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[平成29年1月1日施行]改正育児介護休業法のポイントと実務対応 【第1回】「介護関係の改正ポイント①」

[平成29年1月1日施行] 改正育児介護休業法のポイントと実務対応 【第1回】 「介護関係の改正ポイント①」   特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ   「平成28年版高齢社会白書」(厚生労働省)によると、平成27年10月1日現在の日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は26.7%と世界で最も高く、現役世代(15~64歳)2.3人で高齢者1人を支える社会となっている。少子高齢化が進む中、この傾向は増々進行し、2060年には高齢化率が40%近い水準になると推計されている。 このような環境下において、現役世代が育児や介護のために就労を諦めて離職することがないよう、「就労」と「育児・介護」の両立を支援するため、育児介護休業法が改正され、平成29年1月1日から施行されている。 今回は、その改正ポイントと実務対応について、6回にわたってご紹介したい。 【第1回】と【第2回】では、今回の改正で大幅な変更が加えられた介護関係について、次の6つの項目に分けて内容を確認していきたい。【第1回】は、最初の3つの項目についてみていく。 【第1回】 介護休業の分割取得 有期契約労働者の取得要件緩和 対象家族の範囲拡大 【第2回】 介護休暇の半日単位取得 選択的措置の期間延長等 所定外労働の制限(新設)   1 介護休業の分割取得 (1) 取得回数 改正前は、介護休業は、対象家族1人につき、通算93日以内で、要介護状態に至るごとに原則1回とされ、同一の要介護状態においては、基本的には一度しか休業を取得することができなかった。例えば、介護が必要になった最初の段階で休業を取得した場合、その後復職し、さらに同一の要介護状態の中で二度目の休業が必要になった場合でも、それに対応して再度の休業を取得することはできなかった。 しかし、介護は長期にわたり、介護開始から介護終了までの様々な段階で休業が必要な場面が想定され、これまで二度目の休業が必要な場合には、離職を選択せざるを得ない状況となっていた。 改正後は、要介護状態に至るごとに原則1回取得できるという考え方を廃し、介護の始期、終期、その間の期間のそれぞれに対応する観点から、通算93日以内で、最大3回に分割して休業を取得することができるようになっており、同一の要介護状態においても二度目の取得が可能となっている。 (2) 休業期間 休業期間は改正前と同様で、対象家族1人につき、通算93日以内となっている。 休業期間の長さは改正前と変わらないが、改正前は、介護休業を取得しない期間に活用することができる選択的措置(詳細は【第2回】で説明)を利用した場合にはその期間も合わせて通算93日以内とされていたが、改正後は、選択的措置の期間は別で考えることとなり、介護休業のみで通算93日以内となっている。 (3) 期間・回数の通算 休業期間・回数は、改正前に取得した休業期間・回数も通算される。 よって、改正後に取得できる休業期間・回数を例示すると次の通りとなる。 《例1》 改正前に同一の対象家族について介護休業を1回(30日)、選択的措置を1回(63日)取得していた場合 ⇒ 改正後は、同一の対象家族について介護休業を最大2回・通算63日まで取得できる。 《例2》 改正前に同一の対象家族について介護休業を1回(93日)取得していた場合 ⇒ 1回しか取得していないが、すでに休業期間の上限に達しているため、改正後は介護休業を取得できない。 《例3》 改正前に同一の対象家族について介護休業を3回(通算70日)取得していた場合 ⇒ 休業期間は70日しか取得していないが、すでに取得回数の上限に達しているため、改正後は介護休業を取得できない。   上記例にあるように、改正前の休業期間・回数も含めて、同一の対象家族について介護休業を3回取得した場合、又は、同一の対象家族について休業期間が通算93日となった場合のいずれかに該当したときは、同一の対象家族については再度の介護休業は取得できないこととなる。 (4) 撤回後の再度の申出 改正前は、同一の対象家族における同一の要介護状態において介護休業の申出を撤回した場合は、原則1回に限り再度の申出ができることとされていたが、改正後は、事情が変化しやすい介護の実情を踏まえて、1回の介護休業の申出につき1回は撤回しても再度の申出ができることとし、同一の対象家族について2回続けて撤回した場合は、雇用管理への影響等を考慮して再度の申出を拒むことができるとされている。よって、同一の対象家族について2回連続で撤回しない限り、複数回、再度の申出をすることができることとなっている。 (※) 「【平成29年1月1日施行対応】育児・介護休業法のあらまし」(厚生労働省)より抜粋   2 有期契約労働者の取得要件緩和 介護休業の取得が可能な有期契約労働者について、以下の通り、判断しづらい②の要件が削除され、また、更新されないことが明らかでない期間が短縮され、取得可能な対象者が拡大されている。 ◆改正前の有期契約労働者の要件(以下のすべてを満たす者) ① 入社1年以上であること ② 介護休業を開始しようとする日から 93日を経過する日(93日経過日)を超えて雇用関係が継続することが見込まれること ③ 93日経過日から 1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと ◆改正後の有期契約労働者の要件(以下のすべてを満たす者) 入社1年以上であること 介護休業を開始しようとする日から起算して93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までの間に、労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと   3 対象家族の範囲拡大 介護休業等の介護に関わる制度の対象となる家族(対象家族)は、以下の家族であるが、改正前は②の家族については「同居かつ扶養」の要件が付されていた。しかし、世帯構造の変化等を踏まえて、同居していない兄弟姉妹等の家族の介護が必要な場面も今後想定されることから、改正後は、当該家族についても「同居かつ扶養」の要件が廃止され、対象家族の範囲が拡大されている。 ◆対象家族の範囲 ① 配偶者、父母、子、配偶者の父母 ② 祖父母、兄弟姉妹、孫   *   *   * 次回は、残りの3つの項目について確認する。 (了)

#No. 201(掲載号)
#岩楯 めぐみ
2017/01/12

税理士業務に必要な『農地』の知識 【第5回】「生産緑地」

税理士業務に必要な 『農地』の知識 【第5回】 「生産緑地」   税理士 島田 晃一   前回の都市計画法の解説において、補助的地域地区の一つとして生産緑地地区が定められることについて取り上げた。今回はこの生産緑地について、もう少し詳しく解説していきたい。   1 生産緑地の概要 「生産緑地」とは、市街化区域内にある一団の農地について、都市計画法に基づき市町村の指定を受けたものをいう。その運用については生産緑地法に則っている。ただし、市から生産緑地の指定を受けるためには、一団の農地の面積が500㎡以上である必要がある。 この場合、一人の所有する農地が500㎡以上でなければならないというわけではなく、隣接する農地の所有者と併せた「一団」の農地の面積が500㎡以上であれば指定を受けられる。なお、次の国会において生産緑地法を改正し、一団の農地の面積を500㎡以上から300㎡以上に引き下げる動きがある。 生産緑地指定を受けた場合、その農地を農地として適正に管理していくことが求められる。 また、生産緑地において建物の建築や宅地造成はできない(農機具庫等の農業施設については許可を受けた場合建築可)。仮に法律に違反して建物を建築したときは、これを取り壊し、原状回復しなければならない。 三大都市圏の特定市(前回参照)の市街化区域内においては、平成3年の生産緑地法改正に基づき、該当農地所有者が生産緑地かそれ以外の農地にするかを選択し、平成4年に指定が行われた。 ただし、この段階で生産緑地指定を受けていなくても、面積要件などをクリアしていれば追加指定が行われる場合もある。特に近年においては、都市における緑地の保全や災害時における避難場所として積極的に生産緑地の追加指定を働きかけている市もある。 また、平成4年以降に新たに三大都市圏の特定市に該当した市については、随時生産緑地指定が行われた。例えば、東京都羽村市、埼玉県吉川市、大阪府阪南市、静岡県静岡市など30の市がこれに該当する。   2 生産緑地指定と税務 生産緑地指定を受けた場合、いくつかの税務上のメリットを受けられる。 1つは固定資産税・都市計画税の減額である。 生産緑地指定を受けていない市街化区域内農地については宅地並評価が行われるのに比べ、生産緑地の指定を受けた農地は農地評価がされる。農地評価はその農地の収益力を基に算出されるため、宅地並評価と比較し、評価額及び税額がかなり低くなっている。 例えば、東京都練馬区のある地域に所在する生産緑地については、600㎡程度の農地の評価額が約14万円、固定資産税及び都市計画税の合計額が約2,500円になっている。 また、平成3年1月1日に三大都市圏の特定市に所在する市街化区域内農地については原則として相続税の納税猶予は受けられないが、生産緑地指定を受けている農地については相続税の納税猶予が受けられる。   3 生産緑地の買取り申出とその後の取扱い 生産緑地指定を受けた農地については、次のいずれかに該当したときは、その農地の買取りを各市に申し出ることができる。 (3)の「農業に従事することができないと認められるとき」とは、例えば両目の失明、精神の著しい障害、神経系統の著しい障害など生産緑地法施行規則に定められた障害を負った場合をいう。判断が難しいときは、市の職員が従事者に面談したり医師の確認が行われる。 市に買取り申出を行った場合、市は1ヶ月以内に買取の有無を農地所有者に通知し、買取りを行わない場合、他の農業従事者に買取りのあっせんを行う。このあっせんの不調により、買取り申出から3ヶ月以内に所有権の移転が行われなかったときは、「行為制限の解除」といい、その土地に係る建築制限や宅地造成の制限が解除される。行為制限の解除の結果、その農地を第三者に売却することも可能になる。 現実には、農地の所在する区域に都市施設の計画がある場合等を除き、買取り申出がされた農地を市が買い取ったり、他の農業従事者へあっせんが行われることはほとんどないので、買取り申出から3ヶ月で行為制限の解除が行われる。 行為制限の解除が行われる際に注意してほしいのは、複数の所有者で500㎡の面積要件を満たしている一団の農地について、そのうちの一人が行為制限の解除を受け、かつ、残りの農地面積が500㎡以下になってしまったときは、残りの農地についても生産緑地指定が解除されてしまうことである。 そのため、このような事例に該当するときは、他の所有者の意向も汲んで買取り申出をしなければ思わぬトラブルになってしまうので、注意されたい。   4 農地所有者に相続が発生したときなど 生産緑地指定を受けた農地の所有者に相続が発生したときは、その農地を相続人がどのように取り扱うかによって対応が異なる。 まず、相続人が後継者になり農業を継続するときは、農地について相続税の納税猶予を選択する場合が大部分であろう。この場合には、遺産分割を早めに行い、農業委員会に「適格者証明書」の発行を受けるための手続きを進めなければならない。 また、平成3年1月1日現在における三大都市圏の特定市においては、納税猶予を受ける際の添付書類として、その農地が生産緑地であることの証明書(「納税猶予の特例適用の農地等該当証明書」)がある。この証明書の発行申請は生産緑地の所在する市の都市計画課等に行う。ただ、この証明書の発行についてはそれほど時間を要しないので、「適格者証明書」の発行を受けるための手続きが優先になる。 一方、農業後継者がいない場合や、いても該当農地の全部又は一部について耕作しないと決めたときは、市に生産緑地の買取り申出を行う。その際、買取申出書の添付書類として遺産分割協議書が必要になる。特にその農地を売却し相続税の納税に充てるときは、前述したように買取り申出から行為制限の解除まで3ヶ月の時間を要することから、早めに遺産分割を終え申出を行う必要がある。 なお、多くの農地は平成4年に生産緑地指定を受けているため、30年後に当たる平成34年(2022年)には、買取り申出が可能になる。いわゆる「2022年問題」といい、買取り申出が多数行われることにより都市農地が宅地として過大に供給され、不動産価格に影響を及ぼす可能性も指摘されている。 生産緑地を所有するクライアントがある場合、このような問題も踏まえ、クライアントとその農地をどのように取り扱うかについて、今のうちから、よく打ち合わせしておく必要があろう。 *  *  * 以上、生産緑地についてある程度細かい部分も含めて取り上げてきた。生産緑地は都市農地を所有している農家の税務を扱う税理士にとって必須の知識であるため、これを機会にしっかり押さえておきたいところである。 (了)

#No. 201(掲載号)
#島田 晃一
2017/01/12

〔新規事業を成功に導く〕フィージビリティスタディ10の知恵 【第10回】「結果を「見える化」することのメリットとは?」

〔新規事業を成功に導く〕 フィージビリティスタディ10の知恵 【第10回】 「結果を「見える化」することのメリットとは?」   中小企業診断士 西田 純   前回は、特に売上予測について、根拠の裏付けをいかに取っていくか、というお話をしました。今回は主に収益予測について、結果を見える化することの重要性をお話したいと思います。   ▷ 数字だけでは伝わりにくい 【第7回】でお伝えしたように、収益性分析と感度分析を合わせて検討することで、事業の収益性についておおよそのイメージを掴むことができるのですが、計算結果そのものを数字で表すだけでは、意外に伝わりにくかったりする、という弱点を残したままになることに注意する必要があります。 あまり数字に強くない人でも、自分が行った計算については比較的その意味を理解しやすいので、結果についてはつい数字のままで報告してしまいがちですが、他人が行った計算の結果、というのは意外にすんなりとは消化しづらいものだったりします。 悪いことに、数字への感度は人によってバラつきがあり、同じデータを見せても目の付け所や反応が大きく異なる、というやっかいな点があります。以下の表をご覧ください。 これは粗利益率と販売管理費率について、とある4年間の推移を数字で表したものですが、粗利益率が最終的に1.2ポイントほど悪化していく中で、経費率は横ばいのままである、という推移が見て取れます。この表を見ただけでは、さほど大きな変化には見えないかもしれませんが、これらの差として算出される営業利益率は1年目が3%だったのに、4年目は1.8%と、相対的に見れば4割も減少しているのです。『営業利益4割減』をこの表から直接的に読み取るのは簡単ではありません。 更に言うと、予測値としてまとめるべきは、あなたが担当者として計算した粗利益率や、管理部からヒアリングしてきた販売管理費率ではなく(これらはあなたが知っておけばよい数字です)、意思決定者に伝えるべき営業利益率そのものであることは論を待たないと思います。   ▷ グラフを使ったシミュレーション それではどのようにすると伝わりやすくなるのか、ということですが、これはビジュアル化するのが一番です。そして、そのために使うべきは、エクセルのグラフ機能です。 このグラフを見ると、営業利益がむこう4年間にわたって右肩下がりで減少すると予測されていることが一目瞭然になります。これではいけない、ということで何か対策を打って、粗利益率を改善した場合のシミュレーションをしてみましょう。 仮に、3年目と4年目に粗利益率が0.5%ずつ向上したとすると、こんなグラフになります。 前のグラフでは明らかに右肩下がりだったものが、3年目にぐっと上向いていることが判ります。変化を目に見えるようにすることの、明らかな効用です。 でも、まだこれでは最終的に4年目の違いが見えづらいですね。そのためには同じ土俵で直接比較してあげる必要がありそうです。 これらを比較するには、こんなグラフが適しているかもしれません。 どうです、ずいぶんとわかりやすくなったと感じませんか? これを経営者目線で見るといくつかのことがアタマに浮かびそうです。①改善策の効果が現れるまでには3年目まで待たなくてはならないのか、②3年目は良いとして、4年目の改善幅はもう少し何とかならないものだろうか、③1年目から2年目への落ち込みはどうにかして回避できないものだろうか、などです。 このような刺激を意思決定者へのメッセージとして直接的に伝えるため、数字はぜひグラフ化してみることをお勧めします。 またエクセル上に元データを持っておけば、数値をいじるだけでグラフの高さが変化しますので、目に見える形でシミュレーションを行うことが可能になります。売上高ももちろんそうですが、経営者が強い関心を持って注目するのは、何と言っても利益の推移です。なので、プレゼンテーションを準備する側としては、ぜひ利益金額及び利益率についてしっかりとグラフを準備しておくことをお勧めします。 *   *   * 次回は「公的支援制度を活用するためのポイント(前編)」と題して、時期的に応募機会が近づく公的支援制度への取組みについてお話したいと思います。 (了)

#No. 201(掲載号)
#西田 純
2017/01/12

〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第16話】「贈与税の連帯納付義務」

〈小説〉 『資産課税第三部門にて。』 【第16話】 「贈与税の連帯納付義務」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「・・・それで、受贈者である納税者はどこに行ったんだ!」 田中統括官は厳しい口調で谷垣調査官に尋ねた。 「ええ・・・どうも中国に帰ったらしいのですが・・・」 谷垣調査官は困った表情をする。 「中国に逃げたのか・・・」 田中統括官は諦めたようにつぶやく。 「統括官、ということは、贈与者に対して、受贈者の贈与税を支払ってもらうということになるのですね。」 谷垣調査官は田中統括官の顔を見た。 「ああ・・・相続税法34条4項に書いてあるからな。」 田中統括官は傍らにある税務六法を開いて確かめる。 「この条文は、本来の贈与税の納税義務者である受贈者が贈与税を支払わなかったときには、贈与者がその贈与税を納付しなければならない、という規定ですよね。」 谷垣調査官が確認する。 「そうだ」 田中統括官はうなずいた。 「しかし、なぜ贈与者が受贈者の贈与税を負担しなければならないのか・・・少し疑問ですね・・・贈与者に連帯納付義務を課していることが良いのでしょうか?」 谷垣調査官は、頸を傾げる。 「君は・・・何を言いたいんだ。」 田中統括官は少し声を荒げる。 「いえ・・・でも、贈与者にそんな負担を強いることが、本当に妥当なんでしょうか?」 谷垣調査官も負けていない。 「私の理解では・・・」 田中統括官は、少し冷静になって話し始める。 「・・・贈与者は、一般的に受贈者と関係が深いので、受贈者が贈与税を支払わない場合、国は受贈者と関係の深い贈与者に連帯納付義務を課し、税金の徴収が漏れないようにしている・・・まあ、徴収の便宜とでもいうのか・・・」 そう言って田中統括官は苦笑する。 「しかし・・・私の担当しているこの贈与税事案については、贈与者と受贈者は全く面識がないのですよ。・・・いや、正確に言うと、既に死んでいる贈与者ではなく、贈与者の相続人と受贈者の間ですけれど・・・」 谷垣調査官は説明を続ける。 「贈与者は平成26年に、受贈者に1億円を贈与しているのです。そして翌年に贈与者は亡くなったのですが、受贈者は贈与税の申告を申告期限までにしていなかった・・・そこで、所轄の税務署から贈与税の申告書の提出を慫慂されて期限後の申告をしたのです。しかし・・・受贈者は税金を支払わずに・・・帰国したらしいのです。」 「贈与者の相続人か・・・」 田中統括官は思案顔になる。 「国税通則法5条1項に納税義務の承継が記されています。」 そう言うと、谷垣調査官も税務六法を開いた。 「この規定によって、被相続人の贈与税の連帯納付義務は相続人が負うことになるのですが、この事案では、実は相続人は、受贈者のことを全く知らないのです・・・」 谷垣調査官の説明を聞いた田中統括官は、頸を傾げて尋ねた。 「被相続人の相続人と受贈者が全く知らないといことは・・・受贈者は被相続人の親戚ではない、ということなのか?」 「ええ。これは私の推測ですが・・・受贈者は被相続人の愛人であった可能性が非常に高いのです・・・何せ、贈与した金額が1億円ですから・・・」 谷垣調査官は断定する。 「そうか・・・その愛人の税金を、相続人が負担する、ということか・・・」 田中統括官は眉間にシワを寄せた。 「国税通則法では、相続人は・・・被相続人の納付若しくは徴収されるべき国税を納める義務を承継する、としか書かれていないから・・・受贈者が被相続人の愛人であったとしても、関係ないということなのだろう。」 田中統括官は諦めたように言う。 「しかし、相続人にこのような連帯納付義務を課するのは、少し可哀想な気がするのですけど・・・」 谷垣調査官は田中統括官を見た。 「私だって君と同じ意見だよ。しかし、法律の規定に従うしかないじゃないか・・・我々公務員である税務職員は・・・」 そう言うと田中統括官は、再び苦笑いを浮かべた。 (つづく)

#No. 201(掲載号)
#八ッ尾 順一
2017/01/12

《速報解説》 既存住宅のリフォームに係る特別控除、対象工事に「耐久性向上改修工事」を追加~平成29年度税制改正大綱~

 《速報解説》 既存住宅のリフォームに係る特別控除、 対象工事に「耐久性向上改修工事」を追加 ~平成29年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   昨年12月22日に閣議決定された「平成29年度税制改正大綱」には、既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充が示されている。 以下、拡充の主な内容について解説を行う。   (1) 見直しの背景 住宅の性能が向上するリフォームを推進することで、耐震性、省エネ性、耐久性に優れた質の良い住宅を増やし、既存住宅の流通市場とリフォーム市場の活性化を図ることが見直しの目的である。 既存住宅のリフォームに係る税制上の特例措置として、現行では所得税に次の2つの制度があり、固定資産税にも軽減措置がある。 (2) 見直し①〈特定増改築等住宅借入金等特別控除の拡充〉 ① 現行制度の概要 (ア) 制度の種類及び適用期間 (イ) 控除額(平成26年4月1日以後分) (※) 上段の金額のうち特定増改築等限度額に係る控除額 ② 見直しの内容 本特例の適用対象となる工事に特定の省エネ改修工事と併せて行う一定の耐久性向上改修工事を加えるとともに、控除率2%の対象となる特定増改築等限度額の範囲に、特定の省エネ改修工事と併せて行う一定の耐久性向上改修工事の費用に相当する住宅借入金等を加えることが示された。 この見直しは、平成29年4月1日から平成33年12月31日までの間に、家屋を自己の居住の用に供する場合に適用される。 なお、上記「一定の耐久性向上改修工事」とは、次に掲げる工事をいう。   (3) 見直し②〈住宅特定改修特別税額控除の拡充〉 ① 現行制度の概要 (ア) 制度の種類及び適用期間 (イ) 控除額 (※) 太陽光発電装置を設置する場合 ② 見直しの内容 本特例の対象となる工事に一定の耐久性向上改修工事で耐震改修工事又は省エネ改修工事と併せて行うものを加えることが示された。見直し後は、耐震改修工事又は省エネ改修工事に係る標準的な費用と耐久性向上改修工事に係る標準的な費用の合計額が上記の表の工事限度額となる。 この見直しは、平成29年4月1日から平成33年12月31日までの間に、家屋を自己の居住の用に供する場合に適用される。   (4) 見直し③〈省エネ改修工事の拡充〉 特定増改築等住宅借入金等特別控除及び住宅特定改修特別税額控除の適用対象となる省エネ改修工事に、次の工事が加えられることが示された。   (5) 見直し④〈耐震改修等を行った住宅に係る固定資産税の減額措置の拡充〉 耐震改修等を行った住宅に係る固定資産税の減額措置について、長期優良住宅の認定を受けて改修されたことを証する書類を添付して市町村に申告が行われた場合には、減額措置を次の通り拡充することが示された。 (了)

#No. 200(掲載号)
#篠藤 敦子
2017/01/11

《速報解説》 法人・個人の納税地変更等について届出先の削減等、手続を簡素化~平成29年度税制改正大綱~

《速報解説》 法人・個人の納税地変更等について届出先の削減等、手続を簡素化 ~平成29年度税制改正大綱~   税理士 佐藤 善恵   平成29年度税制改正では、納税環境整備の一環として、届出書の提出先や添付書類が省略されるなど、手続きの簡素化が図られることとなった。 これによって、二度手間とも感じられていた作業がシンプルになる。 なお、適用時期については大綱への記載がないため、今後の改正法令等を確認する必要がある。   1 法人税関係 ① 納税地の異動があった場合 現在、法人税について納税地が異動した場合、その法人等は届出書(「異動届出書」)を、異動前と異動後の所轄税務署長にそれぞれ提出しなければならない(法法20)。 ② 法人等が設立された場合 現在、法人等の設立時には、届出書(「法人設立届出書」)を納税地の所轄税務署長に提出することとされており(法法148)、その届出書には次のような書類を添付しなければならない(法規63)。   2 所得税関係 ① 納税地の変更があった場合 現在、所得税の納税地が変更された場合は、その変更前と変更後の納税地の所轄税務署長に対して、届出書(「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」)を提出しなければならない(※)。 ② 納税地の異動があった場合 現在、所得税について納税地が異動した場合、その者は届出書(「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」)を、異動前と異動後の所轄税務署長にそれぞれ提出しなければならない(所法20)。 ③ 個人事業の開業・廃業等があった場合 現在、個人事業の開始、又は事務所等の開設、若しくは移転若しくは廃止をした場合、その者は届出書(「個人事業の開業・廃業等届出書」)を、納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(所法229)。 現行法によれば、届出先の税務署長は、以下のとおりである(所規98)。 ④ 給与支払事務所等の移転があった場合 現在、給与支払事務所等に移転があった場合、その者は届出書(「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」)を、移転前と移転後の所轄税務署長にそれぞれ提出しなければならない(所法230、所規99)。   3 その他 (了)

#No. 200(掲載号)
#佐藤 善恵
2017/01/11

《速報解説》 外国税額控除・研究開発税制等は増額更正に応じ税額控除額が増加、その更正の請求が不要に~平成29年度税制改正大綱~

《速報解説》 外国税額控除・研究開発税制等は増額更正に応じ税額控除額が増加、 その更正の請求が不要に ~平成29年度税制改正大綱~   税理士 佐藤 善恵   1 当初申告要件と控除限度額に関する改正の経緯 平成23年12月税制改正以前は、外国税額控除(法法69、所法95)等や試験研究を行った場合の法人税額の特別控除(措法42の4)等は、確定申告書等(※)に一定の事項を記載するなど形式的な要件を満たす必要があった。 (※) 確定申告書等・・・確定申告書及び仮決算をした場合の中間申告書をいう(以下同じ)。 上記を「当初申告要件」という。また、これらの制度については、その適用金額についても、当初申告における金額が限度とされていた(受取配当等の益金不算入等)。 つまり、従前は、確定申告書等において制度の適用を受けていなかった場合には、修正申告や更正の請求によって新たに制度の適用を受けることはできず、また、確定申告書等に記載された金額を超えて適用を受けることはできなかった。当初申告において、うっかり記載漏れがあったとしても救済されることはなかったのである。 しかし、平成23年12月税制改正を経て、その状況は改善された。具体的には、確定申告書等だけでなく、修正申告書や更正の請求書によっても新たに制度の適用を受けることができ、また、適用金額を増額させることができるようになった。 これが「当初申告要件の廃止」後の現行制度である。 なお、当初申告要件が廃止された措置については下記国税庁ホームページを参照されたい。   2 現行制度における不合理 控除額が法人税額等に連動している制度、例えば、租税特別措置法第42条の4《試験研究を行った場合の法人税額の特別控除》でみてみると、同法第1項は、「当該税額控除限度額が、当該法人の当該事業年度の所得に対する調整前法人税額の100分の25に相当する金額を超えるときは、その控除を受ける金額は、当該100分の25に相当する金額を限度とする。」と規定している。 したがって、納税者が確定申告書等においてこの制度の適用を受けていた場合において、その後の調査で増額更正処分を受けたときは、計算上、法人税額に連動して税額控除限度額も増加する。しかし、自動的に税額控除額が増えて納付すべき税額が算出されるわけではない。 なぜなら、職権更正で制度が適用される旨が規定されていないからである。 この制度の現行法を確認すると、次のとおりである。 このような状況、つまり、増額更正処分がされた場合に控除額が自動的に増えないという状況は、修正申告等による控除額の増額が認められていることと比べて、バランスを欠くのではないか。また、事務手数の面においても、納税者及び課税庁双方に負担が生じているのではないかといった点が指摘されていた。   3 改正内容 そこで、平成29年度税制改正では、外国税額控除や研究開発税制等について、一定の要件を満たせば、税務署長が増額更正する際に控除額が増加する仕組みが導入される。 なお、平成29年度税制改正大綱では、該当項目について次のように記載しており、要件等の詳細については今後の法令等の改正内容を確認する必要がある。 (了)

#No. 200(掲載号)
#佐藤 善恵
2017/01/10

《速報解説》 相続税の物納財産、上場株式等が第一順位に~平成29年度税制改正大綱~

《速報解説》 相続税の物納財産、上場株式等が第一順位に ~平成29年度税制改正大綱~   税理士 齋藤 和助   1 改正内容 「平成29年度税制改正大綱」(平成28年12月22日閣議決定)では、「資産課税 - その他の事項」において、相続税の物納財産の順位見直しについて次のように記載されている。   2 現行制度における物納順位 物納に充てることができる財産は、納付すべき相続税額の課税価格計算の基礎となった相続財産(相続により取得した財産を含み、相続時精算課税の適用を受ける贈与によって取得した財産を除く)のうち、次表に掲げる財産及び順位による。 なお、「物納劣後財産」とは、他に物納に充てるべき適当な財産がある場合には、物納に充てることができない財産のことをいう。   3 改正案による物納順位 冒頭に紹介した平成29年度税制改正案によると、物納が認められる財産の順位は次表のようになる。 現行ではすべてが第2順位であった株式等が、「上場」と「非上場」に区別され、上場株式等は第1順位となり、非上場株式等は第2順位のままとされる。そして、上場株式等の範囲に投資証券等(※)が加えられる。 (※) 「投資証券」とは金融機関が発行する債券で、株式のようにいつでも売買ができるものである。特徴としては投資信託と同様、基準価格の値上がりを期待して投資するものであり、株式や投資信託では難しかった様々な対象指標に連動する商品があるが、資産の裏付けがないため、発行元の金融機関が経営破綻した場合の信用リスクは投資家が負うこととなる。 なお、上記改正の施行時期は未定である。   4 改正の背景 今回の改正は、金融庁が要望していた上場株式等の相続税評価の見直しに端を発している。 すなわち、現行の上場株式等の評価は、原則として相続時点の時価で評価されているため、相続時から納付期限までの期間の価格変動リスクが考慮されていない。このため、上場株式等は価格変動リスクの低い預金や債券などの他の資産と比べて不利になっており、投資家の株式離れが助長されているとの指摘がある。 そこで、上場株式等について、以下の項目の見直しを要望していた。 今回の税制改正においては、上記項目のうち③が実現された形であるが、他の項目についても今後、改正が行われていくかどうか注視していきたい。 (了)

#No. 200(掲載号)
#齋藤 和助
2017/01/06

《速報解説》 中小企業者等の貸倒引当金の特例措置、割増率を見直し2年延長~平成29年度税制改正大綱~

 《速報解説》 中小企業者等の貸倒引当金の特例措置、割増率を見直し2年延長 ~平成29年度税制改正大綱~   税理士 伊村 政代   1 概要(租税特別措置法第57条の9第3項) 貸倒引当金の繰入限度額のうち、一括評価繰入額については、公益法人等や協同組合等であれば、その繰入限度額が通常の計算による繰入限度額の12%割増しとされている。 「平成29年度税制改正大綱」(平成28年12月22日閣議決定)においては、本特例の適用期限(現行平成10年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する各事業年度)を2年間(平成31年3月31日まで)延長すると共に、上記の割増率を10%に引き下げることとした。   2 対象となる債権の範囲 貸倒引当金繰入限度額の計算については、債権を貸し倒れる危険性の高い「個別評価金銭債権」と一般的な債権である「一括評価金銭債権」とに区別して、それぞれの繰入限度額を計算している。今回は一括評価金銭債権に関する計算の特例についての改正となっている。   3 一括評価金銭債権の繰入限度額 ① 実績繰入率による計算(原則) その事業年度末の一括評価金銭債権の帳簿価額に、過去3年間の貸倒実績繰入率を乗じて計算する。 貸倒実績率は、次の算式により計算する(小数点以下4位未満切上げ)。 (※) 算式中の「月数」については、暦に従って計算し、1ヶ月に満たない端数が生じたときは、これを1ヶ月とする。 ② 法定繰入率による計算(特例) 中小法人等については①の実績繰入率による計算に代えて、法定繰入率による計算が認められている。 〈法定繰入率〉 なお、一括評価金銭債権へ該当するもの、該当しないものについては、下記国税庁ホームページを参照されたい。   4 公益法人等又は協同組合等の割増率の特例 最後に、公益法人等又は協同組合等の割増率の特例の各事業年度の適用される割増率については次のとおりとなるので留意されたい。 (了)

#No. 200(掲載号)
#伊村 政代
2017/01/06

《速報解説》 中小企業者等の法人税率の軽減特例、2年延長へ~平成29年度税制改正大綱~

 《速報解説》 中小企業者等の法人税率の軽減特例、2年延長へ ~平成29年度税制改正大綱~   税理士 伊村 政代   1 概要 中小企業者等については、各事業年度の所得金額のうち年800万円以下の金額については、軽減税率が適用される(本則の軽減税率は19%)。 現行制度においては、平成24年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する各事業年度については本則の19%によらず、15%の軽減税率が適用されている。 「平成29年度税制改正大綱」(平成28年12月22日閣議決定)によると、この15%の軽減税率の適用期限が2年間(平成31年3月31日まで)延長されることとなる。   2 対象法人 15%の軽減税率の対象となる法人は以下のとおり。   3 計算 現在の法人税の基本税率は23.4%(平成30年4月1日以後に開始する各事業年度は23.2%)である。したがって下図のように、所得金額のうち年800万円以下の金額に、上記の軽減税率である15%を乗じた金額と、年800万円を超える金額に、通常の法人税率である23.4%を乗じた金額との合計額がその事業年度の法人税額となる。 (了)

#No. 200(掲載号)
#伊村 政代
2017/01/06
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