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「従業員の解雇」をめぐる企業実務とリスク対応 【第9回】「懲戒解雇をする際のチェックポイント」

「従業員の解雇」をめぐる 企業実務とリスク対応 【第9回】 「懲戒解雇をする際のチェックポイント」   弁護士 鈴木 郁子   1 はじめに ~懲戒解雇は難しい~ (1) 懲戒解雇と普通解雇 本連載の【第1回】で述べたとおり、解雇には、「普通解雇」と「懲戒解雇」の2種がある。両者は非違行為、企業秩序違反行為を対象とする点において重なるが、その性質は異なったものである。 【第4回】から【第8回】にかけて解説してきた普通解雇は、労務提供義務の不履行(不完全不履行)に基づく雇用契約の中途解約である。一方、懲戒解雇は、企業秩序違反に対する懲罰の一種である。また、普通解雇に比べて懲戒解雇の方が、求められる違法性の程度は高く、手続も厳格である。 一般に懲戒解雇と普通解雇の差は、解雇予告(解雇予告手当)の要否、退職金の不支給や減額の可否にあると思われており、この点、必ずしも間違いではないが、論理必然ではない。 すなわち、「労働者の責に基づく場合」は、除外認定を経た上で解雇予告(解雇予告手当の支払)が不要となるが(【第4回】参照)、懲戒解雇が有効・適法な場合は必ず除外認定が得られる関係にあるわけではない。 また、退職金の不支給や一部減額は、後述するように、退職金規程にそのような規定があることの効力によるものであるし、かかる規定があるからといって、規定どおりの不支給・減額が認められるわけでもない。 懲戒解雇と普通解雇の違いは、あくまでも性質上の違いにある。 (2) 懲戒解雇を行うには 懲戒解雇を行うには、①懲戒解雇が法的に可能な事案か否かを検討し、懲戒解雇できる事案であれば、②法に従った懲戒解雇手続を行うことになる。 以下、順に述べた上で、③懲戒解雇に特有の争点についても解説する。   2 懲戒解雇が法的に可能か否かの検討 (1) 就業規則上の懲戒解雇事由に該当すること 懲戒解雇をするためには、まず、就業規則上の懲戒解雇事由に該当する行為がなければならない。普通解雇の場合は、就業規則に普通解雇の定めがなくとも、その性質上解雇は可能であるが(【第4回】参照)、懲戒解雇の場合は、就業規則上の定めが必ず必要となる。 そして、就業規則上の懲戒事由の定めは、就業規則に定められているだけではなく、これが従業員に「周知」されていなければならない。 したがって、実務上の留意点としては、まず、①就業規則に懲戒解雇の定めがあるか否か、②これが周知されているかを確認する必要がある。 また、懲戒解雇が制限されないように、就業規則上、懲戒解雇事由が限定列挙となっておらず、③「その他これに準ずる事項」の包括的な条項があるか、確認した方がよい。 (2) 実質的該当性があること 形式的に懲戒解雇事由に該当するだけでは、懲戒解雇をすることはできない。これは労働契約法第15条において「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と定められているからである。 実質的に該当するといえるかどうかは、以下のような点を総合考量する。 繰り返しになるが、懲戒解雇に求められる違法性の程度は非常に高いため、不正の程度が極めて高い横領、重大な機密情報の漏洩などの行為がない限り、一発での懲戒解雇(その行為だけでの懲戒解雇)は通常認められないとの認識が必要である。 また、従業員としても今後の転職等を考えた場合、懲戒解雇がなされると、転職活動において申告が求められる「賞罰」に影響してきたり、後述するように退職金に影響が出てくることがあるので、争われるリスクが高くなる。 したがって、判断に迷う場合には、退職勧奨を行い合意退職を成立させるか、普通解雇、あるいは出勤停止等の他の懲戒処分を検討すべきである。 (3) 解雇制限に違反しないこと また、懲戒解雇の場合も普通解雇と同様、解雇制限の規制が及ぶので、これに抵触しないか注意されたい(詳細は【第4回】参照)。   3 懲戒解雇の手続 (1) はじめに 懲戒解雇の手続については、普通解雇の場合と同様、①解雇通知の送付、②解雇理由書の交付、③解雇について協議事項がある場合の労働組合との協議を行うこととなる(詳細は【第4回】参照)。 以下、懲戒解雇において問題となりやすい特有の手続について解説する。 (2) 自宅待機処分について 懲戒解雇を検討するにあたって、対象者を自宅待機させ、その間に証拠保全を行い社内調査を行うことが必要となる場合があるが、会社が対象者に自宅待機処分を命じることはできるのだろうか。 この点一般的には、就業規則などに根拠条文がなくとも、自宅待機命令を命じることはできるが、必要性がないのに不当に長い自宅待機命令を出すことは違法とされている(2年で違法とされた裁判例がある)。 また、その間の賃金の不支給が許されるか問題となるも、この点は、就業規則などに、「自宅待機処分は無給とする」旨の根拠条項がないと許されないとされている。なお、根拠条項があったとしても、不支給は従業員に対し不利益を与えるため、違法性の程度が重く必要性が高い事案に限り、また、期間もせいぜい3週間以内程度に留め、その期間内に調査が終わらない場合には、以降は給与を支給すべきである。 (3) 弁明の機会について 懲戒処分を行うにあたり、就業規則や社内規程で、懲戒委員会を開催したり、本人に対する弁明の機会が付与されている場合には、これを必ず行う必要がある。 なお仮に、弁明の機会を付与する規定がない場合であっても、実務的には、懲戒処分を行う前に弁明の機会は与えておいた方がよい。 まず弁明の機会の付与により、会社の勘違いが判明することもあり、正しい処分、無駄な争いの防止につながる。また、争われるリスクが高い事案については、弁明の機会を与えることによって訴訟となった場合の反論内容を予め確認することができるし、弁明の機会の付与は初期供述の証拠化の良い機会ともなるからである(初期供述・初期の弁明は無防備なものであり、事実と整合することが多く、信用性が高いとされる)。 (4) 即時解雇について 懲戒解雇の場合は、性質上、30日前の解雇予告(30日分の解雇予告手当の支払)を行わずに、即時解雇が可能となる場合が多い(解雇予告の詳細は【第4回】を参照されたい)。 しかしながら、前述のとおり、即時解雇において必要とされる「労働者の責に基づく場合」は、予告制度による保護を否定されてもやむを得ないと認められるほど重大・悪質な場合をいい、懲戒解雇が可能な場合とは必ずしも同一ではないし、厳格に認定される。また、資料の提出、労基署の会社・本人に対する聴取など、除外認定の手続に伴う負担も大きい。 したがって、とりわけ争われるリスクが高いケースにおいて、即時解雇もしくは解雇予告手当なしの懲戒解雇を行うにあたっては、慎重な判断が必要である。 (5) 懲戒解雇事由の追加、普通解雇への転換、普通解雇の予備的主張の可否について 懲戒解雇通知や解雇理由書を作成するにあたっては、【第4回】で解説した事項のほか、以下の点に留意されたい。 まず、懲戒解雇事由に漏れがないか、他に懲戒解雇事由と言えそうなものがないか、十分にチェックする必要がある。懲戒解雇は普通解雇と異なり、解雇時点において、使用者が認識しているか否かを問わず、事後的に懲戒解雇事由を追加することはできないからである。 また、懲戒解雇の意思表示に加えて、普通解雇の意思表示もしないでよいのか、あわせて検討した方がよい。 前述のように、懲戒解雇の方が普通解雇より困難であるため、懲戒解雇としてなら無効であるが、普通解雇なら有効であるケースは多々ある。しかしながら、懲戒解雇としての意思表示をしておいて、事後的にこれは普通解雇の意思表示も兼ねていたとして、普通解雇として有効であるとの主張をすることはできない。 したがって、懲戒解雇が無効となる場合に備えて、そのような場合には「万が一懲戒解雇が無効となる場合であっても、本通知をもって予備的に普通解雇するものとします。」等記載して、普通解雇の予備的主張を行っておいた方がよい。   4 懲戒解雇において問題となりやすいその他の争点について (1) 退職金の不支給・減額について 前述のとおり、懲戒解雇が認められるからといって、直ちに、退職金の不支給・減額が有効となるものではない。退職金の不支給・減額を行うには、まず、就業規則、退職金規程、懲戒規程等に、「懲戒解雇となった場合には、退職金を不支給もしくは一部減額とする」等の規定が必要である。 もっとも、退職金の不支給・減額は、根拠条項があるからといって、直ちに認められるわけではない。退職金は、功労報償的性格(不支給・減額に結びつきやすい)のほか、賃金の後払的性格(不支給・減額に結びつきにくい)を持つため、会社の退職金の性質がどのようなものかを規程の内容等から検討しておいた方がよい。 また、近時の裁判例には、退職金を没収するには、懲戒解雇が有効なだけではなく、「長年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為」(功労抹消行為)を必要としているものがあり、退職金の不支給・減額には慎重である。 したがって、実務的には、根拠条項があったとしても、退職金を不支給としてよいのか、減額に留めるにしても減額幅は適当かについて、会社の退職金の性質、勤続年数、懲戒解雇事由の重さの程度、会社が受けた損害の程度等を考慮し慎重に判断すべきである。 (2) 従業員に対する損害賠償について 懲戒解雇の場合、横領等、懲戒解雇事由によっては、会社に金銭的な損害が発生していることもあり、従業員に対し懲戒処分を行うほか、損害賠償請求できないか問題となる。 そもそも、会社の従業員に対する損害賠償請求は、会社と従業員の経済力の差や報償責任の観点(従業員の労務提供により利益を得る会社はそこから生じるリスクも負担すべき)から、通常の場合より制限され、故意・重過失がないと認められないとされる(軽過失は免責される)。 また、従業員に責任が認められる場合でも、損害の公平な分担の見地から、その金額は、会社の事業の性格、規模、施設の状況、従業員の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての会社の配慮の程度等に照らして、減額される。 なお、労働基準法における賃金の全額支払の原則から、その賠償額を給与や退職金から一方的に控除することはできない。したがって、従業員から被害金額の弁償等の申し入れがある場合には、相殺合意の合意書を取り交わすべきである。   (了)

#No. 185(掲載号)
#鈴木 郁子
2016/09/15

税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題 【第3回】「『判断能力』・『意思能力』とは?」-その具体的な意味内容-

税理士が知っておきたい [認知症]と相続問題 【第3回】 「『判断能力』・『意思能力』とは?」 -その具体的な意味内容-   クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎   【第2回】では、認知症の進行により記憶や判断能力等に深刻な問題が生じることを説明した。 ここでも示されているように、「認知症により判断能力を失っている」というような言い方がよくなされるが、ではこの「判断能力」とは、法律学的にはどのように位置づけられ、具体的にはどの程度の能力を意味する概念なのであろうか。 今回はこの点につき説明したい。   1 いわゆる「判断能力」という言葉の意味するもの 「判断能力」という用語そのものは、一般的に広く用いられているものであるにもかかわらず、実は主だった法令には登場しない用語である。 代わりに、民法の教科書を読むと、「意思能力」という概念が登場する。 これもまた民法の条文上は直接には登場しない概念なのであるが、いわゆる「判断能力」とは、この「意思能力」の概念とおおむね重なりあうものとして理解されている。 その具体的な意味内容は、次のとおりである。 上記にもあるように、「ある程度」ということであるから、法律上の意味を理解していることを要すると言っても、法学部生が教科書で習うような正確な法律知識までを理解し、認識している必要はない(そのレベルまで要求したとしたら、世の中の法律行為の大半が無効となってしまうであろう)。 たとえば、自宅の売買契約を締結しようとしている売主の立場であれば、「ここにサインをしたら、自宅はもう他人の物になってしまうのだな」という程度の理解(小学生レベルの理解)ができるのであれば、意思能力はあると扱われるのである。   2 意思能力の有無の判断基準 以上の説明を聞くと、意思能力というのは、特定の時点において、その人において「ある」か「ない」かの2択であると理解するかもしれない。 しかし、それは誤りである。 意思能力は、問題となる行為や契約毎に、個別にその有無が判断されるのである。 つまり、たとえば同日のうちに締結した複数の契約が、ある契約においては意思能力があると判断され、別の契約においては意思無能力であると判断される可能性が十分あり得るということになる。 このように、意思能力は個別具体的な性格を有するので、その判断にあたっては、以下の要素を総合的に検討し、個別に判断していく必要がある。 【意思能力の判断にあたっての考慮要素】 判断能力、つまりは意思能力の有無が裁判で争われる場合には、双方の当事者は、以上の各要素に関連する自己に有利な事実関係を主張していくことになる。 それを踏まえ、最後は裁判官が結論を下すことになる。 このような個別具体的な場面における総合判断の側面が強いからこそ、当事者にとっても見通しが立ちにくく、厄介な問題なのである。   3 「判断能力」を欠く場合の結果の重大性-事例の紹介 では、裁判所が以上のような要素も考慮した上で、「判断能力」を欠いた状態、すなわち意思能力を欠いた状態で問題となる契約が締結されたと認定した場合、契約の効力はどうなるか。 これについても条文には直接の定めはないが、そのような契約は「無効」であると一般に理解されている。 具体的には、 という意味に理解されている(伝統的な理解による)。 (※)(2017/3/15追記) ただし、最近は、意思表示をした本人からしか無効を主張できないとする見解が主流である。 したがって、判断能力を欠いていたとして無効とされることによりもたらされる効果は、下記のケースを見てもわかるとおり、非常に強力である。 他にも、近時の参考になる裁判例として、有名百貨店の婦人服店舗において約4年間に実に約280点もの婦人服等を購入した女性につき、そのうちの一部の時期における購入についてはアルツハイマー型認知症に罹患したことによる意思無能力状態での購入であったとして無効主張を認め、百貨店側に代金の返金を命じた事案もある(東京地裁平成25年4月26日判決。この裁判例については、他の参考裁判例とともに国民生活センターのウェブサイトにおいて紹介されている)。 このようにして、判断能力を欠くとして意思無能力と認められた場合には、契約関係は無効とされ覆滅されることで劇的な効果が生じる。 つまり、それだけ認知症患者本人を救済するための非常に強力な手段となりうるのである。 ただし、急いで付け加えなければならない。それは、その立証の困難さである。 前述のように、意思能力の有無は様々な要素を考慮して個別具体的に判断されることから、画一的な基準がなく見通しが立ちにくい。 また、問題が「当の本人の頭の中の話」という側面があるため、客観的証拠が乏しいことも多い。仮に認知症の診断書を得ていたとしても、では問題となるその契約の当時に判断能力がなかったのかとなると、そう簡単には判断できないのである。 特に、高齢者本人が死亡後に不相当な契約が発覚し、遺族が契約の無効を主張するケース等では、契約書をはじめとした当時の客観的な資料が残っていないと、事実関係を正確に把握することすらできない。それがネックとなり、裁判等での被害回復が事実上困難となるケースも非常に多い。 判断能力を欠いていたことを証明するためにどのようなものが証拠になるのかについては、改めて別の回にて説明したい。   4 判断能力に乏しい者を保護するための法制度 以上に述べたような意思無能力の他にも、契約当時に十分な判断能力を有していなかった高齢者を救済するための法制度はいくつもある。 本稿を締めくくるにあたり、概観してみよう。 【認知症患者救済のために用いられる代表的な法制度】 (了)

#No. 185(掲載号)
#栗田 祐太郎
2016/09/15

《速報解説》 経産省、H29.3.31適用期限終了の中小企業向け各特例措置について延長・拡充を要望~設備投資減税は器具備品・建物附属設備の一部を適用対象に

《速報解説》 経産省、H29.3.31適用期限終了の中小企業向け各特例措置について 延長・拡充を要望 ~設備投資減税は器具備品・建物附属設備の一部を適用対象に   Profession Journal編集部   前月末で締め切られた各省庁による「平成29年度税制改正要望」において、経済産業省は平成28年度末(H29.3.31)で適用期限が終了する税額控除・特別償却等の租税特別措置について、次のような延長・拡充を要望している。 すでに実務へ定着している特例も含まれていることから、今回の要望事項を含め、今後の動向には注視しておきたい。   〇中小企業投資促進税制、器具備品・建物附属設備の適用を要望 まず、平成29年3月31日で適用期間が終了する中小企業投資促進税制(上乗せ措置を含む)について、2年間(平成30年度末)の延長と、対象設備の追加が要望事項として示されている。 具体的には、現行では機械装置・ソフトウェア等が対象とされている本制度について、高効率の冷蔵陳列棚、省エネ空調等の器具備品・建物附属設備を追加するというもの。 中小企業の設備別投資割合によると、卸小売業やサービス業では現行税制の対象となっている機械装置以外(建物附属設備や器具備品)の設備投資が大きいことから、その必要を求めている。 経済産業省資料では、想定している器具備品・建物附属設備の例として、次のものが紹介されている。 例示のうち「ロボットスーツ」という聞きなれないものが含まれているが、これについては介護支援ロボットスーツ(介護業務の生産性向上と介護職員の負担軽減となるもの)が写真付きで示されている。 なお、平成28年度改正で創設された中小企業等経営強化法に係る固定資産税の特例措置(一定の経営力向上設備等を取得等した場合の固定資産税の3年間半減措置)についても、現行では対象設備が機械装置に限られているが、上記と同様の設備を追加するよう要望がなされている(ソフトウェアは対象外)。 【参考図】 (※) 経済産業省ホームページより   〇研究開発税制は「サービス開発」が試験研究の定義に 研究開発税制については、昨年度改正で本体(恒久措置)として総額型とは別枠でオープンイノベーション型が創設されたところだが、平成29年3月31日で上乗せ措置(増加型・高水準型)が適用期限を迎えることを踏まえ、下記4点が経済産業省・厚生労働省の共同要望とされている。 ①の「サービス開発」については、サービス産業の生産性を飛躍的に向上させることを目的に、第4次産業革命を強力に推進するため、AIやビッグデータ等を活用した高付加価値なサービス開発を支援するとしている。ちなみに「第4次産業革命」とは、IoT、ビッグデータ、ロボット、人工知能(AI)等による技術革新のこと。つまりこれらの技術を活用したサービス開発が想定されている。 なお、経済産業省資料ではサービス開発の例として飲食サービス、農業支援サービスにおける上記技術活用事例が紹介されている。   〇商業・サービス業・農林水産業活性化税制、中小企業の法人税率特例措置は延長要望 上記のほか、平成29年3月31日で適用期限を迎える商業・サービス業・農林水産業活性化税制(商業・サービス業・農林水産業を営む中小企業等が一定の経営改善設備を取得した場合の特別償却・税額控除)については、消費税率10%引上げの2年半延期を考慮して平成31年度末までの3年延長を、中小企業者等の法人税率の特例(中小法人(資本金1億円以下)の年800万円以下の所得金額について15%(本則19%))は平成30年度末までの2年延長をそれぞれ要望している。   〇所得拡大促進税制は中堅・中小企業の税額控除倍増を求める 所得拡大促進税制については平成26年度改正で適用期限が平成30年3月31日まで延長されているが、今回の要望において、中堅・中小企業の税額控除を雇用者給与等支給増加額の 20%(中堅企業は法人税額の 20%、中小企業は 40%が上限)とする要望が示された。さらに中堅・中小企業に対しては、賃上げのネックになっているとして、雇用者給与等の算定基礎に社会保険料(法定福利費)を含めることを求めている。 なお経済産業省資料によると、「中小企業」は資本金1億円未満、「中堅企業」は資本金1億円~10億円未満、「大企業」は資本金10億円超と定義されている。 (了)

#No. 184(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2016/09/08

プロフェッションジャーナル No.184が公開されました!~今週のお薦め記事~

2016年9月8日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.184を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2016/09/08

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第45回】「混沌とした租税回避論の再整理(その3)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第45回】 「混沌とした租税回避論の再整理(その3)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 3 課税要件の観点からの区別 (1) 租税回避の試みと租税回避 まず、租税回避の試みと、結果としての租税回避について考えてみよう。 これは「課税根拠要件の充足をしているか、していないか」という立場での議論である。 【図3】 租税回避の試みと租税回避 【図3】は、いわゆる我が国における従来からの租税回避論であり、課税要件の充足を免れるものが租税回避であると整理されてきたところである。 租税回避、すなわち租税回避の試みが成功したのであれば、課税根拠要件を充足していないため課税はなされない。 他方で、租税回避の試みが失敗し、課税根拠要件を充足することになれば、当然課税対象となるとの理解である。 したがって、租税回避の試みを行う納税者側としては、「課税根拠要件の充足はしていない」という主張をすることで租税負担の減少を図ろうとするであろう。すなわち、本件は「租税回避」であるという主張をすることになる。 これに対して、課税庁側は、本件は課税根拠要件が充足されている(課税根拠要件の充足を免れていない)ため「租税回避」ではない、したがって課税対象であるという主張を展開することになろう。 (2)  節税の試みと節税 次いで、節税の試みと、結果としての節税について考えてみよう。 これは「課税減免要件の充足をしているか、していないか」という立場での議論である。 【図4】 節税の試みと節税 【図4】は、上記りそな銀行事件(【第43回】参照)において議論されたような課税減免要件の充足が争われる事例がその典型であろう。 節税、すなわち節税の試みが成功したのであれば、法の規定に則り課税はなされない。 他方で、節税の試みが失敗し、課税減免要件を充足しないことになれば、課税対象となるとの理解である。 したがって、節税の試みを行う納税者側としては、「課税減免要件の充足をしている」という主張をすることで租税負担の減少を図ろうとするであろう。すなわち、本件は法の規定に則った「節税」であるという主張をすることになる。 これに対して、課税庁側は、本件は課税減免要件が充足されていないため「節税」ではない、したがって課税対象であるという主張を展開することになろう。 このように考えると、「租税回避の試み」と「租税回避」、「節税の試み」と「節税」は明確に区別して議論すべきであり、また、租税回避、節税、脱税という枠組みにおいてはその空白域が広すぎることは既述のとおりである(【第44回】参照)。 4 行為形態の観点からの区別 (1) 濫用という切り口 上記の課税根拠要件の充足の有無、あるいは課税減免要件の充足の有無で捉える課税要件からの視角とは別に、その行為形態に着目をした捉え方があり得る。 従来の租税回避の定義では、「私法上の選択可能性を利用」して租税負担の軽減を図る行為を租税回避と理解してきた。 これをやや強調して説明するとすれば、租税回避とは、いわゆる私法制度の濫用的行為による租税負担の軽減であるといってもよいであろう。 私法制度の濫用とは、要するにいかなる契約形態を採用するかについての濫用的行為のことを指す。例えば、先に確認した岩瀬事件(【第43回】参照)においては、交換契約か売買契約かという私法上の選択可能性を濫用したと整理することもできなくはない。 この点、いわゆる清水惣事件大阪地裁昭和47年12月13日判決(訟月19巻5号40頁)は次のように判示する。 もっとも、同判決は、私法形式の濫用が企図されたものでないとしても、経済的合理性を全く無視したものであると認められる場合には否認が許されるとの立場であるから、必ずしも私法制度の濫用だけを前提とした議論ではないとの評価もあり得るが、興味深い判示ではなかろうか。 【図5】 私法制度の濫用(岩瀬事件の場合) (※) 租税法を適用するためには、まず事実認定が必要であり、次に、認定された事実に法を適用することになる。すなわち、事実認定は私法に基づいて行われ(私法準拠)、そこに租税法を適用する。上の図にあるように、左側の私法領域が事実認定の話であり、右側の租税法領域が法の適用の話である(次の【図6】においても同じ)。 これに対して、前述のりそな銀行事件は私法制度の濫用ではなく、課税減免規定たる租税法制度の濫用に属するものと思われる。 すなわち、本来、法が予定していたであろう目的とは異なる形で租税法の適用を行ったケースと考えることもできる。 【図6】 租税法制度の濫用(りそな銀行事件の場合) このように、濫用という切り口から見たとき、課税根拠要件の充足の回避を行う租税回避と、課税減免要件の充足を行う節税は、前者は私法制度の濫用的行為、後者は租税法制度の濫用的行為と親和性を有するものとして整理することも可能ではなかろうか。 【図7】 濫用という切り口からみた租税回避と節税 (2) 議論の新たな展開と問題点 今日では、このように議論の対象を従来の「租税回避」に限定せず、「租税法制度の濫用的な節税」をも取り込む方向へとシフトしているものと考えられる。 例えば、今村隆教授は、租税回避という用語のもつ語義感、すなわち「回避」との用語に引きずられて、課税減免要件の充足の問題が欠落してきたこれまでの議論を強く批判される(今村隆『租税回避と濫用法理―租税回避の基礎的研究―』19頁(大蔵財務協会2015))。 そして、租税回避の場合には、私法制度の濫用ばかりが強調されてきたとして、これまでの学説に対する疑問を呈示されている(同書48頁)。 ただし、租税法制度の濫用があった場合にこれを否認できるとする実定法上の根拠規定は、現在の法人税法等わが国の租税法には存在しないという点に留意しておかなければならないであろう。 課税減免規定の濫用であれば、すなわち否認できるとの直接の法的根拠は乏しいといわざるを得ない。 たしかに、前述のりそな銀行事件において最高裁は、本件行為は「外国税額控除制度を濫用するものであり」許されないと説示している。 しかし、同最高裁が、本当に租税法制度の濫用であるがゆえに否認を判断したのかという点については学説上も争いがあり、あくまでも法人税法69条1項の制度趣旨に基づく目的論的解釈(縮小解釈ないし限定解釈)を行ったとみる見解もあることを指摘しておきたい。   結びに代えて 「租税回避」という用語は条文上の文言ではなく、その定義は必ずしも明確であるとはいえない。 今回は従来からの学説上の通説的理解として、金子宏教授や清永敬次教授の定義を紹介したが、論者によって種々の定義付けがなされているところである。 そうであるとすれば、積極的に租税回避を定義付けること自体に疑問を覚えなくもない。 では、これまでの租税回避の定義を巡る議論には意味がなかったのかというと、そのようなことは決してない。 租税回避がいかなる意味を持つのかという点を踏まえて、その定義に拘泥することなく、議論をより建設的なものに組み替えるべきではなかろうか。 例えば、解釈上課税されないとされる租税回避を、課税の対象とするための法を用意する必要性の判断として、あるいは、裁判所が租税回避事案の契約解釈をする際に参考にする道具と捉えるならば、それは有益な議論になるであろう。 不当な「租税回避」や不当な「節税」を課税対象に取り込むなど、いわば、法の潜脱ともいい得る租税回避の試みや、本来の法の目的とは異なる過度な節税の試みにどのように対応すべきかを検討するに当たり、混沌とした今日の租税回避論を改めて整理し直すことは非常に意味のあることではなかろうか。 (了)

#No. 184(掲載号)
#酒井 克彦
2016/09/08

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第16回】「更正処分取消訴訟係属中の相続事件」~最判平成22年10月15日(民集64巻7号1764頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第16回】 「更正処分取消訴訟係属中の相続事件」 ~最判平成22年10月15日(民集64巻7号1764頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 184(掲載号)
#菊田 雅裕
2016/09/08

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第35回】「収入印紙によらない納付方法③(税印押なつ)」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第35回】 「収入印紙によらない納付方法③(税印押なつ)」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   当社は株式会社です。株券等を発行する場合には印紙税が課税されますが、株券等に収入印紙を貼らずに納付する方法があると聞きました。どのような方法ですか。   印紙税は、課税文書に収入印紙を貼付し、消印をすることにより納付するのが原則だが、収入印紙を貼り付けることに代えて、税印を押すことにより納付する方法もある。 この場合、あらかじめ印紙税相当額を現金で納付し、課税文書に税印を押すことを税務署に請求する手続きを要することとなる(法第9条)。 (※) この手続きは税印押なつ機を設置している税務署(全国で118署)において手続きを行うことができ、設置していない署においては手続きができないので注意が必要である。 具体的な手続きは以下のとおりである。   ▷ まとめ   (了)

#No. 184(掲載号)
#山端 美德
2016/09/08

金融・投資商品の税務Q&A 【Q10】「個人が割引債の償還を受けた場合の取扱い」~割引債の発行日が平成28年1月1日以後の場合~

金融・投資商品の税務Q&A 【Q10】 「個人が割引債の償還を受けた場合の取扱い」 ~割引債の発行日が平成28年1月1日以後の場合~   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子   ●○ 検 討 ○● 割引債の償還差益に対する課税については、従前、割引債の発行時に源泉徴収を行い、個人についてはこの源泉徴収のみで課税関係が終了する源泉分離課税とされていました。 金融所得一体課税の改正に伴い、平成28年以後は、割引債の源泉徴収については発行時ではなく、償還時(支払時)に行われることとなりました。また、償還差益は株式等に係る譲渡所得等として課税されることとなりました。 改正前の規定が適用されるかどうかは、割引債の発行日が平成27年12月31日以前か平成28年1月1日以後かにより異なります。 発行日が平成27年12月31日以前の割引債は、原則として発行時に源泉徴収が行われていましたが、平成28年1月1日以後に発行されたものについては、発行時の源泉徴収を適用しないこととされます。 (1) 源泉徴収 居住者が割引債の償還金の支払を受ける場合、その支払の際、その割引債の償還金に係る差益金額に対して、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率により源泉徴収が行われます。 この特例の対象となる割引債の範囲は列挙されていますが(キーワード参照)、割引の方法により発行される公社債はこの範囲に入ります。 源泉徴収の対象となる差益金額は、以下の通り定められています。 なお、割引債が特定口座において管理されている場合には、償還時に特定口座内で源泉徴収が行われることから、本源泉徴収の対象外とされています。 (2) 申告分離課税 平成28年1月1日以後、社債の元金の償還により交付を受ける金額は、社債の譲渡に係る収入金額とみなされます。この取扱いは、利付債、割引債を問わず、同様です。 割引債のうち、平成28年1月1日以後に発行されたもの(すなわち発行時源泉徴収の適用を受けない割引債)の償還により支払を受ける金銭等は、株式等の譲渡による収入金額として課税されます。 本件の割引債は特定公社債に該当するということですので、その償還差益については、上場株式等に係る譲渡所得等として20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率により申告分離課税の対象となります。 なお、(1)で源泉徴収された源泉所得税については、申告時に所得税額から控除されます。   (了)

#No. 184(掲載号)
#箱田 晶子
2016/09/08

連結納税適用法人のための平成28年度税制改正 【第11回】「日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備」

連結納税適用法人のための 平成28年度税制改正 【第11回】 「日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   [12] 日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る 国内法の整備 1 改正内容 「外国人等の国際運輸業に係る所得に対する相互主義による所得税等の非課税に関する法律」について、題名を「外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律」(以下、「外国居住者等所得相互免除法」という)に改めるとともに、日台民間租税取決め(注)に規定された内容を実施するため、台湾との相互主義に基づき、台湾との間の二重課税を排除する等のための措置を講ずることとなった(外国居住者等所得相互免除法1~43)。 (注) 日台民間租税取決めに関しては、2013年12月から公益財団法人交流協会(日本側)と亜東関係協会(台湾側)の間で協議を重ね、2015年11月26日に署名されている。 (1) 双方居住者の振分けルール 日本と台湾の双方の居住者に該当する者について、恒久的住居の所在等を基準とした振分けルールに基づき、台湾の居住者に振り分けられる者にあっては日本の非居住者とみなし、いずれか一方の居住者に振り分けられない者にあっては下記(2)④の(ニ)及び(ホ)の措置は適用しない。 (2) 台湾居住者等の所得に対する所得税又は法人税の非課税等 下記のとおり、所得の種類ごとに、台湾居住者等の所得に対する所得税又は法人税の非課税等の措置を講ずる。 この場合、下記の措置のうち源泉徴収による所得税につき軽減又は非課税の適用を受けようとする台湾居住者等について、日本の国内法に定める租税条約の適用手続に関する措置と同様の措置を講ずる。 なお、その適用対象となる国内源泉所得に関し、台湾居住者又はその関係者による当該国内源泉所得の基因となる行為の主たる目的の1つが、上記の措置の適用を受けることである場合には、適用しない。 また、日本と台湾で課税上の取扱いが異なる事業体に対する上記の措置の適用については、日本の国内法に定める日本と租税条約の相手国等で課税上の取扱いが異なる事業体への租税条約の適用に関する措置と同様の措置を講ずる。 (3) 台湾における移転価格課税に係る対応的調整 内国法人等に係る台湾の関連者との間で行う取引に関し、その価格が独立企業間価格と異なることにより当該内国法人等の所得が過大となる場合において、国税庁長官の確認を受けたときは、当該取引は独立企業間価格で行われたものとして課税所得を計算する。 (4) 国税庁長官の確認があった場合の更正の請求の特例等 納税申告書の提出等をした者は、上記(1)及び (2)の措置の適用により課税標準等又は税額等が過大となる場合において、国税庁長官の確認があったときは、その確認の日から2月以内に、更正の請求によりこれらの措置の適用を受けることができる。 台湾居住者等が有する所得につき上記(2)の措置の適用により源泉徴収による所得税に係る過誤納があった場合において、国税庁長官の確認があったときは、税務署長は、当該所得に係る源泉徴収義務者に対し、その過誤納金に相当する給付金を支給する。ただし、当該過誤納金につき還付請求をすることができる場合には、この限りでない。 (5) 台湾の租税に関する権限のある機関への情報提供 台湾の租税に関する権限のある機関に対し、租税に関する情報の提供を行うことができる旨の規定を設ける。 (出典) 「参考資料」(財務省)   2 適用時期 平成29年1月1日以後に開始する事業年度又は連結事業年度から適用される(外国人等の国際運輸業に係る所得に対する相互主義による所得税等の非課税に関する法律施行令等の一部を改正する政令「附則」1、所得税法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令、平成28年所法等改正法附則1五)。   (了)

#No. 184(掲載号)
#足立 好幸
2016/09/08

包括的租税回避防止規定の理論と解釈 【第22回】「実質主義③」

包括的租税回避防止規定の 理論と解釈 【第22回】 「実質主義③」   公認会計士 佐藤 信祐   前々回では、東京高裁昭和47年4月25日判決について解説を行い、前回では、東京高裁平成11年6月21日判決について解説を行った。 本稿では、大阪高裁平成14年10月10日判決、東京高裁平成16年1月28日判決についてそれぞれ解説を行うこととする。   4 大阪高裁平成14年10月10日判決(TAINSコード:Z252-9212) (1) 事実の概要 本事件は、原告らが保有する不動産及び株式をそれぞれ18億円、42億円で譲渡したところ、両方を併せて譲渡することにより、不動産の譲渡価格の一部を株式の譲渡価額に付け替えたものとして、本件株式の実質的な譲渡価額は8,772万6,440円であり、残余を不動産の譲渡価額であるとして、課税庁により否認された事案である。 本事件では、審査請求の取下げにより、国税不服審判所の裁決を経ていない処分の取消しを求める訴えの適法性などについても争われているが、本稿では、実質主義に係る点についてのみ解説を行うこととする。 なお、平成17年11月21日にて、最高裁から上告不受理の決定がなされている(TAINSコード:Z255-10203)。 (2) 第一審(神戸地裁平成12年2月8日判決・TAINSコード:Z246-8582) (3) 控訴審 (4) 評釈 このように、第一審では納税者の主張が認められたものの、控訴審では課税庁の主張が認められた。第一審でも、控訴審でも、買い手が必要としたのは土地だけであり、本件不動産を18億円、本件株式を42億円として合計60億円としたのは、国土法の規制をクリアーでき、税金が安くなるという理由であるという点は認められているが、それに対する租税法の判断は分かれたということであろう。実際に譲渡された株式の時価はほとんどなかったことからも、譲渡代金のほとんどは土地に対するものであると認定すべきであったと考えられる。 本事件について、経済的実質主義が認められたと解することはできない。なぜならば、譲渡代金の配分・割付けを仮装であると認定し、真実の事実関係に修正していることは、法的実質主義の範疇であると考えられるからである。 この点につき、両者の真の意図が譲渡代金のほとんどが土地であったとしても、民法上の観点からは、不動産を18億円、本件株式を42億円としたことが両者の合意であり、仮装取引と認定するのは困難なのかもしれない。それが故に第一審と控訴審で判断が分かれたと言えよう。 控訴審のような判断が認められるべきかどうかについては、私法上の法律構成による否認論と併せて検討する必要があると考えられる。   5 東京高裁平成16年1月28日判決 松田直樹『租税回避行為の解明』20-22頁(ぎょうせい、平成21年)では、実質主義の原則の適用を正面から認めたものではないが、法形式に重きを置く租税法律主義の優位性に一石を投じた事件として、東京高裁平成16年1月28日判決が紹介されている。本事件については、稲見誠一・佐藤信祐『組織再編における株主課税の実務Q&A』(中央経済社、平成20年)で解説しているため、詳細についてはそちらを参照されたい。 本事件は、有利発行が行われた場合において、既存株主から新株主に対してみなし譲渡があったものとして法人税法22条2項が適用された。同族会社等の行為計算の否認を適用することによる引き直しでは、既存株主において、同様の課税関係を生じさせることが困難である。さらに、法的実質主義を採用しようにも、既存株主が保有する株式に異動はないのであるから、本事件は、経済的実質主義に回帰しているようにも見える。 これに対し、本事件から現在に至る前、同様の否認がなされた事案は寡聞にして聞いたことがない。しかし、当時は、実質主義が進化した内容である「私法上の法律構成による否認論」が議論されていた時代でもある。私法上の法律構成による否認論がどのようなものなのか、そして、現在でも有効なものなのかは、別途検討する必要があろう。この点については、次々回以降で解説を行う予定である。 次回では、今まで解説した法的実質主義の内容と具体的な内容について解説する予定である。 (了)

#No. 184(掲載号)
#佐藤 信祐
2016/09/08
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