《速報解説》 金融庁、「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・ 監督の考え方と進め方」(案)を公表 ~一律の内部管理体制を求めず金融機関の個性・特性に着目した検査・監督へ~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 令和元(2019)年9月10日、金融庁は、「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」(案)を公表し、意見募集を行っている。 「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」(平成30年6月29日)を踏まえ、融資の観点から「金融システムの安定」と「金融仲介機能の発揮」のバランスの取れた実現を目指す当局の検査・監督の考え方と進め方を整理したものである。 「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」では、平成31年4月1日以降を目途に検査マニュアルを廃止する予定とされている。 意見募集期間は令和元(2019)年10月11日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 表紙を含めて48ページあるが、概要も公表されている。 以下では、主な内容について解説する。 1 融資に関する検査・監督の基本的な考え方 次の考え方が示されている。 2 融資に関する検査・監督の進め方 次の考え方が示されている。 3 信用リスク情報の引当への反映 金融機関が自らの融資ポートフォリオの信用リスクを引当に反映しようとする取組みについて検査・監督を行うに際しては、以下のような基本的な視点が重要と考えられるとしている。 そのうえで、金融検査マニュアル別表に基づいて定着している現状の実務を否定せず、現在の債務者区分を出発点に、現行の会計基準に沿って、金融機関が自らの融資方針や債務者の実態等を踏まえ、認識している信用リスクをより的確に引当に反映するための見積りの道筋を示すとし、①一般貸倒引当金の見積りにあたっての基本的考え方・見積りにあたっての視点、②個別貸倒引当金の見積りにあたっての基本的考え方・見積りにあたっての視点が記載されている。 4 会計監査人との関係 会計監査は、予想損失が財務諸表上に正確に表現され、出資者(株主等)や預金者といったステークホルダーに対する正確な財務報告となり、有用な意思決定の材料となることを目的とするものであるが、その前提として、経営理念等から出発して、融資ポートフォリオの信用リスクの特定・評価というプロセスを経ることが当該目的にも資するものと考えられるとしている。 そのうえで、当該信用リスクの財務会計上の償却・引当への反映も、第一次的には経営陣の判断によって行われるべきであるが、それが会計上適切になされているか否かに関する監査は会計監査人の職責であり、当局は、これらの経営陣の判断や専門的意見が信用リスクの特定・評価のプロセスを適切に経たものである限り、これらの判断や意見を尊重することが適切であると考えられるとしている。 (了)
2019年9月12日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.335を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第80回】 「シャウプ勧告から読み解く租税法解釈(その2)」 中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 Ⅲ シャウプ勧告が租税実体法の解釈に及ぼす影響 1 所得税法にみるシャウプ勧告の影響 以下、判決を素材としてシャウプ勧告が租税法上の解釈に如何なる影響を及ぼしているか、具体例を挙げながら考察を加えることとしよう。 (1) 所得税法59条を巡る議論 所得税法59条1項は、次のようにみなし譲渡課税制度を規定する。 これは、一定の贈与等や著しく低い対価による譲渡について、時価による譲渡があったものとみなして課税をする規定であるが、「法人に対するものに限る」として、その範囲が限定されているところに注目する必要があろう(相続の場合は、限定承認に係るものに限る。)。 所得税法にみなし譲渡課税制度が導入されたのは、シャウプ勧告に淵源がある。 すなわち、シャウプ勧告は、次のように述べている。 つまり、シャウプ勧告を要約すれば、次の3段階によって、みなし譲渡所得課税が説明されることになる。 昭和25年の税制改正では、この勧告に従って所得税法にみなし譲渡課税が創設されたのである(もっとも、シャウプ勧告は低額譲渡についてまで言及しているわけではないが、法制的検討の段階で贈与に対する「みなし譲渡課税」の論理的アナロジーとして租税法に規定されたものである(植松守雄「『低額譲渡』をめぐる税法上の諸問題」税務弘報19頁(1975)))。 しかしながら、譲渡による実際の収入がない場合においても課税が生じる制度は、日本の納税者や税務官吏になかなか受け入れられず、税務執行面で抵抗を受け、その後のめまぐるしい改正によって「骨抜き」が進んだ。 すなわち、昭和27年に相続及び相続人に対する遺贈が「みなし譲渡」の対象から除外され、贈与および低額譲渡の場合の「みなし譲渡」も、昭和48年に原則的に廃止され、今日ではシャウプ税制はほとんど痕跡をとどめるだけのものになったとの指摘がある(植松・前掲稿19頁)。 そのような中にあって、シャウプ勧告はみなし譲渡所得課税の解釈適用において何らかの意味を有するのであろうか。 この点に一部言及しているとも思われる事例として、新潟地裁平成14年11月28日判決(訟月53巻9号2703頁)がある。 この事件においては、土地改良区への農地転用決済金及び協力金等の譲渡費用該当性が争われた。 すなわち、土地改良区内にある農地を農地以外に転用して譲渡する場合、土地改良法の規定などにより農地転用決済金等の支払義務が生じることがあるところ、かかる決済金等を譲渡費用に含めることができるか否かが争点とされたものである。 この点、納税者X(原告)は、「現行の所得税法の下においては、譲渡所得の本質は被告が主張するような『その資産にすでに生じている抽象的な増加益』から、『その資産にすでに生じている増加益のうち実際の取引によって実現した増加益』に変更され、これに応じて課税所得も税負担を求めるにふさわしい貨幣財を伴った担税力ある所得として考えなければならない。」と主張している。 すなわち、これは、繰り延べられてきた含み益(「その資産にすでに生じている抽象的な増加益」)に対する課税ではなく、「貨幣財を伴った」、いわば現実の収入がある部分ないしは現実に支出した部分を控除した金額について課税がなされるべきとする主張であると思われる。 これまでの所得税法の改正経緯からかような主張がなされたのであるが、これに対し、新潟地裁平成14年11月28日判決(訟月53巻9号2703頁)は、Xの主張を排斥した。 新潟地裁は、このように原則論を述べた上で、「Xは、所得税法59条の改正の経緯や資産の譲渡の結果譲渡人が取得する金員に着目して、資産の譲渡に係る当事者間の交渉において付された条件を満たすために支出された種々の費用や経費は全て譲渡費用に当たると主張するようである。」として、所得税法59条の改正経緯を整理する。 そして、結論として、かかる改正経緯と譲渡費用の問題とは峻別すべきであるとしている。 要するに、現実の収入に着目した改正がなされてきたとはいっても、そのことが直接、譲渡費用の解釈に影響を及ぼすものではないということであろう。 このように、新潟地裁は、シャウプ勧告を契機に始まったみなし譲渡所得課税の改正経緯の議論を、必ずしも譲渡費用の議論において考慮する必要はないとの立場にいるようであり、シャウプ勧告との切断を論じているものともいえよう。 もっとも、みなし譲渡所得についてのシャウプ勧告の考え方は、上記のとおり「骨抜き」にされてきたところ、現行の所得税法59条の解釈にシャウプ勧告の影響がどのように及ぶかについては、新潟地裁の判示からは明らかではない。 なお、この事件は、控訴審東京高裁平成15年5月15日判決(訟月53巻9号2715頁)において維持されたものの、上告審最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(集民220号141頁)で破棄差戻とされ、東京高裁平成18年9月14日判決(訟月53巻9号2723頁)において原判決取消で確定している(ここでは詳細は割愛するが、その後、国税局は「土地改良区内の農地の転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われた農地転用決済金等がある場合における譲渡費用の取扱いについて(法令解釈通達)」を発遣している。)。 (2) 所得税法56条を巡る事例 所得税法36条《収入金額》1項及び同法37条《必要経費》1項の「別段の定め」である同法56条《事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例》は、同一生計内親族間における役務提供があったとしても、そこにいう親族を独立した所得稼得単位としてみることをせず、同一生計内親族に支払った費用は必要経費に算入しない代わりに、対価の支払を受け取った親族の収入金額にもしない等と規定している。 東京地裁平成15年7月16日判決(判時1891号44頁)の事例において、X(原告・控訴人・上告人)は次のように主張している。 このように、シャウプ勧告が、「要領のよい納税者」が家族内で所得分散を行うことによって累進税率の適用を免れようとすることを防止するために、所得税法56条の創設を提言したものである点を強調すれば、かような租税回避の意思を有しない取引において同条の規定の適用を認めることは、法の趣旨を逸脱しているという主張もたびたびなされるところである。 上記事件において、Xは、さらに以下のとおり主張を続けている。 こうしたXの主張にあるように、親族間で異なる独立した事業活動を行っている場合には所得税法56条の適用は否定されるべきか否かが争点とされるなどする事例も少なくない。 そもそも、昭和25年所得税法改正によって、同条が創設されたのであるが、その立法を巡る昭和25年2月24日衆議院委員会で当時の大蔵大臣は、シャウプ勧告の趣旨、すなわち、合算課税の対象を納税者にその親族が雇用されている場合を前提とするとの趣旨をそのまま引き継いだものである旨論じていたのである。 その点もXは主張に盛り込み、同条の規定の適用につき、限定的になされるべき旨を主張した。 これに対して、税務署長Y(被告・被控訴人・被上告人)は、同条は、シャウプ勧告のいう「要領のよい納税者」の行う租税回避的な行為を封ずるという趣旨と、本来必要経費と認めるべき労務の対価等についても、それが家計費、すなわち所得税法45条《家事関連費等の必要経費不算入等》にいう家事関連費との区別が困難であることを理由に、一律に経費に算入しないこととしたものという2つの意義を有すると反論したのである。 これらの主張に対し、東京地裁は次のように判示した。 そして、この判断を東京高裁平成16年6月9日判決(判時1891号18頁)も維持したのである。 その後、この事件は上告審までもつれ込んだが、上告審最高裁平成17年7月5日第三小法廷判決(税資255号順号10070)は原審判断を妥当とした。 シャウプ勧告がいう「要領のよい納税者」に対する租税回避否認規定として、所得税法56条があるのであるから、租税回避事案以外の事案に同条を適用することは法の趣旨に反するものであるとの主張がXの理論構成である。 しかしながら、かかる主張は、そもそも、シャウプ勧告が指摘するとおりに、同条が創設されたものではなく、所得税法45条にいう必要経費に算入することのできない家事費ないし家事関連費が混在することを防止する目的で同法56条が規定されたのであって、同条の創設が必ずしもシャウプ勧告のいう目的でのみなされたものではないとして排斥されたのである。 このように、シャウプ勧告の指摘するとおりに所得税法を解釈すべきとする主張や見解に対しては、現行所得税法が、必ずしもシャウプ勧告どおりに規定されているものとはいえないとして、シャウプ勧告の思考に基づく法解釈が否定されている事例が散見されるのである。 2 相続税法にみるシャウプ勧告の影響 相続税法7条《贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合》は、著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があった時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があった時における当該財産の時価との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与により取得したものとみなすとする規定である。 この規定の解釈適用を巡っても、シャウプ勧告の影響が及ぶものか議論されることがある。 例えば、さいたま地裁平成17年1月12日判決(税資255号順号9885)におけるX(原告)の主張は、相続税法7条が本件に適用されるかどうかに関して次のようなものであった。すなわち、Xは、「相続税法7条は、昭和25年シャウプ勧告により、課税の公平を図るため、贈与を売買の形式を用いて免れる者に対して課税する目的で創設された規定である。」とし、相続税法7条創設時の納税義務者が、次のとおり規定されていた点を指摘する。 つまり、シャウプ勧告により創設された相続税法7条のみなし贈与により課税されるのは相続税だったのであり、このことからも、課税の対象は、相続税を免れる行為だったと考えられるというのである。 その後、昭和28年の相続税法改正により、贈与税部分を1条の2(当時)に独立したが、立法趣旨等についての考え方ないし扱い方は従来どおりであったという立法経緯からして、同法7条は、相続税を免れるために行われたと認められる低額譲受にのみ適用されるものと限定解釈されなければならないというのがXの主張であった。 したがって、相続税法7条の射程範囲は、相続予定者等の親族に該当する者を対象とする低額譲受と解すべきであるという。 これに対して、さいたま地裁は、Xの主張を排斥した。 そして、さいたま地裁は、「Xに贈与意思や租税回避の目的がないことをもって本件には相続税法7条が適用される前提を欠くとするXの主張は理由がなく、採用できない。」としてXの主張を排斥した。 このようにみてくると、シャウプ勧告の内容が直截、現行租税法の解釈に影響を及ぼす余地はないと解すべきなのであろうか。 (続く)
事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第9回】 「多額の資本金等となる場合の合同会社の利用」 太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 日野 有裕 相談内容 私Xは、父親から引き継いだ建設業を経営してきました。今後は同族による経営を維持していくのは難しいので、利益の出ているうちに現金化した方が良いと考え、先日、私が所有するすべての株式を投資ファンドに40億円で売却しました。この譲渡に係る所得税を支払った後は、約30億円が手元に残る予定です。 私は50代で、今後の人生を考えると引退するには早いし、2人の子もまだ高校生と中学生なので、親が働かない姿を見せるのは教育上良くないと考えています。したがって、今後は手元にある30億円を使って不動産事業を行おうと考えており、将来はその事業を子供に引き継いでいくつもりです。 不動産事業は当面私1人で運営しようと考えていますが、個人名義ではなく法人名義で事業を行いたいと思っています。ただ、私には法人を設立した経験がなく、将来の子どもたちへの事業承継に備えて、どのような点に注意すればよいでしょうか。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 法人への資金注入方法の検討 法人への資金の注入方法としては、主に、(1)Xからの出資と(2)Xからの貸付けの2つの方法が考えられます。どちらを選ぶかの判断基準の1つとして、相続時の財産評価があります。 (1) 「出資」の場合の相続時の財産評価 会社に資本として出資した場合、Xは株式を保有することになり、その株式の評価額は、相続税に係る評価方法を定めた財産評価基本通達によることになります。 不動産の取得時期や会社の収益等にもよりますが、一般的には株式の取得価額(ここでは30億円)よりも相続税評価額の方が低く評価されることが多いため、同じ30億円を現金で持つよりも株式にした方が、財産評価の面では有利となります。 Xは50代とまだ若く、出資後に、その法人の株式評価の引下げ対策や、株式の承継準備、相続税の納税資金対策をじっくり行うことができるので、出資(30億円)による法人設立は検討すべき選択肢です。 (2) 「貸付け」の場合の相続時の財産評価 設立法人へ30億円を貸し付ける場合は、Xの現金が貸付金に代わるのみであり、相続時の評価はそのまま30億円となります。 [2] 合同会社設立の検討 会社設立の形態としては株式会社が一般的ですが、合同会社も検討の1つとして考えるべきです。 近年、合同会社の設立も増加しつつありますが、その内容についてはあまり知られていないところがあります。合同会社は、以下のように、出資者の有限責任が確保されつつ、柔軟な運営が可能となる法人です。 (1) 株式会社と合同会社の主な相違点 (2) 設立コスト 法人の設立費用のうち一番大きいのは、登記される資本金の額に応じて課される登録免許税です。この登録免許税は、資本金の額に0.7%を乗じて計算されます。 ご相談の場合、株式会社と合同会社では、登録免許税はそれぞれ以下の通りとなります。合同会社の資本金を小さくすることにより、登録免許税を1,000万円以上節約できます。 (3) 機関設計等 当面はX1人で運営するということであれば、任期のない合同会社で、Xが代表社員となればよいと考えます。将来、例えば出資者でない子や血縁関係のないビジネスパートナーを役員として受け入れる必要が生じた場合は、その時点で株式会社への転換を検討すべきです(合同会社から株式会社、株式会社から合同会社へは、一定の手続を経て組織変更することができます)。 [3] 結論 ご相談の場合、会社へは30億円出資し、合同会社形態で設立するのも1つの選択肢と考えます。 ところで、不動産投資は、相続税を節税できるかどうかではなく、第一にビジネスとして成り立つかどうかで判断する必要があります。そして、会社の形態については、将来どのような事業展開を行うかを想定して決定すべき事項であり、設立費等のコストについては判断材料の1つとして考えるべきです。 なお、実際の会社設立・出資の際には、司法書士・税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。 (了)
さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第51回】 「相続税延滞税事件」 ~最判平成26年12月12日(集民248号165頁)~ 弁護士 菊田 雅裕 (了)
谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第19回】 「租税法律主義と実質主義との相克」 -税法の目的論的解釈の過形成【補遺(続・完)】- 大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫 Ⅲ 税法基準による目的論的解釈の過形成 1 「過形成」の原因 以上で検討してきたところからすると、東京地裁も東京高裁も税法基準による目的論的解釈を行っているが、両者の目的論的解釈は射程を異にしており、東京地裁はその射程が「資本剰余金のみを原資とする剰余金の配当及び資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」すなわち混合配当一般に及ぶものとするのに対して、東京高裁はその射程を混合配当のうち「いずれの配当が先に行われたとみるかによって課税関係に差異が生ずるもの」すなわち配当先後関係問題が生ずるものに限定しているといえよう(両判決における文理解釈に関する判示部分と目的論的解釈に関する判示部分とを接続する接続詞(「また」と「もっとも」)の違いにも注意されたい)。 そうすると、本件東京地判における税法基準による目的論的解釈は、混合配当のうち配当先後関係問題が生じないものにまでその射程を及ぼす点では、「過形成」の領域に踏み込んでいることになる。つまり、Ⅱ3で引用した本件東京高判の3つ目の判示にいう「許される拡張解釈の限度を超えるおそれ」は、配当先後関係問題が生じない場合には、現実のものとなるのである。 本件では、東京地裁の次の説示すなわち「払戻法人の簿価純資産価額が当該剰余金の配当直前の資本金等の額を下回る場合(Y主張の別表2-1によれば、本件はこの場合に当たる。)、すなわち、当該剰余金の配当直前の利益積立金額が0未満(マイナス)である場合」(後記2での引用判示の一部。下線筆者)との説示にみられるように、利益積立金額がマイナスとなっているが、そのような場合には配当先後関係問題が生じないことは、次のとおり的確に論証されている(太田=伊藤編著・前掲書547-550頁[園浦]。太字・下線原文)。税法基準による目的論的解釈の過形成の成否を決する重要な論証であるから、少し長くなるがそのまま引用しておこう。 本件東京高判は、利益積立金額がマイナスである場合に本件が当たることを前提にして、次の見解(太田=伊藤編著・前掲書551-552頁[園浦]。下線筆者)と同様の立場に立って、本件における第1の争点(法税24条1項3号にいう「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)」の意義)に関する判断(Ⅱ3)に基づき、本件配当を配当先後関係問題が生ずる混合配当とは認めず、本件資本配当には法人税法24条1項3号を、本件利益配当には同法23条1項1号をそれぞれ適用する旨の判断を示したものと解される。 なお、以上の検討からすると、本件東京高判のように、税法基準による目的論的解釈の射程を、混合配当のうち配当先後関係問題が生ずるものに限定するのは、極めて論理的で説得力があるように思われるが、それにもかかわらず、本件東京地判は、なぜ「過形成」の領域に踏み込んだのであろうか。それは、Ⅱ1で引用した2つ目の判示で明確に述べられているように、東京地裁が国(Y)の主張の合理性を特段の限定なしに認めたためであると考えられる。 その判示では、配当先後関係問題を「恣意性」や「課税の公平性を損なうこと」の観点から検討した上で、国(Y)の主張の合理性を認めているが、この点について次のような的確な指摘(佐藤修二「判批」税務弘報66巻9号(2018年)139頁、142-143頁。下線筆者)がされている。 この指摘は、剰余金の配当に関する会社法上の原資・時期選択可能性(Ⅱ2参照)と課税の公平性との相克(一般化すれば、私法基準と税法基準との相克)を鋭く突くものであるが、税務行政には後者を重視する傾向がみられる。混合配当に関する次の見解(小山・前掲論文81-82頁。下線筆者)は、(配当先後関係問題それ自体を扱うものではないが)その傾向を端的に示しているように思われる。 この見解にみられる思考方法・思考過程は、本連載の第6回から「租税法律主義と実質主義との相克」という主題の下で検討してきた、実質主義に基づく税法の解釈適用の「過形成」の場面でしばしばみられる思考方法・思考過程に通ずるところがあるように思われる。 ともかく、税法基準による目的論的解釈の過形成の「遠因」は、納税者が私法上選択した行為よりも課税の公平を重視する解釈姿勢にあるといってよかろう。 2 「過形成」が惹起した別の問題 ところで、本件東京地判においては、税法基準による目的論的解釈は、混合配当に関する配当先後関係問題の解決という趣旨・目的に基づく取扱いを、配当先後関係問題が生じない混合配当にまで及ぼし、混合配当一般について利益剰余金を原資とする配当を、資本剰余金を原資とする配当と取り扱うという結果を正当化するものであるが、それが「過形成」の領域に踏み込むものであることは既に述べたところである。 税法基準による目的論的解釈の過形成は、それ自体、租税法律主義の下では許容されない「解釈」(法創造)であると考えられるが、本件東京地判においては、別の問題を惹起した。それは、法人税法24条3項による委任を受けて定められた同法施行令23条1項3号の委任範囲逸脱の問題である。この問題について、本件東京地判は次の判断を示した(下線筆者)。 利益積立金額がマイナスである場合に行われた混合配当について、プロラタ計算(Ⅱ2参照)を行うと、資本金等額対純資産比率(=資本金等の額÷(資本金等の額+利益積立金額))が1より大きくなり、払戻等対応資本金額等が資本剰余金の減少額を上回ることになるため、利益剰余金を原資とする配当が払戻等対応資本金額等に、したがって、対応資本金等の額(法税24条1項柱書にいう「当該法人の資本金等の額・・・・・・のうちその交付の基因となった当該法人の株式又は出資に対応する部分の金額」)に含まれるという結果が生ずることは、プロラタ計算の算式から明らかである。 その計算結果を、「利益剰余金を原資とする部分の剰余金の配当の額が、同法24条1項柱書きの『株式又は出資に対応する部分の金額』に含まれて同法61条の2第1項1号にいう有価証券の譲渡に係る対価の額として認識され、法人税の課税を受けることとなる」(本件東京地判)とみるか、あるいは「[混合配当について配当先後関係問題が生じない場合に]利益剰余金を原資とする配当の一部について税務上は利益の配当としての性質を否認するという『みなし資本の払戻し』規定を明文の規定なく創設した」(太田=伊藤編著・前掲書552頁[園浦])とみるかはともかく、その計算結果が許容されないものであることに異論はなかろう。 本件東京地判の前記判断は、このように、その枠内では、妥当な判断である。しかしながら、そもそも、本件東京高判のように、法人税法24条1項3号にいう「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)」を「資本剰余金を原資とする配当」の意味に解し、混合配当のうち配当先後関係問題が生ずるものに限って、例外的に、これを「資本の払戻し」として整理し、利益剰余金を原資とする配当を、その限りで、資本剰余金を原資とする配当として取り扱うという判断を行っていたとすれば、利益積立金額がマイナスの場合には配当先後関係問題は生じない以上、委任命令規定の委任範囲逸脱の問題について判断する必要はなかったのである。なお、本件東京高判は、「本件の経緯に鑑みて、念のため」として、この問題について仮定的な検討を行い、本件東京地判の判断を引用している。 要するに、本件東京地判は、税法基準による目的論的解釈の過形成の結果、その過形成がなければ判断する必要がなかったであろう委任命令規定の委任範囲逸脱の問題についてまで判断するという、あたかも「ボタンの掛け違い」を前提にしたかのような判断をしてしまったのである。 Ⅳ おわりに 本件東京地判における税法基準による目的論的解釈の過形成について、その「遠因」が、納税者が私法上選択した行為よりも課税の公平を重視する解釈姿勢にあることは既にⅢ1で述べたが、そのより直接的な原因は、目的論的解釈が補完すべき文理解釈の側にもあることを忘れてはならない。最後に、この点について若干検討しておくことにする。 本件東京地判における文理解釈に関する判示(下線筆者)を以下にもう一度引用しておこう。 本件東京地判は、確かに、法人税法24条1項3号及び同法23条1項1号の規定の文言・法文に着目してはいるが、ただ、同地判が解釈結果を導き出す上で決定的な意味をもったのは、両規定が「対」の関係にあるという意味での「文理」及びそれの「論理的帰結」であると解される。したがって、本件東京地判における解釈は、文理解釈ではあるが、論理解釈の要素をも含んでいると解されるが故に、「純粋な意味での文理解釈」(法規の文言・法文を重視しそれにできる限り忠実に行う解釈)とはいえないように思われる。 論理解釈は体系的解釈ともいわれるが、この解釈方法については次のような定義及び解説がされている(田中成明『現代法理学』(有斐閣・2011年)467-468頁。下線筆者)。 このように、本件東京地判における文理解釈の中には、「文理の論理的帰結」という論理操作を通じて、論理解釈の要素が混入していると解されるが、そうすると、論理解釈が法規相互の体系的関連の確定のために目的論的判断を基準とする点で目的論的解釈と親和性がある以上、本件東京地判については、課税の公平のために配当先後関係問題を解決するという目的論的判断が目的論的解釈の基準とされているだけでなく、文理解釈に混入している論理解釈の要素を介して、文理解釈それ自体にも反映されているのではないかとの疑念が生じてくる。 そのような疑念は本件東京地判の次の判示(Ⅱ1の2つ目の引用判示の一部。下線筆者)によって一層大きくなるように思われる。 上記の判示にいう「含みを持たせた規定振り」が意味するのは、「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うもの・・・)」が「資本剰余金のみを原資とする剰余金の配当」だけでなく「資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」を含むということである。このことは、本件東京地判における税法基準による目的論的解釈の射程が混合配当一般に及ぶことと一致する。 そうすると、本件東京地判が①文理解釈を補完しその結果を正当化するために目的論的解釈を行ったのか、あるいは②目的論的解釈の基準とした「趣旨」(すなわち、課税の公平のために配当先後関係問題を解決するという目的論的判断)を、文理解釈に混入している論理解釈を通じて、文理解釈の結果に反映させたのか、必ずしも判然としないように思われる。 そのような疑念を払拭するためには、まずは、本件東京高判が「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うもの・・・)」について「もの」及び「・・・に伴う」という文言に忠実な解釈を行ったように(Ⅱ3の1つ目の判示のア)、「純粋な意味での文理解釈」によるべきであり、その上で、税法基準による目的論的解釈の射程を限定し、そのような目的論的解釈をも踏まえて最終的な解釈結果を導き出すようにすべきであろう。本件東京地判の前記判示に対する本件東京高判の次の判示(下線筆者)は正当である。 要するに、目的論的判断の要素を含まない「純粋な意味での文理解釈」こそが、租税法律主義の下での厳格な解釈の要請に最もよく適合し(【44】参照)、目的論的解釈の「過形成」に対する歯止めともなると考えるところである。 (了)
最近の子会社不正をめぐる傾向と防止策 【第2回】 「持株会社による事業会社の統制」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 主に2019年になって公表された調査報告書から、「子会社不正」について検討する本連載の【第2回】は、「持株会社による事業会社の統制」をテーマとして取り上げる。 上場している持株会社の数について、直近での統計値は見当たらず、少し古いデータではあるが、独立行政法人経済産業研究所の調査では、2013年までに移行を予定している企業を合わせると425社に達するということであった。この数はその後も増え続けているものと考えられる。 持株会社化の目的としては、 の2つに大別されるが、本稿では(1)の事案として、すてきナイスグループ株式会社、(2)の事案として、株式会社LIXILグループについて、それぞれの子会社において発生した不適切な会計処理について、調査報告書の内容を概説したうえで、再発防止策を検討する。 また、持株会社ではないものの、コーポレート・ガバナンスの要となる親会社による販売子会社の統制について、ホシザキ株式会社の事案をもとに検討する。 1 株式会社LIXILグループ、連結子会社における不適切な会計処理 2019年6月に開催された上場会社の株主総会のうちで、最も注目を集めていたのは、株式会社LIXILグループ(以下「LIXILグループ」と略称する)であった。2018年10月以来、対立が伝えられていた潮田洋一郎氏(代表執行役会長兼CEO)と前CEOである瀬戸欣哉氏のどちらが株主の信任を得て、LIXILグループを率いていくこととなるのかに係る株主総会の結果については、本稿の主旨からは逸れるため、ここでは論じない。 ただ、LIXILグループのコーポレート・ガバナンスを考えるうえで1つ強調しておきたいことは、連結売上高1兆8,000億円、約300社の事業会社を有するLIXILグループではあるが、本体の従業員はわずか56名しかいないという事実である。 (1) 連結子会社における不正 LIXILグループは2019年2月8日、「当社子会社における不適切な取引行為に係る特別調査委員会設置に関するお知らせ」を公表して、連結子会社である株式会社LIXILリニューアル(以下「LIXILリニューアル」と略称する)において、内部監査部門からの内部通報に基づき調査した結果、社内業績評価指標の達成を企図した実態のない受注物件が存在していたことを明らかにした。 (2) 特別調査委員会による調査結果 特別調査委員会は、調査開始後、株式会社LIXIL(以下「LIXIL」と略称する)のビルディングテクノロジー事業部門において、すでに社内調査が実施され、先行売上が行われていたこと、連結子会社株式会社LIXIL鈴木シャッター(以下「LIXIL鈴木シャッター」と略称する)で不適切な会計処理を示唆する匿名の情報提供があったことを把握した。 そこで、委員会は、調査対象をLIXILリニューアル、LIXILのビルディングテクノロジー事業部門、LIXIL鈴木シャッターなどに拡張して調査を行った。 調査の結果、対象企業においては、過年度より、①工事完了日を操作し、売上計上基準に違反して早期に売上を計上する行為、②受注物件を恣意的に分割し、工事が完了したものだけ早期に売上を計上する行為が、合計723件認められた。 委員会は、これら売上の先行計上は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠していないものと判断している。 (3) LIXILグループの内部監査体制 指名委員会等設置会社であるLIXILグループの2019年3月期有価証券報告書における「コーポレート・ガバナンスの体制図(p.49)には、「内部監査」という組織の記載がない。一方、有価証券報告書74ページには、「内部監査の状況」について、次のような記述がある。 これら2つの記載内容から、LIXILグループでは、持株会社には内部監査部門を置かず、主要な事業子会社(例えばLIXILなど)に内部監査部門を配置し、監査委員、会計監査人と相互に連携していることがうかがえる。 (4) 再発防止策の提言 特別委員会による「再発防止策の提言」は「不正のトライアングル仮説」に基づき、「機会」、「正当性化」及び「動機」のそれぞれを排除する方法論となっていて、とくに、スリー・ライン・ディフェンスの考えに立脚した「機会」の排除については、一般的な再発防止策としては、参考になる記述であった。 ただ、提言された再発防止策では、LIXILグループが持株会社であり、限られた人的資源で約300社の事業会社をどのようにコントロールしていくべきかという視点が欠けている点には不満が残る。 例えば、事業子会社であるLIXILの内部監査部門が、持株会社の監査委員とどのように連携するのが望ましいのか、事業子会社の内部監査計画や監査結果報告に責任を持つ役職として、持株会社にどのような組織を置き、人員を配置すべきなのかといったことは、現状のLIXILグループにおける運用と比較したうえで、是正すべきところがあれば提言として報告すべきだったといえるのではないだろうか。 2 すてきナイスグループ株式会社 2019(令和元)年7月25日、すてきナイスグループ株式会社(以下「すてきナイス」と略称する)は、同社の元代表取締役会長兼CEOの平田恒一郎氏(以下「平田元会長」と略称する)をはじめとする3名の元取締役が、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)で、横浜地方検察庁に逮捕されたというリリースを公表した。 逮捕との因果関係は不明であるが、すてきナイスは、その前日、第三者委員会による調査報告書を受領して、公表していた。 (1) 嫌疑の概要 すてきナイスは、平成26年10月31日、2015(平成27)年3月期決算の業績予想における売上高をそれまでの267,000百万円から、250,000百万円に下方修正した。しかし、実態はさらに業績悪化が進んでおり、すてきナイス及び中核の事業会社である株式会社ナイス(以下「ナイス」と略称する)経営陣は、グループ外支配会社(※)に対する土地やマンションなどの不動産販売、投資有価証券の売却、連結対象としていなかった子会社のうち業績の良い子会社等を連結に組み入れるなどの決算対策を行った。その結果、公表した実績は、売上高235,775百万円となり、予想との比較で△14,225百万円(△5.7%)にとどまった。 (※) 第三者委員会の定義によれば、「すてきナイスと直接又は間接の資本関係がないものの実質的にナイスグループが支配している会社」であり、本件では、平田元会長個人が大株主であり、ナイスグループ社員が取締役に就任していることなどが問題視された。 第三者委員会設置の経緯となったのは、このうち、グループ外支配会社2社に対する土地やマンションなどの販売について、売上として計上することが会計基準に違反していないかどうかということである。 第三者委員会は、このうち1社との取引について、「すてきナイスの平成27年3月期の『決算対策』として、経済的実体のない売上・利益の計上目的」で行われたものであったこと、ナイスが実質的に支配していることから子会社と認定されること、また、譲渡不動産の対価がナイスグループの他社からの融資によって決済されていることから、「財貨の移転」がなされているとはいいがたいことなどを理由に、本件不動産の販売とそれに伴う仲介手数料の売上計上は認められないと判断した。 (2) 監査役による会計監査人への相談 第三者委員会によって売上計上が不適切であったと判断された取引については、当時、すてきナイス及びナイスの常勤監査役であった神長博志氏が、会計上の疑義があると感じて、平成27年4月に、すてきナイスの会計監査人である監査法人原会計事務所の公認会計士に報告・相談しているが、同公認会計士は、同年5月ころ、「ザナック(筆者注:販売先の会社)が関係会社に当たると仮定しても、取引に会計上の問題はない」旨の説明を行ったということである。 これに対し、第三者委員会は、連結の範囲の検討や嫌疑の対象となった不動産販売取引に関する監査手続き及び判断について、すてきナイスの主張を批判的に検討すべきものと考えられる場面が存在し、より慎重な対応が求められたものと思料するとコメントしている(報告書p.169)。 なお、原会計事務所は、昭和37年当時の東証2部上場時からすてきナイスの会計監査を担当しているということであり、こうした長い受任期間が原因で、「馴れ合いや緊張感の欠如によって監査上の判断が甘くなる」ことが原因の1つとして指摘されるようであれば、現在、議論が進められている「会計監査人のローテーション制度」の導入に一石を投じるものとなるかもしれない。 (3) 原因分析 第三者委員会は、「直接的な原因」として、「動機」「機会」「正当化事由」という、「不正のトライアングル仮説」に基づく分析を行った後、「背景事情(間接的な原因)」として、次の7項目を挙げている。 今回逮捕が報じられた創業家出身で大株主でもある平田元会長の強い影響力を原因のトップに挙げ、その結果として、再発防止策のトップには「経営陣の刷新」が提言されている。こうした原因分析は、嫌疑の対象となった不動産取引について、平田元会長が了解していたという事実に基因している。 また、「ガバナンス、内部統制の不全」の中では、すてきナイス及びナイスに共通する内部監査部門について、「1人又は2人が担当しているに過ぎなかった」うえ、ナイスの監査室は「社長直轄の組織ではなく、経営推進本部の管轄下にあり、経理部を含む経営推進本部に対して適正に牽制機能を果たすことが難しい組織となっていた」と指摘して、不適切な不動産販売取引が行われたことの間接的な原因としている。 なお、すてきナイスグループ全体の従業員数2,654名に対し、持株会社の従業員数は20名であり、有価証券報告書によれば、「総務及び財務等の管理部門」の人員であるということである(2019年3月期有価証券報告書p.8)。 3 ホシザキ株式会社、販売子会社における不適切な売上計上 ホシザキ株式会社(以下「ホシザキ」と略称する)の連結子会社である地域販売会社のうち複数で、不適切な会計処理が行われていた事案については、弊誌連載中の「会計不正調査報告書を読む」【第88回】でも取り上げたところである。 ホシザキは純粋な持株会社ではないものの、主力製品であるフードサービス機器の研究開発と製造を親会社であるホシザキが行い、国内に15社ある販売子会社が地域ごとの販売と保守サービスを行うという役割分担のもと、成長を続けていた。 グループ全体の従業員12,982人のうち、親会社の人員は1,160人であり、少数の親会社従業員がグループ全体のコーポレート・ガバナンスを司るという点では、持株会社に類似した統治機構を有しているといえるだろう。 (1) 販売子会社による不正の手口 第三者委員会が調査対象とした不正行為の類型は次のとおりである。 国内販売を行う15社のうち、5社で同様の不正が行われていたことが、調査の結果、判明している。 (2) 取締役の兼務状況 第三者委員会が挙げた原因のうち、ホシザキに特有な原因として、取締役の過剰な兼務を見ておきたい。 調査時点において、ホシザキの国内販社15社のうち、国内営業部門担当である常務取締役丸山暁氏は10社で取締役(うち8社では代表取締役社長)を兼務し、取締役の尾﨑司氏は4社で取締役(うち1社では代表取締役社長)を兼務していた。しかも、こうした「特異な人事」は、10年以上前から続いていた。 その後、6社で社長交代があり、両氏の兼務負担は減少しているようだが、それでも、第三者委員会が「再発防止策」として提言した「大幅な人事刷新」と「次世代を担う経営人材の育成」が急務であることは間違いない。 (3) ホシザキにおける内部監査体制 ホシザキの2019年3月期有価証券報告書に記載されたコーポレート・ガバナンス体制図によれば、ホシザキの内部監査室は、監査等委員会、会計監査人と連携しながら、ホシザキの執行部門及びグループ会社の内部監査を行うことが明示されている(p.35)。そのうえで、「内部監査及び監査等委員監査の状況」には以下のように記載されている(p.37から一部抜粋)。 (4) コンプライアンス・内部統制強化策 ホシザキは、5月29日に「コンプライアンス・内部統制強化策等について」をリリースして、以下のとおり、「コンプライアンス・内部統制強化策」を公表した。 全文でA4用紙2枚のリリースの中で、強化策6項目プラスそれぞれの具体策が各2項目で構成された再発防止策は、第三者委員会による提言よりもさらに抽象的であるだけではなく、これから設計・構築を行う項目と現在の機能の強化を図る項目とが混然としており、具体性に欠けるのみならず、何を優先すべきかという点もわかりづらいものとなっている。 4 持株会社によるグループ全体の内部監査体制はどうあるべきか 本稿で取り上げたLIXILグループ、すてきナイスグループともに、内部監査については中核となる事業会社にグループ全体の内部監査を担当する部署を置き、持株会社の内部監査部門は存在しなかったり(LIXILグループ)、持株会社の内部監査部門が事業会社と兼務であった(すてきナイスグループ)という状況であった。 事業会社に内部監査部門を置き、スリー・ライン・ディフェンスの機能を事業会社で完結させ、持株会社には内部監査機能を持たせないというのも1つの考えではあろうが、本来であれば、持株会社に内部監査機能を集約して、グループ全体の内部監査を横断的に行うことによって内部統制の強化を図るべきではないかと考える。 こうした組織論についての、1つの参考として、すてきナイスグループの第三者委員会による提言を取り上げたい。第三者委員会は、調査報告書(p.166)において、持株会社化の目的を次のように述べている。 そのうえで、第三者委員会は、再発防止策の1つとして、「すてきナイス及びナイスの位置づけの再検討」を促している(調査報告書p.172)。 持株会社と事業会社が一体として機能、運営していたのでは、持株会社が事業会社の事業遂行について適切に監視監督を行うことはできない。そういう提言として、筆者は受け取った次第である。 (了)
M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -財務・税務編- 公認会計士・公認不正検査士 松澤 公貴 第5節 事業計画の検討 【第32回】 「事業計画の検討」 ▷事業計画の検討事項 デューデリジェンスにおいて、対象会社が作成した事業計画の分析は、将来キャッシュフロー等の情報を用いる企業評価の基礎となるため重要であり、対象会社より提示された予測財務情報に関して、下記の事項を検証することになる。 ◆事業計画検討のイメージ そして、対象会社が作成した事業計画について、下記のポイントを重点的に検討する必要がある。 対象会社が作成した事業計画に影響が反映されていない要因を発見した場合には、当該要因について対象会社等と討議するとともに、必要に応じて事業計画に織込むことになる。また、対象会社によっては、事業計画の作成は、様々な分析手法や計画作成手法を駆使して複雑な作業となる場合がある。 したがって、事業計画の作成過程を理解して、その順序通りに検討を進めることが効率的である。それを踏まえて、事業計画の前提条件を把握し、事業戦略の仮説を構築し、必要な内外の事業環境の分析が行われた上で、事業計画が作成されているかを確認する必要がある。 なお、不確実性が増すため、新規事業は織り込まないほうが無難である。 ▷事業計画数値の検討 事業計画が将来の予測という性格上、どんなに詳細で緻密な調査や分析を行ったところで、完璧な事業計画を作成することはできない。そのため、数値を左右するパラメータである、市場規模、売上高成長率(販売単価、販売数量)などに関する仮定をどのように設定するかによっても、予測売上高や予測利益の水準はまったく異なってくることになる。 そこで、M&Aにおいては、想定し得る複数のシナリオを用意することにより、そのシナリオごとに事業計画をシミュレーションするのが一般的である。したがって、通常、現実的に想定したベースシナリオを中心に、事業シナジーをほとんど発揮できない場合の「悲観的シナリオ」、及び事業シナジーを最大限発揮できた場合の「楽観的シナリオ」といった具合に複数のシナリオが設定されることになる。 事業計画は、一般的に、①予測損益計算書から、②予測貸借対照表を作成し、将来キャッシュフローの金額を作成していくことになるため、どのように数値が構成されているかを精緻に検討する必要がある。 ① 予測損益計算書 予測損益計算書は、過去の損益計算書や将来の販売計画書などをもとに、損益計算書を構成する売上高、売上原価、販売費及び一般管理費等の区分ごとに数値が構成されている。 予測売上高については、正常収益力の分析の結果により、商品やサービスの単価及び販売量をそれぞれ見積もることによって計算する。単価は過去の趨勢や投下商品の戦略的値下げなどを織り込み、販売量に関しては、当該商品やサービスの市場規模、その市場における対象企業のシェアを予測することによって求める。なお、正常収益力の分析結果と将来のマクロ経済環境の見通しから、予測期間にわたって一定の成長率で推移するものと仮定して簡便的に算出することもある。 予想営業費用(売上原価・販売費及び一般管理費)については、営業費用に属する減価償却費とそれ以外の売上原価に区分し、それぞれ売上高に対する比率を見積もったり、営業費用を固変分解したり、両者を併用しながら、当該比率を各期の予測売上高に乗じて算出する。売上高に対する比率は、過去の業績分析の結果に関する検討を踏まえて数値を決定することになる。 予測営業外損益については、受取利息配当金と支払利息のほか、対象企業の状況に応じて必要な科目を設定し、見積もることになる。支払利息は、予測貸借対照表より有利子負債の平均残高に予想利子率を乗じて計算する方法で求める。その他の営業外損益は、予想金額を確実に見積もることのできるものを除き、予測期間を通じて金額が一定で推移するものと仮定しても差支えないであろう。 予測法人税等については、通常、税引前当期純利益に実効税率を乗じて金額を見積もることになる。 ② 予測貸借対照表 予測貸借対照表は、資本回転率(回転期間)の考え方を用いて、予測期間における各期の残高を求める方法が用いられて作成されている。 予測貸借対照表のうち、事業投下資産を構成する必要現預金、運転資本、固定資産(設備投資計画)などについては、過去の業績分析で算出した各勘定科目の対売上比率を予想売上高に乗じることによって算出する。 予測貸借対照表のうち、有利子負債については、追加の調達や返済に関する具体的な計画が明らかになっている場合、その実現可能性を検討した上で、当該計画をベースに残高が推移するものと仮定する。 予測貸借対照表のうち、上記以外のその他資産、及びその他固定負債については、これらの勘定科目に影響を与えるような具体的な計画が明らかになっていない限り、直近の残高がそのまま一定で推移するものと仮定する。 上記の勘定科目に関する予想残高がすべて求められた結果生じた貸借差額は、貸借一致するよう余剰現預金の科目で調整することになるが、貸借差額を調整した結果、余剰現預金がマイナスになる場合、運転資本が不足していることを意味しているため、十分に検討する必要がある。 ◆事業計画立案のよくある失敗例 (〔財務・税務編〕終了)
改めて確認したいJ-SOX 【第6回】 「「決算・財務報告プロセスに係る内部統制の評価」の 具体的なイメージを掴む」 仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明 前回までに「全社的な内部統制の評価」及び「業務プロセスに係る内部統制の評価」を説明してきました。今回は、「決算・財務報告プロセスに係る内部統制の評価」について説明します。 この決算・財務報告プロセスに係る内部統制には、全社的な観点で評価するものと個別の業務プロセスとして評価するものの2種類があり、J-SOXの実務ではとてもメジャーな論点です。 しかし、「財務報告に係る内部統制基準・実施基準」では、あまり目立つような記載はされておらず、「決算・財務報告」といった単語が含まれる規定は、次の規定くらいしかありません。 Ⅱ2.(2) 評価の範囲の決定 [業務プロセスに係る評価の範囲の決定] Ⅱ3.(3)④ 業務プロセスに係る内部統制の運用状況の有効性の評価 ハ.運用状況の評価の実施時期 ニ.評価の実施方法の決定に関する留意事項 b.決算・財務報告プロセス 内部統制基準・実施基準では、決算・財務報告プロセスに係る内部統制について直接的に書かれている箇所が少ないため、具体的なイメージを掴みにくいという特徴があります。 そこで今回は、決算・財務報告プロセスに係る内部統制について、全社的な観点で評価するものと個別の業務プロセスで評価するものに分けて、体系立てて説明していきます。 1 全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセス (1) 内部統制のイメージ 「全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスに係る内部統制」についての明確な定義はありませんが、「全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスに係る内部統制」とは、営業部などの各部門が生成した勘定科目ごとの情報を集約する決算業務や財務報告業務に係る内部統制といえるでしょう。 例えば、次のようなものが該当します。 【図表1】 全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスに係る内部統制のイメージ (2) 評価範囲 全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスに係る内部統制は、全社的な内部統制に準じて評価します。そのため、すべての事業拠点について内部統制を評価する必要があります。また、実務上は、全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスに係る内部統制の評価範囲(事業拠点)と全社的な内部統制の評価範囲(事業拠点)は一致することが一般的です。 なお、全社的な内部統制の評価範囲をどのように決定するかについては、本連載の【第3回】をご参照ください。 (3) 整備状況・運用状況の評価 ① 評価項目 既述のとおり、全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスに係る内部統制についての明確な定義はありません。そのため、全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスに係る内部統制として、どこまで評価すればいいか実務上、迷う部分ですが、一般的には次のようなものを全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスに係る内部統制の評価項目とすることが多いように感じられます。 【図表2】 親会社の全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスに係る内部統制の評価項目例 上記はあくまで一例であり、個別の会社の状況によって評価項目が変わることも考えられます。 ② 評価時期 冒頭にも書いたとおり、決算・財務報告プロセスに係る内部統制の運用状況の評価については、当該期において適切な決算・財務報告プロセスが確保されるよう、期末日までに内部統制に関する重要な変更があった場合には適切な追加手続が実施されることを前提に、前年度の運用状況をベースに、早期に実施されることが効率的・効果的です。 そのため、実務的には前期末や四半期の内部統制を対象にして、整備状況・運用状況の評価を比較的に早い時期に実施することが多いように感じられます。 ③ 評価方法 全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスに係る内部統制は、全社的な内部統制に準じて評価するため、具体的な評価方法については、本連載の【第4回】をご参照ください。 2 固有の業務プロセスとして評価する決算・財務報告プロセス (1) 内部統制のイメージ 次の観点から個別に評価対象として追加されたものが、固有の業務プロセスとして評価する決算・財務報告プロセスに該当することになります。 実務上、引当金の計上に関する業務プロセスが固有の業務プロセスとして評価する決算・財務報告プロセスに含まれることが多いですが、これは上記(b)に該当するためです。 (2) 評価範囲 固有の業務プロセスとして評価する決算・財務報告プロセスは、業務プロセスに係る内部統制として評価されますが、評価範囲について異なる点があります。 それは、売上プロセスなど企業の事業目的に大きく関わる勘定科目に至る業務プロセスは、重要な事業拠点(本連載の【第3回】を参照)の中から識別されましたが、固有の業務プロセスとして評価する決算・財務報告プロセスは、重要ではない事業拠点の中から識別されることもあるという点です。 つまり、固有の業務プロセスとして評価する決算・財務報告プロセスは、財務報告への影響を勘案して個別に評価対象に追加されるため、必ずしも重要な事業拠点に限らないということです。 (3) 整備状況・運用状況の評価 ① 評価項目 固有の業務プロセスとして評価する決算・財務報告プロセスは、業務プロセスに係る内部統制として評価されるため、個別の決算の手続(手順)を文書化し、それについて統制上の要点を識別し、評価していくことになります。 基本的な評価の流れは業務プロセスに係る内部統制の評価と同じですので、詳細は本連載の【第5回】をご参照ください。 ② 評価時期 全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスと同様に、決算・財務報告プロセスに係る内部統制の運用状況の評価については、期末日までに内部統制に関する重要な変更があった場合には適切な追加手続が実施されることを前提に、前年度の運用状況をベースに、早期に実施されることが効率的・効果的です。 そのため、固有の業務プロセスとして評価する決算・財務報告プロセスに係る内部統制も、実務的には前期末や四半期の内部統制を対象にして、整備状況・運用状況の評価を比較的に早い時期に実施することが多いです。 * * * 決算・財務報告プロセスは、財務報告に係る内部統制に直接的に関連するプロセスです。そのため、評価にあたっては本当に内部統制が有効に機能しているかどうか慎重に見極める必要があります。 次回は、ITを利用した内部統制の評価について説明します。 (了)
企業結合会計を学ぶ 【第25回】 「子会社が親会社に分割型の会社分割により 事業を移転する場合の会計処理」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 今回は、共通支配下の取引等の会計処理のうち、子会社が親会社に分割型の会社分割により事業を移転する場合の会計処理について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 個別財務諸表上の会計処理 1 概要 子会社が親会社に分割型の会社分割により事業を移転する場合、個別財務諸表上、次のように会計処理する(結合分離適用指針218項、221項、443項)。 ◎親会社(吸収分割承継会社) 【資産及び負債の会計処理】 親会社が子会社から受け入れる資産及び負債は、企業結合会計基準41項により、分割期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上する。 【増加すべき株主資本の会計処理】 親会社は、子会社から受け入れた資産と負債との差額を結合分離適用指針206項に準じて会計処理する(結合分離適用指針448項)。 結合分離適用指針206項(2)①アの「子会社株式の適正な帳簿価額」は親会社が会社分割直前に保有していた子会社株式(分割に係る抱合せ株式)の適正な帳簿価額のうち、受け入れた資産及び負債と引き換えられたものとみなされる額と読み替える(下記2を参照)。 当該組織再編において、親会社は、子会社に対して新株を発行(又は自己株式を処分)すると同時に、子会社から当該株式を配当として受け取ることとなるため、親会社は発行した新株(又は処分した自己株式)を自己株式として保有することになる。 会計上、親会社による新株の発行(又は自己株式の処分)と当該自己株式の取得は一体の取引とみて、親会社が受け入れた自己株式の帳簿価額はゼロとする(自己株式を処分した場合には、当該自己株式に対応する適正な帳簿価額を付す)。 (※) 上記のほか、中間子会社に対価の支払を行う場合の取扱い、孫会社が子会社に分割型の会社分割により事業を移転する場合(子会社が吸収分割承継会社となる場合)の取扱いも規定されている。 ◎子会社(吸収分割会社) 事業分離等会計基準63項により、分割型の会社分割は、会社分割と、これにより受け取った吸収分割承継会社の株式の分配という2つの取引と考えられている。このため、次のように会計処理する。 【会社分割の会計処理】 吸収分割会社である子会社は、最初に結合分離適用指針226項に準じた会計処理を行う。 【現物配当の会計処理(株主に比例的に割当を行う場合)】 上記の処理の次に子会社は、受け取った親会社株式(吸収分割承継会社の株式)の取得原価により株主資本を減少させる。 減少させる株主資本の内訳は、取締役会等の企業の意思決定機関において定められた結果に従う(「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第2号)10項)。 2 分割に係る抱合せ株式の適正な帳簿価額のうち、受け入れた資産及び負債と引き換えられたものとみなされる額の算定 分割に係る抱合せ株式の適正な帳簿価額のうち、受け入れた資産及び負債と引き換えられたものとみなされる額は、次のいずれかの方法のうち合理的と認められる方法により算定する(結合分離適用指針219項、443項)。 ① 関連する時価の比率で按分する方法 分割された移転事業に係る株主資本相当額(結合分離適用指針87項(1)①)の時価と会社分割直前の子会社の株主資本の時価との比率により、子会社の株式の適正な帳簿価額を按分する。 ② 時価総額の比率で按分する方法 会社分割直前直後の子会社の時価総額の差額を分割された事業の時価とみなし、会社分割直前の子会社の時価総額との比率により、子会社の株式の適正な帳簿価額を按分する。 ③ 関連する帳簿価額(連結財務諸表上の帳簿価額を含む)の比率で按分する方法 分割された移転事業に係る株主資本相当額の適正な帳簿価額と会社分割直前の子会社の株主資本の適正な帳簿価額との比率により、子会社の株式の適正な帳簿価額を按分する。 3 親会社が子会社から受け入れる資産及び負債の修正処理 前述のように、親会社が子会社から会社分割により受け入れる資産及び負債は、原則として、適正な帳簿価額により計上することになる。 次のことに注意する(結合分離適用指針220項)。 Ⅲ 連結財務諸表上の会計処理 親会社が減少させた子会社株式(分割に係る抱合せ株式)の適正な帳簿価額及び発生した抱合せ株式消滅差額(結合分離適用指針218項(2))は、企業結合会計基準44項により、内部取引として消去する(結合分離適用指針222項)。 (了)