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《速報解説》 東証、有価証券上場規程等の一部を改正~スタートアップの新規上場手段多様化を図る観点から、IPOに関する上場制度等を見直し~

《速報解説》 東証、有価証券上場規程等の一部を改正 ~スタートアップの新規上場手段多様化を図る観点から、IPOに関する上場制度等を見直し~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年3月10日、東京証券取引所は、「IPOに関する上場制度等の見直しに係る有価証券上場規程等の一部改正について」を公表した。 東京証券取引所は、2022年12月16日から、上記の見直しに関する要綱を公表し、意見募集を行っていた。パブリック・コメントの結果についても公表されている。 これは、2022年8月24日の「IPO等に関する見直しの方針について」において公表済みの内容を具体化したものであり、スタートアップにおける新規上場手段の多様化を図る観点から、新規上場プロセスの円滑化やダイレクトリスティングの環境整備など、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画・フォローアップ」(2022年6月7日閣議決定)等に掲げられた事項も含めて、所要の上場制度等の見直しを行うものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 新規上場プロセスの円滑化 1 新規上場申請書類 2 形式要件 3 上場審査 新規上場申請者は、定時株主総会の到来(決算の確定)にかかわらず、新規上場申請日から1年の間は、改めて新規上場申請を行わず上場審査を継続できる。 4 初値形成 直接上場銘柄の上場日の売買において成行売呼値及び成行買呼値を禁止する。   Ⅲ ダイレクトリスティングの導入 ダイレクトリスティング(上場する際に、新株の発行を行わないで、既存の株式だけを上場する方法)について、グロース市場への新規上場申請者は、新規上場時において時価総額が250億円以上となることが見込まれる場合には、新規上場に際して公募の実施を求めない。   Ⅳ 純資産の額に関する上場維持基準の見直し グロース市場上場会社が、事業年度の末日において純資産の額が正でない状態となった場合においても、時価総額が100億円以上である場合(当該状態となった理由が中長期的な企業価値向上に向けた投資活動に起因して生じた損失によると当取引所が認めた場合に限る)であって、基準の適合に向けた計画を適切に開示しているときには、当該計画の計画期間に基づき改善期間を設定するものとする。   Ⅴ 実施時期等 原則として、2023年3月13日から施行する。 「新規上場日の売買における成行呼値の禁止(呼値に関する規則の一部改正)」については、2023年6月26日以後に新規上場を行う銘柄から適用する。 詳細な規定が設けられているので、実際の実施に際しては注意する。 (了)

#阿部 光成
2023/03/16

プロフェッションジャーナル No.511が公開されました!~今週のお薦め記事~

2023年3月16日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.511を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2023/03/16

日本の企業税制 【第113回】「パーシャルスピンオフに係る課税繰延べ制度の創設」

日本の企業税制 【第113回】 「パーシャルスピンオフに係る課税繰延べ制度の創設」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   令和5年度税制改正に係る法案審議は、2月末に衆議院を通過したところである。今回の改正の1つに、社内ベンチャーの独立化等を念頭に、スピンオフ税制の特例措置が、1年限定という形ではあるが、盛り込まれている。 従前、スピンオフに係る課税繰延べ措置(適格分割型分割・適格株式分配)は、平成29年度税制改正において創設され、その母体から完全に分離独立する場合に限り認められていたところであるが、今回の特例措置は、完全分離ではなくとも、相当程度母体からの独立性が担保されている場合(パーシャルスピンオフ)にも、課税の繰延べを認めることとしている(措法68の2の2)。独立初期段階において母体の信用力、ブランド等を活用することで、早期のテイクオフを促す効果が期待される。   〇事業再編計画の認定が前提 今回の措置は、従前の適格株式分配の対象に、産業競争力強化法の認定を受けた事業再編計画に基づく完全子法人株式のみの現物分配(「認定株式分配」)で一定の要件を満たすものを追加するものである。 したがってパーシャルスピンオフの課税の特例を適用するには、税法上の要件に加えて、産業競争力強化法上の事業再編計画の認定要件をクリアする必要がある。従前の完全スピンオフの場合には、税制上は産業競争力強化法の認定は不要(会社法上の特例を受けるのであれば認定が必要)であるのと異なる点である。 事業再編計画の認定を受ける期間は、「令和5年4月1日から令和6年3月31日までの間」とされている。この期間内に認定を受ければ、パーシャルスピンオフの実施が期間外であっても今回の措置の適用は可能である。   〇事業再編計画の認定要件 事業再編計画の認定要件の詳細は事業再編の実施に関する指針において規定されるが、すでに、事業再編計画の認定要件に関して、経済産業省から2月10日に事業再編の実施に関する指針の一部を改正する告示案がパブリックコメントに付されていたところである。 今回の告示案によれば、これまでも要件とされていた、計画開始から3年以内に、次のように、一定の生産性の向上及び一定の財務内容の健全性の向上が達成されることが必要である。 さらに、「認定株式分配」となるには、これら2つの認定要件に加えて、次のいずれかの要件をみたすことが求められている。   〇税法上の要件 税法上の要件については、法案レベルでは、株式分配直後に現物分配法人による持分割合が20%未満となることのみが規定されるにとどまり、詳細は政令に委ねられているが、税制改正大綱においては、概要は次のように示されている。 これらの要件は、従前の適格株式分配を規定する法人税法2条12号の15の3及び法人税法施行令4条の3第16項で規定されているものとほぼ同じであるが、②のところが80%ではなく90%とされている点が異なっている。 (了)

#No. 511(掲載号)
#小畑 良晴
2023/03/16

令和5年以後の国外居住親族に係る扶養控除等の適用ポイント 【第1回】「令和5年以後の制度の概要と源泉徴収の際の手続」

令和5年以後の 国外居住親族に係る扶養控除等の適用ポイント 【第1回】 「令和5年以後の制度の概要と源泉徴収の際の手続」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   令和2年度税制改正により、令和5年分の所得税から扶養控除の対象となる国外居住親族の範囲について見直しが行われている。 本連載では今回より3回シリーズで、見直し後の制度の概要及び具体的な手続や提出書類等について、実務的な観点から解説を行う。 【第1回】(本稿)は、見直し後の制度の概要と源泉徴収の際の手続について取り上げる。   【1】 見直し後の制度の概要 令和5年以後は、国外居住親族(※)のうち年齢が30歳以上70歳未満の者については、合計所得金額が48万円以下であったとしても、留学している等の一定の要件を満たしていなければ扶養控除の適用を受けることができない(所法2①三十四の二ロ)。 (※) 国外居住親族とは、親族のうち非居住者である者をいう。非居住者とは、居住者(国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人)以外の個人をいう。 見直しの背景や見直しの詳細については、下記拙稿をご参照いただきたい。   【2】 源泉徴収の際の手続 (1) 扶養控除等申告書の記載 給与所得者(居住者)が扶養控除の適用を受けようとする場合には、その年最初に給与等の支払を受ける日の前日までに、給与等の支払者に対し控除対象扶養親族の氏名等を記載した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下、「扶養控除等申告書」という)を提出しなければならない(所法194①)。 さらに、控除対象扶養親族が国外居住親族である場合には、その旨及び控除対象扶養親族に該当する事実を記載する必要がある(所法194①七)。 〈扶養控除等申告書の記載方法〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (2) 確認書類の提出又は提示 国外居住親族について扶養控除の適用を受けるには、上記(1)の記載をした扶養控除等申告書を提出する際、その親族に係る一定の確認書類を提出又は提示する必要がある(所法194④)。 国外居住親族の年齢又は要件ごとに提出又は提示が必要とされる確認書類は、次のとおりである(所令316の2②③、所規73の2②二、③④)。 〈確認書類一覧〉 (注) 国外居住親族について配偶者控除、配偶者特別控除、障害者控除の適用を受ける際にも、上表と同様の確認書類の提出又は提示が必要である。 *  *  * 次回(第2回)は、各確認書類の詳細について解説を行う予定である。   (了)

#No. 511(掲載号)
#篠藤 敦子
2023/03/16

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第47回】「M&Aを契機とした借地権の返還」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第47回】 「M&Aを契機とした借地権の返還」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 借地権の無償譲渡等に係る課税関係 地主がその所有する土地に借地権を設定した場合、地主はその土地を自由に使用収益できなくなること等から、借地権の設定はその土地に関する権利の部分的な譲渡であると考えられている。このような事情に鑑みて、借地権の設定時及び返還時において、地主と借地権者との間で権利金(返還の場合には立退料)の受渡しが行われる慣行がある地域もある。 借地権の設定時においては、権利金に換えて相当の地代によることも税務上認められており、権利金や相当の地代の受渡しが行われた場合には、その取引は正常な取引条件でなされたものとして法人の課税所得が計算されることとなる(法令137)(※1)。 (※1) なお、法人税法上の借地権は、「地上権又は土地の賃借権」と定義されている(法令137かっこ書き)。 これに対して、借地権を返還する場合において、このような取引慣行があるにもかかわらず、地主から借地権者に対して立退料等の支払いが行われなかった場合には、地主に対して贈与があったものとされるのが税務上の原則的な取扱いである。この場合において、地主が法人の役員を兼ねていた場合には、役員に対する給与とされ、かつ定期同額給与等に該当しないとして税務リスクが生じる可能性を検討する必要がある。 ここで、立退料等の支払いがない場合においても、以下の法人税基本通達13-1-14(1)~(3)に該当する場合には、立退料等の授受がない場合でも例外的に認められる。 上記通達の理由のうち、(3)の下線を付した「その他これに類する理由」の該当性判断が難しいと思われるが、具体的な判断基準は通達中に示されていない。しかし、上記通達の理由(3)の解説として「経済環境の変化等により、従前の借地上の建物をそのまま利用することが経済的に困難となり、仮に他に転用するとすれば、相当の改造、改修その他の資本的支出をしなければならない状況において、このような再投資をしても、更に経営を継続することについて採算の見通しが全く立たないため、やむを得ず借地契約を解消するというような事例とか、従来、従業員宿舎用地等として借地していた状況において、工場移転に伴って従業員宿舎が不要になったので、これを取り壊して土地を返還するというような事例が、ここでいう借地権を存続させることが困難であると認められる事情に当たると考えてよいと思われる」とする解説がある(※2)。 (※2) 高橋正朗編著『法人税基本通達逐条解説 十訂版』(税務研究会出版局、2021)1379-1380頁。 上記解説によれば、借地権を有する法人にとって、土地の上にある建物に経済的・状況的な利用価値がなくなったことを受け、コスト面に鑑みて借地権を返還したような場合には、無償返還が認められる事由に当たると判断してよいと思われる。   (2) 借地権を返還したことに関して課税関係が争われた事例 ここで、借地権の返還において上記通達の理由(3)の適用が争点となった事例として、国税不服審判所平成22年7月9日裁決がある(※3)。以下にその概要を記載する。 (※3) 裁決事例集等未登載、TAINS:F0-2-370。 この事例では、国税不服審判所によって法人税基本通達13-1-14(3)についての趣旨が示されている。それによると、「経済的合理性の面から見て、借地契約の存続が困難であるという場合には、借地権としての交換価値がほとんどなく、当事者間に借地権の価額に相当する贈与も認められず課税関係が生じないとするもので、ある程度弾力的に無償返還を認めるという趣旨であ」ることがその趣旨であるとされている。そして、その適用については、通達の例示中にある「著しく老朽化したこと」に限らず、「経済環境の変化等により、従前の借地上の建物をそのまま利用することが経済的に困難となり、仮に他に転用するとすれば、相当の改造、改修その他の資本的支出をしなければならない状況において、このような再投資をしても、更に営業を継続することについての採算の見通しが全く立たないため、やむを得ず借地契約を解消するというような場合などが当たる」とした。 また、国税不服審判所が認定した事実の中に、経営立て直しのために財産を処分する旨の覚書の取り交わしの日から3日後に、当該役員は納税者の代表取締役の地位を譲り、代表権のない取締役になった上、本件覚書等に役員あるいは株主としての権利を制限する事項が明確に盛り込まれたという点がある。これは事実上、当該役員は納税者の経営方針等に関する決定権限を失ったものと認められるとされた上で、その後になされた合意解除は、納税者において本件建物が従来の使用目的を果たせなくなり、不必要な賃借料の削減というコスト面から、土地所有者である当該役員に申し出て合意されたものとみることが相当であり、土地所有者の都合による解除とはいえない旨が示されている。   (3) M&Aの場面への適用について 上記通達の理由(3)の解説やこのような事例から、通達が例示する建物の老朽化という事情のほか、移転により借地権を維持することに経済合理性がなくなったために地主に返還した場合には、立退料等の支払いがない場合においても認められる余地があると考えられる。 M&A後に本社移転が検討されるのであれば、本社移転を選択したのは買手を含む法人側の経営上の判断であるため、地主である現代表取締役の個人的な都合ではないと捉えられる可能性は高いだろう。もっとも、このようなケースが想定されるのであれば、借地権の設定時において「土地の無償返還に関する届出書」を提出しておくことにも一考の余地がある。また、本社ではなく、工場等を移転させる場合には、ISO認証等のハードルが別途存在することについても留意する必要があるだろう。   (了)

#No. 511(掲載号)
#中尾 隼大
2023/03/16

基礎から身につく組織再編税制 【第50回】「適格現物分配を行った場合の申告調整」

基礎から身につく組織再編税制 【第50回】 「適格現物分配を行った場合の申告調整」   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   今回は、適格現物分配を行った場合の申告調整の具体例について解説します。   1 適格現物分配を行った場合の現物分配法人の処理 (1) 前提条件 (2) 会計処理 現物分配法人B社の会計処理は、次のとおりです。 (3) 税務処理 現物分配法人B社の税務処理は、次のとおりです。 ① 資産の譲渡 現物分配法人が適格現物分配により被現物分配法人にその有する資産を移転したときは、現物分配時の帳簿価額による譲渡をしたものとします(法法62の5③)。 現物分配法人B社は、被現物分配法人A社に土地を帳簿価額で譲渡したものとされ、譲渡損益は生じません。 ② 適格現物分配により減少する利益積立金額 適格現物分配による剰余金の配当等が行われた場合には、現物分配法人において交付資産の帳簿価額に相当する金額の利益積立金額の減少を認識します。 現物分配法人B社において減少する利益積立金額は、適格現物分配の直前の土地の帳簿価額に相当する金額である2,000となります。 ③ 適格現物分配により減少する資本金等の額 適格現物分配が行われた場合には、現物分配法人B社の資本金等の額は減少しません。 ④ 源泉徴収 現物分配法人B社は適格現物分配による配当金の額については、源泉徴収する必要はありません。 (4) 会計処理と税務処理の調整 会計処理と税務処理を比較すると、差異が生じているため、調整する必要があります。 調整仕訳は、次のとおりです。 会計上は、譲渡益が収益に計上されているため、別表4で所得を減算する処理が必要となります。 その他の調整仕訳については、損益項目が含まれないため、別表4での申告調整は行わず、別表5(1)のみで調整することとなります。 (5) 別表4の処理 別表4の処理については、次のとおりです。 (6) 別表5(1)の処理 別表5(1)の処理については、次のとおりです。 (注) ※印は調整仕訳により生じたものであることを表示するために記入しています。 ◆ポイント◆ ① 譲渡益の「減」の欄に記載されている3,000は別表4で減算したものです。 ② 現物分配法人B社において減少する利益積立金額が2,000となっているかを別表5(1)で確認することが重要です。   2 適格現物分配を行った場合の被現物分配法人の処理 (1) 資産の取得 被現物分配法人が適格現物分配により現物分配法人から資産の移転を受けたときは、資産の取得価額は現物分配直前の帳簿価額となります(法法62の5⑥、法令123の6①)。 被現物分配法人A社が適格現物分配により取得した土地の取得価額は、現物分配直前の帳簿価額である2,000となります。 (2) 剰余金の配当等 剰余金の配当等が適格現物分配により行われた場合には、移転を受けた資産の帳簿価額相当額の全額が益金不算入となります(法法62の5④)。 適格現物分配の場合には、受取配当等の益金不算入の規定は適用されず、適格現物分配の益金不算入の規定により全額が益金に算入されません。 適格現物分配があった場合には、被現物分配法人A社において、土地の取得価額相当額である2,000の全額が益金不算入となります。 (3) 会計処理 被現物分配法人A社の会計処理は、次のとおりです。 会計上は、現物分配法人株式の一部を、配当で受け取る財産と引き換えたものとみなして、帳簿価額を減額することがあり、減額する帳簿価額を今回は1,000と仮定します。 (4) 税務処理 被現物分配法人A社の税務処理は、次のとおりです。 (5) 会計処理と税務処理の調整 会計処理と税務処理を比較すると、差異が生じているため、調整する必要があります。 調整仕訳は、次のとおりです。 会計上は、受取配当が過大に計上されているため、別表4で所得を減算する処理が必要となります。 その他の調整仕訳については、別表4で申告調整が必要なものはなく、別表5(1)のみで調整することとなります。 (6) 別表4の処理 別表4の処理については、次のとおりです。 (7) 別表5(1)の処理 別表5(1)の処理については、次のとおりです。 ◆ポイント◆ 被現物分配法人A社において増加する利益積立金額が2,000となっているかを別表5(1)で確認することが重要です。   (了)

#No. 511(掲載号)
#川瀬 裕太
2023/03/16

相続税の実務問答 【第81回】「贈与税の申告書に記載した贈与年月日と相続税の課税価格への加算」

相続税の実務問答 【第81回】 「贈与税の申告書に記載した贈与年月日と相続税の課税価格への加算」   税理士 梶野 研二   [答] あなたが、200万円をお父様から贈与された日が、お父様の相続開始前3年以内ではないのであれば、その200万円の贈与についての贈与税の申告書の記載に関わらず、その金額を相続税の課税価格に加算する必要はありません。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 贈与税の申告 (※) 贈与税の課税方法として相続税法には、暦年課税と相続時精算課税の2つの方法が定められていますが、質問者は、相続時精算課税の選択はしていないとのことですので、暦年課税を前提に説明します。 贈与により財産を取得した者は、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額が贈与税の基礎控除額(110万円)を超える場合には、原則として、その翌年の2月1日から3月15日までの間に、課税価格、贈与税額その他相続税法施行規則に定められた事項を記載した贈与税の申告書を納税地の税務署に提出し、その申告書に記載された贈与税を納付しなければなりません(相法28①、33)。 相続税法施行規則第17条には、贈与税の申告書の記載事項が定められていますが、主な記載事項は次のとおりです。 この記載事項のうち「財産の取得の年月日」の記載は、その贈与を受けた者が無制限納税義務者になるのか制限納税義務者になるのかの判定、適用される法令や通達の判定、その財産の具体的な評価額の計算などのために意味を持ちますが、財産の贈与をした者が亡くなった場合に、その財産の価額を相続税の課税価格に加算する必要があるかどうかの判断において特に重要な意味を有しています。 贈与による財産の取得日は、原則として、書面によるものについてはその契約の効力の発生した時、書面によらないものについてはその履行の時とされています(相基通1の3・1の4共-8)ので、贈与税の申告書には、「贈与による財産の取得日」として、契約の効力発生日又は履行があった日を記載することとなります。   2 被相続人の相続開始前3年以内に被相続人から贈与により取得した財産 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前3年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合は、当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算しなければなりません(相法19)。 なお、「相続の開始前3年以内」とは、その相続の開始の日からさかのぼって3年目の応当日から当該相続の開始の日までの間をいいます(相基通19-2)。 贈与税の申告書が提出されている場合には、一般的には、その申告書の「財産を取得した年月日」欄に記載された日に贈与があったと推定されますから、その日を基に相続税の課税価格への加算が必要かどうかを判定しますが、実際の贈与日が同欄に記載された日とは異なるのであれば、実際に贈与によりその財産を取得した日を基に判定することとなります。   3 ご質問の場合 お父様の相続開始日は、令和4年12月10日ですので、お父様から相続又は遺贈により財産を取得した者が、その3年前の応答日である令和元年12月10日以後にお父様から贈与を受けた財産があれば、その価額を相続税の課税価格に加算しなければなりません。 あなたが、200万円を贈与により取得した日として令和元年分の贈与税の申告書に記載した日は令和元年12月31日ですので、この記載による限り相続税の課税価格への加算が必要となります。しかしながら、あなたがお父様から実際に贈与を受けた日が、12月31日ではなく、10月5日であるならば、お父様の相続開始前3年以内に取得した贈与財産ではありませんので、加算の必要はありません。 あなたの場合には、あなたの銀行口座の入金状況や預金通帳のメモ書き、お父様の銀行口座からの出金状況から、「取得日」は10月5日であることが確認できるとのことですので、そうであるならば、令和元年のお父様からの贈与金額200万円は、相続税の課税価格に加算する必要はありません。 令和5年度税制改正により、暦年課税における相続開始前の贈与の加算期間が、3年から7年に延長されました。贈与後、日数が経過するに従って贈与の日を確認することは難しくなりますので、7年も前の贈与について贈与を受けた日を特定することができないケースも出てくると思われます。贈与税の申告書の作成に当たっては、もしもの時に備えて、正確な取得の日を記載するよう注意する必要があります。 (了)

#No. 511(掲載号)
#梶野 研二
2023/03/16

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第13回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第13回】 「NFTに関する税務上の取扱いに係るFAQ詳解④」   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也     問5 第三者の不正アクセスにより購入したNFTが消失した場合 【雑損控除】 不正アクセスにより、購入したNFTが消失した場合において、そのNFTが生活に通常必要でない資産や事業用資産等に該当せず、かつ、そのNFTの消失が盗難等に該当する場合には、「そのNFTが消失した時点の時価」が雑損控除の対象になるということである(所法72)。 上記の生活に通常必要でない資産とは、次の資産をいう(所令178①)。 デジタルアートに紐付けられたNFTの場合、動産ではないことが明らかであるため、上記②の該当性を検討することになる。営利を目的として継続的にNFTを譲渡していない個人の場合には、デジタルアートに紐付けられたNFTが上記②の主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する資産に該当する可能性は十分残されている。 FAQの解説では、「事業用資産等とは、棚卸資産又は業務の用に供される資産(繰延資産のうち必要経費に算入されていない部分を含みます)及び山林」をいうとしている。 また、「損失の額は、そのNFTが消失した時点の時価」となるが、「時価が分からない場合には、そのNFTの購入金額として差し支えありません。」とされている。 【デジタル資産の盗難と雑損控除】 国税庁は、有体物ではないデジタルのものでも盗難に当たり、雑損控除の適用可能性があることを認めたことになる。 説明を補足すると、NFTの盗難は雑損控除でいう盗難に当たるのかという論点がありうる。 雑損控除でいう盗難は、刑法の窃盗と同一の概念と理解するのが学説や裁判例の傾向であり、そこから、刑法でいう窃盗の対象は有体物に限るという理解を前提に雑損控除でいう盗難も有体物に限るという見解がありえた。 少なくとも、有体物ではないデジタルアートに紐付いたNFTに関する上記FAQにおいては、雑損控除でいう盗難の対象を有体物に限定して考えてはいないということであろう。このような対応は、一般の利用者の感情に適合するものと思われる。 【損失・必要経費】 FAQの解説では、 そのNFTが事業用資産等に該当する場合には、その損失について、事業所得又は雑所得の金額の計算上、「そのNFTの帳簿価額」を必要経費に算入することができるとしている。 ここでは、雑所得に言及しているにもかかわらず、損失の必要経費算入規定である所得税法51条4項の「雑所得の所得の基因となる資産」該当性について触れていないことにどのような意図があるのか、判然としない。 雑損控除と損失による必要経費のいずれか有利な方を選択して適用することが認められるようなケースもあるかもしれないが(所得税基本通達72-1参照)、FAQの記載振りからは判断し難い。   問6 役務提供の対価として取引先が発行するトークンを取得した場合 役務提供の対価に係る所得区分について、FAQの解説では、次のように整理されている。 事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意志と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいい、これに対し、給与所得とは雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいうと解されている(最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決・集民132号619頁)。 上記のような理解と比較すると、FAQの記載は簡単にすぎるように思われる。 もっとも、労務提供に係る所得の所得区分について、契約類型との関係では、実務上、雇用契約であれば給与所得、請負契約であれば事業所得又は雑所得、委任契約であれば給与所得(役員の場合)、事業所得、雑所得のいずれか、という簡易的な基準で判断がなされてきた。 国税庁も「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」において、「大工、左官、とび職等が、建設、据付け、組立てその他これらに類する作業において、業務を遂行し又は役務を提供したことの対価として支払を受けた報酬に係る所得区分は、当該報酬が、請負契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのか、又は、雇用契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのかにより判定する」としている。その上で、その区分が明らかでないときは、種々の事項を総合勘案して判定することとしている。 なお、役務提供の対価の額について、FAQの解説では、「そのトークンの時価」となるが、「そのトークンが暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できないなどの理由により、時価の算定が困難な場合には、契約などによって定められた役務提供の対価の額を、そのトークンの時価と取り扱って差し支えありません」としている。 いわば入ってきたもの(トークン)の時価を直接的に算定することが困難な場合に、出ていったもの(提供された役務)の契約等で定められた対価の額で間接的に算定する方法を提示しているのである。 この部分は、「トークンが暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できない」こと以外の他の理由も含めて、トークンの「時価の算定が困難な場合」に該当するかどうかを判断する必要がある。 また、市場性のある暗号資産と間接的にでも交換できるのであれば、通常は、時価の算定が困難であるとはいえないと指摘されるかもしれない。   (了)

#No. 511(掲載号)
#泉 絢也
2023/03/16

2023年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】

2023年3月期決算における会計処理の留意事項 【第2回】   史彩監査法人 パートナー 公認会計士 西田 友洋   Ⅲ 時価の算定に関する会計基準の適用指針 ASBJより、2019年7月4日に企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準(以下、「時価基準」という)」、企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針(以下、「当初時価適用指針」という)」等が公表された。 この時、投資信託の時価の算定及び貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記について、再度、検討が必要とされた。 そして、検討の結果、2021年6月17日に、改正企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針(以下、「改正時価適用指針」という)」が公表された。ここでは、改正時価適用指針の改正点について解説する。   1 投資信託 投資信託の時価評価は、投資信託財産が金融商品であるか、不動産であるかで取扱いが異なる。投資信託財産が金融商品と不動産の両方を含む場合、投資信託財産が金融商品である投資信託又は投資信託財産が不動産である投資信託のどちらの取扱いを適用するかは、投資信託財産に含まれる主要な資産等によって判断する(改正時価適用指針24-13)。 (1) 投資信託財産が金融商品である場合 ① 市場価格がある場合 投資信託について、市場における取引価格が存在する場合、当該取引価格が時価になる(改正時価適用指針49-2)。 ② 市場価格がない場合 市場価格がない場合、解約又は買戻請求(解約等)に関して重要な制限があるか、ないかで取扱いが異なる。 (ⅰ) 重要な制限がない場合 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合、基準価額(例えば、投資信託委託会社等が公表する価額)を時価とする。ただし、時価基準における時価の定義を満たす、他の算定方法により算定された価格を利用することも可能である(改正時価適用指針24-2)。 (ⅱ) 重要な制限がある場合 (ア) 時価評価 投資信託財産が金融商品である投資信託について、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合、以下のいずれかに該当するときは、基準価額を時価とみなすことができる(改正時価適用指針24-3)。 なお、改正時価適用指針24-3の取扱いを適用しない場合(該当しない場合)には、「基準価額に一定の調整を加えた価格」又は「その他の算定手法に基づいて算定した価格」が時価となる(改正時価適用指針49-3)。 (イ) 注記 改正時価適用指針24-3の取扱い以外の方法により時価を算定している場合、保有する投資信託ごとに時価のレベルを定め、企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針(以下、「時価開示適用指針」という)」5-2に定める事項(金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項)を注記する。 一方、改正時価適用指針24-3の取扱いを適用している場合、時価開示適用指針4に定める事項(金融商品の時価等に関する事項)を他の金融商品と合わせて注記したうえで、当該投資信託の貸借対照表計上額の合計額が重要性に乏しい場合を除き、改正時価適用指針24-3の取扱いを適用した投資信託が含まれている旨を併せて注記する。 また、時価開示適用指針5-2に定める事項(金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項)の注記は不要である。ただし、この場合、他の金融商品における時価開示適用指針5-2(1)の注記(レベルごとの時価の合計額)に併せて、以下の事項を注記する。なお、連結財務諸表において注記している場合は、個別財務諸表における注記は不要である(改正時価適用指針24-7)。 【投資信託財産が金融商品である投資信託の時価】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (2) 投資信託財産が不動産商品である場合 ① 市場価格がある場合 投資信託について、市場における取引価格が存在する場合、当該取引価格が時価になる(改正時価適用指針49-2)。 ② 市場価格がない場合 (ⅰ) 重要な制限がない場合 投資信託について、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合、基準価額を時価とする。ただし、時価基準における時価の定義を満たす、他の算定方法により算定された価格の利用を妨げるものではない(改正時価適用指針24-8)。 (ⅱ) 重要な制限がある場合 (ア) 時価評価 投資信託について、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合、基準価額を時価とみなすことができる。なお、時価の算定日における基準価額がない場合は、入手し得る直近の基準価額を使用する(改正時価適用指針24-9)。 なお、改正時価適用指針24-9の取扱いを適用しない場合には、「基準価額に一定の調整を加えた価格」又は「その他の算定手法に基づいて算定した価格」が時価となる(改正時価適用指針49-12)。 (イ) 注記 改正時価適用指針24-9の取扱い以外の方法により時価を算定している場合、保有する投資信託ごとに時価のレベルを定め、時価開示適用指針5-2に定める事項(金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項)を注記する。 一方、改正時価適用指針24-9の取扱いを適用した投資信託については、時価開示適用指針4に定める事項(金融商品の時価等に関する事項)を他の金融商品と合わせて注記したうえで、当該投資信託の貸借対照表計上額の合計額が重要性に乏しい場合を除き、改正時価適用指針24-9の取扱いを適用した投資信託が含まれている旨を併せて注記する。 また、時価開示適用指針5-2に定める事項(金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項)の注記は不要である。ただし、この場合、他の金融商品における時価開示適用指針5-2(1)の注記に併せて、以下の事項を注記する。なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において注記は不要である(改正時価適用指針24-12)。 【投資信託財産が不動産である投資信託の時価】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   2 貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記 貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資については、時価開示適用指針4(1)に定める事項の注記(貸借対照表価額、時価、その差額の注記)は必要ない。 この場合、他の金融商品における時価開示適用指針4(1)の注記に併せて、以下の事項を注記する。なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表の注記は不要である(改正時価適用指針24-16)。   3 適用時期 適用時期は、以下のとおりである(改正時価適用指針25-2、25-3)。   4 経過措置 (1) 新たな会計方針の適用 改正時価適用指針の適用初年度においては、新たな会計方針を将来にわたって適用する。この場合、その変更の内容について注記する(改正時価適用指針27-2)。 (2) 注記 当初時価適用指針26の経過措置を適用し、時価開示適用指針5-2の注記をしていなかった投資信託については、改正時価適用指針の適用初年度において、連結財務諸表及び個別財務諸表に併せて表示される前連結会計年度及び前事業年度に関する注記(比較情報)は必要ない(改正時価適用指針27-3)。 Ⅳ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い 2021年8月12日にASBJより、実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い(以下「実務報告」という)」が公表された。   1 会計処理及び開示 基本的には、連結納税における税効果と同様の規定が定められている。詳細は、下記の拙稿を参照されたい。   2 適用時期 適用時期は、以下のとおりである(実務報告31、65、66)。 (了)

#No. 511(掲載号)
#西田 友洋
2023/03/16

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第41回】「1つのミスを見つける機会は複数ある」

計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第41回】 「1つのミスを見つける機会は複数ある」   公認会計士 石王丸 周夫   1 悔やまれる基本的ミス 計算書類にはうっかりミスがつきものです。 実際、こんなミスが起きています。 【事例41-1】 自己株式の項目が記載漏れとなっている。 (出所) オリエンタル白石株式会社「第71期定時株主総会招集ご通知」 【事例41-1】は、貸借対照表のミス事例です。純資産の部に自己株式残高があったにもかかわらず、それを記載し忘れたというものです。 この事例の会社は、2022年5月27日に本事例を含む定時株主総会招集ご通知を公表し(招集通知の日付は2022年6月3日)、2022年6月6日付で当該誤記載の訂正を公表しています。 人間の作業なので、この手のミスはよくありますが、こうした基本的ミスが外部公表前に発見できなかったことは悔やまれるところではないでしょうか。実際、本事例の場合は、ミスに気がつく機会は複数ありました。以下、順に見ていきましょう。   2 計算チェックで異常検知 まず、計算チェックです。 あるべき残高が表示されていないので、計算が合わないのは当然です。次の図のとおり、赤枠で囲った項目の合計が株主資本の合計値に合っていません。 (出所) オリエンタル白石株式会社「「第71期定時株主総会招集ご通知」の一部訂正のお知らせ(2022年6月6日)」より抜粋し筆者加筆 できあがった貸借対照表について、計算機を使って手で計算チェックをしていれば、何かがおかしいと気がついたはずです。   3 クロスチェックが複数箇所で可能 次はクロスチェックです。 クロスチェックについては、この連載の【第36回】で説明しました。異なる書類の一致すべき数値等を突合するというチェック方法です。ちなみに【第36回】の説明で使った【事例36-1】も自己株式残高に係るミスでした。 【事例36-1】では、貸借対照表と株主資本等変動計算書をクロスチェックしてミスを発見するというものでしたが、今回も同じです。 【事例41-1】の貸借対照表の純資産の部(科目と金額)を株主資本等変動計算書の当期末残高と突合すればよいのです。そうすると、貸借対照表に自己株式の項目がないことに気がつく可能性が高いです。 また、クロスチェックできる箇所は他にもあります。 それは、個別注記表の注記です。「Ⅵ.株主資本等変動計算書に関する注記」に「当事業年度末における自己株式の種類及び株式数」が注記されています。本事例の会社の個別注記表には、「普通株式6,330,932株」と注記されています。 ここで記載されているのは株式数だけであって、期末残高は載っていません。しかし、株式数があるということは、自己株式残高が何かしらあるということなので、貸借対照表に科目と金額が記載されていなければならないとわかります。本事例の場合は項目自体が抜け落ちていたわけですから、このクロスチェックで異常に気がつくことができます。 自己株式数の開示は他の箇所でも確認できます。計算書類ではありませんが、定時株主総会招集ご通知の添付書類の1つである事業報告です。 本事例の会社の場合、事業報告の「2.会社の株式に関する事項(2022年3月31日現在)」に、期末の自己株式数が記載されています。同様のクロスチェックで、異常に気がつくことができます。 少々しつこいですが、もう1ヶ所だけクロスチェックできる箇所がありますので、解説します。 それは、連結計算書類です。 本事例の会社は連結計算書類を作成しており、そのうちの連結貸借対照表をみると、自己株式残高があることがわかります。すると、【事例41-1】の貸借対照表が訂正される前の段階で、以下のような状態だったことがわかります。 この状態が意味することは、「親会社は自己株式を保有していないが、連結子会社又は持分法適用会社が当該親会社株式を保有している」ということです。自社グループの現況がそれで間違いないかを確認することは、さほど難しいことではないと思います。   〈今回のまとめ〉 計算チェックやクロスチェックを行うことで、1つのミスについて複数ルートで異常を検出できることがあります。 (了)

#No. 511(掲載号)
#石王丸 周夫
2023/03/16
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