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特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用(法人税法57条の2)の取扱い~「繰越欠損金の使用制限」が形式的に適用される事例の検討~ 【第1回】「欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の取扱い」

特定株主等によって支配された欠損等法人の 欠損金の繰越しの不適用(法人税法57条の2)の取扱い ~「繰越欠損金の使用制限」が形式的に適用される事例の検討~ 【第1回】 「欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の取扱い」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   1 はじめに 繰越欠損金が使用できなくなる税制として、組織再編税制や連結納税制度以外に「特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用」(法法57の2)という規定があるのをご存じだろうか。 この規定は「休眠会社規制」と呼ばれており、繰越欠損金を持つ休眠会社を買ってきて、そこで新しい事業を開始して節税しようという行為を規制するために設けられている。 そう聞くと、「ウチの会社や顧問先では休眠会社を買収して節税なんてしない」ということで、「そんな規定を知る必要はない」と考える方も多いと思うが、この規定は、繰越欠損金を活用しようという意図がない場合でも形式的に規制がかかってしまうことがあり、「うっかり規制されてしまった」「いつの間にか規制されていた」といったケースが多く、落とし穴のような規定となっている。 そこで、今回、「欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の取扱い」(注1)について、その規定の概要と「繰越欠損金を活用しようという意図がない場合でも形式的に規制がかかってしまう事例」を紹介していきたいと思う。 なお、本連載では、単体納税制度を採用している場合の「欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の取扱い」について解説したい。 また、本連載の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解であることをあらかじめお断りする。 (注1) 筆者は、この取扱いを「休眠会社規制」と表現することが、休眠会社の買収という限定された場面でしか適用されないという思い込みに繋がっていると考えているため、本連載ではその表現を使わないことにする。   2 欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の取扱い 欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の規定(法法57の2)とは、「内国法人で他の者との間に当該他の者による50%超の支配関係(特定支配関係)を有することとなったもののうち、特定支配関係を有することとなった日(支配日)の属する事業年度(特定支配事業年度)において特定支配事業年度前の各事業年度において生じた繰越欠損金又は評価損資産を有するもの(欠損等法人)が、支配日(特定支配日)以後5年を経過した日の前日までに次に掲げる事由(特定事由)に該当することとなった場合に、その該当することとなった日(該当日)の属する事業年度(適用事業年度)以後の各事業年度において、適用事業年度前の各事業年度において生じた繰越欠損金について、繰越控除ができない」という規定である(法法57の2、法令113の2)。 そして、欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の規定(法法57の2)が適用されることになる特定事由とは、次に掲げる事由となる(法法57の2①)(注2)。 なお、この特定事由の詳細については下記5(【第3回】以降)において事例を使って解説することとする。 (注2) 法人税法第57条の2第1項第6号では、特定事由として、「前各号に掲げる事由に類するものとして政令で定める事由」が定められているが、法人税法施行令では、政令で定める事由が規定されていない。 したがって、欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の取扱いのポイントは次のとおりとなる。 以下、これら①~④のポイントについて解説する。 ① 欠損等法人とは この規定は、欠損等法人に適用されるが、欠損等法人とは、買収者に50%超の株式等を所有された内国法人で、買収時点で繰越欠損金又は含み損資産を所有している法人をいう。 具体的には、欠損等法人とは、内国法人で他の者(注3)との間に当該他の者による特定支配関係(注4)を有することとなったもののうち、特定支配関係を有することとなった日(支配日)の属する事業年度(特定支配事業年度)において特定支配事業年度前の各事業年度において生じた繰越欠損金又は評価損資産(注5)を有するものをいう(法法57の2①)。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます (注3) 他の者には、内国法人、外国法人、個人のすべてが該当する。 (注4) 特定支配関係とは、他の者が内国法人の発行済株式等(自己株式を除く)の総数の50%を超える数の株式等を直接又は間接に保有する関係(他の者と内国法人と間の当該他の者による支配関係)をいう(法法57の2①、法令113の2①。下記《例1》)。この場合、他の者(法人に限る)と内国法人との間に同一の者による支配関係がある場合における当該支配関係は、特定支配関係に該当しない(法令113の2①②)。 したがって、「P社の100%子会社であるA社」と「A社の100%子会社(P社の100%孫会社)であるB社」との間のA社とB社との間のA社による支配関係は特定支配関係に該当せずに(A社はB社の欠損等法人の判定において他の者に該当しない)、P社とB社の間のP社による支配関係が特定支配関係に該当することになる(P社はB社の欠損等法人の判定において他の者に該当する。下記≪例2≫)。 つまり、欠損等法人の支配関係の連鎖の頂点に立つ個人又は法人が欠損等法人を買収した日が、その欠損等法人に係る特定支配関係を有することとなった日に該当することになる。 また、次に掲げる事由によって生じた支配関係は、特定支配関係に該当しない(法令113の2⑤)。 ● 適格合併、適格分割、適格現物出資、適格株式交換、適格株式移転 ただし、他の者による特定支配関係がある内国法人と当該他の者による特定支配関係がある他の内国法人(関連者)について、適格合併等によって、当該内国法人と当該関連者との間に当該関連者による支配関係が生じる場合、その支配関係は、当該関連者による特定支配関係に該当する。 例えば、P社(他の者)の100%子会社であるA社とB社について、B社がP社を吸収合併(逆さ合併)することによって、B社とA社との間にB社による支配関係が生じた場合は、新たに、A社について、B社を他の者にしたB社による特定支配関係が生じることとなる。 ● 内国法人の債務処理計画(更生手続開始の決定等に関して策定された債務処理に関する計画)に基づいて行われる当該内国法人の株式の発行又は譲渡 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます (注5) 評価損資産とは、内国法人が支配日において有する資産のうち、支配日における価額が支配日における帳簿価額に満たない次に掲げる資産をいう(法法57の2①、法令113の2⑥)。ただし、その満たない金額が内国法人の資本金等の額の2分の1に相当する金額と1,000万円とのいずれか少ない金額(基準額)に満たないものは、評価損資産から除かれる(法令113の2⑥)。 ● 固定資産 ● 土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く) ● 有価証券(売買目的有価証券(法法61の3①一)及び償還有価証券(法令119の14)を除く) ● 金銭債権 ● 繰延資産 ● 譲渡損益調整資産に係る譲渡損失額に相当する調整勘定に係る資産(法令122の14⑬) ● 資産調整勘定(法法62の8①) ② 特定事由が生じる一定の期間とは この規定は、繰越欠損金や含み損資産を所有する会社が新しい親会社(オーナー)に買収されてから5年以内に新事業を開始する場合に適用される。 具体的には、欠損等法人の繰越欠損金の使用制限は、特定支配関係を有することとなった日(特定支配日)以後5年を経過した日の前日までに特定事由に該当する場合に適用される(法法57の2①)。 また、次に掲げる事実が生じた場合は、これらの事実が生じた日までに特定事由に該当する場合に適用される(法法57の2①、法令113の2⑧⑨⑩)。 ③ 繰越欠損金の使用制限が生じる事業年度とは この規定では、特定事由に該当することとなった日(該当日)の属する事業年度(適用事業年度)以後の事業年度から繰越欠損金が使えなくなる(法法57の2①)。この場合、特定事由が第4号事由(適格合併に係る部分に限る)に該当する場合は、適格合併の日の前日を該当日とする(法法57の2①)。 ④ 使用制限の生じる繰越欠損金とは この規定では、適用事業年度前の事業年度において生じた繰越欠損金が使えない(法法57の2①)。つまり、組織再編税制では、支配関係を有することとなった日の属する事業年度前の事業年度において生じた繰越欠損金が使用できないが、この規定では、特定事由に該当することとなった日の属する事業年度前の事業年度において生じた繰越欠損金が使用できない。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます (了)

#No. 159(掲載号)
#足立 好幸
2016/03/03

裁判例・裁決例からみた非上場株式の評価 【第2回】「募集株式の発行等①」

裁判例・裁決例からみた 非上場株式の評価 【第2回】 「募集株式の発行等①」   公認会計士 佐藤 信祐   【第2回】以降は、募集株式の発行等の裁判例について紹介することとする。募集株式の発行等が有利発行になるものとして争いになる裁判例としては、差止め請求についての裁判例(会社法210条)と損害賠償についての裁判例(会社法212条、423条、429条)に大きく分けられる。 【第2回】に当たる本稿では、やや古い裁判例であるが、大阪地裁昭和47年4月19日判決について解説を行うこととする。   1 大阪地裁昭和47年4月19日判決・判時691号74頁 (1) 事実の概要 本事件は、大阪中小企業投資育成会社に投資を依頼し、1株当たり650円の発行価額で株式を発行したところ、少なくても1株当たり1,280円の発行価額で発行すべきであり、本件新株発行は有利発行に該当するものとして新株発行の差止めを求める仮処分が申請された事件である。 本事件では、商法の事件でも、未だに財産評価基本通達に基づいた評価を採用していた時代の事件であるため、評価方法の選定という意味では参考にならないが、少数株主にとっての株式価値で評価をされた裁判例であり、その点についてのみ限定すると、現在でも参考にすることができる事件である。 (2) 裁判所の判断 (3) 評釈 このように、裁判所は、配当還元方式が妥当であるとしたうえで、類似会社比準方式は「取引相場のない株式を取引相場のある株式と同視する点でむりがあり」とし、収益還元方式は「利益の相当部分は内部留保にまわされる」ことから「非支配株主によって所有される株式の評価には不適当」であるとし、純資産方式は「営業活動を継続する会社にとっては持分は観念的な形態にとどまるものであるからその適用は小規模な会社か解散直前の会社に限らる(原文ママ)べきであると」して採用しなかった。 しかし、「特に類似業種の会社と比較して利益の内部留保を多くし、配当を少くしている会社に配当還元方式を適用するのは株価の他の構成要素である利益、純資産等を全く無視することとなるから妥当でないとする見解があるが、以上の検討結果からみれば本件では被申請会社が内部留保を多くしていることの方が合理的であると考えられるので本件で配当還元方式を適用することは不当ではないと解する。」としており、理論上はともかくとして、実務上はこのような理由で低い配当利回りに基づく配当還元法が採用されかねないという点は理解しておく必要があろう。 そして、期待利回りを11~13%が妥当とし、配当率を15%から18%が妥当であるとした結果、評価額を577円から818円が妥当であるとして有利発行に該当しないものとした。財産評価基本通達は実際配当還元法により評価がなされているが、本事件では配当利回りを予想することにより算定されており、やや特徴的である。 なお、配当性向を20%、22%、30%とする鑑定が行われた結果に対して、「右の新株発行によって被申請会社は増資の外に株式取得による経営支配の恐れなく株式上場基準に達するまでの再投資、再々投資が期待でき、かつ企業の社会的信用が増大し、取引先、金融機関等からの企業評価が高くなるという実益があるのであるから、本件の場合には絶対的に公正といえる価額があったとすれば、それより25ないし30パーセント下廻って(原文ママ)も『著しく不公正』とはいえないと考える」としたうえで、育成料や長期保有による危険を加味したうえで、30%の引下げを行っている。 このようにやや乱暴なロジックであるため、本来であれば、単純に配当率を15%から18%とした評価のみを採用しておけばよかったように思えるが、昭和47年という古い裁判例であることから、十分な理論の積み重ねが無かったためであると推定される。 さらに、本事件では、内部留保による配当の成長を加味するゴードン・モデル方式が採用されていない。近年では、少数株主にとっての株式価値をゴードン・モデル方式による配当還元法とする解説が多く、いずれこの連載でも触れていきたいと思う。 このように、細かな評価方法にはいろいろと問題のある判決ではあるが、少数株主となる引受人に対して少数株主にとっての株式価値で第三者割当を行った事件として参考になるものと考えられる。また、投資育成会社は事業承継対策で活用されることの多い会社であり、実務上も参考になる判決である。 本連載でも触れていくが、有利発行の事件では、引受人が支配株主になるのか、少数株主になるのかで評価方法を変えている事件が多い。その一方で、最近、公表されたアートネイチャー事件では異なる視点からの判断がなされており、有利発行に対する裁判例の傾向を見るうえでも参考になる。ただし、実務上は、このような第三者割当を行う場合には、いずれにしても、有利発行の手続きを行うことが望ましいことは言うまでもない。 次回では、大阪地裁昭和48年11月29日判決について解説を行う予定である。 (了)

#No. 159(掲載号)
#佐藤 信祐
2016/03/03

マイナンバーの会社実務Q&A 【第5回】「マイナンバーの保管」

マイナンバーの会社実務 Q&A 【第5回】 「マイナンバーの保管」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   〈Q〉 会社が従業員から取得した個人番号を保管する際の対応について教えてください。   〈A〉 1 保管する書類・データ (1) 行政手続書類 従業員の個人番号を記載する行政手続書類は、以下の通りである。 ①と④は、会社で保管する。保管期間は、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間である。 ②と③は、給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表に添付して2部税務署へ提出し、1部を控えとして会社で保管する。保管期間は、最長7年間が限度である。 ⑤と⑥は、ハローワークへ提出後に返戻される書類(雇用保険被保険者証、雇用保険被保険者資格取得等確認通知書、雇用保険被保険者資格喪失確認通知書)に個人番号は記載されない。雇用保険被保険者証は従業員へ交付し、その他の書類は会社で保管する。個人番号が記載されない書類のため、保管期間については省略する。 (2) 本人確認書類 従業員の個人番号を取得する際の本人確認書類として以下の書類を受け取った場合、これらの書類を会社で保管する義務はないが、本人確認の記録を残すために保管することができる。 個人番号カードのコピー 通知カードのコピー 個人番号が記載された住民票のコピー (3) 特定個人情報ファイル 特定個人情報ファイルとは、従業員の個人番号等が記載された個人情報ファイルをいう。具体的には、従業員の氏名、住所等に個人番号が紐づけされた書類、または、データをいう。   2 保管場所 (1) 行政手続書類 ファイルに綴じて鍵付きキャビネット(又は金庫)に保管する。 (2) 本人確認書類 ファイルに綴じて鍵付きキャビネット(又は金庫)に保管する。 (3) 特定個人情報ファイル 書類は、ファイルに綴じて鍵付きキャビネット(又は金庫)に保管する。 データは、給料計算ソフト、マイナンバー管理用のソフト、クラウド、サーバーのいずれかに保管する。おすすめは、給料計算ソフトである。 給与所得の源泉徴収票(税務署提出用)と退職所得の源泉徴収票(税務署提出用)は給料計算ソフトで作成するのが一般的なことから給料計算ソフトにはマイナンバーの管理機能が標準装備されているので、追加の費用負担が生じない。これに対し、マイナンバー管理用のソフトは購入しなければならないし、クラウドやサーバーは保守費用がかかる。 また、給料計算ソフトは、従業員の氏名、住所、扶養親族といった個人情報が既に入力されているので個人番号と紐づけしやすく、特定個人情報ファイルを作成しやすい。 (了)

#No. 159(掲載号)
#上前 剛
2016/03/03

~税務争訟における判断の分水嶺~課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第8回】「電化手数料が「資産の譲渡等の対価」に当たるかについて、書面ではなく実体に即して判断された事例」

~税務争訟における判断の分水嶺~ 課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第8回】 「電化手数料が「資産の譲渡等の対価」に当たるかについて、 書面ではなく実体に即して判断された事例」   税理士 佐藤 善恵     (※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。 〔概要等〕 不動産賃貸業を行う納税者(甲)は、オール電化設備を各戸に備えた居住用賃貸マンション(本件マンション)の建設を発注し、電力会社から電化手数料名目で金員(電化手数料)を受領した。 甲は、電化手数料が課税売上に当たるとして、それを受領した課税期間の課税売上を100%として、マンション取得に関する建築請負代金等に係る消費税額の全額を仕入税額控除の対象として還付申告書を提出した。 問題となっている課税期間は、平成18年1月1日から同月31日までの課税期間(本件課税期間)である。また、主な事実関係を時系列にみると次のとおりである。 (※) 金額端数は切り捨て等している。   〔甲社の主張〕 (1) 本件電化手数料には報奨金的要素はあるが、役務提供を支払条件にしているのだから、対価性を否定して無償の給付と認定しなければならない根拠はなく、資産の譲渡等の対価に当たる。 (2) すなわち、甲社と電力会社が交わした本件覚書には、甲社がコンサルティング等の業務を行うことが本件電化手数料支払の対価であると明記されている。また、甲社は、現に、本件覚書に定められた業務を実行している。 (3) 他方、電力会社は、甲社の役務提供の対価であることを認識して本件電化手数料を支払い、課税取引として税務会計処理をしていることからすれば、甲社において本件電化手数料を非課税として扱うことは、消費税の転嫁の連鎖を切断することにもなる。 したがって、本件電化手数料は、資産の譲渡等の対価に当たる。   〔本件覚書に関する事実(一部)〕 電力会社と甲社との間で交わされた本件覚書には、要旨以下の記載がある。   〔大阪地裁の判断(要旨)〕 大阪地裁は、本件の判断に当たり、「本件覚書役務の提供が『資産の譲渡等』であり、本件電化手数料がその対価(反対給付)として支払われたものであるかどうか」について検討した。 具体的には、電化手数料の算定方法が、役務の履行回数や、履行期間に応じているのではなく、単に、給湯器の種類や契約電力による区分で定まる基本単価に、採用した戸数を乗じて算出している(※)ことに着目した。そして、本件電化手数料が、オール電化の採用それ自体に対する謝礼又は報奨金としての性質を有することは疑いのないところであると結論づけた。 (※) 例えば、同じようにオール電化を採用した場合でも、契約電力ベースが「2kW以上4kW未満」である場合には電化手数料は1万円とされているのに対し、「4kW以上8kW未満」である場合には7万円とされていること等、将来得られる電力需要に応じた額とされている。 そして、甲社の主張(本件電化手数料に報奨金的要素があるとしても、覚書記載の役務提供との対価関係を否定できない旨)に関しては、本件覚書の文言は、本件電化手数料の性質に関して重要な判断資料となるが、その文言が実体を反映していないような場合には、その文言を離れて、実体に即して本件電化手数料の性質を判断していく必要があると述べて、次のとおり、その主張を排斥した。   〔判断の分水嶺〕 本件の判断の分水嶺は、本件電化手数料の性質が、本件覚書の文言ではなく、その実際の性質に沿って判断されたことにある。本件電化手数料が、単純に「単価×戸数」で算出されているという事実から素直に考えると、本件電化手数料が報奨金の性質を有するという結論になるから課税取引には当たらない。 裁判所は、甲社の主張に応えるために本件覚書に記載された業務①と業務②に係る業務が実際にあったかについても検討しているが、甲社の主張事実は認められていない。   〔本判決が示唆するもの〕 一般的に、覚書のような書面があれば、それに記載された内容の事実が認められる方向になるわけだが、本件のように、明らかに書面の文言が実体と一致していない場合には、書面の内容どおりの事実があると認められる可能性は低くなる。 当然といえば当然だが、実務にあたっては、書面があれば何でも大丈夫という認識は持たないほうがよい。 なお、課税庁の「重要判決情報」によれば、調査担当者向けに、「備考」として次のようなポイントが記載されている。 (了)

#No. 159(掲載号)
#佐藤 善恵
2016/03/03

税務判例を読むための税法の学び方【77】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む(その5:「事業に従事したことその他の事由」の解釈①~問題の所在)

税務判例を読むための税法の学び方【77】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む (その5:「事業に従事したことその他の事由」の解釈① ~問題の所在)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   1 問題の所在 前回、前々回に分けて検討した所得税法56条であるが、同条は「生計を一にする」の意義のみならず「事業に従事したことその他の事由」についても議論がある。 そこで今回より、その点について争われた、前々回冒頭で紹介した「夫弁護士・妻弁護士事件(略して「妻弁護士事件」とも呼ばれている)」(最高裁平成16年11月2日判決)及び「夫弁護士・妻税理士事件(略して「妻税理士事件」とも呼ばれている)」(最高裁平成17年7月5日判決)について検討する。 これらの事案では、お互いに独立した事業を営む夫婦間の弁護士報酬や税理士報酬が必要経費として認められるか否かが争われている。 すなわち、この条文の解釈として、お互いに独立した事業については規定の範囲外という見解があるからである。 まずは条文を確認しよう。 まずこの条文の第1文だけ見ていく。この第1文は、「〜場合には」という条件を示した部分と、その条件に該当した場合に、居住者が生計を一にする親族等に支払った対価に相当する金額を必要経費に算入しないという部分、さらに、その親族のその対価に係る必要経費を居住者の必要経費に算入するという部分から構成されている。 問題はこの条件を示した部分の読み方である。 この部分の主語は、「居住者と生計を一にする配偶者その他の親族」である(この「生計を一にする」の範囲については以前検討している)。そしてそれが「対価の支払を受ける場合」に、この条件に該当することになるが、問題はその「対価」である。そしてこの「対価」は、その前の部分から、「その居住者の営む・・・所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から」支払いを受けた対価ということになる。 そしてこの下線部分を詳細に見れば、当該事業から対価を受ける理由として挙げられているのは「①その居住者の営む・・・所得を生ずべき事業に従事したこと」「②その他の事由」である。 ここで問題となるのは、まずは①について、「従事」の意味である。すなわち、「従事」であるから、独立した事業主相互の取引はここには含まれないと解すべきかという点である。 次に「②その他の事由」の範囲である。つまり、①の他の事由としてあらゆるものがここに含まれるのか、それともこれを限定的に読むべきかである。 というのも、本連載【第9回】及び【第15回】に記したように、「A、Bその他C」と「A、Bその他のC」は、明確に使い分けられている。 すなわち、「その他の」は、通常、前に置かれた名詞又は名詞句が、後に続く一層意味内容の広い言葉の一部をなすものとして、その中に包含される場合に用いられる「包括的例示」に用いられる。 これに対し、「その他」は、この言葉の前後の語句が独立しており、それぞれが、一応、別個の概念として並列的に並べる場合に使われる「並列的例示」に用いられる。 したがって、「事由」の例示が「①その居住者の営む・・・所得を生ずべき事業に従事したこと」であり、そうである以上、この事由にはあらゆることが含まれるのではなく、例示として挙げられた「①その居住者の営む・・・所得を生ずべき事業に従事したこと」と類似のものが含まれるということになる。もしそうなら「その居住者の営む・・・所得を生ずべき事業に従事したこと」の意味が何か問われてくる。 では次回から具体的に判決を見ていくこととする。 (続く)

#No. 159(掲載号)
#長島 弘
2016/03/03

平成28年3月期決算における会計処理の留意事項 【第3回】「企業結合会計基準等の改正」

平成28年3月期決算における会計処理の留意事項 【第3回】 「企業結合会計基準等の改正」 仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   前回に続き、平成28年3月期決算における会計処理の留意事項を解説する。 なお、以下では、3月31日を決算日とする会社を前提に解説している。   平成25年9月13日に以下の会計基準、適用指針が改正されている。 また、平成26年2月24日に日本公認会計士協会の以下の実務指針が改正されている。 ここでは、企業結合基準等の以下の主な改正点について解説する。なお、ここでは、すべて連結財務諸表作成会社のみに限定して解説している。   1 表示方法の変更 連結損益計算書、連結包括利益計算書、連結貸借対照表、連結財務諸表における1株あたり注記の表示方法が変更されている。 (1) 連結損益計算書及び連結包括利益計算書の表示方法の変更 連結損益計算書における「少数株主損益調整前当期純利益」は「当期純利益」に変更されている。また、「当期純利益」は「親会社株主に帰属する当期純利益」に改正されている。さらに、「少数株主利益」は「非支配株主に帰属する当期純利益」に改正されている(連結基準39(3)②③)。 有価証券報告書(2計算書方式)及び連結計算書類における連結損益計算書は、以下のようになる。 なお、1計算書方式の場合には、「当期純利益」の直後に、「親会社株主に帰属する当期純利益」及び「非支配株主に帰属する当期純利益」を付記する(連結基準39(3)③)。 (2) 連結包括利益計算書の表示方法の変更 2計算書方式における連結包括利益計算書における「少数株主損益調整前当期純利益」は「当期純利益」に変更されている(包括利益基準6)。また、「少数株主に係る包括利益」が「非支配株主に係る包括利益」に改正されている(1計算書方式及び2計算書方式共通。包括利益基準11)。 2計算書方式における連結包括利益計算書は、以下のようになる。 (3) 連結貸借対照表の表示方法の変更 連結貸借対照表の純資産の部における「少数株主持分」は「非支配株主持分」へ改正されている(純資産基準7(2))。 また、連結株主資本等変動計算書の表示区分における「少数株主持分」は「非支配株主持分」へ、利益剰余金の変動事由における「当期純利益」は「親会社株主に帰属する当期純利益」へ改正されている(株主資本基準7、株主資本適用指針6、11)。 (4) 連結財務諸表における1株あたり注記における変更 連結財務諸表における1株あたり情報の注記において表示する「当期純利益」は「親会社株主に帰属する当期純利益」に改正されている(1株基準12)。 (1)~(4)をまとめると、以下のとおりである。   2 子会社株式の追加取得、一部売却等 子会社株式の追加取得、一部売却等の会計処理が変更されている。具体的には、以下の点について改正されている。 なお、持分法適用関連会社に対しては、以下のような改正は行われていない(持分法指針2-2(4))。また、持分法適用非連結子会社については、以下の改正のように会計処理することも、持分法適用関連会社と同様に会計処理することが認められている(持分法指針3-2)。 (1) 子会社株式の追加取得 改正前は、子会社株式を追加取得し、追加取得により増加した親会社持分(追加取得持分)と追加投資額との差額は、のれん又は負ののれんとして計上していた(損益取引としていた)。改正後は、損益取引として取り扱わず、当該差額は、資本剰余金として計上する(連結基準28)。当該会計処理により、資本剰余金が負の値となる場合には、資本剰余金をゼロとし、利益剰余金から減額する(連結基準30-2)。 連結会社が子会社株式を追加取得した場合、追加取得により増加した親会社の持分と追加投資額との間に生じた差額は連結財務諸表固有の一時差異に該当する。当該差額は資本剰余金として処理されることから、繰延税金資産又は繰延税金負債を計上する場合、相手勘定を資本剰余金として計上する(連結税効果指針40-2)。 (2) 支配の喪失を伴わない国内子会社株式の一部売却 支配の喪失を伴わない国内子会社株式の一部売却の場合、4つの改正点がある。 ① 売却による親会社の持分の減少額(売却持分)と売却価額との差額 子会社株式を売却した後も子会社に対する支配が継続している場合(例えば、100%子会社の株式のうち、20%を売却した場合)、改正前は、売却による親会社の持分の減少額(売却持分)と売却価額との差額を子会社売却損益に計上していた(損益取引としていた)。改正後は、損益取引として取り扱わず、資本剰余金として計上する(連結基準29)。当該会計処理により、資本剰余金が負の値となる場合には、資本剰余金をゼロとし、利益剰余金から減額する(連結基準30-2)。 ② のれん未償却額 改正前は、のれん未償却額のうち売却した株式に対応する部分を減額していたが、改正後は、減額しない(連結基準66-2)。 ③ その他の包括利益累計額 一部売却により減少する、その他の包括利益累計額は、改正前は当期純利益を構成していた(子会社売却損益に含められていた)ため、組替調整額の注記の対象となっていた。改正後は当期純利益を構成するものではないため、組替調整額の注記の対象とはならない(資本連結指針42)。 ④ 法人税等相当額 親会社の持分変動による差額(売却により生じた親会社の持分の減少額と売却価額との差額)に係る法人税等相当額(子会社への投資に係る税効果の調整を含む)について、改正前は、特段の調整は不要であったが、改正後は、資本剰余金から控除する(連結基準注9(2)、連結税効果指針39)。 なお、資本剰余金から控除する法人税等相当額は、売却元の課税所得や税金支払額にかかわらず、原則として、親会社の持分変動による差額に法定実効税率を乗じて算定する(連結税効果指針39)。 (3) 子会社の時価発行増資等 子会社の時価発行増資等に伴い、親会社の払込額と親会社の持分の増減額との間に差額が生じた場合(親会社と子会社の支配関係が継続している場合のみ)、改正前は、損益取引としていたが、改正後は、上記(1)及び(2)と同様に、資本剰余金として計上する(連結基準30)。当該会計処理により、資本剰余金が負の値となる場合には、資本剰余金をゼロとし、利益剰余金から減額する(連結基準30-2)。 子会社の時価発行増資等に伴い、増資前投資の連結貸借対照表上の価額及び親会社の増資引受額の合計額と増資後子会社資本の親会社持分額及びのれん又は負ののれんの未償却額の合計額との間に差額が生じた場合には、当該差額は連結財務諸表固有の一時差異に該当する。 時価発行増資等から生じた親会社の持分変動による差額は資本剰余金として処理されることから、当該一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債を計上する場合、相手勘定を資本剰余金として計上する(連結税効果指針40)。 (4) 追加取得、支配の喪失を伴わない一部売却により生じた資本剰余金のその後の取扱い 上記(1)から(3)で生じた資本剰余金は、その後、子会社に対する支配を喪失した場合であっても、純利益又は利益剰余金に振り替えることはない。したがって、資本剰余金として計上し続ける(資本連結指針49-2)。 (5) 追加取得や一部売却等が行われた後に支配喪失して関連会社となった場合ののれん未償却額 支配獲得後に追加取得や一部売却等(以下、「追加取得等」という)が行われた場合、のれんの発生及びのれんの減額はない。一方、その後、支配喪失して関連会社となった場合、のれんに対応する持分比率(当初、支配獲得時の持分比率)と実際の持分比率が異なるため、持分法に引き継ぐのれん未償却額をどのように算定するかが問題となる。 改正前では、追加取得等によりのれんが増減した場合、のれんに対応する持分比率と実際の持分比率は同じため、支配喪失して関連会社となった場合には、実際の持分比率に応じたのれん未償却額を算定し、持分法に引き継いでいた。 改正後は、支配獲得後の持分比率の推移等を勘案し、のれんの未償却額のうち、「支配獲得時の持分比率に占める関連会社として残存する持分比率に相当する額を算定する方法」や「支配喪失時の持分比率に占める関連会社として残存する持分比率に相当額を算定する方法」などの中から、適切な方法に基づき、関連会社として残存する持分比率に相当するのれん未償却額を算定し、持分法に引き継ぐ(資本連結指針45-2、66-6)。   3 取得関連費用 子会社株式取得の場合の取得関連費用(外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等(以下、「付随費用」という))は、改正前は、子会社株式の取得原価に含めていたが、改正後は、発生した事業年度の費用として処理する(企業結合基準26)。表示区分については、企業結合基準や連結基準で明示されていないが、キャッシュ指針の設例では、支配獲得時の付随費用は「販売費及び一般管理費」で計上し、追加取得時の付随費用は「営業外費用」で計上している。 当該会計処理は、連結財務諸表のみであり、個別財務諸表上は、従来どおり、子会社株式の取得原価に含める(会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」56)。 持分法適用会社の株式を取得した場合、投資会社の個別財務諸表及び連結財務諸表ともに、付随費用は株式の取得原価に含める(持分法指針2-2(3)、36-4)。ただし、持分法適用非連結子会社で連結子会社の会計処理に準じた取扱いによる場合は、付随費用は、発生した事業年度の費用として処理する。 付随費用について連結財務諸表と個別財務諸表で会計処理が異なるため、連結財務諸表固有の一時差異に該当する(連結税効果指針29-3)。 子会社株式の売却が行われた場合、個別財務諸表上は、付随費用が売却簿価に含まれているが、連結財務諸表上の売却持分には含まれていない。そのため、個別財務諸表上の取得価額に含まれている付随費用のうち売却した部分に対応する額については、連結財務諸表上、個別財務諸表に計上した子会社株式売却損益の修正として取り扱う(資本連結指針46-2)。売却によっても、支配が継続する場合は、修正後の子会社売却損益は、資本剰余金に振り替える(上記2(2)参照)。 子会社株式の一部売却により、関連会社となった場合には、連結財務諸表上、関連会社株式の投資原価には支配喪失以前に費用処理した支配獲得時の付随費用は含めない(資本連結指針46-2)。また、子会社株式の売却により、連結子会社及び関連会社のいずれにも該当しなくなった場合、付随費用のうち引き続き保有する部分に対応する額については、連結株主資本等変動計算書上の利益剰余金の区分に連結除外に伴う利益剰余金減少高(又は増加高)等で計上する(資本連結指針46-2)。   4 複数の取引が1つの企業結合等を構成している場合 複数回の株式の取得により子会社の支配を獲得した場合などについて、改正前は、連結基準や資本連結指針において複数の取引が1つの企業結合等を構成している場合の規定がなかったが、資本連結指針の改正により規定が設けられ、複数の取引が 1つの企業結合を構成している場合には、それらを一体として取り扱うこととなる。 通常、複数の取引が1事業年度内に完了する場合には一体として取り扱うことが適当であると考えられるが、1つの企業結合を構成しているかどうかは状況によって異なるため、当初取引時における当事者間の意図や当該取引の目的等を勘案し、また、事前に契約等により複数の取引が1つの企業結合等を構成しているかどうかなどを踏まえ、実態に応じて判断する(資本連結指針7-3、7-4)。   5 暫定的な会計処理 企業結合日以後の決算において、配分が完了していなかった場合は、その時点で入手可能な合理的な情報等に基づき暫定的な会計処理を行い、その後追加的に入手した情報等に基づき配分額を確定させる(企業結合基準(注6))。 そして、暫定的な会計処理の確定が企業結合年度の翌年度に行われた場合、改正前では、企業結合年度に当該確定が行われたとしたときの損益影響額を、企業結合年度の翌年度において特別損益に計上していた。 改正後は、企業結合年度の翌年度の連結財務諸表と併せて企業結合年度の連結財務諸表を表示するとき(有価証券報告書の場合)には、当該企業結合年度の連結財務諸表に暫定的な会計処理の確定による取得原価の配分額の見直しを反映させる(企業結合基準(注6)、企業結合適用指針70、73)。 一方、連結計算書類の場合には、期首残高に影響額を区分表示し、当該影響額の反映後の期首残高を記載する(株主資本基準5-3)。 当該企業結合年度の翌年度の連結財務諸表と併せて表示する企業結合年度の連結財務諸表の1株当たり当期純利益、潜在株式調整後1株当たり当期純利益及び1株当たり純資産は、当該見直しが反映された後の金額により算定する(1株基準30-6、1株適用指針36-3)。   6 連結キャッシュ・フロー 連結範囲の変動を伴わない子会社株式の追加取得又は一部売却に係るキャッシュ・フローの表示区分は、改正前は「投資活動によるキャッシュ・フロー」に表示していたが、改正後は、「財務活動によるキャッシュ・フロー」に表示する(キャッシュ指針9-2)。 また、連結範囲の変動を伴う子会社株式の付随費用及び連結範囲の変動を伴わない子会社株式の取得又は売却に係る付随費用は、改正前は、取得原価に含まれていたため、「投資活動によるキャッシュ・フロー」に表示していたが、改正後は、「営業活動によるキャッシュ・フロー」に表示する(キャッシュ指針8-2、9-2)。 なお、当該改正により表示方法の変更を行うこととなるが、比較情報の組替えは行わない(キャッシュ指針26-4)。   7 注記 改正により会計方針の変更の注記(以下、(1)参照)が必要となる。また、改正により追加されている注記項目(以下、(2)から(4))がある。   8 適用時期 (1) 原則 平成27年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首(暫定的な会計処理の確定の取扱いは平成27年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後実施される企業結合)から適用する(企業結合基準58-2(1)、連結基準44-5(1))。 (2) 早期適用 連結基準第39項の表示方法(上記1参照)に係る事項を除くすべての取扱いを同時に適用する場合には、平成26年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首(暫定的な会計処理の確定の取扱いは平成26年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後実施される企業結合)から適用することができる(連結基準44-5(2))。 したがって、連結基準第39項の表示方法に係る事項(上記1参照)については、平成27年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用するものとし、早期適用は認められない。 (3) 遡及適用 改正企業結合基準等を適用する際には、非支配株主との取引(上記2参照)及び取得関連費用(上記3参照)に関する定めについて遡及適用を行う。 ただし、適用初年度の期首から将来にわたって適用することができる(企業結合基準58-2(3)(4)、連結基準44-5(3)(4))。 なお、表示方法(上記1参照)に係る事項については、過去の連結財務諸表について組替えを行う。 (了)

#No. 159(掲載号)
#西田 友洋
2016/03/03

『繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針』の要点・留意点 【第4回】「企業の(分類4)と(分類5)のポイント」

『繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針』の 要点・留意点 【第4回】 「企業の(分類4)と(分類5)のポイント」   公認会計士 阿部 光成   今回は、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号。以下「適用指針」という)における企業の(分類4)と(分類5)について解説する。 適用指針の公表に際して、「企業会計基準適用指針公開草案第54号『繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)』の主なコメントの概要とそれらに対する対応」も公表されている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ (分類4)の要件と繰延税金資産の計上額   Ⅱ 主な留意点 (分類4)に関する主な留意点は次のとおりである(適用指針86項)。   Ⅲ (分類4)の企業が(分類2)又は(分類3)に該当する場合の取扱い 「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第66号)における例示区分④に関して次の意見があった(適用指針87項、88項)。 これらの意見に対して、適用指針は、(分類4)の要件を満たす企業について、将来の一時差異等加減算前課税所得の十分性を企業が合理的な根拠をもって説明する場合には、(分類2)又は(分類3)に該当するものとして取り扱う規定を設けることにより対応している(適用指針28項、29項)。 なお、(分類4)に係る分類の要件を満たす企業が(分類3)に該当するものとして取り扱われる場合、適用指針23項に従うこととされており、適用指針24項は適用されないことに注意する(適用指針89項)。 適用指針は、上記事項に関する例として次のものをあげており、今後の実務への適用に際して、参考になるものと考えられる(90項~93項)。   Ⅳ (分類5)の要件と繰延税金資産の計上額 (分類5)に関する主な留意点は次のとおりである(適用指針94項、95項)。 (了)

#No. 159(掲載号)
#阿部 光成
2016/03/03

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第10回】「連結と個別のコーディネート・ミス」

計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第10回】 「連結と個別のコーディネート・ミス」   公認会計士 石王丸 周夫   1 今回の事例 計算書類のドラフトにはうっかりミスがつきものです。 たとえば、こんなミスをよく見かけます。 【事例10-1】 連結損益計算書と個別損益計算書で、不統一な印象を与える表現がある。 【事例10-1】は、同じ会社・同じ年度の連結損益計算書と個別損益計算書から、営業外損益の部分を抜粋したものです。 この中で1ヶ所だけ、違和感を感じる箇所があるのですが、どこだかわかりますか。 ヒントを出しましょう。科目名をじっくり比較してください。   2 科目名はそろえたほうがよい では、答えを見てみましょう。 上に示したとおり、貸倒引当金の戻入れを表す科目名が、連結と個別で異なっています。 本来はどうすべきかというと、「貸倒引当金戻入額」か「貸倒引当金戻入益」のいずれかに統一しておくのが望ましいのです。 科目名としてはどちらの科目名も間違っていませんが、同じ会社の同じ年度の計算書類の中で異なる表現を使用するのは不統一な印象を与えます。場合によっては、「何か理由があって使い分けているのか」と誤解されるおそれもあります。 間違いではないのですが、統一しておく方が無難です。   3 分業が招くミス このミスは、計算書類の作成作業を複数人で分担したことによって起こります。 たとえば、連結計算書類はAさん、個別計算書類はBさんというようにです。その結果、Aさんが作った連結損益計算書では「貸倒引当金戻入額」と表示され、Bさんが作った損益計算書では「貸倒引当金戻入益」と表示されたのではないでしょうか。 AさんもBさんも、自分の担当部分は問題なく作業したのですが、2つの作業結果を合わせたときに、調和を欠く結果となってしまったのです。 このようなミスのことを、筆者は『コーディネート・ミス』と呼んでいます。 洋服のコーディネートと同じで、単品では問題ないけれど、全体としては調和がとれていない、そういうミスです。 もし計算書類作成作業をAさんもしくはBさんが1人でやったとしたら、このミスは起こらなかったかもしれません。連結と個別で同じ内容の科目を、あえて別の科目名にはしないでしょう。 このミスは「分業をしたこと」によって起きてしまったのです。 分業は作業を効率化するには優れた方法ですが、細分化した作業がバラバラに進むというデメリットがあります。そのデメリットを補うためには、すべての作業が終わった時点で、各作業の整合性を確認するという作業が必要です。 しかし、その作業はいったい誰の仕事になるのでしょうか。 というと、各作業の担当者は皆、「これは自分の仕事ではない」と思ってしまうわけです。これがコーディネート・ミスを招くのです。   4 類似事例の紹介 コーディネート・ミスは見つけるのが難しい。その部分だけを見ても間違っていないため、気づかないのです。 【事例10-1】以外にも、似たような事例はいくつもあります。 【事例10-2】 PLの税額等の表示方法が連結と個別で異なっている。 【事例10-2】の上段(連結PL)のほうは、「法人税、住民税及び事業税」と「法人税等調整額」の数値を右端の列に記載し、その合計値は特に表示していません。一方、下段(個別PL)のほうは、両科目の数値を右から2列目に記載し、その合計値を右端の列に表示しています。 どちらの表示方法も間違いではありませんが、同じ会社の同じ年度のものであるなら、そろえてあげた方がよいでしょう。   〈今回のまとめ〉 計算書類の作成においては、連結計算書類と個別の計算書類を並べて比較し、不統一な印象を与えるような箇所がないか点検することも必要です。 (了)

#No. 159(掲載号)
#石王丸 周夫
2016/03/03

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第109回】圧縮記帳①「圧縮記帳の基本及び国庫補助金」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第109回】 圧縮記帳① 「圧縮記帳の基本及び国庫補助金」   仰星監査法人 公認会計士 渡邉 徹 日本公認会計士協会準会員 永井 智恵     〈事例による解説〉   〈会計処理〉 1 直接減額方式 ① 国庫補助金の交付時(X1年8月) ② 機械装置の取得時(X1年10月) ③-1 決算時(X2年3月末) (圧縮損の計上) (※1) 圧縮限度額=目的資産の取得に充てた国庫補助金の額=8,000,000 (減価償却費の計上) (※2) (取得価額10,000,000-圧縮限度額8,000,000)×0.333×6ヶ月/12ヶ月=333,000   2 剰余金処分方式 (①及び②は、直接減額方式を適用した場合と同じ。) ③-2 決算時(X2年3月末) (圧縮積立金の積立) (※3) 税効果の額=圧縮限度額8,000,000×実効税率35%=2,800,000 (※4) 圧縮積立金=圧縮限度額8,000,000-税効果の額2,800,000 (※3)=5,200,000 (減価償却費の計上) (※5) 取得価額10,000,000×0.333×6ヶ月/12ヶ月=1,665,000 (圧縮積立金の取崩) (※6) 圧縮積立金の取崩額(税効果考慮前)=圧縮限度額8,000,000×0.333×6ヶ月/12ヶ月=1,332,000 (※7) 税効果の額(取崩)=圧縮積立金の取崩額(税効果考慮前)1,332,000(※6)×実効税率35%=466,200 (※8) 圧縮積立金(取崩)=圧縮積立金の取崩額(税効果考慮前)1,332,000(※6)-税効果の額(取崩)466,200 (※7)=865,800   〈会計処理の解説〉 固定資産に係る国庫補助金、保険差益、交換差益等は、原則として益金となり課税所得を構成します。しかし、これを原則どおりに課税すると、様々な弊害が生じます。 例えば、法人が特定の資産の取得に際して国庫補助金を受けた場合に、その補助金の受贈益に対して課税すると、補助金を用いて取得しようとしていた資産の取得ができなくなり、補助金の目的を成し得なくなってしまいます。 このような事態を防ぐために、税法上では、圧縮記帳という制度が設けられています。 圧縮記帳の適用を受けると、発生した収益に対して直ちに課税されずに、課税を繰り延べることができます。国庫補助金受贈益が発生した事業年度に、固定資産の圧縮記帳を行い損金算入すると、一時的に課税所得が減少します。しかし、その後は圧縮記帳後の取得価額をもとに固定資産の減価償却が行われるため、各事業年度に損金算入される減価償却費が減少し、課税所得が増加することになります。 圧縮記帳には、法人税法上の圧縮記帳と租税特別措置法上の圧縮記帳があります。実務上利用することが多いものは以下のとおりです。 本事例で取り扱っている国庫補助金については、国または地方公共団体の補助金等の交付を受け、その補助金の交付の目的に適合した固定資産の取得または改良をした場合に、取得または改良にあてた金額に対して、圧縮記帳の適用が認められます。 国庫補助金の圧縮記帳の方法としては、 があります。 (なお、直接減額方式により取得価額を直接圧縮することは、取得原価主義に基づく費用の適切な期間配分の観点から適切ではないため、会計上は剰余金処分方式が望ましいと考えられます。) 本事例において、当社はX1年8月に国庫補助金の交付を受けて、同年10月にその補助金の目的に適合する資産(機械装置)を取得しています。そこで、国庫補助金の交付を受けたX1年8月に国庫補助金受贈益8,000,000円を、目的資産を取得した同年10月に機械装置10,000,000円をそれぞれ計上します(①及び②の仕訳)。 また、本事例では、補助金の返還不要が確定したX1年度において目的資産である機械装置を取得しています。そのため、圧縮限度額は目的資産の取得または改良に充てた国庫補助金の額、すなわち8,000,000円となります。   1 直接減額方式 決算時において、取得した機械装置の取得価額10,000,000円を圧縮限度額8,000,000円まで直接減額します(③-1(圧縮損の計上)の仕訳)。 そのため、当該機械装置の減価償却費は圧縮後の取得価額2,000,000円(=10,000,000円-8,000,000円)に基づき計算されます(③-1(減価償却費の計上)の仕訳)。   2 剰余金処分方式 決算時において、剰余金を処分して圧縮限度額8,000,000円を圧縮積立金として積み立てます。 圧縮積立金は税効果会計の適用を受けるため圧縮額に実効税率を乗じた金額2,800,000円(=8,000,000円×35%)の繰延税金負債が計上されます。その結果、圧縮積立金の金額は5,200,000円(=8,000,000円-2,800,000円)となります(③-2(圧縮積立金の積立)の仕訳)。 剰余金処分方式の場合、機械装置の減価償却費は取得価額10,000,000円に基づき計算されます(③-2(減価償却費の計上)の仕訳)。 なお、圧縮積立金は目的資産の償却や除売却に基づき取り崩す必要があります。そのため、機械装置の償却額に対応する圧縮積立金1,332,000円(=8,000,000×0.333×6ヶ月/12ヶ月)(税効果考慮前)を取り崩します。圧縮積立金には税効果会計が適用されるので、圧縮積立金865,800円(=1,332,000円-(1,332,000円×35%))及び対応する繰延税金負債466,200円(=1,332,000円×35%)を取り崩します(③-2(圧縮積立金の取崩)の仕訳)。 *   *   * 次回は、圧縮記帳の会計処理のうち、保険差益について解説します。

#No. 159(掲載号)
#渡邉 徹、永井 智恵
2016/03/03

養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第19回】「普通養子縁組から特別養子縁組への転換」

養子縁組を使った相続対策と 法規制・手続のポイント 【第19回】 「普通養子縁組から特別養子縁組への転換」   弁護士・税理士 米倉 裕樹   今回より本連載は第3部として、これまで解説してきた内容を元に、問答形式で実践的に解説していくこととする。 問 題 【問題①】 A男とB女とが婚姻し、子Cを授かったが、離婚。その後、B女はD男と再婚した。D男と子Cは普通養子縁組をしたが、A男が恐喝未遂罪で逮捕されたことから、D男としては、A男との関係を断つべく改めて子Cとの間で特別養子縁組を申し立てたいが認められるか。 【問題②】 【問題①】において、子CがA男とB女との婚姻外で生まれた子であり、A男が認知していない場合には、結論は異なるか。 【問題③】 連れ子である場合に限らず、一般的に普通養子縁組から特別養子縁組への転換は、どのような場合に認められるか。   回 答 【問題①】 A男が子Cに害を及ぼす行動をとることが相当程度確実に認められるような場合には、普通養子縁組から特別養子縁組への転換は認められる。 【問題②】 【問題①】と異なり、子が非嫡出子でかつ認知されていないような場合には、普通養子縁組から特別養子縁組への転換は比較的容易に認められやすい。 【問題③】 【問題②】のように、非嫡出子でかつ未認知の連れ子であるような場合を除き、一般的に普通養子縁組から特別養子縁組への転換が認められるためには、普通養子縁組後において、実父母による不当な干渉などのために養親による監護が困難となるなど、実父母との親子関係を断絶させ、戸籍上の特別措置をとるべき新たな事情(「その他特別の事情」)が必要である。   解 説 [1] はじめに 特別養子縁組制度は、昭和57年の民法改正によって導入され、翌年に施行されているが、本問はすべて、特別養子縁組制度が施行された後に普通養子縁組を選択していることを前提としている。 なお、特別養子縁組制度が施行される前に普通養子縁組がすでになされていた場合には、特別養子縁組を選択する余地がなかったことから、普通養子縁組から特別養子縁組への転換を認めるための経過措置的対応が必要であるとの考え方のもと、審判例においても、その取扱いは必ずしも統一されていなかった。 [2] 【問題①】について 民法817条の3第2項但書が、夫婦共同縁組の例外として、「夫婦の一方が他の一方の嫡出である子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く)の養親となる場合」を規定し、同817条の9但書が、特別養子縁組の成立によっても、父母のうち養親となる者の配偶者及びその血族との親族関係は終了しないと規定していることからすれば、一方配偶者が他方配偶者の連れ子を特別養子とすることは、法令上、禁止されていない。 もっとも、連れ子は、夫婦の一方が引き続き子の監護養育を行うことから、特別養子縁組が認められるための「監護が著しく困難又は不適当であること」(民817条の7)には該当せず、原則して要保護要件は認められない。そこで、特別養子縁組に当たり、子の利益のために実父母との親子関係を断絶する「その他特別の事情がある場合」(民817条の7)が認められるかどうかが問題となる。 この点、【問題①】と類似の事案において名古屋家裁平成元年8月23日審判では、 とした上で、 として、普通養子縁組から特別養子縁組への転換を認めていない(括弧内は筆者による)。 また、大阪高裁昭和63年11月18日決定では、実父が子との関わりを断ちたいと希望し、積極的に特別養子縁組の同意をしているような場合であっても、子の健全な育成をはかり確固たる親子関係を形成するについて普通養子縁組では不十分であるとの事情は認められないとしている。 [3] 【問題②】について 他方で、【問題②】のように、子CがA男とB女との婚姻外で生まれた子であり、A男が認知していないとの事実関係を前提とした宮崎家裁平成2年11月30日審判では、 と判示している。 同様に、名古屋高裁平成15年11月14日決定においても、 と判示した。 その上で、そもそも子が、実母と夫以外の男との間の子として両名の離婚後に出生した非嫡出子で、その後に元夫から親子関係不存在の裁判を経ている事実関係のもと、子が血縁上の父から認知されておらず、実親としての義務を全く怠り、子の養育にも無関心で、子がこれら特異で複雑な出生の事情ないし親子関係の事情を戸籍の記載等から知り、その成育過程において自らの責任によらない精神的苦痛や負担等を背負っていくことがないためにも、特別養子縁組により養親子関係を成立させ、血縁上の父との関係を終了させることが、子の健全な育成に寄与し、その福祉及び利益の実現のために特に必要であるとしている。 このように、子が非嫡出子で認知されていないような場合には、子の利益のために血縁上の父との関係を断絶することで、子の福祉及び利益を向上させることができるとの考え方により、子が嫡出子である場合との差異が生じることとなる。 相続が生じた際においても、子が非嫡出子で未認知である場合には、子には相続権がないことから、血縁上の父との関係を断絶させても、この点でも子の利益に反することはない。 [4] 【問題③】について 普通養子縁組から特別養子縁組への転換を安易に認めることは、普通養子縁組が特別養子縁組の前提条件のようになり、特別養子縁組を新設した立法趣旨を損なうことにもなりかねない。 そもそも、普通養子縁組がなされ、その後、特別養子縁組を申し立てるに当たっては、養親としての適格性をもつ者が監護養育を続けているのであり、特別養子への転換によってもその監護状況を必ずしも向上させるものではなく、原則的には、民法817条の7の要保護性・縁組の必要性を充足しない。 さらに、普通養子縁組とともに特別養子縁組の選択も可能な前提において、普通養子縁組を選択したということは、その時点において、特別養子縁組の成立要件が充足されていなかったか、あるいは当事者の意思が特別養子縁組に向けられていなかったことを意味する。 普通養子縁組から特別養子縁組への転換が認められた前記宮崎家裁平成2年11月30日審判、前記名古屋高裁平成15年11月14日決定においても、一旦は特別養子縁組の申立を行ったものの、実績期間を経た上で、再度、特別養子縁組成立の申立を行うことを視野に入れた上で同申立を取り下げ、取り急ぎ、普通養子縁組を行ったという経緯を有するものである。 そのため、【問題②】のように、非嫡出子でかつ認知されていない連れ子を特別養子とするような場合を除き、一般的に普通養子縁組から特別養子縁組への転換が認められるためには、普通養子縁組後において、実父母による不当な干渉などによって、養親による監護が困難となるなど、実父母との親子関係を断絶させ、戸籍上の特別措置をとるべき新たな事情(「その他特別の事情」)が生じた場合でなければならないと解される。 (了)

#No. 159(掲載号)
#米倉 裕樹
2016/03/03
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