2016/07/21

金融・投資商品の税務Q&A 【Q4】「外国法人が発行した外貨建利付債券の利子の取扱い」~「国内」で受け取る場合~

金融・投資商品の税務Q&A 【Q4】 「外国法人が発行した外貨建利付債券の利子の取扱い」 ~「国内」で受け取る場合~   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子   ●○ 検 討 ○● 所得税法上、国外公社債の利子を国内の支払の取扱者経由で受け取る場合、利子について平成27年12月31日以前は源泉分離課税とされていました。しかし平成25年度税制改正により、平成28年1月1日以後は、原則として申告分離課税の対象となります。 なお、発行日が平成27年12月31日以前の公社債についても、利子の支払を受けるべき日が平成28年1月1日以後の場合は、原則として新税制が適用されます。   1 源泉徴収 国外で発行された特定公社債の利子については、国内における支払の取扱者を通じてその交付を受ける場合、交付の際に支払を受けるべき金額(外国所得税が課されている場合は控除後の金額)に対し、20.315%(国税15.315%、地方税5%)の源泉徴収がなされます。 支払の取扱者が支払代理機関等から外国通貨によって利子の支払を受け、当該利子を居住者に外国通貨で交付する場合には、その支払を受けた外国通貨の金額を、次に掲げる国外公社債等の利子等の区分に応じ、それぞれ次に掲げる日(邦貨換算日)におけるTTBにより円換算した金額により源泉徴収がなされます。TTBは、当該支払の取扱者の主要取引金融機関(その支払の取扱者がその外国通貨に係るTTBを公表している場合には、当該支払の取扱者)が公表する換算レートによります。 おたずねの場合、国内の証券会社経由で利子の支払を受けるということですので、利子の金額(円換算額)に対して20.315%の税率にて源泉徴収がなされます。   2 申告分離課税 国外発行の特定公社債の利子は、支払の取扱者による源泉徴収がなされている場合、その金額にかかわらず、源泉徴収で課税関係を完結することができます。その場合、上場株式等(特定公社債を含む)に係る一定の譲渡損との損益通算の適用を行うことはできません。 また、申告をすることも可能です。申告する場合は、上場株式等の配当所得等として申告分離課税20.315%(国税15.315%、地方税5%)が適用されます。申告をした場合、上場株式等(特定公社債を含む)に係る一定の譲渡損との損益通算等が可能です。   (了)

#No. 178(掲載号)
#箱田 晶子
2016/07/21

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第32回】「収入印紙によらない納付方法②(印紙税納付計器)」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第32回】 「収入印紙によらない納付方法②(印紙税納付計器)」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   当社は設備保守会社です。取引先との間で毎回、保守契約書を交わしますが、契約件数も多く、収入印紙を管理するのは手間がかかります。そこで、できるだけ事務負担を簡素化したいと考えていますが、何か良い方法はありませんか。   印紙税は、課税文書に収入印紙を貼付し、消印をすることにより納付するのが原則で、収入印紙をあらかじめ用意していなければならない。そのため、印紙税が課される書類を多量に作成するような事業所では、数種類の印紙を常時購入保管しなければならず、管理するうえにおいても負担となる。そこで、事務負担を簡素化する方法として、印紙税納付計器による方法が考えられる。 印紙税納付計器による方法は、あらかじめ納付した金額を限度として、印紙税納付計器により、その課税文書に課税される印紙税額に相当する金額を表示した納付印を押すことで納税する方法である。 承認から利用までの手順は以下のとおり。 【納付印によって押される印影】 ⇒ 金額欄には実際に納付する金額、税務署名記号番号欄には承認を受けた税務署、記号番号が入る。 (※) 国税庁ホームページより   [検討] 納付計器を利用するメリット、デメリット (メリット)  印紙を購入する必要がないため、印紙を管理する手間が省ける。 (デメリット)  納付計器を保管、管理する担当者が必要である。   ▷ まとめ   (了)

#No. 178(掲載号)
#山端 美德
2016/07/21

連結納税適用法人のための平成28年度税制改正 【第5回】「雇用促進税制の見直し」

連結納税適用法人のための 平成28年度税制改正 【第5回】 「雇用促進税制の見直し」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   [7] 雇用促進税制の見直し 1 改正の内容 (1) 雇用促進税制の適用地域の限定 雇用促進税制(地方拠点強化実施計画の雇用促進税制及び移転型計画の雇用促進税制を除く。以下、「特定地域の雇用促進税制」という)について、適用の基礎となる増加雇用者数を、雇用機会が不足している有効求人倍率が低い地域(地域雇用開発促進法の同意雇用開発促進地域(※)内)にある事業所における無期雇用かつフルタイムの雇用者の増加数 (新規雇用に限るものとし、 その事業所の増加雇用者数及び法人全体の増加雇用者数を上限とする)に限定した上、その適用期限が2年延長された(措法68の15の2)。 (※) 「同意雇用開発促進地域」は、厚生労働省のホームページで地域一覧が公表されている。 具体的には、連結法人が、適用年度(注1)において、次に掲げる要件のすべてを満たす場合には、適用年度の連結法人税額から、40万円に連結親法人及び各連結子法人の適用年度の特定地域基準雇用者数(注2)の合計(注3)を乗じて計算した金額(税額控除限度額)が控除される(措法68の15の2①)。 この場合において、税額控除限度額が、連結法人税額の10%(連結親法人が中小連結親法人である場合には、20%)に相当する金額を超えるときは、税額控除額はその10%相当額を限度とする(措法68の15の2①)。 また、この制度の適用を受けるためには、連結親法人の事務所の所在地を管轄する都道府県労働局又は公共職業安定所に連結親法人及び各連結子法人の雇用促進計画の提出を行い、都道府県労働局又は公共職業安定所で、上記[要件2]~[要件4]までの要件についての確認を受け、その際交付される連結親法人及び各連結子法人の雇用促進計画の達成状況を確認した旨の書類の写しを連結確定申告書に添付する必要がある(措令39の45の2①⑥、措規22の29①②)。 この場合、この雇用促進計画の達成状況の確認に関する手続は、厚生労働省の業務取扱要領にて示されており、連結親法人の事務所の所在地を管轄する公共職業安定所に、適用年度開始2ヶ月以内に雇用者の目標増加数を示した同計画の書類を提出し、適用年度終了後2ヶ月以内に適用年度の雇用者増加数などの要件を充足した内容を追記した同計画の書類を再度提出する必要がある。 また、この制度は、連結確定申告書等、修正申告書又は更正請求書に、控除の対象となる特定地域基準雇用者数、控除を受ける金額及びその金額の計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用することができる(措法68の15の2⑧)。この場合、控除される金額は、連結確定申告書等に添付された書類に記載された特定地域基準雇用者数を基礎として計算した金額に限るものとする(措法68の15の2⑧)。 なお、地方拠点強化実施計画の雇用促進税制(措法68の15の2②)及び移転型計画の雇用促進税制(措法68の15の2③)の取扱いについては、昨年本誌に寄稿した『連結納税適用法人のための平成27年度税制改正/【第8回】地方拠点強化税制の創設(その2)』における「②地方拠点強化実施計画の雇用促進税制及び③移転型計画の雇用促進税制」を参照されたい。 [特定地域の雇用促進税制に係る税額控除額の個別帰属額の計算方法] 特定地域の雇用促進税制で計算された連結税額控除額は、次のように、各連結法人に配分計算される(措法68の15の2⑩、措令39の45の2[21項])。 (※) 以下、「特定地域の雇用促進税制に係る個別帰属額の計算割合」という。 なお、地方拠点強化実施計画の雇用促進税制(措法68の15の2②)及び移転型計画の雇用促進税制(措法68の15の2③)に係る税額控除額の個別帰属額については、上述した拙稿『連結納税適用法人のための平成27年度税制改正/【第8回】地方拠点強化税制の創設(その2)』における「②地方拠点強化実施計画の雇用促進税制及び③移転型計画の雇用促進税制」を参照していただきたい。 [地方法人税における雇用促進税制に係る税額控除額の取扱い] 法人税における雇用促進税制の税額控除額は、地方法人税の課税標準となる基準法人税額の計算において、連結法人税額から控除される(地方法6三)。 この場合、各連結法人の雇用促進税制の税額控除額の個別帰属額に地方法人税率(4.4%又は10.3%)を乗じた金額が地方法人税個別帰属額の計算において減算される(措法68の15の3⑩、地方法15①)。 [住民税における雇用促進税制に係る税額控除額の取扱い] 中小連結親法人又はその各連結子法人の各連結事業年度の個別帰属法人税額(道府県民税及び市町村民税の課税標準)の計算において、法人税における特定地域の雇用促進税制に係る税額控除額の個別帰属額は個別帰属法人税額から控除される(連結法人税個別帰属額に加算しない。地方税法附則8⑥⑧、地法23①四の三、292①四の三)。 中小連結親法人に該当しない連結親法人又はその各連結子法人については、法人税における特定地域の雇用促進税制に係る税額控除額の個別帰属額は、個別帰属法人税額から控除されない(連結法人税個別帰属額に加算する)。   (2) 所得拡大促進税制との重複適用 上記(1)の改正に伴い、所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度)の雇用者給与等支給増加額から雇用促進税制(地方拠点強化実施計画の雇用促進税制及び移転型計画の雇用促進税制を含む)の適用の基礎となった増加雇用者に対する給与等支給額として一定の方法により計算した金額を控除した上、 所得拡大促進税制と雇用促進税制を重複して適用できることとされた(措法68の15の5①)。 具体的には、所得拡大促進税制とは、連結親法人及び各連結子法人が、所定の要件を満たすときは、雇用者給与等支給増加額の10%に相当する金額を調整前連結税額から控除する制度であるが、この雇用者給与等支給増加額について、雇用促進税制(措法68の15の2)の適用を受ける場合には、特定地域基準雇用者数の合計、地方事業所基準雇用者数の合計、地方事業所特別基準雇用者数の合計の算定の基礎となった者に対する給与等の支給額として次に定めるところにより計算した金額を控除した金額とする(措法68の15の5①、措令39の46①②③)。 なお、下記の用語の定義については、上記(1)、拙稿『連結納税適用法人のための平成27年度税制改正/【第8回】地方拠点強化税制の創設(その2)』の「②地方拠点強化実施計画の雇用促進税制及び③移転型計画の雇用促進税制」及び、同連載『【第10回】所得拡大促進税制・その他の租税特別措置法上の見直し』の「[10]連結納税適用法人に係る所得拡大促進税制の見直し」を参照していただきたい。   2 適用時期 上記の改正は、平成28年4月1日以後に開始する連結事業年度について適用される(平成28年所法等改正法附則1、111、113)。   (了)

#No. 178(掲載号)
#足立 好幸
2016/07/21

包括的租税回避防止規定の理論と解釈 【第19回】「行為計算否認規定の論点」

包括的租税回避防止規定の 理論と解釈 【第19回】 「行為計算否認規定の論点」   公認会計士 佐藤 信祐   前回までは、同族会社等の行為計算の否認に対する裁判例について解説を行った。 本稿では、同族会社等の行為計算の否認、包括的租税回避防止規定に対する論点を整理することとする。   1 同族会社等の行為計算の否認の論点 矢内一好『一般否認規定と租税回避判例の各国比較』124-125頁(財経詳報社、平成27年)を参考にすると、同族会社等の行為計算の否認の論点としては、以下のものが挙げられる。 また、【第7回】から【第11回】で解説したように、従来は、同族会社等の行為計算の否認を確認規定と解する余地があったが、現在の傾向としては、創設規定と解する傾向が強いと思われる。 そうなると、当然のことながら、非同族会社には適用されないという判断となり、私法上の法律構成による否認論や課税減免規定の限定解釈などの広義の租税回避に対する否認手法が生み出されていくことになる。 そして、【第5回】で解説したように、昭和25年度税制改正により、逋脱の目的に対する立証は不要と解されている。 さらに、上記のほか、同族会社等の行為計算の否認について、正常な「行為又は計算」に引き直して課税を行うのではなく、不当な「行為又は計算」によってもたらされた法人税の減免を否認するという考え方が採用し得るのかも論点となろう。 実際に、課税減免規定の限定解釈ではそのような否認手法が採用されており、同族会社等の行為計算の否認において同様の考え方が採用し得るのかという点は、一応は検討しておく必要があると考えられる。 このように、同族会社等の行為計算の否認に対する論点は、不当性の判断だけでなく、様々なものが考えられる。最近の裁判例では、判決文が長文になりがちな傾向にあるのと、納税者側が様々な方面から主張を行うため、上記のような論点は随所に見受けられる。 これらの論点は、いずれも租税回避の射程範囲が明らかになれば、ある程度は明確になると思われるため、まずは租税回避の射程範囲を明らかにしたうえで、他の論点を検討していく予定である。   2 包括的租税回避防止規定の論点 ヤフー事件で議論となった法人税法132条の2に規定する組織再編成に対する包括的租税回避防止規定の論点は以下の通りである。 上記のほか、法人税法132条の3に規定する連結納税制度に対する包括的租税回避防止規定もその射程範囲については議論があり得る。しかし、連結納税制度の採用は、法人税の節税以外に何ら目的がないことから、どのような場合に「不当」であるのかは想定し難いという実態もある。そのため、本稿では、連結納税制度に対する包括的租税回避防止規定は検討の対象外としたい。   3 本連載の方向性 【第3回】で解説したように、佐藤信祐『組織再編における包括的租税回避防止規定の実務』22-27頁(中央経済社、平成21年)では、租税回避に対する否認手法として、以下の分類に基づいて解説を行った。 同族会社等の行為計算の否認、包括的租税回避防止規定の射程範囲を明らかにしていくためには、上記のような他の租税回避の論点についても検討していく必要があると考えられる。 まず、個別否認規定による否認は、個別否認規定に対する解釈と事実認定が重要になってくる(※)。この場合の個別否認規定に対する解釈は、単なる文理解釈ではなく、立法趣旨を踏まえた解釈が必要となってくる。ただし、立法趣旨を踏まえた解釈といっても、条文の文言を超えた解釈をすることはできない。例えば、大和銀行事件(平成17年12月19日判決・民集59巻10号2964頁)では、課税庁側が「納付」の文言に対する縮小解釈を主張していたが、さすがにそのような縮小解釈は認められなかった。 (※) 佐藤信祐『組織再編における包括的租税回避防止規定の実務』22頁(中央経済社、平成21年) さらに、事実認定は、あくまでも真実の事実関係を追及すべきものであって、課税するために都合の良い事実関係を創造するものではない。 誤解が多いようであるが、「事実認定」は租税法の用語ではなく、訴訟法の用語である。すなわち、裁判官を納得させるための証拠の積上げこそが事実認定であり、納税者が合法的に行った節税を無かったことにするための事実関係の創造は事実認定とは言えないということに留意する必要がある。 多くの場合には、個別否認規定のみで対応され、租税回避としての否認までは至らないため、このような立場で税務調査に臨めば、納得のいかない否認がなされる可能性は極めて小さくなると考えられる。 さて、租税回避の否認手法として残ったものは、実質主義、私法上の法律構成による否認、課税減免規定の限定解釈の3つである。次回以降は、これらを分析していくことにより、租税回避の範囲を検討していく予定である。 (了)

#No. 178(掲載号)
#佐藤 信祐
2016/07/21

ファーストステップ管理会計 【第1回】「管理会計は『ワタシ流』でOK!」

ファーストステップ 管理会計 【第1回】 「管理会計は『ワタシ流』でOK!」 公認会計士 石王丸 香菜子     ◆管理会計の目的は何? 「会計」は、大きく「財務会計」と「管理会計」とに分けることができます。 企業には、多くの利害関係者がいます。企業の株主や債権者、税務当局などがこれに当たります。企業の会計情報を、こうした利害関係者に対して提供することを目的とするのが、「財務会計」です。 企業外部の人間に、企業の財政状態や経営成績などの情報を提供することが目的ですから、各企業が自由に処理をして、バラバラに開示するのでは困ります。そのため、一定の基準に従って会計処理を行い、定められたフォームで会計情報を開示することが求められます。金融商品取引法や会社法、税法などに基づき行う会計が、これに当たります。 一方、「管理会計」は、企業内部の経営者や管理者が、企業自身の情報を分析して利用するために行う会計を指します。 企業内部の情報を分析して、自らの意思決定に役立てることが目的ですから、細かい処理方法などが規則で定められているわけではありません。企業内部で役に立つ情報を得るために行う会計ですので、オーバーな言い方をすれば、管理会計は『ワタシ流』でいいわけです。   ◆月末の主婦は無意識に管理会計を実践している? 一家の家計を預かる主婦は、家計簿をつけている方が多いのではないでしょうか。『ドラえもん』でも、のび太のお母さんが家計簿をつけながら、「今月も赤字だわ~」などと言うシーンがありますね。 家計簿をつけるのは、家計の支出を把握し、予定以上に使っていた場合には、原因を分析し、今後の家計管理に役立てるためです。管理会計もこれと同じで、企業内部の情報を分析し、将来の意思決定に役立てるために行います。 家計簿は、外部に開示するためのものではありませんから、定められたやり方をする必要はありません。管理会計も、企業内部の情報を分析するために行うものですから、どんな方法で行っても構わないのです。ですが、いくら管理会計が『ワタシ流』でいいとは言っても、あてずっぽうにデタラメなことをしていては、目的が果たせません。家計簿をまったくつけずに、ドンブリ勘定で浪費していては、家計がまわらなくなるのと同じです。 ですから、管理会計の考え方の基本を理解するのは、とても大切なことなのです。   ◆まずは差異分析をしてみよう 家計簿をつけている人は、月末に何をしているでしょうか。 のび太のお母さんが毎月ぼやいているだけでは、ドラえもんがいても、野比家はいつか夜逃げしなければなりません。家計簿をつけて赤字だとしたら、その原因を分析して、来月以降の生活にこれを反映させているはずです。 例えば、食費が予定よりもオーバーしていた場合、のび太のお母さんは、「休日のび太の友だちが遊びに来てご飯を出したからだわ」とか「自分がこっそりお昼にお寿司を食べたからだわ」とか、分析するでしょう。その分析を踏まえて、来月は、友だちを食事の前に帰すとか、もやしの登場回数を増やすとか、対策をとるはずです。 管理会計では、こうした分析を「差異分析」といいます。   ◆ベーカリーを例に考える イメージしやすいベーカリーを例に、直接材料費の差異分析をしてみましょう。 あるベーカリーでは、1ヶ月に食パンを1000斤製造したとします。食パン1斤(6枚切りなどで売られているひとかたまり)を作るには、約250gの小麦粉が必要です。1000斤の食パンを作るには、計算上は250g×1000=250,000g=250kgの小麦粉が必要になります。小麦粉は1kg当たり200円で仕入れられる予定とします。 この場合、1ヶ月にかかるはずの小麦粉代は、  @200 × 250kg = 50,000円 になります。 一方、今月の実績値としては、仕入れ値が1kg当たり205円で、255kgを使っていたことがわかりました。 したがって、1ヶ月に実際にかかった小麦粉代は、  @205 × 255kg = 52,275円 になります。 両者の差額  50,000 - 52,275 = △2,275円 を管理会計では「差異」と呼びます。 この差異がなぜ発生したかを分析し、将来に役立てることが、管理会計の目的です。   ◆差異分析は図を使って考える 差異分析に当たっては、図を利用するとわかりやすくなります。 外側の四角は、実際発生額52,275円で、内側の四角は、計算上かかるはずだった額50,000円です。両者の差額は、(A)と(B)に分けて考えることができます。 (A)(@200-@205)×255kg=△1,275円は、小麦粉の実際の値段が高かったことによる差異です。これを「価格差異」と呼びます。のび太の家の食費で例えれば、お母さんがこっそり値段の高いお寿司を食べたことによる差異です。 (B)(250kg-255kg)×@200=△1,000円は、小麦粉の実際の消費量が多かったことによる差異です。これを「数量差異」と呼びます。のび太の家の食費で例えれば、のび太の友だちがご飯を食べたことによる差異です。 管理会計では、目標値をオーバーしてしまった差異を「不利差異」と呼び、△で表します。逆のケースの差異を「有利差異」と呼びます。 また、かかるはずの目標値を、「標準」と呼びます(「標準」の概念については【第2回】で解説します)。   ◆どうして差異が生じたのか? 管理会計では、差異がなぜ発生したのかを分析することが重要になります。 価格差異の原因が、小麦粉の価格が急騰したためであれば、ある程度は不可避な差異であると言えます。天候不順で野菜の値段が高い月に、家計の食費が上がってしまうのは仕方ないことなのと同じです。 しかし、例えば発注ミスにより材料が不足し、緊急的に少量で追加仕入を行った結果、割高な単価になった場合などは、発注ミスを防ぐ措置を取ればよいことになります。 数量差異についても同様です。例えば、新前の職人だけで作業した時間があり、ミスが多かったために差異が生じたのであれば、シフトを見直すなどの対策を取ることができます。   ◆労務費も同じように分析できる 同様に、直接労務費についても分析することができます。 直接労務費は、何を製造するためにかかったのかが明らかな賃金で、ベーカリーの例では、パン製造にかかったパン職人の賃金がこれに当たります。 ベーカリーでの1ヶ月の食パン製造にかかる標準作業時間を、延べ180時間とします。そして、これを担当するパン職人の標準賃率を1時間当たり1,000円とします。 一方、今月の実績値としては、賃率が1時間当たり1,050円で、延べ178時間かかったとしましょう。 (図を使う際には、数値の大小にかかわらず、実績値を常に外側に置くとよいです。) 作業時間については、標準よりも短時間で作業を行えたことによる有利差異である一方、賃率については、標準よりも高い賃率がかかったことによる不利差異となっており、両者を相殺した結果が6,900円の不利差異になっていることがわかります。 不利な賃率差異が発生した原因が、例えば、深夜作業が多かったために賃率が上がったことにあるならば、作業体制を見直すことで改善できる可能性があります。   ◆差異は現場で起きている! 差異分析を行う際に忘れてはならないのは、 ということです。 分析を行う経理部や管理部などの部署では、会計データはあるものの、現場における消費量や作業時間などについて詳細なデータを十分には把握していないことがあります。工場や製造現場では、経理部や管理部に吸い上げていないデータ(現場だけの細かい受け払い簿や作業日報など)を持っていることがあります。 こうした現場でのデータを経理部などの側でも利用する可能性を探ると、実効性のある分析を行うことができるのです。 また、上記の例も含め、月間データの事例が説明されることが多いのですが、月次分析にこだわる必要はありません。むしろ、1日や1週間、1ロットごとの標準を設定し、タイムリーに分析することで、有用な情報が得られるケースもあるでしょう。こうした場合には、現場のデータを上手に利用する必要があります。 差異分析の考え方の基礎を踏まえ、管理する側と製造現場の側とが、足並みをそろえて差異を解消していくのが理想です。   ◆管理会計の基礎を身につけましょう! こうした標準による管理は、古典的ではありますが、シンプルな製造業の場合は有効な管理方法です。また、同じ方法がそのまま当てはまらない業種・業態でも、その基本的な発想は役立つ局面があると考えられます。 企業の業種や業態・規模はさまざまですので、それぞれに合った管理会計のあり方を考えるためにも、まずは管理会計の基礎や考え方のベースを身につけることが大切です。 この連載『ファーストステップ管理会計』では、各企業に適した管理手法を検討する際に応用できるような、管理会計の基礎を身につけていただくことを目的としています。 【第6回】までは原価管理について解説し、【第7回】から【第10回】は利益管理を、【第11回】以降は意思決定・業績評価の方法を、取り扱う予定です。 簿記や財務会計の知識は前提とせず、身近な事例を用いてシンプルに解説していきますので、どうぞよろしくお願いします! (了)  

#No. 178(掲載号)
#石王丸 香菜子
2016/07/21

〔経営上の発生事象で考える〕会計実務のポイント 【第7回】「工場における火災発生の場合」

〔経営上の発生事象で考える〕 会計実務のポイント 【第7回】 「工場における火災発生の場合」   仰星監査法人 公認会計士 渡邉 徹     1 棚卸資産廃棄損・固定資産除却損(火災損失)の計上 《解説》 棚卸資産や固定資産が火災等により滅失した場合には、当該棚卸資産や固定資産を帳簿上から取り除かなければならず、滅失部分の帳簿価額について費用計上する必要がある。この際、処分時の帳簿価格に処分に要する費用(滅失費用)を含めて「火災損失」等の科目に計上する必要がある。 滅失した資産が固定資産の場合、帳簿価格については減価償却費を期首から除却日までの月割等で計算し、期首の帳簿価格から控除することが適当と考えられる(【図1】を参照のこと)。 なお、減価償却費の月割や日割等の計算方法については、原則として毎期継続して適用することが求められる。 また、上記の「火災損失」は臨時異常な要因により生じたものであるため、通常、特別損失として表示されるものと考えられる。 上記の解説は、滅失資産について、棚卸資産に対する火災保険及び固定資産に対する火災保険等の対象でなかったことを前提としているが、それらの火災保険等の対象である場合には(特に火災保険の対象となっている棚卸資産及び固定資産の帳簿価格を上回る火災保険が付されている場合)、工場が火災により滅失した時点では、棚卸資産及び固定資産の帳簿価額(固定資産の場合は取得原価から減価償却累計額を控除した価額)を「火災未決算勘定」等の仮勘定に振り替えて固定資産等が滅失した事実のみを記帳し、火災損失は保険金の受領金額が確定した時点で計上する。「3 保険金の受領に伴う会計処理」及び「4 保険差益に係る圧縮記帳」の項目を参照されたい。 【図1】   2 固定資産の減損の検討 《解説》 本ケースのB工場のb棟のように、資産又は資産グループが遊休状態になり、将来の用途が定まっていない状況においては、固定資産に対する投資額の回収が見込めない可能性があるため、固定資産の減損について検討する必要がある。 固定資産の減損を検討するにあたり、まず資産のグルーピングを行う必要がある。資産のグルーピングは、他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で行う(固定資産の減損に係る会計基準 二6(1))。 実務的には、管理会計上の区分や投資の意思決定(資産の処分や事業の廃止に関する意思決定を含む)を行う際の単位等を考慮してグルーピングの方法を定めることになる(意見書四2(6))。 A社において、b棟は投資の意思決定の単位と考えられるため、b棟は固定資産の減損を検討する際の資産のグルーピングの単位に該当すると考えられる。そのため、【図2】のように減損会計のステップに従って、投資額の回収が見込めないほどの収益性の低下があるか否かについて慎重に検討する必要がある。 【図2】 なお、減損の兆候には【図3】のように4つの例示がある。本ケースの場合は資産又は資産グループが遊休状態となり、将来の用途が定まっていないので、使用方法について回収可能性を著しく低下させる変化がある場合(②)に該当すると考えられる(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針11、12)。 【図3】 減損の兆候がある資産又は資産グループについて、これらから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、投資額の回収が見込めないほどの収益性の低下があると判断され、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとなる。 資産又は資産グループに対する投資は、売却と使用のいずれかの方法によって回収されるため、回収可能価額は正味売却価額(資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算出される金額)と使用価値(資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値)のいずれか高い方の金額となる。     3 保険金の受領に伴う会計処理 《解説》 工場が火災により滅失した時点では、棚卸資産に対する火災保険及び固定資産に対する火災保険等の受領金額(以下「受取保険金」とする)が確定しておらず、工場の火災により発生した損失の金額を確定できない段階にある。 したがって、工場が火災により滅失した時点では、棚卸資産及び固定資産の帳簿価額を「火災未決算勘定」等の仮勘定に振り替えて固定資産等が滅失した事実のみを記帳する(なお、固定資産の場合、火災により滅失した工場建物等の減価償却費の計上については、期首から火災により工場が稼働できなくなった日までの月割額を当期の減価償却費として計上する)。 翌期になり、実際に受領する受取保険金が確定した時点で、以下のように会計処理を行う。 A社に過失が認められ、受取保険金の金額が「火災未決算」勘定の金額よりも小さい場合には、差額を「火災損失」等の勘定科目名称で特別損失に計上する。 受取保険金の金額が「火災未決算」勘定の金額よりも大きい場合には、差額を「保険差益」等の勘定科目名称で特別利益に計上する。 詳しくは次の【設例1】を参照のこと。 なお、当該保険差益が固定資産に係るものである場合には、一定の要件を満たせば圧縮記帳の制度を利用し、課税を繰り延べることができる。詳細は「4 保険差益に係る圧縮記帳」の項目を参照されたい。   1 受取保険金の金額が「火災未決算」勘定の金額よりも小さい場合) 受取保険金は3,000,000円であったとする。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (火災発生時) (保険金受取時) 2 受取保険金の金額が「火災未決算」勘定の金額よりも大きい場合) 受取保険金は8,000,000円であったとする。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (火災発生時) (保険金受取時)   4 保険差益に係る圧縮記帳 《解説》 火災保険に係る保険差益は、原則として益金となり課税所得を構成するが、これを原則どおりに課税すると様々な弊害が生じる。 本ケースにおいても、火災により法人の保有する固定資産が滅失又は毀損したため、支払を受けた保険金をもって被害を受けた資産に代わる同一種類の資産を取得する際に、その差益部分(保険差益)に対して課税すると、代替資産の取得ができなくなり、災害からの復旧が困難になるおそれがある。 このような事態を防ぐために、法人税法等では、圧縮記帳という課税を繰り延べる制度が設けられている。 本ケースで取り扱っている保険差益については、火災等による固定資産の滅失又は損壊により固定資産に対する火災保険等の支払を受け、その保険金等をもって被害資産と同一種類の固定資産を取得又は改良した場合に、取得又は改良に充てられた部分について圧縮記帳の適用が認められる。 保険差益の圧縮記帳の方法としては、①圧縮限度額の範囲内で固定資産の取得価額を損金経理により直接減額する方法(以下、「直接減額方式」)と、②圧縮限度額以下の金額を剰余金の処分により積立金として積み立てる方法(以下、「剰余金処分方式」)がある(なお、直接減額方式により取得価額を直接圧縮することは、取得原価主義に基づく費用の適切な期間配分の観点から適切ではないため、会計上は剰余金処分方式が望ましいと考えられる)。 損金算入できる圧縮限度額は、保険金が支払われた事業年度末までに代替資産を取得している場合、以下の算定式により計算される(法人税法第47条第1項、法人税法施行令第85条)。 なお、保険金等の支払を受けた事業年度に代替資産の取得又は改良ができない場合でもその翌期首から原則として2年以内に代替資産の取得又は改良をする見込みであるときは、圧縮限度額の範囲内の額を特別勘定として経理し、損金の額に算入することができる。 具体的な処理方法については、次の【設例2】を参照されたい。   1 直接減額方式 (圧縮損の計上) 2 剰余金処分方式 (圧縮積立金の積立) (※) 保険差益(8,000,000円-4,000,000円-500,000円)×(改定保険料のうち代替資産の取得に充てた金額(6,000,000円)/改定保険金(7,500,000円))   【検討事項のチェックリスト】 ~工場における火災発生の場合~ ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)

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#渡邉 徹
2016/07/21

被災したクライアント企業への実務支援のポイント〔会計面のアドバイス〕 【第2回】「費用・損失の計上①」

被災したクライアント企業への 実務支援のポイント 〔会計面のアドバイス〕 【第2回】 「費用・損失の計上①」   公認会計士・税理士 新名 貴則   1 被災時の損失 地震や豪雨などによって法人が被災した場合、その被害の状況に応じて会計上の損失を計上することになる。被災によって直接的・間接的に法人に発生する損失としては、次のようなものが挙げられる。 被災によってこのような損失が発生した場合、会計上も何らかの対応が必要となるが、その内容は被災が決算前であるか、決算後であるかによって変わってくる。 金額が確定している費用・損失はもちろんのこと、確定していないものであっても、原則として見積り計上を行うことになる。データ等が充分に揃わず合理的な見積りができない場合には、注記を行うことになる。 災害による費用・損失の見積り計上を行う場合、次のような理由から合理的な見積りを行う上での制約が発生することが考えられる。 「東北地方太平洋沖地震による災害に関する監査対応について」(日本公認会計士協会 平成23年3月30日)では、上記のような状況に対する監査上の基本的な考え方が、次のように述べられている。 上記はあくまで監査上の考え方であるが、法人が会計処理を行うに当たっても参考になる。つまり、災害の状況にもよるが、平時の決算における合理的な見積りと比較して、災害発生時の決算における合理的な見積りにおいては、ある程度の概算による処理も許容される場合があるということである。もちろん、そうした制約下でも可能な限り合理的と考えられる見積りを行い、かつ、重要な制約事項は開示する必要がある。   2 個別の会計処理 上記の基本的な考え方を踏まえ、法人が被災した際に発生しうる費用・損失に関する個別の考え方は、次のとおりである。 (了)

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#新名 貴則
2016/07/21

金融商品会計を学ぶ 【第25回】「ヘッジ会計⑥」

金融商品会計を学ぶ 【第25回】 「ヘッジ会計⑥」   公認会計士 阿部 光成   引き続き、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)及び「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)におけるヘッジ会計について述べる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 予定取引の定義 ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象には、「予定取引」により発生が見込まれる資産又は負債も含まれる(金融商品会計基準30項)。 予定取引には次の2つの種類がある(伊藤眞、荻原正佳編著『改訂8版 金融商品会計の完全解説』(財経詳報社、平成21年7月)346ページ)。   Ⅱ ヘッジ対象となり得る予定取引の判断基準 金融商品会計基準注解12における「契約は成立していないが、取引予定時期、取引予定物件、取引予定量、取引予定価格等の主要な取引条件が合理的に予測可能であり、かつ、それが実行される可能性が極めて高い取引」に該当するか否かを判断する際には、例えば、以下の項目を総合的に吟味する必要がある(金融商品実務指針162項、327項~332項)。 金融商品会計基準注解12における「未履行の確定契約に係る取引」について、当該契約を解除する場合の対価が全く不要か又は軽微である場合は、上記と同様の検討を行い、ヘッジ対象になり得るか否かを判断する。 (了)

#No. 178(掲載号)
#阿部 光成
2016/07/21

商業登記申請時の株主リスト添付義務化について 【第2回】「株主名簿整備の方法と会社のリスクマネジメント」

商業登記申請時の株主リスト添付義務化について 【第2回】 「株主名簿整備の方法と会社のリスクマネジメント」   司法書士法人F&Partners 司法書士 本橋 寛樹   前回は株主リストの登記添付書面の義務化の内容と、株主リスト作成にあたり株主名簿整備の必要性について確認した。 今回は、株主名簿整備の方法と、会社のリスクマネジメントについて記述していく。   【株主名簿整備の方法】 株主名簿を整備するにあたり、自社以外で株主の情報が記載される資料を以下列挙した。自社の資料で現状の株主の把握が困難である場合、保存されている可能性のある機関、関係者に問い合わせをして株主を確認する方法が考えられる。   【会社のリスクマネジメント】 株主名簿を整備することにより、以下の事項について検討する機会が生まれる。これらは早いうちに対策を講じれば、コンプライアンス強化、安定した会社の意思決定、円滑な事業承継につながる。  過料制裁のおそれ 株式会社は、株主名簿をその本店(株主名簿管理人がある場合にあっては、その営業所)に備え置かなければならない(会社法125条1項)。また、会社は原則として、営業時間内はいつでも株主又は会社債権者からの株主名簿の閲覧・謄写の請求に応じなければならない(会社法125条2項)。これらの違反に対しては100万円以下の過料の制裁がされる(会社法976条)。  判断能力低下の株主 株主の判断能力低下により、議決権を行使することができない場合、当該株主の所有株式数によっては会社の意思決定に影響が生じる場合がある。 大株主の判断能力が低下してからでは、会社の意思決定が滞ってしまうおそれがある。後見制度利用の場合、後見人が議決権の代理行使をすることになる。しかし、後見人は会社経営に精通しているとは限らず、また成年被後見人の財産を守る公正中立的な立場が求められるため、議決権行使に限界がある。 大株主の健全な判断能力があるうちに、会社の重要な意思決定に直結する定款変更等の決議可決に必要な総株主の議決権の3分の2以上の議決権が有効に行使される体制づくりが望ましい。 株主名簿整備時に、株式を推定相続人への贈与や後継者への譲渡、株主ごとに議決権に関して異なる取扱い(会社法109条2項)等、株式のマネジメントを検討する機会を設けるとよいだろう。  所在不明株主 株式会社が株主に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主の住所(当該株主が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)に宛てて発すれば、たとえ到達しなくとも通常到達すべきであった時に到達したものとみなされる(会社法126条)。 当該住所、連絡先に対して発信された通知、催告が5年以上継続して到達しない場合には、会社は以後、当該株主に対し通知、催告することを要しない(会社法196条1項)。 また、当該株主が継続して5年間その住所又は会社に通知した場所において剰余金の配当を受領していないものについては、会社は利害関係人への公告及び一定の方法で売却することができる(会社法197条1項2号)。当該売却により、会社は所在不明株主の管理から手を放すことができる。 そもそも株主名簿が整備されていなければ、株主名簿上に記載の住所地に通知を発することができないため、会社の通知、催告に関する免責がされない点や所在不明株主の株式が宙に浮く点等、会社にとって不安定な状態が続く。株主名簿の整備は法的安定を図る一歩となる。  名義株式 平成2年改正前の旧商法では、会社設立にあたり最低7名の発起人が求められていた。実際は会社代表者が1人で出資していたとしても、身内や会社従業員等の他人名義を借りて発起人の頭数を揃えていた事情があったとされる。発起人は1株以上引き受ける必要があることから、形式上最低でも7名の株主が誕生することになる。 会社設立後に名義を借りる必要がなくなった後も、真の所有者へ名義変更されないまま長年放置されると、名義貸し株主から議決権行使や配当金の要求等の権利主張をされるおそれや、その株主に相続が発生し、株式が分散するリスクが高まる。 そこで、会社の対策として、「株式の実質所有者が創業者である旨の合意書」といった、株主を客観的に確認するための書面を取り付けることが考えられる。親戚や知人等、創業者と関係があった者が会社設立当時名義貸し株主となることを考えると、創業者が健在のうちに名義貸し株主と接触して対応するのが望ましい。   【むすび】 株主リストに係る改正は、従来株主名簿の整備が進めていなかった会社にとって、登記手続での負担が増えたのは想像に難くない。一方で株式のマネジメントをきっかけにして会社の安定した運営につながる機会の1つとして考えることもできる。 会社法に精通した司法書士や事業承継に強い税理士等の法律専門職の立場からすると、役員の任期管理に加えて、株主の変動を把握する仕組みづくりが今後いっそう求められていくだろう。付加サービスを作出する1つの機会になるのではないだろうか。 (連載了)

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#本橋 寛樹
2016/07/21
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