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プロフェッションジャーナル No.596が公開されました!~今週のお薦め記事~

2024年11月28日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.596を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2024/11/28

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第44回】「会計的意味における包括的所得概念と法人税法上の包括的所得概念」-未計上資産無償譲渡[相互タクシー]事件・最判昭和41年6月24日民集20巻5号1146頁-

谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第44回】 「会計的意味における包括的所得概念と法人税法上の包括的所得概念」 -未計上資産無償譲渡[相互タクシー]事件・最判昭和41年6月24日民集20巻5号1146頁-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 所得税や法人税は「所得」を課税物件とする租税であり(所税7条、法税5条以下)、所得税及び法人税の課税は「所得課税」と称される。ただ、所得税法や法人税法は、課税物件としての所得(課税所得)の概念を定義することなく、実際の経済生活の中に存在する「所得」という経済的事実を課税物件として取り込んで課税所得を定めていることから、その意味内容を明らかにするには、所得税法や法人税法の個々の規定の解釈だけでなく、それらの全体構造やそれを支える基礎理論としての所得概念論の検討・解明も必要である(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【167】参照)。金子宏教授が「[租税法における]基礎理論的研究の第一歩」(同『所得概念の研究〔所得課税の基礎理論 上巻〕』(有斐閣・1995年)9頁[初出・1966年])として所得概念を研究されたのは、まさにこのような問題意識に基づくものであると考えられる。 「所得税は様々な社会階級の様々な所得源泉を前提とし、したがって資本主義社会を前提とする。」(Karl Marx, Kritik des Gothaer Programms, 1875, IV A.)といわれるように、所得税は、産業革命の母国であり資本主義が世界史上最も早く始まったイギリスで1799年に採用されて以来、資本主義の発展に伴い各国で採用されるようになったが、所得概念論すなわち所得とは何かという議論は、まずは、資本の自律的運動(投資及び再生産の過程における資本の循環)の結果として継続的・反覆的に生み出される経済的利得(例えば賃金、利潤、利子、配当、地代など)を課税所得として観念する学説において、19世紀後半から20世紀初頭にかけて主としてドイツで、展開された。それらの学説は、経済的利得を継続的・反覆的に生み出す源泉に着目して所得概念を構成する点で共通しており、所得源泉説(Quellentheorie)と総称される(前掲拙著【168】参照)。 その後、所得概念論は純資産増加説(Reinvermögenszugangstheorie)の登場によって画期的な展開をみた。純資産増加説は、シャンツ(Georg von Schanz)が1896年に「所得概念と所得税法(Der Einkommensbegriff und die Einkommensteuergesetze)」という論文(Finanz-Archiv 13.Jahrg., 1896, S.1)で、所得源泉の如何を問わず担税力の増加を「所得」として観念して所得源泉説を批判して唱えた考え方である。 シャンツは当時における商人の利益計算を念頭に置いて純資産増加説を構想したが、「主として法人税についてシャンツの純資産増加説が述べられていることへの一層の理解を得る」(清永敬次「シャンツの純資産増加説(一)」税法学85号(1958年)7頁。なお、金子宏教授による所得概念研究は「考察の重点を個人所得の問題におく」(同・前掲書4頁)ものである)という観点からすれば、次の見解(Max Lion, Der Einkommensbegriff nach dem Bilanzsteuerrecht und die Schanzsche Rinkommenstheorie, in: H. Teschenmacher (Hrsg.), Beiträge zur Finanzwissenschaft (Festgabe für Georg von Schanz zum 75. Geburtstag 12. März 1928), Tübingen 1928, 273, 287f. 下記の邦訳については拙著『税法創造論』(清文社・2022年)394-395頁を再掲した)は傾聴すべきものである(清永敬次「シャンツの純資産増加説(二・完)」税法学86号(1958年)15頁、22-23頁も参照)。 この見解によれば、純資産増加説には、資産増加(Vermögenszugang)と資産増価(Vermögenszuwachs)との区別に対応して2つのタイプのものがあることになる。シャンツは前者に着目する純資産増加説を唱えたのに対して、後者に着目する純資産増加説も観念することができるのである。両説の違いは、商人の利益計算の方法(今日でいえば企業会計における利益計算の方法)の違いであり、前説はその利益計算の方法として損益法を採用するものであり、後説は財産法を採用するものである。 このような考察に基づき、筆者は、前説を「損益法型純資産増加説(Reinvermögenszugangstheorie)」と呼び、後説を「財産法型純資産増加説(Reinvermögenszuwachstheorie)」と呼ぶことにしている(前掲拙著『税法創造論』395頁、前掲拙著『税法基本講義』【179】参照。後記Ⅲ2も参照)。 この2つのタイプの純資産増加説はいずれも企業の利益計算の観点から所得概念を包括的に構成するものであるから、両説による所得概念は「会計的意味における包括的所得概念」(前掲拙著『税法基本講義』【179】)と総称することができよう。とはいえ、前記の見解が説くように、損益法的純資産増加説によれば、実現した利益のみが課税されるのに対して、財産法型純資産増加説によれば、未実現の利益(評価益)も課税される点に、両説の決定的な違いがある。 この両説の違いを背景として、法人税法上の包括的所得概念の意義が昭和40年全文改正前法人税法(昭和22年法律第28号。以下「旧法人税法」という)9条1項の「総益金」の解釈をめぐって争われたと解される事件に関する最高裁の判断として、未計上資産無償譲渡[相互タクシー]事件・最判昭和41年6月24日民集20巻5号1146頁(以下「本判決」という)がある。以下では、まず、本判決の判断内容をみておこう。   Ⅱ 本判決の判断内容 本件は、大阪相互タクシー株式会社(原告・控訴人・被上告人)が、昭和22年11月21日から同23年11月20日に至る事業年度において当時の独禁法10条による制約(金融業以外の事業を営む一般事業会社による他社株式取得の禁止)の下で「その所有する増資会社の株式を一時自社の重役に信託的に譲渡し株主名義を重役個人に書き替える方法により、または増資会社から第三者指名権を与えられて自社の重役個人を指名する方法によつて、これら重役等に各社の増資新株の割当を受けさせ、それぞれその新株を取得させた」(本判決による原判決=大阪高判昭和36年11月29日行集12巻11号2288頁の事実認定の要約)ところ、上記方法による自社の各重役への新株引受権(増資会社の株式の所有に基づき享受する経済的利益=新株プレミアム)の無償移転について譲渡益(益金)を認定する更正処分を受けたので、これを争って審査の請求をし所轄国税局長(被告・被控訴人・上告人)から一部取消しの裁決を受けたものの、これを不服として当該裁決の取消しを求めた事案である。 本判決は、原判決が前記事実認定に続けて「このように第三者に新株を割当させることのできた被上告会社の地位そのものは、金銭に見積ることもできる経済的価値ある利益とし、被上告会社の前叙の行為は、同社に帰属した新株の割当に関する利益を各重役に移転したものと見ることができる旨を判示した」ことを確認した上で、「被上告会社は、前叙の行為により重役等個人にそれぞれ増資株式を取得させたうえ、重役等のこれによつて取得した利益を同社に回収することを約さしめることもできたはずであり、また重役その他の第三者に対し相当の対価を徴して、その者のために前叙の行為をすることもできたわけであるから、被上告会社がこのような方法に出ないで、重役等のために前叙の行為をしたことは、増資会社の株式の所有に基づき被上告会社が享受する経済的利益を無償で重役等に授与したことを意味し、この点に関する前叙原判示は正当といわなければならない。」と判示した。 以上の判断を踏まえ、本判決は上記判示に続けて次のとおり判示した(下線・傍点筆者)。   Ⅲ 財産法型純資産増加説に基づく「総益金」の解釈 1 本判決による未計上資産無償譲渡に係る益金認定の法的根拠 この判示について、清永敬次教授は、「最高裁は未計上資産(隠れていた資産価値、価値増加分)が無償で社外に流出する、無償で譲渡される場合にも益金を認識すべきであると判示したのである。このような判断を最高裁が下したのははじめてのことであり、またこの判断は税法上の益金概念に関して極めて重要な意義を有するものである。」(同「判批」シュトイエル57号(1966年)7頁、12-13頁)と評価されつつ、「このような判断がいかなる根拠に基づいて肯定しうるかについて若干考えてみよう。」(同13頁)と述べ、その根拠の「説明」(同頁)として、前記判示のうち次の部分を引用しておられる(同頁)。 その上で、清永教授は次のとおり述べておられる(同頁。下線筆者)。 清永教授が指摘されるように、確かに、本判決は未計上資産の無償譲渡に係る益金の認定について法的根拠を明示してはいないが、ただ、「最高裁の判決を生み出す原動力となつた上告理由は、この未計上資産の計上が必要な理由を法律の規定を根拠にして議論している。」(清永・前掲「判批」13頁)ことも事実である。本件上告理由は、次のとおり述べている(民集20巻5号1151-1152頁。下線筆者)。 本件上告理由は、上記の引用部分の冒頭で旧法人税法9条1項の規定及びその解釈を示しているので、これが未計上資産の無償譲渡に係る益金の認定の法的根拠であることは確かであるが、上記の引用部分に続けて「以上の見地に立脚して、財産の時価の値上がり分その他未だ企業の帳簿に計上されていない経済的利益が社外に流出した場合について、その実現が如何に把握さるべきかの問題を考察するに、それはその社外に流出した時に従来既に発生し存在していた潜在的利益が客観的、かつ確定的となつて顕在化し、企業の収益として実現したと見るべきである。」(民集20巻5号1152頁)と述べており、本判決も前記の判示において基本的にはこの考え方を受け入れたものと解される(清永・前掲「判批」13頁は本件上告理由を「最高裁の判決を生み出す原動力となつた」とみている)ことからすると、「以上の見地」こそが未計上資産の無償譲渡に係る益金の認定の実質的根拠を示すものと解される。 2 旧法人税法上の包括的所得概念と財産法 そこで、次に、本件上告理由にいう「以上の見地」をどのように理解するかが問題になるが、それは、「商法上の会社、特に株式会社の商法上の利益の概念から法人税法上の所得概念を展開しようとする方法論」(忠佐市『租税法要論〔第10版〕』(森山書店・1984年)189頁)の影響を受け、「このような[多少とも財産法の考え方が昭和37年改正まで継続してきた]商法の規定ないし解釈に依拠して、税務行政庁は、資産の評価益は法人の益金を構成するという解釈をとり、判例・学説もそれを支持してきた。」(金子宏『所得課税の法と政策〔所得課税の基礎理論 下巻〕』(有斐閣・1996年)333頁[初出・1983年])ことに鑑みると、財産法の考え方を意味するものであるように思われる(これと異なる理解を示すものと解される見解として村井正「判批」民商法雑誌56巻2号(1967年)279頁、284-285頁参照)。 この点については、次の見解、すなわち、法人税法の昭和40年全文改正後の同法22条の規定について、「法解釈学上の論争をみても、損益法的発想になる法人税法22条の解釈が取り上げられ、同条の解釈通達であるとされている基本通達51(註)および52(註)に言及することが殆ど見当たらなくなっている」(長穰「法人税法における財産法の影響について」税務大学校論叢1号(1968年)83頁、89頁)と述べ、「法人税法では、一般に、法律が、損益法のパターンを示し、通達が、財産法のパターンを示している。」(同89頁)という認識を示した上で、「財産法は、規定の背後に沈潜し、当然の前提となって存在しているから、言語的表明の形式を取っていない。」(同90頁。下線筆者。黒澤清=番場嘉一郎監修・新井清光ほか編『体系制度会計〔第1巻〕基礎理論』(中央経済社・1978年)43頁[黒澤清執筆]も同旨)との観察命題を定立し、その検証を試みる見解が、注目される。 この見解において上記の観察命題の前提となっている上記の認識については、そこでいう「通達」すなわち旧法人税基本通達51及び52の廃止後においても、一見すると同様のもののように思われる認識を示す次の見解(武田隆二「税務会計の基礎(二)」会計113巻5号(1978年)741頁、742-743頁。太字・傍点原文。下線筆者)がある。 ただ、この見解のいう「財産法」は、本件上告理由が言及した税務行政庁の解釈が想定していた財産法(長・前掲論文のいう「財産法」も同じものと解される)とは異なる意味での「財産法」であるように思われる。その理由は、この見解を説く論者が「法人税法上の所得概念」について次のとおり説くところ(武田隆二「税務会計の基礎(三)」会計113巻6号(1978年)913頁、919頁。傍点原文。下線筆者)から、明らかになるように思われる。 ここでは「財産法」という言葉が2とおりの意味で使われているが(なお、その後ニュアンスが違ってきているように思われるが、武田隆二『法人税法精説〔平成15年版〕』(森山書店・2003年)66-68頁参照)、この論者が前記の見解でいう「財産法」は後者の意味での「財産法」すなわち「個別経済内における財貨の流入および流出の全体を観察の基礎におき、両者の期間的総量の差額の確定を内容とする財産法」であるのに対して、本件上告理由が言及した税務行政庁の解釈が想定していた財産法は前者の意味での「財産法」すなわち「期首と期末の純資産の比較を内容とする財産法」である。これこそが「財産増価(Vermögenszuwachs)」を「計算」(発見・決定)する財産法である(筆者が財産法外純資産増加説でいう「財産法」もこれである。なお、筆者は後者の意味での「財産法」を損益法として捉え「期間的純資産増加説」を損益法型純資産増加説と呼んでいる。前記Ⅰ参照)。本件上告理由は、この前者の意味での「財産法」に基づくからこそ、「その所有資産の時価の騰落によつて生じた経済的価値の増減のうち実現したもの」をも総損益金に算入する旨を説いたものと解される。 3 財産法型純資産増加説における「いわゆる実現主義」 以上により、未計上資産の無償譲渡に係る益金認定の法的根拠は旧法人税法9条1項であるが、その実質的根拠は、旧法人税法上の包括的所得概念であり、さらには、これが財産法型純資産増加説に基づく包括的所得概念であると解されることから、結局のところ、前記の「期首と期末の純資産の比較を内容とする財産法」に帰着することになろう。 ただ、「商法は、昭和37年の改正で損益法の考え方に移行するまで、多少とも財産法の考え方をとってきた」(金子・前掲『所得課税の法と政策』333頁)とはいえ、「評価益を計上するかどうかは法人の任意であり、法人の所得計算上も、法人がその決算において評価益を計上した場合にのみそれは益金となると解されてきたこと」(同頁)からすると、前記の「期首と期末の純資産の比較を内容とする財産法」から、直ちに、未計上資産(本件では新株プレミアム)の無償譲渡に係る益金認定を根拠づけることはできないように思われる。 本件上告理由は、その間の論理展開についても、これを媒介する論理を提示しているように思われる。すなわち、本件上告理由は、「収益または損失の実現とは何をいうか、すなわち、如何なる事実または状態を以て収益または損失の実現と見るか」という「重要な問題」について、「それは、一般に承認され正規の簿記の土台になつている近代企業会計の理論に基礎を置き、租税負担の公平等いわゆる租税原則といわれるものを考慮して、それぞれの場合の損益の形態に応じ合目的見地から決定されるべきものである」と述べているが、ここで述べられている「合目的見地」こそが上記の媒介論理であるように思われるのである。 そのような「合目的見地」は、本判決の調査官解説(矢野邦雄「判解」最判解民事篇(昭和41年度)322頁)が「いわゆる実現主義」として次のとおり説く考え方(同328-329頁。下線・傍点筆者)を意味するものと解される。 この調査官解説のいう「いわゆる実現主義」は、「一般に企業の有する資産が企業から分離、、する時期をもって収益の実現、、があったものとして経理する」(傍点筆者)考え方であるが、本件で問題となったような企業所有の増資会社株式についていえば、新株プレミアム(株価の値上がり益=隠れた資産価値=含み益)を所得として把握すること(私見によれば、財産法型純資産増加説に基づく包括的所得概念によること)を前提にして、これが当該株式の所有企業において会社資産のうちに計上されないまま放置、、されることが通常であることを認めつつも、当該株式が有償で譲渡され所有企業の会社資産から分離、、される場合には、その対価の流入をもってその隠れた資産価値が表現、、され認識、、されるのに対して、当該株式が無償で譲渡され所有企業の会社資産から分離、、される場合には、その隠れた資産価値を明確、、にする措置(評価替え)をもってその隠れた資産価値が認識、、される、という考え方であると整理することができよう。 このような整理によれば、「いわゆる実現主義」は、未計上の資産(新株プレミアム)については、会社資産からの「分離」とその「認識」をもって「実現」を観念する考え方であるが、有償譲渡による「分離」の場合は、その隠れた資産価値が対価(の一部)として「表現」されることによって未計上資産の「認識」がもたらされるのに対して、無償譲渡による「分離」の場合は、その隠れた資産価値を「明確」にする措置(評価替え)によって未計上資産の「認識」がもたらされることになるのである。 このように考えてくると、「いわゆる実現主義」は、本件上告理由にいう「一般に承認され正規の簿記の土台になつている近代企業会計の理論」としての財産法による所得計算(私見によれば、財産法型純資産増加説による「総益金」の解釈に基づく所得計算)を前提にして、未計上の資産(新株プレミアム)については、本件上告理由にいう「租税負担の公平等いわゆる租税原則といわれるもの」を考慮して、本件上告理由にいう「合目的見地」から、有償譲渡の場合と無償譲渡の場合とを課税上公平に取り扱う考え方であるといってよかろう。 本判決の前記の判示のうち次の部分(傍点筆者)は、以上のような「いわゆる実現主義」を説示したものと解される。 もっとも、この判示部分では「実現」ではなく「顕現」という言葉が用いられているが、この点については、昭和40年の法人税法全文改正において同法22条1項の「当該事業年度の益金の額から」という部分に関する次のような議論(武田昌輔『法人税回顧六〇年~企業会計との関係を検証する~』(TKC出版・2009年)133-134頁)を考慮して、敢えて「実現」という言葉を用いなかったのかもしれないと推察される(「実現」の観念については金子・前掲『所得課税の法と政策』334-335頁も参照)。   Ⅳ おわりに 最後に、以上の考察をまとめると、本判決は、未計上資産の無償譲渡に係る益金認定の法的根拠を旧法人税法9条1項として、同項の定める「総益金」の概念を、同法が前提とする会計的意味での包括的所得概念(財産法型純資産増加説に基づく包括的所得概念)に依拠し、かつ、「租税負担の公平等いわゆる租税原則といわれるもの」を考慮して、有償譲渡の場合と無償譲渡の場合とを課税上公平に取り扱うという「合目的見地」から、解釈したものと解される。 昭和40年全文改正後の現行法人税法においては、同法22条1項が企業会計の理論ないし会計観の変更を受けて損益法を前提にして課税所得の計算を定め(金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)344頁、前掲拙著『税法基本講義』【378】参照)、同条2項が資産の無償譲渡について収益の擬制を定めた(金子・上掲書346頁、上掲拙著【386】参照)ことから、本判決はその妥当性を失ったものと考えられる(金子・前掲『所得課税の法と政策』331頁以下も参照)。 もっとも、低額譲渡[南西通商]事件・最判平成7年12月19日民集49巻10号3121頁の下記の判旨(下線筆者)について、「判旨第1段落は、昭和40年法人税法改正前の相互タクシー事件に関する最判昭和41年6月24日(民集20巻5号1146頁、・・・・・・)の考え方を受け継いでいる。」(金子宏ほか編著『ケースブック租税法〔第6版〕』(弘文堂・2023年)396頁[増井良啓執筆])との見方があるが、筆者としては、判旨第2段落が、有償譲渡の場合と無償譲渡の場合とを課税上公平に取り扱うという「合目的見地」を、「受け継いでいる」と考えるところである。 (了)

#No. 596(掲載号)
#谷口 勢津夫
2024/11/28

〈令和6年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第3回】「年調減税事務に関する実務Q&A」

〈令和6年分〉 おさえておきたい 年末調整のポイント 【第3回】 (最終回) 「年調減税事務に関する実務Q&A」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   本稿(最終回)は、年調減税事務に関し、実務上判断に迷う事項等をQ&A方式で解説する。 取り上げる事項は以下のとおりである。   - 解 説 - 年調減税事務において減税額を控除する対象となるのは、次の《年末調整で定額減税の対象となる人の要件》のすべてを満たす人である(措法41の3の8①)。 《年末調整で定額減税の対象となる人の要件》 したがって、年末調整の対象となる人のうち、令和6年分の合計所得金額が1,805万円を超える人は、定額減税の対象にはならない。そのような人については、減税額を控除せずに年末調整を行い、給与等に係る源泉徴収税額から控除した減税額を精算する。 なお、合計所得金額が1,805万円を超えるかどうかは、原則として、従業員等から提出を受ける「基礎控除申告書」の記載から判定する。 また、支払う給与等が収入金額ベースで2,000万円を超える人は年末調整の対象とならないため、確定申告で減税額の精算を行うこととなる。 (例)役員A(年末調整の対象者)   - 解 説 - 月次減税事務では、「令和6年6月1日現在在職」、「扶養控除等申告書を受領」、「居住者」の3つの要件をすべて満たす従業員等について、減税額を控除することとされていた。よって、令和6年6月2日以後に就職した従業員等については、月次減税事務において減税額を控除していない。 しかし、年調減税事務では、【Q1】の《年末調整で定額減税の対象となる人の要件》のすべてを満たす場合には減税額を控除する。したがって、令和6年6月2日以後に就職し、月次減税事務では減税額を控除していなかった従業員等であっても、年末調整の対象者であり、令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下であれば、年末調整で定額減税を適用する。   - 解 説 - 令和6年分の合計所得金額が1,805万円を超える人は、定額減税の適用対象外であるが、月次減税事務においては合計所得金額を勘案せずに減税額を控除している。 支払う給与等が収入金額ベースで2,000万円を超える人については、甲欄適用者であっても年末調整を行わないため、月次減税事務において控除した減税額は、納税者本人が確定申告により精算することとなる。給与支払者(会社等)において、減税額を精算する必要はない。 〈具体例〉 (※1) 1社から支払われた甲欄適用の金額   - 解 説 - 「令和6年6月1日現在在職」、「扶養控除等申告書を受領」、「居住者」の3つの要件を満たす従業員等は、月次減税事務において減税の対象者とされ、このとき従業員等が公的年金等の支給を受けているかどうかは勘案されていない。 したがって、給与等と公的年金等の両方の支給を受けている場合には、それぞれの源泉徴収税額から減税額が重複して控除される可能性があるが、この重複分は納税者本人が確定申告を行うことにより精算することとされている。給与支払者(会社等)が、年末調整において重複して控除されている減税額を調整する必要はない。   - 解 説 - 同一生計配偶者について記載された「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の提出を受けている場合でも、その配偶者を年調減税額の計算に含めるには、「配偶者控除等申告書」又は「年末調整に係る定額減税のための申告書」の提出を受ける必要がある。 また、同一生計配偶者について、源泉控除対象配偶者として記載された「扶養控除等申告書」の提出を受けている場合にも、その配偶者を年調減税額の計算に含めるには「配偶者控除等申告書」又は「年末調整に係る定額減税のための申告書」の提出を受ける必要がある。   - 解 説 - 配偶者や親族が同一生計配偶者又は扶養親族に該当するかどうか、また、配偶者や親族が居住者に該当するかどうかは、その年の 12月31日の現況で判定する。なお、年の中途で本人又は配偶者や親族が死亡した場合には、死亡の日の現況で判定する。 ①の子は、年の中途で出国し、令和6年12月31日の現況では非居住者に該当する。したがって、年調減税額の計算には含めない。 ②の子は、12月31日の現況で扶養親族に該当し、③の父は、死亡の日の現況で扶養親族に該当する。したがって、②と③の扶養親族は、いずれも年調減税額の計算に含める。 なお、月次減税額と年調減税額との間に生じた差額は、年末調整において精算することとなる。   - 解 説 - 同じ世帯に納税者が2人以上いる場合、同一の人をそれぞれの納税者の扶養親族として重複して申告しない限り、どの納税者の扶養親族としても差し支えない。誰の扶養親族に該当するかは、「扶養控除等申告書」に記載されたところによる。 子Bは、Aの夫の控除対象扶養親族として申告されているので、Aの控除対象扶養親族には該当しない。 定額減税の計算においても、同じ世帯に納税者が2人以上いる場合には、「扶養控除等申告書」の記載に基づき、いずれかの者の減税額計算の対象とする。1人の扶養親族を、各納税者が重複して減税額の計算の対象とすることはできない。   - 解 説 - 他の人の同一生計配偶者や扶養親族に該当する人は、令和6年分の合計所得金額が48万円以下であるので、源泉徴収税額が発生した月があったとしても年末調整により最終的な源泉徴収税額は0円となる。 年末調整をした従業員等の源泉徴収票の摘要欄には、控除した年調減税額と控除しきれなかった年調減税額を記載することとされているので、この場合にも、摘要欄に「源泉徴収時所得税減税控除済額0円、控除外額30,000円(※3)」と記載する。 (※3) その従業員等の定額減税としてではなく、同一生計配偶者や扶養親族としている親族(居住者)の定額減税の計算において加味される。 *  *  * なお、年調減税事務については、国税庁のホームページに公表されている「令和6年分所得税の定額減税Q&A」もご参照いただきたい。   (※) 本稿では、年末調整で使用する各申告書等を次のとおり表記する。 (連載了)

#No. 596(掲載号)
#篠藤 敦子
2024/11/28

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例140(所得税)】 「土地を家屋とともに譲渡しなければならない旨の説明をしなかったため、結果として居住用財産の譲渡にならず、居住用財産の譲渡の特例が適用できなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例140(所得税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除(措法35) 次の要件を満たした居住用財産の譲渡をしたときは、所有期間の長短にかかわらず譲渡所得から最高3,000万円を控除できる。居住用財産が共有である場合に、この特例の適用を受けることができるかどうかは共有者ごとに判定する。また、家屋は共有ではなく、土地だけ共有としている場合には、家屋の所有者以外の者は原則としてこの特例の適用を受けることはできない。 ◆居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の3の①) その年の1月1日における所有期間が10年超の居住用財産を譲渡した場合に、一定の要件(原則として「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」の適用要件)に該当するときは、他の土地建物に係る譲渡所得と区分し、課税長期譲渡所得金額が6,000万円以下の部分については、通常よりも低い税率(所得税10%、住民税4%)で所得税等を計算することができる。 ◆居住用財産の譲渡の特例の適用関係 「3,000万円の特別控除の特例」は、所有期間の長短に関係なくその適用を受けることができるが、「軽減税率の特例」は長期保有資産に限り適用を受けることができる。したがって、所有期間10年超で、居住期間10年以上の居住用財産の譲渡については、「3,000万円の特別控除の特例」と「軽減税率の特例」を重複適用することができる。       (了)

#No. 596(掲載号)
#齋藤 和助
2024/11/28

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第43回】「同族会社の薬局建物の敷地部分につき「土地の無償返還に関する届出書」の対応範囲ではないことから、相続税評価額は自用地評価の80%ではなく、借地権相当額を控除した価額が認められた事例」

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第43回】 「同族会社の薬局建物の敷地部分につき「土地の無償返還に関する届出書」の対応範囲ではないことから、相続税評価額は自用地評価の80%ではなく、借地権相当額を控除した価額が認められた事例」   税理士 菅野 真美   ▷借地権の評価 同族会社のオーナーが土地を有し、その上の建物を同族会社が所有し利用している場合のオーナーの土地の相続税評価額の算定方法は、実務上悩ましい問題である。このような場合、同族会社が当初、権利金を支払ったり、相当の地代を支払っているケースは少なく、通常の地代程度を支払っているケースが多いのではないだろうか。しかし、通常の地代を支払ったとしても、本来支払うべき権利金を支払わなかった場合は権利金の認定課税が潜在的に存在する(法基通13-1-3)。 このような場合の解決策の1つとして「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出するという方法がある。この届出書を提出した場合は、権利金の認定課税は行われないものの(法基通13-1-7)、相続発生時の底地の評価額は自用地の80%評価額となる(「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和60年6月5日付直資2-58ほか1課共同、以下「相当地代通達」という)8)。 しかし、多様な事例の中には、土地の無償返還に関する届出の有無等で簡単に処理できないものもある。今回は、土地の無償返還に関する届出書の対象とされていた土地について、無償返還の届出の対応範囲ではなく、借地権相当額を控除した価額で評価すべきかどうかについて争われた事例を検討する。   ▷どのような事例か 医療法人の理事長の相続が平成26年4月に生じた。相続人は配偶者と子らである。 理事長が有する土地の上に、配偶者等が100%株式を有する法人(以下「同族会社」という)が昭和55年8月に木造の建物を建築し、調剤薬局の店舗として利用していた。 当初、同族会社は理事長に地代を支払わず、権利金の授受も行われていなかったが、平成21年9月以降地代を支払うようになった。 平成6年4月に医療法人が設立され、平成6年1月15日付で理事長らと医療法人との間で病院建物の敷地等について不動産の賃貸借契約が締結(医療法人設立認可日に発効)された。この契約の範囲内に薬局の敷地も含まれていた。 平成11年8月9日、理事長らと医療法人は、医療法人は将来各土地を無償返還するという合意書を取り交わし、平成12年11月21日に「土地の無償返還に関する届出書」を所轄税務署に届け出た。この無償返還となる土地の対象に上記薬局建物の敷地が含まれていた。しかし、図面には薬局敷地及び薬局建物は表示されていなかった。 平成26年4月に医療法人の理事長の相続が発生し、相続人である配偶者らは相続税の申告をしたが、医療法人に貸している土地について借地権割合50%を控除して評価していた。 そこで、処分庁はこれらの土地について自用地の100分の80に相当する金額で評価することになるとして、平成30年2月1日に更正処分を行った。配偶者らはこの処分を不服として、再調査の請求をしたところ棄却されたため審査請求したのが本事例である。   ▷争点は 本事例における争点は、病院建物の敷地部分と薬局建物の敷地部分について、相当地代通達8(「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合の貸宅地の評価)の適用があるかどうかであるが、本稿においては薬局敷地に絞って検討する。   ▷配偶者らの主張は   ▷処分庁の主張は   ▷審判所の判断は 国税不服審判所は次のように述べて、薬局敷地については貸宅地評価を認めた。 *   *   * このように薬局敷地については貸宅地評価が認められた。ちなみに、病院敷地は貸宅地評価が認められず、自用地の評価額の80%相当額と判示された。 この裁決においては、当初賃料を支払わなかった期間も含めて長期間にわたって同族会社所有の建物を利用していたことから、借地権の控除額を評価している。 しかし、もし、昭和55年から相続の開始のあった平成26年4月までの全期間にわたって賃料を支払わず(使用貸借として)敷地を利用し、土地の無償返還に関する届出書を提出しなかったならばどのように評価しただろうか。使用貸借だから利用者の権利の価額がないと考えて自用地評価となるのだろうか。それとも本裁決と同様に貸宅地評価を認めるのだろうか。 この裁決の論理から考えると貸宅地評価とも読み取れる。しかし、使用貸借でも土地の無償返還に関する届出書を提出した場合は自用地評価(法基通13-1-7)とされるが、提出しない場合は借地権があるものとして貸宅地評価が認められるということは、使用貸借や賃貸借の取引の本質を考えると疑問がある。 (了)

#No. 596(掲載号)
#菅野 真美
2024/11/28

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第56回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第56回】   東洋大学法学部准教授 泉 絢也   エ 外国信託が投信法上の投資信託に類するものといえるかどうかは種々の事情を総合勘案すべきという見解 逐一の引用は省略するが、外国において外国の法令に基づいて設定された信託が投信法上の投資信託に類するものといえるかどうかの判断基準については、種々の事情を総合勘案すべきであるという見解も珍しくない。 本信託は主として特定資産に対する投資として運用することを目的とする信託ではない点を除けば、委託者指図型投資信託に類似するとし、金融庁が、前述のような総合勘案を経て本信託を投信法上の外国投資信託に該当すると判断する可能性もあるのであろうか。 他方、委託者指図型投資信託契約は、一の金融商品取引業者を委託者とし、一の信託会社等(信託会社又は信託業務を営む金融機関)を受託者とするのでなければ、これを締結してはならないとしていることから、本信託における委託者や信託会社等の捉え方次第では、同契約に類似していないという評価がありうるかもしれない。 委託者非指図型投資信託契約についても、一の信託会社等(信託会社又は信託業務を営む金融機関)を受託者とするのでなければこれを締結してはならないため、信託会社等について同様であるし、同契約については各投資家が委託者兼受益者となることが想定されている(森・濱田松本法律事務所編『投資信託・投資法人の法務』24頁(商事法務、2016)参照)。 そうであれば、本信託は委託者非指図型投資信託に類するものではないという評価もありうる。 いずれにしても、この辺りの議論を観察してみると、投信法における外国投資信託に係る解釈や判断が、租税法上の外国投資信託に関する解釈や判断に大きな影響を与えていることがわかる。 これは、租税法上の外国投資信託の定義規定は、外国投資信託の定義を定めた投信法の条文をそのまま引用しているため、その意味内容について租税法固有の解釈論を展開する余地がないことに起因する。結局、投信法の解釈に依存せざるをえない状況になっているのである。 上記のように、「投資信託に類するもの」であるかを判断する際の決定的な判断要素は何であるかという点について投信法領域で議論が固まっていないという不安定な状態が、租税法領域において(ともすれば無限定に)引き継がれるという構図になっている。 このような不安定さが、外国投資信託の概念を取り込んでいる信託区分である集団投資信託と、この集団投資信託を除いている信託区分である法人課税信託(いずれも後述)の線引きに不明確さを残すものとなっている。 いずれにせよ、これまで検討してきたところによれば、本信託は投信法上の投資信託に該当せず、投資信託に類するものとしての外国投資信託にも該当しないことから、本件持分は投資信託の受益権(措法37の10②四)に該当しない。 もっとも、投信法領域における解釈論ないしその不安定さの影響を受けて、外国投資信託該当性について異なる結論がありうることへの懸念は完全には払拭できない。 (3) 「特定受益証券発行信託の受益権」該当性 以下のとおり、本件持分は特定受益証券発行信託の受益権に該当しない。 所得税法及び本件分離課税特例における特定受益証券発行信託とは、法人税法2条29号ハに規定する特定受益証券発行信託をいい、具体的には次のものをいう(所法2①十五の五、法法2二十九ハ、措法2①五)。 特定受益証券発行信託(法法2二十九ハ、法令14の4、法規8の3) = ①信託法185条3項に規定する受益証券発行信託のうち、次の➊~➎の要件のすべてに該当するもの(※)をいう (※) 合同運用信託及び一定の法人課税信託を除く 下線①について、特定受益証券発行信託の対象となるのは信託法185条3項に規定する受益証券発行信託に限られるため、外国法を準拠法として設定される信託は特定受益証券発行信託に該当しない(財務省「平成19年度 税制改正の解説」298頁参照。ただし、租税特別措置法8条の3は、特定受益証券発行信託が国外で発行されうることは認めているようである)。 本信託は、デラウェア州法定信託法に基づいて設定されたものであるため、受益権を表示する証券を発行する旨の定めのあるものであっても特定受益証券発行信託には該当しない。 また、下線②のとおり、特定受益証券発行信託に該当するためには、少なくとも信託事務の実施につき法人税法施行令14条の4で定める要件に該当するものであることについて、税務署長の承認を受けた法人である必要があるが、少なくとも現時点においては、本信託の受託者は当該承認を受けていないことを前提として考察を進めることに問題はないであろう。 以上から、他の要件を検討するまでもなく、本信託は、特定受益証券発行信託には該当せず、よって本件持分は特定受益証券発行信託の受益権(措法37の10②五)に該当しない。   (了)

#No. 596(掲載号)
#泉 絢也
2024/11/28

学会(学術団体)の税務Q&A 【第11回】「学術集会の懇親会(法人税)」

  学会(学術団体)の税務Q&A 【第11回】 「学術集会の懇親会(法人税)」   公認会計士・税理士 岡部 正義   ▲▼▲[解説]▲▼▲ 1 情報交換会(懇親会)と法人税法上の収益事業 学術集会は、参加者同士の交流を図ることも開催する目的の1つであるため、会期中に、情報交換会(懇親会)が開催されるケースがよくある。情報交換会(懇親会)の開催実態は、学会によって様々であるが一般的には飲食が提供され、場合によっては生演奏等の催しものが行われるケースもある。そして、参加料としては、2,000円~5,000円程度のケースが多いが、場合によっては無料のケースもある。 法人税法上の収益事業の中には、料理店業その他の飲食店業(法令5①十六)や興行業(法令5①二十六)があるため、情報交換会(懇親会)が、それらの収益事業に該当するか否かという点が論点となる。   2 料理店業その他の飲食店業に該当するか否か 料理店業その他の飲食店業(法令5①十六)とは、不特定・多数の者を対象として、飲食の提供に適する場所において、飲食の提供をする事業である。そして、飲食の提供にあたっては、自ら調理する場合に限らず、他の調理業者からの仕出しを受けて飲食の提供をするものも含まれている(法基通15-1-43)。 ◆法人税基本通達15-1-43(飲食店業の範囲)〈一部抜粋〉 情報交換会(懇親会)は、学術集会の会場や近隣のホテル等において飲食を伴う形で開催されるケースが多い。そのため、情報交換会(懇親会)が料理店業その他の飲食店業に該当するか否かという点について疑問が生じるが、料理店業その他の飲食店業には該当しないと考える。 なぜなら、情報交換会(懇親会)は、参加者の交流の場を設けることを目的として開催するものであって、飲食を提供することを目的として開催するものではないからである。情報交換会(懇親会)の場において、飲食が提供されていたとしても、学会として料理店業や飲食店業を行っているのではなく、情報交換会(懇親会)の場所として、飲食を伴う場所を利用しているに過ぎないといえる。 情報交換会(懇親会)は、参加者の交流の場を設けることであり、参加料は、そのような交流の場に参加するための対価である。仮に情報交換会(懇親会)において、飲食が提供されたとしても、参加料は、飲食代として受領しているわけではない。そのため、情報交換会(懇親会)の参加料は、料理店業その他の飲食店業に該当しないと考える。   3 興行業に該当するか否か 興行業(法令5①二十六)とは、映画、演劇、演芸、舞踊、舞踏、音楽、スポーツ、見せ物等の興行を行う事業である(法基通15-1-52)。 情報交換会(懇親会)においては、生演奏等の催し物が行われるケースがある。そのため、情報交換会(懇親会)が興行業に該当するか否かという点について疑問が生じるが、興行業には該当しないと考える。 なぜなら、情報交換会(懇親会)は、参加者の交流の場を設けることを目的として開催するものであって、興行を行うことを目的として開催するものではないからである。情報交換会(懇親会)の場において、生演奏等の催し物が行われていたとしても、学会として興行業を行っているのではなく、情報交換会(懇親会)の場所として、生演奏等の催し物が行われている場所を利用しているに過ぎないといえる。 情報交換会(懇親会)は、参加者の交流の場を設けることであり、参加料は、そのような交流の場に参加するための対価である。仮に、情報交換会(懇親会)の場において、生演奏等の催し物が行われていたとしても、参加料は、催し物を観賞・観覧するための対価として受領しているわけではない。そのため、情報交換会(懇親会)の参加料は、興行業に該当しないと考える。   4 他の収益事業の付随行為に含まれるか否か 法人税法上の収益事業に該当するか否かを判断するにあたっては、法人税法施行令に掲げる34の特掲事業(法令5①)に該当するか否かだけでなく、他の収益事業に付随して行われる行為に該当するか否かを判断する必要がある(法令5①かっこ書き)。 学術集会の情報交換会(懇親会)は、学術集会の開催に合わせて開催されるものであるため、学術集会の参加に伴う付随行為と考えられる。学術集会の参加料は、原則として法人税法上の収益事業に該当しないと考えられるため(【第9回】「学術集会の参加料(法人税)」参照)、学術集会の参加料が法人税法上の収益事業に該当しない以上、その付随行為となる情報交換会(懇親会)の参加料も法人税法上の収益事業に該当しないと考える。   5 まとめ 情報交換会(懇親会)の開催実態としては、様々なケースが考えられるが、あくまで参加者同士の交流の場を提供するための対価であり、学術集会の参加に伴う付随行為として説明可能な内容であれば、法人税法上の収益事業に該当しないと考える。   (了)

#No. 596(掲載号)
#岡部 正義
2024/11/28

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第60回】「ファイナイト再保険事件(地判平20.11.27、高判平22.5.27)(その2)」~法人税法22条3項、法の適用に関する通則法7条・42条~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第60回】 「ファイナイト再保険事件 (地判平20.11.27、高判平22.5.27)(その2)」 ~法人税法22条3項、法の適用に関する通則法7条・42条~   公認会計士・税理士 西川 浩史     5 事案の検討 本事案は保険領域における租税回避事例として有名であるが、本稿ではファイナイト再保険の本質や準拠法の取扱いについても検討する。 (1) 全体スキームの理解 弘中聡浩弁護士は、下記図のような例示をされた上で、「このように非常に壮大かつ複雑な地震リスク移転のための仕組みの中のごく一部でしかない本件スキームだけが租税回避の目的で構築されたという国の主張には疑問があります。」と主張をされている(※8)。この内容は、判決文には記載されていないが、地震リスクに対応する保険の実態を知る上で重要と考える。 (※8) 弘中前掲(※1)書261頁 (注) この図は弘中氏の文章を基に筆者が作成 (2) 租税回避と経済合理性 地裁及び高裁は、本スキームが専ら租税回避の目的によるものであることを事実認定の問題として否定した上で、そのような場合には、当事者が選択した私法上の法律形式通りの法律効果に基づいて租税関係を認定すべきであるから、本件ELC再保険契約の支払再保険料の損金算入を否認すべき理由がないと判示した。 ただし、地裁判決では節税目的以外の観点から「経済的な合理性」を問題にしたのに対し、高裁判決では、税負担を経済活動におけるコストの1つとして認め、これを考慮することがただちに否認の理由とはされないとし、①当事者の選択した契約の不存在、②当事者の真の効果意思が欠缺による契約無効、③虚偽表示による契約無効を問題とした。 最初にスキームにおける節税以外の経済的取引としての合理性を確認する地裁のアプローチは、明確でありわかりやすい。しかし、企業は連結ベースでの税引き後当期純利益の最大化を図って経済活動を行っており、その意味で法人税等の税金は企業にとっては明らかにコストであり、当該税金コストの削減努力をすることは、企業にとっての義務でもある。そう考えるなら、高裁のようなアプローチの方が適切であると理解する。 (3) ファイナイト再保険の本質 保険のリスクにはタイミング・リスク(時期がはっきりしない保険事故により、一時に巨額の保険金支払が生じて、資金がショートするリスク)とアンダーライティング・リスク(保険を引き受けることに伴う本来的なリスクのことで、保険事故が発生した時に保険会社が被る保険金支払リスク)がある(※9)。ファイナイト再保険では、タイミング・リスクは移転するものの、アンダーライティング・リスクの移転は限定的(ファイナイト)になっている。 (※9) 渡辺前掲(※3)書204頁。なお、判決文では、タイミング・リスクは「時間リスク」、アンダーライティング・リスクは、「引受けリスク」と表現されている。 これについて、知見邦彦氏は、「ファイナイト・リスク(再)保険は、保険と貸付機能が統合され、全体の形式としてみれば再保険の外観をもつものである。ファイナンシャル(再)保険が原型であるが、これは保険とは名ばかりで、保険料の支払、投資収益、保険会社の経費を勘案し保険者と保険加入者の収支を均衡させる金銭貸借に近いものである。たとえば、保険期間を数年間として契約者が保険料を支払うが、事故が少なく保険料より保険金が下回れば、期末に返戻され、事故が多ければ保険料を追徴されるというシステムである。アンダーライティング・リスク(予想損害額と実際損害額との差)が発生しないことから税務当局から保険と見なされなくなった。そこで限定的(ファイナイト)にアンダーライティング・リスクを負担する仕組みとしたのが、ファイナイト(再)保険である。」と述べている(※10)。この説明は、ファイナイト再保険の本質を理解する上でとても分かりやすい。 (※10) 知見邦彦「米国における保険の金融化」経済理論49巻2号(2012)66頁。知見氏は大手保険会社勤務経験者である。 (4) 当時の各国での会計上及び税務上の取扱い 会計上、英国ではタイミング・リスクのみの移転でも保険としているのに比べ、米国ではアンダーライティング・リスクを伴わないタイミング・リスクのみの移転では保険としないとされていた。ただし、両国のルールとも保険リスクの移転は「significant」でなければならないと規定している。実務上は、「10-10ルール」(10%以上の確率で保険者(再保険者)が10%以上の損失を蒙ること)があり、「significant transfer of insurance risk」の要件を充足することにより、保険取引として認められる(※11)。 (※11) 渡辺前掲(※3)書206頁 一方、税務上は、地震保険のような不確定要素のある保険料の損金算入はアイルランドをはじめヨーロッパではほとんど認められていた。米国では、一括で支払った時の損金算入については問題があるのではないかと議論されていたが、その後、一時の損金算入は認められている。日本ではそうした議論があまりなされていなかった(※12)。 (※12) 大淵博義・酒井克彦「シンポジウム 記念対談 仮装行為・実質課税・租税回避─ファイナイト事件等を素材として」Accord Tax Review第9=10合併号(2018)37頁 渡辺裕泰教授は、課税庁の処理を妥当とした国税不服審判所の裁決(平成17年7月20日)を受けて、「税務上損金算入を認めるか否かについては、移転されるリスクの性質と移転されるリスクの程度を、重要なポイントとして、判断されて行くものと考えられる。」と述べられている(※13)。この見解にある「移転されるリスクの性質と移転されるリスクの程度」こそが、十分に検討されるべき重要なポイントであったと考える。 (※13) 渡辺前掲(※3)書207-208頁 (5) ファイナイト再保険に関する税務検討 高裁は、本件ファイナイト再保険料のうちEAB繰入額相当部分(事後調整部分)が税務上、預け金(資産)か保険料(費用)かの検討において、法人税基本通達9-3-9(長期の損害保険契約に係る支払保険料)を法規の性質をもつものではないが、解釈基準として重要な意義を有するものとして検討をしている。そして、本件ファイナイト再保険契約において、契約の終了の効力が発生した時にEABの値が負(マイナス)の場合に、出再者が満期返戻金と異なり金員を受け取ることはできないことを理由に、事後調整部分は積立保険料とは異なると結論付けている(※14)。 (※14) 水野忠恒教授は、事後調整対象金額に相当する部分もリスクを負っており積立金とは異なるものであるため、法人税基本通達9-3-9の適用はないと結論付けている(水野忠恒「ファイナイト保険課税事件に関する判決の検討[東京地裁平成20.11.27]」国際税務30巻11号(2010)51頁)。 竹濱修教授は、「およそ起こりえない稀なリスクを保険者が一応引受けているが、実質は、保険料として収受した金額の運用を委託されているに過ぎず、保険事故が起こらなければ、保険料として預託された金額に運用成果を加えて解約時に払戻する形のファイナイト保険契約は、そのリスク引受に対応する保険料部分を除いては、実質的には預金や貸付、信託財産に類する関係が認められることになろう。この部分については、その実質に応じた規律を適用することが考えられよう。」と述べられている(※15)。 (※15) 竹濱修「ファイナイト保険の法的性質」立命館法学第310号(2006)1991頁 ファイナイト再保険契約のEAB繰入額相当部分は、法人税基本通達9-3-9の積立金とは違うことは明らかであるが、そこまでの検討で終わっていいのであろうか。渡辺教授の言われている「移転されるリスクの性質と移転されるリスクの程度」に関しては、もっと踏み込んだ検討が必要であったのではないかと考える。ファイナイト再保険契約は、保険機能と貸付機能を持っているのは事実である。もし、保険事故が発生した時に保険会社が被る保険金支払リスク(アンダーライティング・リスク)が限りなく小さい場合まで、すべての再保険料について損金処理を認めることには疑問が残る。そのため、先に述べた「10-10ルール」のような基準を明確にした上で、竹濱教授の言われるように、貸付機能部分については一定の規律を設けることが理論的であると考える。 (6) 外国法を準拠法とする契約に係る税務上の取扱い 本件では、X社とS社のELC再保険契約の準拠法が日本法、S社とA社・E社のファイナイト再保険契約の準拠法が英国法となっている。そのため、ファイナイト再保険契約の法律関係は本来であれば指定された英国法によって検討すべきである。弘中氏は外国法を準拠法とする契約に係る税務上の取扱いについては、下記表のような考え方があるとしている。そして、高裁は、X社は専ら租税回避を目的として本件スキームを実施したわけでないと認定しているのに、なぜ日本法を前提に当事者間の私法上の関係を考えなければならないとしたのか不明であるとして疑問を述べている(※16)。 (※16) 弘中前掲(※1)書270頁、272頁 (注) この表は弘中氏の文章を基に筆者が作成 横溝大教授は、事実認定・私法上の法律構成による「否認」が問題になった本件において、課税の公平の原則を根拠に法の適用に関する通則法7条を問題とし公序の逸脱的な解釈により日本の私法を適用した本判決には疑問があるとして、本判決は、本件ファイナイト再保険契約の法的性質を準拠法である英国法に基づいて決定した上で、課税物件の有無を判断すべき旨を述べられている(※17)。 (※17) 横溝大「明文規定がない場合の租税回避行為の「否認」と契約準拠法」ジュリスト1449号(2013)135頁 もし、本件ファイナイト再保険契約をまず準拠法である英国法によって検討すべきとした場合には、どういう結果になるのであろうか。先に記載した通り、アイルランドではファイナイト再保険料は一般的に会計上及び税務上も保険として認められており、英国法(英国の税法)においても同様であったと考えられる(※18)。そのため、個別事案としての確認は必要であるものの、本件ファイナイト再保険料は英国法でも損金が認められていたと考える。 (※18) アイルランドは、英国の植民地であった期間が長く、アイルランドの法体系は英国の法体系の影響を強く受けている(遠藤誠 (BIJ法律事務所)「アイルランドの法制度の概要」5-6頁)。 そうすれば、本件ELC再保険契約に基づく再保険料が実質的にはファイナイト再保険料であるとみなされた場合、英国法に従って、わが国での損金処理も認められるのであろうか。わが国での課税問題である以上、その場合でもわが国の税法からの再検討の余地があるべきと考える。特に、個別事案として確認した結果、英国(又はアイルランド)でファイナイト再保険料の損金について何らかの問題があるような場合には、わが国の税法からの再検討がより重要になってくると理解する。 また、仮に、わが国ではファイナイト再保険料の損金処理が認められていなかった場合に、本件スキームを活用した場合には、租税回避の判断がより難しいものになったのではないかと推測する。本件では、わが国の会計上及び税務上の取扱いが明確ではなかったことがアイルランド子会社の活用の背景にあったことは、今後の対応において重要な意味があるように思われる。   6 おわりに ファイナイト再保険が伝統的な保険と異なり、保険機能と貸付機能が統合されたものである以上、すべてを保険として扱うのではなく、貸付機能部分については税法で一定の算出方法を規定し、原則として損金処理を認めないようにすることが適正ではないかと考える。ただ、一方で、地震の多いわが国でファイナイト再保険に関する税務処理を厳しくすることはいかがであろうか。後藤元教授は、「地震等の大規模・算定困難なリスクについても保険が提供されることが望ましいとすると、政策的な見地から、その再保険がファイナイト保険として行われた場合の再保険料について損金算入を認めることも考えられよう。」としている(※19)。今後、このような論点も含めた検討が必要ではないかと考える(※20)。 (※19) 後藤元「ファイナイト再保険の課税上の取扱い」別冊ジュリスト202号(保険法判例百選)(2010)5頁 (※20) 渕圭吾教授は、企業向け地震保険について、措置法を活用し一定の積立金の損金算入を認める方法を提案されている(渕圭吾「租税判例研究 第450回 損害保険会社が海外子会社に支払った「再保険料」の損金該当性」ジュリスト1400号(2010)175頁)。 本件ファイナイト再保険の準拠法は英国法であるため、まずは英国法によってファイナイト再保険の法的性質を明確にすることが必要と考えた。今回のような海外も含めたスキームの場合、英国だけでなく諸外国での会計及び税務処理も考慮に入れた検討も重要と思われる。また、今後も新しい保険商品が開発され、保険か否かの議論が行われる可能性が考えられる。その意味でも、新しい保険商品にも対応できるような会計及び税務の研究が必要と理解する(※21)。 (※21) 一角塾の研修においては、村井正教授より保険法からの検討や海外を含めたスキームの場合においては国際私法からの研究も必要とのアドバイスをいただいた。 (了)

#No. 596(掲載号)
#西川 浩史
2024/11/28

有価証券報告書における作成実務のポイント 【第8回】

有価証券報告書における作成実務のポイント 【第8回】   史彩監査法人 パートナー 公認会計士 西田 友洋   今回は、有価証券報告書のうち、第一部【企業情報】第5【経理の状況】の冒頭から【注記事項】(重要な会計上の見積り)までの作成実務ポイントについて解説する。 なお、本解説では2024年3月期の有価証券報告書(連結あり/特例財務諸表提出会社/日本基準)に原則、適用される法令等に基づき解説している。   1 【経理の状況】の冒頭の作成実務ポイント 第5【経理の状況】の冒頭では、連結財務諸表等の作成方法や監査証明等について記載する。 【事例:(株)アイモバイル 2024年7月期の有価証券報告書】   2 連結財務諸表の作成実務ポイント 連結財務諸表として、連結貸借対照表、連結損益計算書及び連結包括利益計算書、連結株主資本等変動計算書並びに連結キャッシュ・フロー計算書を記載する。 (1) 連結貸借対照表 (2) 連結損益計算書 (3) 連結株主資本等変動計算書 (4) 連結キャッシュ・フロー計算書   3 「継続企業の前提に関する事項」注記の作成実務ポイント 継続企業の前提に関する注記として記載する事項がある場合、連結キャッシュ・フロー計算書の次に記載する。   4 「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」注記の作成実務ポイント 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項として、連結の範囲等及び会計方針を注記する。 (1) 連結の範囲等 (2) 会計方針 会計方針の例示として、以下が挙げられる。   5 「重要な会計上の見積り」注記の作成実務ポイント 重要な会計上の見積りを注記する。 【事例:ビジョナル(株) 2024年7月期の有価証券報告書】 (了)

#No. 596(掲載号)
#西田 友洋
2024/11/28

開示担当者のためのベーシック注記事項Q&A 【第29回】「継続企業の前提に関する注記」

開示担当者のための ベーシック注記事項Q&A 【第29回】 「継続企業の前提に関する注記」   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明   Question 当社は連結計算書類の作成義務のある会社です。連結注記表及び個別注記表における継続企業の前提に関する注記について、どのような内容を記載する必要があるか教えてください。 Answer 連結注記表においては、連結会計年度の末日において、当該株式会社が将来にわたって事業を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合であって、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合、次の事項の記載が必要となります。 当該事象又は状況が存在する旨及びその内容 当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策 当該重要な不確実性が認められる旨及びその理由 当該重要な不確実性の影響を連結計算書類に反映しているか否かの別 なお、個別注記表の場合は、上記「連結会計年度」を「事業年度」、「連結計算書類」を「計算書類」と読み替えて注記することが求められます。 ● ● ● 解説 ● ● ● 1 経団連のひな型による解説 経団連が公表している「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)」(2022年11月1日)では、連結注記表、個別注記表それぞれ継続企業の前提に関する注記の記載例は掲載されておらず、記載上の注意のみ掲載されています。 【連結注記表】 【個別注記表】   2 注記事項の解説 (1) 継続企業の前提に関する注記の全体像 連結計算書類の作成義務のある会社を前提とした場合、連結注記表・個別注記表で記載すべき継続企業の前提に関する注記事項は次のとおりです(会社計算規則第100条)。 継続企業の前提に関する注記は、他の注記のように、連結注記表で記載がある場合に個別注記表での記載を省略できるといった定めはないため、該当する場合は、連結注記表に記載がある場合であっても個別注記表でも記載が必要となることに留意が必要です。 (2) 注記事項の解説 財務諸表は、通常、継続企業を前提として作成・公表されているため、財務諸表に計上されている資産及び負債は、将来の継続的な事業活動において回収又は返済されることが予定されています。 しかし、企業は様々なリスクにさらされながら事業活動を営んでいるため、継続企業を前提とすることが適切でない場合があり、経営者が継続企業の前提に関して評価した結果、期末において、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合であって、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるときは、継続企業の前提に関する事項を注記することが必要となります。 なお、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況は、監査・保証実務委員会報告第74号「継続企業の前提に関する開示について」によると、例えば、以下のような項目が考えられます。 それでは、実際の注記を見ていきましょう。 [津田駒工業株式会社 2023年11月期] ① 連結注記表 ※津田駒工業株式会社「第113回定時株主総会 その他の電子提供措置事項(交付書面省略事項)」3頁より抜粋。 ② 個別注記表 ※津田駒工業株式会社「第113回定時株主総会 その他の電子提供措置事項(交付書面省略事項)」18頁より抜粋。 *  *  * 次回の第30回(最終回)は、「連結配当規制適用会社」をテーマに解説します。   (了)

#No. 596(掲載号)
#竹本 泰明
2024/11/28
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