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《速報解説》 会計士協会、実務指針案へのコメント等を受け『合意された手続業務に関する実務指針』に係るQ&A(公開草案)を公表

《速報解説》 会計士協会、実務指針案へのコメント等を受け 『合意された手続業務に関する実務指針』に係るQ&A(公開草案)を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成28年4月27日、日本公認会計士協会は、監査・保証実務委員会研究報告「専門業務実務指針4400『合意された手続業務に関する実務指針』に係るQ&A」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 Q&A(公開草案)は、同日に日本公認会計士協会が公表した専門業務実務指針4400「合意された手続業務に関する実務指針」(以下「専門実4400」という)を実施する際に理解が必要と思われる事項について、Q&A方式によって解説を提供し、会員の理解を支援するために作成したものである。 意見募集期間は平成28年5月27日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 次のQ&Aが取り扱われている。 以下では特徴的な項目について述べる。 1 専門実4400の適用対象となる業務(Q2) すべての調査報告業務に専門実4400の適用が強制されるわけではない。 実施結果の利用者のニーズに応じて合意された手続業務を実施したことを記載する報告書を発行する場合には、業務実施者は専門実4400を適用することが求められている。 2 適用対象となる業務の例示(Q3) 専門実4400が適用されることが想定される業務として、例えば、次のものがあげられている。 3 会社の買収に関する調査への適用(Q4) 専門実4400付録1には、会社の買収に関連した合意された手続業務に係る実施結果報告書の文例が記載されている。 付録1は例示であり、会社の買収に関する財務状況の調査(以下「買収調査」という)について、常に合意された手続業務として実施することが求められているわけではない。 買収調査について、合意された手続業務として業務を実施するかどうかは、報告書の利用者のニーズに応じて決定されることになる(専門実4400A1項)。具体的には、専門実4400を適用して合意された手続業務として実施するか、合意された手続業務以外の調査報告業務として実施するかを業務契約において定め、業務を実施することとなる。 任意に行う買収調査において、報告書の利用者から「合意された手続」である旨を記載することが特に求められておらず、また手続やその実施結果について、専門実4400の文例のように詳細かつ具体的な記載ではなく概括的なもので足り、むしろ、業務の実施の過程で気が付いた情報の作成や内部統制等に関する助言等の記載が求められているのであれば、報告書の利用者のニーズに照らして、合意された手続以外の調査報告業務として実施することが考えられると述べられている。 (了)

#No. 167(掲載号)
#阿部 光成
2016/05/06

《速報解説》 「合意された手続業務に関する実務指針」が確定~H28.10.1以降発行の合意された手続実施結果報告書からの早期適用も可~

《速報解説》 「合意された手続業務に関する実務指針」が確定 ~H28.10.1以降発行の合意された手続実施結果報告書からの早期適用も可~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成28年4月27日、日本公認会計士協会は、専門業務実務指針4400「合意された手続業務に関する実務指針」を公表した。これにより、平成27年12月22日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 実務指針は、国際監査・保証基準審議会(IAASB)が策定した、国際関連サービス基準4400「財務情報に対する合意された手続業務」(International Standard on Related Services 4400, Engagements to Perform Agreed-Upon Procedures Regarding Financial Information (Previously ISA 920))を基礎とするものであり、監査事務所が実施する合意された手続業務に関する実務上の指針を提供するものである。 公表に際して、「専門業務実務指針4400『合意された手続に関する実務指針』(公開草案)に対するコメントの概要とその対応」が公表されている。 公開草案へのコメント等を受け、実務の参考に資するため、監査・保証実務委員会研究報告「専門業務実務指針4400『合意された手続業務に関する実務指針』に係るQ&A」(公開草案)が公表されており、平成28年5月27日まで意見募集されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 合意された手続業務の特質 合意された手続に関する業務実施者の報告は、手続実施結果を事実に則して報告するだけである。つまり、業務実施者の報告は、手続実施結果から導かれる結論の報告も、保証の提供もしないということである。「合意された手続業務」と「保証業務」は、その性質が異なる(5項、6項)。 実施結果の利用者は、業務実施者から報告された手続実施結果に基づいて、自らの責任で結論を導くこととなる(5項)。 2 実務指針の対象 実務指針は、以下を対象とする合意された手続業務に対して適用される(2項)。 いずれの場合においても、業務の対象とする情報等は、業務実施者が十分な知識を有し、手続実施結果を事実に則して合理的に識別できるものであることを前提としている(2項)。 業務実施者とは、専門業務(実務指針では合意された手続業務)を実施する者をいい、業務執行責任者又は業務チームの他のメンバー、場合によっては監査事務所を含めて使用される(12項(3))。 3 合意された手続実施結果報告書の特質 合意された手続実施結果報告書は次の特質をもっている(7項)。 4 要求事項と適用指針 実務指針は要求事項と適用指針に分けて規定されている。 要求事項は次のとおりである。 また、実務指針では次の付録が示されている。   Ⅲ 適用時期等 監査・保証実務委員会研究報告第20号「公認会計士等が行う保証業務等に関する研究報告」(平成21年7月1日付け公表)の「14.合意された手続(Agreed upon procedures)」については、実務指針の適用以後は、実務指針の規定が優先することとなる(常務理事前文)。 (了)

#No. 167(掲載号)
#阿部 光成
2016/05/06

《速報解説》 純資産価額方式に必要な「評価差額に対する法人税額等相当額の控除割合」、平成28年4月1日以後の相続等から37%へ

《速報解説》 純資産価額方式に必要な 「評価差額に対する法人税額等相当額の控除割合」、 平成28年4月1日以後の相続等から37%へ   Profession Journal編集部   平成28年度税制改正で法人税率が引き下げられたことに伴い、このたび財産評価基本通達の一部改正が公表され、純資産価額方式により取引相場のない株式を評価する際に用いる「評価差額に対する法人税額等相当額」の控除割合を37%(改正前:38%)とする見直しが行われた。 変更後の控除割合は、平成28年4月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価に適用される。 なお、上記の変更に伴い、取引相場のない株式(出資)の評価明細書の様式及び記載方法についても改正が行われている。 - 補 足 - 取引相場のない株式等を評価する場合の純資産価額方式は、次の算式により計算される。 〈算式〉 この場合の「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」は、「相続税評価額による純資産価額」から「帳簿価額による純資産価額」を控除した残額に「法人税(地方法人税を含む)、事業税(地方法人特別税を含む)、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合」として38%を乗じて計算した金額とされていた。 (※) この割合は昨年(平成27年)も改正されており、平成27年の改正前は40%であった。 今年度の税制改正により平成28年4月1日以後開始事業年度から法人税率が23.9%から23.4%へ引き下げられたことで、上記の割合の根拠となる税率が変わることから、今回の通達改正により37%となった。 ※「第5表 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」より一部抜粋 (了)

#No. 167(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2016/04/28

プロフェッションジャーナル No.167が公開されました!~今週のお薦め記事~

2016年4月28日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.167を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2016/04/28

山本守之の法人税“一刀両断” 【第22回】「訴訟のわかれ道~認知症と損益通算」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第22回】 「訴訟のわかれ道~認知症と損益通算」   税理士 山本 守之   はじめに 平成28年2月1日最高裁第3小法廷は、平成19年愛知県大府市の認知症で徘徊中の男性A(当時91歳)が列車にはねられ死亡した事件をめぐりJR東海が家族に720万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審で、介護する家族に賠償責任があるかは「生活状況などを総合して決めるべきだ」とする画期的判断を示しました。 判決の推移は次のようになります。 民法第714条は、責任能力のない人(事例ではA)の損害賠償責任は「監督義務者が負う」としています。しかし、精神上の障害で責任能力がない人の監督義務者は改正前の「保護者」(精神障害者福祉法)や「後見人」(民法)による監督義務者に該当するとはいえません。 次に民法752条では夫婦に同居・協力・扶養の義務があるとしていますが、これは夫婦間相互の義務であり、第三者との関係で、夫婦の一方に何かの義務を課すものではないですから、夫婦の一方が監督義務者とはいえません。 (注) もっとも監督義務ではなくでも、責任能力がない人との関係や日常生活での接触状況に照らして特段の事情が認められる場合は、賠償責任を問えます。 また、「監督義務者」に準ずる立場は、生活状況や介護の実態などを総合的に考慮して判断すべきだ、という基準を示しました。 事例について、これを考えると、妻は当時85歳で要介護1の認定を受け、長男は横浜在住で20年近く同居していなかったことなどから「準ずる立場」にも該当しないとしました。 妻の介護の状況に即した判決といえます。 なお、2人の裁判官(岡部喜代子・大谷剛彦の両裁判官)は、長男は「監督義務者に準じる立場」に当たるが、義務を怠らなかったための責任は免れるとの意見を述べました。 同じ裁判所の判断でも、本稿で取り上げる租税訴訟では、人間の温かみを感じる判決がないのはどうしてでしょうか。   Ⅰ 租税法の遡及適用 1 3つの訴訟 従来、土地建物の譲渡損益とその他の所得の譲渡損益は通算されていましたが、平成16年の税制改正でこれが禁止されたのは、税法の遡及禁止の原則に反するという納税者の主張が次のように否定されたことが問題でした。   2 納税者勝訴の内容をみる 8つの判示(福岡事件第一審、第二審、千葉事件第一審、第二審、最高裁、東京事件第一審、第二審、最高裁)のうち納税者が勝訴したのは福岡地裁の第一審だけで、他はいずれも国側が勝訴となっていますので、まず、納税者勝訴となった福岡地裁の判決を取り上げます。   Ⅱ 福岡事件 福岡事件の第一審は次のように損益通算を禁止した規定は違憲無効であるとしました。 1 違憲の判断 平成16年の税制改正は、平成16年3月26日に成立し、同月31日に公布、同年4月1日に施行されたものですが、施行前である同年1月6日から3月31日までの土地建物等の譲渡の譲渡損益とその他の所得の損益通算の禁止は「租税法規不遡及禁止の原則」に反します。   2 期間税の理論 1に対して、国側は、所得税は期間税であり、 と主張しました。 この国側主張に対して裁判所では として排斥されました。   3 判示事項の内容   Ⅲ 最高裁(東京事件) 1 取り上げる事案 上述した3つの事件のうち、福岡地裁を除く裁判所では国側が勝訴し、税制改正が遡及立法であるという納税者の主張が否認されたものですが、このうち東京事件の最高裁判決を検討してみましょう。 (注) 東京事件としていますが、国側の処分庁は芦屋税務署長、目黒税務署長、吹田税務署長です。   2 判決の概要   Ⅳ 民間の目からみたコメント 1 福岡事件の内容 問題のきっかけは平成16年の所得税の改正でした。改正内容は、不動産売買で生じた損失とその他の所得の損益通算を禁じたものです。 ところで、福岡事件の原告Xさんは、「平成16年1月以降の譲渡にさかのぼって適用する」という規定が問題で、3月に譲渡損があったXさんは、これを損失として他の所得と通算できないために173万円の税が増加してしまいました。 これに対してXさんは、この措置は「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と規定した憲法84条に違反しているとして、福岡地裁に提訴しました。 この場合、Xさんは母親の介護をしていたので、弁護士もつけずに本人訴訟で「違憲である」と主張しました。 第一審の福岡地裁では、「損益通算の適用を受けられなくなった納税者に適用される限りにおいて租税法規定遡及の原則(憲法84条)に違反し、違憲無効というべきである。」として納税者勝訴としました。 ところが、二審の福岡高裁は「租税法は立法府の政策的、技術的な判断に委ねるほかなく、その裁量的判断を尊重せざるを得ない」として逆転国側勝訴としています。本人訴訟となったAさんは3年間の争いに疲れ果て、上告を断念しました。   2 行政的判断となる理由 税務訴訟となると、裁判官も税務の専門的知識の分かりにくさに困るようです。司法試験でも選択科目として「租税法」を選んで合格したのはわずか6%で、他の科目に比べて少ないのです。 東京地裁の裁判官室の隣には行政調査官室があり、国税庁から出向している調査官3人が裁判官の相談を受けます。納税者と国税庁が争っている事件で裁判官の相談を受ける調査官が国税庁出向というのは納得できるでしょうか。   3 遡及的適用とされる理由 3つの訴訟のいずれも事件を遡及適用でないとした理由は、「所得税は期間税だ」とする国側の主張です。 国側の主張では、所得税は期間税(一定の期間の所得を課税標準とするもの)ですから「1暦年の途中においては納税義務は成立していないので、暦年途中の法改正によってその暦年における所得税の内容を変更する本件改正は、既に成立した納税義務の内容を変更するものではなく、遡及適用に当たらない」というものです。この理論で弁護士や税理士ほど納得してしまうものです。 つまり、所得税は期間税であるから「所得税の納税義務が成立するのはその暦年の終了の時であって、その時点では当該改正法が既に施行されているのであるから、納税義務の成立及びその内容という観点からみれば、当該改正法が遡及して適用されその変更をもたらすものであるということはできない」という理論一見専門家向けでありますが、改正所得税の施行は4月1日なのに3月に譲渡(1月~3月)したものが適用されるのは、まさに遡及適用(違憲)だという素人向けの素直な考え方はできないのでしょうか。   4 税務訴訟にも人間的判断を 本稿の「はじめに」に述べた認知症訴訟の最高裁判決も、専門家向けの考え方では、妻や長男に賠償責任があるとする考え方(現に地裁・高裁ではこの考え方でした)が、最高裁の専門知識によらない素直な素人的な判断力がされました。 税務訴訟にもこのような判断ができないものでしょうか。 (了)

#No. 167(掲載号)
#山本 守之
2016/04/28

〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第3回】「別表8(1) 受取配当等の益金不算入に関する明細書」及び「別表8(1)付表 受取配当等の額の明細書」

〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第3回】 「別表8(1) 受取配当等の益金不算入に関する明細書」 及び 「別表8(1)付表 受取配当等の額の明細書」   公認会計士・税理士 菊地 康夫   Ⅰ はじめに 本連載では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、複数の書き方パターンがある様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 今回は、平成27年度改正により、平成27年4月1日以後開始する事業年度から、受取配当等の益金不算入の対象となる「株式等の区分」及びその配当等の「益金不算入割合」が改正となったことによって、記載事項が増えた「別表8(1) 受取配当等の益金不算入に関する明細書」と、新しい様式として付け加わった「別表8(1)付表 受取配当等の額の明細書」を採り上げる。   Ⅱ 概要 この別表は、法人が内国法人から受ける配当金等の額について、「受取配当等の益金不算入」の規定(法人税法第23条等)の適用を受ける場合に作成する。 そもそも法人が払う配当金は、稼いだ利益から法人税を支払ったあとの「税引後利益」を原資としているので、その配当金を受け取った法人側でその利益にさらに法人税が課されると、いわば「二重課税」になってしまい不合理であることから、これを解消するためにその受取配当等を課税所得から減算するための制度が「受取配当等の益金不算入」である。 平成27年4月1日以後開始する事業年度から改正となった、益金不算入の対象となる株式等の区分及びその配当等の益金不算入割合は次の表のとおり。 (注) その他にも、通常の株式投資信託の収益の分配金については、改正前は収益の分配金の2分の1の金額の50%相当額が益金不算入であったが、その全額が益金不算入とされるなどの改正が行われている。 改正後の各区分の判定方法は次のとおりとなる。 完全子法人株式等 ・・・その配当等の額の計算期間(直前の配当基準日の翌日から今回の配当基準日までの期間をいう)の初日から当該計算期間の末日まで継続して完全支配関係がある場合。 関連法人株式等 ・・・その配当に係る基準日以前6ヶ月間、継続して3分の1超の保有割合である場合。なお、改正前の関係法人株式等については、その配当の効力発生日以前6ヶ月間、25%以上の保有割合である場合とされていた。 その他の株式等 ・・・その配当に係る基準日において5%超の保有割合である場合。 非支配目的株式等 ・・・その配当に係る基準日において5%以下の保有割合である場合。 また、平成27年度改正においては、受取配当等の益金不算入額を計算するときの負債利子の取扱いも併せて改正され、次の表のとおりとされた。したがって、平成27年4月1日以後開始する事業年度の申告から、関連法人株式等についてのみ負債利子控除を行えばよいことになる。 (注) 同時に、負債利子控除額の計算における簡便法の基準年度が、平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度とされる改正が行われている。この結果、平成27年4月1日以後最初に開始する事業年度は、原則法のみしか採用できないことに留意する。   Ⅲ 「別表8(1)」及び「別表8(1)付表」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成27年4月1日以後終了する事業年度。 (ただし、本稿は税制改正が適用となる平成27年4月1日以後開始する事業年度を対象として解説している。なお、平成28年4月1日以後終了する事業年度からは改正後の別表様式が適用となるため、こちらも本稿の解説対象外となる。) (3) 別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (4) 別表の各記載欄の説明 別表8(1) [当年度実績により負債利子等の額を計算する場合]欄   別表8(1)付表 [各区分共通] [完全子法人株式等] [関係法人株式等又は関連法人株式等] [その他株式等] [非支配目的株式等] (了)

#No. 167(掲載号)
#菊地 康夫
2016/04/28

改正国税通則法と新たな不服申立制度のポイント 【第5回】「現在の審判所における取消裁決の傾向、効果的な主張、立証の在り方」

改正国税通則法と 新たな不服申立制度のポイント 【第5回】 (最終回) 「現在の審判所における取消裁決の傾向、効果的な主張、立証の在り方」   弁護士 坂田 真吾   ここまで4回にわたり、今般の通則法の改正のうち重要と思われる点について解説をしてきた。とはいえ、本改正については、証拠の閲覧権限の拡大等、いくつか注目すべき改正点はあるものの、課税処分を行うのは税務署、国税局であり、審査請求を審理するのは審判所であるという基本構造は変わらないので、新通則法の下においても、納税者として行うべき効果的な防御方法に大きな変化はないと思われる。 そこで今回は、連載の最終回として、審判所において取消裁決となるのはどのような事案であるのか、また、取消裁決を得るためには、納税者は主張、立証のどのような点に留意するべきであるのかについて、私見を述べることとする。   1 取消裁決の傾向と原因 (1) はじめに 審判所においては、概ね、毎年、10%前後の事案が取消裁決に至る。税務紛争事案は千差万別であって、取消裁決の明確な類型化はできないが、筆者の経験上、以下のような事例があり得る。 (2) 推計課税、移転価格課税など、数字の取り方による取消し(訴訟では取り消されないような事案でも) まず、課税処分が一定の推定的な計算に基づく推計課税や移転価格税制による課税などの場合には、評価的な要素が多分にあることから、比較的、取消裁決に至りやすいといえる。 仮に裁判所に係属した場合には推計過程等が不合理とまでは言えないとして取消しされないであろうと思われる事案でも、審判所としては取り消す、といった現象も生じていると思われる。裁判所は、法律解釈については自らの専門であるから精査するが、細かな計算過程については課税庁の裁量をそれなりに認める傾向があるといえよう。 これに対し、審判所(の職員)は、税額の計算過程については一種のプロ意識をもっており、原処分庁のした計算についても、自ら一から計算(推計)することを厭わず、その結果、事実上、推計的な事案での取消し率が高くなる傾向があると考えられる。 (3) 事実認定に無理がある事案 ① 形式的な事柄による判断 比較的多いのが、原処分の事実認定に、証拠から照らして無理がある事案の取消しである。これにはいくつかの原因が考えられる。 まず、調査担当者が、当事者間の契約書の文言などの形式的な事柄に拘泥して、実態と異なる認定をしてしまうことがある。 私法上の契約は、当事者間の意思の合致によって成立する。法律で書面作成が要求されていない限り、契約書等の書面は当該意思を立証する1つの手段に過ぎない。したがって、仮に、契約書にAと記載してあっても、特段の理由で実はBであるという場面もあるし、裁判所が事実認定をする場合には、契約締結に至った経緯、商慣習、契約後の各種の事情等を総合的に考慮して、契約の内容がAなのかBなのかを判断する。 例えば、審判所平成24年10月10日裁決(裁決事例集No.89)では、相続税の更正処分において、原処分庁は、被相続人の所有する建物についての賃貸借契約書が「建物(店舗)一時使用による賃貸借契約書」とされていたことから、当該建物を貸家でなく自用家屋として評価するべきであるとしたが、裁決では、契約締結後の更新状況、高額の保証金があること、相当額の賃料の支払いが継続されていること等の実態を認定し、継続した賃貸借契約があるとして、貸家として評価するべきであるとして原処分を取り消した。 思うに、税務調査の現場では、大量の調査対象者を短期間で調査しなければならないから、一種の割り切りとして、なるべく形式的な事柄で判断し、納税者に修正申告を勧奨するという取扱いがあるのではないかと推測される。しかし、審判所や裁判所の事実認定では、そのような取扱いを正面から認めることはできない。 ② 不合理な事実認定による通達の適用 ほかにも、事実認定を割り切って定式化した通達をそのまま適用し、不合理な事実認定をしている事案もあるものと考えられる。 例えば、相続税法基本通達9-9では、不動産等の名義変更があった場合において対価の授受が行われていないときは、原則として贈与として取り扱うとし、個別通達(名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて(直審(資)22(例規)、直資68(例規)))において、その名義人となった者(名義人となっていることを知らず、財産を使用収益していない場合に限る)が、申告等の期限までに名義を取得者等の名義とした場合に限って、贈与がなかったと取り扱う旨定めている。 しかし、これは、民法の通謀虚偽表示の理論等と合致しない形式的な取扱いであるから、当該通達にあるような事情だけで課税処分を行った場合には、取消裁決となる場合があるだろう。 ③ 納税者側が非協力の場合 また、これは必ずしも課税庁の責任ではないが、納税者側が調査に非協力で証拠を提出せず、納税者に有利な証拠も考慮されずに処分される場合がある。 これらの証拠が審査請求段階で提出されると、原処分の前提とした事実関係を審判所が認定できず、結果として処分が取り消されることがある。 この点、まれに、課税庁の職員は、「証拠の後出し」は理論上許されないという考えをしていることがある。 言うまでもなく、証拠はいつ提出してもよいのであり、提出が遅くなるということは、その信用性が低くなる要素(最近作成したのではないかという疑いが生じる)とはなっても、後出ししたから直ちに証拠として認められない、というものではない。 (4) 法解釈、適用に無理がある事案 また、原処分の法解釈、適用に無理があり、審判所がそのような解釈を採らずに取り消す事案もある。 当該原処分庁の解釈が法令解釈通達に沿う場合もある。例えば、利息制限法を超過する利率で貸付を行い、一定期間約定どおりに返済があった後、未収利息を収益計上する場合の計算について、所得税基本通達36-8の5、法人税基本通達2-1-26は、原則として約定の利息、残元本を基準に収益計上額を計算する旨定めているが、これは最高裁昭和46年11月9日判決と整合しない(最高裁は、制限利率を超過する利息部分は元本に充当されたことを前提に残元本額を計算し、それに係る未収利息額のみ収益とする)。 審判所平成23年12月1日裁決(裁決事例集No.85)は、このような法解釈により原処分の一部を取り消している。 筆者が審判所に勤務して印象的であったのは、事実認定のみが問題になる事案が多数を占める民事裁判とは異なり、審査請求事案では、事実関係に争いがなく、法解釈のみが争点となる事案が相当数存在するということであった。税法が複雑であり、頻繁に法改正があること等に由来するのであろう。 原処分庁が無理な法解釈をしている事案では、審判所は積極的に法解釈を示して処分の取消しを行うことがある。ただし、審判所としても、原処分を取り消せば原処分庁が訴訟提起することはできないし、審判所として法解釈を示すと課税実務への影響も大きいので、棄却をして裁判所の判断を仰ぐべきである、という意見になることもままあるものと考えられる。   2 納税者の主張、立証の在り方 取消裁決に至る、ということは、原処分に事実誤認か法律解釈・適用の誤りがあるということである。 したがって、取消裁決を獲得するためには、書面をもって、説得的に、原処分庁の事実誤認、法律解釈の誤りを主張し、証拠を提出する必要がある。 (1) 法律の趣旨に遡る まず、税法の解釈、適用が問題となる事例では、法的な主張を整然と行うことが肝要である。 単に条文、通達、実務上の取扱いを漫然と述べるだけではなく、所得税法、法人税法、相続税法等の根本的理解を前提に、当該論点に係る条文の文言、条文の趣旨、過去の類似事案の判例・裁決、判例・裁決の射程距離の分析、通達の文言や、課税庁が当該通達の趣旨をどのように考えているのか等を踏まえる必要がある。 なお、「他に調査を受けた事案ではこうだ」とか、「これまでこんな指摘を受けたことはない」式の議論(法律ではなく経験に力点を置く議論)は、ときとして税務職員の常識に訴えて効果を持つことはあるのであろうが、それでは税務職員が納得しないから処分がなされているはずなので、再調査の請求や審査請求段階ではさほど有効な主張にはならない場合が多いと考えられる。 また、「過去の照会事例やQAにこのように書いてある」式の議論は、一見もっともらしく聞こえるが、税務署側が当該照会事例等はこの事案に適用されないと考えているから処分がなされているはずなので、そのような議論だけでは水掛け論に終わる。 したがって、なぜ、当該照会事例と同様に本件を考えるべきかを理由を付けて説得する必要があり、そのためには、法律や法律の趣旨に遡って説明しなければならない。 (2) ストーリーをもって説明する 次に、事実の存否が問題になる事案では、事実関係や証拠関係を早い段階で確定させておくことが肝要である。 特に、税務調査段階で税務署側が把握していない事実、証拠については、可能な限り早期に整理し、提出する必要がある。早期に容易に提出できたはずなのに、審査請求、訴訟で後出し的に提出をすると、そのこと自体で信用性が低くなってしまう場合もあり得る。 事実や証拠の提出は、一見簡単なように見えて、創造的な作業である。事実は1つでも、見方によって何通りもの説明があり得る。 上でも述べたが、例えば契約書の文言は、契約書の作成経緯を抜きに解釈することができない場合がある。どのような事実関係が契約書作成の背景にあったのかをストーリーをもって説明することで、契約書の見え方が変わってくる。 また、常に、当方の主張に対する反論を考えながら事実、証拠を吟味することも重要である。一定の反論が想定される場合には、それを先回りして説明しておくことで、事実の説明の確からしさが補強されうる。 以上のことは、訴訟弁護士の基本をそのまま税務紛争に当てはめたに過ぎないが、再調査の請求、審査請求における効果的な主張、立証の在り方を考える際には、おろそかにできない視点であると信じる。   (連載了)

#No. 167(掲載号)
#坂田 真吾
2016/04/28

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例37(所得税)】 「「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算の特例」の適用が受けられたにもかかわらず、適用を失念したまま申告してしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例37(所得税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例 土地・建物等の譲渡による譲渡所得の金額と他の所得との間の損益通算は認められないが、次のいずれかの適用を受ける場合には損益通算が認められる。 (1) 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算の特例(措法41条の5) 個人が所有期間5年を超える居住用財産の譲渡(その個人の親族等に対する譲渡など一定のものを除く。以下「特定譲渡」という)をした場合において、その特定譲渡年の前年から特定譲渡年の翌年までの間に一定の買換資産の取得をし、かつ、その取得年の翌年までの間に居住の用に供したときは、その特定譲渡による譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額のうち一定の方法により計算した金額は、一定要件の下で他の所得との損益通算ができる。ただし、この損益通算の特例は、買換資産を取得した年の年末において、その買換資産の取得に係る住宅借入金等の残高がある場合に限り適用できる。 なお、損益通算の特例を適用した結果、控除しきれなかった損失金額があるときは、3年間の繰越控除が認められる。また、この特例と住宅借入金等特別控除制度は併用が可能となっている。 (2) 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例(措法41条の5の2) 個人が所有期間5年を超える居住用財産の特定譲渡をした場合(その譲渡資産の取得に係る住宅借入金等の残高がある場合に限る)において、その特定譲渡による譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額に係るものとして一定の方法により計算した金額(その譲渡資産に係る住宅借入金等の合計額からその譲渡資産の譲渡対価の額を控除した残額を限度とする。以下「特定居住用財産の譲渡損失の金額」という)については、一定の要件の下で、他の所得との損益通算ができる。 なお、損益通算の特例を適用した結果、控除しきれなかった損失金額があるときは、3年間の繰越控除が認められる。       (了)

#No. 167(掲載号)
#齋藤 和助
2016/04/28

裁判例・裁決例からみた非上場株式の評価 【第6回】「募集株式の発行等⑤」

裁判例・裁決例からみた 非上場株式の評価 【第6回】 「募集株式の発行等⑤」   公認会計士 佐藤 信祐   前回は、神戸地裁昭和51年6月18日判決について解説を行った。 【第6回】に当たる本稿では、東京地裁昭和52年8月30日判決、東京地裁昭和56年6月12日判決について解説を行うこととする。   6 東京地裁昭和52年8月30日判決・金判533号22頁 (1) 事実の概要 本事件は、第三者割当により新株100万株を1株当たり150円で発行しようとしたところ、①適正価格が338円であり有利発行に該当すること、②支配権獲得目的のためであることから、著しく不公正な方法による新株の発行であるとして、差止めを求めた事件である。 本稿は、非上場株式の評価についての連載であるため、前者の論点のみについて解説を行うこととする。 (2) 裁判所の判断 (3) 評釈 本事件も、類似業種比準価額方式が採用されているが、算定基準日以降の業績悪化を加味したうえで修正を行っているという点で興味深い判決である。 しかし、「本件新株の価額決定時までに相当程度低落しているものと推認」されるのであれば、その数値をある程度は算定すべきであり、やや大雑把な判決であると言える。また、「新株の消化可能性」について触れられている点も興味深い。上場会社では、新株の消化可能性を考慮して10%程度のディスカウントを行うことはあり得るが、非上場会社においても同様に解されるかどうかは当然に議論がなされるべきだからである。   7 東京地裁昭和56年6月12日判決・判時1023号116頁 (1) 事実の概要 本事件は、経営支配権に争いがあったところ、①取締役に反対派を再任しなかったこと、②自派の者に対して額面金額50円で第三者割当を行った事件につき、それぞれ損害賠償責任を追及した事件である。 本稿では、このうち、後者についてのみ解説を行うこととする。 (2) 裁判所の判断 (3) 評釈 このように、純資産価額方式を採用した理由としては、小規模会社であること、経営に関与できる立場にあったことであるため、その点については、一応合理的な判決であったということができる。 しかし、その後の減額については、業績悪化によるディスカウントと非流動性ディスカウントがそれぞれ行われているが、時価純資産方式を採用している中でこのようなディスカウントを行うことは聞いたことがなく、非常に違和感のある判決である。業績悪化によるディスカウントを考慮するのであれば、DCF方式、収益還元方式との折衷方式を採用すべきであり、非流動性ディスカウントを考慮するのであれば、時価純資産の算定において、個別の資産につき清算価値を考慮すべきであり、無理矢理数字を作りこんだと言われても仕方のない判決であるともいえる。 また、含み益に対する法人税相当額の控除については、税効果会計が導入されていなかった当時ではやむを得ないのかもしれないが、現在では、このような税効果を加味するのは当然のことであり、本判決の射程は及ばないと考えられる。 現在でも、DCF方式や収益還元方式の恣意性の高さにより、時価純資産方式との折衷を行う事例は見られるところであり、そのような事件では、本事件の内容を参考にすることができると考えられる。 次回では、大阪地裁平成2年2月28日判決及び京都地裁平成4年8月5日判決について解説を行う予定である。 (了)

#No. 167(掲載号)
#佐藤 信祐
2016/04/28

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第10回】「有価証券評価損」~有価証券評価損の計上が認められないと判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第10回】 「有価証券評価損」 ~有価証券評価損の計上が認められないと判断した理由は?~   中央大学大学院商学研究科 博士後期課程 (酒井克彦研究室所属) 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して行われた有価証券評価損の否認に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた長崎地裁平成18年11月7日判決(税資256号順号10565。以下「本判決」という)を取り上げる。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注)  素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本判決の判断 本判決は、次のとおり、本件処分は帳簿記載の基礎となる事実関係を否定してされたものではないから、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当するとした上で、理由付記に不備はないと判断した(この判断は、控訴審である福岡高裁平成19年4月10日判決・税資257号順号10682でも維持されている)。 (1) 求められる理由付記の程度 (2) 理由付記の十分性   4 私見 (1) 関係法令等の確認 内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されないのが原則であり(法法33①)、例外的に特定の事実が生じた場合にのみ評価損の損金算入が認められているところ、有価証券については、法的整理の事実がある場合を除くとすれば、次の要件を満たした場合に評価損の損金算入が認められる(法法33②、法令68①二)。 本件株式のような上場有価証券以外の有価証券に係る評価損の損金算入が認められるためには、「その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したこと」(法令68①二ロ)という上記〔1〕【2】の要件を満たす必要がある。 法人税基本通達は、この場合の「著しく低下した」というためには、①当該有価証券の当該事業年度終了の時における価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、②近い将来その価額の回復が見込まれないことという2つの基準をクリアする必要がある旨定めている(法人税基本通達9-1-7、9-1-11)。 ②の基準は条文に明記されているものではないが、企業会計原則第三の五B及び会社計算規則5条3項1号においても資産の評価損を計上する場合に求められているものであって、このような解釈は本判決を含む裁判例において認められる傾向にある(ただし、条文に明記されていない以上、厳密な意味での要件と解すべきか否かは議論があると考える)。 この点について、例えば、本判決の控訴審である福岡高裁平成19年4月10日判決(税資257号順号10682)は、大要次のとおり判示している。 (2) 求められる理由付記の程度 本件における帳簿書類の記載内容は明らかではないが、本件は、B社株式の回復見込みの有無に関する評価についてX社と課税庁の見解が相違しているケースであり、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当すると考える。 したがって、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (3) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 本件理由付記には、法人税法上、有価証券に係る評価損の損金算入が認められるためには、「その有価証券の資産価値がその帳簿価格に比べ異常に減少し、その減少が固定的で回復の見込みがない状態であること」という要件を満たす必要があるという法令上の根拠が示されている。そして、「貴法人からは、B社が5か年で債務超過を解消する計画である旨の説明あるいは資料の提示はあるものの、本件株式の価額が回復する見込みがないことについての具体的な明示がされていません。」として、上記要件を満たすための事実が明らかにされてない旨の記載がなされている。 そうであれば、本件理由付記は、その記載内容から法令上の根拠が明らかになるものであり、かつ、法令上の要件に対応する具体的な事実を記載するものであり、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものであるから、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものであると考える。 *  *  * 次回は、債権放棄による貸倒損失の計上を否認した上で、寄附金に該当するものとした法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 167(掲載号)
#泉 絢也
2016/04/28
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