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税務判例を読むための税法の学び方【19】 〔第5章〕法令用語(その5)

税務判例を読むための税法の学び方【19】 〔第5章〕法令用語 (その5)   自由が丘産能短期大学専任講師 税理士 長島 弘   (前回はこちら) 5 「推定する」「みなす」「とする」 ① 推定する 一定の事実関係について、通常予測されうるものを前提に、一応の事実を推測して、その法令上の取扱いを定めようとすることが行われる。 このようなときに用いられる法令用語が、「推定する」である。 すなわち、「推定する」というのは法律上の取扱いについて一応決めるだけであるので、本当の事実がそれと異なる場合には、反証を挙げてこれを否定することができる。 以下に例を1つ示す。 これは国税通則法第12条1項2項の規定である。なお、内容の把握上、第1項も記載する。 この第2項に「推定する」とあるが、それは国税に関する法律の規定に基づいて税務署長等が郵便又は信書便によって書類を発送した場合には、通常到達すべきであった時に送達があった、すなわち郵便物が届いたものとして推定される。 しかし、特別の事情があって届いていない場合に、反証を挙げてこれを否定することができれば、通常到達すべきであった時に送達がなかった、すなわち届いていなかったことを主張できる。 次に、語尾が「して」となっている「推定して」の例として、所得税法158条を挙げる。 この条文前段の説明は省くが、この前段の内容に該当する場合には、税務署長は各事業所の主宰者が各事業所から生ずる収益の享受者と推定して、更正又は決定をすることができると定められているが、主宰者の側で反証を挙げてこれを否定することができれば、収益を享受していないことを主張できる。 ② みなす 本来性質の異なるものを、一定の法律関係について、法令の定めにより同様のものとして取り扱おうとするときに用いられる法令用語である。この点において、反証により否定することが可能な「推定する」とは異なる。 すなわち、「みなす」の場合には、法令上確定的に、その「みなす」と定められているものとして取り扱う。したがって、反証によってこれを否定することはできない。 なおこれは、「擬制的にそのように扱う」という趣旨であって、本来はその「みなす」とされているものとは性質が異なるものである。 所得税法第150条を例として取り上げる。 この150条の各号には、青色申告の承認の取消し事由が列挙されているが、それに該当する場合には、その提出した青色申告書は、法令上確定的に、青色申告書以外の申告書として扱われることになる。 ③ とする これは前回「ものとする」のなかで説明したものであるが、ここで再度説明する。 なお、ここで取り上げる「とする」は、「制度としてそのように決める」という意義の中で、上記「みなす」と同様、法令上確定的に、その「とする」と定められているものとして取り扱う用例のものに限定して説明する。 上記の「みなす」という用語が、「擬制的にそのように扱う」という趣旨であるのと制度的にそのように決めるという場合に「とする」と表現するのとは大きく異なる。すなわち「とする」は、本来そのように扱っておかしくない性質をもっているので「制度としてそのように決める」という場合に用いる。 所得税法第6条の3の各号の規定のなかには、この「みなす」と「とする」がある。 この1号及び2号の場合は、本来的に内国法人(1号)又は外国法人(2号)として扱っておかしくない性質をもっているので「制度としてそのように決める」という趣旨で用いている。 1号について見れば、法人課税信託の信託された営業所が国内にある場合の当該受託法人は内国法人であるか否かを問わず内国法人として扱う旨規定されている。しかし3号においては、「会社とみなす」と規定されているものは、受託法人のなかでも「会社でないものに限る」と規定され、あくまでも会社でないものを会社として扱う趣旨で「みなす」を用いている。 このように、「みなす」は本来、その「みなす」とされているものとは性質が異なるものを擬制的にそのように扱う場合に用いるものである。 (了)

#No. 37(掲載号)
#長島 弘
2013/09/26

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載37〕 会社分割において金銭等を交付する場合の取扱い

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載37〕 会社分割において金銭等を交付する場合の取扱い   税理士 竹内 陽一   1 会社分割と金銭等の交付 会社分割は、会社法においては、「分社型分割」として規定され、分割会社からの承継資産に対応する分割承継会社の対価は自由となり、その全額を承継会社株式以外の金銭等とすることができる。 法人税法においては、対価が金銭等の場合には、非適格分割となる。   2 分割型分割と金銭等の交付 会社法においては、「分割型分割」は、「分社型分割」+ 「剰余金の配当」として整理されており、効力発生日に分割承継会社株式のみを配当財産とする場合は分割契約書にその旨を記載する必要があり、金銭等を株主に交付する場合は対価総額の5%未満とされている。   3 分割型分割における交付金銭等の対価総額5%未満要件 会社法上、対価総額の5%未満の金銭等の交付しか容認されていないということではなく、この交付する金銭等が対価総額の5%未満の場合は、分配可能額による剰余金の配当規制の適用除外とされているにすぎない。 この対価総額の5%以上100%までの金銭等の交付を行う場合は、分割会社において、剰余金の配当規制に抵触しないことが、会社分割を行う条件となる。対価総額の5%以上の金銭等を交付する場合及び100%金銭交付の分割型分割を行う場合には、剰余金の減少額は分配可能額の範囲内でなければならない。   4 法人税法における分割型分割 法人税法においては、会社法の定めにかかわらず、法人税法2条12号の9(分割型分割の定義)において、分割型分割とは、分割の日に分割対価資産のすべてが分割法人の株主等に交付される場合の分割と定義しており、分割の効力発生日と金銭等の交付の同日要件はあるが、交付金銭等に上限はない。   5 法人税法における適格組織再編成と対価要件 適格組織再編成における株式以外の対価が交付される場合の適格判定等は、次の表のとおりである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   6 分割型分割において剰余金の配当を現物によって行った場合に一に満たない端数が出るときの取扱い 分割承継法人から交付される対価が分割承継法人株式のみであって、分割法人の株主に交付する際に、交付する分割承継法人の株式に一に満たない端数が生ずる場合、その端数に応じた金銭を交付しても、その分割は、非適格分割とされることとはならず、その金銭を交付された株主においては、譲渡所得となる。 この一に満たない端数に関しては、分割法人株主が分割法人を経由して分割承継法人に譲渡し、分割承継法人においては自己株式を買い取る、ということになる。この自己株式の買取りに関しては、会社法234条4項(一に満たない端数の処理)の対象外であるが、同項の端数株式の買取りに準じてみなし配当を発生させないこととされている(法令23③九)。 この一に満たない端数の取扱いに関しては、分割法人を経由して分割承継法人に自己株式を買い取らせるという手続を省略して、分割法人が、分割承継法人から、端数が出ない分割承継法人株式と分割法人の株主に交付する代わり金の交付を受け、そのまま剰余金の配当をすることが考えられる。この場合には、この金銭等の額が対価総額の5%未満であれば、この剰余金の配当は分配規制の対象外とされる。 税法上は、このような処理が行われた場合には、分割法人を経由して分割承継法人に自己株式を買い取らせるという手続を省略したものとして、みなし配当を発生させない取扱いとなるものと考えられる。   7 一に満たない端数が出る場合の分割法人と分割承継法人の処理 一に満たない端数に相当する額の金銭の交付が行われる場合、上記のとおり、みなし配当を発生させない取扱いとなり、株主においては、譲渡所得の計算が行われることとなるものと考えられるが、分割法人と分割承継法人においては、次のような処理が必要となる。 なお、この分割は、適格分割の要件を満たしているものとし、各項目の金額は、どのような処理が行われるのかということが分かりやすいような適宜の金額としている。   8 反対株主の買取請求権が行使された場合の分割法人と株主の処理 (1) 反対株主の買取請求権が行使された場合で分割の日前に価格合意と決済がされたときの処理 反対株主の買取請求権が行使された場合で分割の日前に価格合意と決済がされたときの分割法人と株主の処理は、税制上はみなし配当が生ずる金庫株取引となり、適宜の金額にて処理例を示すと、次のとおりとなる。   (2) 分割の日後に価格合意がされ、分割の日に反対株主にも剰余金の配当として分割承継法人株式が交付された後、合意した分割法人株式の対価が支払われる場合の処理 分割の日後に価格合意がされ、分割の日に反対株主にも剰余金の配当として分割承継法人株式が交付された後、合意した分割法人株式の対価が支払われるという場合には、効力発生日に反対株主にも分割承継法人株式が交付されるため、一旦は、他の株主と同様の処理が行われることとなる。 このため、分割法人とその株主は、一旦、次の処理を行うこととなる。 その後、価格合意して譲渡契約が成立し、分割法人の株主が分割法人株式の対価を受け取る場合には、分割法人の株主は、分割承継法人株式を分割法人に返還し、改めて、分割法人株式の分割法人への譲渡の処理を行うこととなる。 分割法人は、その株主から分割承継法人株式の返還を受けることとなるが、その返還は、分割法人が一旦行った分割法人株式の株主への交付がなかったものとするものであり、分割法人においては、実質的には、適格分社型分割と自己株式の買取りとを行った状態と同様であるため、分割法人が行っていた分割法人株式を交付して資本金等の額と利益積立金額を減少させる処理を修正する処理と自己株式の買取りの処理を行うのが適当と考えられる。 このように、分割法人において、分割法人が行っていた分割法人株式を交付して資本金等の額と利益積立金額を減少させる処理を修正する処理を行うのは、分割の日後に価格合意がされた場合に、分割承継法人株式が返還されることによって分割法人がどのような状態となるのかということを経済的実質に即してみると、適格分社型分割と自己株式の買取りとを行った状態と同様であると判断されることによるものであり、適格分割型分割とした分割を適格分社型分割に変更するというものではないため、分割承継法人において分割型分割として行った処理を変更する必要はない。 この場合の分割法人とその株主の処理は、次のとおりである。 (了)

#No. 37(掲載号)
#竹内 陽一
2013/09/26

林總の管理会計[超]入門講座 【第11回】「経費の予算管理をめぐる考え方」

林總の 管理会計[超]入門講座 【第11回】 「経費の予算管理をめぐる考え方」   公認会計士 林 總   予算をどれだけタイトに考えるか   予算は絵に描いた餅か?   部門別計算における責任予算制度 (了)

#No. 37(掲載号)
#林 總
2013/09/26

競業避止規定の留意点 【第4回】「個別特約と就業規則」

競業避止規定の留意点 【第4回】 (最終回)  「個別特約と就業規則」   特定社会保険労務士 大東 恵子   退職後の競業避止義務契約の有効性は、競業の制限が合理的範囲を超え、債務者らの職業選択の自由等を不当に拘束し、同人の生存を脅かす場合には、その制限は公序良俗に反し無効となるのは言うまでもない。退職労働者は、これまでの経験を活かせる職業に就こうとするため、自然と同業となる。労働者の働く権利を侵害しすぎない範囲に限って、会社を守ることも許されるのである。 特約については、民法上の公序良俗違反(民法90条)として無効とすることにより、特約の適用範囲に一定の歯止めをかけている。 上記の合理的範囲を限定するにあたって、裁判例には若干のバラつきはあるが、概ね、使用者の正当な利益の保護を目的とする(ノウハウ等の要保護性)営業秘密はもちろん、技術的な秘密や営業上のノウハウ等、顧客との人間関係等についても企業利益の有無が判断される。 〔従業員の退職前の地位・業務の性質・勤続年数〕 従業員すべてを対象にした規定は、合理性が認められにくい。 就業規則への記載は勿論だが、秘密漏洩禁止と競業避止の特約などを地位や業務の性質に応じて個別契約書を締結するのが良い。 〔競業避止義務を課す業務、期間、地域〕 転職を一般的・抽象的に禁止するだけでは合理性が認められないことが多いため、具体的に事業名を明確に記載する必要がある。 期間について、1年以内は肯定的に捉えられている例が多い一方で、近年は、2年の競業避止義務期間について否定的に捉えられる判例が見受けられる。 〔代償措置の有無〕 代償措置と呼べるものがない場合には、有効性を否定されることが多い。 必ずしも競業避止義務を課すことの対価と明確に定義された代償措置でなくても、代償措置と呼べるものが存在すると肯定的に判断されることが多い。 (連載了)

#No. 37(掲載号)
#大東 恵子
2013/09/26

民法改正(中間試案)―ここが気になる!― 【第10回】「民法総則」

民法改正(中間試案) ─ここが気になる!─ 【第10回】 「民法総則」   弁護士 中西 和幸   連載の最後に、民法総則について解説する。 今回の民法改正が「債権法改正」といわれることがあるとおり、債権法が中心であり、民法総則については大きな改正は少ない。その改正の主なものは、「錯誤」と「時効」である。   1 錯誤 (1) 表示上の錯誤 ① 要件の整理 まず、旧民法で錯誤の典型例とされている表示上の錯誤について規定されている。例えば、「Aを買う」と意思表示をするつもりが「Bを買う」と表示してしまったように、対象を誤って表示した場合が考えられる。 こうした場合の錯誤の要件について、中間試案では、民法95条においては「要素の錯誤」という、その錯誤がなかったならば表意者は意思表示をしなかったであろうと考えられ(主観的因果性)、かつ、通常人であってもその意思表示をしないであろうと認められる(客観的重要性)もののみが意思表示の効力に影響を与えるものと判例上の解釈が定着しているところ、この判例の論理を明文化して定義しているものである。 すなわち、特段、ルールが変更されている部分ではない。 ② 効果の変更 前述の要件を満たし、表示上の錯誤が要素の錯誤に当たる場合の法的効果について、民法95条の「無効」を取り消すことができるものとし、明文上のルールを変更している。 この点、「取り消すことができる」法律行為については、意思表示を行った者等法令上定められた者に限って「取り消し」の意思表示を行うことができる者とされている一方、「無効」は主張することができる者が限定されていない。そのため、錯誤による無効を第三者が主張すると法的安定性や当事者の意思に反するという不都合が古くから指摘されていた。 もっとも、判例上、錯誤による無効を主張できる者は意思表示を行った者に限定されており、実質的には判例を明文化したに過ぎず、実務上は影響がない改正と解される。 (2) 動機の錯誤 錯誤による法的紛争において多く争われたものは、動機の錯誤である。 前述の例に沿えば、「Aを買う」と意思表示をしたつもりで「Aを買う」と意思表示をしているため、表示上の錯誤ではないが、その前提となる動機を誤って「Aを買う」と意思決定をした場合をいう類型である。 この場合、現行法では、判例上動機が明示又は黙示に表示されて法律行為の内容となっていた場合には錯誤無効の主張が認められている。中間試案では、その判例を明文化して、表意者の認識が法律行為の内容になっているときと規定している。 なお、動機の錯誤についてもその効果は取り消すことができるものとされている。 (3) 不実表示 動機の錯誤の一類型として、表意者の錯誤が、相手方が事実と異なることを表示したために生じたものであるときは、表意者の認識が法律行為の内容になっているか否かを問わず、動機の錯誤にあたるものとされている。 これは、新たに設けられたルールであり、「不実表示」といわれている。 (4) 表意者の重過失 錯誤に陥った意思表示を行った者に重大な過失がある場合、原則として取消しができないものとされている。この点は民法上も規定されている。 中間試案では、これに加え、相手方が表意者の錯誤について知り又は重大な過失がなかったときや、相手方と表意者が同一の錯誤に陥っていたときは、取消しができるものとし、民法の明文にはない新しいルールを追加している。 (5) 第三者保護 民法には、錯誤の場合は詐欺(民法96条3項)や通謀虚偽表示(同94条2項)のように、善意の第三者に意思表示の取消しや無効を主張できない旨が明記されていない。 そのため、中間試案では、上記規定と平仄をそろえるため、善意無過失の第三者に対抗できないことを明記している。 (6) 実務への影響 錯誤の規定については、基本的には判例を明文化し、他の規定と平仄をそろえるなど、これらについては実務上さほど影響を与えるものではないものと思われる。 しかし、「不実表示」については、この規定のみが消費者保護を指向した、質の異なる規定である。法制審議会の議論において、元々異なる分野であった規定が錯誤の項目に盛り込まれたものである。こうした経緯に加え、「消費者保護」という特定の目的を持った規定が民法という基本法に盛り込まれることに違和感があるが、さらに、裁判等における法的解釈に際しても、消費者保護的な発想から逃れられないことが予想される。 さらに、どのような場合に不実表示となるかという点は実務の蓄積を待たなければならず、仮に規定が設けられた場合、施行後当面の間は予測可能性がなく、手探りの実務が続くため、やや保守的な運用にならざるを得ないであろう。 これに加え、不実表示の効果が「取り消すことができる」というだけであり、損害賠償や瑕疵修補等と比較して柔軟性を欠くとの指摘もあり、不実表示に関する規定が今後どのような規律となるか、また運用上不都合が生じるか生じないか、予測がつかないところである。   2 消滅時効 (1) 概要 時効については、制度自体の賛否について様々な考え方があるが、中間試案では、主に、短期消滅時効の廃止と時効期間の起算点の問題について実質的な改正が提案されている。その他に、時効中断等手続や技術的な側面について改正が提案されているが、本稿ではスペースの都合上省略する。 (2) 短期消滅時効の廃止 民法では、債権の消滅期間を原則10年としながら、職業の細かい区分に基づき、3年、2年、1年と短期消滅時効を定めている(民法170条から174条まで)が、これを廃止するものである。 この点については、補足説明を読む限り、附随する問題があるとはいえ、改正される可能性が高いものと推測される。 (3) 時効期間の始期 時効期間の始期については甲案と乙案が並列して提案されている。 甲案は、時効期間の起算点を維持したまま債権の消滅時効の期間を5年に短縮する提案である。 一方乙案は、 というように、債権の発生原因と債務者を知っているか否かで分けて規定するものである。 契約のように債権の発生原因及び債務者を認識している場合は、現行法より短期の消滅時効とし、事務管理、不当利得など、債権者が債権の発生原因及び債務者を知ることが容易でない場合に、現行民法の時効期間を適用するという規定である。 現行法では、原則として債権の消滅時効は10年、商事債権は5年、不法行為債権3年であり、相互のバランスが問題とされ、前述の提案となっている。 (4) 不法行為に関する時効期間 不法行為による損害賠償請求権の時効期間については、現行民法では除斥期間とされ、中断することができない等被害者に不利益とされていたため、「損害及び加害者を知ったときから3年」又は「不法行為の時から20年」という時効期間として整理し、除斥期間でないことが明文化されている。 また、生命・身体への侵害による損害賠償請求権について、より長期の消滅時効を定めることが検討されている。 (5) まとめ 時効期間については、各消滅時効の期間が統一されていないことを修正して整理するものであるが、当事者の納得感が得られる改正はどの範囲かの問題ともいえる。職業別の短期消滅時効の廃止は、おそらく改正されるであろうと予想される。 一方、時効期間の始期については、債権の発生原因や債務者を本当に知っているかどうかなどの事実認定が争われる可能性があり、結局その要件が不明確となったり複雑となったりするなどの可能性がある。また、甲案や乙案のどちらが採用されても、現在の時効期間が短縮される可能性があると考えた方が無難であろう。 もっとも、事業者としては、事業年度や確定申告の関係上、1年を超えて権利行使が可能であるが行使しない債権があること自体、実は自らが権利の上に眠っていることを表明しているともいえよう。 実務としては、民法がどのように可決されようが、時効について対策を立てるよりも、時効が問題となるような債権管理自身を問題とすべきであり、原則として権利行使が可能となってから1年以内に権利行使を行う、あるいはリスケジューリングを行うなどの対応を怠りなく行うことが、より必要と思われる。 (了)

#No. 37(掲載号)
#中西 和幸
2013/09/26

顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第16回】「仕入・買掛債務管理のKPI(その③ 支払)」

顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第16回】 「仕入・買掛債務管理のKPI (その③ 支払)」   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 今回は、「仕入・買掛債務管理」を構成する業務プロセスから、「支払」の基本を問うKPIを取り上げる。 仕入計上やその変更計上が行われた後、購買取引の支払段階では、資産保全の観点で業務管理が重要となるが、そのような業務管理のサービスレベルを評価するKPIを紹介しよう。   KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておこう。 前回も述べたが、仕入・買掛債務管理において、会社が担う一般的な機能として、「購買業務」、「債務残高管理」、「値引・割戻」という3つの機能が挙げられる。 「購買業務」に着目してその機能を分解すると、「購入契約」、「仕入」、「期日別債務残高管理」、「決済」で構成される。 今回解説するKPIは、このうち「期日別債務残高管理」と「決済」に関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:仕入・買掛債務管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   さらに、経済産業省スタンダードでは、「期日別債務残高管理」と「決済」に関連する業務プロセスを次のようにまとめている。 まず、「期日別債務残高管理」では、仕入計上された買掛金元帳から期日到来予定分を抽出する。 次に、「決済」では、仕入先から送られた請求書と期日到来予定の債務を照合し、請求内容検証と支払依頼のための社内承認を経る。 今回のKPIは、期日別債務残高管理を通じて期日が到来する予定が判明した買掛金の支払いに必要な社内承認について、リスク管理のレベルを問うものである。 〈経済産業省スタンダード:2.4.1期日別債務残高管理〉   〈経済産業省スタンダード:2.5.1請求内容検証〉   〈経済産業省スタンダード:2.5.2支払依頼〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 定義が不明瞭な用語はないと思われるので、調査項目の文言の行間を解説しよう。 「買掛金元帳」について、それが備えるべき前提条件がある。 「買掛金元帳」が「請求書」と照合されるためには、本連載の【第13回】で述べたとおり、仕入計上段階で買掛金元帳が取引の実在性と金額の正確性を証明する証憑に基づいて記帳されること、さらに、【第14回】で述べたとおり、仕入値引や仕入戻が適正に買掛金元帳に反映されることを担保する予防的な業務管理が不可欠ということである。 すなわち、①自社の注文書控、②仕入先からの納品書、送り状、又は自社の検収報告書に基づき適時に適正に買掛金が計上されているからこそ、支払段階における架空支払や過大支払を防ぐ最後の砦として、仕入先からの「請求書」と「買掛金元帳」を照合することに意味が出てくるのであり、適正な買掛金の計上がおぼつかない「買掛金元帳」は、「請求書」と照合するに値しないと考えている。 したがって、「請求書と買掛金元帳を照合」には、請求書と納品書を照合すること、請求書と検収報告書を照合することを含むと考えて差し支えない。 このように、仕入・買掛債務管理における一連の業務管理とKPIは、相互に関連しているのである。   KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルにおいて、このKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、購買業務の決済において、実在する物品又は役務の購入取引に基づいた債務履行を担保するため、仕入先からの請求書だけに依拠するのではなく、都度行う予防的な検証手続を整備することが望ましいという価値判断に基づいて設定されている。 前提となる職務分掌は、仕入・買掛債務管理で、発注依頼、購買、支払いを行う担当者を分離することに加え、支払業務プロセスの中で、支払依頼書作成、買掛金消込の記帳、支払実行を行う担当者を分離することである。 では、もし会社の中で、このようなKPIを設定した価値判断が共有されず、購買担当者が支払業務も兼務し、請求書と買掛金元帳との照合を怠る場合、どういう事態が想定されるのか。 まず、架空支払や過大支払による会社資産の不適正な流出が発生する可能性がある。 さらに、架空支払や過大支払の延長線上には、仕入先に請求金額以上の金額を支払い、仕入先がその点について民法上の善意(知らないこと)か悪意(知っていること)かを問わず、差額を個人口座に返金させて着服する不正リスクが存在する。 筆者(株式会社スタンダード機構)がこれまで行った業務改善コンサルティングで見聞した経験則では、仮にこのKPIによる予防的な業務管理が破られても、定期的な残高照合による発見的な業務管理で、買掛金元帳の赤残の発生を端緒に架空支払や過大支払を発見することができるが、会社の内部者が不適正な支払いを隠蔽するために架空の買掛金を計上していれば、期末決算における実地棚卸まで発見が遅れてしまう。 さらに、悪質な場合、実地棚卸の発見的統制を破るため、在庫自体を隠蔽する手口も考えられるだろう。   顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、購買業務を構成する期日別債務残高管理や決済に関連する業務プロセスと必要な職務分掌が仕入・買掛債務管理に組み込まれていることを確認していただきたい。 例えば、購買規程、経理規程を閲覧し、職務分掌が整備されていることを確認することが考えられる。さらに、その職務分掌を前提に、一定期間の請求書、買掛金元帳、仕入計上段階の証憑を試査により閲覧し、業務管理の実施者による照合の痕跡が証跡として残っていることを確認していただきたい。 さて、読者の顧問先において、すべての支払実行前に、請求書と買掛金元帳を照合していただろうか。 *  *  * 次回からは、「棚卸資産管理」のKPIを取り上げる。 「棚卸資産管理」を構成する複数のKPIのうち、まず「受払検証」に関連する業務プロセスを評価するKPIから取り上げる。 (了)

#No. 37(掲載号)
#島 紀彦
2013/09/26

〔知っておきたいプロの視点〕病院・医院の経営改善─ポイントはここだ!─ 【第17回】「7対1入院基本料と重症度・看護必要度」

〔知っておきたいプロの視点〕 病院・医院の経営改善 ─ポイントはここだ!─ 【第17回】 「7対1入院基本料と重症度・看護必要度」   東京医科歯科大学医学部附属病院 特任講師 井上 貴裕 1 看護必要度とは何か 重症度・看護必要度は、今日の診療報酬で入院基本料等の様々な評価に用いられている。 図表1に示すように、A得点とB得点から構成されており、一般病棟用では、A得点が2点以上、B得点が3点以上の患者が全体の何割いるかという評価が行われる。   図表1 一定以上の患者は手がかかるのだから、そのような病院あるいは病棟等を評価しようという仕組みであり、A得点5点、B得点5点のような患者も必要度をぎりぎりで満たす患者も同じ評価になるため、連続的な評価にはなってないという特徴を持つ。 現行の診療報酬においては、一般病棟7対1入院基本料を算定する場合には、看護必要度を満たす患者が15%以上、また急性期看護補助体制加算25対1を届け出る場合にも7対1入院基本料を算定する病棟にあっては15%以上の看護必要度の基準を満たす患者を入院させることが求められている。看護師や看護補助者を重点的に配置する必要があるのは、看護必要度が高く手のかかる患者が多いからという考え方であろう。 今後、7対1入院基本料を算定する病床を削減する方向で各種の医療政策が展開されていく予定である。その際に重要な鍵を握るのが看護必要度と平均在院日数であり、両者は密接に関係するものでもある。   2 診療報酬における看護必要度評価の経緯 看護必要度は、人員配置等の構造的な面だけではなく、患者の看護必要度を加味した評価体系とするために、平成8年頃から開発が行われ、平成14年度診療報酬改定で評価が行われた。 図表2に示すように、平成14年度診療報酬改定では、いわゆるICUに関する加算である特定集中治療室管理料の算定要件に重症度の判定基準が導入され、続く平成16年度改定ではハイケアユニット入院医療管理料に導入された。まずは重症系ユニットを中心とした評価が行われた。 図表2 また、平成20年には一般病棟7対1入院基本料に対して10%以上の看護必要度を要求し、平成22年には急性期看護補助体制加算の算定要件や10対1入院基本料を算定する病院に看護必要度評価加算が設けられるなど、少しずつ診療報酬体系の中で存在感を増してきている。 看護必要度の評価が妥当であるか、評価のあり方に病院間格差があるなどの指摘も存在し、評価方法については進化していくものと予想される。また、がん患者の看護必要度が比較的低くなったり診療科構成による影響、そして急性期機能が高い病院よりも慢性期的な病院の看護必要度が高い場合があるなど、一般病棟の評価方法としての妥当性に疑問が呈されることもありえる。 しかし、患者の重症度に応じた人員配置を行うことは限られた医療資源の効率的配置という観点からは必然であり、時代が後戻りすることは考えづらく、看護必要度あるいは何らかの重症度を反映した類似の考え方が今後も診療報酬において重要な位置付けとして君臨することであろう。   3 平均在院日数と看護必要度 図表3は今後の、急性期病院に求められる方向性を示している。 図表3 看護必要度と平均在院日数   右下の看護必要度が高く平均在院日数が短い象限が急性期病院の理想的なポジショニングであり、左上にある看護必要度が低く平均在院日数が長い病院は急性期病院(この資料では7対1入院基本料)からは退場宣告を受けたものと捉えることもできる。 確かに右下象限には特殊な機能を持った専門病院が多く含まれるであろうし、左上の象限にある病院は連携先に苦労する地域一般病院なのかもしれない。また、この図表3からは、平均在院日数と看護必要度には相関がないと解釈することも可能であり、より精緻な分析をしていく必要がある。 ただし、治療終了後も在院日数を長引かせれば看護必要度が低くなることは容易に想像できる。平均在院日数を短縮し、集中治療をすることが求められていると捉えることが望ましい。   4 医療機関群と看護必要度 2012年度診療報酬改定でDPC/PDPSにおける基礎係数の設定で、医療機関群が新設されたことは記憶に新しい。 医療機関群については、必ずしも医療の質を評価したものではなく、病院のポジショニングが反映されたものであり、各群は優劣を意味するわけではない。ただし、基礎係数の実績要件でハードルが高かった、診療密度と手術1件当たり外保連手術指数は看護必要度と密接に関わることには言及しておきたい。 看護必要度は、平均在院日数を短縮し集中治療を行えば高くなり、また予定入院よりも緊急入院(特に救急車搬送入院)で高くなる。このことは、1日当たり包括範囲出来高換算点数である診療密度でも同じことがいえる。 さらに侵襲性の高い手術(特に全身麻酔手術)が多ければ、看護必要度が高くなり、外保連手術指数も高くなる。医療政策において急性期病院に求められている大きな方向性という意味では、看護必要度も医療機関群も共通点が多い。   5 重症系ユニットの設置と看護必要度 ICU・HCUなどの重症系ユニットにより集中治療を行うことは、これからの急性期病院にとって重要な機能といえよう。しかし、特定集中治療室管理料では概ね90%以上、ハイケアユニット入院医療管理料では概ね80%以上の重症者が在室することが要求されており、これらの病床数を増加させることは一般病棟における看護必要度を下落させることにつながる。 ICU等のユニットにおいて手厚い人員配置を行うか、7対1入院基本料等算定する病床を重視するかは病院の戦略と密接に関係する。高度急性期病院として医療の質向上を目指すためには、ユニットの充実は期待されるが、高い診療報酬にこだわり無理にユニットを維持している病院も少なくない。ICUで勤務する看護師の半分近くが新人であったりする場合には、その効果に疑問が呈されても不思議ではない。 地域の中でどのような役割を果たすべきなのかが看護必要度には反映されるという点では、医療機関群と同様であり、自院のポジショニングを明確にすることが求められている。   6 看護必要度評価見直しの影響 今後、看護必要度の評価を見直す方向で議論が進められており、具体的には時間尿測定及び血圧測定については、項目から除外し、創傷処置については褥瘡の発生状況を把握するためにも、褥瘡の処置とそれ以外の手術等の縫合部等の処置を分けた項目とし、呼吸ケアについては、喀痰吸引を定義から外すこととされている。 追加される項目は、計画に基づいた10分間以上の指導・意思決定支援、高悪性腫瘍剤の内服、麻薬の内服・貼付、抗血栓塞栓薬の持続点滴をA項目に追加することが考えられるが、このうち10分間以上の指導・意思決定支援については、実施すべき内容等定義を明確にした上で、A項目に追加される予定である。 診療科による影響はあるものの、時間尿測定や血圧測定の実施頻度は通常の急性期病院では多くない。また、高悪性腫瘍剤の内服でTS1のような抗がん剤も評価されるため急性期病院ではプラスの影響が出るものと予想される。 ただし、多くの病院の看護必要度が高くなることは、現行の15%の基準値のハードルが引き上げられる可能性もあり、今後も実態に合った適切な評価を行うことが求められる。 (了)

#No. 37(掲載号)
#井上 貴裕
2013/09/26

女性会計士の奮闘記 【第9話】「士業の連携で幅広くサポート!」

女性会計士の奮闘記 【第9話】 「士業の連携で幅広くサポート!」   公認会計士・税理士 小長谷 敦子   〈社長の役員報酬変更による影響額(単位:円)〉 ・①+②+③=79,316円 ・社長の役員報酬を半分にすることによって、本人から徴収される社会保険料、源泉所得税及び会社が負担する社会保険料の額が、合計で月額79,316円も低くなります。 ・ただし、役員報酬は、事業年度の会計期間開始の日から3ヶ月を経過する日までに改定され、その後、各支給時期の給与の額が期間を通じて同額でなければ、法人税法上、損金と認められない可能性がありますので、注意が必要です。 ※社会保険料は、東京都の平成25年9月改定の基準で計算しております。 ◆ワンポントアドバイス◆ お客様の疑問は多岐にわたります。 その疑問にタイムリーに答えるため、他の士業との連携が必要です。 さらに、事前の情報提供が得られるよう、日ごろから良好なネットワークを作っておくことが大切です。 (了)

#No. 37(掲載号)
#小長谷 敦子
2013/09/26

神田ジャズバー夜話 「5.ジンクスのようなもの」

この店にもいくつかジンクスのようなものがある。 その1、後で来ると言って来るやつはいない。 「すいませーん、後で来ようと思ってるんですが、へえ、いい店ですね」 「はい、まあ」 「じゃあ、後で来まーす」 「はーい」一応返事をしておく。が、そんなことを言って来たためしはない。私はそいつが帰ると扉の外に塩をまく。 その2、ビル・エバンスの『ワルツ・フォー・デヴィ』をかけると客が来る。 客が来そうな時間にかけているからだといってしまえばジンクスでもなんでもないが、常々神仏は信じないといっておきながら、何度も実績があるので、客がいないと心細くなりかけてしまう。 一応、仮説として「二軒目でゆったり飲むには管楽器はうるさく、ボーカルは好き嫌いが別れるので、ピアノトリオぐらいが丁度いい。しかもジャズ好きには聞き覚えのある『ワルツ・フォー・デヴィ』ならば入り易いのではないか」と考えてはいる。 その3、昼間客が多いと夜は少ない。 昼間は喫茶店として営業している。客は一日に2、3人がいいところ。コーヒーは客単価が安いので私の労働時間(ほとんど待機時間だが)を時給に直すと200円ぐらいにしかならない。それでも昼間から音を流していると(外へも別のスピーカーで流れている)通りがかりの人が店の存在に気付き、夜の来店に繋がることが多いので広報宣伝活動を主な目的として営業している。 たまに5人、ときには10人ということがあり、そんな日の夜は客が少ない傾向がある。昼間5人目が来ると夜の心配をする。これは対処の仕様がない。いつものようにただじっと待つだけだ。 「エバンスにするか」その夜もまだ客は来ていなかった。 それまで好きで聴いていたバド・パウエルをビル・エバンスに代えた。 ドアが開き、新聞屋の桑原さんが入ってきた。桑原さんには以前『ワルツ・フォー・デヴィ』のジンクスの話をした。桑原さんもケニー・バレルの『ミッドナイト・ブルー』を聴くと必ずなにか悪いことがあるそうだ。 「やっぱり、誰もいないね」 「え、なんでそう思ったんですか」 「『ワルツ・フォー・デヴィ』がかかってるからさ」 そして今夜は珍しく客が沢山入っている。店内には「『ワルツ・フォー・デヴィ』が流れている。そこへ桑原さんが来た。 「あれ、マスターどうしたの、いっぱいじゃない」 「『ワルツ・フォー・デヴィ』でこれだけ入って来たんですよ」 「うそ!」 そう嘘です。『ワルツ・フォー・デヴィ』はリクエストされたのです。 (了)

#No. 37(掲載号)
#山本 博一
2013/09/26

《速報解説》 「租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて」の一部改正(9/17公表)~複数のNISA口座が開設された場合の取扱い~

《速報解説》 「租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて」の一部改正(9/17公表) ~複数のNISA口座が開設された場合の取扱い~   弁護士 木村 浩之   1 はじめに 平成25年9月17日付けで、国税庁ホームページにおいて、「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』の一部改正について(法令解釈通達)」が公表された。 平成25年度税制改正において、投資促進税制の一環として少額投資非課税制度(NISA)が新設され、平成26年1月1日から施行されることになっているが、その適用に当たっては、金融機関等を通じた非課税適用の申請が必要とされている。 今回の通達改正は、その申請手続が平成25年10月1日から開始されることに伴い、NISAの適用に関する具体的な取扱いが定められたものである。   2 問題の所在 NISAは、最大500万円の上場株式や株式投資信託等への非課税投資を可能とする制度であるが、その適用関係を明確にするために、同時に1つの金融機関等でしかNISA口座を開設することができないものとされている。 ところが、NISA口座の開設について依頼を受けた金融機関等においては、他の金融機関等でNISA口座が開設されているかどうかを正確に把握できるとは限らず、事実上複数の金融機関等においてNISA口座が開設され、税務署に対して非課税適用の申請がなされることがあり得る。 そこで、今回の通達改正では、そのような場合の取扱いが定められている。   3 通達による定め (1) 複数の申請がなされた場合の取扱い 複数の金融機関等から非課税適用の申請がなされた場合は、税務署を基準に、税務署が申請を受け付けた日がもっとも早い申請を有効なものとして取り扱うことになる(措通37の14-19)。 なお、この受付日は、電子申請がなされる場合には、その受信日、記録用媒体の提出による申請がなされる場合には、その収受日が基準となる。 (2) 複数のNISA口座が開設された場合の取扱い 複数の金融機関等においてNISA口座が開設されてしまった場合は、上記(1)のとおり、税務署の受付日がもっとも早い非課税適用の申請が有効なものになるので、それより遅い申請に係るNISA口座は非課税規定の適用を受けられないことになる(措通37の14-21)。 さらに、申請の受付日が同日である場合は、実際にNISA口座内で上場株式等を取得したのが早い日のものが非課税規定の適用を受けられ、それも同日である場合は、配当や譲渡によって口座内に異動が生じたのが早い日のものが非課税規定の適用を受けられることになる。   4 関係様式の定め なお、以上にあわせて、NISA適用に関する書類の様式が定められた「『法人課税関係の申請、届出等の様式の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」も公表されているので、参考にされたい。  (了)

#No. 36(掲載号)
#木村 浩之
2013/09/24
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