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《顧問先にも教えたくなる!》資産づくりの基礎知識 【第6回】「従業員がiDeCoに加入! 会社が対応すべきこと」

《顧問先にも教えたくなる!》 資産づくりの基礎知識 【第6回】 「従業員がiDeCoに加入! 会社が対応すべきこと」   株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役 一般社団法人公的保険アドバイザー協会 理事 日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー(CFP®) 山中 伸枝   〇従業員のiDeCo加入 年々加入者が増加している「iDeCo(個人型確定拠出年金)」ですが、従業員が始める際には、会社から証明書を発行する必要があります。また、社内にiDeCoの加入者が1人でもいると、会社は年に1回届けを出す必要があります。必要に応じて、掛金の天引き処理を行うこともあり、私的年金とはいえ従業員のiDeCo加入に際しては、会社として対応しなければならないことが複数あります。 iDeCoが普及してきたとはいえ、まだまだ上記のような手続きが必要であることを知らない会社も少なくありません。筆者は、「会社に必要書類を持っていったけれども、対応してくれなくてiDeCoに加入できず困っている」というような相談を受けることもあります。このような手続きを会社が行うことは「努力義務」として国に定められていますので、今回はトラブルにならないように会社が行うべき手続きについて解説します。   〇そもそもiDeCoとは iDeCoとは、自分でつくる年金として国が整備した個人年金制度です。加入は任意で、希望する人はそれぞれが金融機関で手続きを行います。掛金は全額所得控除、運用益非課税、受取り時も特別な控除の対象となるなど税金面でのメリットが大きく、将来への備えとして加入者も増えています。 iDeCoの掛金は、公的年金制度に紐付いているため、被保険者区分等により上限額が異なります。第1号被保険者は月68,000円、第3号被保険者は月23,000円が掛金の上限です。ただし第2号被保険者については、勤め先の企業年金制度等によって上限額が異なります。そのため第2号被保険者だけは、加入の際に掛金上限額を確認するための証明書を会社が発行しなければならないのです。   〇iDeCo加入時の必要書類 以下の書類は「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」という名称で、iDeCo加入の手続きの際に、従業員が金融機関から受け取ります。会社は、この書類の「事業主」欄の事項を確認したうえで記入します。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (出典) iDeCo公式サイト 会社が記入する項目❹~❾について、詳しく見ていきましょう。 「事業主」欄の項目❹には事業主情報として事業所名、住所、電話番号、代表者名などを記入します。ここはスタンプで問題ありません。 項目❺には企業年金制度等の加入状況を記載します。この時は別添のフローチャートを見ながら該当する番号を記入します。フローチャートでは、事業所に企業型確定拠出年金制度があるか、あるとしたらマッチング拠出を選択しているか、事業主掛金が年単位拠出になっているかの確認があります。とはいえ、企業型確定拠出年金を導入している企業であれば、従業員がiDeCoの書類を持ってきて戸惑うということはないでしょうから、ここはないものとして説明を進めます。 同時にこのフローチャートでは、企業型確定拠出年金制度以外の企業年金についても質問があります。例えば厚生年金基金に加入しているか、確定給付企業年金(DB)に加入しているかです。もし加入している場合、その従業員のiDeCoの掛金上限額は月12,000円となります。 企業年金制度は何もないという会社は、「00」の「他に企業年金制度なし(厚生年金にのみ加入)」を選択します。その場合、従業員のiDeCo掛金上限額は月23,000円になります。退職金制度や中退共に加入している場合はどうしたらよいのかと聞かれることもありますが、それらは企業年金ではないので、やはり「00」を選びます。 項目❻は、申出者の所属が別の厚生年金適用事業所の場合に記入します。具体的にそういうケースがあるのか想像できませんが、通常ここは空欄で問題ないでしょう。 項目❼は連合会への事業所登録の有無を聞いています。もし従業員がその会社で始めてのiDeCo加入者であれば、ここは「いずれの登録もない」になります。この書類が提出されることで国に対し「事業所登録」が行われ、国民年金基金連合会からその会社の登録番号が発行されます。その後については、郵送されてきた登録事業所番号を記載します。 ここで戸惑うのが「事業主払込」と「個人払込」とは何かという点です。事業主払込は、従業員のiDeCo掛金を会社が給与天引きで預かり、会社の口座からその掛金が国民年金基金連合会により引き落とされるシステムです。こちらを選択すると、給与天引きと同時に、給与において源泉する際に掛金分を差し引いて計算する必要が出てきます。 「個人払込」は、従業員自らの口座から掛金が引き落とされるシステムです。この場合、従業員がiDeCoの所得控除に関するはがきを提出しますので、年末調整にて手続きを行います。これは生命保険料控除の要領と同じです。 よって、会社としての管理および手間を考えると、「個人払込」の方が面倒でない選択肢となります。従業員にとっては、どちらを選んでも税金のメリットは同じですから、ここは会社が選択して構いません。 項目❽で、なぜ「個人払込」にするのかが問われますが、ここは「❷申出者が希望しているため、「個人払込」とする」を選んでもらって問題ありません。仮に「❸申出者は「事業主払込」を希望しているが、「個人払込」とする」を選んだ場合は、「事業主払込」が困難な理由として、「①「事業主払込」を行う体制が整っていないため」を選んでいただければ結構です。特にペナルティーはありません。 項目❾には、退職金制度がある、中退共に加入している等の情報を記載します。ここについては会社が控えていると思いますので、問題はないでしょう。   〇証明書提出後の対応 証明書提出後は、年に1回、国民年金基金連合会から「現況届」という手続きが求められます。これはオンラインで行われますが、基本的には企業年金加入の状況に変化がないかといった確認です。またiDeCoに加入している従業員が在籍しているかどうかの確認もあります。 このような手続きは、あらかじめ心づもりがあれば問題なく進められると思いますので、参考にしていただけましたら幸いです。 (了)

#No. 540(掲載号)
#山中 伸枝
2023/10/19

《編集部レポート》 第49回日税連公開研究討論会が名古屋で開催される

《編集部レポート》 第49回日税連公開研究討論会が名古屋で開催される Profession Journal 編集部   2023年10月13日(金)、日本税理士会連合会(太田直樹会長)は、第49回日税連公開研究討論会を名古屋で開催した。 本年も昨年に続き、会場での開催と同時にライブ配信も行うことで、遠方からも視聴可能なハイブリッド形式となった。 公開研究討論会は、税理士による研究成果の発表、討論の過程を通じて、税制・税務行政及び税理士業務の改善・進歩並びに税理士の資質の向上を図るとともに、本会が行う研修事業に資することを目的として実施する、との理念の下、毎年開催されているもの。 今回は、東海税理士会が担当した第1部「ライフイベントと税」では離婚に伴う財産分与に譲渡所得税が課される点や、いわゆる“負動産”をめぐる諸問題についてドラマやサブステージを使った演劇を交えつつ発表が行われた。また、名古屋税理士会による第2部「改正民法等が招いた税理士実務への影響について」では「遺留分制度をめぐる法務と税務の論点」「配偶者居住権をめぐる法務と税務の論点」について討論形式で発表が行われた後、同会と友好協定を締結しているドイツ・ミュンヘン税理士会との意見交換の様子を披露した。 研究発表後は伊川正樹名城大学法学部教授、田中治大阪府立大学名誉教授より、それぞれ講評がなされた。 当日は全国から税理士が集い、研究発表の成果へ熱心に耳を傾け、来賓として大村秀章愛知県知事が来場、祝辞を述べられたほか、ドイツ連邦税理士会会長・ミュンヘン税理士会会長のProf.Dr.ハルトムート・シュワーブ氏による挨拶も行われた。 (東海会の発表の様子) (名古屋会の発表の様子) (了)

#No. 540(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2023/10/19

《速報解説》 国税庁、取引相場のない株式等の評価明細書に係る改正通達を公表~端数処理の取扱いにつき意見公募を受け改正案から一部変更~

《速報解説》 国税庁、取引相場のない株式等の評価明細書に係る改正通達を公表 ~端数処理の取扱いにつき意見公募を受け改正案から一部変更~   税理士 柴田 健次   令和5年8月1日、「相続税及び贈与税における取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等について」の一部改正(案)が公表され、意見公募(パブリックコメント)が行われました。そして意見公募の結果を踏まえ、令和5年9月28日付で(ホームページ掲載日は令和5年10月6日)法令解釈通達が公表されました。   1 改正の概要 取引相場のない株式(出資)の評価明細書の記載方法等について、表示単位未満の金額に係る端数処理の取扱いが改正されます。例えば、類似業種比準価額の計算における1株当たりの資本金等の額が0円となる場合には、現状においては類似業種比準価額が0円となり、株式価額が適切に反映されないため、端数処理の見直しが行われることになりました。   2 改正の時期 令和6年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価に適用されます。   3 意見公募の改正案から変更された評価明細書の記載方法等 意見公募(パブリックコメント)の結果、寄せられた意見には下記のものがあり、この点について評価明細書の記載方法等が変更されました。 上記の結果として、各明細書に記載されていた端数処理の取扱いは、評価明細書の記載方法等の1頁目のまた書き及び(注1)に集約がなされ、小数点未満の端数処理については、同頁の(注2)において課税時期基準と直前期末基準の区分を設けて、内容が整理されました。少数点の端数処理に関する記載ぶりについては、意見公募時の改正案では、「株式数の桁数に1を加えた数に相当する数の位以下の端数を切り捨て」とされていましたが、意見公募の結果、「株式数の桁数に相当する数の位未満の端数を切り捨て」に変更されました。 また、自己株式がある場合には、その自己株式数を控除した株式数の桁数を基に端数処理が行われることになりました。 なお、評価明細書の記載方法等の変更ではありませんが、意見公募の結果を受けて、通達前文中の「合名会社等」は「持分会社」に変更されました。 【「取引相場のない株式(出資の評価明細書)の記載方法等」の1頁目一部抜粋】   4 改正前の端数処理で計算した場合 例えば、下記の前提事項及び第4表、第5表の記載がある場合において、乙の相続により丙が株式を相続した場合には、第3表において原則的評価方式による価額が0円、配当還元方式による価額も0円となり、株式の価額が0円となるため、丙が取得した株式評価は0円となります。 ◆前提事項 〔第4表〕 〔第5表〕 〔第3表(一部抜粋)〕   5 改正の内容 (1) 計算結果により0円となった場合に分数又は課税時期における発行済株式数の桁数で端数を処理(課税時期基準) 第5表における1株当たりの純資産価額や1株当たりの純資産価額の80%相当額の算定、第3表における中会社又は小会社の1株当たりの価額の算定等において、計算結果により0円となった場合には、分数表示をするか、評価会社の課税時期における発行済株式数(第1表の1①の株式数(評価会社が課税時期において自己株式を有する場合には、その自己株式の数を控除したもの))の桁数に相当する数の位未満の端数を切り捨てたものを記載します。 第5表の⑪欄、⑫欄の金額及び第3表の⑥欄の金額については、下記のいずれかで記載をすることになります。なお、分数表示に決まりはありませんので、約数で表示しても問題はありません。 (※1) 課税時期の発行済株式数は35,000,000株であるため、8桁未満の端数を切り捨て (※2) 分数表示 28,150,000/35,000,000 × 8/10 = 225,200,000/350,000,000 小数点表示 0.80428571 × 8/10 = 0.64342856 (※3) 分数表示 426/1,750(第4表の㉖(下記(2)参照))× 0.5 + 225,200,000/350,000,000 × 0.5 = 426/3,500 + 225,200,000/700,000,000 = 310,400,000/700,000,000 小数点表示 0.24342856(第4表の㉖(下記(2)参照))× 0.5 + 0.64342856 × 0.5 = 0.44342856 (2) 計算結果により0円となった場合に分数又は直前期末における発行済株式数の桁数で端数を処理(直前期末基準) 第4表における類似業種比準価額の計算をする場合における1株当たりの資本金等の額の算定や1株当たりの比準価額の算定、第3表における配当還元価額の計算をする場合における1株当たりの資本金等の額の算定や配当還元価額の算定等において、計算結果により0円となった場合には、分数表示をするか、評価会社の直前期末における発行済株式数(第4表の②の株式数(評価会社が直前期末において自己株式を有する場合には、その自己株式の数を控除したもの))の桁数に相当する数の位未満の端数を切り捨てたものを記載します。 第4表の④欄、第4表の㉖欄の金額、第3表の⑬欄の金額及び第3表の⑲欄の金額については、下記のいずれかで記載をすることになります。なお、分数表示に決まりはありませんので、約数で表示しても問題はありません。 (※1) 直前期末の発行済株式数は35,000,000株であるため、8桁未満の端数を切り捨て (※2) 分数表示 14.2 × 30,000,000/35,000,000 × 1/50 = 426,000,000/1,750,000,000 = 426/1,750 小数点表示 14.2 × 0.85714285/50 = 0.24342856 (※3) 分数表示 2.5/0.1 × 30,000,000/35,000,000 × 1/50 = 750,000,000/1,750,000,000 = 75/175 小数点表示 2.5/0.1 × 0.85714285/50 = 0.42857142 上記により原則的評価方式による価額は310,400,000/700,000,000(0.44342856)円(第3表の⑥)となり、配当還元価額方式による価額は75/175(0.42857142)円となり、丙が取得した株式の評価金額は、2,142,857円(5,000,000株×75/175(0.42857142)円)となります。   6 別表ごとの改正の端数処理 今回の改正で端数処理に影響がある部分を評価明細書ごとに表示すると、下記の通りとなります。課税時期基準と直前期末基準で、使い分けがされていますので、課税時期と直前期末において発行済株式数(自己株式を有する場合には、その自己株式の数を控除したもの)が異なる時には注意が必要となります。 〔第3表〕 〔第4表〕 〔第5表〕 〔第6表〕 〔第7表〕 〔第8表〕 (了)

#柴田 健次
2023/10/19

《速報解説》 監査役協会、グループ監査における監査役の役割と責務に係る研究報告を公表~各社の実務の在り方やベストプラクティス、子会社不祥事事例などを分析し取りまとめ~

《速報解説》 監査役協会、グループ監査における監査役の役割と責務に係る研究報告を公表 ~各社の実務の在り方やベストプラクティス、子会社不祥事事例などを分析し取りまとめ~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年8月1日付で(ホームページ掲載日は2023年10月16日)、日本監査役協会関西支部 監査役スタッフ研究会は、「グループ監査における親会社監査役会の役割と責務」を公表した。 これは、グループガバナンスの視点から、グループ監査における監査役の役割と責務について研究活動を行い、取りまとめたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 グループガバナンス グループガバナンスとは、企業グループ全体の価値を最大化することを目指した仕組みであり、会社法及び金融商品取引法等の法律上の規制対応という側面もある一方で、企業価値最大化のための企業統制という株主から寄せられる期待に応える側面も持っているとのことである。 2 子会社の管理体制 親会社の執行部門による子会社の管理や支援、コンプライアンスやリスク管理の体制、また、監査役によるこれらの状況の把握について、インタビューを実施し、各社の取組について記載している。 「グループ経営理念」、「グループビジョン」などの策定や、「グループ経営管理規程」等の制定などについて記載している。 また、監査役による、子会社管理部門や内部監査部門へのヒアリングなども記載している。 3 海外子会社の管理体制 親会社が直接的に海外子会社を管理する本社一括の管理方法と、海外の各地域に地域統括会社を設立する管理方法について記載している。 4 親会社監査役の連携 親会社における子会社監査役の配置基準について調査を行った結果、明確な基準を定めて運用している会社は少数であるとのことである。 子会社監査役とのコミュニケーションの機会と回数、その他の情報収集の方法等について調査を行った結果、面談やミーティング等による定例の会議体を設けて実施している事例が多く見られたとのことである。 回数については年1回が多数であったが、中には年4回実施している会社もあった。 また、監査役は事業部門のマネジメント層との定期面談をはじめ、社内の重要会議(経営会議、コンプライアンス委員会、サステナビリティ委員会等)に積極的に参加し、社内の審議プロセスやリスク認識等、執行側が実施した運用結果や内部通報で得た情報を社外監査役と共有していることがわかったとのことである。 5 子会社監査役から見た親会社監査役との連携 グループ全体のモニタリングや、子会社監査役から月例報告を受け、その際の意見交換の実施、重要なリスク事案の親会社監査役への報告などについて記載している。 6 グループ企業(子会社)における不祥事の事例分析 不祥事事例について具体的に紹介し、共通する課題や今後参考にすべき教訓について検討している。 7 グループ監査の監査体制強化に向けた研究会としての意見 グループガバナンスの重要性を説くとともに、子会社の管理体制やグループ全体のリスク管理体制などについて、会社として取り組む課題と監査役として押さえておきたいポイントに分けて記載している。 (了)

#阿部 光成
2023/10/17

《速報解説》 会計士協会が「監査事務所における品質管理に関するツール」の改正案を公表~品質管理システムの評価に当たっての手順や文書等を検討し、様式を追加~

《速報解説》 会計士協会が「監査事務所における品質管理に関するツール」の改正案を公表 ~品質管理システムの評価に当たっての手順や文書等を検討し、様式を追加~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年10月16日、日本公認会計士協会は、「品質管理基準報告書第1号実務ガイダンス第4号「監査事務所における品質管理に関するツール(実務ガイダンス)」」の改正(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、品質管理システムの評価に当たっての具体的な手順や文書等について検討したものである。 意見募集期間は2023年11月16日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 公認会計士法上の大規模監査法人以外の監査事務所の利用を想定して作成して いる。 実務ガイダンスで提供している様式例は次のとおりである。 主な改正内容は次のとおりである。 (了)

#阿部 光成
2023/10/16

プロフェッションジャーナル No.539が公開されました!~今週のお薦め記事~

2023年10月12日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.539を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2023/10/12

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第124回】「消費税法判例解析講座(その1)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第124回】 「消費税法判例解析講座(その1)」   中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦   はじめに 令和5年10月から消費税法においてインボイス制度がスタートした。同制度を巡っては、喧々諤々の賛否両論が展開されているが、国民の中には誤解に基づくと思われる議論を展開しているように見受けられるものもある。また、租税専門家の中の議論においても、間接税というものが、担税者と納税義務者を分かちえていることの本質論を無視したような議論や、税制改革法を念頭に置いていないような議論も散見されるのである。 この新たな制度が我が国として経験のないものであることからすれば、導入に当たっての混乱や誤解も無理のない話であるように思われるものの、他方で、今こそ、国民の租税、なかんずく消費税法についての理解が広がるべきであるとも思われる。そもそも、揮発油税や酒税などの間接税についての理解もままならない中にあって、消費税の法的性質を論じるに遅すぎるということはないであろう。 そこで、本連載において、消費税法に特化した議論を展開することとした。差し当たりは、重要と思われる消費税法上の裁判例等の解析を通じて、同法の本質に迫るような議論を展開したいと考えている。 かかる新たな連載の第1回目として、最高裁平成16年12月16日第一小法廷判決(民集58巻9号245頁)を取り上げることから始めてみよう。   1 消費税法30条7項の「保存」の意義(上) (1) 事案の概要 本件は、白色申告者のX(原告・控訴人・上告人)が、昭和63年分から平成2年分の所得税について確定申告をし、平成2年1月1日から同年12月31日までの消費税について確定申告をしなかったところ、税務署長Y(被告・被控訴人・被上告人)が、本件各係争年分について、Xの売上金額をもとに同業者比率により推計してその事業所得金額を算出し、Xに対し、所得税更正処分および過少申告加算税賦課決定処分、消費税決定処分および無申告加算税賦課決定処分(以下、併せて消費税決定処分等という。)をしたことに対し、Xが、消費税決定処分等は、Xが仕入税額控除に係る帳簿等を保存しているのに仕入税額控除を認めなかった違法があるなどとして、本件消費税決定処分等の取消しを求めた事案である。 (2) 争点 税務調査において帳簿および請求書等を提示しなかった場合に、消費税法30条《仕入れに係る消費税額の控除》7項により仕入税額控除の適用が否定されるか。 (3) 判決の要旨 最高裁平成16年12月16日第一小法廷判決は次のように判示した。なお、判示における「法58条」とは、帳簿の備付けと保存義務を定める消費税法58条を指している(後述)。 (4) 解説 イ 消費税法58条 本件最高裁は、「事業者が、国内において行った課税仕入れに関し、法30条8項1号所定の事項が記載されている帳簿を保存している場合又は同条9項1号所定の書類で同号所定の事項が記載されている請求書等を保存している場合において、税務職員がそのいずれかを検査することにより課税仕入れの事実を調査することが可能であるときに限り、同条1項を適用することができることを明らかにするものであると解される。」としている。ここでは、消費税法は帳簿又は請求書等が検査の対象となり得ることを前提としているのであるから、「課税仕入れの事実を調査することが可能であるときに限り」仕入税額控除を適用することができると論じている。 なるほど、消費税法58条《帳簿の備付け等》は、「事業者・・・又は特例輸入者は、政令で定めるところにより、帳簿を備え付けてこれにその行った資産の譲渡等又は課税仕入れ若しくは課税貨物・・・の保税地域からの引取りに関する事項を記録し、かつ、当該帳簿を保存しなければならない。」と規定しており、帳簿の備付け、記録、保存を義務付けているが、このような規定は、所得課税法においても同様であると思われる。 消費税法58条のみを根拠として、帳簿又は請求書等の提示がなければ調査することが可能であるとはいえないから、同法30条1項に規定する仕入税額控除の適用がないということになるのであろうか。 もっとも、所得税法における必要経費の規定や法人税法における損金の規定は、課税標準の規定であることからすれば、税額控除の規定と単純に比較することはできないが、最高裁はその点、すなわち課税標準の後の計算であるからより厳格な要件が課されるなどという説示は展開していないのである。最高裁は単に、消費税法58条の規定のみを根拠として、「課税仕入れの事実を調査することが可能であるときに限り」仕入税額控除を適用し得るとしているのである。 ロ 税制改革法10条 税制改革法10条《消費税の創設》2項がある中にあって、課税の累積を排除する前段階控除方式が機能しない事態について特段の配慮を見せていない最高裁は、同法をどのようなものと捉えているのか必ずしも判然としない。すなわち、同条項は、「消費税は、事業者による商品の販売、役務の提供等の各段階において課税し、経済に対する中立性を確保するため、課税の累積を排除する方式によるものとし、その税率は、100分の3とする。この場合において、その仕組みについては、我が国における取引慣行及び納税者の事務負担に極力配慮したものとする。〔下線筆者〕」と規定し、「課税の累積を排除する方式」によるもの、すなわち前段階控除方式を採用したものが我が国の消費税であると明定しているのである。 かかる条項は、単なるプログラム的な規定として宣誓的意味合い以上のものを有していないと理解すべきなのであろうか。なるほど、消費税法本法を確認したところで、前段階控除方式であることや、課税の累積を排除するものであることなどという規定は存在しないのである。 消費税の性質論において、消費税法には例えば所得税法183条《源泉徴収義務》のような規定はないのであるから、預り金としての意味は全くないとか、さらに、納税義務者は事業者であって消費者ではないから、消費税が転嫁を前提とするものであるとの議論は成立し得ないなどという意見が散見されるが、税制改革法を無視したかのような議論に正当性はあるのであろうか。ここでは、税制改革法の示す内容が果たして、実定法の解釈論において如何なる意味を有するのかという点に関心が寄せられよう。 (続く)

#No. 539(掲載号)
#酒井 克彦
2023/10/12

谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第19回】「国税通則法42条(41条~45条)」-42条の「異質さ」と租税債権の本質-

谷口教授と学ぶ 国税通則法の構造と手続 【第19回】 「国税通則法42条(41条~45条)」 -42条の「異質さ」と租税債権の本質-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   国税通則法42条(債権者代位権及び詐害行為取消権)   1 国税の納付及び徴収に関する「雑則」の中の債権者代位権及び詐害行為取消権 国税通則法第3章は「国税の納付及び徴収」について規定し、同章では第1節が「国税の納付」について、第2節が「国税の徴収」について、第3節が「雑則」についてそれぞれ規定している。 これらのうち「雑則」は、まさに雑多な事項に関する規定の集合体であるが、「第3節においては、国税の徴収の所轄庁その他前2節の手続に直接関連して必要な事項を規定している。」(武田昌輔監修『DHCコンメンタール国税通則法』(第一法規・加除式)1841頁。志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)431頁も同旨)と述べられていることからすると、「雑則」のうち国税通則法43条(国税の徴収の所轄庁)、44条(更生手続等が開始した場合の徴収の所轄庁の特例)及び45条(税関長又は国税局長が徴収する場合の読替規定)こそが、本来的な意味での「雑則」であるように思われる。 そうすると、国税通則法41条(第三者の納付及びその代位)及び42条(債権者代位権及び詐害行為取消権)は、「雑則」の中でも「異質な」規定であるように思われる。もっとも、「41条の規定は、いわば国税の納付およびその効果に関する規定であるから、この章の『国税の納付及び徴収』という章題名のもとにおける雑則規定として設けておくよりも、むしろこの章第1節の『国税の納付』という節題名のもとにおいて規定しておいた方がよかつたのではないかと思われる。」(中川一郎=清永敬次編『コンメンタール国税通則法』(税法研究所・加除式[1989年追録第5号加除済])F331頁[吉良実執筆])という正当な指摘によれば、41条の「異質さ」は、規定位置による形式的なものに過ぎないように思われる。これに対して、 42条の「異質さ」については、租税債権の本質にまで立ち返って検討する必要があるように思われるので、以下で項を改めてこの点について検討することにする。   2 国税通則法42条の「異質さ」 国税通則法42条は債権者代位権及び詐害行為取消権に関する民法の規定(423条以下、424条以下)を国税の徴収に関して準用する旨を規定しているが、そもそもこれらの権利は債権の対外的効力として債権債務の当事者以外の第三者に対して主張することが認められるものである。この点については、「債権は相対権であるとはいえ、法的にその地位を保障された権利であるから、その権利内容が実現できるように、また、その権利の内容が危殆化されないように、第三者の行為(作為・不作為)に対して一定の介入をすることが認められるのである。」(潮見佳男『新債権総論Ⅰ』(信山社・2017年)633頁)と説明されるが、その説明は、両権利を「債権の効力を第三者に拡張する(債権の対外的効力)という視点から」(同635頁)ではなく「もっぱら責任財産保全の制度として捉える立場」(同頁。下線筆者)から説かれる、「債務者の一般財産(責任財産)が債権の引当てになっていることを基礎に据え、債権内容の実現が危殆化されたときに債務者の一般財産(責任財産)を保全して、これに続く強制執行に備えるために債権者に認められた権利が債権者代位権と詐害行為取消権であるとする」(同頁。下線筆者)考え方に基づくものである。 他方、税法の分野では、債権者代位権及び詐害行為取消権を定める民法の規定の準用について、一般に、次のような解説がされている(①中川=清永編・前掲書F393-F394頁[吉良執筆]、②志場ほか共編・前掲書528頁。下線筆者。武田監修・前掲書2191頁も同旨)。 このように、納付すべき税額の確定した国税に係る租税債権について、私債権と同様に、当該債権の引当てとなる債務者の一般財産(責任財産)に対する保全制度を設けることは、債権の性質及び効力の観点からも、租税債権保全ないし租税徴収確保という徴税政策の観点からも、合理的かつ妥当であると考えられる。ただ、それらの観点から、直ちに、債権者代位権及び詐害行為取消権に関する民法の規定の準用が要請されることになるかどうかは、検討しておくべき問題であるように思われる。すなわち、とりわけ徴税政策の観点からは、繰上請求制度等(前回参照)、担保の提供制度、第二次納税義務制度など他の租税債権保全・租税徴収確保措置も考えられ、実際に現行税法上も定められている以上、敢えて民法の規定を準用する意味を問い直しておくべきであるように思われるのである。 債権者代理権及び詐害行為取消権と上記のような他の租税債権保全・租税徴収確保措置との間には、適用要件の違いがあるのは当然のこととして、両者の決定的な違いは、前者が訴訟手続による実現(行政に自力執行権を付与しないこと)を前提とするのに対して、後者が行政手続による実現(行政に自力執行権を付与すること)を前提とする点にある(詐害行為取消権と第二次納税義務制度とりわけ税徴39条との関係については、品川芳宣『国税通則法講義-国税手続・争訟の法理と実務問題を解説-』(日本租税研究協会・2015年)124-126頁参照)。その意味でも、国税通則法42条は、同法第3章第3節の「雑則」の中では勿論のこと、同章(「国税の納付及び徴収」)の中でも、更にいえば、基本的には租税行政手続法としての同法それ自体の中でも、「異質な」規定であるとみてよかろう。 国税通則法42条のこのような「異質さ」は、このように、債権保全のための手続として私債権と同じく訴訟手続によること(行政に自力執行権を付与しないこと)に起因するが、より根本的には租税債権の本質にその淵源があると考えられる。この点について、次の3で検討することにする。   3 租税債権の本質 そもそも、租税債権は、その究極的根拠が国家の課税権にあり、課税権の発現形態の1つである(谷口教授と学ぶ「税法基本判例」第1回Ⅱ2参照)。ここにこそ租税債権の本質を見出すことができるが、これを論ずる前に、国家の課税権について筆者の考え方(憲法30条=29条「4項」論。拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【24】参照)を以下のとおり述べておくことにする。 筆者は国家の課税権ないしこれに基づく租税の存在意義を憲法29条の財産権保障との関係で論じてきた。すなわち、憲法は、国家の存在を前提にして、その体制として社会主義体制ではなく、自由主義体制を選択した上で、財産権を基本的人権の1つとして保障している。そのため、国家の資金調達として国家の財産所有及びこれを基礎とする営利経済による資金調達を予定することは、原理的にはできない。そうすると、国家体制の選択の段階で既に、租税による国家資金の調達が、憲法上予定されていることになる。 したがって、国家によって保障される私有財産制には、租税による財産権侵害が、その中核的内容として予め組み込まれている(内在している)、と考えられるのである。この点に関して、憲法における財産権保障規定(29条)と納税の義務規定(30条)との位置関係は、多分に歴史的偶然の所産とはいえ、暗示的である。後者はいわば憲法29条「4項」の如く位置づけられるべきであろう(憲法30条=29条「4項」論)。 このような考え方によれば、租税債権という意味での課税権は、国家が自身でも所有し得る財産について私人による所有を認める場合(私有財産制の保障)、その財産のいわば「代替物」としての租税という名の「国有財産」であるとみることができよう。そうすると、租税債権は、国家の課税権の発現形態の1つという意味では、「債権」とは称しながらも、むしろ物権的性格を有する権利とみるべきであろう。 租税債権に対するこのような見方によれば、債権者代位権及び詐害行為取消権は、むしろ物権的請求権として性格づけるべきであろう。租税債権に係る詐害行為取消権について納税義務の成立を適用要件として要求しない次の大阪高判平成2年9月27日訟月37巻10号1769頁のような考え方(佐賀地判昭和32年12月5日訟月4巻2号163頁、横浜地裁小田原支部判平成7年9月26日訟月42巻11号2566頁、通基通第42条関係6、中川=清永編・前掲書F429頁[吉良執筆]、志場ほか共編・前掲書534頁、武田監修・前掲書2198-2199頁、品川・前掲書122-124頁等参照。なお、反対説として中川一郎編『税法学体系〔全訂増補〕』(ぎょうせい・1977年)203頁[竹下重人執筆]、金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)1036頁等参照)は、詐害行為取消権を物権的妨害予防請求権とみていると解することもできよう(これに対して、民法424条3項参照)。 上記の考え方は、「租税債権の成立過程の特殊性」(中川=清永編・前掲書F429頁[吉良執筆]。武田監修・前掲書2198頁も同旨)を考慮したもののようであるが、しかしながら、その意味するところが「租税債権にあつては、それが税法の規定により一定時点において客観的に成立するものであり、また債務者を選択する自由がないところ」(税制調査会『国税通則法の制定に関する答申の説明(答申別冊)』(昭和36年7月)61頁)にあるとしても、そのような考慮によって民法の規定の「準用」を正当化することには租税法律主義に照らし疑義があるように思われる。 もし仮にそのような考慮が、前述のように租税債権の本質にまで立ち返って詐害行為取消権を捉える私見のような考え方に基づくものであるとしても、そのような権利は租税行政手続法としての国税通則法の規律事項の範囲を超えるものであることからすると、そのような権利を国税通則法で定めることは、国税通則法42条の「異質さ」の一言では片付けられない問題であり、国税通則法の「体系的構造」(第1回3参照)からしてもその想定を超えるものである。 以上の検討からすると、国税通則法が債権者代位権及び詐害行為取消権を租税債権保全・租税徴収確保措置として規定するのであれば、現行の42条のように民法の規定の準用によるのではなく、それらの適用要件を個別的かつ明確に定めるべきであると考えるところである。 (了)

#No. 539(掲載号)
#谷口 勢津夫
2023/10/12

〔疑問点を紐解く〕インボイス制度Q&A 【第31回】「いわゆる「消費者向け電気通信利用役務の提供」のインボイス制度における取扱いの変更点」

〔疑問点を紐解く〕 インボイス制度Q&A 【第31回】 「いわゆる「消費者向け電気通信利用役務の提供」の インボイス制度における取扱いの変更点」   税理士 石川 幸恵   【Q】 国外事業者にレンタルサーバー代(※)を支払っています。この国外事業者は登録国外事業者でしたので、レンタルサーバー代につき令和5年9月まで仕入税額控除を受けてきました。令和5年10月以降、インボイス制度下での注意点を教えてください。 (※) レンタルサーバーの運営者は、ホームページ等のデータの置き場所とホームページ等を閲覧させるための仕組みを提供しています。 〔ポイント〕 登録国外事業者制度は廃止され、インボイス制度に移行します。 電気通信利用役務の提供のうち、事業者向け電気通信利用役務の提供以外のもの(以下「消費者向け電気通信利用役務の提供」といいます)は、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについての80%控除の経過措置の適用がありません。 *  *  * 【A】 登録国外事業者制度はインボイス制度に移行されます。したがって、適格請求書発行事業者である国外事業者から交付を受けた適格請求書の保存と帳簿の記載により、仕入税額控除が可能です。 (1) 「消費者向け電気通信利用役務の提供」の復習 消費者向け電気通信利用役務の提供については、平成27年10月から次のような取扱いとなっています。 ① レンタルサーバー代は「消費者向け電気通信利用役務の提供」に該当 「電気通信利用役務の提供」とは、インターネットを介して電子書籍や音楽を配信するサービスなどのことをいいます(消法2①八の三)。レンタルサーバーのサービスも「顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス」に該当することから、「電気通信利用役務の提供」に該当します。 レンタルサーバーのサービスは事業者・消費者ともに同じように利用できますので、事業者向けには当たらず、「消費者向け電気通信利用役務の提供」に当たると考えられます(消法2①八の四)。 ② 内外判定は国内取引 電気通信利用役務の提供の内外判定はサービスの受け手の本店所在地に拠ります(消法4③三)ので、国外の事業者に支払うレンタルサーバー代は国内取引です。 ③ 登録国外事業者かどうかの確認 区分記載請求書等保存方式においては、国税庁長官の登録を受けた登録国外事業者から受ける消費者向け電気通信利用役務の提供については、その仕入税額控除を行うことができるとされていました。 国税庁長官の登録を受けた登録国外事業者かどうかは登録国外事業者名簿で確認することができました。 (2) インボイス制度における消費者向け電気通信利用役務の提供の取扱い ① 登録国外事業者制度はインボイス制度に移行 登録国外事業者制度は廃止され、令和5年9月1日時点で登録国外事業者である国外事業者は適格請求書発行事業者に自動的に移行します。 ② 登録国外事業者の登録番号と適格請求書発行事業者の登録番号は異なる 登録国外事業者の登録番号は5桁でしたが、適格請求書発行事業者の登録番号は国内事業者と同様にT+13桁の法人番号になります。このため、インボイス制度開始後は国外事業者から交付された請求書に適格請求書発行事業者の登録番号(T+13桁)が記載されているかを確認してください。消費税率や消費税額等の記載の確認ももちろん必要です。 ただし、令和6年3月31日までは経過措置として5桁の国外登録事業者の登録番号を使用してもよいとされています。請求書に5桁の国外登録事業者の登録番号が記載されていた場合は、登録国外事業者名簿にて正しく登録されている事業者かどうかを検索してください。 ③ 80%控除の経過措置の適用がないことに注意 適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れについては、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの3年間は仕入税額相当額の80%を仕入税額とみなして控除できる経過措置があります(その後の3年間は50%)。適格請求書発行事業者でない国外事業者から受けた「消費者向け電気通信利用役務の提供」についてはこの経過措置が適用されず、全額控除不可となります(平成30年改正消令附則24)。   (了)

#No. 539(掲載号)
#石川 幸恵
2023/10/12

〈徹底分析〉租税回避事案の最新傾向 【第13回】「総則6項」

〈徹底分析〉 租税回避事案の最新傾向 【第13回】 「総則6項」   公認会計士 佐藤 信祐     15 判例分析(総則6項) (1) 最三小判令和4年4月19日(判タ1499号65頁) 令和4年4月19日に、原処分庁が、相続税の課税価格に算入される不動産の価額を財産評価基本通達に定める方法により評価するのではなく、異なる評価方法により評価した事件に対する最高裁判決が下された。 本事件は、借入れをしたうえで、賃貸用マンションを購入することで、相続税評価額を引き下げるという手法が用いられており、それほど珍しい手法であるという印象は受けなかったが、最高裁判所は、納税者を敗訴させ、国側の主張を認める判決を下した。 最高裁判所は、「租税法上の一般原則としての平等原則は、租税法の適用に関し、同様の状況にあるものは同様に取り扱われることを要求するものと解される。そして、評価通達は相続財産の価額の評価の一般的な方法を定めたものであり、課税庁がこれに従って画一的に評価を行っていることは公知の事実であるから、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、たとえ当該価額が客観的な交換価値としての時価を上回らないとしても、合理的な理由がない限り、上記の平等原則に違反するものとして違法というべきである。もっとも、上記に述べたところに照らせば、相続税の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するものではないと解するのが相当である。」としたうえで、「被相続人及び上告人らは、本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて本件購入・借入れを企画して実行したというのであるから、租税負担の軽減をも意図してこれを行ったものといえる。そうすると、本件各不動産の価額について評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであるから、上記事情があるものということができる。」と判示した。なお、厳密には、本事件は、財産評価基本通達6項(以下、「総則6項」という。)の適用が争われた事件ではないのかもしれないが、実質的には変わらないことから、ここでは総則6項が争われた事件であるものとして解説を行うこととする。 上記の判決に対して、山本拓「判解」ジュリスト1581号95頁(令和5年)では、「同様のかい離は類似の不動産にも広く存在し得る以上、これを相続する潜在的な他の納税者と同じく通達評価額によったとしても租税負担の均衡が害されることはなく、むしろ、当該納税者についてのみ通達評価額を上回る価額によることは不合理というべきであろう(このようなかい離は、本来、評価通達の見直し等によって解消されるべきものといえる)。」としていることから、最高裁判所としても、国側の主張を認めながらも、一定の歯止めはかけたものと解される。その結果として、マンションの評価方法を定めた個別通達(居住用の区分所有財産の評価について)に係るパブリックコメントが公表されていることから、年内には当該個別通達が確定すると思われる(注)。そうなると、今後の不動産の評価に対する総則6項の適用可能性が問題になるが、本個別通達は、現在の不動産を用いた節税対策にすべて対応できているとはいえないことから、今後も総則6項が適用される余地があると考えられる。 (注) 本稿校了後に個別通達が公表されたが、本稿の内容に影響を与えるものではない。 さらに、山本前掲95頁では、「一定の行為がされた結果、通達評価額によると客観的に租税負担が著しく軽減されることを前提に、当該行為が租税負担の軽減をも意図して行われたものであることを指摘するものであり、主観的な意図のみによって合理的な理由を認める趣旨ではない(意図の強さが軽減の程度を補完するものでもない)と思われる。」としていることから、税負担減少の意図がそれほど重視されていない。そして、同96頁で「明確なスキームの企画・実行といったことまで必須とするものではなく、かつ、他の意図・目的とも併存し得ることを前提としていると考えられる。」としていることから、事業目的や経済合理性が十分に認められたとしても、総則6項が適用される余地が残されており、これは、法人税法132条に規定する同族会社等の行為又は計算の否認及び同法132条の2に規定する包括的租税回避防止規定との大きな違いであると考えられる。この点については、「なお、ここで問題となっているのは、時価に係る事実の(平等な)認定であり、いわゆる租税回避行為の否認ではない(括弧内省略)。本判決が、上記の判断に当たり、否認の根拠規定の有無や本件購入・借入れの経済合理性等を全く問題としていないのは、そのためであると考えられる。」としていることからも明らかである。 一例として、取引相場のない株式の評価について争われた名古屋国税不服審判所令和4年3月25日裁決TAINSコード:F0-3-858でも、遺留分対策のために行った取引であると納税者が主張したものの、遺留分対策であったとしても、相続が近い将来発生することを見越して行われたものであることを理由に、総則6項が適用されている。そのため、税負担減少以外の目的が主目的であったとしても、総則6項が適用される余地があるということになる。 こうなってくると、納税者の行為により相続税が著しく減少する行為については、税負担が減少することを知りながら行ったのであれば、たとえ税負担減少以外の目的が主目的であったとしても、総則6項が適用される可能性があるということになる。 そうなると、税理士の立場としても、なかなか相続税対策を提案することが難しくなってくるため、相続コンサルがやりにくくなってくるという問題がある。それだけであれば、税理士事務所の経営の問題に過ぎないことから、国税庁として配慮する必要はないと思われるが、税負担減少以外の目的が主目的である取引を行った結果として、相続税の負担が減少したことに対して総則6項が適用されかねないということになると、納税者の立場が極めて不安定になるという問題がある。そのため、今後、財産評価基本通達の改正又は追加的な個別通達の公表が行われることが期待される。 (2) 名古屋国税不服審判所令和4年3月25日裁決(TAINSコード:F0-3-858) 本事件は、取引相場のない株式に係る評価に対して総則6項が適用された事件である。本事件では、相続開始前に株式の異動を行ったことにより、相続税評価額が著しく下がっているだけでなく、株式の異動の中には、7,300百万円を借り入れたうえでの株式の購入も含まれていることから、不動産と取引相場のない株式という違いはあるものの、最三小判令和4年4月19日に類似した事件であるともいえる。 ただし、納税者の主張によると、相続開始前に行われた株式の異動は、遺留分対策が主目的であり、かつ、法人税又は所得税の問題が生じないように時価純資産価額で売買しているとのことである。すなわち、納税者らが行った行為に不自然さや不合理さはない。しかし、総則6項は租税回避の否認ではないことから、納税者の行った行為により相続税評価額が著しく引き下げられたのであれば、総則6項が適用される余地がある。 本事件では、「相続発生を見越して本件借入れ及び本件取得に相当するような行為を行わなかった納税者との間での実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであるといえるから、他の合理的な評価方法により、本件相続株式の適正な時価を評価すべき特別の事情があると認められる」としたうえで、DCF法、類似会社比準法及び修正簿価純資産法を折衷することで評価がなされている。すなわち、他の納税者が相続税評価額を算定する際に全く採用していない評価方法により評価を行うという点で、他の納税者との間に公平性があるかどうかが疑わしい。 本事件では、評価会社の子会社株式に対して類似業種比準方式を適用することにより、当該子会社が保有する現金預金や純資産価額が相続税評価額に反映されなかったことが問題視されている。しかしながら、類似業種比準方式を採用すると、評価会社又は子会社が保有する現金預金や純資産価額が相続税評価額に反映されない結果、相続税評価額が著しく安くなるという効果を利用した相続税対策は、多くの場面において行われており、それほど特殊な手法というわけではない。 さらに、株式を異動させるという行為だけでなく、評価会社又は子会社に特別損失を発生させることで年利益金額を引き下げ、一時的に相続税評価額を引き下げるという相続税対策についても、上記のロジックを適用すると総則6項が適用される余地があるということになる。そうなると、株価対策といわれている相続税評価額を引き下げるための対策のほとんどに対して総則6項が適用される余地があるということになり、納税者にとっても、事業承継対策がやりにくくなるという問題が生じる。 今後、どのような判例が公表されるのかが、現時点で明らかではないものの、相続税の軽減を目的とした行為に対しては、総則6項が適用されることがあり得るという整理になる可能性が高く、税理士としても株価対策を提案しにくくなるという問題が生じる。 この点については、特例事業承継税制の恒久化により対応することが望ましいという考え方もあり得るが、いわゆる富裕層優遇という批判を免れ得ないことから、そのハードルは高いと思われる。もちろん、事業承継の円滑化が必要であることまでは否定されていないことから、今後の動向を見守る必要がある。 (了)

#No. 539(掲載号)
#佐藤 信祐
2023/10/12
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