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税理士のための〈リスクを回避する〉顧問契約・委託契約Q&A 【第10回】「顧問契約の解除に関するトラブル」

税理士のための 〈リスクを回避する〉 顧問契約・委託契約Q&A 【第10回】 「顧問契約の解除に関するトラブル」   弁護士・税理士 米倉 裕樹 弁護士・ 関西大学法科大学院教授 元氏 成保 弁護士・税理士 橋森 正樹   Q A税理士とB顧客との顧問契約には、解約告知に関し、以下の規定が存在する。 B顧客は些細なことで声を荒げたり、発言内容が日によって二転三転することが続いたため、A税理士は本顧問契約第5条第2項に基づき、B顧客との顧問契約を即時解除すると通知したところ、B顧客からは、決算時期なので業務を継続せよと要求された。 A 1 総論 税理士と顧客との顧問契約は、準委任契約に該当するところ(※1)、当事者間の信頼関係を基礎として成立し存続するという委任契約の中核的性質に鑑みれば、本件解除規定の解釈も、その性質に沿った形でなされるべきである。 (※1) 民法第656条により準委任についても委任に関する規定が準用される。 もともと民法の規定(民651)は、理由を告げることなく即時の解除を認めているのに対し、本顧問契約第5条第1項は、3ヶ月の予告期間を要する点において民法第651条が変更されている。 同様に、同条第2項本文については、やむを得ない事情の告知を要する点において、同条第2項ただし書については、相手方の不利な時期であるかを問わず、帰責事由のある側に損害賠償義務を課し、賠償額の予定を定めた点においてそれぞれ民法第651条が変更されている。 同条が任意規定である以上、当事者間においてこのような特約を設けること自体は有効である。 以上を前提に、〔Q①〕及び〔Q②〕につき検討する。   2 〔Q①〕について 当事者間の信頼関係が損なわれた場合には容易に契約関係の解消を認める民法第651条の趣旨からすれば、本顧問契約第5条第2項本文の即時解除についても、解除そのものについてはそれを認めるものとして解釈されるべきである。 最高裁昭和58年9月20日判決においても、 と判示している。 (※2) 「受任者の利益」とは受任者がその利益を享受することにつき、委任者がこれを承認しなければならない何らかの関係が存在するものであることが必要であり、弁済充当のための取立委任などがこれに該当し、専ら報酬を得ることによるものは除かれる。そのため、仮にB顧客のほうから即時解除した場合でも、期間満了までの残報酬をもって受任者であるA税理士の利益をも目的とした契約であるとはいえず、B顧客による即時解除は可能である。なお、債権法改正後の民法第651条では、受任者の利益をも目的とした委任契約でも即時解除は認めた上で、損害賠償にて処理している。 上記のとおり、本顧問契約第5条第2項本文は、やむを得ない事情の告知を要する点において民法第651条第1項を修正しているに過ぎないため、やむを得ない事情の告知を行うことによってA税理士は本顧問契約を即時解除することができる。 この点、やむを得ない事情が生じた場合でなければ、たとえ告知を行ったとしても即時解除は認められないのではないか、との疑問も生じるが、当事者間の信頼関係を基礎とする委任契約の性質に照らし、即時解除権の行使の要件を限定的に解することは相当ではない(大阪高判平成27年4月9日)。 そのため、損害賠償の点はさておき、解除に至ってもやむを得ないとA税理士が考える事情をB顧客に告知することで本顧問契約を即時解除することは可能である。 なお、「やむを得ない事情が生じた場合に限り」との文言からは当事者間で疑義が生じる可能性を否定できないため、本顧問契約第5条第2項本文については、以下のように修正しておくことが好ましい。 ただし、民法第651条第2項本文では、「当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。」と規定している。 ここでいう「不利な時期」とは、委任者が直ちに自分で事務の処理を開始することもできず、また他人に事務を処理させることもできない時期を意味するところ(我妻榮、有泉亨、清水誠、田山輝明著『第4版我妻・有泉コンメンタール民法 総則・物権・債権』日本評論社、2016年、1205頁)、本件でも、B顧客が決算処理を開始できず、また他の税理士に処理させることもできない時期に即時解除を行った場合には、それによりB顧客が被る損害をA税理士は賠償しなければならない。 もっとも、その場合でも、民法第651条第2項ただし書では、「やむを得ない事由があったときは、この限りではない。」としているため、B顧客による言動等により信頼関係が破壊されているような場合には、「やむを得ない事由」があったとしてA税理士が損害を賠償する必要はない。 なお、「不利な時期」に即時解除がなされたことの立証責任はB顧客にあり、「やむを得ない事由」の立証責任はA税理士にある。   3 〔Q②〕について 上記のとおり、本顧問契約第5条第2項ただし書は、相手方の不利な時期であるかを問わず、帰責事由のある側に損害賠償義務を課し、賠償額の予定を定めた点において民法第651条が変更されているが、本顧問契約第5条第2項ただし書に基づく損害賠償額が最大180万円(15万円×12ヶ月)に及び得ることに鑑みれば、同ただし書での「一方の責に帰すべき事由」は、専らまたは主として一方当事者の責に帰すべき事由であることを要するというべきである(大阪高判平成27年4月9日)。 そのため、本件でも、B顧客の言動の要因が専らまたは主としてB顧客自身にあると認められるような場合には、月額顧問報酬に契約期間の残月数を乗じた金額を損害賠償として請求できる。 なお、「やむを得ない事情が一方の責に帰すべき事由により生じた」ことの立証責任は、その文言上、損害賠償を請求する側、すなわちA税理士にある。 (了)

#No. 272(掲載号)
#米倉 裕樹、元氏 成保、橋森 正樹
2018/06/14

〔“もしも”のために知っておく〕中小企業の情報管理と法的責任 【第3回】「事務所内に保管していた電子媒体が盗まれ個人情報が流出した場合」

〔“もしも”のために知っておく〕 中小企業の情報管理と法的責任 【第3回】 「事務所内に保管していた電子媒体が盗まれ個人情報が流出した場合」   弁護士 影島 広泰   -Question- 事務所の鍵が壊され、机の上に出していた顧客の銀行口座の情報が入ったUSBメモリが盗まれて、情報が流出してしまいました。責任を問われるでしょうか。 -Answer- 鍵のかかるキャビネット等に保管していなかったことで管理体制が不十分であったとされる可能性がありますので、注意が必要です。 個人データが保存されている媒体が盗まれてしまった場合、通則ガイドラインが定める安全管理措置のうち「物理的安全管理措置」(下記表の⑤)を果たしていたかどうかが問われることになる。 ◆個人情報保護法のガイドラインが定める安全管理措置(概要) (※) ①~④については【第2回】で解説   ⑤ 物理的安全管理措置 「物理的安全管理措置」とは、個人データが保存された媒体等から情報の漏えい、滅失、毀損が発生しないよう、「物理的」な措置を講じる義務のことである。 具体的には、 の4つが義務付けられている。以下、順にポイントを説明する。 (1) 個人データを取り扱う区域の管理 サーバ等の重要なITシステムが管理されている場所のことを「管理区域」、個人データを取り扱う事務を実施する区域のことを「取扱区域」といい、それぞれで適切な管理を行わなければならない。 通則ガイドラインでは、「管理区域」の措置としては「入退室管理及び持ち込む機器の制限等」が例示され、「取扱区域」の措置としては「壁又は間仕切り等の設置、座席配置の工夫、のぞき込みを防止する措置の実施等による、権限を有しない者による個人データの閲覧等の防止」が例示されている。 マイナンバー法のガイドラインが公表された際に、「管理区域」と「取扱区域」という新しい概念が登場し、企業においては人事や経理のオフィスを「取扱区域」として間仕切りを設置したり、税理士事務所などでは事務所全体を「管理区域」兼「取扱区域」として入退室管理を実施するなどの対応をしたという記憶が新しいところであろう。 今回の改正個人情報保護法のガイドラインで、マイナンバーのガイドラインで登場した「区域の管理」という概念が、個人情報保護法においても登場したということである。 「管理区域」とは、要するにサーバルームのことであり、サーバルームには鍵くらいはかかっているであろうから、「管理区域」の対応はできている会社が多いと思われる。 問題は「取扱区域」である。今どき、個人データを取り扱っていないオフィスなど存在しないであろうから、ほぼ全てのオフィスが「取扱区域」になってしまう。そうなると「壁又は間仕切り等の設置」などを実施することは現実的ではない。 この点、個人情報保護委員会は、ガイドラインのQ&A「Q7-15」で以下の措置が「取扱区域」での適切な管理に当たると例示している。 これらの措置は、かなり現実的であると思われる。社内で、「パソコンは、離席時にはパスワード付きスクリーンセーバーを起動しましょう」、「個人データを机の上に放置して帰宅してはいけません(クリアデスクの原則)」などの方策を徹底すればよいからである。 (2) 機器及び電子媒体等の盗難等の防止 盗難等の防止に関しては、通則ガイドラインでは鍵のかかる場所に保管するなどの措置が例示されている。 盗まれては困るモノは鍵を掛けて保管するというのは基本中の基本であり、重要性の高い対策であるといえる。 もっとも、あらゆる個人データを金庫に保管することはできないであろうから、ガイドラインに列挙されている措置について、「いったいどこまで対応したらよいのか」、というのが企業が抱える一番大きな悩みである。 この点について、通則ガイドラインは以下のとおり述べている。 (※) ①から④の番号は、筆者による追記 上記は情報管理にとって極めて重要なポイントである。 つまり、ガイドラインに列挙されている措置をどの「深さ」でやるかは、「本人が被る権利利益の侵害の大きさを考慮し」、「リスクに応じて」考えるべきであり、それでよいとされているのである。 例えば、同じ氏名と住所という情報であっても、それが顧客の自宅の住所である場合と、取引先のオフィスの住所である場合では、漏えいした場合に本人が被る権利利益の侵害の程度は大きく異なる。 社内の全ての情報を同レベルで管理することは無理であるし、ガイドライン上もそこまでは求められていない。つまり、社内の情報のうち、「これは漏えいしたら本人が困る」という情報を重点的に管理すればよいのである。 したがって、冒頭の質問の例でいえば、通常は事務所に鍵がかかっていれば「盗難等の防止」として十分であるといえるであろうが、それが非常にセンシティブな情報であった場合(例えば、顧客の銀行口座の残高や給与額が記載されているような場合)であれば、鍵を掛けたキャビネットに保管しておくべきであったと判断されることもあり得る、ということになる。 (了)

#No. 272(掲載号)
#影島 広泰
2018/06/14

AIで士業は変わるか? 【第18回】「AIで税理士業は変わるか」

AIで 士業は変わるか? 【第18回】 「AIで税理士業は変わるか」   デロイト トーマツ税理士法人  パートナー 税理士 橋本 純   今後、AI(人工知能)を中心とした技術開発によって、税務の世界、特に税理士を取り巻く世界はどのように変化するか、また変わらないものは何であろうか。 1 AIの進化と税務への関わり ① AIに取って代わられる職業 皆さんもご存知かもしれないが、「AIの進化により、将来なくなるかもしれない職業は何か?」といった情報は、しばしば巷で見聞きするであろう。そのリストに必ず上位にランクされている職業に税理士がある。 おそらくそれら記事を書いている者の多くが参考にしている元データは、「THE FUTURE OF EMPLOYMENT」というイギリスのオックスフォード大学のオズボーン博士らが書いた論文であろうと思われる。その論文では、「税理士」とは書かれておらず、「税務申告書作成者(Tax Preparers)」となっているものの、それが「税理士」として巷では言われているものになる。 確かに、税金の計算は、論理的に行われるものであるし、誰が計算しても、同じ前提であれば同じ金額が算定されるように税法で規定されているものであるから、早期より税務申告書作成ソフトが普及したように、税務AIも普及をして、その結果、税務申告書作成はすべてAIに置き換わってしまう、という想定は容易につく。 この予測を前提とすると、将来なくなるかもしれないと言われる職業をわざわざ目指す者も減ってくるであろうし、事実、わが国では、過去数年にわたって税理士試験の申込者数は減少しており、今後もその傾向が続くとすると、日本の税理士業界にとっても人材確保の面で先行きが危ぶまれる。 だからこそAIを活用しなければならないとも言えるし、そもそも労働生産人口が減少する中では税理士業界に限らずAIの活用は避けて通れない議論である。では、「果たして本当にAIにより税理士は脅威に追い込まれるのか?」を次項以降で考察する。 なお、余談であるが、税理士試験申込者数の減少は、税理士試験の合格者数が変わらない限り、合格率の相対的な上昇につながる話であり、真剣に勉強する者にとっては、むしろ試験には合格しやすくなっているという点で税理士試験の魅力が上がっているかもしれない、とは言いすぎであろうか。 ② 税理士の仕事がAIに取って代わられるか? そもそも税理士の立場からすると、確かに税務申告書作成は業務上重要な位置を占めているもの、我々はそれのみを業としているわけではなく、むしろ税務申告書に反映する前の会計上の取り扱いや、会計処理以前の取引形態の相談、契約書への反映のさせ方などの相談業務への対応が、より高い比重を占めているはずである。 これら相談業務において我々が最も時間をかける点は、『その取引や事案の前提条件は何か』といった理解である。これら前提条件の理解などをAIが代替して置き換わる、といった想定はオズボーン博士もしていない。その予測では、比較的単純な判断あるいは定型的な判断が置き換わることが前提であり、我々の業務で日常触れているような複雑な経済事象を十分理解して判断することは、当面の間AIにはできないと思われる。 したがって、我々が日ごろクライアントから受けるようなレベルの税務相談業務が主である限り、税理士業務がAIに取って代わられることはないと考える。少なくとも、前提条件を理解し、その条件を整理する部分までは人間が行う分野であり、税務AIは教科書的な回答をするための補助にすぎない使い方に留まるであろう。それでも、うまい使い方をすれば、相当に有用であるはずである。 また、仮にAIにより税務申告書作成業務の一部が置き換わったとしても、それは、昔、手書きの申告書作成に一生懸命であった計理士が(いかにきれいに数字を書くか、桁をそろえるかなどもその一部であったろう)、税務申告書作成ソフトを使うようになって、果たして廃業に追い込まれたか?と考えてみるとよい。 決してそのような事態は起きなかったわけであるし、税理士としての職分にも何ら変化は起きなかったわけであるから、税務申告書作成がAIにより自動化されたとしても、脅威にはならず、むしろ利便性を享受できる、といった前向きなとらえ方をすればよいと思う。 したがって、税理士の業務において、AIは脅威である、といった見方は間違いで、むしろ有効活用すべきツールである、と考えるべきであるし、その利便性を追求すべく努力すべきである。 ③ 国税の取り組み 日本の国税庁は、平成29年6月に、「税務行政の将来像~スマート化を目指して~」という国税の将来あるべき姿の考察を発表している。その中では、以下のように複数にわたり、AIの活用をうたっている。 上記のいずれも、現段階では実現していないし、今後2~3年で実現するようなものでもないが、5~10年後を考えると、一部が実用化されていると想定される。国税がAIの活用で目指しているものは、それにより限られた人的資源をより高度な業務(調査など)へ転用させることである。 国税がこのような取り組みをすでに構想として持っている以上、民間の税理士が同等あるいはそれ以上の対応を目指すことは当然である。いずれも視点は「業務の高度化」のためのAIの活用であり、比較的付加価値の低い業務あるいは時間がかかる業務を置き換えることを目標としている。税理士としても、同様の視点でAIの活用を考えるべきであろう。 ④ AIとの競合 高度な相談業務を執り行えるAIが出現した場合(前提条件などは人間が整理整頓したうえで質問等を投入することが必要と考えられるものの)、そのAIは税理士との知識レベルと競合するであろうか。おそらく、答えは「競合する」あるいは「凌駕する」であろう。 AIの学習量には制限がないのであるから、教科書的な質問対応に限れば、巷で出版されている問答集のすべてや、あるいは条文もすべて覚えたうえで回答を導き出そうとすることは、AIであれば可能である。税理士は生身の人間である以上、すべての条文を丸暗記している税理士などいない。よって、特定の分野に限っては、競合あるいは脅威である、と言えるだろう。 しかし、繰り返しになるが、企業あるいは個人が直面するあらゆる経済事象の背景を理解し、またその取引を行う心理背景、経済事情なども理解したうえで、回答を導き出すことは、人間ならではの能力であるし、その人間としての判断はAIに置き換わることはないだろう。したがって、やはり、AIとは競合するのではなく、活用する、といった姿勢で臨むべきである。   2 税理士としてあるべき姿とは ① 税理士の仕事のスタイルの変化 将来的に申告書作成がAIなどにより自動化すると、申告書作成プロセスのノウハウや、ソフトウェアの使い方、はたまた正確な電卓のたたき方、調書の作成など、従来、若手が学んでいた取り組みはだんだん不要になるだろう。 自分では申告書作成は行わない(ただしチェックはする)という税理士が増えてくると、相対的に、相談業務の比重が高まるはずである。それは税理士としての本分、税法に関わる法律家、といった側面が強まることにつながるし、税理士として望ましい方向性になると思われる。 ② AIに代替されない税理士としての役割 まずは、税法をしっかり理解することである。AIがどんなに進化した世界になっても、税法自体がなくなることは想像できない。また、AIの回答は100%正解ではない、という前提では、必ず専門家がチェックするプロセスが残されるはずである。また、そもそも税法を理解していなければ、AIにデータの正しい投入もできないし検証もできない。 したがって、税理士としては、「税法の専門家」として、条文の理解に努める重要性がますます高まるものと思われる。 ③ 税理士を目指す者へのメッセージ 冒頭に記載した通り、巷では「税理士」はなくなる職業の上位にランクされる常連であり、したがって若者がこれから目指す職業ではない、と思われる者も多いであろう。しかし、現場の第一線の税理士としては、そのような世界は来ないと考える。 税理士がなくなる世界が来たときは、いわゆる「シンギュラリティ」が訪れたときであり、税理士がなくなることを悲しんでいる場合ではないのだから、それを考えても仕方がない。 現在の技術予測を前提とすれば、税理士業界は、むしろ「AIを有効活用できる最前線にいる」と捉えて、これからの変化を楽しめばよいだろう。 今後数十年変わらないであろう職業の世界を楽しむか、大きく変わっていく世界を楽しむかは個人のし好の問題もあろうかと思うが、人間社会は進化していく、といった視点で、職業上の変化を味わいたいし、その最前線にある税理士業界は、きっと他の職業よりも楽しい職業かもしれない、と思いたい。 (了)

#No. 272(掲載号)
#橋本 純
2018/06/14

《速報解説》 国税庁、「平成30年分給与所得の源泉徴収票の記載のしかた」等を公表~配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを受けた記載上の留意事項・記載例を示す~

 《速報解説》 国税庁、「平成30年分給与所得の源泉徴収票の記載のしかた」等を公表 ~配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを受けた記載上の留意事項・記載例を示す~   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   国税庁は5月31日付けで、以下の情報を公表した。 平成30年から適用される配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しに伴い、源泉徴収票の項目名や記載内容も平成30年分から変更される。今回公表された情報には、変更後の源泉徴収票の記載要領と記載に当たっての留意事項が説明され、記載例も示されている。 本稿では、配偶者控除と配偶者特別控除の見直しの概要をまとめた上、「給与所得の源泉徴収票」について、変更された項目と記載に当たっての留意事項の解説を行う。 なお、金額はすべて所得金額で記載する。給与のみの場合に給与収入ベースでいくらになるかについては、次の表をご参照いただきたい(給与所得=給与収入-給与所得控除額)。 また、平成30年度税制改正における所得控除の見直し(平成32年から適用)については下記拙稿を参照されたい。   【1】 配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し (1) 見直しの概要 平成30年分の所得税(住民税は平成31年分)から、配偶者控除及び配偶者特別控除について次の見直しが行われている。 ① 配偶者控除の適用に、所得者本人の所得制限を設定(所法83①) ② 配偶者特別控除の適用対象者の拡大(所法83の2①) (※) 合計所得金額85万円以下の場合の控除額は配偶者控除と同額。 ③ 所得者本人の所得に応じ控除額が逓減する仕組みの導入(所法83①、83の2①) (※) 改正前後ともに、配偶者特別控除は、所得者本人の合計所得金額が1,000万円以下でなければ適用できない。 〈参考〉 平成30年分以後の配偶者控除額及び配偶者特別控除額の一覧表 (※) 国税庁ホームページより (2) 源泉徴収及び年末調整における配偶者の取扱い ① 源泉徴収における取扱い 平成30年1月以後は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下、扶養控除等申告書という)に源泉控除対象配偶者がいる旨の記載がある場合には、源泉徴収を行うときの扶養親族等の数に1人を加算する(所法185①)。 1人を加算する対象は、源泉控除対象配偶者であることから、配偶者控除の対象となる配偶者だけでなく、配偶者特別控除の対象となる配偶者のうち控除額が38万円となる者も含まれることとなる。 また、同一生計配偶者が障害者又は同居特別障害者に該当する場合には、これらの一に該当するごとに扶養親族等の数に1人を加算する(所法187)。 〈参考〉 配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しにより、所得税法上、配偶者に関し3つの用語が定義されている(所法2①三十三・三十三の二・三十三の三・三十三の四)。 (※1) 配偶者控除額又は配偶者特別控除額 (※2) 改正前の控除対象配偶者とは定義が異なる。改正前は、控除対象配偶者の定義に居住者の合計所得金額の要件は設けられていなかった。控除対象配偶者のうち70歳以上の者を、老人控除対象配偶者という。 (※3) いずれも、青色事業専従者等は除かれる。 ② 年末調整における取扱い ①で示したとおり、毎月の源泉徴収では、配偶者が障害者である場合を除くと、源泉控除対象配偶者がいる場合のみ徴収税額に控除額が反映されている。 配偶者控除又は配偶者特別控除の適用対象となる配偶者は、源泉控除対象配偶者に限られない。また、改正後は、所得者本人の合計所得金額と配偶者の合計所得金額の両方が控除額に影響するため、給与等の支払者は所得者本人と配偶者の合計所得金額を正確に把握する必要がある。これらの事情から、平成30年分以後の年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受ける場合には、「給与所得者の配偶者控除等申告書」(以下、配偶者控除等申告書という)を、その年最後の給与等の支給を受けるまでに給与等の支払者へ提出することされた(所法195の2)。   【2】 「給与所得の源泉徴収票」の変更点(概要) 「平成30年分 給与所得の源泉徴収票」の項目名及び記載内容のうち、平成29年分から変更されているものは次のからである。 (※) 国税庁ホームページより   【3】 各変更点の解説  (源泉)控除対象配偶者の有無等 「(源泉)控除対象配偶者の有無等」の欄には、次の記載が求められる。 「有」欄の(ア)と(イ)は、年末調整を受けているか受けていないかの点で違いがある。(イ)に「〇」を記載するのは、源泉控除対象配偶者がいる受給者が年の中途で退職した場合等が考えられる。  配偶者(特別)控除の額 配偶者控除等申告書に基づいて計算された配偶者控除額又は配偶者特別控除額を記載する。 平成29年分以前の様式では、この欄は「配偶者特別控除の額」であった。平成30年分以後は、配偶者特別控除の額だけでなく配偶者控除の額もこの欄に記載することになる。  (源泉・特別)控除対象配偶者 控除対象配偶者又は配偶者特別控除の対象となる配偶者の氏名及びマイナンバー(※)を記載する。また、当該配偶者が非居住者である場合には、「区分」欄に「〇」を記載する。なお、年末調整を受けていない場合(年の中途で退職した受給者等)には、源泉控除対象配偶者の氏名及びマイナンバー(※)を記載する。 (※) マイナンバーは、受給者交付用の源泉徴収票には記載しない。 平成29年分以前の様式では、この欄は「控除対象配偶者」であり、年末調整で配偶者特別控除の適用を受けた配偶者の氏名等は摘要欄に記載していた。平成30年分以後は、控除対象配偶者だけでなく、年末調整で配偶者特別控除の適用を受けた配偶者の氏名等もこの欄に記載することになる。  配偶者の合計所得 控除対象配偶者又は配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額を記載する。なお、年の中途で退職した受給者が源泉控除対象配偶者を有している場合には、扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者の所得の見積額を記載する。 平成29年分以前の様式でもこの欄は「配偶者の合計所得」であった。しかし、記入するのは年末調整で配偶者特別控除の適用を受けた配偶者の合計所得金額であり、控除対象配偶者の合計所得金額は記載されていなかった。項目名は同じであるが、記載する対象が変わっていることに注意が必要である。  摘要 控除対象配偶者以外の同一生計配偶者が、障害者、特別障害者又は同居特別障害者に該当する場合に氏名を記載する。 障害者控除の適用対象となる配偶者は、障害者又は特別障害者に該当する同一生計配偶者である(所法79②)。③欄に氏名が記載される配偶者は、控除対象配偶者又は配偶者特別控除の対象となる配偶者(年末調整を受けていない場合は、源泉控除対象配偶者)であるため、障害者に該当する同一生計配偶者のうち控除対象配偶者以外の者については氏名が記載されない。 そこで、控除対象配偶者以外の同一生計配偶者が障害者、又は特別障害者に該当する場合には、摘要欄に氏名及び同一生計配偶者である旨を記載する(例:「〇〇〇子(同配)」)。  *  *  * 情報には、以下の記載例が示されているので参考にされたい。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 271(掲載号)
#篠藤 敦子
2018/06/14

《速報解説》 金融庁、「収益認識に関する会計基準」を受け財務諸表等規則を改正~「収益認識に関する注記」が新設される~

《速報解説》 金融庁、「収益認識に関する会計基準」を受け財務諸表等規則を改正 ~「収益認識に関する注記」が新設される~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年6月8日、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第29号)が公布された。これにより、平成30年4月13日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、平成30年3月30日に、企業会計基準委員会が公表した「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等に対応するものである。 財務諸表等規則等の改正に際して、「「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」(以下「コメント対応」という)が公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 1 収益認識に関する注記など 財務諸表等規則8条の32(収益認識に関する注記)として次の規定を設ける。 連結財務諸表規則、中間連結財務諸表規則などの改正は、主に財務諸表等規則の改正に伴う準用規定の改正である。 上記の他、たな卸資産及び工事損失引当金の表示の改正(財規54条の4)、売上高の表示方法の改正(財規72条)、割賦販売売上高の表示方法の削除(財規73条)がある。 2 財規ガイドラインの改正 改正後の主な財規ガイドラインは次のとおりである。 《8の2-7》 規則第8条の2第7号に規定する収益及び費用の計上基準には、ファイナンス・リース取引に係る収益及び費用の計上基準等、財務諸表について適正な判断を行うために必要があると認められる事項を記載するものとする。また、財務諸表提出会社が「収益認識に関する会計基準」を適用している場合には、その旨を記載するものとする。 (※) 改正前の財規ガイドライン8の2-7では、工事契約に関する工事進捗度を見積るために用いた方法の記載が求められている。 《8の32》 規則第8条の32に規定する注記とは、「収益認識に関する会計基準」が適用される場合の注記とし、同条に規定する顧客、契約及び履行義務とは、「収益認識に関する会計基準」にいう顧客、契約及び履行義務をいうものとする。 《72-1》 規則第72条第1項に規定する売上高については、各企業の実態に応じ、適切な名称を付すことに留意する。 (※) 改正前の財規ガイドラインでは、作業くず、手持原材料又は貯蔵品の売却に関する取扱いが規定されている。 《72-1-2》 削除する。 (※) 改正前の財規ガイドラインでは、売上値引、売上割引、売上割戻について規定している。  なお、売上割引については、改正後の財規ガイドライン93において、「売上割引(代金支払期日前の支払に対する売掛金の一部免除等をいう。)」と規定されている。 《79》 規則第79条の仕入値引とは、仕入品の量目不足、品質不良、破損等の理由により代価から控除される額をいい、代金支払期日前の支払に対する買掛金の一部免除等の仕入割引と区別するものとする。なお、一定期間に多額又は多量の取引をした得意先に対する仕入代金の返戻額等の仕入割戻は、仕入値引に準じて取扱うものとする。 連結財規ガイドライン、中間連結財規ガイドラインなどの改正は、主に財規ガイドラインの改正に伴う準用規定の改正である。 3 コメント対応の概要 公開草案に対しては、2団体より2件のコメントが寄せられたとのことである。 コメント対応(No.1)では、財務諸表等規則等の改正案では、企業会計基準79項の契約資産、契約負債又は債権に関する表示(同会計基準88項に規定する内容も含む)が示されていないことへのコメントに対して、次のように考え方を示している。 また、コメント対応(No.2)では、財務諸表等規則ガイドライン72-1の売上高の勘定科目に関するコメントに対して、次のように考え方を示している。   Ⅲ 適用時期等 公布の日(平成30年6月8日)から施行する。 経過措置が設けられているので、実際の適用に際しては注意が必要である。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 271(掲載号)
#阿部 光成
2018/06/11

プロフェッションジャーナル No.271が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年6月7日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.271を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/06/07

monthly TAX views -No.65-「軽減税率と価格設定の自由度」

monthly TAX views -No.65- 「軽減税率と価格設定の自由度」   東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授 森信 茂樹   新聞情報によると、6月中旬に予定されている「骨太の方針」に、「2019年10月1日の消費税率引上げにあたって、税率引上げの前後で、需要に応じて、事業者の判断によって、価格の設定が自由に行われることで、駆け込み需要やその反動減が抑制されるような方策について、具体的に検討する。」という文言が入るという。 これを受けて「価格設定に関するガイドライン」が新たに作られるという。「税率引上げ前」に本体価格を上げるとしても、それは「駆け込み需要などが見込まれるから強気の価格設定で行こう」という(事業者)の価格設定・判断であり、便乗値上げとはいえない、ということを明確化するのであろう。 また、「税率引上げ後」に、エコポイントや各種減税等の優遇措置(これから年末にかけて検討される)があることを説明せずに、駆け込み需要をあおるような行為も牽制されるようだ。 これは、筆者が本連載No.63で述べたように、2月20日の経済財政諮問会議での「消費増税に伴う経済の変動を少なくする方策について、欧州の事例にも学びつつ検討するように」という安倍総理の指示を受けたものである。背景には、消費増税に伴う経済変動が大きいのはわが国特有の事情なので、それを是正したいという事情がある。 *  *  * さて、以下は筆者からのクエスチョンである。 2019年10月から消費税率が10%に引き上げられる際には、食料品・新聞購読料について8%の軽減税率が導入される。一方、レストランサービスには標準税率の10%がかかる。そこで、コンビニでコーヒーを買う場合、イートインするのかテイクアウトするのかにより税率が異なり、事業者は、正しい消費税申告を行うために、顧客にその判断を尋ねて適用税率を区分する必要がある。 問題は、その際の価格である。税抜き100円のコーヒーを例にとって考えてみると、テイクアウトの場合は108円、イートインすると110円というのが「正しい」価格設定ということになるのだろうか。 このような事例について、ドイツのマクドナルドでは、テイクアウトでもイートインでも、税率は異なるが値段は同じに設定している。 値段を変えると、お客さんの常として、値段が安い方のテイクアウト(軽減税率)と言って購入し、その場で飲食(イートイン、標準税率)することを防ぐためだ、と説明されている。 *  *  * わが国で、来年10月以降、コンビニなどでこの点がどのような値付けになるのだろうか、大変興味深い。 「当店では、イートインもテイクアウトも同じ値段」というお店が現れたら、マスコミや国民は、「益税」、「損税」、「過剰転嫁」だと言うのであろうか。今回そのような議論が出ないようにと、事業者の価格設定の自由度を高めるのだから、そのような議論はやめるべきだろう。 (了)

#No. 271(掲載号)
#森信 茂樹
2018/06/07

〔平成30年4月1日から適用〕改正外国子会社合算税制の要点解説 【第10回】「外国税額控除、関連別表及び添付・保存資料、実務対応について」

〔平成30年4月1日から適用〕 改正外国子会社合算税制の要点解説 【第10回】 (最終回) 「外国税額控除、関連別表及び添付・保存資料、実務対応について」   税理士 長谷川 太郎   1 押さえておきたいポイント   2 合算課税に伴う外国税額控除関連の改正 ① 外国関係会社が納付した日本の所得税等に関する取扱いの改正 合算対象となる外国関係会社の所得に対し、日本の所得税、復興特別所得税及び法人税等が課されている場合には、改正前であれば、外国関係会社が納付している「外国法人税額」とみなして、合算課税に伴う外国税額控除による二重課税の調整を行うとされていた(旧措法66の7、旧措通66の6-20)。 今回の改正により、外国関係会社が納付している日本の所得税、復興特別所得税及び法人税等については、外国税額控除制度ではなく、新たな枠組みで法人税額から控除されることになっている。 具体的には、外国関係会社が納付した日本の所得税、復興特別所得税及び法人税等のうち、課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額に対応する部分に相当する金額(以下、「控除対象所得税額等相当額」という)を独立した形で控除することとなった(措法66の7④、措通66の6-24)。なお、法人税の額から控除しきれなかった金額について、還付する制度は設けられていない。 「控除対象所得税額等相当額」は、以下の算式により計算される(措令39の18⑮~⑰)。 【控除対象所得税額等相当額】 (※) 「調整適用対象金額」とは、適用対象金額に子会社(持株割合25%以上等の要件を満たす子会社)配当の金額を加算する等の調整を加えた金額をいう。また、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額による合算課税の適用を受ける場合において、調整適用対象金額が部分課税対象金額または金融子会社等部分課税対象金額を下回る場合には、分母の金額は部分課税対象金額または金融子会社等部分課税対象金額となる。 法人税申告書(別表)の記載は以下の通りとなっており、別表4において「税額控除の対象となる外国法人税の額」の下の[31欄]において「外国関係会社等に係る控除対象所得税額等相当額」として別表17(3の12)で計算した金額を転記し、別表1(1)次葉の[11欄]において「外国関係会社等に係る控除対象所得税額等相当額の控除額」において、別表17(3の12)で計算した当期控除額を転記し、別表1(1)の「法人税額計」と「控除税額」の欄の間の「外国関係会社等に係る控除対象所得税額等相当額の控除額及び仮装経理に基づく過大申告の更正に伴う控除法人税額」の欄に転記して控除を行う形となっている。 【別表1(1)】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【別表1(1)次葉】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【別表4】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ② 部分合算課税における外国税額控除に関する改正 「部分課税対象金額 > 課税対象金額」の場合に、課税対象金額を合算金額の上限とする扱いが廃止されたことに伴い、部分合算課税や金融子会社等部分合算課税の適用がある場合における控除対象外国法人税額の計算における分母の「調整適用対象金額」が「部分課税対象金額」または「金融子会社等部分課税対象金額」を下回る場合には、分母の金額は「部分課税対象金額」または「金融子会社等部分課税対象金額」となる改正が行われている。   3 関連別表・付表、申告時添付書類及び保存資料 ① 関連する別表及び付表について 本稿執筆日現在、下記の国税庁HPにおいて改正後の外国子会社合算税制に関連する別表及び付表については、名称の記載はあるものの、実際の別表及び付表は一部を除きほぼ「作成中」と表示されている状況である。 外国子会社合算税制に関連する別表及び付表は以下の通りとなっており、別表17(3の7)以降の別表及び付表が今回の改正により新設されたものである。 なお、別表17(3の7)、同付表1及び2については、名称に「添付対象外国関係会社」との表記が見られるが、この「添付対象外国関係会社」とは、確定申告書に決算書等の添付が求められている外国関係会社を意味する(措規22の11⑳)。対象となる外国関係会社は、後述する「② 決算書等の添付要件」を参照されたい。 ② 決算書等の添付要件 外国子会社合算税制の適用を受ける内国法人は、実際の合算課税の有無に関わらず、以下の外国関係会社の各事業年度の貸借対照表及び損益計算書その他の書類を確定申告書に添付しなければならないこととされている(措法66の6⑪)。 【決算書等の添付が必要となる外国関係会社】 添付が必要となる書類は以下の通りである(措規22の11⑳)。 ③ 保存をしておくべき書類 税務調査等において、外国関係会社で租税負担割合が30%以上である事実が客観的に確認することができない場合には、実体基準又は管理支配基準を充足する(ペーパー・カンパニーに該当しない)事実を明らかにする書類等の提示または提出を求められることがあり、書類等の提示または提出をしない場合には、当該外国関係会社について、特定外国関係会社に該当すると推定されることとされている(措法66の6③)。 また、特定外国関係会社に該当しないことが確認され、かつ租税負担割合が20%以上である事実が客観的に確認することができない場合には、経済活動基準を充足する事実を明らかにする書類等の提示または提出を求められることがあり、書類等の提示または提出をしない場合には、当該外国関係会社について、経済活動基準を充足しないと推定されることとされている(措法66の6④)。 以上のこと及び租税負担割合が30%以上である外国法人が限定的であることを踏まえると、外国子会社等について、「特定外国関係会社に該当しない(実体基準又は管理支配基準を充足する)ことを確認した書類」及び「租税負担割合が20%以上であることを確認した書類」または「経済活動基準を充足していることを確認した書類」を保存しておくことが求められていると考えられる。   4 改正による実務への影響 今回の改正が企業における税負担へ与える影響もあるとは思われるが、最も大きい影響は実務面での対応にあると考えられる。実質支配基準、推計課税の導入や部分合算課税の拡大等により、実務担当者が申告時あるいは決算時までに対応すべき事項が増加したと考えられる。 移転価格については、BEPS行動計画13に伴う移転価格関連文書化の改正等の影響により、親会社である内国法人がこれまで以上に子会社等を税務面で管理していくことが求められているが、外国子会社合算税制においても、同様に子会社等の毎期の税務ポジション、収益の内容や事業実体等について、親会社である内国法人側で把握・管理していくことが求められるようになっている。 このような状況においては、親会社において外国子会社合算税制の検討において必要となる情報をタイムリーに入手し、かつ税務調査時に状況を説明することができるような情報を網羅的に収集する必要があり、例えば、外国関係会社向けに外国子会社合算税制用の質問表(questionnaire)を作成し、決算前に各子会社担当者に送付し、効率的かつ一貫性のある情報収集を行う等の対応が求められることになる。 (連載了)

#No. 271(掲載号)
#長谷川 太郎
2018/06/07

海外移住者のための資産管理・処分の税務Q&A 【第3回】「事業的規模の不動産所得があり移住前に検討が必要な場合」

海外移住者のための 資産管理・処分の税務Q&A 【第3回】 「事業的規模の不動産所得があり移住前に検討が必要な場合」   税理士・行政書士 島田 弘大   Question 私は来年、海外への移住を検討しています。現在、事業的規模の不動産所得がありますが、移住後も引き続き個人で日本での不動産事業を継続する予定です。税務上気をつける点はありますか。   Answer 1 はじめに 海外への移住を検討している日本の居住者(個人)が日本で事業的規模の不動産所得を得ている場合、移住後も日本での不動産事業を継続しても問題は生じないだろうか。国際税務の観点から留意点を検討する。   2 移住時の日本での課税関係(国外転出時課税) 日本に不動産を保有し続ける場合、まず検討しなければならないのが『国外転出時課税制度』である。国外転出時課税制度(いわゆる出国税)とは、平成27年7月1日以後に出国する「一定の高額資産家」を対象に、出国時に未実現のキャピタルゲインに対して特例的に課税を行う制度である(所法60の2)。 「一定の高額資産家」とは、下記2つの要件を満たす居住者をいう(所法60の2⑤)。 詳細は本連載の【第1回】「移住後に国内不動産を賃貸する場合の留意点」でも検討しているため割愛するが、対象資産は限定列挙されており、その中に不動産は含まれていない。 つまり、現行法(2018年5月16日時点)においては、今回のケースである不動産は国外転出時課税の対象資産には含まれない。 したがって、不動産を所有したまま出国して税務上の非居住者となったとしても、国外転出時課税制度の影響はない。   3 移住後に日本の不動産を賃貸・売買した場合の取扱い それでは、海外に移住して税務上の非居住者に該当することになった後に、日本の不動産を賃貸又は売却した場合、どのような課税関係になるのか。日本でも確定申告が必要になるのか。 この点についても本連載の【第1回】で詳細を確認しているため割愛するが、賃貸収入・譲渡収入いずれの場合も、原則として納税管理人を選任し日本で確定申告を行う必要があるため、この点は注意したい。 それでは、今回のテーマである「事業的規模」の不動産所得がある場合、他にどのような点に注意する必要があるだろうか。 それは、今まで役員給与などの給与所得等と不動産所得の計算上生じた損失を損益通算していたケースである。   4 役員給与などの給与所得と不動産所得の損益通算 損益通算とは、各種所得金額の計算上生じた損失のうち、①不動産所得、②事業所得、③譲渡所得、④山林所得についてのみ、一定の順序に従って、総所得金額、退職所得金額等を計算する際に他の各種所得の金額から控除することをいう(所法69、所令178)。 さて、上記のとおり、役員給与などの給与所得等を計算する際には不動産所得に係る損失を控除することとされている。ではなぜ、この損益通算について、税務上の非居住者になる場合には注意が必要なのだろうか。 以下では、税務上の非居住者が日本の内国法人から役員給与を受け取り、また日本での事業的規模の不動産所得に係る損失も引き続き生じているケースをご紹介したい。   5 2016年以前までの取扱い 事業的規模の不動産所得を得ている場合、「恒久的施設」を日本に有すると認められる。また、非居住者に対する内国法人からの役員給与については「国内源泉所得」に該当するため、まずは源泉徴収されることとなる。 2016年以前は、日本に「恒久的施設」を有する場合には、すべての国内源泉所得が総合課税とされる。したがって、内国法人から支払われる役員給与も源泉分離課税ではなく「総合課税」の対象になることから、不動産所得に係る損失との損益通算が可能となる。   6 2017年以後の取扱い 2016年以前であれば、上述のとおり、移住前も移住後も給与所得と不動産所得に係る損失の損益通算は可能であったが、2017年以後は平成26年度税制改正により取扱いが変わっているため注意が必要だ。 事業的規模の不動産所得を得ている場合、「恒久的施設」を日本に有すると認められる。また、非居住者に対する内国法人からの役員給与については「国内源泉所得」に該当するため、まずは源泉徴収されることとなる。ここまでは、2016年以前と取扱いは変わらない。 その「国内源泉所得」が、その非居住者の日本における「恒久的施設」に帰せられる所得かによって、2017年以後は課税関係が変わる。 具体的には、非居住者に対する支払いの対価が「恒久的施設」に帰せられる所得である場合には、原則として源泉徴収の上、「総合課税」の対象とされる。一方で、「恒久的施設」に帰せられない所得である場合には、原則として「源泉分離課税」の対象とされ、源泉徴収により課税は完結する。 さて、本件に当てはめてみるが、その「国内源泉所得」に該当する内国法人からの役員給与はその非居住者が有する恒久的施設(このケースでは事業的規模の不動産所得)に帰せられる所得に該当するだろうか。答えはNoである。 つまり、「恒久的施設」を有していたとしても、今回のケースでは役員給与はその「恒久的施設」に帰せられない所得であるため、源泉分離課税の対象とされる。総合課税の対象にはならないため、源泉徴収により課税関係は完結し、この給与所得と事業的規模で行う不動産所得に係る損失を損益通算することはできない(所法164)。 (※) 上記改正の詳細については、財務省「平成26年度税制改正の解説」のp783以下を参照されたい。   7 結論 「移住する前と同様に、内国法人から支払われる役員給与について事業的規模の不動産所得に係る損失と損益通算できるだろう」とシミュレーションしていたものの、実際に移住して税務上の非居住者となった後に損益通算できないことが判明し、日本で納税すべき所得税額が増えてしまったということにならないように、事前にこの取扱いは考慮しておく必要があるだろう。 (了)

#No. 271(掲載号)
#島田 弘大
2018/06/07

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第40回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第40回】   公認会計士 佐藤 信祐   《第6章》 平成19年度税制改正 1 三角組織再編成 平成19年度税制改正では、会社法における合併等対価の柔軟化に対応し、以下の改正が行われた(財務省「平成19年度税制改正の大綱」より抜粋)。 三角組織再編成を適格組織再編成として整理した理由は、100%親法人株式を組織再編成の対価として交付した場合には、その株式の保有を通じて実質的な支配が継続できることから、組織再編成の前後で経済実態に実質的な変更がなく、移転資産に対する支配が継続していると考えられるからであると説明されている(※1)。 (※1) 『平成19年版改正税法のすべて』272頁。 なお、合併法人等となる法人は、組織再編成の対価としての親法人株式を交付することになるが、原則として、当該親法人株式の譲渡により譲渡損益は実現しないこととされている。しかし、契約日以前に取得をした親法人株式については、契約日において時価による譲渡をし、直ちにその価額で取得をしたものとすることになった。 これは、親法人株式を一般的に保有する場合には、相当の時期に処分すべきこととされ、その処分による譲渡損益が実現することから、このような親法人株式の処分と整合的な取扱いをするためである(※2)。 (※2) 前掲(※1)272頁。 このように、三角組織再編成を行った場合にも課税関係が生じないように整理されたものの、国境を挟む組織再編成も可能であることから、上記(2)(3)の改正がなされている。この内容についてはやや特殊であることから、本稿では解説を行わない。   2 事業の明確化 事業関連性要件の判定において、「事業」「関連性」の定義が曖昧であったことから、平成19年度税制改正では、納税者の予測可能性を高めるために、「事業」「関連性」の明確化を行っている。 これに対応し、平成19年4月に国税庁から「共同事業を営むための組織再編成(三角合併等を含む)に関するQ&A~事業関連性要件の判定について~」が公表され、従前よりも事業の定義が狭く解されるようになった。 しかし、リーマンショックにより投資法人の再編を進める必要が生じたことから、平成21年3月に、国税庁から文書回答事例「投資法人が共同で事業を営むための合併を行う場合の適格判定について」が公表され、 と書かれており、事業の定義を緩やかに捉えるようになっている。 そのため、現行実務では、法人税法施行規則に規定されている事業の定義を参考にしつつも、会社法における事業の定義である「一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産(最大判昭和40年9月22日民集19巻6号1600頁)」を参考にしながら、事業の範囲を広く捉えることが多いと思われる。   3 計算要素にゼロ又はマイナスがある場合の規定の整備 平成19年度税制改正では、計算要素にゼロ又はマイナスがある場合における資本金等の額、利益積立金額、みなし配当、有価証券の譲渡損益の規定が整備された。これにより、債務超過会社が組織再編成を行う場合の取扱いが明確化されたということが言える。 基本的な考え方としては、 と解説されている(※3)。 (※3) 前掲(※1)362頁。 なお、これらの規定を読み込む際に「控除」と「減算」の違いについて留意しておく必要がある。100から150を控除した場合には0となるが、100から150を減算した場合には△50になるからである。 そのほか、法人税法施行令9条1項1号以外の事由により利益積立金額が増減した場合にも、資本金等の額と同様に考えるべきであるため、これらの計算要素に加味されることになった(※4)。 (※4) 前掲(※1)363頁。   4 その他 そのほか、『平成19年版改正税法のすべて』368頁以降では、①株式交換又は株式移転に係る資本金等の額の整備、②新株予約権を対価とする費用等、③欠損等法人、④特定資産譲渡等損失額の損金不算入、⑤資産調整勘定につき、若干の改正が行われている。 この頃から顕著になり始めているが、大きな改正が行われた翌年度に、前年度の税制改正の不具合を修正するような税制改正が行われるようになっている。大きな税制改正が行われた場合には、必ず翌年度の税制改正も目を通す必要があるということが言える。 *   *   * 次回では、第7章として、平成20年度から平成21年度までの税制改正について解説を行う予定である。 (了)

#No. 271(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/06/07
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