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《速報解説》 改正会社法及び会社法整備法の施行等に伴う金融庁関係政府令等の改正案が公表される~企業会計に関するもの含め多数の改正案が明らかに~

《速報解説》 改正会社法及び会社法整備法の施行等に伴う 金融庁関係政府令等の改正案が公表される ~企業会計に関するもの含め多数の改正案が明らかに~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年11月6日、金融庁は、「会社法の一部を改正する法律」及び「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の施行等に伴う金融庁関係政府令等の改正案を公表し、意見募集を行っている。 これは、「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第70号。以下「改正会社法」という)及び「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(令和元年法律第71号。以下「会社法整備法」という)の施行(1年3月以内施行及び1年6月以内施行)等に伴うものである。 意見募集期間は2020年12月7日までである。 非常に多数の金融庁関係政府令等を改正するものであるので、本稿では、企業会計に関連する改正案について解説を行う。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 財務諸表等規則関係 1 定義 2 純資産の分類 「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(案)」(2020年9月11日、実務対応報告公開草案60号)では、純資産の部の株主資本以外の項目に「株式引受権」を新設する提案をしている。 また、「会社法改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正案」(2020年9月1日、法務省)では、「株式引受権」が新たに定義されており、取締役又は執行役がその職務の執行として株式会社に対して提供した役務の対価として当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利(新株予約権を除く)をいうとされている(会社計算規則改正案2条3項34号)。 そこで、財務諸表等規則でも次の改正を行う(連結財務諸表規則、四半期財務諸表等規則、四半期連結財務諸表規則も同様)。   Ⅲ 企業内容等の開示に関する内閣府令関係 1 株式交付 改正会社法では、株式交付について規定されている。 株式交付とは、株式会社が他の株式会社をその子会社(法務省令で定めるものに限る。会社法774条の3第2項において同じ)とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付することをいう(改正会社法2条32号の2)。 そこで、「企業内容等の開示に関する内閣府令」でも次の改正を行う 2 補償契約 有価証券届出書などの「コーポレート・ガバナンスの概要」において、補償契約(会社法430条の2第1項に規定する補償契約)もしくは役員等賠償責任保険契約(会社法430 条の3第1項に規定する役員等賠償責任保険契約)を締結した場合について規定する。 3 役員の報酬等   Ⅳ 適用時期等 「損害保険料率算出団体に関する法律施行令」、「金融商品取引法施行令(1年3月以内施行)」、「保険業法施行令(1年3月以内施行)」は、会社法整備法附則2号に掲げる規定の施行の日、その他の政府令等については改正会社法の施行の日から施行・適用する。 (了)

#No. 393(掲載号)
#阿部 光成
2020/11/09

《速報解説》 金融庁が「記述情報の開示の好事例集2020」を公表~新型コロナウイルス感染症、ESGに関する開示の好事例をまとめる~

《速報解説》 金融庁が「記述情報の開示の好事例集2020」を公表 ~新型コロナウイルス感染症、ESGに関する開示の好事例をまとめる~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年11月6日、金融庁は「記述情報の開示の好事例集2020」を公表した。 これは、「新型コロナウイルス感染症」、「ESG」に関する開示の好事例を取りまとめたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 新型コロナウイルス感染症に関する開示例 「新型コロナウイルス感染症」に関しては、経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(経営戦略等)、事業等のリスク、経理の状況(追加情報)などでの開示に関連する。 好事例のポイントとして次のことが記載されている。   Ⅲ ESGに関する開示例 ESG(環境、社会、ガバナンス)に関しては、経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(経営戦略等)、事業等のリスクなどでの開示に関連する。 ESGに関する開示について、次のような点に着目している。 好事例のポイントとして次のことが記載されている。 (了)

#No. 393(掲載号)
#阿部 光成
2020/11/09

プロフェッションジャーナル No.393が公開されました!~今週のお薦め記事~

2020年11月5日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.393を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2020/11/05

monthly TAX views -No.94-「ウーバーイーツ配達員のセーフティーネットをどう考えるか」

monthly TAX views -No.94- 「ウーバーイーツ配達員のセーフティーネットをどう考えるか」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   ウーバーイーツの配達員の自転車に追突されケガをした女性が、「事実上、指揮監督している運営会社にも責任がある」と主張して配達員と運営会社の両者に損害賠償を求める訴えを起こした。 直接的にはウーバーイーツの使用者責任の有無を巡っての争いと思われるが、ウーバーイーツと配達人との関係も議論される可能性がある。 ウーバーイーツはこれまで、配達人から「事故やケガの補償」「運営の透明性」「適切な報酬」を求めて「ユニオン」が設立されるなど、様々な問題が浮き彫りにされている。 コロナ禍で、マッチング宅配サービスなど仲介型プラットフォームを通じて労働力を提供する個人事業者(いわゆるギグ・ワーカー)は、今後も増え続けると予想されており、あらためてセーフティーネットの問題を考えてみたい。 *  *  * マッチング宅配サービスのビジネスモデルは、極めて巧妙なものである。 配達人は配達について店と直接契約する形をとるので、労働(雇用)法制上は「労働者」ではなく「個人事業者」(フリーランス)となる。 ウーバーイーツはマッチング情報を提供する「仲介者」という立場である。 このようなビジネスモデルを構築する最大理由の1つは、プラットフォーマーが、配達人など自ら労務を提供する者の社会保険料負担を行う必要がないということである。この点「法制度による規制の穴をついたビジネスモデル」といえる側面がある。 雇用法制において「労働者」と「個人事業者」を区分するメルクマールは、使用従属関係があるかないか、つまり自己の計算と危険において独立して営まれている(個人事業者)かどうか、空間的・時間的な拘束に縛られている(労働者)かどうかなどの実態で判断することとなっている。 マッチング宅配サービスの場合、プラットフォーマーが提供する仲介に応じるかどうかは配達人の選択・自由という「建前」なので、配達人は「労働者」には該当せず、様々なセーフティーネットから取り残されることになる。 しかし配達人の実態を見ると、「注文をもらわないと生きていけない」という事情はともかく、業務の内容や進め方について指示を受けるなど、「労働者」と同じような「従属的な働き方」を強いられている場合も多いといわれている。 論点としては、働きからの実態を見ると「労働者」に近いにもかかわらず、雇用契約となっていないため雇用法制上の保護から抜け落ちる者のセーフティーネットをどうしていくのか、その場合の責任や財源をどこに求めるのかという点である。 この問題は政府の全世代型社会保障検討会議で議論され、本年6月25日に公表された第2次中間報告書では、フリーランスのセーフティーネットについて法律改正も含め様々な提案が行われている。例えば、労働者災害補償保険等の更なる活用として、特別加入制度の対象拡大や、フリーランスも加入できる共済制度活用促進などである。筆者も経産省の研究会に参加して議論しているところである。 *  *  * 先進諸国の流れを見ると、大きく2つに分かれる。 1つは、個人事業主と国、関係企業が分担して保険料を負担する基金を創設することである。ドイツの音楽家・画家・ダンサー、ジャーナリストなどが加入する芸術家基金では、芸術家個人が5割、芸術家に委託等をしている企業が3割、連邦政府が2割を負担する制度となっており、コロナ禍でのセーフティーネットに役立っている。 一定規模以上の委託企業は、社会保険料を負担していないこともあり、幾分かの負担(基金への拠出)を求めてもいいのではないかという発想である。委託企業にとっても、一定の社会的責任を果たすことは中長期的に自らの利益につながっていく。 もう1つは、セーフティーネットという観点から、ウーバーの運転手などのギグ・ワーカーについて、既成の法体系とは別に、「第3のカテゴリー」として考えるという方向だ。 米国では雇用者(employee)と個人事業者(independent contractor)の中間の独立労働者として「independent worker」というカテゴリーを設け、セーフティーネットの整備を図ろうという動きがみられる。 カリフォルニア州ではAB5(Assembly Bill 5)で、労働者と個人事業者の認定基準を法定化、その立証責任を発注者側に課すことによりギグ・ワーカーやフリーランスの保護を広げたが、これもそのような動きの延長上にある。 これら欧米の例は裁判を通じた判例が積み上がったものだが、わが国でも冒頭のような裁判が始まるので、今後、判例の積み重ねを参考にしながらフリーランスの社会保障を考えていく必要がある。 (了)

#No. 393(掲載号)
#森信 茂樹
2020/11/05

新型コロナウイルス感染症にかかる助成金等の課税関係 【後編】

新型コロナウイルス感染症にかかる 助成金等の課税関係 【後編】   公認会計士・税理士 菊地 弘   前回に続き、新型コロナウイルス感染症にかかる助成金等の課税関係をコンパクトに解説する。 3 法人が受給する場合の課税関係 (1) 各事業年度の所得の金額 各事業年度の所得の金額は、その事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額である。益金の額に算入すべき金額は、その事業年度に帰属する収益の額である。ただし別段の定めがあるものや資本等取引に係るものは除かれる(法人税法22条1項、2項、4項)。 法人が受給する助成金・給付金等は原則として、各事業年度の益金の額に算入される。そのため、新型コロナウイルス感染症の影響に関連して、国や地方公共団体から支給される助成金・給付金等を受給した場合も同様に各事業年度の益金の額に算入される。例えば、雑収入として会計上営業外収益に計上することにより、法人税の課税所得を構成する。 (2) 助成金・給付金等の収益計上時期 ① 給付原因(休業等)の事実があった日の属する事業年度に収益計上する助成金・給付金等 【例示】: 「雇用調整助成金」、「小学校休業等対応助成金」 ② 「支給決定日」の属する事業年度で収益計上する助成金・給付金等 【例示】: 「持続化給付金」、「家賃支援給付金」、「休業要請に対する支援金」 この収益計上時期について、法人税基本通達2-1-42に、(法令に基づき交付を受ける給付金等の帰属の時期)として、次のように定めている。   4 消費税の取扱い(個人・法人) 国・地方公共団体等から受ける補助金・奨励金・助成金等は資産の譲渡等の対価に該当しないため、これらについての消費税は不課税(課税対象外)となる。 この資産の譲渡等の対価性について、消費税法基本通達5-2-15に、(補助金、奨励金、助成金等)として、次のように定めている。 (連載了)

#No. 393(掲載号)
#菊地 弘
2020/11/05

組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の現行法上の問題点と今後の課題 【第10回】「受取配当金と株式譲渡損益」

組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の 現行法上の問題点と今後の課題 【第10回】 「受取配当金と株式譲渡損益」   公認会計士 佐藤 信祐 《第4章:受取配当金と株式譲渡損益》 1 自己株式の取得の特例 法人税法施行令23条3項では、自己株式の取得をした場合であってもみなし配当が発生しないものが列挙されており、同項8号では、被合併法人の株主等による反対株主の株式買取請求による買取りが掲げられている。 被合併法人の株主が反対株主の株式買取請求を行った場合には、合併の効力発生日(新設合併の場合は、成立の日)に被合併法人が被合併法人株式を取得したものとして取り扱われる(会社法786⑥、807⑥)。すなわち、当該買取請求に係る株式の買取りは、合併の日に遡って効力が生じるのに対し、合併の日においては金額不確定の状況にあることから、技術的に源泉所得税を徴収することができないという問題が生じる(※1)。 (※1) 『平成18年版改正税法のすべて』264頁(大蔵財務協会、平成18年)。 このような源泉所得税の問題があることから、被合併法人の株主等が反対株主の株式買取請求を行ったことにより、被合併法人が自己株式を取得したとしても、みなし配当が生じないものとされている。 これに対し、合併法人、分割法人、分割承継法人、株式交換完全親法人、株式交換完全子法人及び株式移転完全子法人の株主からの買取りについては特例が定められていない。所得税法については、国税庁文書回答事例「株式交換に反対する個人株主の株式が買取請求に基づき買い取られた場合の課税関係」において、株式交換完全子法人株式の買取価格が反対株主と株式交換完全子法人との間の協議により決定した場合は当該協議が調った日、裁判所により決定した場合は当該決定日を収入すべき時期として差し支えない旨の回答がなされている。 そのため、上記のような不都合は生じないのかもしれないが、被合併法人の株主と取扱いを変える合理的な理由はないことから、合併法人、分割法人、分割承継法人、株式交換完全親法人、株式交換完全子法人及び株式移転完全子法人の株主からの買取りについても、みなし配当の対象から除外すべきであると考えられる。   2 みなし配当と株式譲渡損の両建て 平成22年度税制改正によりグループ法人税制が導入され、令和2年度税制改正により特定関係子法人から受ける配当等の額が株式等の帳簿価額の10%を超える場合の特例が導入されたが、みなし配当と株式譲渡損の両建てがなされる事案のすべてを対象としたものではなく、みなし配当と株式譲渡損が両建てになる事案も残されている。 例えば、完全支配関係のない法人との現金交付型合併については、平成22年度税制改正により、抱き合わせ株式に対して株式譲渡損益を認識せず(法法61の2③)、当該株式譲渡損益に相当する金額を資本金等の額の加減算項目として処理することになったため(法法2十六、法令8①五)、みなし配当と株式譲渡損の両建てを防ぐことができている。 これに対し、完全支配関係のない法人の残余財産が確定した場合、その他資本剰余金を配当した場合には、みなし配当と株式譲渡損の両建てが可能になり、自己株式取得予定株式等と異なり(法法23③)、受取配当等の益金不算入の対象から除外する旨の特例も定められていないことから、法人税の負担を減少させることができる。 さらに、完全支配関係のある法人であったとしても、資本金等の額が100百万円である法人の株式を1,000百万円で買収し、1年後に900百万円を配当させたうえで、100百万円で転売した場合には、受取配当金と株式譲渡損の両建てが可能になる。このことは、900百万円の適格現物分配をさせたうえで、100百万円で転売した場合にも、同様の効果が期待できる。 平成22年度税制改正、令和2年度税制改正により、みなし配当と株式譲渡損の両建てを狙ったスキームに対応する改正がなされているが、本来であれば抜本的な見直しが必要になると思われ、第6回で解説したように、帳簿価額修正を単体納税制度に導入することは、1つの解決策であると思われる。   3 受贈益の益金不算入 (1) 基本的な取扱い 平成22年度税制改正によりグループ法人税制が導入されたことによって、法人による完全支配関係がある場合には、贈与を受けた法人において発生した受贈益は、その全額が益金の額に算入されず(法法25の2①)、贈与を行った法人において発生した寄附金は、その全額が損金の額に算入されないことになった(法法37②)。 さらに、受贈益の益金不算入の導入により、これを利用した株式の価値の移転が容易となり、子法人株式の譲渡損を作出する租税回避が考えられることから、これを防止するために、寄附修正事由が導入されている(法令9①七、法令119の3⑥、119の4①)(※2)。 (※2) 『平成22年度版改正税法のすべて』208頁(大蔵財務協会、平成22年)。 すなわち、A社とB社との間にA社による完全支配関係がある場合において、A社からB社に対して100百万円の贈与を行ったときは、受贈益の益金不算入の適用対象となる。さらに、寄附修正事由が発生しているため、寄附金に相当する部分の金額だけA社が保有するB社株式の帳簿価額に加算する必要がある。 【A社の仕訳】(単位:百万円) 【B社の仕訳】(単位:百万円) (2) 問題となる事案 これに対し、A社とB社との間にA社による完全支配関係がある場合において、①A社からB社に対する100百万円の贈与、②B社からA社に対する100百万円の配当、③A社によるB社株式の譲渡を行った場合には、以下の仕訳の通りとなる(なお、単純化のため、源泉所得税については省略している)。 【A社の仕訳】(単位:百万円) ① B社に対する贈与 ② B社からの配当 ③ 株式譲渡 【B社の仕訳】(単位:百万円) ① A社からの贈与 ② A社への配当 このように、法人(A社)による完全支配関係があることから、A社からB社に対する贈与を行っても、B社において生じる受贈益が益金の額に算入されない。さらに、B社からA社への配当については、完全支配関係のある法人間における配当であることから、配当の計算期間を通じて完全支配関係が継続していれば、負債利子を控除することなくその全額が益金不算入となる(法法23①⑤、法令22の2)。 このように、A社からB社に対する贈与により100百万円の現金預金を移転し、B社からA社に対する配当により100百万円の現金預金を移転させたことにより、B社株式譲渡損を創出することが可能になる。 もちろん、租税回避に該当する場合には、同族会社等の行為計算の否認(法法132)が適用されることもあり得るが、事業目的が税目的を上回っている場合には、租税回避として認定することが困難である。すなわち、A社からB社に対する贈与を行った時点において、B社株式を譲渡することが見込まれていない場合には、贈与を行った時点では税負担減少の意図がないことから、租税回避として認定することが困難な事案が想定される。 このような問題についても、帳簿価額修正を単体納税制度に導入することにより解決することができると考えられる。 *   *   * 次回では、繰越欠損金について解説を行う予定である。 (了)

#No. 393(掲載号)
#佐藤 信祐
2020/11/05

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例23】「土地建物を一括で購入した場合の建物の取得価額と減価償却費」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例23】 「土地建物を一括で購入した場合の建物の取得価額と減価償却費」   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、10年ほど前に親から引き継いだ不動産を元手に脱サラして、現在株式会社形態で不動産賃貸業を営む者です。当初は親から引き継いだ貸しビルや賃貸マンションの賃貸借契約を管理するだけの単純な業務でしたが、取引先である信用金庫からの強い要望もあり、当該不動産を担保に融資を受け、新たに都内の駅近マンションや一戸建てをいくつか購入することで、法人の資産を順調に増加させているところです。 最近購入した不動産のうち半数くらいの売主は法人である不動産業者でしたが、残りの半数くらいの売主は個人でした。売主が法人の場合、マンションにしても一戸建てにしても、消費税の金額を明示するため、売買契約書に建物(消費税課税)と土地(敷地部分・消費税非課税)の対価をそれぞれ別に表示してありましたが、売主が個人の場合には、土地建物を一括でいくらと表示してあり、それぞれいくらであるのか売買契約書上は分からない状況にあります。しかし、弊社の法人税の申告上、建物については減価償却を行う必要があるため、その取得価額を決定する必要があります。 そこで、不動産鑑定士に相談したところ、どの物件も駅から徒歩圏内と立地が良いことから、建物の月額賃料を基に評価するのがよいのではないかとのアドバイスを得ました。それに従って土地建物を一括購入したある物件(借地権付建物、取得価額合計額1億8,000万円)を評価したところ、以下のような評価額(下記表のうちの①)となりました。 〇 借地権付建物の評価額内訳 ところが先日受けた税務調査で、税務署の調査官は、減価償却費計算の基礎となる建物の取得価額は、建物及び借地権の各固定資産税評価額の価額の比を基に算定した価額(上記表の③)を用いるべきであり、その結果として減価償却費計上額が過大であるとして、修正申告の勧奨を行ってきました。月額賃料に基づく評価額の方が不動産の鑑定評価の観点からは理論的で、時価を反映しているものと考えますが、課税庁の主張のとおり修正すべきでしょうか、教えてください。 【A】 土地(借地権)と建物を一括で取得しそれぞれの価額の内訳が明示されていないものは、建物の減価償却費の計算上、取得価額の合計額を合理的な方法で土地(借地権)及び建物とに按分する必要があります。この場合、実務上は、それぞれの固定資産税評価額を基に按分する方法が最も一般的と考えられます。仮に、それ以外の方法を用いる場合には、特にその評価額を建物の方に多く計上して、それをベースに減価償却費を過大に計上しているとの疑念を抱かれかねない可能性があるときには、その方法が土地(借地権)及び建物の時価の比として適切であることを納税者が立証する必要があるでしょう。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 土地建物を一括譲渡・購入した物件に係る建物の取得価額 不動産の売買に関しては、土地と建物を別々に(更地の場合等)譲渡する場合と一括で譲渡する場合とがある。土地建物を一括で譲渡する場合、売買契約書において、それぞれの価額が明記されている場合もあれば、特に明記されていない場合もある。 法人間の売買においては、建物に係る消費税の処理の問題があるため、売買契約書において、消費税の課税される建物の部分と非課税である土地の部分とに分けてそれぞれの価額を表示するケースが多いと考えられる。また、それぞれの価額を明示していない場合であっても、売買代金の内訳として消費税の額が表示されている場合には、消費税は建物のみに課されることから、税率で割り返すことで建物の価額を把握することは可能である。 勿論、建物を取得した側にとっては、それが賃貸借物件である場合には、法人税の申告に際し、建物に係る減価償却費の算定を行う必要があるため、建物の取得価額を把握する必要がある。 〇 土地建物を一括譲渡した物件に係る価格の内訳   (2) 土地建物を一括譲渡した物件に係る建物の取得価額の算定方法 それでは、土地建物が一括譲渡され、それぞれの価額の内訳が明示されていない場合、両者の価額をどのように算定すべきなのであろうか。 消費税法においては、課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないときは、両者を合算した対価の額をそれぞれの資産の「時価」の比により区分することとされている(消令45③、消基通10-1-5)。 一方、所得税法及び法人税法においては、租税特別措置法関係通達において、土地建物のいずれかの価額を求めて、そのいずれかの価額を全体の金額から控除する方法が示されている(措通28の4-31~33、措通63(2)-3~5)。 さらに、消費税に関しては、土地建物の対価につき合理的に区分する方法として、上記の「時価」の比による方法のほか、以下の2つの方法が示されている(国税庁タックスアンサーNo.6301参照)。 上記のうちどの方法を用いるのが適切であるのかはケースバイケースといえようが、基本は「時価」による按分ということになるであろう。実務上は、不動産の時価を把握することは容易ではない場合が多く、そのためにわざわざ不動産鑑定士による鑑定評価を行うというのもコスト面から考えると現実的ではないため、時価に近似した客観性の高い評価額で、かつ比較的容易に入手できるものとして、相続税評価額や固定資産税評価額を用いて按分計算を行うというのが一般的であると考えられる。   (3) 土地建物を一括譲渡した物件に係る建物の取得価額が争われた事例 土地(実際には借地権)及び建物を一括譲渡した物件に係る建物の取得価額が争われた裁決事例(国税不服審判所平成30年5月7日裁決・TAINSコード:F0-2-871)があるので、以下でその内容を確認しておきたい。 ① 事案の概要 本件は、不動産賃貸業を営む法人である審査請求人が、買い受けた事業用の借地権付建物(総額275,000,000円)について、売買契約書に記載された建物の価額(本体価額202,777,778円・消費税額16,222,222円)により減価償却資産の取得価額(204,263,986円)及び課税仕入れに係る支払対価の額をそれぞれ算定して、法人税及び消費税の確定申告を行ったところ、原処分庁が、減価償却資産の取得価額及び課税仕入れに係る支払対価の額について、いずれも、売買契約書に記載された建物の価額ではなく、建物及び借地権の各固定資産税評価額の価額比を基に算定した価額によるべきであるとして、法人税及び消費税の更正処分等を行ったことに対し、請求人がその全部の取消しを求めた事案である。 請求人は、建物の価額(本体価額)を次のとおり算定している。すなわち、売買代金総額(275,000,000円)から、本件建物の敷地を財産評価基本通達に定める路線価に基づき計算した金額(平成27年分の路線価600,000円 × 借地面積116.82㎡(なお、実際の借地面積は116.32㎡))に借地権割合80%を乗じて算出した本件借地権の価額56,000,000円を差し引いた219,000,000円に、108分の100を乗じた額である。 一方、課税庁(原処分庁)は、本件建物の「課税仕入れに係る支払対価の額」が、本件売買代金額を本件建物の平成27年度の固定資産税評価額4,731,000円と本件借地権の同年度の固定資産税評価額に相当する金額41,502,976円の価額比で按分して算出した本件建物の価額28,140,020円(税込価額)であるとした。また、本件建物の減価償却費計上の基礎となる取得価額は、本件建物の価額26,055,575円(税抜価額)に仲介手数料を同様に按分して算出した189,496円(税抜価額)及び本件建物に係る固定資産税の負担精算金の44,074円(税抜価額)を合計した金額26,289,145円であるとした。 〇 本件における借地権と建物の評価額 ② 事案の争点 本件建物の「購入の代価」(法人税法施行令第54条第1項第1号イ)は、原処分庁(課税庁)が主張する固定資産税評価額を基に算定した建物価額(税抜価額)なのか否か。 ③ 審判所の判断 ④ 本裁決事例からいえること 減価償却資産の「購入の代価」については、原則として、売買契約により定められた代金額のことをいう。しかし、土地と建物が一括して売買された場合(借地権付建物が売買された場合を含む)において、それぞれの代金額が適正な価額と比較して不合理なものであるとする特段の事情があるときには、当該建物の「購入の代価」については、それがたとえ売買契約書に記載された金額である場合であっても、合理的な基準により算定される当該建物の合理的な価額を算定する必要がある、というのが本件からいえることである。 ここでいう「適正な価額と比較して不合理なものであるとする特段の事情があるとき」とは、本件のように、土地(借地権)と建物が一括して売買された場合に、売買契約の際に、土地(借地権)と建物の代金額の割付けの「操作」が容易であるため、減価償却資産である建物の代金額を減価償却費の計上額を底上げする目的で高値とし、その購入時における適正な価額から乖離するケース等をいうものと考えられる。このようなケースに該当する場合には、合理的な基準により建物の合理的な金額を算定する必要があるが、その合理的な基準とは、按分法を言い、その場合の按分基準は、土地(借地権)及び建物の双方に関し同じ時期・基準で評価することとなる固定資産税評価額を用いるのが妥当ということになると考えられる。 (4) 本件への当てはめ 土地(借地権)と建物を一括で取得しそれぞれの価額の内訳が明示されていないものは、建物の減価償却費の計算上、取得価額の合計額を合理的な方法で土地(借地権)及び建物とに按分する必要がある。この場合、実務上は、それぞれの固定資産税評価額を基に按分する方法が最も一般的と考えられる。 仮に、それ以外の方法を用いる場合において、特にその評価額を建物の方に多く計上するよう「操作」することによって、それをベースに減価償却費を過大に計上しているとの「疑念」を抱かれかねない可能性があるときには、その方法が土地(借地権)及び建物の時価の比として適切であることを納税者が立証する必要がある。 (了)

#No. 393(掲載号)
#安部 和彦
2020/11/05

Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第20回】「〔第5表〕営業権の純資産価額の算定」

Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第20回】 「〔第5表〕営業権の純資産価額の算定」   税理士 柴田 健次   Q A社は3月決算となりますが、前事業年度の10月にB社を吸収合併しており、その際に営業権を40,000,000円で取得しています。前事業年度の貸借対照表の営業権には、6ヶ月分の営業権償却を控除した36,000,000円が計上されています。 当事業年度においてA社の株式を贈与した場合におけるA社の第5表の純資産価額の計算明細書の資産の部に計上する営業権の相続税評価額及び帳簿価額はそれぞれいくらになるのでしょうか。営業権の持続年数に応じる基準年利率による複利年金現価率は9.995とします。 A社の直前事業年度以前3年間における所得の金額及び直前事業年度における総資産価額は、下記の通りとなります。A社は過去10年の間に欠損は生じたことがない会社です。 【直前事業年度以前3年間における所得の金額(単位:千円)】 (※1) 法人税法に規定する各事業年度の所得の金額。 (※2) 直前事業年度の前々事業年度においては、本社工場の移転に伴う不動産売却益として20,000,000円が発生しています。直前事業年度の前事業年度においては、取引先の倒産に伴い10,000,000円の貸倒損失が発生しています。 (※3) 銀行借入に伴う利息となります。 (※4) 損金に算入された役員報酬の金額となります。 【総資産価額】 直前期末における総資産(営業権を除く)を評価通達に定めるところにより評価した価額は700,000,000円となります。 A 第5表の純資産価額の計算明細書の資産の部に計上する営業権は下記の通りとなります。 (単位:千円)  ◆  ◆  ◆ ① 営業権の評価 営業権の評価は、帳簿価額の計上の有無に関わらず、次の算式によって計算した金額によって評価する(評価通達165・166)こととされています。平均利益金額が5,000万円以下の場合は、標準企業者報酬額が平均利益金額の2分の1以上の金額となるため、営業権の評価は0となります。 本問の場合の超過利益金額は、下記の通りマイナスとなりますので営業権の評価は0円となります。 (※) 各価額の算定方法については、以下の②~④を参照。   ② 平均利益金額の算定 平均利益金額は、課税時期の直前期末以前3年間における所得の金額の合計額の3分の1に相当する金額(その金額が、課税時期の直前期末以前1年間の所得の金額を超える場合には、課税時期の直前期末以前1年間の所得の金額とする)とします。 この場合における所得の金額は、法人税法22条1項に規定する所得の金額に損金に算入された繰越欠損金の控除額を加算した金額としますが、その所得の金額の計算の基礎に次に掲げる金額が含まれているときは、これらの金額は、いずれもなかったものとみなして計算します。 したがって、本問の場合の平均利益金額の計算は下記の通りとなります。非経常的な損益の額については符号を間違えないように留意しましょう。直前事業年度の前々事業年度の所得の金額45,000,000円の中には、非経常的な利益として不動産売却益が20,000,000円含まれており、これを除外する必要があるため、控除します。 【営業権の評価明細書(一部抜粋)】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   ③ 標準企業者報酬額の算定 標準企業者報酬額は、次に掲げる平均利益金額の区分に応じた算式により計算した金額となります。 本問の場合には、標準企業者報酬額の計算は、下記の通りとなります。   ④ 総資産価額の算定 総資産価額は、評価通達に定めるところにより評価した課税時期直前に終了した事業年度の末日における総資産の価額となります。 本問の場合には、総資産価額は700,000,000円となります。   ☆実務上のポイント☆ 帳簿価額として営業権の記載がない場合においても営業権の評価がないか確認する必要があります。平均利益金額の算定は、法人税の所得金額に損金算入の役員報酬の金額を加算等して求めることになりますので、法人税の所得金額が5,000万円以下であることをもって営業権の計上をしないという判断は計上漏れを引き起こす可能性がありますので、実務上は、営業権の評価明細書を基に計上の有無を確認する必要があります。 (了)

#No. 393(掲載号)
#柴田 健次
2020/11/05

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第3回】「居住用家屋の敷地と同時に私道を譲渡した場合」-居住用家屋の敷地の判定-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第3回】 「居住用家屋の敷地と同時に私道を譲渡した場合」 -居住用家屋の敷地の判定-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、下図のようにA土地及びB土地を所有しています。 A土地上には、Xが現に居住している家屋があり、B土地は私道として利用しています。これらの土地家屋は15年前に購入し、その後引き続き居住の用に供してきました。 本年、これらの土地家屋を同時に売却しました。 他の適用要件が具備されている場合に、家屋とその敷地であるA土地の譲渡損失について、「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができると思いますが、B土地の譲渡損失についても同特例の適用を受けることができるでしょうか。 A B土地の譲渡損失についても「居住用財産買換の譲渡損失特例」の適用対象とすることができます。 ●○●○解説○●○● 本事例の場合の私道の用に供されているB土地については、その土地と同時に譲渡された家屋がその者の居住の用に供している家屋に該当するものであり、かつ、その土地が、その家屋と一体として利用されているものである限り、「居住用財産買換の譲渡損失特例」の適用対象とすることができます。 この場合に、その土地が、居住用家屋の敷地として相当の範囲内のものであり、その家屋と一体として利用されているかどうかは、社会通念に従って判定するものとされています(措通31の3-12(居住用家屋の敷地の判定)、措通41の5の2-7(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱い等の準用))。 なお、この取扱い規定は、「特定居住用財産の譲渡損失特例(措法41の5の2)」についても準用されます(措通41の5の2-7(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱い等の準用))。 (了)

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2020/11/05
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