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親族図で学ぶ相続講義 【第10回】「遺言と生前行為」

親族図で学ぶ相続講義 【第10回】 「遺言と生前行為」   司法書士 Wセミナー専任講師 山本 浩司   [被相続人甲野一男 相続関係説明図]   上記の相続関係説明図を元に、今日は、2つの問題を考えてみることにしましょう。 いずれも、甲野一郎が所有しているX不動産の所有権が、誰に帰属するかという問題です。 いわゆる「二重譲渡」の問題です。 以下の、贈与も、遺贈もいずれもその効力を有するときに、乙野花子と甲野一郎のいずれがその所有権を取得するか、この問題は、登記の先後で決します(つまり、登記の早い者勝ち)。 この規定により、登記のある甲野一郎は、乙野花子のその所有権を対抗(主張のこと)できます。 登記のない乙野花子は、甲野一郎にその所有権を対抗(主張のこと)できません。 したがって、X不動産の所有権は甲野一郎に帰属します。   【事例1】とは、順番が違いますね。 今度は、遺言の作成が先です。 この場合は、どうなるでしょうか? 一見すると、【事例1】と同じにみえます。 しかし、その結論は異なります。 今度の事例には、次の規定の適用があるのです。 この規定の背景にある思想をご説明しますと、遺言の制度の趣旨は、遺言者の最終の意思の尊重ということにあります。 そこで、1項は、(前の遺言と後ろの遺言は、原則として、双方が有効だが)、仮に、前の遺言と、後ろの遺言にの内容が抵触したら、生き残るのは、後ろの遺言だ(前の遺言は撤回とみなす)ということを言っています。 むろん、後ろの遺言が、遺言者の最終意思だからです。 そして、この考え方を、遺言者の遺言後の生前処分に準用したのが、第2項です。 そこで、【事例2】の場合、まず、X不動産を甲野一郎に遺贈する遺言を作成し、その後に、同一の不動産を乙野花子に贈与したときは、遺言者の最終意思は、乙野花子への贈与にありますから、遺言は、撤回みなしとなります。 このため、【事例2】のケースは、実は、次の法律関係となります。 甲野一郎は、登記名義を有するものの、その登記は実体のない無効な登記です。 無権利者である甲野一郎は、自らの名義の登記を有するものの、乙野花子の登記の欠缺(けんけつ:登記が欠けていること)を主張する正当な利益を有しませんから、結果として、X不動産の所有権は、乙野花子に帰属することとなります。 (了)

#No. 38(掲載号)
#山本 浩司
2013/10/03

会社を成長させる「会計力」 【第2回】「東京五輪とIFRS財団アジア・オセアニアオフィス」―IFRS財団アジア・オセアニアオフィスの東京開設と期待―

会社を成長させる「会計力」 【第2回】 「東京五輪とIFRS財団アジア・オセアニアオフィス」 ―IFRS財団アジア・オセアニアオフィスの東京開設と期待―   島崎 憲明   《2020年夏季五輪の東京招致》 2013年9月8日は、日本にとって歴史的に記念する日となった。 早朝の起きがけにテレビのスイッチを入れた瞬間、ロゲIOC会長が五輪マーク入りの封筒を開け、「TOKYO 2020」と書いたカードを掲げながら「トーキョー」と読み上げる姿が目に飛び込んできた。 全くの偶然だが、歴史的瞬間に立ち会うことができた。 東京開催の決定は、前回の失敗を踏まえ政財界を挙げたオールジャパンでの招致活動が実を結んだものである。 五輪開催の経済的効果や国民のマインドが前向きになるという期待もあり、安倍首相はライバルのマドリッドやイスタンブールに競り勝って東京開催が決まった後、「15年続いたデフレ、縮み志向の経済を五輪開催決定を起爆剤として払拭していきたい」と語っている。 この五輪招致は「今後7年は続く成長戦略」、「アベノミクス第四の矢」と期待する報道もみられる。久々の明るい話題として喜びたい。 今月は「リスク・リターンとバランスシート・マネジメント」を予定していたが、これに代えて「IFRS財団アジア・オセアニアオフィスの東京開設と期待」について話を進めたい。   《IFRS財団アジア・オセアニアオフィス設置の必要性》 IFRS財団は2001年に設立され、ロンドンを拠点にグローバルな活動を行ってきた。 EUが2005年からIFRSを採用したこともあって、欧州中心の運営が長く続いている。アジア・オセアニアと北米にサテライトオフィスを設ける話はリーマンショック以前から検討されていたが、財団の財政上の問題もあって決定が棚上げになっていた。 ちょうど私が財団のトラスティに就任した2009年当時は、アジア各国ではIFRSとのコンバージェンスやアドプションが急速に進展しつつあり、我々の地域の、我々のためのオフィスが必要であるとの声が高まっていた。 サテライトオフィスの設置には日本の他に中国、香港、シンガポールが非公式に名乗りを上げ、招致合戦の火蓋がきられたのもこの頃で、中国、シンガポールは、まさに国を挙げての活動を展開しているとの話も聞こえていた。 そのような中、私は日本への招致を実現するには、次の①~③などのような布石が必要との認識をもって、戦略の立案と内外関係者への働きかけを開始した。 規模は違うが、夏季オリンピックの東京招致活動に似たところがあるように思える。   《東京に設置が決まった要因》 アジア・オセアニアオフィスを東京に招致できた要因は、次の5点であろう。 ① 官民挙げての継続的な招致活動 会計・資本市場関係者のトップから実務担当レベルまで、幅広い層による取組みが実を結んだ。 ② 我が国のIFRS 財団に対する人的・資金的貢献 財団の創設以前から、金銭面に止まらず、国際標準策定のために汗を流してきた実績が評価された。 ③ 過去10年の貢献実績に加え、次の10年に向けた日本への期待 日本が、IFRSの導入について任意適用からさらに踏み込んだ方向性を示し、この地域のリーダー国としての役割を果たしてほしいという期待である。 ④ 決定のタイミング 日本と中国とがお互いに譲らぬまま最終段階を迎えたが、財団内には「円満に合意形成ができるまで正式決定を急ぐ必要はない」という雰囲気があった。 しかし、時が経てば経つほど、経済的台頭著しい中国への支持が大きくなるという懸念もあり、早期の正式決定に向けて根回しした記憶がある。東京設置の正式決定は東日本大震災発生の前月、2011年2月であった。 ⑤ オーストラリアとインドからのサポート アジア・オセアニア地域代表のトラスティによるコンセンサス形成では、東京での設置について、オーストラリアとインドから支持を取り付けることができた。   《オーストラリア、インドからの支持》 両国との関係構築は、財務会計基準機構、経団連、日本公認会計士協会、東京証券取引所、金融庁など会計関係者オールジャパンの総合力を発揮することによって実現した。 まずオーストラリアとは、2009年9月にミッションを派遣し、同国財務省、会計士協会、商工会議所などを訪問したのが始まりである。シドニー、キャンベラ、メルボルン、シドニーと4日間に13回のミーティングとオフィシャルディナーとランチを持つというハードスケジュールであった。 また、2011年2月には東京で「オーストラリアから学ぶIFRSの実務的導入」と題するセミナーを開き、これにより会計の日豪関係がさらに深まった。 次にインドとは、2010年2月と4月の2回、ニューデリー、ムンバイを訪問した。インド企業省大臣、次官、会計士協会会長、証券取引委員会議長など主要関係者との面談が目的である。企業省との打合せでは、日印関係構築に向けたMOUの締結と日印IFRSダイアローグの開催まで一気に話が進んだ。 7月には、インド企業省次官を団長とする資本市場・会計関係者19人を東京に迎え、第一回日印ダイアローグとIFRSフォーラムを開催した。 インドとの関係構築がこのスピード感で実現したのは驚きだが、これは、日印両国のIFRS導入の状況が類似しており、将来への想いを共有できたことの結果である。   《中国との関係》 中国との関係では、2010年6月と2011年6月の2回、財務会計基準機構理事長と共に北京を訪問し、中国財務省副大臣、会計士協会会長などと面談した。 初回の訪中は、日本が招致に名乗りを上げ、中国との招致争いが熾烈化するタイミング。次は、東京での設置が正式に決まった直後である。 初回の訪中で副大臣からは、アジア・オセアニアオフィスを北京に招致したいとの強い意向が示されたが、日本側も譲れない。副大臣との面談では、「1つのオフィス設置を2都市で争うことになるが、正々堂々とやりましょう」という発言もあった。 1年後の訪問では、東京に決まった報告とオフィスの運営について中国の協力を要請。副大臣からは礼を尽くした対応に「男の友情は女の涙より尊い」との言葉があり、あとは大変な歓待で「乾杯、乾杯」のエール交換で盛り上がった。   《2011年6月の金融担当大臣発言と政権交代後の動き》 金融担当大臣発言により、2009年6月に公表された中間報告に基づくロードマップの日程が先延ばしされることになった。 東日本大震災の発生や米国の方向性が見えていないことが日程延期の理由とされたが、決定には唐突感があった。 大臣発言の4ヶ月前の2月に、IFRS財団アジア・オセアニアオフィスの東京開設が決まっている。当時のIASB議長デービッド・トゥイーディ氏は決定後の記者会見で、「日本がIFRSを強制適用することで、アジアの他の国でもIFRSの全面採用に進んでいくと期待している」と発言している。その期待にブレーキを踏むような大臣発言であった。 機会を捉えて日本での議論のポジティブな面を強調するなど、国際対応に苦慮した覚えがある。 しかしここにきて、前政権下では足踏み状態、否、後退感が強かったIFRS導入論議に、新たな進展がみられる。 5月29日、自民党企業会計小委員会に招聘され、我が国におけるIFRS導入について意見を述べる機会があった。その後に取りまとめられた同小委員会の提言では、強制適用についてはさらなる議論が必要としたものの、任意適用の拡大に関しては数値目標と期限を定めている。 IFRS導入についての大きな前進であると評価したい。 また、再開された企業会計審議会では日本版IFRSの策定が議論されており、同時に、我が国からの国際的意見発信力強化の必要性も強く提言されている。 IFRS財団アジア・オセアニアオフィスは当地域の声をIASBの基準開発に反映させるための拠点としての機能が期待され、新設されたASAF(会計基準アドバイザリー・フォーラム)は世界各地域の意見を聴取する場となるであろう。 このような場と機会を捉えて、我が国が積極的で前向きな意見発信を継続的に行うことが、我が国がG20で国際的にコミットしている「高品質で単一の国際的な基準開発への貢献」に繋がると思う。 *   *   * 来月は「リスク・リターンとバランスシート・マネジメント」に話を戻したい。 (了)

#No. 38(掲載号)
#島崎 憲明
2013/10/03

顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第17回】「棚卸資産管理のKPI(その① 受払検証)」

顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第17回】 「棚卸資産管理のKPI (その① 受払検証)」   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 前回までは「仕入・買掛債務管理」のKPIを取り上げたが、今回から3回にわたり、「棚卸資産管理」のKPIを取り上げる。 棚卸資産は、販売用の商品・製品、製造中の半製品・仕掛品、その原材料の総称である。それらは、営業活動の仕入を受けることによって増加し、販売で払い出されることによって減少する。その残高は、帳簿棚卸や実地棚卸により数えることによって確定するが、いずれの場合も有効な管理を行うためには、棚卸資産の受払の記録を継続していることが求められる。 この点で「棚卸資産管理」は、これまで取り上げた「売上・売掛債権管理」や「仕入・買掛債務管理」と業務の流れにおいて密接に連動している。 そこで、今回は、有効な棚卸資産管理を行う前提となる受払の継続記録の正確性を担保するKPIを取り上げる。 なお、スコアリングモデルを構成する18種類の業務全体の中では、「棚卸資産管理」は、該当する会社だけが回答する選択調査項目である。   KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておこう。 経済産業省スタンダードでは、棚卸資産管理において、会社が担う一般的な機能として、「残高管理」、「受払管理」、「適正在庫管理」という3つの機能を挙げている。 今回解説するKPIは、「残高管理」と「受払管理」に関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:棚卸資産管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   さらに、経済産業省スタンダードでは、「残高管理」と「受払管理」に関連する業務プロセスを次のようにまとめている。 〈経済産業省スタンダード:3.2.1受払検証〉   〈経済産業省スタンダード:3.1.1実地棚卸検証〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   なお、経済産業省スタンダードでは、「残高管理」を「受払管理」よりも先に紹介して連番を付けているが、スコアリングモデルでは、「受払管理」が日常的に継続され、「残高管理」が定点観測的に行われるという実務の業務の流れを重視し、以下では、「受払管理」、「残高管理」の順に紹介する。 まず、「受払管理」では、棚卸資産の種類毎に日常の受払とその結果として算出される残高を継続的に記録する受払帳票を作成する。作成の過程で、受払帳票と証憑を照合し、取引の品名、受払日、数量、単価、金額が正確に帳簿に記帳されていることを検証する。 次に、「残高管理」では、棚卸資産の現物を実際に数える実地棚卸を行い、実地棚卸結果を「受払管理」で記録された帳簿残高と照合する。照合の結果、両者に乖異があった場合には、原因を究明し、帳簿残高を実際の残高に修正する。 今回のKPIは、実地棚卸によって判明した実際の残高と帳簿残高の乖離に着目し、日常の受払管理の正確性のレベルを問うものである。   定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 「棚卸差異」(A)とは、修正前帳簿記録の棚卸高と直前決算期末の実地棚卸高の差の絶対値をさす。 「棚卸差異」(A)、「実地棚卸高」(B)いずれも、数量ではなく取得原価で測定した金額で算定する。 なぜ、数量ではなく金額で比率を求めるのか。 財務報告上の実施棚卸の目的は、期末の単なる数量合わせにとどまらず、売上原価と期末の棚卸資産帳簿残高という金額を適正に測定、表示することにある。数量の差異だけを議論しても、棚卸資産毎の取得原価の違いが財務諸表の金額に与える影響を測りきれない。 会社の経営者や外部の利害関係者の立場でも、棚卸資産毎に受払管理の正確性のレベルを通じて最終的な財務諸表の金額の正確性のレベルを会社間で比較できることが有用と思われる。 このような観点から、数量でなく金額で比率を求めることにした。 ところで、「棚卸差異」(A)は、棚卸資産の紛失や盗難という現物管理上の原因と、受払記録の誤りという会計上の原因で発生するため、「棚卸差異」(A)の比率を受払記録の正確性を測る指標とするには、実地棚卸を適正に行う管理体制の整備が前提となる。 すなわち、実地棚卸を倉庫担当者等日常的に棚卸資産に接する者や営業部門担当者等帳簿を計上する者だけに任せるのでなく、両者に加えて両者から独立性のある経理財務部門担当者を交えて行う職務分掌、現物の実在性や真正性を担保する体制や確認方法、在庫の集計表を作成するまでの承認手続の整備が欠かせない。   KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルにおいて、このKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、棚卸資産の数量と金額を適正に財務諸表に反映するため、継続記録の精度を高めることが望ましいという価値判断に基づいて設定されている。 この価値判断が共有されず実地棚卸で多額の棚卸差異が発見される場合、次のような問題が会社に潜んでいるだろう。 まず、会計上の観点では、仕入計上や売上計上が架空であるか又は漏れている可能性がある。これは、棚卸資産管理に先行する売上・売掛債権管理や仕入・買掛債務管理において、会社が組織的に備えるべき日常的経理能力と内部統制のレベルが低いことを意味し、結果として財務諸表の信頼性が揺らいでしまう。 現物管理上の観点では、保管中の棚卸資産の紛失、横流し、破損、目減り等が放置されている可能性があり、資産保全上のリスクを惹起する可能性が高い。 そこで、スコアリングモデルでは、実地棚卸という発見的統制によって日常の継続記録の正確性のレベルを比較するため、棚卸差異の比率をKPIとした。比率は%で表されるが、この比率が小さい会社が大きい会社よりも相対的に望ましいと考えている。 では、どの程度の比率が望ましいのか。これが読者の最も高い関心事と思われる。 本連載の第5回で述べたとおり、スコアリングモデルの特長は、KPIデータに基づく相対評価を採用し、コンサルタント等の人による絶対評価を採用しないことにある。そのような立場を前提にすれば、望ましい比率があらかじめ決まっているわけではなく、各会社が競争の過程で一定のレベルに収斂すると想定される比率、すなわち、各会社が提供したKPIデータ群によって形成されるベンチマークが、会社が目指すべき目安となる。   顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、日常的な売上計上や仕入計上に受払検証が組み込まれていること、一定の頻度で実地棚卸検証が行われていることを確認していただきたい。 例えば、販売管理規程、購買管理規程、実地棚卸規程を閲覧し、職務分掌や承認手続の整備を確認することが考えられる。 それを前提に、試算表、在庫集計表を試査により閲覧し、試算表の修正前帳簿残高金額と在庫集計表の実地棚卸結果金額の差異を算出していただきたい。 さて、読者の顧問先において、修正前帳簿記録と実地棚卸の乖離は何%になったであろうか。 *  *  * 次回も、引き続き「棚卸資産管理」を構成する複数のKPIから、「実地棚卸」に関連する業務プロセスを評価するKPIを取り上げる。 (了)

#No. 38(掲載号)
#島 紀彦
2013/10/03

税理士・公認会計士事務所[ホームページ]再点検のポイント 【第6回】「ホームページの移管に制約があるケースも・・・」

税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第6回】 「ホームページの移管に 制約があるケースも・・・」   データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥   前回、前々回と、ホームページの管理会社を替える、いわゆるホームページの移管についてお話してきました。今回は、その最後の話として、とても大切な、移管が制約されてしまうことがある「法律的な問題」と、「技術的な問題」についてお話します。  *  *  * まず、法律的な問題とは、著作権の問題です。 ホームページの管理会社を替えるとか、制作会社と違う会社にホームページの改変を依頼する場合には、必ず著作権が問題になります。 ただしここで、ホームページの著作権について、法律的な問題を延々とお話するつもりはありません。 税理士事務所や公認会計士事務所のホームページの移管において、 さらに これら2点に必要な注意点だけをお話していきます。  *  *  * 税理士事務所や公認会計士事務所のホームページに関する著作権について考えた場合、文章や事務所メンバーの写真などの掲載事項と、ホームページのデザインがその対象となるのが一般的です。 著作権の帰属は制作時の契約にもよりますが、掲載事項については制作委托者である税理士事務所や公認会計士事務所に、ホームページのデザインについては制作受託者であるホームページ制作会社に著作権があることが多いようです。 トラブルに巻き込まれないことが第一、という前提で考えると、まず、現在の管理会社の著作権に関する理解を確認する必要があります。 管理会社変更時において、既存のホームページを丸ごと持ち出して再使用できるのか、または、持ち出せるのは掲載事項だけなのか、はたまた、一切持ち出せないのかを確認しましょう。 さらに、持ち出せるとして、その後自由に改変できるのか、ということも確認します。 自由に改変できないとなると、ホームページの更新ができなくなってしまうからです。 現在の管理会社が、著作権について、制作時の契約と異なる主張をしてきた場合等を除き、現在の管理会社の理解に合わせてホームページの移管を考えるのが、トラブル回避という点からは得策です。 既存のホームページを丸ごと持ち出すことができるのでしたら、後は、技術的な問題点の検討になります(この点は後述します)。 また、掲載事項しか持ち出せない場合は、その掲載事項を使って、新しい管理会社で新たなデザインでホームページを制作することになります。 新規制作料金はかかってしまいますが、ゼロから新規制作する場合に比べれば遙かに短い日数で、かつ、新しいデザインのホームページが出来上がります。 具体的には、1~2週間程度もあれば充分でしょう。 「持出しは一切不可」とか、「持出後の改変は禁止」と言われてしまった場合には、移管ではなく、既存のホームページを廃棄して、新たな管理会社で制作し直すのが無難です。 その際も、以前のホームページをタタキ台にして新たな掲載内容や新たなデザインを決めていけば、ゼロから制作する場合に比べて遙かに短い日数で出来上がります。 具体的には2~3週間程度もあれば充分でしょう。 なお、現在のホームページのドメイン(第2回参照)を使い続けることができるのなら、ホームページを見ている人には、管理会社が変更されたことはわかりません。  *  *  * 最後に、移管が制約されてしまう技術的な問題です。 それは、CMSで制作されているホームページ(第3回参照)や、通販などのシステムが組み込まれているホームページの場合に生じ得ます。 くわしい解説は省きますが、そのようなホームページの場合には、丸ごと持ち出すことが不可能なケースもあるのです。 そうなると、たとえ上記でお話した著作権の問題がなくとも、部分的または全面的に制作し直す他なくなります。 これに該当するのか否かは、移管先の管理会社から移管元の管理会社に技術的な事項を問い合わせてもらうことにより、明らかにできます。  *  *  * ここまで3回にわたり、ホームページの移管についてお話してきました。 ホームページは半永久的に公開しているものですので、コスト的には制作コストよりも管理コストの方が重要である場合が多くなります。 問い合わせや更新依頼などへの対応も含め、納得のいく管理会社を選定しましょう。 (了)

#No. 38(掲載号)
#河村 慎弥
2013/10/03

《速報解説》 所得拡大促進税制の延長・拡充~民間投資活性化等のための税制改正大綱~

 《速報解説》 所得拡大促進税制の延長・拡充 ~民間投資活性化等のための税制改正大綱~   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1  はじめに 平成25年10月1日、与党(自由民主党及び公明党)より「民間投資活性化等のための税制改正大綱」が公表された。 この時期に税制改正大綱が公表されることは極めて異例であるが、同日に消費税率の引上げが決定されたことを受け、これに伴う経済対策と成長力強化のための総合的な対策が必要であることから、日本再興戦略(平成25年6月14日閣議決定)に盛り込まれている民間投資活性化のための税制措置について、通常の年度改正とは切り離して前倒しで決定することとされたものである。 この大綱に係る税制改正法案については、今後臨時国会において議論されることとなると予測されるが(※)、この大綱の中では、平成25年度税制改正で新たに導入された所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)に関する見直しが行われている。 そこで本稿では、上記の所得拡大促進税制の改正内容について解説することとしたい。 なお、現行の本制度の詳細については、かねてより連載していた拙稿「雇用促進税制・所得拡大促進税制の実務」の【第3回】の記事を参照いただきたい。   2  所得拡大促進税制の概要 平成25年度税制改正により創設された所得拡大促進税制の概要は以下のとおりである(上記連載【第3回】より再掲)。 青色申告法人が平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度(以下「適用年度」という)において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、以下の①~③の要件を満たすときには、その雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除ができる。ただし、法人税額の10%(中小企業者については20%)を限度とする(改正措法42の12の4①)。 さらに中小企業者については、適用年度における道府県民税及び市町村民税(法人税割)の額も、税額控除後の法人税額を基礎として計算される(地方税法附則8⑨)。   3 改正の概要 (1) 適用期限の延長 適用期限が2年延長され、平成30年3月31日までの間に開始する事業年度に適用されることとなった。 (2) 雇用者給与等支給割合要件の見直し 適用要件の1つである、「雇用者給与等支給増加額割合要件」(上記①の要件)について、以下の適用年度の区分に応じて要件充足割合が変更された。  図示すると、以下のようになる。     (3) 平均給与支給額に係る要件の見直し 適用要件の1つである「平均給与支給額に係る要件」(上記③の要件)について、平均給与等支給額の計算基礎となる「国内雇用者に対する給与等」を「継続雇用者に対する給与等」に見直した上、平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を「上回ること」(現行:以上であること)とされた。 「継続雇用者に対する給与等」とは、適用年度及びその前年度において給与等の支給を受けた国内雇用者に対する給与等のうち、雇用保険法の一般被保険者に対する給与等をいい、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の継続雇用制度に基づき雇用される者に対する給与等を除く。 この「継続雇用者」という概念は、雇用促進税制における「雇用者」の範囲(※)を念頭に置いたものと考えられるが、「継続雇用者」が用いられるのはあくまでも平均給与等支給額の計算についてのみであり、その他の要件及び控除税額の計算については変更が加えられていない(雇用者給与等支給額を用いる)点には留意が必要である。 (4) 地方税の取扱い 中小企業者等の雇用者給与等支給額が増加した場合に係る法人住民税の特例措置についても、(1)~(3)と同様の改正が加えられている。   4 改正の適用時期  ※下記編集部追記②参照 今回の改正は、平成26年4月1日以後に終了する事業年度について適用される。 したがって、3月決算法人以外の法人については、既に進行している事業年度から今回の改正が適用されることとなるので、留意が必要である。 さらに、平成26年4月1日を含む適用年度に改正後の制度を適用する場合において、経過事業年度(平成25年4月1日以後に開始し、平成26年4月1日前に終了する事業年度で改正前の制度の適用を受けていない事業年度)において改正後の要件のすべてを満たすときは、その経過事業年度について改正後の規定を適用して算出される税額控除相当額を、その適用年度において、その税額控除額に上乗せして法人税額から控除できることとされた。 この「経過事業年度」は、平成25年4月1日以後開始し平成26年4月1日前に終了する事業年度であるから、期間としては1年未満の状況が想定される。例えば一定の組織再編や連結納税グループへの加入等で「みなし事業年度」が発生するような場合や、決算期変更を行った場合などが該当すると考えられる。 本来、経過事業年度には改正後の制度は適用されないところ、改正後の適用要件を満たしている場合には、追加的に税額控除が認められるという有利な取扱いが定められているので、該当する可能性がある読者においては留意が必要である。 (了)

#No. 37(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2013/10/02

《速報解説》 国税庁情報「相続税法における民法第900条第4号ただし書前段の取扱いについて(平成25年9月4日付最高裁判所の決定を受けた対応)」(9/24公表)について

《速報解説》 国税庁情報「相続税法における民法第900条第4号ただし書前段の取扱いについて(平成25年9月4日付最高裁判所の決定を受けた対応)」 (9/24公表)について   税理士 齋藤 和助   1 はじめに 平成25年9月4日、最高裁判所で、民法第900条第4号ただし書前段の「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1」が違憲と判断された(平成24年(ク)第984号、第985号、大法廷決定)。これにより、嫡出子と非嫡出子の法定相続分を同等とする民法改正が検討されている。 このような状況の中、国税庁は、上記最高裁判所の決定を受け、その趣旨を尊重し、平成25年9月5日以後の対応を9/24付けでホームページで公開した。 その内容は以下の通りである。   2 平成25年9月5日以後に新たに相続税額が確定する場合(嫡出子1:非嫡出子1) 平成25年9月5日以後、新たに相続税額が確定する場合(平成13年7月以後に開始された相続に限る※)には、嫡出子と非嫡出子の法定相続分を同等として法定相続分の規定を適用した相続分に基づいて相続税額を計算する。 ※今回の最高裁決定の前提となった具体的事案における相続の開始時点が平成13年7月であることによる。   3 平成25年9月4日以前に相続税額が確定している場合(嫡出子2:非嫡出子1) 平成25年9月4日以前に、申告等により相続税額が確定している場合には、上記規定は適用されない。つまり、申告済みの事案について、最高裁決定に基づく相続分で相続税の計算をし直すことで、過去の納めた相続税が減少する場合でも更正の請求は認められない。 ただし、平成25年9月4日以前に、申告等により相続税額が確定している場合で、同年9月5日以後に、財産の申告漏れ、評価誤りなどの理由により、相続人が更正の請求又は修正申告をする場合や、税務署長が、更正又は決定を行う場合には上記2の規定が適用される。   4 相続税額が確定した日で区分 今回の法定相続分の変更の適用は、相続開始日で区分するのではなく、相続税額が確定した日で区分している点に注意が必要である。 例えば、平成13年7月以後に開始した相続で、嫡出子と非嫡出子が登場する事案で、これから相続税額が確定するものについては、上記2と同様の取扱いになる。 実務上、稀なケースであるが注意したい。 【嫡出子と非嫡出子の法定相続分】 (注1) 平成13年7月以後に開始された相続に限る。 (注2) 財産の申告漏れ、評価誤りなどに係る部分は「嫡出子1:非嫡出子1」。   (了)

#No. 37(掲載号)
#齋藤 和助
2013/09/30

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第6回】「ホステス報酬事件(その3)」~ホステス報酬の必要経費計算と基礎控除方式~

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第6回】 「ホステス報酬事件(その3)」 ~ホステス報酬の必要経費計算と基礎控除方式~   国士舘大学法学部教授・法学博士 酒井 克彦   ホステス報酬は事業所得に該当するケースが多いという点を前回までに確認した。ところで、ホステスは事業所得者であるが、所得税法の規定によれば、ホステス報酬は源泉徴収の対象となるため、店側にホステスへの報酬支払の際に源泉徴収義務が課されている。そこで、その源泉徴収税額の計算が問題となるのである。 本連載の第4回において説明したとおり、ホステス報酬は次の計算式による源泉徴収を受けることになる(所令322)。 そこで、問題となるのは、上記計算式における「当該支払金額の計算期間の日数」の意味するところである。 ここで当事者の主張をみておこう。   1 解釈手法の対立 (1) 国側の主張―目的論的解釈によるべき! 国Yは、この「当該支払金額の計算期間の日数」とは、本件における原告らとホステスとの契約内容、源泉徴収制度及び基礎控除方式の趣旨及び目的、並びに、租税負担の適正及び公平の観点からすれば、ホステス報酬の支払金額の計算の対象となった日の合計数(当該支払金額の計算期間の出勤日数)たる本件各集計期間のうちの出勤日数と解すべきである旨主張した。 これは、基礎控除方式の趣旨などを考慮に入れた解釈をすべきであるとの主張である。 すなわち、前回みたようにホステスは事業所得者であるから、事業所得の金額の計算で控除される必要経費額の代わりに計算するのが、式内にいう「5,000円×当該支払金額の計算期間の日数」を引くという基礎控除方式の趣旨である。そうすると、その趣旨からして、10日しか出勤していないホステスの必要経費の計算をするのに、出勤していない日数までカウントして15日分控除するのは法の趣旨に反するというのである。 このように条項の趣旨によって解釈をするやり方は、いわゆる「目的論的解釈」という解釈手法である。 なお、目的論的解釈とは、条項の趣旨に応じて解釈を行うという手法をいい、次のような解釈の仕方を織り交ぜて行うことがある(拙著『フォローアップ租税法』2頁以下(2010年、財経詳報社))。 (2) 源泉徴収義務者側の主張―文理解釈によるべき! これに対して、源泉徴収義務者たるX1らは、一般に「期間」とはある時点からある時点までの継続した時の区分であるから、上記「当該支払金額の計算期間の日数」とは、当該支払金額の計算の対象となる起算点から満了点までの継続した日数であって、本件各ホステス報酬の計算期間の日数は本件各集計期間の全日数である旨反論した。 ここでは、条文が「当該支払金額の計算期間の日数」という表現をしており、出勤日数をカウントするような規定となっていないのであるから、条文通りに解釈して、欠勤している日をも含めた「計算期間の日数」である全日数に5,000円を乗じて控除額を計算すべきだというのである。 このように条文に書き表されている文章をできるだけ素直にそのまま解釈すべきというのが、「文理解釈」という解釈手法である。   2 文理解釈を優先すべきとする考え方 例えば、別の事案において、東京高裁平成4年12月17日判決(行裁例集43巻11=12号1520頁)では、文理解釈にとらわれるべきではないと主張する納税者側の主張を排斥している。 同判決は、まず、 とする。 そして、そのこととともに、 としている。 もっとも、「例外的にかかる文理解釈によっては明らかに不当な結果となるような場合」がある場合には、その場合に とする。 つまり、まずは、租税法律主義や申告納税制度の見地からできるだけ、文理解釈によるべきであり、それでも明らかに不当な結果となるような場合には、目的論的解釈を展開する必要があるというのである。   このような考え方は、租税法の解釈において通説として理解されているところである。 租税法が侵害規範であるとみれば、できるだけルールブックに書いてあるとおりに解釈をすることが、納税者の予測可能性にも資するし、何よりも解釈の不安定な揺らぎを排除することができるということにもなろう。 ひいては、恣意的な課税を排除することにもつながるし、納税者X1らが自己に都合の良いような解釈をすることを防止することにもなると考えれば、文理解釈が優先的になされるべきとの考え方は納得のできるものであろう。 本件は、最高裁において、納税者の主張が採用され、文理解釈を基調とした判断が展開された。すなわち、最高裁は、 として、全日数を控除するという解釈が妥当だとしたのである。 もっとも、文理解釈が優先されるべきとはいっても、そもそもの法の趣旨を没却することになっては法の解釈として問題がある。そのような意味では、文理解釈によって導き出された解釈が法の趣旨に明らかに反するものであるような場合には、妥当な解釈とはいえないことになるのはいうまでもない。 (了)

#No. 37(掲載号)
#酒井 克彦
2013/09/26

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例6(所得税)】 「被相続人から相続により取得した貸店舗について、被相続人の取得価額で引き継ぐべきところ、未償却残高で引き継いでしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例6(所得税)】   税理士 齋藤 和助   《事例の概要》 平成14年から平成24年分の所得税につき、平成14年に依頼者の父親である被相続人から相続により取得した貸店舗について、被相続人の取得価額で引き継ぐべきところ、未償却残高で引き継いでしまった。 このため減価償却費が過少となり、結果として納付税額が過大となり、過大となった税額2,800万円につき賠償請求を受けたものである。 なお、税理士は平成14年から平成24年分の所得税について同様の処理を行っていたが、平成23年から24年の2年分は更正の請求により、平成20年から22年の3年分は更正の申出により損害額が回復しているため、損害期は平成14年から平成19年分の6期にわたる。   《賠償請求の経緯》 ・依頼者の父親の所得税の申告も同一の税理士が行っていた。 ・平成14年の所得税につき、相続により取得した貸店舗について、被相続人の取得価額で引き継ぐべきところ、未償却残高で引き継いで減価償却費を計算してしまった。 ・以後見直されることなく同様に減価償却費を計算して申告。 ・貸店舗の一部を譲渡することになり取得価額を確認して発覚。   《基礎知識》 ◆減価償却資産の取得価額(所法126②) 相続により被相続人の財産を取得した場合には、原則として被相続人の取得価額及び取得時期を引き継ぐ。   《税理士の落とし穴》   《税理士の責任》 相続の際に取得価額で引き継いでいれば過大納付にはならなったことから、税理士に責任がある。 なお、本事例のような単純なミスの場合、更正の請求等が認められることが多いことから、その手続を積極的に活用したい。 (注) 平成23年度税制改正により、平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税については、更正の請求期間が5年に延長された。また平成23年12月1日以前であっても、減額更正ができる期間内に「更正の申出書」を提出すれば、還付が受けられる可能性がある。   《予防策》 [ポイント①] 毎年新しい「目」で確認する 所得税の確定申告で特に不動産所得の場合には、確定申告だけを依頼される、いわゆる「年一の関与先」も多い。また、売上金額、経費の額が毎年同じであることが多いため、本事例のように長年にわたってミスに気づかず、気づいた時には更正の請求の期限を徒過しており、金額も多額になっていたというケースが多い。 このようなケースの場合、1人の確認ではなかなかミスに気づかないため、担当者の変更や、所内でのダブルチェック等、毎年新しい「目」での確認ができる体制の構築が必要である。   [ポイント②] 相続により取得した減価償却資産については特に注意する 本事例は単に取得価額と未償却残高を取り違えたものであるが、相続による減価償却資産の引継ぎにはミスが多発しているので注意が必要である。 相続により取得した減価償却資産は、その資産を取得した者が引き続き所有していたものとみなされる。したがって、取得価額だけでなく、取得時期、耐用年数も被相続人のものを引き継ぐ。 しかし、償却方法については、減価償却資産の償却方法を規定している所得税法施行令第120条及び120条の2の第1項の「取得」には、購入や自己建設のほか、相続等によるものも含まれると解される(所基通49-1)ため、被相続人の償却方法を引き継がない。 したがって、被相続人が法定償却方法以外の方法で減価償却を行っていた場合で、引き続き同じ償却方法を採りたい場合には、その年分の確定申告期限までに、「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を所轄税務署長に提出する必要がある。 なお、平成10年4月1日以後に取得した建物の償却方法は旧定額法又は定額法が強制されているため、被相続人が旧定率法を選択していても定率法は選択できない。 (了)

#No. 37(掲載号)
#齋藤 和助
2013/09/26

〔書面添付を活かした〕税務調査を受けないためのポイント 【第4回】「書面添付を円滑に実施するためのクライアント・事務所(スタッフ)運営」

〔書面添付を活かした〕 税務調査を受けないためのポイント 【第4回】 (最終回)  「書面添付を円滑に実施するための クライアント・事務所(スタッフ)運営」   公認会計士・税理士 田島 龍一   これまで3回にわたり、書面添付制度により税務調査を回避しうること、また、そのための具体的な準備について考察してきた。 結果として、納税者であるクライアント(顧客)と適切なコミュニケーションをとりつつ、きちんとした会計指導や税務処理指導を行い適切な添付書面を記載することが、「税務調査が来ない企業」にする方法であることがご理解いただけたものと思われる。 ここで、様々なクライアント(税理士の顧客である納税者)を抱えている場合に、どのようにしてクライアントをそのレベルまで引き上げていくか、また、書面添付実務を円滑化するために事務所スタッフをどのように指導するかを考察する。   1 クライアント指導 (1) クライアントも様々 正直なところ、筆者が関与するクライアントの会計事務能力レベルは様々である。 完全自計化が進み、決算時にチェックのみを行って、若干の修正指導のみを行い、その修正仕訳をクライアントが入力すれば決算書が完成するケースもあれば、社長御一人で、かつ、手書きで帳簿処理され、年に一度独自の多桁式帳簿を郵送して、決算と確定申告をよろしくお願いしますというものまである。 後者の場合は、今まで何度が指導を行い、やっとその多桁式帳簿まで辿り着いたが、現状としては、その会社は損益トントンであり、こちらも、その帳簿に慣れ、そこから一定の修正を入れた後に会計ソフトに入力して決算書ができるので、これ以上時間をかけて指導することを筆者も社長も望んでいない。 このようなクライアントは、書面添付をする対象から外れてしまうが、規模と内容から税務調査対象にならないようで、25年以上同様な状況であるが、臨場税務調査は、そのクライアントには実施されていない(やはり、税務署も税務調査の効率を考えるものと思われる)。 (2) 第一歩は自計化 クライアントが書面添付制度の対象となりうる第一歩は、筆者の考えでは、少なくとも自計化(会社自らが月次で会計ソフトに入力して計算書類を作成すること)が必要である。 その具体化に向けた留意点は下記の通りである。 (3) 証憑(基礎資料)の整理 会計記録は、企業の行うすべての経済取引を事実に基づき記録し、その結果が集計されて損益計算書と貸借対照表(財務諸表)が作成される。その財務諸表(計算書類)により経営者や金融機関・税務署等利害関係者に年間の経営成績と年度末の財政状態を公表する。 それら個々の取引の基礎となる資料を整理するための具体的な留意点は以下の通りである。 (4) 税務相談等のコンサルティング 様々な税務相談等は、確実にその場で回答できるものもあると思われるが、筆者の場合、「方向性としてはこうなると思われるが、事務所に戻って確認して後日回答する」旨を伝え、文書で質問の趣旨と回答及びその根拠を示してメールやファックスでクライアントに送るようにしている。 そうすることによって、お互いに質問の趣旨を後日確認でき、誤解を生じないこと、また、他の事例(判例等)や根拠を併記することで、その内容はそのまま、書面添付に利用可能となりうる。   2 事務所スタッフ指導 (1) 往査指導 「書面添付」の各項目をワードやエクセル等の表形式にし、それを事務所スタッフに持たせて、クライアントの月次処理チェックの往査時にそれに記入させる。 具体的な留意点は、以下の通り。 (2) 税務質問 以上をスタッフに徹底させることで、自分がクライアントに行ったのと同様な効果を得ることが可能となる。 *   *   * 以上4回にわたり、「〔書面添付を活かした〕税務調査を受けないためのポイント」について考察した。 この内容が読者に少しでも役立てれば幸いである。 (連載了)

#No. 37(掲載号)
#田島 龍一
2013/09/26

租税争訟レポート 【第14回】理由附記の不備による課税処分の取消し

租税争訟レポート【第14回】 理由附記の不備による課税処分の取消し   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝      【事案の概要】 納税者である控訴人(第1審原告)は、東大阪市が全額寄附をし、大阪府から設立許可を受けて設立された財団法人(公益法人等に該当する)であり、処分行政庁から法人税の青色申告の承認を受けている。 控訴人は、その行う事業を、公益事業会計及び収益事業会計の2つの事業に区分して経理しており、本件各事業年度において、収益事業会計として区分していた事業のみを法人税法2条13号に規定する収益事業に該当するとして、本件各事業年度の法人税の確定申告をした。 処分行政庁は、控訴人が営む事業のうち、公益事業会計に区分して経理していた事業についても収益事業に該当するとして、平成19年11月28日付けで、控訴人に対し、各更正処分及び各過少申告加算税賦課決定処分をした。 控訴人は、本件各更正処分等を不服として、異議申立て、審査請求を経て、平成21年11月5日、本訴を提起した。   【争点となった東大阪税務署長による「更正の理由」(平成19年3月期の例)】    【本件理由附記に関する当事者の主張】 1 控訴人 本件各附記理由は、帳簿の記載に誤りがあるのか、法の適用の結果であるのかが不明であり、違法であって、取り消されるべきである。 仮に、本件各附記理由が帳簿記載を否認しないでしたものであるとしても、本件各附記理由には、本件各事業が収益事業に該当するとの結論に至る判断過程について何の記載もなく、処分行政庁が自己の判断過程を逐一検証することは全く不可能である。 加えて、本件の場合は、収益事業と判断するには膨大複雑な法人税法施行令、施行規則を検討して判断する必要があるから、少なくとも関係法規の適用関係だけでも理由に記載すべきである。 よって、本件各附記理由は、処分行政庁の判断の慎重と合理性を担保しその恣意を抑制するという趣旨目的に反するものであり、この要件を欠いた本件更正処分は違法である。 2 被控訴人 本件各附記理由は法人税法130条の求める要件を満たすものである。 (1) 法の適用については結論のみを示せば足りる 更正の理由には、①更正の原因となる事実、②それへの法の適用、③結論の3つを含むところ、②に関連して生ずる法の解釈の問題や収入・支出の法的評価ないし法的判断の問題については、結論のみを示せば足り、結論に到達した理由ないし根拠を示す必要はないと解されている。 (2) 判断過程を逐一容易に検証することができる 本件各附記理由には、①「更正の原因となる事実」について、更正処分の対象として個々の業務について、契約等年月日、契約書名及び計上漏れとなっていた金額が記載され、更正の原因となる事実はすべて網羅されており、③「結論」についても、「収益事業収入計上漏れ」として、「当該事業年度の所得金額に加算しました。」と記載されている。 そして、②「法の適用」についても、公益法人等は、収益事業から生じた所得についてのみ法人税が課され(法人税法7条)、その収益事業の範囲については、同法2条13号において定められているところ、本件各附記理由には、上記更正の原因となる事実について、法人税法2条13号に該当する旨を明記していることから、更正理由の附記として欠けるところはない。   【裁判所の判断】 1  本件各附記理由について 以下の認定判断を総合すると、本件各附記理由は、法人税法130条の求める理由附記として不備があるものといわざるを得ない。 (1) 本件各附記理由の内容 本件各附記理由は、収益事業の収入に該当すると認定した収入の金額については、各契約書に基づきその算定過程について具体的に記載するものであるが、法適用に関しては、「法人税法2条13号に規定する収益事業の収入に該当する」との結論を記載するにとどまり、なぜ収益事業の収入に該当するのかについての法令等の適用関係や、なぜそのように解釈するのかの判断過程についての記載が一切ない。 (2) 本件各更正処分の理由等 処分行政庁は、本件各更正処分をした理由として、本件各事業がいずれも法人税法施行令5条1項10号に規定する「請負業」に該当するものであり、また、法人税法施行規則4条の3が定める要件(実費弁償原則)を満たさず、さらに、実費弁償通達が定める実体要件及び手続要件の双方を満たすものではない旨判断したことが認められる。 ところが、本件各附記理由には、こうした施行令、施行規則及び通達の各規定、その適用関係についての判断過程の記載が一切ないことから、処分行政庁が本件各更正処分をするに当たり、そうした法令等の適用関係やその判断過程を経ていることを検証することができない。   2  被控訴人の主張の検討 (1) 法の適用については結論のみを示せば足りるのか 更正通知書に更正の理由を附記すべきものとされているのは、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨によるものであるところ、法の適用について課税庁と納税者との間で見解が対立する場合等においては、課税庁の恣意の抑制や納税者の不服申立ての便宜等の要請は、法の適用判断の過程について生ずるものと考えられる。 事実関係を示すことで法の適用関係が一義的に明らかである場合やこれを容易に推測することができる場合等、法の適用については結論のみを示せば足りる事案が存することは否定できないが、一般的に法の適用については常に結論のみを示せば足りるとする被控訴人の主張は採用しがたい。 (2) 判断過程を逐一容易に検証することができるか 本件各附記理由の「収益事業収入計上漏れ」の記載は、本件各事業が収益事業に該当するとの判断を前提として、その所得金額ひいては税額を算出する判断過程を記載したものであって、本件各事業が収益事業に該当するか、実費弁償となっているかについての判断過程を記載したものとは解されない。 本件各附記理由の記載によって、実費弁償となっていないとする処分行政庁の判断過程を検証することが可能であるとは認めがたいところであるし、処分行政庁の判断過程が控訴人に示されたとみることは困難である。 (3) まとめ 以上のとおり、被控訴人の各主張は、いずれも採用することができず、本件各附記理由について不備があるとする当裁判所の判断を左右するものではない。 3  本件各更正処分等の違法性の検討 本件各附記理由は、法人税法130条2項の求める理由附記として不備があり、違法であるといわざるを得ず、その余の争点につき判断するまでもなく、本件各更正処分及びこれを前提とする本件賦課決定処分はいずれも取消しを免れない。   【解説】 改正国税通則法の施行により、平成25年1月から、すべての処分について理由附記が実施されることとなった。 本判決は、更正処分における理由附記に不備があるとして、裁判所が処分の全部取消しを命じたものであり、課税実務に与える影響は大きいといえよう。 冒頭の引用した「更正の理由」は、それなりの体裁を整えているように読める。しかし、裁判所は、附記理由については、法の適用に関する結論のみでは足りず、法の下位規定の適用に関する処分行政庁の判断過程を示す必要があるとして、被控訴人側の主張を一蹴した。 特に、法の適用について課税庁と納税者との間で見解が対立する場合において、課税庁の恣意を抑制し、また、納税者の不服申立ての便宜を図るという法の趣旨から、納税者において、「課税庁の判断過程を検証することが可能である」理由の附記を求めた点は、たいへん評価できる。 なお、改正国税通則法74条2項では、調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、「その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする」と規定されていることから、調査結果の説明が不十分であった場合、納税者からの質問に対する回答がなかった場合、結果説明と更正決定処分の内容が違っている場合など、いずれも処分の違法性を問える可能性が生じるため、調査結果の内容説明(事務運営指針によれば、原則として口頭で行われる)については、納税者側で記録を残しておくことが、これまで以上に重要になることは間違いない。   (了)

#No. 37(掲載号)
#米澤 勝
2013/09/26
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