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顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第30回】「経費管理のKPI(その④ 仮払処理)」

顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第30回】 「経費管理のKPI (その④ 仮払処理)」   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 今回は、経費管理を構成する複数のKPIから、「仮払処理」に関連する業務プロセスを評価するKPIを取り上げる。 現金や小切手等の金銭の支出をしたが、具体的な取引に対応する相手勘定科目や金額が確定できない場合、仮払金として処理するが、このような仮払処理は、精算されるまで勘定科目が定まらない状態が続くため、適正に管理をしなければ、財務諸表の信頼性を損なうだけでなく、使途不明金が放置されることになり不正の温床になりかねない。 そこで、今回は、経理財務部門がそのような仮払金を処理する業務プロセスのサービスレベルを評価するKPIを紹介しよう。   KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておこう。 経済産業省スタンダードでは、経費管理において、会社が担う一般的な機能を、「年度予算管理」と「日常管理」に分けている。 このうち、「日常管理」を構成する機能は、「通常経費処理」、「仮払決済」、「差額決済」である。 今回解説するKPIは、「日常管理」における「仮払決済」に関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:経費管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   さらに、経済産業省スタンダードでは、「仮払決済」に関連する業務プロセスを次のようにまとめている。 〈経済産業省スタンダード:7.4.1使用内容精査〉   〈経済産業省スタンダード:7.4.2振替計上〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   まず、主管部門が必要とする仮払金額とその使途を明記した申請を行い、承認を経て、現金や小切手等の金銭の支出をする。この金銭の支出後、いったん相手勘定科目を仮払金勘定で起票する。主管部門が取引先から領収証等の証憑を受領した後、勘定科目、取引日、取引金額、取引先等を明記した振替伝票を作成する。振替伝票の内容が承認されれば、適正な勘定科目の経費として計上される。 今回のKPIは、このような仮払処理に関連する業務プロセスを前提に、仮払状態が継続している間に潜在する諸問題に着目し、仮払勘定発生日から仮払精算完了日までの平均日数を問うものである。   定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 「仮払勘定発生日」とは、相手勘定科目や金額が未確定のまま概算で金銭の支出が発生した日をさし、仮払勘定の増加取引を記帳した日ではない。 「仮払精算完了日」とは、金銭の回収又は相手勘定科目と金額の確定に基づき仮払勘定の減少取引を記帳した日をさす。 「平均」とは、承認対象となる仮払申請の仮払勘定発生日から仮払精算完了日までの日数を合算して、それを承認対象となる仮払精算件数で割った平均値をさす。データを取る場合、前月1ヶ月のデータに基づいて記入すればよい。   KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルでこのKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、経費の勘定科目と金額を適正に表示するため、仮払勘定の精算を早期に完了することが望ましいという価値判断に基づいて設定されている。 仮払勘定の迅速な精算の重要性を理解するには、仮払勘定がどのような態様で発生し、それぞれに対する適切な対応を整理することが有用である。 次のように、仮払勘定の発生態様は多岐にわたる。 内部統制の視点では、内部統制が機能することが期待できる類型(①、②)と内部統制が破られることを織り込むべき類型(③、④)に分けられ、ふさわしい対応が異なる。 前者は、あらかじめ整備した仮払管理規程に従い、発生時点で、取引の発生日、金額、利用者氏名を仮払管理台帳に記録し、精算時点で、証憑による使途の確認、勘定科目と金額の確定に基づく記帳等の予防的管理で対応する。 後者は、規程が想定する射程外で発生する可能性が高いため、定期的な現預金照合や仮払勘定残高の確認等の発見的管理の要請が強い。逆に、だからこそ、仮払金を発見した場合には、早期の精算が重要となってくる。 いずれにしても、これらの態様で発生する仮払勘定の早期精算の重要性は変わらない。 このようなKPIを設定した価値判断が共有されず、仮払勘定の精算までの日数が長い会社では、次のような問題が惹起するだろう。 まず、資産性が疑わしい仮払勘定の残高が表示され、経費の期間配分が歪み、財務諸表の信頼性が低下する。 さらに、不良資産の隠蔽や利益の嵩上げを意図した粉飾、現預金の着服が隠されている可能性が高まる。 また、税務調査で役員に対する仮払金について、役員貸付金として認定されればその利息計上が問題となり、役員賞与として認定されればそれにかかる源泉所得税の問題等、税務リスクが高まる。   顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、仮払勘定が発生してからその精算までの業務プロセスが組み込まれていることを確認していただきたい。 それを前提に、例えば、一定期間の出納帳、仮払管理台帳、精算伝票を試査により閲覧し、仮払金支払日から振替記帳日までの平均日数を算出していただきたい。 さて、読者の顧問先において、仮払勘定発生日から仮払精算完了日までの平均日数は何日になっただろうか。 *  *  * 次回も、引き続き「経費管理」を構成する複数のKPIから、「概算計上」を行う会社の経費計上の正確性を評価するKPIを取り上げる。 (了)

#No. 51(掲載号)
#島 紀彦
2014/01/09

私が出会った[相続]のお話 【第1回】「これから相続案件に携わる税理士の皆さまへ」~相続実務に関するクライアントへの対応と心がまえ~

私が出会った[相続]のお話 【第1回】 「これから相続案件に携わる税理士の皆さまへ」 ~相続実務に関するクライアントへの対応と心がまえ~   財務コンサルタント 木山 順三   〔皆さまへのごあいさつ〕 税理士の皆さま、こんにちは。財務コンサルタントの木山順三です。 私は長年信託銀行マンとして、若い時代は銀行の営業、中堅になり銀行の店部経営、そして50歳から現在に至るまで、コンサルタント業に携わっています。 その間、税理士、弁護士、司法書士、公証人、家庭裁判所調査官、国税調査官、マスコミ・出版関係者等々、さまざまな方との出会いがありました。 私は税理士ではありません。 したがって、これから述べさせていただく税理士の皆さまへのアドバイスは大変僭越であり、ましてや既に多くの経験をされておられる先生方にとっては失礼極まりないものと十分理解しております。 しかしながら、あえて申させていただくならば、業界内部でなく外部から見た客観的な見方も、“岡目八目”というように意外と本質をついている面もあると思います。 年齢だけはたいていの税理士の皆さまよりも勝っている私に免じて、これからの1年間、どうぞお付き合いください。   〔相続に携わる心がまえ〕 さて、皆さまは既に独立されておられたり、特定の税理士事務所で業務をなさっておられることと存じますが、この連載のはじめとして、今回は、これから相続の案件に携わろうとされておられる税理士の皆さまに、ぜひとも心がけていただきたいことについてお話したいと思います。 まずはそれらの事項を、思いつくままに述べてみましょう。 以上、アットランダムに述べてみました。 既に皆さまにおかれては十分に心得ておられることと思いますが、上記項目の中でも特に次の三項目については、老婆心ながら注力願いたいと思います。 まずは、①の「顧客指向を忘れずに」です。 ただしこれは、必ずしもクライアントの言うことを何でも「ハイ、ハイ」と聞くことではありません。 3年ほど前の日経新聞朝刊に、米銀行投資家のケン・モリス氏が言った「NOといえるバンカー」という記事が載っていました。 このことは、常に収益目標にさらされている銀行員への格言だけではないと思います。 すべての業界、なかでも信用を構築し長いお付き合いをする税理士業にも通ずるものと思われます。   〔信頼される人脈づくり〕 次に注意していただきたいのが、③の「(税理士)業界以外の人との連携と人脈づくり」です。 この項目は、私自身がコンサル業に携わってから、まさに骨身にしみて実感している事柄です。 おそらく、これから相続案件を手がけようとされる税理士の先生方は、どうすれば相続事案の情報が獲得できるかと日夜頭を悩ましておられることでしょう。 でも、世の中そんなに甘くありません。 どんな人かわからない人に、あなたは相談に行かれますか? やはり信用のおける事務所、信頼のできる方からの紹介、先輩・後輩等の情報等々、何らかの「人と人とのつながり」から生ずるものなのです。 その意味で、人を好きになりましょう! 現に私は、銀行の現役時代に国税局の査察を受け、その結果その査察官と親しくなり、彼が税理士として独立した後も現在まで交流が続いています。   〔一線を越えやすい税理士業〕 さらに、⑦の「顧客との関係は節度を保つこと」も大切です。 ある相続事案の遺言書に関するもので、私が直接関わった案件ではありませんが、知り合いの弁護士から聞いた話です。 それは、クライアントの自筆証書遺言の中に、顧問税理士への多額の遺贈文言があったというものでした。 当然のことながら、相続人からその作成に至る経緯が問われ、顧問税理士の作為により作成されたものとして自筆証書遺言の無効を主張されたようです。 最終結論まで伺ったわけではありませんので、その結果については不明ですが、税理士業とは、親しくなればなるほど一線を越えやすく、いくら魅力的な誘いをかけられても自分を律しなければならない職業なのです。 それだけに誇り高き職業なのだということを、常に自覚していてください。   〔これからのお話の前に〕 以上、紙面の関係で大雑把な感想を述べさせていただきましたが、税理士の皆さまがクライアントから心から信頼を受け、末永く本業務を続けられ、かつ、発展させられることを願っております。 次回からは、具体的な事案について述べてみたいと思います。 ただし、前もってお断りしておきますが、これからご紹介する事例は、あくまで筆者自身が経験し対応したり聞いたりしたうえで、解決(成功)または未解決(失敗)となった問題であります。 したがって、税理士の皆さまが同じ対応で、同じ結果が出るものではありません。 相続事案というものは、このようにその折の背景、相続人各自の感情、対応のタイミング等により大いに変化するものであることを申し上げておきます。 それだけに、より多くの事案を経験されることが、的確な判断力を醸成することにつながるものと考えています。 (了)  

#No. 51(掲載号)
#木山 順三
2014/01/09

《速報解説》 「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」報告書について

《速報解説》 「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関する ワーキング・グループ」報告書について   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年12月25日、金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」から「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」報告書が公表された。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 報告の概要 ワーキング・グループ報告は、政策面において、アーリーステージの新規・成長企業に対するリスクマネーの供給を促進するための取組みを、これまで以上に幅広く展開していくことが重要であり、また、その際には、新規・成長企業の出口戦略を多様化する等の観点から、新規上場時や上場後の資金調達の制度整備等にも引き続き努めていく必要があるとの問題意識について述べている。 そのうえで、以下の事項について検討している。 上記のほか、近年の金融資本市場の状況を踏まえたその他の制度整備も検討されている。 議論の経過に関しては、10月21日公開の「《速報解説》「新規上場に伴う負担の軽減」に関する議論について」をご覧いただきたい。   Ⅲ 新規上場に伴う負担の軽減 1 新規上場時の負担の軽減 現在、企業が新規上場を行う場合には、当該企業の募集有価証券に係る有価証券届出書を提出した上で、投資者に対して募集行為を行うことが一般的であり、新規上場時に提出する有価証券届出書には、過去5事業年度分の財務諸表の記載が必要とされている。 しかしながら、当該記載については、次の意見を踏まえ、過去2 事業年度分の財務諸表のみの記載とするよう見直すことが適当であると考えられると述べられている。 2 新規上場後の負担の軽減 現在、上場企業は、事業年度ごとに内部統制報告書の提出と当該内部統制報告書に対する公認会計士の監査が義務付けられている。 ワーキング・グループ報告では、新規上場企業であっても、内部統制報告書の提出自体を免除することは適当ではないと述べられている。 一方、内部統制報告書の監査義務については次の意見が述べられている。 そこで、新規上場企業の内部統制報告書の提出義務に係る負担を軽減するため、新規上場後、例えば3年間について、内部統制報告書に係る監査義務を免除することが適当であると考えられると述べられている。 ただし、新規上場企業であっても、その規模等に照らし、市場への影響や社会・経済的影響が大きいと考えられる企業については、内部統制が適切に機能していることを特に厳格にチェックする必要性が高いと考えられることから、こうした企業については、新規上場企業であっても、内部統制報告書に係る監査義務を免除することは適当ではないと考えられている。 (了)

#No. 50(掲載号)
#阿部 光成
2013/12/27

《速報解説》 経団連モデルの改訂について~会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)

《速報解説》 経団連モデルの改訂について ~会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年12月27日、一般社団法人 日本経済団体連合会 経済法規委員会企画部会は「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)」を公表した。 いわゆる経団連モデルの改訂である。 今回の改訂は、「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号)及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第25号)の公表などに伴うものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 1 (連結)株主資本等変動計算書 8月21日付けで公表された「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」により、有価証券報告書における株主資本等変動計算書等については、純資産の各項目を縦に並べる様式から横に並べる様式に変更されている。 経団連モデルの[記載例]では、株主資本等変動計算書は横に並べる様式で記載されている。 会社法上、株主資本等変動計算書の様式は規定されていないため、従来どおり、縦並び形式で作成することも考えられると述べられている。 2 連結株主資本等変動計算書及び連結貸借対照表 連結貸借対照表において、「退職給付に係る負債」と「退職給付に係る調整累計額」が追加されている。 また、連結株主資本等変動計算書において、「退職給付に係る調整累計額」が追加されている。 3 退職給付引当金の計上基準(個別の計算書類) 個別の計算書類に関する退職給付引当金の計上基準(個別注記表)において、従来の「均等償却」の用語を「定額法により費用処理」と改正している。 これは「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号)及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第25号)の用語を用いたものと考えられる。 4 退職給付に係る負債の計上基準(連結計算書類) 連結計算書類の「その他連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項」(連結注記表)において、「退職給付に係る負債の計上基準」が新設されている。 従来、「引当金の計上基準」において、退職給付引当金の計上基準が記載されていたが、当該記載については削除されている。 また、「記載上の注意」に次の記載があるので、連結計算書類の作成に当たっては注意が必要と考えられる。   Ⅲ 適用時期等 「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号)に対応する会社計算規則の改正(平成25年5月20日法務省令第16号)については、2013(平成25)年4月1日以後に開始する事業年度に係る計算書類及び連結計算書類について適用される。 なお、「退職給付に関する会計基準」及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」の適用は段階的に行われるので、計算書類及び連結計算書類の作成に際しては注意が必要と考えられる。 (了)

#No. 50(掲載号)
#阿部 光成
2013/12/27

《速報解説》 「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い」の解説

《速報解説》 「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する 実務上の取扱い」の解説   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年12月25日、企業会計基準委員会は「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第30号)を公表した。 これは、従業員の福利厚生に資するために、信託を利用して自己株式を取得する取引が行われており、実務上、日本版ESOP(Employee Stock Ownership Plan)などと呼ばれることがある取引を取り扱うものである。これにより、平成25年7月2日の公開草案が確定することになる。 実務対応報告第30号は、公開草案から大きく変更されていないので、以下では、基本的に、公開草案からの変更点について解説を行う。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 範囲 従業員への福利厚生を目的として、①従業員持株会に信託を通じて自社の株式を交付する取引及び②自社の株式を受け取ることができる権利(受給権)を付与された従業員に信託を通じて自社の株式を交付する取引を対象としている。 実務対応報告は、公開草案と同様に、当該取引に関する法律的な解釈を示すことを目的とするものではなく、当該取引が、法的に有効であることを前提としていると述べている(注1)。 信託を通じて自社の株式を交付する取引には、役員に信託を通じて自社の株式を交付する取引や従業員等に信託を通じて親会社の株式を交付する取引などがあるが、実務対応報告は、公開草案において提案した本実務対応報告の対象範囲を第3項及び第4項の取引以外の取引にまで広げることは行っていない(実務対応報告26項)。   Ⅲ 従業員持株会に信託を通じて自社の株式を交付する取引 実務対応報告は、公開草案と同様に、個別財務諸表上、総額法で会計処理することとし、自己株式処分差額の認識時点についても、信託からの対価の払込期日に自己株式の処分を認識するとしている(実務対応報告5項、7項、8項)。 連結財務諸表上の取扱いも公開草案と同様である(実務対応報告9項、38項)。 公開草案では、自己株式取得に関する付随費用の取扱いを明示していなかったが、実務対応報告は、総額法の適用に際して、企業は信託に残存する自社の株式を、信託における帳簿価額(付随費用の金額を除く)により株主資本において自己株式として計上するとし、信託における帳簿価額に含められていた付随費用は信託に関する諸費用に含めると規定している(実務対応報告8項(1)、35項)。 また、企業が信託に支払った配当金等の企業と信託との間の取引は相殺消去を行わないと明示されている(実務対応報告8項(5)、37項)。   Ⅳ 受給権を付与された従業員に信託を通じて自社の株式を交付する取引 実務対応報告は、公開草案と同様に、個別財務諸表上、総額法で会計処理することとし、自己株式処分差額の認識時点についても、信託からの対価の払込期日に自己株式の処分を認識するとしている(実務対応報告10項、11項、14項)。 連結財務諸表上の取扱いも公開草案と同様である(実務対応報告15項、60項)。 自己株式取得に関する付随費用の取扱い及び企業が信託に支払った配当金等の企業と信託との間の取引に関する相殺消去の取扱いについては、Ⅱと同様である(実務対応報告14項(1)、(2))。   Ⅴ 開示等 公開草案と同様に、取引の概要関係、1株当たり情報関係、株主資本等変動計算書関係の注記が求められている。 これらの注記に関しては、各期の連結財務諸表及び個別財務諸表において注記するものがあるが、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記の内容が同一となる場合には、個別財務諸表の注記は、連結財務諸表に当該注記がある旨の記載をもって代えることができるとの規定が設けられているものがある。 また、従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引については、関連当事者取引の対象外であることが示されている(実務対応報告68項、69項)。   Ⅵ 適用時期等 平成 26年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。 ただし、実務対応報告公表後最初に終了する事業年度の期首又は四半期会計期間の期首から適用できる。 実務対応報告の適用初年度の期首(実務対応報告公表後最初に終了する四半期会計期間の期首から適用した場合は当該四半期会計期間の期首)より前に締結された信託契約に係る会計処理については、実務対応報告の方法によらず、従来採用していた方法を継続することができる(一定の注記が必要)。 (了)

#No. 50(掲載号)
#阿部 光成
2013/12/27

年末年始のお知らせ

平素は税務・会計Web情報誌「Profession Journal(プロフェッションジャーナル)」をご愛読いただき、厚くお礼申し上げます。 Profession Journalは毎週木曜日AM10:30に解説記事を公開しておりますが、1月2日号を休刊とさせていただきます。 1月9日(木)より通常の公開となりますので、ご了承くださいますようお願い申し上げます。

#Profession Journal 編集部
2013/12/26

《速報解説》 ストックオプション課税の適正化~平成26年度税制改正大綱~

 《速報解説》 ストックオプション課税の適正化 ~平成26年度税制改正大綱~   税理士 内山 隆一   平成26年12月12日、自由民主党・公明党による「平成26年度税制改正大綱」が公表され、24日に閣議決定された。 デフレ経済の脱却と経済再生に向け、税制面からも「企業の投資活動の推進」、「課税の適正化」といったところに主眼をおいた措置が講ぜられることとなっており、ストックオプション課税について、次のような課税の適正化措置が織り込まれた。 新株予約権等については、譲渡制限が付されているものも少なくないが、利便性の観点から譲渡制限を付さず、権利者からの請求によって発行法人が公正な価額で買い取る場合もあるようである。 新株予約権等は「株式又は出資」ではないので、発行法人に譲渡してもみなし配当課税(所法25)の対象とならず、株式等に係る譲渡所得等の金額として所得税15%、住民税5%の税率により課税される(措法37の10①、②一)。 一方、新株予約権等の行使による経済的利益については、その付与者と権利者との関係に応じ、原則として事業所得、給与所得、退職所得、一時所得又は雑所得として課税される(所令84、所基通23~35共-6)が、このうち租税特別措置法第29条の2に規定する税制適格要件を充足するものについては、権利行使時における経済的利益を非課税とし、その権利行使によって取得した株式を譲渡した時にその経済的利益を含めた譲渡益に対して所得税15%、住民税5%の税率により課税されることになっている(【例示1】参照)。 【例示1】 下記の条件で株式10,000株を取得し、その後譲渡した場合 《株価》 通常、株式会社の取締役、執行役又は使用人に付与された新株予約権等が前述の税制適格要件を充足しないで行使された場合には、その経済的利益は賞与となり給与所得課税されるため、その者の給与所得の金額が増加し、超過累進税率を大きく引き上げ、その年の税負担が著しく増加する懸念がある。 このような場合に、公正な価額で発行法人に新株予約権等を買い取ってもらえば同様の利益を株式等の譲渡益として得ることができ、所得税15%、住民税5%の負担に抑えることができる(【例示2】参照)。 【例示2】 【例示1】の新株予約権を1株当たり2,500円で発行法人に譲渡した場合 今回の改正は、新株予約権等について「権利行使をした場合」と「発行法人に譲渡した場合」を同様の取扱いとすることにより、課税の適正化を図ろうとするものである。 (了)

#No. 50(掲載号)
#内山 隆一
2013/12/26

《速報解説》 「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」について

 《速報解説》 「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」について   ミレニア綜合会計事務所 代表税理士 甲田 義典   国税庁は、平成25年12月13日に、「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」について(情報)(以下「情報」という)を公表した。 現行の税法では、扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち、通常必要と認められるものは贈与税の非課税財産とされている(相法21の3①二)。 一方、相続税法基本通達では、同通達21の3-3及び3-4で「生活費」と「教育費」(以下「生活費等」)の意義を示したうえで、その非課税対象となる財産は、生活費等として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産をいい、生活費等の名義で取得した財産を預貯金した場合や、株式の買入代金若しくは家屋の買入代金に充当したような場合のものは対象外として取り扱うことが示されている(相基通21の3-5)。 また、生活費等で通常必要と認められるものの範囲は、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産であることが示されている(相基通21の3-6)。 以上が生活費等の非課税財産に関する現行の税法と通達の主な概要であるが、その具体的な内容については不明確であった。 そのような中で、今年1月以降の平成25年度税制改正をめぐる、自民党、公明党及び民主党の3党間で協議が重ねられた過程において、贈与税については、高齢者が保有する資産の若年世代への早期移転を促し、消費の拡大を通じた経済の活性化を図る観点、格差の固定化の防止等の観点から、結婚、出産又は教育に要する費用等の非課税財産の範囲の明確化を含め検討することが、平成25年度税制改正法附則108条に規定されたところであった。 このような背景の下、本件情報が公表されている。 情報では、以下の5つの費用負担ごとに解説がされている。 なお、情報の内容に関しては、あくまで非課税財産となる範囲について解説されているが、具体的にいくらまでが非課税となるかは明確とされていない。 これは、生活費等の贈与を行う各家庭の生活水準が異なるため、一律に非課税枠を決めることが難しいという事情があると思われるが、実務上は、特に高額な贈与に関しては、その贈与に至った経緯など個別の事情を十分検討し、税務当局とのトラブルに発展しないように留意する必要がある。 (了)

#No. 50(掲載号)
#甲田 義典
2013/12/26

《速報解説》「種類株式の評価事例」の公表について

《速報解説》 「種類株式の評価事例」の公表について   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年11月6日付けで、日本公認会計士協会(経営研究調査会)は「種類株式の評価事例」(経営研究調査会研究報告第53号)を公表した。 研究報告は、比較的よく使われている権利を付した種類株式の評価について、実務の参考となるように、その評価の基本概念や発行事例、評価例を取りまとめたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 研究報告の利用上の留意点 種類株式についてはいまだ評価実務が成熟段階には到っていないため、研究報告は種類株式評価のガイドラインではなく、評価例としている。 種類株式については、次のものにも関連する記述がある。 研究報告は、種類株式の価値評価の「基準」、「マニュアル」又は「指針」といった位置づけではなく、実務を拘束するものではないと述べられている。 2 我が国の種類株式及び類似の効果をもたらす契約等 我が国の種類株式及び類似の効果をもたらす契約等として、次の記載がある。 出所:研究報告5ページ、【図表Ⅱ-1 我が国の種類株式及び類似の効果をもたらす契約等】  3 種類株式の評価例 種類株式の評価例として次のものを取り上げ、具体的な評価例を、数値を用いて説明している。 4 主な目次 研究報告の主な目次は次のとおりである。 (了)

#No. 50(掲載号)
#阿部 光成
2013/12/26

《速報解説》経営研究調査会研究報告第41号「事例に見る企業価値評価上の論点」について

《速報解説》 経営研究調査会研究報告第41号 「事例に見る企業価値評価上の論点」について   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年11月6日付けで、日本公認会計士協会(経営研究調査会)は「経営研究調査会研究報告第41号『事例に見る企業価値評価上の論点-紛争の予防及び解決の見地から-』の改正について」を公表した。 これは平成24年7月に改正された、「企業価値評価ガイドライン」(経営研究調査会研究報告第32号)の内容を一部参照していることから、該当箇所を中心に見直しを行ったものである(参考記事はこちら)。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 研究報告の利用上の留意点 「本研究報告の利用に当たって」において、本事例分析は、会社側の主張及び株主側の主張について批判することを目的とするものではないこと、裁判所の判断を批評するものでもないこと、両当事者において中立な立場での検討であることなどの留意点が述べられている。 研究報告の利用に際しては注意が必要である。 2 研究報告の対象 企業価値評価を巡る紛争は、次の4つの局面で行われる。 研究報告の事例分析が対象としているものは、上記の④裁判局面に関する分析である。裁判局面は、裁判所において「公正な価格」について会社側と株主側が主張を行い、最終的に裁判所が判断を行う局面である。 3 研究報告の目的 後述する3件の事例については、既に最高裁判所の抗告等の棄却等により高裁の決定が確定している。 一連の裁判事例を通じて、企業価値評価を巡る紛争がなぜ生じたのか、予防や解決の方策を検討することが研究報告の事例分析の目的である。つまり、前述の裁判局面の分析をすることで、M&Aにおける交渉局面でどのような配慮が必要であったのかを分析・検討することにある。 4 分析対象の事例 (了)

#No. 49(掲載号)
#阿部 光成
2013/12/26
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