〔誤解しやすい〕 各種法人の法制度と 税務・会計上の留意点 【第9回】 (最終回) 「マンション管理組合」 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎 公認会計士・税理士 濱田 康宏 ▷ 法制度について 1 管理組合法人とは 管理組合法人は、「建物の区分所有等に関する法律」(以下、「区分所有法」という)の規定に基づき設立された、区分所有者全員による建物の管理を行うことを目的とした社団法人である。 区分建物(分譲マンション)が完成すると、法律上、当然にその区分建物を管理するための管理組合が成立する。そしてすべての区分所有者は、各自の所有する専有部分の属する1棟の建物を単位とする管理組合の構成員となる(区分所有法3条)。管理組合は、区分所有者の共有の財産である敷地、建物の共用部分等の維持管理を主な目的とする団体である。 管理組合のうち、区分所有者及び議決権の4分の3以上の多数により法人となることを決定し、登記したものを管理組合法人という(区分所有法47条1項)。 管理組合を管理組合法人とするメリットとしては、主として、法人として権利義務の主体となることが明確となり、登記も管理組合法人名義とすることができることが挙げられる。 なお本稿は以下特に断りのない限り、「マンション管理組合」とはこの「管理組合法人」をいうものとする。 2 設立手続 管理組合法人の設立手続の一般的な流れは、以下のとおりである。 管理組合法人は、登記によって成立する(区分所有法47条1項)。 なお、設立にあたって規約を定めることが多いが、管理組合法人の規約は、任意的に作成されるものであり、必須のものではない。しかし、多人数が生活の拠点を設け、細かな利害対立が発生しがちな管理組合法人においては、実情に合わせた詳細な規約を作成することが望ましい。 3 機関 (1) 機関構成 管理組合法人では、①最高意思決定機関であり全区分所有者により構成する集会、②業務執行を行う理事1人、③その監督を行う監事1人が最低限必要な機関である(区分所有法49条1項・50条1項)。管理組合法人にはこれ以外の法定の機関はない。 理事及び監事は集会の決議によって選任され(区分所有法49条8項・50条4項・25条1項)、その任期は、規約に任期の定めがない場合には2年となる。規約に任期を定める場合には、3年以内で自由に任期を設定することができる(区分所有法49条6項・50条4項)。 管理組合法人においては、理事及び監事の改選登記がなされていないことが多い。関与する税理士等としては、注意する必要がある。 (2) 構成員 管理組合法人の構成員は、組合員である。管理組合法人が管理する区分建物の区分所有者であれば自動的に組合員となる(区分所有法3条)。 組合員は原則として総会においてその専有する区分建物の面積割合に応じた議決権を有し(区分所有法38条)、かつ、管理組合法人の債務について専有面積割合に応じた無限責任を負う(区分所有法53条1項)。 (3) 事務執行及び代表 管理組合法人の事務は、規約に別段の定めがある場合を除き、理事の過半数で決定したところにより、各理事が執行する(区分所有法49条2項・3項)。 理事は原則として各自代表権を有するが、規約又は集会の決議でこれを制限することができる(区分所有法49条4項・5項)。 ▷ 会計・税務について 1 マンション管理組合の会計 (1) マンション管理組合の会計の目的 マンション管理組合は、通常の管理と将来の大規模修繕等に備えて、マンション所有者から費用を徴収し、これを各種費用に充てることを目的としている。この通常の管理のための支出を管理費、将来の大規模修繕のためなど建物の修繕のための支出を修繕積立金と称している。 資金の運用と調達を適合させるため、この修繕積立金及び管理費について、区分経理を行い、それぞれの資金について色分けした、いわば基金会計を行うことが、マンション管理組合の会計のあるべき姿であると考えられる。 そして、その資金の適合状態と採算性の状態・収支状況を、マンション管理組合のメンバーであるマンション住民に報告することが、マンション管理組合の会計の目的と考えられる。 ただし、現時点では、マンション管理組合については、会計基準と称されるものが存在していない。そのため、国土交通省の示しているガイドラインとしてのマンション標準管理規約に従った処理が1つのモデルとなる。ここでは、修繕積立金については、管理費とは区分して経理しなければならないとされている(マンション標準管理規約28④)。 (2) マンション管理組合の会計の重要性 近年、マンション管理組合の資金が横領される不正事例報道が増えている。 組合員である各マンション所有者が、あまり興味を持たないため、決算書の開示報告や監査などがおろそかになりやすいことも原因であろう。 なお、余談だが、新潟県南魚沼市のリゾートマンションの事例で横領を行った元理事長は、当時公認会計士であったという。 (3) マンション管理会計のポイント 上記(1)でも説明したように、マンション管理会計のポイントは、管理費会計と修繕積立金会計との峻別である。その際には、いわゆる「お金に色をつける」管理が有効である。 つまり、預金通帳を会計区分別に分けて、管理費会計と修繕積立金会計とは、会計区分を分けるだけでなく、資金的にも区分管理を行うのである。これにより、両会計間での資金移動が可視化されやすくなり、管理規約に違背した流用の有無を検出しやすくなる。 後述するような外部の第三者への駐車場貸付けがある場合などは、税務申告を考慮して、特別会計を設けることも有効であろう。 イメージで言えば、下記のように、資金別会計に近い処理を行うことになる。 [管理費会計] [特別積立金会計] [特別会計] (4) マンション管理会計で作成される財務諸表 前述のように、特にマンション管理会計には、現時点で会計基準が存在しない。慣行としては、一般の人格のない社団等が作成しているのと同様、 の3つが報告書類として作成されることが一般的である。 〈貸借対照表〉 貸借対照表は、純資産の部を正味財産の部と表示するのが一般的である。 〈収支計算書〉 収支計算書は、予算決算差異を表示して、管理会計に役立てられるようにするのが一般的である。また、前述の視点から、他会計への繰入額・受入額を表示する点が重要と考えられる。 収支決算書そのものについては特に書式は表示しないが、会計別の内訳表示を付けることが望ましいであろう。 収支計算書内訳書 財産目録は、資産と負債を列挙して金額を表示するだけなので、書式は省略する。 なお、マンション管理組合そのものではなく、マンション管理業者に対する規制として、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」には、帳簿の作成義務(75条)、財産の分別管理義務(76条)、管理事務の報告義務(77条)が規定されている。 (5) 税務を意識した区分経理 会計そのものではないが、後述の税務における収益事業が生じる場合には、収益事業と非収益事業との区分経理が必要になる。特に、不動産貸付業や物品賃貸業などが生じる場合には、これらの対象資産の区分あるいはその減価償却費の取扱いが重要になるであろう。 2 マンション管理組合の税務 (1) 申告漏れは狙い撃ちされている マンション管理組合で、携帯電話の基地局設置や駐車場の外部への貸し出し等による収入の申告漏れ報道事例が幾つかある。 実際、そもそも申告の必要性を知らないために、申告漏れを指摘されて初めて知るということも少なくない。 (2) 申告漏れの多いパターン 申告漏れで多いのは、次のようなパターンである。 ① 共用部分の屋上に携帯電話のアンテナ基地局を設置することで得られる賃貸収入の計上漏れ(不動産貸付業に該当) マンション管理組合は、人格のない社団等(法人格がない場合)あるいは公益法人等(法人格がある場合)とされ、法人税法では、収益事業課税の対象となる部分だけが課税されることになる。マンション住民から徴収する修繕積立金やマンション住民が使う部分の駐車・駐輪場の料金は、収益事業課税の対象にならないと解されている。 しかし、携帯電話基地局設置による賃貸収入は、不動産賃貸業に該当するものとされている。 ② 太陽光発電による売電収入の計上漏れ(製造業に該当) 屋根に太陽光パネルを設置し、固定買取り制度に基づいて売電を行う場合の売電収入は収益事業である製造業に該当する。この製造業には、電気の供給業を含むものとされている。 ここで、この太陽光パネルの売電設備については、マンション管理組合の所有物となる場合、マンション管理組合会計に資産計上され、減価償却費を製造業の所得計算に算入できることになる。 ③ マンション住民以外への駐車場貸し収入の計上漏れ(駐車場業) マンション付属施設として設置された駐車場のマンション住民以外への貸付が、近年急増している。マンション住民の高齢化によりマンション住民だけでは空きが増えるばかりとの状況が、これを後押ししているのだろう。 本件については、国交省による文書照会が行われ、国税庁により文書回答が出ている(平成24年2月13日付国税庁課税部長文書回答)。 つまり、内部構成員のみの共益的利用で完結している場合には、一種の「管理費の割増金」収入と位置づけられるので、そもそも収益事業課税の対象にならない。共益性に疑念が生じるような場合には、状況によって、外部使用者の収入部分だけ、あるいは、全額が駐車場業として収益事業課税の対象になる。ただし、臨時的利用で一定の場合には、本来業務である区分所有者の共済的事業の付随事業として整理され、収益事業課税されない。 なお、当然ながら、駐車場運営による使用料収入は、マンションの管理費又は修繕積立金に充当し、区分所有者に分配しないことが回答の前提とされている。 ところで、この駐車場業において、駐車場設備の減価償却費を収益事業における所得計算に算入可能かという論点がある。これについて、一般的には、駐車場設備など外部使用に必要な資産は、区分所有者の共有物である。つまり、マンション管理組合の所有物でないため、資産計上されることもなく、当然に、駐車場業における減価償却費は生じないことになる。上記②太陽光パネルの場合との違いに注意が必要であろう。 ④ その他マンション管理組合による収益事業が生じる場合 上記以外に、下記が収益事業課税の対象になり得るとされている。 ただし、上記のうち、上記③同様、マンションの区分所有者の共有物の使用料として徴収されるもので、その区分所有者からの収入のみである場合には、その収入は「管理費の割増金」であると考えられ、収益事業に該当しないことになる。 その場合、自販機設置料収入や宅配便発送手数料収入などは、区分所有者の共有物の使用料として徴収されるわけではないため、当然ながら、この例外に該当し得ない。上記③のように、臨時的かつ短期的な収入として、区分所有者の共済的事業の付随行為と言えることも、通常はまずないであろう。 (3) 法人税法・地方税法等におけるその他の論点 人格のない社団等あるいは公益法人等に該当することで、共に出資持分の定めのない法人と位置づけられる。よって、既にこの連載で扱ってきた通り、資本金や資本金等の額に依拠する規定の適用はなく、また、寄附金課税や交際費課税において特例適用がある点は、言うまでもないだろう。 ところで、これまで取り扱ってきた他の非営利法人類型と異なり、マンション管理組合については、収益事業を一切行っていないことも少なくないと思われる。収益事業があるかどうかで税務上考慮すべきことは、大きく分けて3点である。 ① 青色申告開始時期と事業年度について 法人設立時には、収益事業を開始していないことが通例であるため、青色申告開始届出も当然ながら出ていないのが通例である。そのため、収益事業開始時点で、収益事業開始届出書を出すとともに、青色申告の承認申請書を出すことになる。 事業年度については、人格のない社団等については、定款等の定めがないことから、その人格のない社団等が自分で定めて事業年度設定を行い、税務署に届出することになる。もし、届出を行わない場合には、1月1日から12月31日の暦年が事業年度とされることになる。 なお、必ずしも法人税法の収益事業課税と完全対応しないものの、消費税の課税事業者になる可能性を検討して、こちらの届出を必要に応じて行っておくことも当然ながら、必要である。 ② 均等割申告について 人格のない社団等の場合、収益事業課税がなければそもそも均等割申告は不要だが、公益法人等に該当する場合、収益事業課税がない場合でも、均等割申告だけは必要になる。この申告納付時期は、毎年4月中となっているため、要注意である。 なお、公益法人等で、収益事業課税を行っていない場合に均等割免除に応じてくれる地方公共団体もあるようなので、この点は、個々の確認が必要になる。 ③ 法人事業税が収入割課税になる可能性がないか 太陽光発電による電気供給業を行う法人の法人事業税は、収入金額を課税標準とする収入割申告が原則となる。通常の法人課税は、所得割課税であることから、税理士がこの点に気がつかない可能性もあろう。 なお、太陽光発電事業が主たる事業に比べて社会通念上独立した事業部門とは認められない程度の軽微である場合には、主たる事業に含めて、所得割課税を採用することができるとされている。この軽微の程度の判断は、主たる事業の売上金額の1割程度以下であることなどが条件となる。 他の事業を行っていない場合には、この軽微な場合の例外に該当しないため、マンション管理組合の場合は、ストレートに収入割課税となる可能性もある。現実の事例に当たった場合には、都道府県税事務所に取扱いを確認すべきだろう。 これらの他、マンション管理組合で常駐勤務者に給与を支払う場合には、所得税の源泉徴収が問題になるのは、言うまでもないだろう。 タワーマンションのブームにより、比較的高額の資金がマンション管理組合の管理運用対象となっている物件も少なくないことが予想される今、税務上の問題点については、十分な認識を持っておくべきだろう。 (連載了)
税務ピンポイント解説 【第2回】 「「花押」~遺言書の効力」 Profession Journal 編集部 自筆証書遺言には、全文、氏名・日付の自書に加え、「押印」が必要です(民法968条1項)。この押印の要件につき、最高裁で新たな判断が示されました(最判平28.6.3)。 本件では、父親から遺贈を受けたと主張する次男が、長男・三男に対して土地所有権の返還を求めました。85歳で死亡した父親は、遺言書に押印をせず、手書きで「花押」を記していました。 「花押」とは、古くから戦国武将や政治家などが、印章や拇印の代わりに用いてきた伝統的な“サイン”のことです。 最高裁は、法が押印を要求する趣旨が、①遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保し、②我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあるという先例(最判平元.2.16)を引いた上で、花押にはそのような慣行・法意識がなく印章による押印とは同視できないとして、本件遺言書を無効としました。 ちなみに、「氏名」に代えて花押を書いた場合はどうなるのでしょうか? この点、氏名の自書は、遺言者の特定・同一性の確認のために要求されるものに過ぎず、必ずしも戸籍上の氏名と同一でなくとも、通称、 雅号、ペンネーム、 芸名でもよいとされています。 したがって、花押であっても、その形状や普段からの使用実態、全文との整合性等に鑑みて遺言者を特定し同一性を確認できると認められれば、同要件を充たすと判断される可能性もあります。 しかし、遺言書は記載事項が法定された厳格な法的文書ですから、後の紛争を回避するためにも、疑義を挟む余地のない正しい体裁で作成することが大切といえそうです。 (了)
《速報解説》 中小企業者等の少額減価償却資産特例、 改正措通で従業員数1,000人の判定方法に柔軟な取扱いを明記 ~期末時の現況による判定でも適用可~ 税理士 伊村 政代 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(措置法67条の5)については、平成28年度税制改正において、下記拙稿の通り、適用対象法人が中小企業者等のうち事務負担に配慮する必要がある法人(常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人)に限定された。 そしてこのたび7月11日に国税庁ホームページで公表された改正通達(措置法通達67の5-1)において、下記のように従業員数が1,000人以下であるか否かの判定について、その判定時期に係る取扱いが明らかにされた(下線筆者)。 つまり、原則としては上記拙稿で述べたように、従業員数の制限については『資産の取得時及び事業供用時の現況』により判定するが、期末時の現況において1,000人以下であれば、仮にその事業年度中に従業員数の増減があり1,000人超の時に取得した資産であっても適用できることとなる。 したがって、期中の従業員数が1,000人超でも、期末時点での従業員数によっては当該規定の適用を受けることが可能となる。なお、この通達(措通67の5-1)によれば要件が示されていないことから、事業年度毎に都度、法人にとって有利になるように判定すればよい。 ただし、これはあくまでも中小企業者等における従業員数の判定についての取扱いであり、そもそも中小企業者等でない期間に取得した資産については適用除外されることに注意されたい。 また今回の改正通達では、常時使用する従業員の範囲についても下記の取扱いが新設されている。 (了) ↓お勧め連載記事↓
《速報解説》 「役員給与税制の見直し」に関する改正法人税基本通達が公表 ~「利益の状況を示す指標」について明確化~ 公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎 1 はじめに 平成28年6月28日、国税庁より『法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)』が公表された(ホームページ公表日は7月11日)。 平成28年度の税制改正では、役員給与税制のうち「事前確定届出給与」及び「利益連動給与」に関する取扱いが改正され、事前確定届出給与の範囲に一定の「特定譲渡制限付株式」(いわゆるリストリクテッド・ストック)が新たに追加されたほか、利益連動給与の算定の基礎となる利益に関する指標の範囲に、利益の額に有価証券報告書に記載されるべき事項による調整を加えた指標等が含まれることとされた。 今回の法人税基本通達の改正は、これら新たな役員給与税制に関する法人税法上の取扱いを明確にするものである。 そこで本稿では、新たに追加された取扱いについて、公表された通達に基づき解説することとする(文中意見にわたる部分は筆者の私見である点、あらかじめ申し添える)。 なお、平成28年度の税制改正における役員給与税制の見直しについては、下記拙稿『平成28年度税制改正における役員給与税制の見直し』を参照されたい。 また、特定譲渡制限付株式に係る所得税法上の取扱いについては「所得税基本通達の一部改正」を取り上げた下記拙稿(速報解説)を参照されたい。 2 新たに公表された通達 今回の改正では、特定譲渡制限付株式に関する取扱いとして、以下の通達が追加された。 3 新設された通達の内容 (1) 過去の役務提供に係るもの(法基通9-2-15の2) 平成28年度の税制改正で新たに「事前確定届出給与」の範囲に含まることとなった「特定譲渡制限付株式」は、以下の①及び②の要件を満たした株式(譲渡制限付株式)のうち、③及び④の要件を満たした株式をいう(法法34①二、54①、法令111の2②)。 ③の要件にあるように、事前確定届出給与の対象となる「特定譲渡制限株式」は、「将来の」役務提供の対価としてその役員等に生ずる金銭報酬債権と引換に交付されるものに限られているのである。 以上を踏まえ、この通達は、「過去の」役務提供に係る債権と引換に交付される譲渡制限付株式に係る給与は「特定譲渡制限株式」に該当せず、したがって事前確定届出給与として損金の額に算入されないことを明らかにしている。 (2) 利益の状況を示す指標の意義(法基通9-2-17の2) 平成28年度の税制改正によって、利益連動給与の算定指標の定義が「利益に関する指標」から「利益の状況を示す指標」に改正され、有価証券報告書等に記載されている純粋な利益指標(営業利益、経常利益、当期純利益等)のほかに、ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)等の一定の指標に基づき算定することが可能となった(法法34①三、法令69⑧)。 この通達は、利益連動給与の算定基礎となる「利益の状況を示す指標」は、あくまでも利益に関するものに限ることを明らかにしている。 ここで「利益に関するもの」とは、具体的にどのようなものを想定しているのであろうか。 この点、株価、配当、キャッシュ・フローに関する指標の中には、その算定式に「利益の状況を示す指標」が用いられるものがある。例えば「PER(株価収益率)」(株価÷1株当たり当期純利益)や、「配当性向(%)」(1株当たり配当額÷1株当たり当期純利益×100)の算定には利益の状況を示す指標が用いられているため、これらも広く「利益に関するもの」に含まれるのではないかとの疑問が生じる。 しかし、「利益に関するもの」とは、利益そのものを評価するために用いられる指標であると考える必要がある。すなわち、PERや配当性向は、いずれも利益水準を評価するための指標ではなく、株価や配当水準を評価するための指標であり、その算定式に含まれる「利益の状況を示す指標」そのものは直接的な評価の対象ではない。 法人税法施行令第69条第8項に規定されている「利益の状況を示す指標」は、このような観点から、「利益に関するもの」を列挙したものと考えられる。 (3) 利益の状況を示す指標に含まれるもの(法基通9-2-17の3) 利益連動給与の算定基礎となる「利益の状況を示す指標」は、利益の額に有価証券報告書に記載されるべき事項による調整を加えた指標のほか、これに準ずる指標が含まれることとされている(法令69⑧五)。 この通達は、ここでの「準ずる指標」に、有価証券報告書の任意的記載事項に基づく指標や、利益の額に費用又は収益の額を加減算して得た指標が含まれることを明らかにしている。 例えば、以下のような指標が列挙されている。 (出典:『「攻めの経営」を促す役員報酬~新たな株式報酬(いわゆる「リストリクテッド・ストック」)の導入等の手引き~(平成28年6月3日時点版)』(経済産業省資料)p.32) (了) ↓お勧め記事↓
《速報解説》 国税庁、通達改正により 「特定譲渡制限付株式に係る所得税法上の取扱い」を整備 公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎 1 はじめに 平成28年7月5日付、国税庁より『「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)』が公表された(ホームページ公表日は7月8日)。 この中では、役員に対して付与された「特定譲渡制限付株式」(いわゆるリストリクテッド・ストック)に関する所得税法上の取扱いが新たに追加されている。 ここでいう「特定譲渡制限付株式」は、平成28年度の税制改正において、事前確定届出給与の範囲に新たに追加されたものであり(法法34①二)、本通達はその受け手側(役員)における所得税法上の課税関係を明確にするものである。 そこで本稿では、新たに追加された所得税法上の取扱いについて、公表された通達に基づき解説することとする。 なお、平成28年度の税制改正における役員給与税制の見直しについては、下記拙稿『平成28年度税制改正における役員給与税制の見直し』を参照されたい。 2 新たに公表された通達 今回の改正では、特定譲渡制限付株式に関する取扱いとして、以下の通達が追加された。 また、特定譲渡制限付株式に係る定めが追加されたことに伴い、以下の通り、従来の新株予約権に係る規定の項番ないし号番が繰り下げられた。 これに伴い、改正後の通達でも参照先の修正が行われている。 3 新設された通達の内容 (1) 特定譲渡制限付株式等の譲渡についての制限が解除された場合の所得区分(所基通23~35共-5の2) この通達は、特定譲渡制限付株式を交付された者において、その譲渡制限が解除された場合には、交付法人との関係に着目して以下のように所得を区分することを明らかにしたものである。 (2) 特定譲渡制限付株式等を交付された場合の所得の収入すべき時期(所基通23~35共-5の3) この通達は、特定譲渡制限付株式を付与された場合に、それに係る所得の収入すべき時期(認識時期)を明らかにしたものである。 すなわち、特定譲渡制限付株式等の交付に係る経済的利益については、株式交付日ではなく譲渡制限解除日に課税されることが明らかにされている。 ただし、「無償取得事由」(所令84①二)に該当することによって、交付法人がその譲渡制限付株式等を(交付された者から)無償で取得することとなった場合には、その交付された者は課税されない(対象となる株式を手放すため)。 (3) 特定譲渡制限付株式等の価額(所基通23~35共-5の4) (2)で説明したとおり、特定譲渡制限付株式等の交付に係る経済的利益は、譲渡制限が解除された日に課税されることとなるが、具体的には「譲渡制限解除日における価額」すなわち譲渡制限解除日における時価で課税されることとなる。 この通達は、「譲渡制限解除日における価額」の内容について明らかにしたものであるが、従来の所得税基本通達23~35共-9(株式等を取得する権利の価額)と同様の取扱いとなっている。 (4) 特定譲渡制限付株式等の価額(所基通48-1の2) 特定譲渡制限付株式等の取得価額は「譲渡制限解除日における価額」によることとされており(所令109①二)、この通達は、その算定方法は上記(3)により求めた価額とすることを明らかにしたものである。 この結果、特定譲渡制限付株式等を付与された者(交付法人の役員)は、その譲渡制限が解除された日において、その日の価額によってその株式(有価証券)を取得するとともに、給与所得、退職所得、事業所得又は雑所得として課税されることとなる。 (了) ↓お勧め記事↓
《速報解説》 東京国税局、有料老人ホームが入居一時金を受領した際に交付する 「預り証」に係る印紙税の取扱いに関する文書回答事例を公表 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 有料老人ホームが入居一時金を受領した際に交付する「預り証」に係る印紙税の取扱いについて、平成28年6月29日付で、東京国税局からの回答が公表された。 1 照会の趣旨 老人福祉法第30条に規定する「有料老人ホーム協会」の会員が、入居者との間で締結する有料老人ホームの入居に係る契約に基づいて、入居者から入居一時金を受領する際に交付する「預り証」についての印紙税の課否について、「金銭又は有価証券の受取書で売上代金に係るもの以外のもの」(第17号の2文書)に該当するものと解してよいかどうかというものである。 2 照会に係る取引事実関係 3 結論 「預り証」は、入居一時金の受領事実を証明するために入居者に交付するものであり、第17号文書に該当する(基通別表第一第17号文書1)。 また、老人ホームに入居後に、契約が解除されるなどの場合があり、解除された以降の期間に対応する部分を返還することとされたとしても、家賃等の対価であることから「売上代金」に該当する。 したがって、この場合の入居一時金を受領する際に交付する「預り証」は、売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書(第17号の1文書)に該当する。 なお、公益法人又は公益財団法人が作成されるもの、及び会社以外の法人のうち、法令の規定又は定款の定めにより利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができない法人が作成するものは営業に関しない受取書に該当するため、非課税となる(法別表第一第17号文書非課税物件2及び基通別表第一第17号文書21・22)。 【参考】 (了)
《速報解説》 国税庁、マイナンバー制度をめぐる「相続税・贈与税に関するFAQ」を公開 ~相続人等間での本人確認は不要など取扱いを解説 Profession Journal編集部 国税庁は、このたび7月8日付けHP上で、マイナンバー制度をめぐる「相続税・贈与税に関するFAQ」を公開し、相続税と贈与税の申告におけるマイナンバー(個人番号)の取扱いに関する注意点を明らかにした。 〇申告に関わらない人の個人番号は出さないことが基本 周知のとおり、相続税・贈与税の申告については、本年1月1日以降に開始する相続・遺贈、そして同日以降に行われる贈与に伴って申告書へのマイナンバーの記載及び本人確認用の書類(①マイナンバーカード、②通知カード+運転免許証等、③マイナンバーが記載された住民票の写し+運転免許証等、のいずれか)の提出が求められる。 相続税・贈与税の申告においても、マイナンバーに関する基本的な取扱いは所得税等と大きく異なることはない。相続人や受贈者が申告に際して本人確認のために自身の住民票を提出する場合には、申告者以外のマイナンバーが表示されていれば、マイナンバーの安全管理措置としてマスキングを行った上での提出が求められる(Q1-5)。 一方で、複数の相続人等が同一の書面にマイナンバーを記入する際には、相続人等の1人がマイナンバーを記入した後に、マスキング等をせずに他の相続人等に渡しても番号法上の「特定個人情報の提供」には該当しないため、特に問題はないとされている(Q1-4)。 基本的な取扱いをまとめると次のとおり。 〇税務で留意したい取扱い 相続税申告の際に使用する第1表には、被相続人のマイナンバーを記入することとなる。しかし、場合によっては被相続人のマイナンバーを確認できないこともあろう。その場合には、申告書に被相続人のマイナンバーを記載しないまま提出することも認められている(Q1-2)。ちなみに、被相続人については本人確認が不要となっているため、被相続人の本人確認書類を提出する必要はない(Q1-3)。 税理士事務所では相続税・贈与税の申告書の控えを保管するケースが想定される。その際にはマイナンバーを記載しない、または複写により控えを作成する場合はマイナンバー部分が複写されないようマスキングを施すなど、安全管理措置の面からマイナンバーの取扱いに十分注意する必要がある(Q1-6)。 〇贈与特例では金融機関へ提出する申告書でもマイナンバーの記載が必要に 資産の世代間シフトに有効な特例である教育資金贈与特例(措法70の2の2)と結婚・子育て資金贈与特例(措法70の2の3)では、申告書を金融機関に提出することとなる。 その際には、マイナンバーの記載が必要となるばかりでなく、金融機関が本人確認を行う必要があるため、金融機関に対して書類の提出を行うことに留意したい(Q2-8、Q2-9)。 (了)
2016年7月14日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.177を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第43回】 「混沌とした租税回避論の再整理(その1)」 中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 はじめに 租税回避とは課税されるべきであろうか。それとも、課税されるべきではないのであろうか。 「租税回避はけしからん」として、課税されるべきであると考えられがちであるように思われる。 この点、学説上の通説は、租税回避とは課税されないものと理解している。 いわば、租税回避は一種の安全地帯(セーフハーバー)として捉えられているのである。 しかし、今日の租税回避論は混沌としている感が否めない。 すなわち、従前では考えられなかった租税負担の軽減を図る行為が頻発し、裁判や学説上、「租税回避とは何か」を再考する契機となっている。 例えば、最近ではヤフー事件が注目を集め、りそな銀行事件なども大変話題となった。これらは、租税法学者に限らず、租税実務家にも非常にインパクトのあった事件であると思われる。 本稿では、こうした最近の租税負担の減少を図った事件などに触れた上で、混沌とした租税回避論について一定の整理を図りたいと考えている。 Ⅰ 租税回避の定義の再確認 1 従来の租税回避の定義 通説的な学説として、金子宏教授の租税回避の定義を確認しておこう。 一見すると少し難しい定義かもしれないが、極々簡単にいえば、租税回避とは、①私法上の選択可能性を利用し、②課税要件の充足を免れることといえるだろう。 続いて、清永敬次教授による租税回避の定義も確認しておきたい。 両教授の定義に共通するところをまとめれば、租税回避とは、「課税要件の充足を免れて、税負担の軽減を図ること」であり、これが従来の租税回避の代表的な捉え方である。 なお、課税要件が充足されれば納税義務が発生するわけであるが、ここで定義されている「租税回避」とは、課税要件を満たさないようにすることで租税負担を免れる行為である。 租税法律主義の要請の下、課税要件を充足していない限り課税はなされない。これが、今までの通説的な理解であったことを、最初に踏まえておきたい。 2 租税回避事例 ―岩瀬事件― 租税回避を理解する上で重要な事件として、いわゆる岩瀬事件がある。 これは、当事者の有する2つの土地について、交換契約によると所得税が高くなることを知った納税者らが、交換契約ではなく、あえて2つの土地についてそれぞれ売買契約を締結し、所得税負担の減少を図った事件である。税務署長は、納税者の行った2本の売買契約を、1本の交換契約であるとして更正処分を行った。 第一審東京地裁平成10年5月13日判決(判時1656号72頁)は、当該2本の売買契約は、本来は交換(民法586条)であったと認定し、更正処分を適法と判断した。 これに対して、控訴審東京高裁平成11年6月21日判決(判時1685号33頁)は、当事者が1本の交換契約によらずに2本の売買契約という法形式を選択したことについて、 として、交換契約ではなく2本の売買契約を採用した目的が、租税負担を軽減するためであったと認定した上で、 と判示し、当事者の「税負担の軽減を図る」という本来の目的を考える以上、交換契約を採用することは考え難く、その目的達成のためには売買契約を選択することが当事者の真意に合致するとして、 として原審判断を覆し、更正処分を違法としたのである(上告不受理)。 前述のとおり、租税回避の定義は、①私法上の選択可能性を利用し、②課税要件の充足を免れることと理解されている。この事件は、①交換か売買かという私法上の選択可能性を利用し、②売買契約を締結することで、交換に対応する課税要件の充足を免れた事案であり、まさに租税回避の典型例であるといえる。 この事例では契約の解釈が争点となっていたが、東京高裁は「租税負担の軽減」という当事者の意思を織り込んで契約解釈を行っており、租税回避に中立的な判決と評することができるであろう。 3 租税回避の否認 租税回避を否認するということは、課税要件を満たしていないにもかかわらず、これを否認して課税をすることになるのであるから、租税法律主義の下、明文の規定が必要になる。 同様に、法人税法132条の同族会社等の行為計算否認規定などは、税務署長の権限において、相当程度幅広く租税回避を否認する規定であるため、その適用範囲について無条件の拡大を許すことは、租税法律主義の下認められないことであるが、どこまで拡張が許容されるべきかについては、昨今の種々の事件を背景として関心が寄せられている部分である。 ところで、租税回避の否認とは、課税要件を充足していないものについて、課税要件を充足させる行為であるから、セーフハーバーからの排除、すなわち、租税回避の状態のままにしないために、セーフハーバーから課税地帯へ引き上げることを意味する。 学説どおりに「租税回避」を課税要件の充足がないものであると捉えると、「租税回避」とは課税されないものとなるが、しかし、「租税回避」をこのようなものとして理解しない向きも多い。この点については、むしろ、「租税回避」とは、結局課税されるか、課税されないかの判断待ちの状態であり、ある意味で「経過的な状態」と捉えられているのかもしれない。しかしながら、そのような理解は、「租税回避」の学説上の理解とは相容れない。 Ⅱ 租税回避の再考 1 新しいタイプの租税軽減行為 ―りそな銀行事件― 我が国の租税法には、一定の政策目的を実現するために租税負担を免除ないし軽減する規定(以下「課税減免規定」という)が用意されている。 例えば、国際的二重課税を排除するために設けられている法人税法69条などもその1つである。 最近、こうした課税減免規定の要件を形式的に充足し、その規定の本来の趣旨に沿わないところで、租税負担の免除・軽減を図ろうとする従来見られなかった事例がある。 このような事例については、法律の要件を満たしている以上、課税減免は認められて当然と理解するべきであろうか。 それとも、本来の趣旨から外れた規定の適用は排除すべきと考えるべきであろうか。 このような新しいタイプの事件として、いわゆる「りそな銀行事件」と呼ばれる事例を確認しておこう。 事実関係はとても複雑であるが、簡潔に言ってしまえば、X社(原告・被控訴人・被上告人)がクック諸島において本来自らが納付する必要のない外国税額を納付し、それを法人税法69条に定める外国法人税であるとして、自らの法人税から控除したことにつき、税務署長Y(被告・控訴人・上告人)が否認した事案である。 第一審大阪地裁平成13年12月14日判決(民集59巻10号2993頁)は、X社の行った取引を「投資の総合的コストを低下させるための手段と位置づけることが可能である。」とし、Yの主張を排斥した(控訴審大阪高裁平成15年5月14日判決(民集59巻10号3165頁)もおおむね維持)。 この事件は、上告され、上告審最高裁平成17年12月19日第二小法廷判決(民集59巻10号2964頁)は次のように述べ、Yの逆転勝訴とした。 であるとし、そうした行為は、 と示し、原審判断を覆したのである。 本件は、法人税法69条の適用において、同制度の趣旨目的に限定して適用を認めるべきか否かが争点となった事例であるが、最高裁はこれを肯定したものである。 本件取引は、X社があえて二重課税を生じさせることで、法人税法69条の適用要件を充足したものであり、同条の国際的二重課税排除の趣旨目的からは逸脱していると判示されたのである。 (続く)
金融・投資商品の税務Q&A 【Q3】 「公募利付債券の課税関係」 ~改正後の取扱い~ PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子 ●○ 検 討 ○● 従前、公社債に対する課税については、利子は源泉分離課税(所得税15.315%、地方税5%)、譲渡益は原則非課税、償還益は雑所得として総合課税の対象とされており、株式の譲渡損益や配当に対する課税とは異なるものとされていました。しかし、平成25年度税制改正により、平成28年1月1日以後、その取扱いが以下の通り変更され、特定公社債については基本的に上場株式と同様の課税とされます。 なお、発行日が平成27年12月31日以前の公社債についても、利払日、譲渡日、償還日が平成28年1月1日以後の場合は、原則として新税制が適用されます。 1 利子にかかる税金 公社債の利子については、支払の際に20.315%(国税15.315%、地方税5%)の源泉徴収がなされます。 特定公社債の利子はその金額にかかわらず、源泉徴収で課税関係を完結することができますが、申告する場合は、上場株式等の配当所得等として申告分離課税20.315%(国税15.315%、地方税5%)が適用されます。申告をした場合、上場株式等(特定公社債を含む)に係る譲渡損との損益通算等が可能です。 2 売却・償還時の取扱い 平成27年12月31日以前は、公社債の譲渡益は原則として非課税とされていました。また、償還益は雑所得として総合課税の対象とされていました。 平成28年1月1日以後は、公社債の譲渡益及び償還益は、株式等に係る譲渡所得等として取り扱われることとなりました。 具体的には、特定公社債の譲渡については、他の所得と区分し、上場株式等の譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得(以下、「上場株式等に係る譲渡所得等」)として、申告分離課税(所得税15.315%、地方税5%)が適用されます。 特定公社債の元本の償還により交付を受ける金銭等の額については、公社債の譲渡による収入金額としてみなされることにより、譲渡と同様に課税されることとなります。 特定公社債の譲渡損、償還損は、上場株式等に係る譲渡損失として取り扱われます。申告分離課税の適用上、その年中の他の上場株式等(特定公社債を含む)に係る譲渡所得等との相殺は認められますが、上場株式等に係る譲渡所得等の合計額が損失となった場合は、その損失は他の所得と相殺することはできません。 ただし、一定の譲渡損益については以下の特例の対象となります。 ◆配当所得等との損益通算 特定公社債の譲渡(償還を含む。以下同様)により生じた損失のうちその譲渡日の属する年分の上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控除しきれない金額は、申告を要件に、当該損失をその年分の上場株式等の配当所得等の金額(特定公社債の利子を含み、申告分離課税を選択したものに限る)から控除することが認められます。 ◆損失の繰越控除 特定公社債の譲渡により生じた譲渡損失のうちその譲渡日の属する年分の上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控除しきれない金額は、一定の条件のもと、その年の翌年以後3年内の各年分の上場株式等に係る譲渡所得等の金額からの繰越控除が認められます。 詳細については【Q2】を参照ください。 (了)